JP4237543B2 - ベーパセパレータ構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのベーパセパレータ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料噴射エンジンを備えた船外機において、燃料系から発生するベーパガスにより、特に、エンジンでの燃料消費の少ないアイドル時、トローリング時、暖機再起動時等にエンジン不調が起きやすい。このような燃料中のベーパガスを分離するために、従来よりベーパセパレータが用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
燃料は、燃料タンクからベーパセパレータタンク内に供給されてタンク内に溜められ、このベーパセパレータタンクから高圧燃料ポンプにより圧力レギュレータを介してインジェクタに送られる。高圧燃料ポンプから吐出された高圧燃料のうちインジェクタで噴射されない余分の燃料は、圧力レギュレータを介してベーパセパレータタンクに戻される。すなわち、インジェクタで噴射されない燃料は、高圧燃料ポンプ→圧力レギュレータ→ベーパセパレータタンク→高圧燃料ポンプの経路で循環する。運転中に発生するベーパガス量は、特に燃料消費量が少ない場合、この循環経路中で発生する。したがって、ベーパガス量を減らすには、この循環経路の容積を減らすことが有効である。
【0004】
一方、循環経路容積の大半を占めるベーパセパレータタンクは、運転中の急激な燃料消費量の変化に対応するために、バッファとして比較的大きな容積が必要であり、前述のベーパガス量低減のために容積を小さくする要求と相反する。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−4617号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、ベーパセパレータタンクとしての充分な容積を確保するとともに、循環経路の容積を減らしてベーパガスの発生量を低減したベーパセパレータ構造の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、燃料タンクから吸気管上のインジェクタまでの燃料供給経路の途中に設けたベーパセパレータタンクと、該ベーパセパレータタンク内に収容した燃料溜り量調整手段及び燃料吐出手段と、該燃料吐出手段の吐出側に設けた圧力レギュレータと、該ベーパセパレータタンク内で分離したガスを前記吸気管に送るベーパ逃し管と、前記圧力レギュレータから該ベーパセパレータタンクに燃料を戻す燃料戻り管とを備えたベーパセパレータ構造において、前記ベーパセパレータタンクを、前記燃料溜り量調整手段を収容する第1室と前記燃料吐出手段を収容する第2室とにより構成し、前記第1室及び第2室は、液面の上側及び下側でそれぞれ連通し、前記第1室側に前記燃料タンクを接続し、前記第2室側に前記燃料戻り管を接続し、前記第2室はさらに、隔壁により、前記燃料吐出手段を収容する燃料吐出室と、前記燃料戻り管が接続される燃料戻り室とに分割され、前記燃料吐出室と前記燃料戻り室とは、前記隔壁の上部および下部に設けられた連通孔によって互いに連通されていることを特徴とするベーパセパレータ構造を提供する。
【0008】
この構成によれば、燃料消費量の変動に対応できる充分な容積を有するベーパセパレータタンクを第1室と第2室の2室で構成し、第1室にはフロート等の燃料溜り量調整手段を収容し、第2室には高圧燃料ポンプ等の燃料吐出手段を収容し、第2室に圧力レギュレータからの燃料戻り管を接続することにより、燃料循環系が第2室→高圧燃料ポンプ→圧力レギュレータ→第2室で形成され、全体として充分大きいベーパセパレータタンクを備えるにもかかわらず、燃料循環系の容積が小さくなって、ベーパガスの発生量が低減する。
また、本発明によれば、圧力レギュレータから第2室に戻る燃料は、一旦第2室の燃料戻り室に戻され、この燃料戻り室から燃料吐出室に流入するため、高圧状態で大きな速度の戻り燃料が燃料戻り室に溜まる燃料中に流入することにより、その運動エネルギーが吸収されて勢いが低下し、その後、燃料吐出室から再び高圧で吐出される。このため、第2室におけるベーパガスの発生が低減する。
【0009】
好ましい構成例では、前記ベーパセパレータタンクを第1室と第2室に分割する仕切壁を設け、この仕切壁の上部及び下部にそれぞれ連通孔を設けたことを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、仕切壁により、ベーパセパレータタンクが第1室と第2室に2分割され、液面の上部及び下部がそれぞれ連通するため、全体として1つの大容量のベーパセパレータタンクを構成しながら、燃料循環系については、分割されて小容量となった第2室を用いて燃料を循環させることができる。
【0011】
好ましい構成例では、前記ベーパ逃し管は、前記第1室の上面で離間した2ヵ所に接続されたことを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、第1室と第2室の上部同士が連通するとともに、第1室にベーパ逃し管が接続されるため、タンク内全体のベーパガスが円滑に吸気管に戻される。この場合、離間した2ヵ所にベーパ逃し管が接続されるため、例えばタンクが大きく傾斜して一方のベーパ逃し管が塞がれた場合であっても、確実にベーパガスを逃すことができる。
【0015】
本発明のベーパセパレータ構造を船外機のエンジンに適用することにより、ベーパガスの発生を抑え、特に船外機で問題となるアイドル時やトローリング時でのエンジン不調の問題を回避して、常に安定した信頼性の高いエンジン回転動作が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は本発明が適用される船外機の側面図であり、図2はそのアッパーカウル部分の水平断面図である。
【0017】
船外機1は、アッパーカウル2と、ロアカウル3と、その下側のガイドエキゾースト4を介して接続されたアッパーケーシング5と、その下のロアケーシング6とにより外側を覆われる。アッパーカウル2内にV型6気筒エンジン7が収容される。エンジン7の前部に吸気サイレンサ8が備わり、この吸気サイレンサ8から左右3本ずつ吸気管9が設けられシリンダヘッド10の各気筒に連通する。各吸気管9の途中にインジェクタ11が備わる。
【0018】
エンジン7のクランク軸12の下端にドライブシャフト13が連結される。ドライブシャフト13は、ロアケーシング6内の傘歯車14を介してプロペラシャフト15に連結され、プロペラ16を駆動する。この船外機1は、取付ブラケット17を介して、船体のトランサム18に取付けられる。
【0019】
船体内の燃料タンク(不図示)とインジェクタ11とを連通する燃料供給配管(不図示)の途中にベーパセパレータタンク19が備わる。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る燃料冷却構造の全体構成図である。
船内に設けた燃料タンク20から低圧燃料ポンプ21によりフィルタ22を介して燃料配管(ホース)23を通してベーパセパレータ24のベーパセパレータタンク25に燃料が供給される。ベーパセパレータ24は、燃料を溜めるベーパセパレータタンク25と、このベーパセパレータタンク25内に設けたフロート26と、高圧燃料ポンプ27と、圧力レギュレータ28とにより構成される。
【0021】
吸気管9にスロットル弁29が備わり、その下流側にインジェクタ11が設けられる。高圧燃料ポンプ27から圧力レギュレータ28を介して燃料供給管56を通して、高圧燃料がインジェクタ11に供給される。余分な高圧燃料は、圧力レギュレータ28から燃料戻り管51を介してベーパセパレータタンク25に戻される。
【0022】
ベーパセパレータタンク25内で分離されたベーパガスは、ベーパ逃し管52を介して吸気負圧により吸気管9内に吸引され送られる。
【0023】
ベーパセパレータタンク25は、仕切壁44により、第1室45と第2室46の2室に分割される。仕切壁44は、上部(液面より上)及び下部(液面より下)に連通孔47,48を有し、タンク内の上部の気体側及び下部の液体側の双方で各々第1室45及び第2室46同士を連通させる。
【0024】
第1室45は、フロート26等の燃料溜り量(液面)調整手段を収容する。なお、燃料溜り量調整手段として、フロートの他にも、液面を検出して液面に応じて開閉するバルブ等を用いることができる。
【0025】
第2室46は、高圧燃料ポンプ27等の燃料吐出手段を収容する。この第2室46はさらに、隔壁49により、燃料吐出室46aと燃料戻り室46bとに分割される。隔壁49は、上部で燃料吐出室46aと燃料戻り室46bを連通させるとともに、下部で連通孔50を通して燃料吐出室46aと燃料戻り室46bを連通させる。
【0026】
燃料吐出室46aに高圧燃料ポンプ27が収容され、燃料戻り室46bに圧力レギュレータ28からの燃料戻り管51が接続される。これにより、圧力レギュレータ28から第2室46に戻る燃料は、一旦第2室46の燃料戻り室46bに戻され、この燃料戻り室46bから燃料吐出室46aに流入するため、高圧状態で大きな速度の戻り燃料が燃料戻り室46bに溜まる燃料中に流入することにより、その運動エネルギーが吸収されて勢いが低下し、その後、燃料吐出室46aから再び高圧で吐出される。このため、第2室46におけるベーパガスの発生が低減する。
【0027】
第1室45の上部の隅部近傍にガス抜きポート53が設けられる。さらに、第1室45の上部に連通するガス抜き連通路57が形成され、このガス抜き連通路57の端部にガス抜きポート54が設けられる。これらのガス抜きポート53,54は、ベーパセパレータタンク25の上面の平面視(上面視)で対角線上で対向する隅部等の相互に離間した対向位置に設けることが望ましい。ベーパセパレータタンク25が傾斜して一方のポートが液体燃料で塞がった場合でも他方のポートから確実にガス抜きができるからである。
【0028】
各ガス抜きポート53,54には、それぞれベーパ逃し管53a,54aが接続する。両ベーパ抜き管53a,54aは合流して吸気管9に連通するベーパ逃し管52に連なる。一方のベーパ逃し管53aは、一旦螺旋状に巻回してから他方のベーパ逃し管54aと連結する。これにより、船体が横転した場合等にサイフォン現象による燃料の流出を防止できる。
【0029】
図4は、本発明の実施形態に係るベーパセパレータの構成図である。(A)はベーパセパレータタンクの上端部近傍の水平断面構成図であり、(B)はベーパセパレータタンクの下部の水平断面構成図であり、(C)はベーパセパレータの縦断面図である。
【0030】
前述(図3)のように、ベーパセパレータタンク25は、上下に連通孔47,48を有する仕切壁44により、第1室45と、第2室46とに分割される。第2室46は、隔壁49により、燃料吐出室46aと燃料戻り室46bとに分割される。この例では、隔壁49の上部に連通孔55が形成され液面Lより上側で燃料吐出室46aと燃料戻り室46bとを連通させている。ベーパセパレータタンク25の上面のほぼ対角線上の対向する隅部にガス抜きポート53,54が設けられる。前述(図3)のように、一方のガス抜きポート53は、第1室45の上面の隅部近傍に設けられ、他方のガス抜きポート54は、第1室45の上部と連通するガス抜き連通路57の端部に設けられる。燃料は、高圧燃料ポンプ27により、燃料供給管30を通してインジェクタ11(図3)に供給され、余分な燃料は、圧力レギュレータ28(図3)から燃料戻り管51を通して第2室46の燃料戻り室46bに戻される。56はシール材である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、燃料消費量の変動に対応できる充分な容積を有するベーパセパレータタンクを第1室と第2室の2室で構成し、第1室にはフロート等の燃料溜り量調整手段を収容し、第2室には高圧燃料ポンプ等の燃料吐出手段を収容し、第2室に圧力レギュレータからの燃料戻り管を接続することにより、燃料循環系が第2室→高圧燃料ポンプ→圧力レギュレータ→第2室で形成され、全体として充分大きいベーパセパレータタンクを備えるにもかかわらず、燃料循環系の容積が小さくなって、ベーパガスの発生量が低減する。
また、圧力レギュレータから第2室に戻る燃料は、一旦第2室の燃料戻り室に戻され、この燃料戻り室から燃料吐出室に流入するため、高圧状態で大きな速度の戻り燃料が燃料戻り室に溜まる燃料中に流入することにより、その運動エネルギーが吸収されて勢いが低下し、その後、燃料吐出室から再び高圧で吐出される。このため、第2室におけるベーパガスの発生が低減する。
【0032】
また、前記ベーパセパレータタンクを第1室と第2室に分割する仕切壁を設け、この仕切壁の上部及び下部にそれぞれ連通孔を設けた構成によれば、仕切壁により、ベーパセパレータタンクが第1室と第2室に2分割され、液面の上部及び下部がそれぞれ連通するため、全体として1つの大容量のベーパセパレータタンクを構成しながら、燃料循環系については、分割されて小容量となった第2室を用いて燃料を循環させることができる。
【0033】
また、前記ベーパ逃し管は、前記第1室及び第2室の両方に接続された構成によれば、第1室と第2室の上部同士が連通するとともに、両室にベーパ逃し管が接続されてベーパガスを吸気管に戻すため、例えばタンクが大きく傾斜して第1室又は第2室のいずれかが上側になるように傾斜した場合であっても、確実に両方の室内から発生するベーパガスを逃すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される船外機の側面図。
【図2】 図1の船外機のアッパーカウル部分の水平断面図。
【図3】 本発明の実施形態の構成図。
【図4】 本発明の実施形態に係るベーパセパレータの構成図。
【符号の説明】
1:船外機、2:アッパーカウル、3:ロアカウル、4:ガイドエキゾースト、
5:アッパーケーシング、6:ロアケーシング、7:エンジン、
8:吸気サイレンサ、9:吸気管、10:シリンダヘッド、
11:インジェクタ、12:クランク軸、13:ドライブシャフト、
14:傘歯車、15:プロペラシャフト、16:プロペラ、
17:取付ブラケット、18:トランサム、19:ベーパセパレータタンク、
20:燃料タンク、21:低圧燃料ポンプ、22:フィルタ、
23:燃料配管、24:ベーパセパレータ、25:ベーパセパレータタンク、
26:フロート、27:高圧燃料ポンプ、28:圧力レギュレータ、
29:スロットル弁、30:燃料配管、44:仕切壁、45:第1室、
46:第2室、46a:燃料吐出室、
46b:燃料戻り室、47:連通孔、48:連通孔、49:隔壁、
50:連通孔、51:燃料戻り管、52:ベーパ逃し管、
53:ガス抜きポート、54:ガス抜きポート、55:連通孔、
56:シール材、57:ガス抜き連通路。

Claims (4)

  1. 燃料タンクから吸気管上のインジェクタまでの燃料供給経路の途中に設けたベーパセパレータタンクと、
    該ベーパセパレータタンク内に収容した燃料溜り量調整手段及び燃料吐出手段と、
    該燃料吐出手段の吐出側に設けた圧力レギュレータと、
    該ベーパセパレータタンク内で分離したガスを前記吸気管に送るベーパ逃し管と、
    前記圧力レギュレータから該ベーパセパレータタンクに燃料を戻す燃料戻り管とを備えたベーパセパレータ構造において、
    前記ベーパセパレータタンクを、前記燃料溜り量調整手段を収容する第1室と前記燃料吐出手段を収容する第2室とにより構成し、
    前記第1室及び第2室は、液面の上側及び下側でそれぞれ連通し、
    前記第1室側に前記燃料タンクを接続し、
    前記第2室側に前記燃料戻り管を接続し
    前記第2室はさらに、隔壁により、前記燃料吐出手段を収容する燃料吐出室と、前記燃料戻り管が接続される燃料戻り室とに分割され、
    前記燃料吐出室と前記燃料戻り室とは、前記隔壁の上部および下部に設けられた連通孔によって互いに連通されていることを特徴とするベーパセパレータ構造
  2. 前記ベーパセパレータタンクを第1室と第2室に分割する仕切壁を設け、この仕切壁の上部及び下部にそれぞれ連通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載のベーパセパレータ構造。
  3. 前記ベーパ逃し管は、前記第1室の上面で離間した2ヵ所に接続されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のベーパセパレータ構造。
  4. 請求項1からのいずれかに記載のベーパセパレータ構造を備えた船外機。
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