JP4238739B2 - バンドギャップ基準電圧発生回路 - Google Patents
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Description
出力回路部12では、直流の電源電圧Vccを供給する電源線16と出力電圧Vbgを出力する出力線14との間にNPNトランジスタQ7が接続されている。トランジスタQ7は出力トランジスタとして機能し、そのエミッタ電流I7eの値がベース電流I7bにより変化することにより出力電圧Vbgが温度依存性の小さい一定電圧に制御される。出力回路部12のPNPトランジスタQ6と抵抗R3とは、定常状態においてそのベースからほぼ一定の電流I6bをトランジスタQ7のベースに供給する。出力電圧Vbgの値は、バンドギャップ回路部11内のNPNトランジスタQ5のコレクタとトランジスタQ7のベースを結ぶ線上を流れる電流ΔI(トランジスタQ7向きを正とする。)によって制御される。出力線14と接地線13との間には抵抗R4が接続されている。抵抗R4は、定常状態においてトランジスタQ7にある程度の電流を確保することにより、出力回路部12の動作を安定化させる働きをする。
Vbg=V5be+(R2/R1)・(k・T/q)・(1+N・α4/α5)・ln(N−ΔI2/I1c)−R2・ΔI/α5
(1)式
ここで、V5beはトランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子の電荷、NはトランジスタQ1とQ2のセル面積比、α4、α5はそれぞれトランジスタQ4、Q5のエミッタ−コレクタ間電流増幅率、lnは自然対数である。
Vbg=V5be+(R2/R1)・(k・T/q)・(1+N)・lnN (2)式
この(2)式において抵抗R1、R2の温度係数は小さいとすると右辺の第1項は負の温度係数を、第2項は正の温度係数を持つ。従って、抵抗R1、R2の値及びセル面積比Nの値を調整すれば、左辺の出力電圧Vbgの温度係数を殆どゼロにすることができる。バンドギャップ基準電圧発生回路1におけるこれら回路定数は、出力電圧Vbgの温度係数が殆どゼロとなるように設定される。室温(300°K)付近で温度係数がゼロとなるように回路定数を設定した場合、出力電圧は約1.20Vとなる。
2番目の条件は、トランジスタQ1、Q2がコレクタ電流比率1:Nの状態で動作していることである。そのためには、トランジスタQ1のエミッタ−コレクタ間にトランジスタのべース−エミッタ間電圧の約2倍の電圧が加わっていることが必要であり、トランジスタQ2のエミッタ−コレクタ間にもそれと同じ又はそれ以上の電圧が加わっていることが必要である。また、トランジスタQ3のエミッタ−コレクタ間にも十分な電圧が加わっている必要がある。
回路の消費電力を低減させるためには電源電圧Vccはできる限り低い方が好ましい。しかし、上述したように出力電圧Vbgの値を定常状態において1.20Vに維持させるためには、トランジスタQ4とQ5を電流増幅率α4、α5が1.0の状態で動作するようにしてやる必要がある。トランジスタQ4とQ5の電流増幅率α4、α5を1.0にしてやるには、出力線14を通ってトランジスタQ4、Q5のベースに供給される電流I45bの値を十分な大きさにしてやる必要がある。
ここで、電源電圧Vccを立ち上げる場合を考えると、電源立ち上げ時にはバンドギャップ回路部11から供給される電流ΔIは殆どゼロである。このとき、トランジスタQ7のベース電流I7bはトランジスタQ6のベース電流I6bのみによって供給される。トランジスタQ6のベース電流I6bの値はトランジスタQ6のエミッタ電流I6e、即ち、抵抗R3を流れる電流の値をトランジスタQ6のベース−コレクタ間電流増幅率β6で割った値である。電流増幅率β6の値もトランジスタQ6のコレクタ電流I6cの値により変化するが、その値は数10〜100程度の大きな値である。即ち、抵抗R3を流れた電流の殆どはトランジスタQ6のコレクタを通って接地線13に流れてしまい、増大させたいトランジスタQ7のベース電流I7bにはその数十分の1の電流しか寄与しない。
前記出力回路部は、第4のPNPトランジスタ(Q6)と、第3のNPNトランジスタ(Q7)と、第3の抵抗(R3)と、第4の抵抗(R4)と、スイッチ回路(15)とから成り、第4のPNPトランジスタと第3のNPNトランジスタのベースは共に前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続され、第4のPNPトランジスタのエミッタは第3の抵抗を介して電源線(16)に接続されコレクタはスイッチ回路を介して接地線(13)に接続され、第3のNPNトランジスタのコレクタは電源線(16)に接続されエミッタは前記第2のNPNトランジスタのベースに接続され、第4の抵抗(R4)は第3のNPNトランジスタのエミッタと接地線との間に接続され該エミッタより出力電圧(Vbg)を取り出すように構成されており、
前記スイッチ回路は、前記電源線(16)への電源電圧(Vcc)の投入開始以後、前記出力電圧が所定電圧以下の場合には前記第4のPNPトランジスタのコレクタと接地線(13)との間を開放状態に、所定電圧以上では短絡状態に保つように構成されていることを特徴とするバンドギャップ基準電圧発生回路である。
第1、第2のNPNトランジスタ(Q4、Q5)に十分なベース電流が供給され、それらを高い電流増幅率で動作させることが可能になる。このようにすると帰還作用が強く働き、電源電圧(Vcc)の値をH側しきい値VcH以上にすることなくL側しきい値VccLより僅かに高い値のままで回路を立ち上げることができる。そして、その低い電源電圧のままで温度安定性に極めて優れた基準電圧を維持することができ、併せて定常状態での消費電力を低減できる効果を奏する。
図1に本発明の第1の実施形態であるバンドギャップ基準電圧発生回路2の回路構成を示す。図1のバンドギャップ基準電圧発生回路2の構成は、「背景技術」の項で説明した図3のバンドギャップ基準電圧発生回路1の構成にスイッチ回路15を追加したものとなっている。なお、図1中、図3と同一又は相当部分には同一符号が付してある。
バンドギャップ回路部11は、第1、第2、第3のPNPトランジスタQ1、Q2、Q3、第1、第2のNPNトランジスタQ4、Q5、第1、第2の抵抗R1、R2により構成される。
I7e=Vbg/R4+I45b
≒Vbg/R4+(Vbg−V5be)/(R2・β5) (3)式
ここで、V5beはトランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧、β5はトランジスタQ5のベース−コレクタ間電流増幅率でβ5=α5/(1−α5)の関係がある。
I6b=I7b≒I7e/β7 (4)式
となる。後述するように定常状態においてはスイッチ回路15内のトランジスタQ8は導通状態にある。そのような状態で(4)式のベース電流I6bが流れる時のトランジスタQ6のエミッタ電流I6eは、次式のようになる。
ここで、β6はトランジスタQ6のベース−コレクタ間電流増幅率である。β6/β7の値は1.0に近い値であるので、結局、定常状態においては、トランジスタQ6のエミッタ電流I6eはトランジスタQ7のエミッタ電流I7eにほぼ等しくなっていなければならないことになる。
I6e≒(Vcc−1.2)/R3 (6)式
(5)式と(6)式で計算されるエミッタ電流I6eは等しいことから、抵抗R3の値は次式で計算される。
この式中のI7eは(3)式で計算される値である。定常状態において出力電圧Vbgが設定した1.20Vに制御されるためには、抵抗R3の値はおおよそ(7)式で計算される値に設定されている必要がある。
スイッチ回路15は、出力電圧Vbgの値が設定値1.20Vより少し低い値、例えば1.15V以上の場合にはトランジスタQ8を導通させてトランジスタQ6のコレクタ電流I6cを接地線13に流し、1.15V以下の場合には非導通として接地線13に流さないように動作する。抵抗R5、R6の値は、電源電圧Vccが定常値に達した時に、その相互接続点17の電圧が上記したように出力電圧Vbgより少し低い値、例えば1.15Vになるように設定してある。
電源電圧Vccの値をゼロから、L側しきい値VccLより僅かに高い電圧まで立ち上げたとする。電源電圧Vccの値が低い間は、電源電圧Vccの値を抵抗R5、R6の相互接続点17の電圧は、その時点における出力電圧Vbgの値より高い値となる。従って、その間、コンパレータCP1はL(“ Low" )レベル の電圧を出力し、トランジスタQ8は非道通状態を維持する。
出力電圧Vbgが1.15Vを超えるとトランジスタQ8が導通状態となって、トランジスタQ6のコレクタ電流I6cが流れ始める。するとベース電流I6bが減少してトランジスタQ7のエミッタ電流I7eも減少する。しかし、この時点では上記したようにトランジスタQ4、Q5はその電流増幅率α4、α5が1.0の状態で動作する領域に入っているために、バンドギャップ回路部11による強い帰還作用が働く。この帰還作用により電流ΔIの値が変化して、出力電圧Vbgは設定した1.20Vに引き上げられる。
このように本実施形態のバンドギャップ基準電圧発生回路2によれば、電源電圧Vccの値をH側しきい値VcH以上にすることなく、L側しきい値VccLより僅かに高い値で回路を立ち上げることができる効果を奏する。そして、その低い電源電圧Vccのままで温度安定性の極めて高い基準電圧が出力されるため、定常状態での消費電力を少なくできる効果も奏する。
図2に本発明の第2の実施形態であるバンドギャップ基準電圧発生回路2aの回路構成を示す。本実施形態のバンドギャップ基準電圧発生回路2aが第1の実施形態の図1に示したバンドギャップ基準電圧発生回路2と異なる点は、スイッチ回路15aの構成のみである。従って、図1と同一構成要素には同一符号が付してある。
Vout=Vbg・(R10+R11)/R11 (8)式
即ち、出力Voutには、温度依存性の小さいバンドギャップ電圧Vbgを(R10+R11)/R11倍した電圧が出力される。演算増幅器OP1、トランジスタQ9がバンドギャップ電圧Vbgに対する電圧バッファとして働くため、出力線17からはかなりの負荷電流を引き出すことができる。
出力電圧Voutが上昇し、相互接続点18の電圧がトランジスタQ8のベース−エミッタ間順方向電圧である約0.6V以上になろうとすると、トランジスタQ8にベース電流が流れてトランジスタQ8が導通する。トランジスタQ8が導通するとトランジスタQ6と接地線13とが短絡される。
従って、本実施形態のバンドギャップ基準電圧発生回路2aも、第1の実施形態の回路の場合と同様に、電源電圧Vccの値をH側しきい値VcH以上にすることなく、L側しきい値VccLより僅かに高い値で回路を立ち上げることができる。そして、その低い電源電圧Vccのままで温度安定性の極めて高い基準電圧が出力されるため、定常状態での消費電力を少なくできる効果を奏する。
Claims (2)
- バンドギャップ回路部(11)と出力回路部(12a)とにより構成されるバンドギャップ基準電圧発生回路(2)であって、
前記バンドギャップ回路部は、セル面積比が1:Nの第1、第2のPNPトランジスタ(Q1、Q2)と、第3のPNPトランジスタ(Q3)と、セル面積が等しい第1、第2のNPNトランジスタ(Q4、Q5)と、第1、第2の抵抗(R1、R2)から成り、第1、第2のPNPトランジスタのエミッタは電源線(16)に共通接続され、ベースは共通接続して第3のPNPトランジスタ(Q3)のエミッタに接続され、第3のPNPトランジスタのコレクタは接地線(13)に、ベースは第1のPNPトランジスタのコレクタに接続されており、第1、第2のNPNトランジスタはベースが共通に接続され、エミッタ間には第1の抵抗が接続され、第1のNPNトランジスタのコレクタは第1のPNPトランジスタのコレクタに、第2のNPNトランジスタのコレクタは第2のPNPトランジスタのコレクタに接続され、第2の抵抗は第2のNPNトランジスタのエミッタと接地線との間に接続された構成をなしており、
前記出力回路部は、第4のPNPトランジスタ(Q6)と、第3のNPNトランジスタ(Q7)と、第3の抵抗(R3)と、第4の抵抗(R4)と、スイッチ回路(15)とから成り、第4のPNPトランジスタと第3のNPNトランジスタのベースは共に前記第2のPNPトランジスタのコレクタに接続され、第4のPNPトランジスタのエミッタは第3の抵抗を介して電源線(16)に接続されコレクタはスイッチ回路を介して接地線(13)に接続され、第3のNPNトランジスタのコレクタは電源線(16)に接続されエミッタは前記第2のNPNトランジスタのベースに接続され、第4の抵抗(R4)は第3のNPNトランジスタのエミッタと接地線との間に接続され該エミッタより出力電圧(Vbg)を取り出すように構成されており、
前記スイッチ回路は、前記電源線(16)への電源電圧(Vcc)の投入開始以後、前記出力電圧が所定電圧以下の場合には前記第4のPNPトランジスタのコレクタと接地線(13)との間を開放状態に、所定電圧以上では短絡状態に保つように構成されていることを特徴とするバンドギャップ基準電圧発生回路。 - 前記スイッチ回路(15)は、前記第4のPNPトランジスタのコレクタと接地線(13)との間に接続した第4のNPNトランジスタ(Q8)と、電源線(16)と接地線との間に直列に接続した第5、第6の抵抗(R5、R6)と、それら抵抗の相互接続点(17)の電圧を反転入力端子に、前記出力電圧(Vbg)を非反転入力端子に受けるコンパレータ(CP1)と、該コンパレータの出力端子と前記第4のNPNトランジスタのベースとの間に接続した第6の抵抗(R7)とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンドギャップ基準電圧発生回路。
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