JPH0123645B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、小型舟艇におけるクランク室圧縮
型２サイクルエンジンのクランク室内に溜つた水
を排出する装置に関するものである。

（従来例） たとえば、立ち姿勢または座り姿勢で操縦さ
れ、水上を滑走する小型舟艇には、横転しても簡
単に起こすことができる構造のものがある。しか
し、横転した際、水が、吸気口からクランク室圧
縮型２サイクルエンジンのクランク室内へ侵入す
る。また、排気マフラに注水して消音する構成を
とつている場合には、この水が逆流し、燃焼室を
経てクランク室内に入る。このようにクランク室
内に水が入ると、エンジンは不調になり、場合に
よつては停止することがあつた。

従来、そのような場合には、エンジンを傾斜さ
せて点火プラグを外し、エンジンをさかさまにし
てから、スタータを回し、クランク室内に溜つた
水を排水する方法をとつていた。この方法は手間
であり、エンジン再始動を迅速に行なうことがで
きなかつた。

この対策として、２サイクルエンジンのクラン
ク室内の底部と外部とを連通させる排水通路と、
この排水通路をクランク室の正圧で開く逆止弁
と、この逆止弁に直列に設けた開閉弁とを設け
て、必要なときのみにクランク室の正圧で排水す
る方法が考えられる（たとえば、実閉昭57−
127827号公報参照）。

ところで、エンジンが複数気筒である場合は、
水排水装置も複数になるので、構造が複雑になる
とともに大型化する。

また、小型舟艇の横転時には、多量の水がクラ
ンク室に侵入するので、排水能力を大きくして、
迅速に排水する必要があるのに対し、上記先行技
術はオイル排出装置であるため、迅速な排水につ
いて何ら考慮されていない。

（発明の目的） この発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
で、小型舟艇において、クランク室内に溜つた水
を簡便かつ迅速に排出することができるととも
に、簡単で小型なクランク室の水排出装置を提供
することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するために、この発明は、ま
ず、上記クランク室内の底部と外部とを連通させ
る排水通路と、この排水通路に各クランク室ごと
に設けられてクランク室内の正圧で第１の開口部
を開く複数の第１バルブと、上記排水通路におけ
る上記第１のバルブよりも下流に、上記第１のバ
ルブに対して直列に設けられて第２の開口部を開
閉する単一の第２のバルブと、手動操作により第
２のバルブを開閉させる操作部材とを備えてい
る。さらに、上記排水通路には、第１のバルブを
介して排出された水が一時的に入り込む空所を、
上記第１のバルブの直下流でかつ第２のバルブの
直上流に形成する一方、第１の開口部の断面積
が、第２の開口部の断面積よりも大きく設定され
ている。

（作用） この発明によれば、クランク室の正圧で第１の
開口部を開く第１のバルブを複数のクランク室ご
とに設けて、クランク室からの排水効率を上げる
一方で、手動操作により開閉するバルブを単一に
したので、つまり、第２のバルブを複数個設けて
いないから、排水装置が簡易な構造になる。

ところで、第１のバルブは正圧時にのみ開くも
ので、負圧時に閉止しているから、第１のバルブ
によつて開閉される第１の開口部は、排水量の観
点から大きくする必要があるのに対し、第２のバ
ルブによつて開閉される第２の開口部は、シール
性や小型化の面から小さくする必要がある。ここ
で、第１の開口部と第２の開口部とを近接して設
けると、第１の開口部からの排水が小さな第２の
開口部により妨げられるのに対し、この発明は、
第１の開口部の直下流に空所を設けているので、
第１の開口部からの排水が上記空所に一時的に入
り込んで、この空所の水が小さい第２の開口部か
ら排出されるから、排水をスムースできる。した
がつて、排水量が大きくなるので、迅速な排水が
できるとともに、第２の開口部が小さいから、シ
ール性が向上し、かつ、第２のバルブなどの小型
化を図ることができる。

（実施例） 以下、この発明の一実施例を図面にしたがつて
説明する。

第１図はこの発明の一実施例に係る水排出装置
を備えた小型舟艇の概略構成を示す一切欠側面
図、第２図はその略断面図である。第１図におい
て、FRP製の船体３１の内部にクランク室圧縮
型２サイクルエンジン３２、燃料タンク３３など
が収納され、船体３１の後部のダクト部３１ａに
装着された水ジエツト推進機３４を上記エンジン
３２で駆動して、推進力を得るようになつてい
る。船体３１の上部には、ピボツト軸３５を介し
てハンドルポール３６が上下回動自在に取り付け
られており、このハンドルポール３６の後端にス
テアリング用のハンドルバー３７が左右回動自在
に装着されている。ドライバー３８は、船体３１
の床面３１ｂの上に立ち（または座り）、上記ハ
ンドルバー３７を握つて操縦する。第２図のマフ
ラ１８内には、エンジン３２を冷却した後の冷却
水が供給されている。

上記小型舟艇には、横転した際に水がエンジン
３２内に侵入し、クランク室２に溜る場合に備え
て、クランク室２の側壁２ａの下部に弁装置１が
付設されている。

第３図は第２図の−線に沿つた拡大断面
図、第４図は弁装置１の略側面図である。第３図
において、エンジン３２は２気筒であり、たとえ
ば２つのクランク室２，２を備えている。両クラ
ンク室２，２の側壁２ａおよび、この側壁２ａに
固着された弁装置１の支持板１６には、クランク
室内の底部と外部とを連通させる排水通路３の一
部を形成する排水孔４，４が穿設され、この排水
孔４，４におけるロート形開口部（第１の開口
部）４ａ，４ａには、このロート形開口部４ａ，
４ａを開閉する第１のバルブとしてのリードバル
ブ５がねじ６により、上記支持板１６に取り付け
られている。このリードバルブ５は一体であるが
クランク室２ごとに設けられている。その状態を
示したのが第４図の略側面図である。

また、第３図において、上記支持板１６には、
排水孔４，４のロート形開口部４ａ，４ａおよび
リードバルブ５を覆い、リードバルブ５の開閉動
作を可能とする空所７を形成する蓋体８が装着さ
れている。上記空所７は、リードバルブ５の直下
流に形成されて、上記ロート形開口部４ａ，４ａ
から排出された水が一時的に入り込む所である。

上記蓋体には、排水通路３の一部である小孔部
（第２の開口部）８ａ，８ａが穿設されている。
この小孔部８ａ，８ａの断面積は、この小孔部８
ａ，８ａを除いた上記排水通路３の断面積よりも
小さく設定されている。したがつて、この小孔部
８ａ，８ａよりも上記ロート形開口部４ａ，４ａ
のほうが、断面積が大きく設定されている。９は
操作バルブ（第２のバルブ）で、１つ設けられて
おりロツド９ａが図中の上下方向に移動すること
により、上記小孔部８ａ，８ａを開閉するもので
ある。上記操作バルブ９は、上記排水通路３の一
部であるバルブ収納室１５に、つまり、排水通路
３における空所７の直下流の位置に設けられてい
るとともに、リードバルブ５に対して直列に設け
られている。

上記排水孔の蓋体８には、別の蓋体１０が装着
されており、この蓋体１０に排水通路３の一部を
形成する排出口１０ａが設けられている。この排
出口１０ａには、やはり排水通路３の一部を形成
するパイプ１９が取り付けられており、このパイ
プ１９の先端部は船体内または船体外に配置され
ている。また、蓋体１０には、上記ロツド９ａが
挿通する挿通孔１０ｂを設けているとともに、ロ
ツド９ａを上下動させるワイヤ１１ａを支えるホ
ルダ１２が載置されている。上記ワイヤ１１ａの
一端は操作部材としてのレバー１１に接続されて
おり、一方、他端は係止具１３を介してロツド９
ａに接続されている。

第４図に示すように、支持板１６と蓋体８は側
壁２ａ（第３図参照）にボルト２０で固定され、
蓋体１０はホルダ１２とともにボルト２１で蓋体
８に固定されている。第３図の操作レバー１１
は、第１図のハンドルバー３７または船体３１の
外面に設置される。

第３図に示すように、上記操作バルブ９は、ば
ね１４によつて付勢され、常時は、クランク室２
内が正圧になつても、上記小孔部８ａ，８ａの閉
塞状態を保持し、操作レバー１１を操作した時に
はじめて、ロツド９ａがばね１４に抗して、上記
蓋体１０によつて形成された上記バルブ収納室１
５内を図中の上方に移動し、上記小孔部８ａ，８
ａを開状態とする。

つぎに、上記水排出装置の動作について述べ
る。

たとえば、第２図の小型舟艇が横転した場合な
どには、エアクリーナ１７から吸気口を介してク
ランク室２に水が入つたり、マフラ１８などを介
してクランク室２に水が侵入し、クランク室２内
に水が溜る。この場合、第１図のドライバー３８
は、エンジンを運転状態に保ちつつ、第３図の操
作レバー１１を握つて、ワイヤ１１ａを引張り操
作する。この引張操作により操作バルブ９が開放
され、一方、リードバルブ５がクランク室２の正
圧を受けて開き、負圧を受けて閉じる開閉動作を
行なう。

上記正圧時には、リードバルブ５が開くととも
に、クランク室２内の水が排水孔４からロート形
開口部４ａを介して、空所７内へ入り込む。ここ
で、上記ロート形開口部４ａは正圧時しか開かな
いが比較的大きいので、多量の水を排出できる。
一方、操作バルブ９に対応する小孔部８ａは小さ
いが、大きな空所７がリードバルブ５の直下流に
設けられており、この大きな空所７に一時的に水
が貯溜されかつ、上記空所７の直下流の小孔部８
ａからは正圧時だけでなく負圧時にも、上記空所
７の水が排出されるので、上記小孔部８ａが小さ
くても多量の水を排出できる効果は妨げられな
い。

上記小孔部８から排出された水は、バルブ収納
室１５、排出口１０ａおよびパイプ１９を経て船
内または船外に排出される。なお、船内に排出さ
れた水は、水ジエツト推進機３４（第１図参照）
の負圧を利用したビルジ排出装置（図示せず）に
よつて船外へ排出される。したがつて、第２図の
エンジン３２を設置箇所から取り外さなくても、
クランク室２内に溜つた水を容易に排出すること
ができ、また、たとえエンジン３２が停止して
も、エンジン３２の再始動を迅速に行なうことが
できる。

一方、通常の運転状態においては、つまり、排
水しない時には、操作バルブ９がばね１４のばね
力で小孔部８ａを止している。この通常の状態に
おいては、クランク室２の正圧時に、クランク室
２内の正圧が操作バルブ９に働くので、シール性
の向上や操作バルブ９、ばね１４などの小型化を
図る観点から、上記小孔部８ａを小さくするのが
好ましい。ここで、この弁装置１は、上記小孔部
８ａをロート形開口部４ａよりも小さく設定して
いるので、操作バルブ９のシール性が良く、クラ
ンク室２の正圧時の圧力を高く維持できる。さら
に、上記小孔部８ａが小さく設定されていること
により、操作バルブ９やばね１４などを小型にで
きるとともに、ばね１４のばね力を小さくできる
ため、操作部材１１の操作力も小さくてよい。

ところで、各小孔部８ａ，８ａごとに比較的複
雑なものである操作バルブ９を２つ設けると、弁
装置１全体が複雑で大型化するのに対し、この弁
装置１は操作バルブ９を１つにしているから、構
造が簡単になるとともに、小型になる。

一方、排水孔４，４を１つに合流させロート形
開口部４ａを１つにして、リードバルブ５を単一
にすることも考えられるが、こうすると、正圧時
にのみ開くリードバルブ５からの排水効率が低下
する。これに対し、この弁装置１はリードバルブ
５をクランク室２ごとに有しているから、排水効
率が良い。

（発明の効果） 以上説明したように、この発明によれば、水の
侵入し易い小型舟艇のクランク室内に溜つた水
を、操作部材を操作するだけの簡便な操作で、迅
速に排出することができるとともに、水排出装置
を簡易かつ小型にできる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例に係る水排出装置
を備えた小型舟艇の一部切欠側面図、第２図は同
小型舟艇のエンジン付近を示す略断面図、第３図
は第２図の−線に沿つた拡大断面図、第４図
は弁装置の略側面図である。 １……弁装置（水排出装置）、２……クランク
室、３……排水通路、４ａ……第１の（ロート
形）開口部、５……第１のバルブ（リードバル
ブ）、７……空所、８ａ……第２の開口部（小孔
部）、９……第２のバルブ（操作バルブ）、１１…
…操作部材、３１……船体、３２……エンジン、
３４……推進機。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 船体内に収納されたクランク室圧縮型の複数
   気筒の２サイクルエンジンによつて推進機を駆動
   する小型舟艇におけるクランク室の水排出装置で
   あつて、上記クランク室内の底部と外部とを連通
   させる排水通路と、この排水通路に各クランク室
   ごとに設けられてクランク室内の正圧で開く複数
   の第１のバルブと、上記排水通路における上記第
   １のバルブの直下流に形成され、第１のバルブを
   介して排出された水が一時的に入り込む空所と、
   上記排水通路における上記空所の直下流の位置
   に、上記第１のバルブに対して直列に設けられた
   単一の第２のバルブと、手動操作により上記第２
   のバルブを開閉させる操作部材とを備え、上記第
   １のバルブによつて開閉される第１の開口部の断
   面積が、上記第２のバルブによつて開閉される第
   ２の開口部の断面積よりも大きく設定された小型
   舟艇におけるクランク室の水排出装置。