JP4239916B2 - 2ポート型アイソレータ及び通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、2ポート型アイソレータ及び通信装置、特に、マイクロ波帯で使用される2ポート型アイソレータ及び通信装置に関する。
一般に、アイソレータは、信号を伝送方向のみに通過させ、逆方向への伝送を阻止する機能を有しており、自動車電話、携帯電話などの移動体通信機器の送信回路部に使用されている。
従来、この種のアイソレータとして、3ポート型アイソレータ(三つの中心電極を有するアイソレータ)や2ポート型アイソレータ(二つの中心電極を有するアイソレータ)が種々知られている。しかし、従来の3ポート型アイソレータや2ポート型アイソレータは、信号が入力ポートから出力ポートに伝搬する際、二つの共振回路が共振し、挿入損失が大きくなるという問題点を有していた。
そこで、特許文献1では、低損失の2ポート型アイソレータが提案されている。この2ポート型アイソレータは、電気等価回路を図8に示すように、第1中心電極321の一端部321aが入力ポートP1に電気的に接続され、他端部321bが出力ポートP2に電気的に接続されている。第2中心電極322はその一端部322aが出力ポートP2に電気的に接続され、他端部322bが第3ポートP3を介してアースに電気的に接続されている。整合用コンデンサ325と抵抗327からなる並列RC回路は、入力ポートP1と出力ポートP2の間に電気的に接続されている。整合用コンデンサ326は出力ポートP2と第3ポートP3の間に電気的に接続されている。
そして、第1中心電極321と整合用コンデンサ325にて、第1LC並列共振回路を構成し、第2中心電極322と整合用コンデンサ326にて、第2LC並列共振回路を構成している。この構成では、入力ポートP1から出力ポートP2に信号が伝搬する際、入力ポートP1と出力ポートP2の間の第1LC並列共振回路は共振することがなく、第2LC並列共振回路が共振しているだけなので、挿入損失を小さくできる。
ところが、図8に示す2ポート型アイソレータは、出力ポートP2とアースの間に挿入されている第2LC並列共振回路がローパスフィルタとして作用するのに対して、入力ポートP1と出力ポートP2の間に挿入されている第1LC並列共振回路はハイパスフィルタとして作用する。従って、移動体通信機器の使用周波数fの2倍波(2f)や3倍波(3f)での減衰量が悪くなるという問題点を有していた。
前記問題点に鑑みて、使用周波数fの2倍波(2f)や3倍波(3f)の伝搬を抑えることができる2ポート型アイソレータが特許文献2に開示されている。この2ポート型アイソレータは、電気等価回路を図9に示すように、出力ポートP2とアースの間に、整合用コンデンサ326とインダクタ328とで構成する直列共振回路を設けたものである。
即ち、コンデンサ326は第2中心電極322と並列に接続され、インダクタ328は第2中心電極322と直列に接続されている。第2中心電極322とコンデンサ326とインダクタ328とで構成されるトラップ回路によって減衰極が形成され、第1中心電極321を伝搬する使用周波数fの2倍波や3倍波が減衰する。
しかし、図9に示す2ポート型アイソレータにおいて、キャパシタンスC2とインダクタンスL2,L3で形成する共振回路は単峰性の共振を示し、トラップ回路の減衰極の電気特性も単峰性となる。従って、抑圧できる信号も原則的に一つの周波数帯となる。
2倍波、3倍波を同時に抑圧する方法として、特許文献2には、共振周波数を2倍波と3倍波の間に設定することが記載されている。しかしながら、2倍波、3倍波とも減衰極における抑圧量と比較すると相対的に小さな抑圧量しか達成できない。即ち、二つの周波数帯域のある程度離れた不要波を同時に効果的に取り除くことは困難であった。
特開平9−232818号公報 特開2004−88744号公報
そこで、本発明の目的は、使用周波数fの2倍波(2f)や3倍波(3f)の伝搬を同時に抑えることができる2ポート型アイソレータ及び通信装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係る2ポート型アイソレータは、
永久磁石と、
前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
前記フェライトの主面もしくは内部に配置され、一端が第1入出力ポートに電気的に接続され、他端が第2入出力ポートに電気的に接続された第1中心電極と、
前記第1中心電極と電気的絶縁状態で交差して前記フェライトの主面もしくは内部に配置され、一端が第2入出力ポートに電気的に接続され、他端が第3ポートに電気的に接続された第2中心電極と、
前記第1入出力ポートと前記第2入出力ポートの間に電気的に接続された第1コンデンサと、
前記第1入出力ポートと前記第2入出力ポートの間に電気的に接続された抵抗と、
前記第2入出力ポートと前記第3ポートとの間に電気的に接続された第2コンデンサと、
前記第3ポートに一端が電気的に接続された第1インダクタと、
前記第1インダクタの他端とアースの間に電気的に接続された第2インダクタと、
前記第1インダクタの他端とアースの間に電気的に接続された第3インダクタと第3コンデンサの直列回路と、
を備えたことを特徴とする。
本発明に係る2ポート型アイソレータにおいては、第2中心電極と第2コンデンサとで構成される共振回路の損失によって信号伝搬時の挿入損失が決定されるので、第2中心電極と第2コンデンサのQを高く設計することで挿入損失を小さくできる。
しかも、第2中心電極と第2コンデンサと第1及び第2インダクタとで構成される第1共振回路、第2中心電極と第2コンデンサと第1及び第3インダクタと第3コンデンサとで構成される第2共振回路、さらには、第2中心電極と第2コンデンサと第1、第2及び第3インダクタと第3コンデンサとで構成される第3共振回路によって、2倍波、3倍波の両周波数帯域を同時に減衰させることができ、高性能で信頼性の高い2ポート型アイソレータを得ることができる。
本発明に係る2ポート型アイソレータにおいて、前記第1共振回路の共振周波数は、使用周波数の1.5〜3.5倍の間に存在することが好ましい。また、前記第2共振回路の共振周波数は、使用周波数の2.5〜3.5倍の間に存在することが好ましい。さらに、前記第3共振回路の共振周波数は、使用周波数の1.5〜3.5倍の間に存在することが好ましい。
また、絶縁層を積み重ねて構成した積層基板に、第1、第2又は第3インダクタ又は第3コンデンサの少なくとも一つを設けてもよい。これらの回路素子のインダクタンスやキャパシタンスは比較的小さな値であるため、積層基板を大型化することはなく、しかも、部品のはんだ付け個所が減り、接続信頼性が向上する。
また、本発明に係る通信装置は前記2ポート型アイソレータを備えたものであり、挿入損失の減少による低消費電力化、低発熱化が達成でき、及び、高調波などの不要信号の輻射対策を別に低域通過フィルタなどを設けずに実現できるので、不要輻射防止、小型化、軽量化、低価格化、トータルとしての一層の挿入損失の減少が得られる。
以下、本発明に係る2ポート型アイソレータ及び通信装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(2ポート型アイソレータ、図1〜図3参照)
本発明に係る2ポート型アイソレータの一実施形態の分解斜視図を図1に示す。この2ポート型アイソレータ1は、集中定数型アイソレータであり、図1に示すように、概略、金属製上側ケース4と金属製下側ケース8とからなる金属ケースと、永久磁石9と、フェライト20と中心電極21,22とからなる中心電極組立体13と、積層基板30を備えている。
金属製上側ケース4は略箱形状であり、上面部4a及び四つの側面部4bからなる。金属製下側ケース8は、底面部8a及び左右の側面部8bからなる。金属製上側ケース4及び金属製下側ケース8は磁気回路を形成するため、例えば、軟鉄などの強磁性体からなる材料で形成され、その表面にAgやCuがめっきされている。
中心電極組立体13は、マイクロ波フェライト20の上面に第1中心電極21及び第2中心電極22を、絶縁層(図示せず)を介在させて70°から110°程度で略直交して交差するように配置している。本2ポート型アイソレータ1では、中心電極21,22を二つのラインで構成した。第1中心電極21と第2中心電極22のそれぞれの両端部21a,21b、22a,22bは、フェライト20の下面に延在し、それぞれの端部21a〜22bが相互に分離している。
中心電極21,22は銅箔を用いてフェライト20に巻きつけてもよいし、フェライト20上あるいは内部に銀ペーストを印刷、転写又はフォトリソグラフ法を利用して膜電極を形成してもよい。あるいは、前記特許文献1に記載のように積層基板で形成されていてもよい。但し、印刷したほうが中心電極21,22の位置精度が高いので、積層基板30との接続が安定する。特に、微小な中心電極用接続電極51〜54(後述)で接続する場合には、中心電極21,22を印刷形成したほうが信頼性、作業性がよい。
積層基板30は、図2に示すように、中心電極用接続電極51〜54を設けた誘電体シート41と、コンデンサ電極55,56や抵抗28を設けた誘電体シート42と、コンデンサ電極57,58を設けた誘電体シート43と、インダクタ電極71〜73及びコンデンサ電極59を設けた誘電体シート44と、アース電極75を設けた誘電体シート45と、側面ビアホール65を設けた短冊状の誘電体シート46と、入力外部電極14や出力外部電極15やアース外部電極16を設けた短冊状の誘電体シート47にて構成されている。
中心電極用接続電極51は入力ポートP1とされ、中心電極用接続電極53,54は出力ポートP2とされ、中心電極用接続電極52は第3ポートP3とされる。
この積層基板30は、以下のようにして作製される。即ち、誘電体シート41〜47は、Al23を主成分とし、SiO2,SrO,CaO,PbO,Na2O,K2O,MgO,BaO,CeO2,B23のうちの1種類あるいは複数種類を副成分として含む低温焼結誘電体材料にて作製する。シート41〜47の厚みは10〜200μm程度である。
電極14〜16,51〜59,71〜73,75は、パターン印刷などの方法によりシート41〜45,47上に形成される。これらの電極の材料としては、抵抗率が低く、誘電体シート41〜47と同時焼成可能なAg,Cu,Ag−Pdなどが用いられる。これらの電極の厚みは2〜20μm程度であり、通常は表皮厚の2倍以上に設定される。
抵抗28は、パターン印刷等の方法により誘電体シート42上に形成される。抵抗28の材料としては、サーメット、カーボン、ルテニウムなどが使用される。抵抗28は積層基板30の上面に印刷で形成してもよいし、チップ抵抗で形成してもよい。
ビアホール60や側面ビアホール65は、誘電体シート41〜46にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成した後、そのビアホール用孔に導電ペーストを充填することにより形成される。
中心電極用接続電極51〜54は、積層基板30の4辺のそれぞれの中央部近傍に配置されている。また、入力外部電極14及び出力外部電極15も積層基板30の対向する2辺の中央部に配置されている。
コンデンサ電極57は、誘電体シート42を間に挟んでコンデンサ電極55に対向して第1整合用コンデンサ25を構成する。コンデンサ電極58は、誘電体シート42を間に挟んでコンデンサ電極56に対向して第2整合用コンデンサ26を構成する。コンデンサ電極59は、誘電体シート44を間に挟んでアース電極75と対向して第3整合用コンデンサ27を構成する。
これらのコンデンサ25〜27、抵抗28及びインダクタ電極71〜73は、電極51〜54や外部電極14〜16やビアホール60や側面ビアホール65とともに、積層基板30の内部に電気回路を構成する。
以上の誘電体シート41〜47は積層され、さらに、焼成される。これにより、焼結体である積層基板30が得られる。
積層基板30の両端部には、それぞれ入力外部電極14、出力外部電極15及びアース外部電極16が設けられている。入力外部電極14はコンデンサ電極55に電気的に接続され、出力外部電極15はコンデンサ電極56に電気的に接続されている。アース外部電極16は、インダクタ電極72及びアース電極75のそれぞれの端部に電気的に接続されている。
電極51〜54,14〜16には、Niめっきを下地としてAuめっきが施される。Niめっきは、電極のAgとAuめっきの固着強度を強くする。また、電極のAgがアイソレータの部品間やアイソレータを通信機に実装するはんだ中に拡散・溶融することを防止する障壁として働く。また、Auめっき時にAgがめっき液を劣化させることを防止する。Auめっきは、はんだ濡れ性をよくするとともに、導電率が高いのでアイソレータ1を低損失にできる。また、Niめっき膜の参加を防止してはんだ付けの信頼性を向上させる。
なお、この積層基板30は、通常、マザーボード状態で作製される。このマザーボードに所定のピッチでハーフカット溝を形成し、ハーフカット溝に沿って折ることにより、マザーボードから所望のサイズの積層基板30を得る。あるいは、マザーボードをダイサーやレーザなどで切断することにより、所望のサイズの積層基板30を切り出してもよい。または、先に積層基板30を個片にカットし、その後で焼成して作製することもできる。
こうして得られた積層基板30は、内部に整合用コンデンサ25〜27、抵抗28及びインダクタ電極71〜73を有している。整合用コンデンサ25〜27は必要な静電容量値精度で作製される。しかし、トリミングをする場合には、整合用コンデンサ25,26と中心電極21,22を接続する前に行われる。つまり、積層基板30は、単体の状態で、内部(2層目)のコンデンサ電極55,56の一部である適切な範囲を表層の誘電体シート41とともにトリミング(切除・削除)される。トリミングには、例えば、切削機やYAGの基本波、2倍波、3倍波のレーザが用いられる。レーザを用いれば、早くかつ精度のよい加工が得られる。なお、トリミングは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率よく行ってもよい。
また、積層基板30には抵抗28も内蔵されており、整合用コンデンサ25,26と同様に抵抗28も、表層の誘電体シート41とともにトリミングすることにより、抵抗値Rを調整することができる。抵抗28は1箇所でも幅が細くなると抵抗値Rが上がるので、幅方向の途中まで削る。
以上の構成部品は以下のようにして組み立てられる。即ち、図1に示すように、永久磁石9は金属製上側ケース4の天井に接着剤によって固定される。中心電極組立体13の中心電極21,22の各端部21a〜22bが積層基板30の表面に形成された中心電極用接続電極51〜54にはんだにて電気的に接続されることにより、積層基板30上に中心電極組立体13が実装される。なお、中心電極21,22と中心電極用接続電極51〜54のはんだ付けは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率よく行ってもよい。
積層基板30は金属製下側ケース8の底面部8a上に載置され、積層基板30の下面に接着剤又ははんだ付けによって底面部8aと接合固定される。アース外部電極16は金属製下側ケース8と電気的に接続される。積層基板30とケース8をはんだ付けで接合する場合は、積層基板30の底面にアース電極を設けて、側面電極(ビアホール65)を経由してアース電極75と接続する。
そして、金属製下側ケース8と金属製上側ケース4は、それぞれの側面部8bと4bをはんだ等で接合することにより金属ケースを構成し、ヨークとしても機能する。つまり、この金属ケースは、永久磁石9と中心電極組立体13と積層基板30を囲む磁路を形成する。また、永久磁石9はフェライト20に直流磁界を印加する。
こうして、図3に示す電気等価回路を備えた2ポート型アイソレータ1が得られる。インダクタンス(L1)を有する第1中心電極21の一端部21aは、入力ポートP1(中心電極用接続電極51)を介して入力外部電極14に電気的に接続されている。第1中心電極21の他端部21bは、出力ポートP2(中心電極用接続電極54)を介して出力外部電極15に電気的に接続されている。
インダクタンス(L2)を有する第2中心電極22の一端部22aは、出力ポートP2(中心電極用接続電極53)を介して出力外部電極15に電気的に接続されている。第2中心電極22の他端部22bは、第3ポートP3(中心電極用接続電極52)を介してインダクタンス(L3)を有するインダクタ電極71の一端部に電気的に接続されている。
キャパシタンス(C1)を有する第1整合用コンデンサ25と抵抗28からなる並列RC回路は、入力ポートP1と出力ポートP2の間に電気的に接続されている。キャパシタンス(C2)を有する第2整合用コンデンサ26は第2中心電極22と並列に接続されている。前記インダクタ電極71の他端部はインダクタンス(L4),(L5)をそれぞれ有するインダクタ電極72,73の一端部に電気的に接続されている。前記インダクタ電極72の他端部はアース外部電極16に電気的に接続されている。
キャパシタンス(C3)を有する第3整合用コンデンサ27はインダクタ電極73の他端部とアース外部電極16の間に電気的に接続されている。
なお、第3整合用コンデンサ27とインダクタ電極73の挿入位置は入れ替えてもよい。即ち、インダクタ電極73をアース側に接続し、第3整合用コンデンサ27をインダクタ電極71の他端部に接続してもよい。
また、前記インダクタ電極71〜73で構成されるインダクタやコンデンサ26,27は積層基板30に外付けする単体部品として構成されていてもよい。
以上の構成からなる2ポート型アイソレータ1においては、第2中心電極22と第2整合用コンデンサ26とで直列共振回路を構成し、入力ポートP1から出力ポートP2へ伝搬される信号の挿入損失が小さくなる。即ち、信号線路に直列に回路が接続されていないため、Q値が低い回路素子であっても挿入損失が増加しないのである。また、この直列共振回路にはトラップ回路素子が挿入されていないため、挿入損失が増加しない。
一方、第2中心電極22、第2整合用コンデンサ26及びインダクタ71,72で構成される第1共振回路はその共振周波数を2倍波付近に合わせられ、2倍波帯域をトラップする。第2中心電極22、第2整合用コンデンサ26、インダクタ71,73及び第3整合用コンデンサ27で構成される第2共振回路はその共振周波数を3倍波付近に合わせられ、3倍波帯域をトラップする。第2中心電極22、第2整合用コンデンサ26、インダクタ71,72,73及び第3整合用コンデンサ27で構成される第3共振回路はその共振周波数を2倍波と3倍波の間に合わせられている。
ここで、前記第1〜第3共振回路の共振条件を以下に示す。
共振回路の共振周波数f0は、以下の式(1)の関係が成り立っており、2倍波(2f)付近あるいは2倍波(2f)と3倍波(3f)との間に設定する。
Figure 0004239916
第2共振回路の共振周波数f0は、3倍波(3f)付近に設定する。
共振回路の共振周波数f0は、以下の式(2)の関係が成り立っており、2倍波(2f)と3倍波(3f)との間に設定する。
Figure 0004239916
なお、926MHzの高調波を抑圧する場合、第1共振回路の共振周波数は2倍波より高い周波数2.1GHz付近に合わせる。また、第3共振回路の共振周波数を2倍波寄りに設定するか3倍波寄りに設定するかで、それぞれの帯域における抑圧量を調整できる。例えば、2倍波を重点的に抑圧する場合には、第3共振回路の共振周波数を3倍波寄りに設定する。
ここで、以下の表1〜4に、図8に示した従来例1、図4、図5に示す比較例1,2及び図3に示す本発明例における回路素子定数と電気的特性の関係を示す。
なお、比較例1(図4参照)は、入力ポートP1と出力ポートP2との間に、並列共振回路(C4,L6及びC5,L7)を直列に接続したもので、共振周波数はトラップすべき周波数に合わされている。比較例2(図5参照)は、入力ポートP1と出力ポートP2との間に、直列共振回路(C6,L8及びC7,L9)を並列に接続したもので、共振周波数はトラップすべき周波数に合わされている。
従来例1、比較例1,2及び本発明例における電気的特性は、使用周波数帯域内(893〜960MHz)での最悪値と、2倍波(1786〜1920MHz)、3倍波(2679〜2880MHz)の抑圧量を示している。ここで、それぞれのインダクタやコンデンサのQ値を誘電体基板内に形成されたと想定し、使用周波数帯域でQL=10、QC=200としている。
Figure 0004239916
Figure 0004239916
Figure 0004239916
Figure 0004239916
表1に示した従来例1では、高調波が抑圧できていない。表2,3に示した比較例1,2では、高調波は抑圧できているものの、挿入損失の劣化が著しい。表4に示した本発明例では、若干アイソレーションが劣化しているが、実用上支障のないレベルであり、高調波は十分に抑圧されており、挿入損失の劣化も生じていない。
即ち、本発明例における回路素子定数は、L3=0.24nH、L4=0.16nH、L5=0.38nH、C3=8.0pFであり、比較的小さな回路素子定数で実現可能である。そして、インダクタンスL3〜L5の値が小さいので、インダクタのサイズが小さくて済む。概ね、0.5nH以下であれば、これらの回路を誘電体基板内に電極パターンで形成する際に、配線部分が等価的に含むインダクタンスとして特別なスペースを要することなく実現することができ、小型化の点で有利である。
また、本発明例では、高調波抑圧用に追加したインダクタ71,72,73やコンデンサ27のQ値が挿入損失に影響しないため、これらの回路素子を誘電体基板内に形成する場合の設計の自由度が高くなる。例えば、コンデンサはキャパシタンスが大きいほど電極形状が大きくなるので、インダクタンスを大きめに設定してコンデンサを小さくする、といった設計が可能になる。
また、本発明に係る2ポート型アイソレータとしては、図6にその電気等価回路図として示すように、キャパシタンス(C11),(C12)を有するコンデンサ39A,39Bをそれぞれ入出力部に直列に接続したものであってもよい。コンデンサ39A,39Bの挿入によって中心電極21,22部分の特性インピーダンスを、前後の回路の特性インピーダンスに整合させることが容易になる。
図6に示した等価回路においては、インダクタンス(L2)の値を図3に示した等価回路のインダクタンス(L2)の値より大きくすることで、アイソレーション特性の帯域幅を広くしている。例えば、L2=2.1nH、C2=7.0pFとする。そのとき、C11=5.0pF、C12=5.0pFとすると、特性インピーダンスを50Ωに整合させることができる。C2の値が小さくなることで、2倍波、3倍波などの高調波を減衰させる能力が低下するが、インダクタ71〜73、コンデンサ26,27などの高調波減衰回路と組み合わせた回路として構成されているため、アイソレーション特性が広帯域でかつ2倍波、3倍波の高調波も十分減衰させることができる。
(通信装置、図7参照)
次に、本発明に係る通信装置として、携帯電話を例にして説明する。
図7は携帯電話220のRF部分の電気回路ブロック図である。図7において、222はアンテナ素子、223はデュプレクサ、231は送信側アイソレータ、232は送信側増幅器、233は送信側段間用帯域通過フィルタ、234は送信側ミキサ、235は受信側増幅器、236は受信側段間用帯域通過フィルタ、237は受信側ミキサ、238は電圧制御発振器(VCO)、239はローカル用帯域通過フィルタである。
ここに、送信側アイソレータ231として、前記2ポート型アイソレータ1を使用することができる。アイソレータ1を実装することにより、挿入損失の減少による低消費電力化、低発熱化が達成でき、及び、高調波などの不要信号の輻射対策を別に低域通過フィルタなどを設けずに実現できるので、不要輻射防止、小型化、軽量化、低価格化、トータルとしての一層の挿入損失の減少が得られる携帯電話を実現することができる。
(他の実施形態)
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
例えば、永久磁石9のN極とS極を反転させれば、入力ポートP1と出力ポートP2が入れ替わる。
本発明に係る2ポート型アイソレータの一実施形態を示す分解斜視図である。 前記2ポート型アイソレータを構成する積層基板の分解斜視図である。 前記2ポート型アイソレータの電気等価回路図である。 比較例1の電気等価回路図である。 比較例2の電気等価回路図である。 本発明に係る2ポート型アイソレータの他の実施形態の電気等価回路図である。 本発明に係る通信装置の電気回路を示すブロック図である。 従来例1の電気等価回路図である。 従来例2の電気等価回路図である。
符号の説明
1…2ポート型アイソレータ
9…永久磁石
13…中心電極組立体
20…フェライト
21…第1中心電極
22…第2中心電極
25〜27…整合用コンデンサ
28…抵抗
30…積層基板
71〜73…インダクタ電極
220…携帯電話
P1…入力ポート(第1入出力ポート)
P2…出力ポート(第2入出力ポート)
P3…アースポート(第3ポート)

Claims (6)

  1. 永久磁石と、
    前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
    前記フェライトの主面もしくは内部に配置され、一端が第1入出力ポートに電気的に接続され、他端が第2入出力ポートに電気的に接続された第1中心電極と、
    前記第1中心電極と電気的絶縁状態で交差して前記フェライトの主面もしくは内部に配置され、一端が第2入出力ポートに電気的に接続され、他端が第3ポートに電気的に接続された第2中心電極と、
    前記第1入出力ポートと前記第2入出力ポートの間に電気的に接続された第1コンデンサと、
    前記第1入出力ポートと前記第2入出力ポートの間に電気的に接続された抵抗と、
    前記第2入出力ポートと前記第3ポートとの間に電気的に接続された第2コンデンサと、
    前記第3ポートに一端が電気的に接続された第1インダクタと、
    前記第1インダクタの他端とアースの間に電気的に接続された第2インダクタと、
    前記第1インダクタの他端とアースの間に電気的に接続された第3インダクタと第3コンデンサの直列回路と、
    を備えたことを特徴とする2ポート型アイソレータ。
  2. 前記第2中心電極と前記第2コンデンサと前記第1及び第2インダクタとで構成される回路の共振周波数が、使用周波数の1.5〜3.5倍の間に存在することを特徴とする請求項1に記載の2ポート型アイソレータ。
  3. 前記第2中心電極と前記第2コンデンサと前記第1及び第3インダクタと前記第3コンデンサとで構成される回路の共振周波数が、使用周波数の2.5〜3.5倍の間に存在することを特徴とする請求項1に記載の2ポート型アイソレータ。
  4. 前記第2中心電極と前記第2コンデンサと前記第1、第2及び第3インダクタと前記第3コンデンサとで構成される回路の共振周波数が、使用周波数の1.5〜3.5倍の間に存在することを特徴とする請求項1に記載の2ポート型アイソレータ。
  5. 絶縁層を積み重ねて構成した積層基板に、前記第1、第2又は第3インダクタ又は前記第3コンデンサの少なくとも一つを設けたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の2ポート型アイソレータ。
  6. 請求項1、請求項2,請求項3,請求項4又は請求項5に記載の2ポート型アイソレータを備えたことを特徴とする通信装置。
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