JP4238444B2 - 金属粉末の製造方法、並びに導電性ペーストおよびセラミック電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性ペースト用などの電子材料として用いられるニッケルなどの金属粉末の製造方法に関し、特に化学的還元法による金属粉末の製造方法に関する。また、得られた金属粉末を用いた導電性ペーストおよびセラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、Ni、Coなどの金属粉末が導電性ペースト用などの電子材料として盛んに用いられている。金属粉末の工業的製造方法としては、機械的粉砕法、化学的還元法、気相法などがある。
【0003】
機械的粉砕法は、金属塊を機械的に粉砕して金属粉末を得る方法である。
【0004】
化学的還元法は、金属イオンを含む水溶液に還元剤を添加して、金属イオンを還元して金属粉末を得る方法である。
【0005】
気相法は、塩化物などの金属化合物蒸気を水素と反応させたのち冷却して金属粉末を得る化学気相法、水素ガス雰囲気中においてアーク放電で溶融・蒸発させた金属蒸気を冷却して金属粉末を得る水素アーク法、不活性ガス中で高周波誘導加熱などで加熱蒸発させた金属蒸気を冷却して金属粉末を得るガス中蒸発法などである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、機械的粉砕法による場合は、得られる金属粉末の粒径が粗く、粉砕時に不純物混入の恐れがあり、導電性ペースト用などの電子材料として不向きである。
【0007】
また、化学的還元法の場合、例えば、NiまたはCoの金属粉末を得る方法として、Ni2+またはCo2+を水溶液中でNaBH4またはN2H4で還元する方法がある。この化学的還元法によれば、粒径の細かい金属粉末が得られるが、還元剤としてNaBH4を用いると副生成物として金属の硼化物(硼化ニッケル、硼化コバルトなど)が生成し、純粋な金属粉末を得ることができないという致命的な欠点を有している。また、還元反応で得られる金属粉末は凝集しているため、別途、分散剤を用いて分散させなければならないという欠点も有している。さらに、水溶液中で還元反応を行なうため、例えばNi2+やCo2+が酸化され易く、この酸化を防ぐためには水溶液のpHを一定範囲に厳密に調整する必要がある。
【0008】
さらに、気相法の場合、いずれの気相法においても、得られる金属粉末は粒径が細かく電子材料として好適であるが、量産性に乏しくまたは製造設備費が高価であって、製造コストが高くなるという問題点を有している。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決した、不純物混入の恐れがなく、分散性に優れた、微細な金属粉末を効率よく安価に製造する方法を提供することにある。また、得られた金属粉末を用いた導電性ペースト、およびこの導電性ペーストを用いたセラミック電子部品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属粉末の製造方法は、
水溶性アルコールからなる非水溶媒中に、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のキレート化剤、並びに高分子タイプ界面活性剤を溶解する工程、
前記非水溶媒中に、さらに、金属塩を溶解または分散する工程、
前記金属塩が溶解または分散した非水溶媒中に、塩基性化合物の水溶液を添加してpHをアルカリに調整して未溶解の金属塩を溶解して溶液とし、該溶液を加温する工程、
前記加温した溶液に、超音波を照射しながら、前記溶液中に溶解している金属イオンをMn+とした場合、該金属イオンMn+とのモル比率N2H4/Mn+がn(ただし、nは金属イオンの価数)以上になる量のN2H4を加えて還元反応を行ない金属を析出させる工程、
とを備えることを特徴とする。
【0011】
そして、前記金属塩はNi金属塩であり、前記調整したpHは11〜12であり、前記加温温度は55℃以上であり、前記金属イオンMn+はNi2+であり、前記金属粉末はNi粉末であることを特徴とする。
【0012】
また、前記金属塩は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩および塩化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
また、前記高分子タイプ界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、前記塩基性化合物は、NaOH、LiOH、KOH、CsOH、NH4OHおよびRbOHよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の導電性ペーストは、金属粉末と有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、前記金属粉末は上記の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のセラミック電子部品は、セラミックと、該セラミックに形成された導体とを備えたセラミック電子部品であって、前記導体が、上記の導電性ペーストを焼成して得られたものを含むことを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明のセラミック電子部品は、複数の積層された誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層の特定の界面に沿って形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えて積層コンデンサが構成されており、かつ、前記内部電極は、Niを主成分とするものであって、上記の導電性ペーストを焼成して得られたものであることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の金属粉末の製造方法は、▲1▼水溶性アルコールからなる非水溶媒中に、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のキレート化剤、並びに高分子タイプ界面活性剤を溶解する工程、▲2▼前記非水溶媒中に、さらに、金属塩を溶解または分散する工程、▲3▼前記金属塩が溶解または分散した非水溶媒中に、塩基性化合物の水溶液を添加してpHをアルカリに調整して未溶解の金属塩を溶解して溶液とし、該溶液を加温する工程、▲4▼前記加温した溶液に、超音波を照射しながら、前記溶液中に溶解している金属イオンをMn+とした場合、該金属イオンMn+とのモル比率N2H4/Mn+がn(ただし、nは金属イオンの価数)以上になる量のN2H4を加えて還元反応を行ない金属粉末を析出させる工程、を備える。
【0019】
このような製造方法により、不純物混入の恐れがなく、分散性に優れた、微細な金属粉末を効率よく安価に得ることができる。
【0020】
なお、水溶性アルコールからなる非水溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの一価アルコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。そして、これらを単独で、あるいは混合して用いることができる。これらアルコールは水に可溶であり、反応溶液のpHを調整するのに用いるNaOH、KOH、LiOH、CsOHおよびNH4OHを容易に溶解する。したがって、これらの非水溶媒を用いることによって、得られる金属粉末に含まれる不純物を洗浄除去することが容易となる。
【0021】
また、得られる金属粉末としては、特に限定されるものではなく、金属塩を適宜選択することにより、例えばNi粉末、Co粉末などの種々の金属粉末を得ることができる。
【0022】
また、金属塩の塩としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物などを適宜用いることがでいる。
【0023】
また、高分子タイプ界面活性剤としては、カルボン酸エステルタイプの界面活性材を除くポリビニールピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などを適宜用いることができる。
【0024】
また、塩基性化合物としては、NaOH、LiOH、KOH、CsOH、NH4OHおよびRbOHなどを適宜用いることができる。
【0025】
本発明の製造方法は、還元反応を超音波を照射しながら行なう方法であるため、反応溶液内が酸化性の状態になりやすい。このように、酸化されやすい状態になると、金属イオンの還元効率が低下し、金属粉末の収率に影響を与える。しかしながら、キレート化剤として、トリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン(DEA)またはモノエタノールアミン(MEA)を用いることにより、金属イオンが水酸化物の形で沈殿するのを防止するのみならず、反応溶液内が酸化性の状態になるのを抑制して、金属イオンの金属粉末への還元効率の低下を防ぐことができる。
【0026】
また、反応溶液に超音波を照射するため、反応溶液系内にキャビテーションが起こり、キャビテーション内に高エネルギーが与えられ、このエネルギーによってキャビテーション内での反応、すなわち還元反応が促進される。また、超音波照射は生成する金属粉末の分散を促進し、凝集の少ない金属粉末を得ることが可能となる。
【0027】
また、超音波照射に加えて、高分子タイプ界面活性剤を添加することにより、得られる金属粉末の分散を助け、さらに凝集の少ない金属粉末を得ることができる。
【0028】
例えばNi金属粉末を製造する場合、具体的に以下のように、超音波照射により還元反応が促進される。
【0029】
還元反応中に超音波を照射しない場合、N2H4/Ni2+のモル比率が2であって反応温度が55℃のとき、理論反応の約40%程度しか還元反応が進まない。これに対して、還元反応中に超音波を照射した場合、N2H4/Ni2+のモル比率が2であって反応温度が55℃のとき、理論どおりの100%反応が進む。還元反応中に超音波を照射しない場合、Ni2+の還元反応を100%進めるためには、反応温度を75〜80℃に高める必要がある。
【0030】
次に、本発明の導電性ペーストは、上記の製造方法で得られた金属粉末を有機ビヒクル中に分散させることにより得られる。なお、有機ビヒクルは、通常、樹脂および溶剤を主成分とし、それ以外に必要に応じて、分散剤、可塑剤、消泡材、静電気防止剤などを所定量含む。
【0031】
そして、樹脂としては、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。また、溶剤としては、たとえば、テルピネオール、グリコール類、セロソルブ類、酢酸エステル類などが挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂の種類、塗布方法などとの兼ね合いで、適宜選択して用いることができる。
【0032】
また、この導電性ペースト中には、例えば積層セラミックコンデンサを製造する際、セラミックグリーンシートとの密着性を向上させるために、共材として前記セラミックグリーンシートと同種の原料粉末を所定量添加してもよい。
【0033】
次に、本発明のセラミック電子部品は、セラミックと、上記の導電性ペーストの焼成により形成された導体とを含むものであり、例えば、積層セラミックコンデンサ、セラミック多層回路基板、セラミックコンデンサ、セラミック共振器、セラミックアクチュエータなどがある。
【0034】
図1は本発明のセラミック電子部品の一例を示す積層セラミックコンデンサの断面図であり、図2は図1に示す積層セラミックコンデンサの積層体2の分解斜視図である。
【0035】
図1および2を参照して、積層セラミックコンデンサ1は、複数の積層された誘電体セラミック層3および4と、積層方向における中間部に位置する誘電体セラミック層4間の特定の界面に沿いかつ積層体2の積層方向に互いに重なり合った状態で形成された複数の内部電極5および6とを含む、直方体形状の積層体2を備えている。この内部電極5および6が、Niを主成分とするものであって、本発明の導電性ペーストを焼成して形成されている。
【0036】
そして、積層体2の外表面上であって、その各端部には、第1および第2の外部電極7および8がそれぞれ形成されている。外部電極7および8は、それぞれ、内部電極5および6のうちの特定のものに電気的に接続されるもので、第1の外部電極7に電気的に接続される内部電極5と第2の外部電極8に電気的に接続される内部電極6とは、交互に積層方向に配置されている。
【0037】
なお、外部電極7および8の各上には、ニッケル、銅などからなる第1のめっき層9が形成され、さらにその上には、はんだ、錫などからなる第2のめっき層10が形成されてもよい。
【0038】
次に、この積層セラミックコンデンサ1の製造方法について、製造工程順に説明する。
【0039】
まず、例えば、チタン酸バリウムを主成分とした非還元性の誘電体セラミック原料粉末を用意し、これに有機バインダを加えてスラリー化し、このスラリーをシート状に成形して、誘電体セラミック層3および4のためのセラミックグリーンシートを得る。
【0040】
次に、中間部に位置する誘電体セラミック層4となるセラミックグリーンシートの各一方の主面上に、ニッケルを導電成分として含む内部電極5および6を形成する。これら内部電極5および6は、本発明の導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷法などの印刷法で形成される。
【0041】
次に、内部電極5または6を形成した誘電体セラミック層4のためのセラミックグリーンシートを、必要枚数積層するとともに、図2に示すように、これらセラミックグリーンシートを、外層部に位置する、内部電極が形成されていない誘電体セラミック層3のためのセラミックグリーンシートによって挟んだ状態とし、これらを圧着することによって、生の積層体を得る。
【0042】
その後、この生の積層体を、所定の非酸化性雰囲気中で所定の温度にて焼成し、積層体2を得る。
【0043】
次に、積層体2の両端面上に、内部電極5および6の特定のものと電気的に接続されるように、外部電極7および8を形成する。この外部電極7および8の材料としては、内部電極5および6と同じ材料、すなわちニッケルを使用することができるが、それ以外に、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金なども使用可能である。また、これら金属粉末に、B2O3−SiO2−BaO系ガラス、Li2O−SiO2−BaO系ガラスなどのガラスフリットを添加したものが使用される。これら外部電極材料については、積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮して適当な材料が選択される。
【0044】
また、外部電極7および8は、典型的には、材料となる金属粉末ペーストを、焼成により得た積層体に塗布して、焼付けることによって形成されるが、焼成前に塗布して、積層体2を得るための焼成と同時に焼付けることによって形成してもよい。
【0045】
その後、外部電極7および8の上に、ニッケル、銅などのめっきを施し、第1のめっき層9を形成する。最後に、この第1のめっき層9の上に、はんだ、錫などの第2のめっき層10を形成し、積層セラミックコンデンサ1を完成させる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の金属粉末の製造方法の実施例を、Ni粉末の製造方法を例として示す。
【0047】
まず、非水溶媒としてエチルアルコール(C2H5OH)を用意した。次に、エチルアルコールに表1に示す割合で、Niの金属塩としての塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)、キレート化剤としてのトリエタノールアミン(TEA、TEA/Ni2+=1(モル比率で))、および高分子タイプ界面活性剤としてのポリビニルピロリドン(PVP、分子量25000)を加えて溶解した。その後、塩基性化合物としてのNaOH水溶液(12N−NaOH)を加えて、溶液のpHを11〜12の範囲内に調整した。
【0048】
次に、pHを調整した溶液を表1に示す温度に加温した。そして、この溶液に超音波(28kHz・20秒間−45kHz・20秒間−100kHz・20秒間を1サイクルとして、還元反応中繰り返す)を照射しながら、表1に示した量のN2H4(包水ヒドラジンN2H4・H2Oとして)を還元剤として添加して、還元反応を30分間行ないNi金属粉末を得た。なお、表1において試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものであり、それ以外は本発明の範囲内のものである。
【0049】
【表1】
【0050】
還元反応終了後、濾液のpHが6.5〜7.0の中性になるまで純水で洗浄して、生成したNaClを除去した。その後、Ni金属粉末のアセトン洗浄を繰り返して、水−有機溶剤の置換を行ない、Ni金属粉末表面の水分を除去した。その後、Ni金属粉末を真空乾燥機を用いて乾燥し、乾燥Ni金属粉末を得た。
【0051】
得られた乾燥Ni金属粉末の重量を秤量し、(得られたNi金属粉末の量/理論反応時のNi金属粉末の量)×100の計算式を用いて、Ni金属粉末の収率を求めた。また、得られた金属Ni粉末のFE−SEM観察を行ない、Ni金属粉末の一次粒子径および凝集状態の二次粒子径を求めた。これらの結果を表2に示す。なお、表2において試料番号に*印を付したものは本発明の範囲外のものであり、それ以外は本発明の範囲内のものである。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の試料番号3、5、6と、試料番号9、10、11を比較する。
【0054】
試料番号3、5および6のように、還元反応時に超音波を照射することにより、Ni金属粉末の収率が理論値通りの100%となり、一次粒子径が20〜30nmと細かく、二次粒子径が100〜200nmと凝集の少ない分散性にすぐれたNi金属粉末が得られる。これに対して、試料番号9、10および11のように、還元反応時に超音波を照射しない場合は、Ni金属粉末の収率が理論値より大幅に悪く38〜75%となり、一次粒子径が100〜150nmと大きく、二次粒子径が1000〜2000nmと分散性が悪く凝集したNi金属粉末しか得られない。還元反応時に超音波を照射しない場合には、試料番号14〜17のように、反応温度を75℃以上に高めて、初めて収率を100%とすることができる。
【0055】
すなわち、Niイオンを含む溶液に還元剤を加えて、還元反応によりNi金属を析出させるNi金属粉末の製造方法において、還元反応時に溶液に超音波を照射することにより、分散性に優れた微細なNi金属粉末を、より低温で理論どおりの収率で得ることができる。
【0056】
次に、試料番号4と18との比較で明らかなように、反応溶液中に高分子タイプ界面活性剤を添加することにより、界面活性剤を添加しない場合に比べて、一次粒子径は1/2〜1/3になり、二次粒子径は1/2〜1/5になる。すなわち、高分子タイプ界面活性剤を添加することにより、より微細であって、分散性に優れたNi金属粉末を得ることができる。
【0057】
次に、試料番号1〜8間の比較で明らかなように、還元反応を理論どおり100%進行させるには、N2H4/Ni2+のモル比率を2以上とする必要がある。試料1および2のように、N2H4/Ni2+のモル比率が1または1.5の場合には、収率が100%にならない。
【0058】
還元剤N2H4の還元反応は1電子放出反応であるので、当然、N2H4/N2+のモル比率が2未満ではNi2+→Ni0の還元反応進行率は100%にならない。理論計算すると、N2H4/Ni2+=1.0〜1.5の間では50〜75%の反応進行率となるが、実際には試料番号1および2のように、60〜80%となっている。すなわち、還元反応時に超音波を照射することにより、理論値よりも10%程度反応を進めることができる。ところで、N2H4自身は反応条件によって1〜4電子放出して反応するといわれており、この実験の結果で理論値よりも10%程度反応が進行しているのは、1電子反応のみでなく、一部2電子放出反応を伴った還元反応が起こった結果であると推測される。
【0059】
さらに、反応温度については、試料番号12、13のように45〜50℃では収率が86〜90%となり、還元反応を理論通り100%進めることができない。したがって、超音波照射しながら金属Ni粉末を得るためには、反応温度として55℃以上が好ましい。
【0060】
なお、上記実施例においては、Ni金属粉末を得る場合について説明したが、金属粉末としては特に限定されるものでなく、例えばCo金属粉末など他の金属粉末の場合も同様に得ることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の金属粉末の製造方法によれば、粉砕工程あるいは還元剤からの不純物混入の恐れがなく、分散性に優れた、微細な金属粉末を効率よく安価に得ることができる。
【0062】
そして、本発明の製造方法による金属粉末を用いることにより、分散性に優れた微細な金属粉末を含有する導電性ペーストを得ることができる。また、この導電性ペーストを用いることにより、より平滑かつ均一な導体を備えた積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック電子部品の一例を示す積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2】図1に示す積層セラミックコンデンサの積層体2の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3、4 誘電体セラミック層
5、6 内部電極
7、8 外部電極
9、10 めっき層
Claims (8)
- 水溶性アルコールからなる非水溶媒中に、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のキレート化剤、並びに高分子タイプ界面活性剤を溶解する工程、
前記非水溶媒中に、さらに、金属塩を溶解または分散する工程、
前記金属塩が溶解または分散した非水溶媒中に、塩基性化合物の水溶液を添加してpHをアルカリに調整して未溶解の金属塩を溶解して溶液とし、該溶液を加温する工程、
前記加温した溶液に、超音波を照射しながら、前記溶液中に溶解している金属イオンをMn+とした場合、該金属イオンMn+とのモル比率N2H4/Mn+がn(ただし、nは金属イオンの価数)以上になる量のN2H4を加えて還元反応を行ない金属を析出させる工程、
とを備えることを特徴とする、金属粉末の製造方法。 - 前記金属塩はNi金属塩であり、前記調整したpHは11〜12であり、前記加温温度は55℃以上であり、前記金属イオンMn+はNi2+であり、前記金属粉末はNi粉末であることを特徴とする、請求項1に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記金属塩は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩および塩化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属粉末の製造方法。
- 前記高分子タイプ界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロースよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
- 前記塩基性化合物は、NaOH、LiOH、KOH、CsOH、NH4OHおよびRbOHよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の金属粉末の製造方法。
- 金属粉末と有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、前記金属粉末は、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法により製造されたものであることを特徴とする、導電性ペースト。
- セラミックと、該セラミックに形成された導体とを備えたセラミック電子部品であって、前記導体が、請求項6に記載の導電性ペーストを焼成して得られたものを含むことを特徴とする、セラミック電子部品。
- 複数の積層された誘電体セラミック層と、該誘電体セラミック層の特定の界面に沿って形成された内部電極と、該内部電極に電気的に接続された外部電極とを備えて積層コンデンサが構成されており、かつ、前記内部電極は、Niを主成分とするものであって、請求項6に記載の導電性ペーストを焼成して得られたものであることを特徴とする、セラミック電子部品。
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