JP3829806B2 - 積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子および通信装置 - Google Patents

積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子および通信装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子および通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、サーキュレータやアイソレータなどの非可逆回路素子は、予め定められた特定方向にのみ電力を伝送し、逆方向には伝送しない特性を有している。この特性を利用して、例えばアイソレータは、自動車電話、携帯電話等の移動体通信機器の送信回路部に使用されている。
【0003】
そして、この種の非可逆回路素子として、例えば、特許文献1記載のように、積層基板の表面に形成した整合用コンデンサのコンデンサ電極をトリミングして所望の電気特性を得るものが知られている。この非可逆回路素子は、整合用コンデンサと中心電極を接続した後に整合用コンデンサをトリミングする。従って、コンデンサ電極が中心電極によって覆われているため、トリミング可能なコンデンサ電極面積が減少し、電気特性の調整幅が小さくなる。特に近年、移動体通信機器に用いられる非可逆回路素子は小型化が進み、整合用コンデンサの電極面積自体も小さくなっているので、トリミング可能面積が小さくなるのは非常に問題である。さらに、組立後に電気特性の調整をするため、トリミング調整を失敗したものは積層基板だけでなく、フェライトや中心電極などの他の部品も無駄となるので、コストアップになる。
【0004】
そこで、この問題を解消するため、図19に示す整合用コンデンサC1〜C3を設けた積層基板330と、この積層基板330上に実装される中心電極を設けたフェライトと、永久磁石と、これらの部品を覆う金属ケースとで構成された非可逆回路素子(アイソレータ)が提案されている。この非可逆回路素子は、整合用コンデンサC1〜C3と中心電極を接続する前に整合用コンデンサC1〜C3をトリミングする。
【0005】
すなわち、積層基板330は、図20に示すように、ホット側コンデンサ電極371a〜373aやグランド用接続電極331や回路用電極317や抵抗体375やビアホール318を表面に設けた誘電体シート342と、ホット側コンデンサ電極371b〜373bを表面に設けた誘電体シート344と、グランド電極374をそれぞれ表面に設けた誘電体シート343,345などにて構成されている。また、誘電体シート345の裏面にも金属ケースとはんだ付けするためのグランド電極が形成されている。そして、この積層基板330は、単体の状態で、表面に設けたコンデンサ電極371a,372a,373aにトリミング溝380を形成することにより、コンデンサ電極371a〜373aを分断するようなトリミングが行なわれる。従って、特許文献1記載の非可逆回路素子が有する問題を解消することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−289402号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図19に示す積層基板330を備えた非可逆回路素子は、トリミング用コンデンサ電極371a〜373aをトリミングした後に、これらトリミング用コンデンサ電極371a〜373aにそれぞれ中心電極をはんだペーストや導電ペーストなどの接続材料を用いて電気的に接続する。従って、トリミング溝380の一部がこれら接続材料によって埋まり、分断されたトリミング用コンデンサ電極371a〜373aが再び接続されるという問題がある。特に、レーザでトリミング用コンデンサ電極371a〜373aを分断するようなトリミングをした場合、トリミング溝380の溝幅は10μm〜100μmと狭く、ショートする可能性が高い。分断された不要な部分の電極を全て削除してショートを防止することもできるが、この場合、トリミング時間が長くなる。
【0008】
また、ホット側コンデンサ電極371a〜373aとグランド用接続電極331が近接しており、トリミング溝380以外のところでもショートする可能性が高い。
【0009】
そこで、本発明の目的は、高性能で信頼性が高くかつ小型の積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子および通信装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る積層基板は、
(a)複数の誘電体層を積み重ねて構成した積層体と、
(b)前記積層体の表面に設けられた、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極と、
(c)前記積層体の内部に設けられた複数のコンデンサ電極とを備え、
(d)前記複数のコンデンサ電極が前記誘電体層を間に介して対向することによりコンデンサを形成し、該コンデンサが前記中心電極用接続電極に電気的に接続し、前記複数のコンデンサ電極のうち少なくとも一つのコンデンサ電極がトリミングされていること、
を特徴とする。積層体には終端抵抗が内蔵され、その終端抵抗はトリミングされていてもよい。
【0011】
また、本発明に係る積層基板の製造方法は、
(e)複数の誘電体層と複数のコンデンサ電極と非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極とを積み重ねて、前記中心電極用接続電極を表面に設けるとともに前記複数のコンデンサ電極を内部に設けた積層体を構成する工程と、
(f)前記複数のコンデンサ電極のうち少なくとも一つのコンデンサ電極を、表層の誘電体とともにトリミングする工程と、
を備えたことを特徴とする。トリミングは、例えばレーザで行なわれる。
【0012】
以上の構成により、トリミングされるコンデンサ電極を積層体の内部に設けたため、トリミング可能なコンデンサ電極面積が大きくなり、静電容量調整範囲が広がる。さらに、積層基板の表面には、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するため中心電極用接続電極などの必要最低限の電極しか形成されておらず、はんだ等の導電材料が拡がらない構造になっている。従って、トリミング溝にはんだ等の導電材料が流れ込んで、分断されたトリミング用コンデンサ電極が再び接続されるという不具合を防止できる。
【0013】
また、トリミングされているコンデンサ電極が、複数のコンデンサ電極のうち最も外側の層に位置するコンデンサ電極であることが好ましい。これにより、トリミング時に削除する誘電体層の厚みを最小限にできる。このとき、トリミングされているコンデンサ電極は、コンデンサのホット側コンデンサ電極であってもよい。さらに、トリミングされるコンデンサ電極を矩形にすることにより、電極幅を一定にし、静電容量の調整を容易にしてもよい。
【0014】
また、積層体の積み重ね方向において、トリミングされるコンデンサ電極を、中心電極用接続電極にのみ重なるようにすることにより、トリミングの妨げとなる電極がトリミングされるコンデンサ電極とできるだけ重ならないようにすることができる。
【0015】
さらに、コンデンサが入力側整合用コンデンサ、出力側整合用コンデンサおよび終端抵抗側整合用コンデンサであり、終端抵抗側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が積層体の終端抵抗側に配置され、入力側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が積層体の入力側に配置され、出力側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が積層体の出力側に配設されていることを特徴とする。以上の構成により、トリミングの調整が容易で、かつ、基板面積を有効利用したコンデンサが得られる。
【0016】
また、画像処理による位置補正のための認識マークを、トリミングを行う側の積層基板表面に設けたり、トリミングされるコンデンサ電極と同じ層に設けたりすることにより、トリミング時の積層基板の位置補正が可能になる。従って、トリミングが正確に行われ、コンデンサの静電容量のばらつきが小さくなる。このとき、認識マークは少なくとも対角の2箇所に設けられていることが好ましい。また、認識マークの大きさは1箇所当たり1mm以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る非可逆回路素子や通信装置は、上述の積層基板を備えることにより、性能や信頼性が向上する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子および通信装置の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0019】
[第1実施形態、図1〜図7]
本発明に係る非可逆回路素子の一実施形態の分解斜視図を図1に示す。該非可逆回路素子1は、集中定数型アイソレータである。図1に示すように、集中定数型アイソレータ1は、概略、金属製上側ケース4と金属製下側ケース8とからなる金属ケースと、永久磁石9と、フェライト20と中心電極21〜23とからなる中心電極組立体13と、積層基板30を備えている。
【0020】
金属製上側ケース4は略箱形状であり、上部4aおよび四つの側部4bからなる。金属製下側ケース8は、左右の側部8bと底部8aからなる。金属製上側ケース4および金属製下側ケース8は磁気回路を形成するため、例えば、軟鉄などの強磁性体からなる材料で形成され、その表面にAgやCuがめっきされる。
【0021】
中心電極組立体13は、矩形状のマイクロ波フェライト20の上面に三つの中心電極21〜23を、絶縁層(図示せず)を介在させて略120度ごとに交差するように配置している。本第1実施形態では、中心電極21〜23は二つのラインで構成した。中心電極21〜23は銅箔を用いてフェライト20に巻きつけてもよいし、フェライト20上あるいは内部に銀ペーストを印刷して形成してもよい。ただし、印刷した方が中心電極21〜23の位置精度が高いので、積層基板30との接続が安定する。特に、今回のように微小な中心電極用接続電極P1〜P3(後述)で接続する場合には、中心電極21〜23を印刷形成した方が信頼性、作業性が良い。
【0022】
積層基板30は、図2に示すように、中心電極用接続電極P1〜P3やグランド用接続電極31やビアホール18を設けた誘電体シート41と、ホット側コンデンサ電極71a〜73aや回路用電極17や抵抗体75などを表面に設けた誘電体シート42と、ホット側コンデンサ電極71b〜73bを表面に設けた誘電体シート44と、グランド電極74をそれぞれ表面に設けた誘電体シート43,45などにて構成されている。また、誘電体シート45の裏面にも下側ケース8とはんだ付けするためのグランド電極が形成されている。
【0023】
電極P1〜P3,17,31,71a〜73a,71b〜73b,74は、パターン印刷等の方法により誘電体シート41〜45に形成されている。電極P1〜P3等の材料としては、抵抗率が低く、誘電体シート41〜45と同時焼成可能なAg,Cu,Ag−Pdなどが用いられる。この電極P1〜P3等の表面には、Niめっきを下地としてAuめっきが施されている。Niめっきは、電極P1〜P3等のAgとAuめっきの固着強度を強くする。Auめっきは、はんだ濡れ性を良くするとともに、導電率が高いのでアイソレータ1を低損失にできる。
【0024】
電極P1〜P3等の厚みは2μm〜20μm程度である。誘電体シート41〜45の材料は、Al23を主成分とし、SiO2、SrO、CaO、PbO、Na2O、K2O、MgO,BaO,CeO,Bのうちの1種類あるいは複数種類を副成分として含む低温焼結誘電体材料である。誘電体シート41〜45のシート厚みは10μm〜200μm程度である。
【0025】
抵抗体75は、パターン印刷等の方法により誘電体シート42の表面に形成されている。抵抗体75の材料としては、サーメット、カーボン、ルテニウムなどが使用される。抵抗体75は単独で終端抵抗Rを構成する。
【0026】
ビアホール18は、誘電体シート41〜43にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成した後、そのビアホール用孔に導電ペーストを充填することにより形成される。
【0027】
コンデンサ電極71a,71b、72a,72b、73a,73bはそれぞれ、誘電体シート42〜44を間に挟んでグランド電極74に対向して整合用コンデンサC1,C2,C3を構成する。これら整合用コンデンサC1〜C3や終端抵抗Rは、電極P1〜P3,17,31やビアホール18とともに、積層基板30の内部に電気回路を構成する。
【0028】
以上の誘電体シート41〜45は積層され、さらに、予め表面に電極が形成されていないダミー用誘電体シート47が複数枚その下に積層された後、一体的に焼成され、図1に示すような積層基板30とされる。積層基板30の両端部には、それぞれ入力端子電極14、出力端子電極15およびグランド端子電極16が設けられる。入力端子電極14はコンデンサ電極71a,71bに電気的に接続され、出力端子電極15はコンデンサ電極72a,72bに電気的に接続されている。グランド端子電極16はそれぞれ、回路用電極17やグランド電極74に電気的に接続されている。これらの端子電極14〜16は、Ag,Ag−Pd,Cu等の導電ペーストを塗布後、焼付けたり、乾式めっきしたりすることによって形成される。また、各シートの側面にビアホールを形成することにより電極14〜16としてもよい。
【0029】
なお、この積層基板30は通常マザーボード状態で作成され(図5、図6参照)、このマザーボード100に所定のピッチで形成されたハーフカット溝101に沿って折ることにより、マザーボード100から所望のサイズの積層基板30を得る。あるいは、マザーボード100をダイサーやレーザなどで切断することにより、マザーボード100から所望のサイズの積層基板30を切り出してもよい。
【0030】
こうして得られた積層基板30は、内部に整合用コンデンサC1〜C3および終端抵抗Rを有している。整合用コンデンサC1〜C3のトリミングは、整合用コンデンサC1〜C3と中心電極21〜23を接続する前に行なわれる。
【0031】
つまり、積層基板30は、単体の状態で、内部(2層目)のコンデンサ電極71a,72a,73aを表層の誘電体とともにトリミング(削除)される。トリミングには、例えば、切削機やYAGの基本波、2倍波、3倍波のレーザが用いられる。レーザを用いれば、早くかつ精度の良い加工が得られる。なお、トリミングは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率良く行ってもよい。
【0032】
トリミング可能なコンデンサ電極領域は、図3において斜線で表示しているように、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aのうち、中心電極用接続電極P1〜P3の部分と、中心電極用接続電極P1〜P3と端子電極14〜16を繋ぐ部分とを除いた残りの部分である。トリミング用コンデンサ電極71a〜73aを積層基板30の内部に設けているため、トリミング可能なコンデンサ電極領域が大きくなり、静電容量調整範囲が拡がり、積層基板30の良品率を向上することができる。
【0033】
さらに、積層基板30の表面には、必要最低限の接続電極P1〜P3,31しか形成されておらず、はんだ等の導電材料が拡がらない構造になっている。従って、トリミング溝80(図4参照)に導電材料が流れ込んで、分断されたトリミング用コンデンサ電極が再び接続されるという不具合を防止できる。そして、接続電極P1〜P3,31相互間の距離を長くできるので、中心電極組立体13のサイズを大きくできる。従って、中心電極21〜23が形成するインダクタンスが大きくなるため、アイソレータ1の通過帯域幅を広くでき、電気特性を向上させることができる。
【0034】
また、コンデンサ電極71a〜73bのうち最も外側の層に位置するコンデンサ電極71a〜73aをトリミング用コンデンサ電極としているので、トリミング時に除去する誘電体層の厚みを最小限にできる。さらに、トリミングの障害となる電極が少なくなるので(本第1実施形態の場合は接続電極P1〜P3,31のみ)、トリミング可能なコンデンサ電極領域が広くなり、静電容量調整範囲を広くできる。
【0035】
さらに、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aを矩形にすることにより、電極幅を一定にしているので、トリミング溝80の位置と得られる静電容量の値との間に略比例関係が成立し、静電容量の調整作業が容易になる。
【0036】
また、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aは、誘電体シート41〜45の積み重ね方向において、中心電極用接続電極P1〜P3にのみ重なっている。これにより、トリミングの妨げとなる他の電極が、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aと重ならないようにすることができる。また、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aがグランド用接続電極31と重なると、その部分で静電容量を形成するので、トリミング精度が悪くなるという不具合もある。
【0037】
さらに、図4において積層基板30は、下側に整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bを設け、左上側に整合用コンデンサC1のホット側コンデンサ電極71a,71bを設け、右上側に整合用コンデンサC2のホット側コンデンサ電極72a,72bを設けている。言い換えると、終端抵抗側整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bは、積層基板30の終端抵抗Rが配置されている側に配置され、入力側整合用コンデンサC1のホット側コンデンサ電極71a,71bは、積層基板30の入力側に配置され、出力側整合用コンデンサC2のホット側コンデンサ電極72a,72bは、積層基板30の出力側に配置されることになる。これにより、トリミングの調整が容易で、かつ、積層基板30の面積を有効利用した整合用コンデンサC1〜C3を得ることができる。
【0038】
また、一般に、移動体通信機器に使用されるアイソレータは、入出力側整合用コンデンサC1,C2の静電容量と比較して、抵抗側整合用コンデンサC3の静電容量が大きくなることが多い。従って、抵抗側整合用コンデンサC3の静電容量を確保するため、整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bの面積が、整合用コンデンサC1〜C3のトータルのホット側コンデンサ電極の面積の1/3以上になるように設定する必要がある。
【0039】
また、積層基板30には終端抵抗Rも内蔵されており、整合用コンデンサC1〜C3と同様に終端抵抗Rも、表層の誘電体とともにトリミングすることにより、抵抗値を調整することができる。抵抗体75は1箇所でも幅が細くなると抵抗値が上がるので、幅方向の途中まで削る。終端抵抗Rは積層基板30に内蔵されているため、電極P1〜P3等の表面にNiめっきやAuめっきを施す際に、抵抗体75の表面にNiめっき等が施される心配がなく、終端抵抗Rの抵抗値が下がることはない。図4に示すように、本第1実施形態では、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aをそれぞれ分断する3本のトリミング溝80と、抵抗体75に切れ込みを入れる1本のトリミング溝81とを積層基板30に形成している。
【0040】
以上の構成部品は以下のようにして組み立てられる。すなわち、図1に示すように、永久磁石9は金属製上側ケース4の天井に接着剤によって固定される。積層基板30上には、中心電極組立体13が、中心電極組立体13の中心電極21〜23の各々の一端が積層基板30の表面に形成された中心電極用接続電極P1〜P3にはんだ付けされ、かつ、中心電極21〜23の各々の他端がグランド用接続電極31にはんだ付けされることにより、実装される。接続電極P1〜P3,31は狭面積であるため、はんだ溶融時のセルフアライメント効果により、中心電極組立体13を位置決めすることができる。
【0041】
また、中心電極21〜23の両端部は、フェライト20の底面に必要最低限の延在部しか有していないので、積層基板30の上面のトリミング溝80,81を中心電極21〜23が横断しない。従って、フェライト20の底面の中心電極21〜23を介して、はんだがトリミング溝80,81に流れ込むことが防止され、信頼性の優れたものとなる。なお、中心電極21〜23と接続電極P1〜P3,31とのはんだ付けは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率良く行なってもよい。
【0042】
積層基板30は金属製下側ケース8の底部8a上に載置され、シート47の裏面に設けた電極がはんだによって底部8aと接続固定されることにより、グランド端子電極16が底部8aに電気的に接続される。これにより、アースを十分にとることができるので、アイソレータ1の電気特性を向上させることができる。
【0043】
そして、金属製下側ケース8の側部8bと金属製上側ケース4の側部4bをはんだ等で接合することにより金属ケースとなり、ヨークとしても機能する。つまり、この金属ケースは、永久磁石9と中心電極組立体13と積層基板30を囲む磁路を形成する。また、永久磁石9はフェライト20に直流磁界を印加する。
【0044】
図7はアイソレータ1の電気等価回路図である。整合用コンデンサC3と終端抵抗Rは、中心電極用接続電極P3とグランド端子電極16の間に並列接続されている。
【0045】
[第2実施形態、図8および図9]
図8は、積層基板の別の実施形態を示す分解斜視図である。この積層基板30Aは、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aを端子14〜16に接続する際、ビアホール18やコンデンサ電極71b〜73bや抵抗体75や回路用電極17を介して接続している。
【0046】
この積層基板30Aのトリミング可能なコンデンサ電極領域は、図9において斜線で表示しているように、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aのうち、中心電極用接続電極P1〜P3の部分を除いた残りの部分である。従って、前記第1実施形態の積層基板30と同様の作用効果を奏するとともに、積層基板30よりトリミング可能なコンデンサ電極領域が大きくなり、静電容量調整範囲が広がり、更に良品率が向上する。
【0047】
[第3実施形態、図10および図11]
図10は積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図である。この積層基板30Bは、トリミング用電極を誘電体シート42上に形成したグランド電極(コールド側コンデンサ電極)74としたものである。この積層基板30Bのトリミング可能なコンデンサ電極領域は、グランド電極74のうち、図11において斜線で表示している接続電極P1〜P3,31を除いた、残りの部分である。図11に示すように、グランド電極74に形成されるトリミング溝80は複雑な形状となる。
【0048】
なお、図10においては図示されていないが、積層基板30Bの最下層には図2に示したシート47が積層されている。
【0049】
[第4実施形態、図12および図13]
図12は積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図である。この積層基板30Cは、表面に形成されたグランド用接続電極31が一つのものである。一方、この積層基板30Cに実装される中心電極組立体13のフェライト20の底面には、図13に示すように、各中心電極21〜23のグランド側が中央部Gで連結している。この中心電極組立体13は中心電極21〜23を長くできるため、中心電極21〜23のインダクタンスを大きくできる。従って、アイソレーションや挿入損失などの特性を広帯域にできる。また、積層基板30Cに形成するビアホール18の数を削減することができ、製造コストを低減することができる。
【0050】
[第5実施形態、図14〜図16]
図14は積層基板のさらに別の実施形態を示す斜視図である。この積層基板30Dは、前記第1実施形態の積層基板30において、画像処理による位置補正のための認識マーク120を、トリミングを行う側の表面に設けたものである。本第5実施形態では、認識マーク120を積層基板30Dの対角に2箇所設けることにより、位置補正の精度を高くしている。
【0051】
また、認識マーク120の大きさは1箇所当たり1mm2以下に設定するのが好ましい。アイソレータのサイズは小さく、積層基板30Dの中に認識マーク120を設けることができるスペースは限られたものとなる。認識マーク120の大きさを1mm2以下にすることで、接続電極P1〜P3,31に重ならないようにすることができる。アイソレータのサイズが4mm角のときには、例えば認識マーク120はφ0.4mmの円(面積:0.126mm2)とされる。
【0052】
積層基板30Dをトリミングする際には、図15に示すように、レーザトリミング装置のテーブル140上にセットされた積層基板30Dの2箇所の認識マーク120をCCDカメラなどで撮像し、その位置を確認する。次に、周知の画像処理法によって、CCDカメラで確認した認識マーク120の位置データに基づいて、積層基板30Dの位置補正を行う。すなわち、図16に示すように、積層基板30Dが載っているテーブル140を、X方向もしくはY方向へ平行移動させたり、回転移動させたりしながら、レーザトリミングの加工基準点130の位置へ微小移動させる。
【0053】
位置補正が終了すると、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aのトリミングが開始される。位置補正により、積層基板30Dの位置のばらつきが小さいため、トリミング後のコンデンサC1〜C3の静電容量のばらつきを小さくできる。従って、中心周波数のばらつきが小さい、高性能なアイソレータを提供することができる。
【0054】
このように、積層基板30Dのトリミング面に認識マーク120を設けることで、位置合わせの自動化が可能となる。これにより、トリミング時における位置合わせの時間が短くなり、製造コストを低減できる。
【0055】
[第6実施形態、図17]
図17は積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図である。この積層基板30Eは、前記第1実施形態の積層基板30において、画像処理による位置補正のための認識マーク150を、トリミング用コンデンサ電極71a〜73aと同じ層に設けたものである。
【0056】
前記第5実施形態では、認識マーク120が設けられている層とコンデンサ電極71a〜73aが設けられている層が異なっているため、層間位置ずれが発生し、認識マーク120とコンデンサ電極71a〜73aの相対的な位置ずれが発生することがある。このような状態でレーザトリミングをすると、位置ずれの分だけトリミングを開始する位置がずれてしまう。この結果、トリミング後の静電容量値が狙い値からずれることになり、精度良くトリミングをすることができない。
【0057】
そこで、この対策として、認識マーク150をトリミング用コンデンサ電極71a〜73aと同じ層に設けた。これにより、認識マーク150とコンデンサ電極71a〜73aの相対的な位置ずれが発生しなくなり、トリミングを開始する位置を正確に検出することができる。
【0058】
また、認識マーク150の大きさを1mm2以下にすることで、必要とされるコンデンサ電極71a〜73aの面積が得られるとともに、接続電極P1〜P3,31に重ならないようにすることができる。
【0059】
また、認識マーク150を形成する材料とコンデンサ電極71a〜73aを形成する材料を同じにし、コンデンサ電極71a〜73aを形成すると同時に認識マーク150を印刷法などで形成することにより、認識マーク150とコンデンサ電極71a〜73aの相対的な位置がより一層正確になる。
【0060】
[第7実施形態、図18]
第7実施形態は、本発明に係る通信装置として、携帯電話を例にして説明する。
【0061】
図18は携帯電話220のRF部分の電気回路ブロック図である。図18において、222はアンテナ素子、223はデュプレクサ、231は送信側アイソレータ、232は送信側増幅器、233は送信側段間用帯域通過フィルタ、234は送信側ミキサ、235は受信側増幅器、236は受信側段間用帯域通過フィルタ、237は受信側ミキサ、238は電圧制御発振器(VCO)、239はローカル用帯域通過フィルタである。
【0062】
ここに、送信側アイソレータ231として、前記第1実施形態の集中定数型アイソレータ1や、前記第2〜第6実施形態の積層基板30A,30B,30C,30D,30Eを有した集中定数型アイソレータを使用することができる。これらのアイソレータを実装することにより、電気的特性の向上した、かつ、信頼性の高い携帯電話を実現することができる。
【0063】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、前記実施形態のコンデンサは、複数のホット側コンデンサ電極と複数のグランド電極からなるものであるが、一つのホット側コンデンサ電極と一つのグランド電極からなるものであってもよい。
【0064】
さらに、積層基板の内部に形成されるコンデンサは、整合用コンデンサに限るものではなく、低域通過フィルタやトラップ回路などを構成するためのコンデンサであってもよい。また、本発明に係る非可逆回路素子は、アイソレータ以外に、サーキュレータやカップラー内蔵の非可逆回路素子などであってもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、トリミングされるコンデンサ電極を積層体の内部に設けたので、トリミング可能なコンデンサ電極面積が大きくなり、静電容量調整範囲が広がり、積層基板の良品率を向上させることができる。さらに、積層基板の表面には、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するため中心電極用接続電極などの必要最低限の電極しか形成されておらず、はんだ等の導電材料が拡がらない構造になっている。従って、トリミング溝にはんだ等の導電材料が流れ込んで、分断されたトリミング用コンデンサ電極が再び接続されるという不具合を防止できる。この結果、高性能で信頼性が高くかつ小型の非可逆回路素子や通信装置を得ることができる。
【0066】
また、画像処理による位置補正のための認識マークを、トリミングを行う側の積層基板表面に設けたり、トリミングされるコンデンサ電極と同じ層に設けたりすることにより、トリミング時の積層基板の位置補正が可能になる。従って、トリミングが正確に行われ、コンデンサの静電容量のばらつきを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した積層基板の分解斜視図。
【図3】トリミング可能なコンデンサ電極領域を示す積層基板の平面図。
【図4】トリミング溝形成の一例を示す積層基板の平面図。
【図5】積層基板のマザーボード状態を示す平面図。
【図6】図5に示した積層基板上に部品を搭載した状態を示す平面図。
【図7】図1に示した非可逆回路素子の電気等価回路図。
【図8】積層基板の別の実施形態を示す分解斜視図。
【図9】トリミング可能なコンデンサ電極領域を示す積層基板の平面図。
【図10】積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図。
【図11】トリミング可能なコンデンサ電極領域を示す積層基板の平面図。
【図12】積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図。
【図13】中心電極組立体の底面図。
【図14】積層基板のさらに別の実施形態を示す斜視図。
【図15】図14に示した積層基板をトリミング装置のテーブルにセットした状態を示す平面図。
【図16】画像処理による位置補正を行った後の状態を示す平面図。
【図17】積層基板のさらに別の実施形態を示す分解斜視図。
【図18】本発明に係る通信装置の電気回路ブロック図。
【図19】従来の積層基板を示す外観斜視図。
【図20】図19に示した積層基板の分解斜視図。
【符号の説明】
1…集中定数型アイソレータ
4…金属製上側ケース
8…金属製下側ケース
9…永久磁石
13…中心電極組立体
20…フェライト
21〜23…中心電極
30,30A,30B,30C,30D,30E…積層基板
31…グランド用接続電極
41〜47…誘電体シート
71a〜73a,71b〜73b…コンデンサ電極
74…グランド電極
75…抵抗体
80,81…トリミング溝
120,150…認識マーク
220…携帯電話
C1〜C3…整合用コンデンサ
R…終端抵抗
P1〜P3…中心電極用接続電極

Claims (16)

  1. 複数の誘電体層を積み重ねて構成した積層体と、
    前記積層体の表面に設けられた、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極と、
    前記積層体の内部に設けられた複数のコンデンサ電極とを備え、
    前記複数のコンデンサ電極が前記誘電体層を間に介して対向することによりコンデンサを形成し、該コンデンサが前記中心電極用接続電極に電気的に接続し、前記複数のコンデンサ電極のうち少なくとも一つのコンデンサ電極がトリミングされていること、
    を特徴とする積層基板。
  2. トリミングされている前記コンデンサ電極が、前記複数のコンデンサ電極のうち最も外側の層に位置するコンデンサ電極であることを特徴とする請求項1に記載された積層基板。
  3. トリミングされている前記コンデンサ電極が、前記コンデンサのホット側コンデンサ電極であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された積層基板。
  4. トリミングされている前記コンデンサ電極が矩形であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載された積層基板。
  5. 前記積層体の積み重ね方向において、トリミングされている前記コンデンサ電極は、前記中心電極用接続電極にのみ重なっていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載された積層基板。
  6. 前記積層体に終端抵抗が内蔵されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載された積層基板。
  7. 前記終端抵抗がトリミングされていることを特徴とする請求項6に記載された積層基板。
  8. 前記コンデンサが入力側整合用コンデンサ、出力側整合用コンデンサおよび終端抵抗側整合用コンデンサであり、
    前記終端抵抗側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が前記積層体の終端抵抗側に配置され、前記入力側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が前記積層体の入力側に配置され、前記出力側整合用コンデンサのホット側コンデンサ電極が前記積層体の出力側に配設されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載された積層基板。
  9. 画像処理による位置補正のための認識マークを、トリミングを行う側の表面に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載された積層基板。
  10. 画像処理による位置補正のための認識マークを、トリミングされる前記コンデンサ電極と同じ層に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載された積層基板。
  11. 前記認識マークが少なくとも対角の2箇所に設けられていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載された積層基板。
  12. 前記認識マークの大きさが1箇所当たり1mm以下であることを特徴とする請求項9〜請求項11のいずれかに記載された積層基板。
  13. 複数の誘電体層と複数のコンデンサ電極と非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極とを積み重ねて、前記中心電極用接続電極を表面に設けるとともに前記複数のコンデンサ電極を内部に設けた積層体を構成する工程と、
    前記複数のコンデンサ電極のうち少なくとも一つのコンデンサ電極を、表層の誘電体とともにトリミングする工程と、
    を備えたことを特徴とする積層基板の製造方法。
  14. 前記トリミングをレーザで行なうことを特徴とする請求項13に記載された積層基板の製造方法。
  15. 請求項1〜請求項12のいずれかに記載された積層基板と、
    永久磁石と、
    前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
    前記フェライトに配置されている複数の中心電極と、
    前記フェライトに配置されている積層基板用接続電極と、
    を備えたことを特徴とする非可逆回路素子。
  16. 請求項15に記載の非可逆回路素子を備えたことを特徴とする通信装置。
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