JP4242002B2 - 脱臭濾材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、臭気成分で汚染された流体を濾過して清浄化するための脱臭濾材に関し、特に、脱臭性能に優れた脱臭濾材の製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
臭気物質を除去するための脱臭濾材は、濾材全般に求められる特性として圧力損失が小さいことに加え、当該濾材に担持される、活性炭や種々の化学脱臭剤からなる粒子(以下、包括的に脱臭粉粒体と称する)の機能を最大限に発揮させることが必要である。このような濾材を実現するため、本出願人は、特願平10−46215号などにより、ホットメルト樹脂からなる不織布に脱臭粉粒体を担持した脱臭濾材及びこれを製造する技術を提案している。
【0003】
図1は、上述した技術の好適態様を説明するため、脱臭濾材を模式的な概略断面により示す図である。まず、熱可塑性のホットメルト樹脂からなるホットメルト不織布の表面に、活性炭などの脱臭粉粒体17を散布する。次いで、この状態の不織布に対して、例えば水蒸気などの高温の流体をホットメルト不織布側から当てる。このような加熱処理によって、ホットメルト不織布と脱臭粉粒体17とが接していた部分には樹脂凝集部13が形成され、脱臭粉粒体17同士は、この樹脂凝集部13とホットメルト不織布の繊維成分の一部が残存して構成される連結部11とによって、連続した構成成分としてウエブ15に固定保持される。続いて、ウエブ15に固着していない余剰の脱臭粉粒体17を除去することによって、積層単位19が形成される。図2は、この状態の脱臭粉粒体17のうちの1つに着目して、ウエブ15側から積層単位19を見た平面図であるが、樹脂凝集部13の形成と共に、ホットメルト不織布を構成していた比較的繊維径の太い構成繊維は、加熱処理によって可塑化溶融しても切断されず、連結部11として強固な網状構造を構成する。
【0004】
続いて、この積層単位19上に再度ホットメルト不織布の積層、脱臭粉粒体の散布、加熱処理及び余剰粉粒体の除去を施すことによって、図1に示す脱臭濾材21が得られる。このような積層単位19を複数備えた脱臭濾材21にあっては、前述した加熱処理を高温の流体によって行うことにより、1つの積層単位19上に隣接する脱臭粉粒体17同士の間隙には、他の積層単位19との間に渡る連通孔Aが形成される。従って、このような技術を適用することにより、圧力損失が極めて低い、優れた脱臭濾材を提供することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
周知の通り、脱臭効率は、濾材に備えられた脱臭粉粒体の量や、これに対する接触確率を大きく採ることによって向上させ得る。上述の従来技術により得られる濾材では、積層単位を複数備えることにより、濾材面積当たりの脱臭粉粒体をより多く担持固着することができる。一方、濾材の利用形態として、所定の形状に折り加工を施したプリーツ状のフィルタによって、濾材に対する汚染空気の接触確率を高める技術が広く用いられている。この折り加工に際しては、濾材の厚さが小さいほど加工性に優れる。従って、本発明者は前述した従来技術の手法を応用し、1つの積層単位に、より多くの脱臭粉粒体を担持させる技術に着目し、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
従って、この発明の目的は、1枚のシート形状を有する脱臭濾材にあって、脱臭粉粒体を高密度で固着することができ、優れた脱臭性能と加工性とを満足する製造技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的の達成を図るため、本発明に係る脱臭濾材の製造方法によれば、ホットメルト不織布の表面に略球形の脱臭粉粒体を配した後、加熱処理によって前記ホットメルト不織布と前記脱臭粉粒体とが接する部分に樹脂凝集部を形成し、該樹脂凝集部と連結部とからなるウエブを形成し、該ウエブに樹脂凝集部を介して前記脱臭粉粒体を固着させた後、固着した脱臭粉粒体以外を除去し、この固着された脱臭粉粒体上に、再度、ホットメルト不織布の積層、脱臭粉粒体の配置、加熱処理、及び余剰な脱臭粉粒体の除去を施す、シート形状を有する2層構造の脱臭濾材の製造方法であって、前記脱臭粉粒体を活性炭又は活性炭に種々の物質を添着させて構成した添着炭とし、前記脱臭粉粒体の平均粒径を0.4〜0.7mmとし、前記ホットメルト不織布の表面に固着する前記脱臭粉粒体の単位面積当たりの重量を346〜790g/m2とし、前記脱臭濾材の見掛け厚さと前記脱臭粉粒体の単位面積当たりの重量とから計算して得られる、前記脱臭粉粒体の嵩密度を0.35〜0.43g/cm3とし、平板状の前記脱臭濾材の50cm/秒の風速における圧力損失を35〜48Paとすることを特徴としている。尚、本明細書に言う「略球形」の脱臭粉粒体とは、当該粉粒体の断面形状が円形若しくは楕円形などを表すものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係る製造技術の好適実施形態について説明する。尚、以下の説明で参照する図中、既に説明した構成成分と同様な機能を有するものについては、同一の符号を付して示す。
【0009】
図3は、本発明の技術を適用して得られた脱臭濾材23を図1と同様な概略断面により示す説明図である。始めに、同図に示すウエブ15を形成するため、ホットメルト不織布を用意する。このようなウエブを形成し得るホットメルト樹脂としては、熱可塑性ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、またはポリオレフィン変性樹脂などを、単独または混合して用いることができる。ここで言うポリオレフィン変性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、アイオノマー樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体に金属を付加した感熱性樹脂)などが挙げられる。これら一連のホットメルト樹脂として、MIが50以上500以下のものを選択して使用するのが好ましい。この好適範囲よりも低いMIの樹脂では、流動性が低いため加熱処理時に樹脂凝集部が形成されにくく、脱臭粉粒体17aの固着が不完全となることがある。さらに、上記範囲よりもMIが高い樹脂では、加熱処理時の流動性が高く、樹脂凝集部形成直後から室温程度の温度平衡に達するまでの工程通過性を損なう場合がある。
【0010】
また、上述したウエブを形成するためのホットメルト不織布として、面密度が10〜30g/m2のものが好適であり、特に、15〜25g/m2のものが好ましい。これら好適範囲よりも小さな面密度とした場合には、不織布としての均一性に欠けるため、ウエブに固着された脱臭粉粒体の均一性を損ない、臭気物質のリークによる脱臭濾材の効率低下を来す。また、この好適範囲を超えて大きな面密度のホットメルト不織布を採用しても固着強度の向上は望めず、圧力損失の増大を来すことになる。
【0011】
さらに、本発明で利用される略球形の脱臭粉粒体17aとしては、活性炭、これに種々の物質を添着させて構成した添着炭など、種々の粉粒体を組み合わせて用いることができる。
【0012】
前述したホットメルト不織布の表面に、上述の脱臭粉粒体17aを配した後、加熱処理によって樹脂凝集部13及び連結部11からなるウエブ15を形成し、このウエブ15に脱臭粉粒体17aを固着させる。然る後、固着されていない脱臭粉粒体を除去することによって図3に示す状態を得る。このような加熱処理に当たっては、例えばカレンダー、熱風ヒーター、赤外線ヒーター、水蒸気による加熱、対向する一対の無端ベルト間に布帛を挟持して加熱する装置など、従来知られている種々の手段とすることができる。また、特に好適な態様として、例えば熱可塑性ポリアミド系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂など、湿熱状態で収縮切断し易い樹脂で構成されるホットメルト不織布を用いた場合、水蒸気による加熱処理を採用することにより、比較的低圧損の脱臭濾材を実現することができる。
【0013】
さらに、ホットメルト不織布の可塑化溶融に伴う強度低下を補う必要がある場合には、塵埃捕集に用いられてきたフィルタ素材を支持体として用いることもできる。尚、図3ではウエブ1層のみの態様を例示しているが、2層構造の脱臭濾材として本発明の方法を適用する。
【0014】
【実施例】
以下、この発明の実施例につき説明するが、以下に示す実施例は、この発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本発明はこれら例示条件にのみ限定されるものではない。
【0015】
実施例1
実施例1に係る脱臭濾材として、市販の球状活性炭である『BAC−SP』(呉羽化学工業(株)製,商品名:平均粒径約0.4mm以下)を脱臭粉粒体17aに用いた。まず、ポリエステルからなる、面密度50g/m2のスパンボンドを支持体として、熱可塑性ポリアミド系樹脂からなる面密度20g/m2のホットメルト不織布を積層しておく。次いで、このように積層したホットメルト不織布の表面に、上述した脱臭粉粒体17aを散布する。続いて、約5Kg/cm2の水蒸気処理を支持体側(ホットメルト不織布側)から約7秒間行い、上記ホットメルト不織布を可塑化溶融して、ホットメルト樹脂からなる連結部11と樹脂凝集部13とで構成されたウエブ15に、樹脂凝集部13を介して略球形の脱臭粉粒体17aを固着させた。然る後、固着した脱臭粉粒体17a以外を除去した。さらに、この固着された脱臭粉粒体17a上に、再度、ホットメルト不織布の積層、脱臭粉粒体の散布、水蒸気処理、余剰な脱臭粉粒体除去を経て、2層構造の実施例1に係る脱臭濾材を得た。
【0016】
実施例2
略球形の脱臭粉粒体17aに市販の球状活性炭『BAC−MP』(呉羽化学工業(株)製,商品名:平均粒径0.5±0.05mm)を用いたことを除いては、実施例1と同一の条件で実施例2に係る脱臭濾材を得た。
【0017】
実施例3
略球形の脱臭粉粒体17aに市販の球状活性炭『BAC−LP』(呉羽化学工業(株)製,商品名:平均粒径0.6±0.05mm)を用いたことを除いては、実施例1と同一の条件で実施例3に係る脱臭濾材を得た。
【0018】
実施例4
略球形の脱臭粉粒体17aに市販の球状活性炭『BAC−70R』(呉羽化学工業(株)製,商品名:平均粒径約0.7mm以上)を用いたことを除いては、実施例1と同一の条件で実施例4に係る脱臭濾材を得た。
【0019】
比較例
比較例として、破砕によって調製された非定形の、市販の粒状活性炭(クラレケミカル(株)製:粒径範囲60メッシュ(0.25mm)〜32メッシュ(0.5mm))を用いたことを除いては、実施例と同一の条件で脱臭濾材を作製した。尚、上記5種類の脱臭濾材について、使用した脱臭粉粒体の粒径及び形状、得られた脱臭濾材の見掛け厚さと固着された単位面積当たりの脱臭粉粒体重量とから計算した脱臭粉粒体の嵩密度、厚さ、脱臭粉粒体の担持量を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
表1から理解できるように、球形の脱臭粉粒体を用いた実施例に係る脱臭濾材では、比較例に比べて嵩密度を大きく採ることができ、高密度で脱臭粉粒体を固着し得ることが明らかになった。
【0022】
以下、これら脱臭濾材を評価した結果につき説明する。評価は、圧力損失、脱臭効率並びに脱臭濾材の破過時間とした。まず、圧力損失の測定は定法に従い、平板状の各濾材に10cm/秒、30cm/秒、50cm/秒の3水準の風速で送風し、各々、濾材の上流と下流との圧力差をフラジール型通気度試験器によって求めた。
【0023】
また、脱臭効率測定は、臭気物質にトルエンを用い、初期濃度25ppm、風速14cm/秒の条件で行った。この測定では測定開始から1分後に試験条件が定常に達したと見なして、ガスクロマトグラフにより濃度を測定した。結果は、初期濃度(上流側濃度)と濾材を通過した後の下流側濃度との差を初期濃度で割り、百分率で求めた。
【0024】
さらに、脱臭濾材の破過時間として、トルエンの初期濃度を250ppm、風速を0.7cm/秒としたことを除いては、上記脱臭効率の測定と同一条件とし、各濾材通過後のトルエンが初期濃度の5%を初めて越えた時点を破過時間とした。これら圧力損失、脱臭効率、並びに破過時間の測定結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
まず、圧力損失は、比較例に比べて実施例1〜4は多量の脱臭粉粒体を担持しているにもかかわらず、何れも実質的に同等であった。さらに、脱臭効率は平均的な粒径が小さいほど優れるとの傾向が見られるものの、実施例、比較例共にほぼ同等の結果と認められた。破過時間は担持量にほぼ比例して長くなる傾向が見てとれる。これらの結果から、略球形の脱臭粉粒体を用いることによって、大きな圧力損失を生じることなく、粒径に応じた担持量の増大を図り得ることが理解できる。
【0027】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、本発明の技術を適用することにより、実質的に圧力損失の増加を来すことなく、1枚のシート形状を有する脱臭濾材に脱臭粉粒体を高密度で固着担持させることができ、優れた脱臭性能と加工性とを有する脱臭濾材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術を説明するため、脱臭濾材の断面を模式的に示す説明図、
【図2】従来技術を説明するため、脱臭濾材の要部平面を示す説明図、
【図3】本発明の好適な実施形態を説明するため、図1と同様に示す説明図である。
【符号の説明】
11:連結部、 13:樹脂凝集部、 15:ウエブ、 17:脱臭粉粒体、 17a:(略球形の)脱臭粉粒体、 19:積層単位、 21,23:脱臭濾材、 A:連通孔。
Claims (2)
- ホットメルト不織布の表面に略球形の脱臭粉粒体を配した後、加熱処理によって前記ホットメルト不織布と前記脱臭粉粒体とが接する部分に樹脂凝集部を形成し、該樹脂凝集部と連結部とからなるウエブを形成し、該ウエブに樹脂凝集部を介して前記脱臭粉粒体を固着させた後、固着した脱臭粉粒体以外を除去し、この固着された脱臭粉粒体上に、再度、ホットメルト不織布の積層、脱臭粉粒体の配置、加熱処理、及び余剰な脱臭粉粒体の除去を施す、シート形状を有する2層構造の脱臭濾材の製造方法であって、前記脱臭粉粒体を活性炭又は活性炭に種々の物質を添着させて構成した添着炭とし、前記脱臭粉粒体の平均粒径を0.4〜0.7mmとし、前記ホットメルト不織布の表面に固着する前記脱臭粉粒体の単位面積当たりの重量を346〜790g/m2とし、前記脱臭濾材の見掛け厚さと前記脱臭粉粒体の単位面積当たりの重量とから計算して得られる、前記脱臭粉粒体の嵩密度を0.35〜0.43g/cm3とし、平板状の前記脱臭濾材の50cm/秒の風速における圧力損失を35〜48Paとすることを特徴とする脱臭濾材の製造方法。
- 前記脱臭濾材の見掛け厚さが1.00〜1.85mmであることを特徴とする請求項1記載の脱臭濾材の製造方法。
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