近年、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ等の電子機器に搭載されている液晶表示装置(LCD)の照明源(バックライトまたはフロントライト)の一つとして、耐久性、発光効率、占有面積等の点で優れている白色発光ダイオードが用いられるようになってきている。この白色発光ダイオードを発光させるには比較的高い順方向電圧が必要であることや、通常、照明源としては複数の白色発光ダイオードが用いられ、用いられる複数の白色発光ダイオードは各白色発光ダイオードの輝度を均一にするために直列接続されることなどから、このような照明源としての白色発光ダイオードの駆動には、電子機器に内臓されている電池から供給される直流電圧よりも高い直流電圧が必要となる。
そこで、このような白色発光ダイオードを駆動する回路として、昇圧型スイッチング電源回路が用いられている。従来の昇圧型スイッチング電源回路の一構成例を図9(a)に示す。図9(a)に示すスイッチング電源回路は、入力コンデンサ2と、コイル3と、整流素子であるダイオード4と、出力コンデンサ5と、出力電流検出用抵抗R1と、1つのパッケージにIC化されコイル3に対するエネルギーの蓄積/放出を切り換えて昇圧動作を行う昇圧チョッパレギュレータ10とによって構成されている。図9(a)に示すスイッチング電源回路は、リチウムイオン電池等の直流電源1から供給される直流電圧を昇圧して負荷である6個の白色発光ダイオードLED1〜LED6に供給し、6個の白色発光ダイオードLED1〜LED6を駆動する。なお、直流電源1とスイッチング電源回路との間には電源スイッチ(図示せず)が設けられており、当該電源スイッチがオンのときは直流電源1からスイッチング電源回路へ直流電圧Vinが供給され、当該電源スイッチがオフのときは直流電源1からスイッチング電源回路へ直流電圧Vinが供給されない。
直流電源1の負極端子はグランドに接続され、直流電源1の正極端子は入力コンデンサ2を介してグランドに接続されるとともにコイル3の一端に接続されている。そして、コイル3の他端はダイオード4のアノードに接続され、ダイオード4のカソードは出力コンデンサ5を介してグランドに接続されている。また、白色発光ダイオードLED1〜LED6と出力電流検出用抵抗R1とが直列に接続された直列回路が出力コンデンサ5と並列に接続されている。
また、昇圧チョッパレギュレータ10は、外部接続用の端子として電源端子TVIN、グランド電源端子TGND、出力電圧モニタ端子TVO、フィードバック端子TFB、スイッチ端子TVSW、及びコントロール端子TCTRLを備えている。そして、電源端子TVINは直流電源1の正極端子に接続され、グランド電源端子TGNDはグランドに接続され、昇圧チョッパレギュレータ10内の各回路は電源端子TVIN・グランド電源端子TGND間電圧を駆動電圧としている。これにより、昇圧チョッパレギュレータ10は直流電源1をその動作電源として得ている。また、スイッチ端子TVSWはコイル3とダイオード4との接続点に接続され、出力電圧モニタ端子TVOはダイオード4のカソードに接続され、フィードバック端子TFBは白色発光ダイオードLED6と出力電流検出用抵抗R1との接続点に接続されている。また、コントロール端子TCTRLには、後述する輝度調整信号が入力される。
続いて昇圧チョッパレギュレータ10の内部構成について説明する。昇圧チョッパレギュレータ10は、Nチャンネル型MOSFET(以下、Nchトランジスタという)11及び12と、ドライブ回路13と、電流検出コンパレータ14と、発振回路15と、アンプ16と、PWMコンパレータ17と、エラーアンプ18と、基準電源19と、抵抗R2〜R4と、ソフトスタート回路20と、ON/OFF回路21と、過熱保護回路22と、過電圧保護回路23とを有している。
Nchトランジスタ11のドレインとNchトランジスタ12のドレインはともにスイッチ端子TVSWに接続され、Nchトランジスタ11のゲートとNchトランジスタ12のゲートはともにドライブ回路13に接続されている。そして、Nchトランジスタ12のソースは直接グランドに接続され、Nchトランジスタ11のソースは抵抗R2を介してグランドに接続されている。これにより、Nchトランジスタ11のドレイン電流とNchトランジスタ12のドレイン電流との比は、Nchトランジスタ11のゲート幅/ゲート長とNchトランジスタ12のゲート幅/ゲート長との比と等しくなる。
そして、抵抗R2の両端は電流検出コンパレータ14の2つの入力端子にそれぞれ接続され、電流検出コンパレータ14の出力と発振回路15の一方の出力とがアンプ16で加算されてPWMコンパレータ17の反転入力端子に供給される。また、PWMコンパレータ17の出力と、発振回路15の他方の出力とがドライブ回路13にそれぞれ供給される。
また、PWMコンパレータ17の非反転入力端子にはエラーアンプ18の出力が供給され、エラーアンプ18の非反転入力端子はフィードバック端子TFBに接続されている。また、エラーアンプ18の反転入力端子は抵抗R3の一端及び抵抗R4の一端に接続され、抵抗R4の他端はグランドに接続され、抵抗R3の他端は基準電源19の正極端子に接続されている。そして、基準電源19の負極端子はグランドに接続されている。
また、ソフトスタート回路20の出力はPWMコンパレータ17の非反転入力端子とエラーアンプ18の出力端子との接続点に供給され、ON/OFF回路21、過熱保護回路22、及び過電圧保護回路23の出力はドライブ回路13にそれぞれ供給される。そして、ソフトスタート回路20及びON/OFF回路21には、コントロール端子TCTRLが外部から入力した輝度調整信号が供給される。さらに、過電圧保護回路23には、出力電圧モニタ端子TVOを介して出力電圧Voutが供給される。
次に、上記構成の図9(a)に示すスイッチング電源回路の動作について説明する。図9(a)に示すスイッチング電源回路は、ドライブ回路13がNchトランジスタ12がオン/オフすることにより、直流電源1からの入力電圧Vinを昇圧した出力電圧Voutを出力コンデンサ5の両端に発生させて白色発光ダイオードLED1〜LED6を駆動する。
即ち、ドライブ回路13がNchトランジスタ12のゲートに所定のゲート電圧を印加しNchトランジスタ12がオンであるときには、直流電源1からコイル3に電流が流れ、コイル3にエネルギーが蓄積される。そして、ドライブ回路13がNchトランジスタ12のゲートに所定のゲート電圧を印加せずNchトランジスタ12がオフであるときには、蓄積されたエネルギーが放出されることによってコイル3に逆起電力が発生する。コイル3に発生した逆起電力は直流電源1の入力電圧Vinに加算され、ダイオード4を介して出力コンデンサ5を充電する。そして、このような一連の動作を繰り返すことにより昇圧動作が行われ、出力コンデンサ5の両端に出力電圧Voutが発生し、この出力電圧Voutによって白色発光ダイオードLED1〜LED6に出力電流Ioutが流れ、白色発光ダイオードLED1〜LED6が発光する。
そして、この出力電流Ioutの電流値に出力電流検出用抵抗R1の抵抗値を乗じたフィードバック電圧Vfbがフィードバック端子TFBを介してエラーアンプ18の非反転入力端子に供給され、エラーアンプ18の反転入力端子に供給される基準電圧Vrefと比較される。これにより、エラーアンプ18の出力にはフィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとの差に応じた電圧が現れ、この電圧がPWMコンパレータ17の非反転入力端子に供給される。尚、基準電圧Vrefは基準電源19の出力電圧を抵抗R3及びR4で分圧した電圧である。
また、PWMコンパレータ17の反転入力端子に入力される信号は、Nchトランジスタ11がオンすることによって抵抗R2を流れる電流に比例する信号と、発振回路15から出力される鋸歯状波信号とをアンプ16で加算し増幅した信号であり、この信号がPWMコンパレータ17によってエラーアンプ18の出力電圧レベルと比較される。その結果、エラーアンプ18の出力電圧レベルがアンプ16の出力電圧信号レベルより高くなる期間では、PWMコンパレータ17のPWM出力はHighレベルになり、エラーアンプ18の出力電圧レベルがアンプ16の出力信号レベルより低くなる期間では、PWMコンパレータ17のPWM出力はLowレベルになる。
そして、ドライブ回路13はPWMコンパレータ17のPWM出力を受けて、そのPWM出力に応じたデューティのパルス信号をNchトランジスタ11及び12のゲートに供給してNchトランジスタ11及び12をオン/オフする。即ち、ドライブ回路13は、PWMコンパレータ17のPWM出力がHighレベルのときであって、発振回路15から出力される鋸歯状波信号の各サイクルが開始するときに、Nchトランジスタ11及び12への所定のゲート電圧の供給を開始してNchトランジスタ11及び12をオンさせる。そして、PWMコンパレータ17のPWM出力がLowレベルになったときにNchトランジスタ11及び12への所定のゲート電圧の供給を停止し、Nchトランジスタ11及び12をオフさせる。
ドライブ回路13がこのようなNchトランジスタ11及び12のオン/オフ制御即ちスイッチング制御動作を行うと、フィードバック電圧Vfbと基準電圧Vrefとが等しくなるように昇圧動作が行われることになる。そして、出力電流Ioutは、基準電圧Vref(=フィードバック電圧Vfb)を出力電流検出用抵抗R1の抵抗値で除した電流値に安定化される。
また、PWMコンパレータ17の反転入力端子に入力される信号には、抵抗R2を流れる電流に応じた信号、即ち、Nchトランジスタ11及び12がオンすることによりコイル3を流れる電流に応じた信号が含まれているので、コイル3に流れるピーク電流を制限することができる。また、過電圧保護回路23は、出力電圧Voutが所定の過電圧保護電圧を超えたことを検知してドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させるので、前記所定の過電圧保護電圧を超える過電圧が負荷である白色発光ダイオードLED1〜LED6や出力コンデンサ5に印加されることを防止することができる。また、過熱保護回路22は、ドライブ回路13のスイッチング制御動作に伴う、特に、Nchトランジスタ12周辺の過熱を検知してドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させるので、昇圧チョッパレギュレータ10の過熱による故障や破壊を防止することができる。
また、ON/OFF回路21は、コントロール端子TCTRLに入力される輝度調整信号に応じてドライブ回路13のスイッチング制御動作を作動/停止させるものである。そして、ドライブ回路13のスイッチング制御動作が作動すると、スイッチング電源回路の昇圧動作が作動し、ドライブ回路13のスイッチング制御動作が停止すると、スイッチング電源回路の昇圧動作が停止する。輝度調整信号としては、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号が挙げられる。ON/OFF回路21は、コントロール端子TCTRLに入力される輝度調整信号がHighレベルのときにはドライブ回路13のスイッチング制御動作を作動させて白色発光ダイオードLED1〜LED6に出力電流Ioutを流し、輝度調整信号がLowレベルのときにはドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させて出力電圧Voutを低下させるので、白色発光ダイオードLED1〜LED6に流れる平均電流は輝度調整信号のデューティに応じて変化することになる。そして、白色発光ダイオードLED1〜LED6の輝度は白色発光ダイオードLED1〜LED6に流れる平均電流に比例するので、輝度調整信号のデューティを変えることで白色発光ダイオードLED1〜LED6の輝度を調整することができる。
また、ソフトスタート回路20は、ドライブ回路13のスイッチング制御動作開始時に、ドライブ回路13の出力デューティを徐々に変化させることにより出力電圧Voutを緩やかに上昇させるもの、換言すると所謂ソフトスタート動作を行うものである。出力電圧Voutを緩やかに上昇させなければ、出力コンデンサ5が充電されていない場合に、充電のための過大な充電電流が直流電源1から流れることになり、直流電源1がリチウムイオン電池等の電池である場合、電池に負担がかかるとともに、電池電圧がこの過大な充電電流により低下し、電池が本来の終止電圧まで使用できなくなるという問題が発生する。
ソフトスタート回路20は、図9(b)に示すように、端子T1〜T3と、スイッチSW1及びSW2と、定電流源I1と、容量C1と、Pチャンネル型MOSFET(以下、Pchトランジスタという)Q1とによって構成される。端子T1はスイッチSW1の制御端子及びスイッチSW2の制御端子に接続され、端子T2はスイッチSW1及び定電流源I1を介してPchトランジスタQ1のゲート、容量C1の一端、及びスイッチSW2の一端に接続される。また、容量C1の他端、スイッチSW2の他端、及びPchトランジスタQ1のドレインはグランドに接続され、PchトランジスタQ1のソースは端子T3に接続される。なお、端子T1はコントロール端子TCTRLに接続され、端子T2は電源端子TVINに接続され、端子T3はPWMコンパレータ17の非反転入力端子とエラーアンプ18の出力端子との接続点に接続される。また、スイッチSW1は、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオンになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオフになるスイッチであり、スイッチSW2は、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオフになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオンになるスイッチである。
端子T2に入力電圧Vinが供給され、端子T1に供給される輝度調整信号がHighレベルになってスイッチSW1がオンになりスイッチSW2がオフになると、定電流源I1から定電流が出力され容量C1の充電が開始される。この容量C1の充電開始に伴って、PchトランジスタQ1のゲート電位が徐々に低電位から高電位へと立ち上がり、やがてPchトランジスタQ1はオンからオフになる。このようなPchトランジスタQ1のゲート電位の変化に伴って、エラーアンプ18の出力電位が徐々に立ち上がるので、ソフトスタート動作が実現される。ソフトスタート動作による出力電圧Voutの立ち上がり速度は、容量C1の容量値及び定電流源I1の出力電流値により簡単に設定することができる。
次に、図9(a)に示すスイッチング電源回路の各部の電圧波形及び電流波形について図10のタイムチャートを参照して説明する。ここで、図10(a)は、ソフトスタート回路20の効果を説明するために、ソフトスタート回路20が機能していない状態における図9(a)に示すスイッチング電源回路の各部の電圧波形及び電流波形を示し、図10(b)及び(c)は、ソフトスタート回路20が機能している状態における図9(a)に示すスイッチング電源回路の各部の電圧波形及び電流波形を示している。尚、図10において、最初に輝度調整信号がLowレベルからHighレベルに変化するときを図9(a)に示すスイッチング電源回路の起動時とする、即ちこのときに直流電源1から図9(a)に示すスイッチング電源回路への入力電圧Vinの供給が開始される。そして、図9(a)に示すスイッチング電源回路の起動時に出力電圧Voutは0(V)であり、出力コンデンサ5は全く充電されていない状態であるものとする。
先ず、図10(a)を参照してソフトスタート回路20が機能していないときの図9(a)に示すスイッチング電源回路の昇圧動作について説明をする。
図10(a)において、起動時、即ち、最初に輝度調整信号VCTRLがLowレベルからHighレベルに変化したとき、ドライブ回路13は昇圧動作を開始するが、ソフトスタート回路20によるソフトスタート機能は働かないものとしているので出力電圧Voutの電圧値は即座に所定の電圧値V1まで増大する。このとき、直流電源1からスイッチング電源回路に供給される入力電流Iinは、所定の電圧値V1で出力コンデンサ5を充電する充電電流となるため、過大な電流となる。そして、出力コンデンサ5の充電が進むにつれて入力電流Iinは減少し、その後一定となる。
尚、所定の電圧値V1とは、昇圧された出力電圧Voutにより白色発光ダイオードLED1〜LED6と出力電流検出用抵抗R1とに出力電流Ioが流れ、これによりフィードバック端子TFBに発生するフィードバック電圧Vfbが基準電圧Vrefと等しくなるときの出力電圧Voutの電圧値である。
そして、輝度調整信号VCTRLがHighレベルからLowレベルに変化すると、ON/OFF回路21がドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させるので、出力電圧Voutの値は直流電源1からスイッチング電源回路に印加される入力電圧Vinの電圧値と一致し、入力電流Iinは流れなくなる。
その後、白色発光ダイオードLED1〜LED6の輝度調整のために輝度調整信号VCTRLが所定のデューティでHighレベルとLowレベルに順次切り換わると、出力電圧Voutの値は輝度調整信号VCTRLのレベルに応じて所定の電圧値V1と入力電圧Vinの電圧値とに順次切り換わる。出力電圧Voutの電圧値が入力電圧Vinの電圧値から所定の電圧値V1に切り換わるときに流れる入力電流Iinは、出力コンデンサ5が既に入力電圧Vinの電圧値に充電されているので、所定の電圧値V1から入力電圧Vinの電圧値を差し引いた電圧で出力コンデンサ5を充電する充電電流となり、過大な電流とはならない。
以上のように、ソフトスタート回路20によるソフトスタート機能は働かない場合、起動時に流れる入力電流Iinが過大になることが問題である。即ち、起動時には出力コンデンサ5を充電する過大な充電電流が電池である直流電源1から流れ出すために、電池に負担がかかるとともに、電池電圧がこの過大な充電電流により低下し、電池が本来の終止電圧まで使用できなくなるという問題が発生する。この問題を解決するためにソフトスタート回路20が機能することが必要である。
続いて、図10(b)を参照してソフトスタート回路20が機能しているときの図9(a)に示すスイッチング電源回路の昇圧動作について説明をする。
図10(b)において、起動時、即ち、最初に電圧信号である輝度調整信号VCTRLがLowレベルからHighレベルに変化したとき、ドライブ回路13はスイッチング制御動作を開始するが、ソフトスタート回路20がドライブ回路13の出力デューティを徐々に変化させるので、出力電圧Voutは入力電圧Vinの電圧値になった後、所定の電圧値V1になるまで緩やかに上昇する。そして、起動時の入力電流Iinは入力電圧Vinの電圧値で出力コンデンサ5を充電する充電電流となるため、過大な電流とはならない。そして、出力コンデンサ5の充電が進むにつれて入力電流Iinは減少し、その後一定となる。
そして、輝度調整信号VCTRLがHighレベルからLowレベルに変化すると、ON/OFF回路21がドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させるので、出力電圧Voutは直流電源1からスイッチング電源回路に印加される入力電圧Vinの電圧値になり、入力電流Iinは流れなくなる。また、輝度調整信号VCTRLがHighレベルからLowレベルに変化すると、スイッチSW1がオフになりスイッチSW2がオンになるので、容量C1に蓄えられていた電荷が即座に引き抜かれる。
その後、白色発光ダイオードLED1〜LED6の輝度調整のために輝度調整信号VCTRLが所定のデューティでHighレベルとLowレベルに順次切り換わると、輝度調整信号VCTRLがLowレベルからHighレベルに切り換わるときには、ソフトスタート回路20がソフトスタート動作を行うので出力電圧Voutは所定の電圧値V1に向かって緩やかに上昇するが、輝度調整信号VCTRLがHighレベルからLowレベルに切り換わるときには、出力電圧Voutの電圧値は即座に入力電圧Vinの電圧値になる。出力電圧Voutが入力電圧Vinの電圧値から所定の電圧値V1に向かって上昇するときに流れる入力電流Iinは、出力コンデンサ5が既に入力電圧Vinの電圧値に充電されているので、上昇した分の電圧で出力コンデンサ5を充電する充電電流となり、過大な電流とはならない。このように、ソフトスタート回路20が機能することにより、起動時の入力電流Iinが過大になることを防止し、直流電源1にダメージ等を与えることを防止することができる。
また、従来のスイッチング電源回路の他の構成例としては、一次巻線と該一次巻線とは異なる巻き数で構成された二次巻線とを有するトランスと、直流電源の電源端子間に前記トランスの一次巻線と直列接続されたスイッチング素子と、前記直流電源の立ち上がり時にソフトスタート用コンデンサを充電し、その充電電圧に相対した電圧信号をソフト制御信号として出力するソフトスタート回路と、前記ソフトスタート回路から出力されるソフト制御信号に基づいて、前記スイッチング素子のデューティ比を徐々に高めるように制御する制御回路と、前記直流電源の所定電圧値以下の立ち下がりを検出し、その検出信号を出力する電圧変動検出回路と、前記電圧変動検出回路から出力された検出信号に基づいて、前記ソフトスタート用コンデンサの充電電荷を強制的に放電させる強制放電回路とを備る回路構成が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
特開平11―69793号公報
本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路の一構成例を図1(a)に示す。なお、図1において図9と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
図1(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路は、入力コンデンサ2と、コイル3と、整流素子であるダイオード4と、出力コンデンサ5と、出力電流検出用抵抗R1と、1つのパッケージにIC化されコイル3に対するエネルギーの蓄積/放出を切り換えて昇圧動作を行う昇圧チョッパレギュレータ100とによって構成されている。なお、図1(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路と図9(a)に示す従来の昇圧型スイッチング電源回路との相違点は、ソフトスタート回路の構成のみである。
図1(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路が具備するソフトスタート回路24は、図1(b)に示すように、端子T1〜T3と、スイッチSW1と、定電流源I1と、容量C1と、PchトランジスタQ1と、スイッチSW2と、定電流源I2とによって構成される。端子T1はスイッチSW1の制御端子及びスイッチSW2の制御端子に接続され、端子T2はスイッチSW1及び定電流源I1を介してPchトランジスタQ1のゲートと容量C1の一端とスイッチSW2の一端とに接続される。また、容量C1の他端及びPchトランジスタQ1のドレインはグランドに接続され、PchトランジスタQ1のソースは端子T3に接続され、スイッチSW2の他端は定電流源I2を介してグランドに接続される。なお、端子T1はコントロール端子TCTRLに接続され、端子T2は電源端子TVINに接続され、端子T3はPWMコンパレータ17の非反転入力端子とエラーアンプ18の出力端子との接続点に接続される。また、スイッチSW1は、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオンになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオフになるスイッチであり、スイッチSW2は、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオフになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオンになるスイッチである。
端子T2に入力電圧Vinが供給され、端子T1に供給される輝度調整信号がHighレベルになってスイッチSW1がオンになりスイッチSW2がオフになると、定電流源I1から定電流が出力され容量C1の充電が開始される。この容量C1の充電開始に伴って、PchトランジスタQ1のゲート電位が徐々に低電位から高電位へと立ち上がり、やがてPchトランジスタQ1はオンからオフになる。このときのPchトランジスタQ1のゲート電位ΔV1は下記に示す(1)式で表すことができる。なお、(1)式中のC1は容量C1の容量値、I1は定電流源I1の出力電流値、Δt1は充電時間をそれぞれ示している。
ΔV1=I1・Δt1/C1 …(1)
このようなPchトランジスタQ1のゲート電位の変化に伴って、エラーアンプ18の出力電位が徐々に立ち上がるので、ソフトスタート動作が実現される。ソフトスタート動作による出力電圧Voutの立ち上がり速度は、容量C1の容量値C1及び定電流源I1の出力電流値I1により簡単に設定することができる。
一方、端子T1に供給される輝度調整信号がLowレベルになってスイッチSW1がオフになりスイッチSW2がオンになると、容量C1に蓄えられている電荷が定電流源I2によって引き抜かれる。この電荷引き抜きによるPchトランジスタQ1のゲート電位の電圧降下ΔV2は下記に示す(2)式で表すことができる。なお、(2)式中のC1は容量C1の容量値、I2は定電流源I2の出力電流値、Δt2は電荷引き抜き時間をそれぞれ示している。
ΔV2=I2・Δt2/C1 …(2)
電圧降下ΔV2を小さくすることで、容量C1に蓄えられている電荷の引き抜きを抑えることができ、その結果エラーアンプ18の出力電位の低下を抑えることが可能となる。したがって、容量C1に蓄えられている電荷の引き抜きを抑えるために、I1/I2を大きな値にする。
そして、エラーアンプ18の出力電位の低下を抑えることができれば、ソフトスタート回路24がスロースタート動作を行うことができないため、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置の各部の電圧波形及び電流波形を示す図2(a)からも分かるように、輝度調整信号VCTRLのHighレベル期間が短くても出力電圧Voutが目標値(=V1)に達することができ、LED1〜LED6を発光させることができる。これにより、輝度調整信号の周期が短くて輝度調整信号のHighレベル期間が短い場合も輝度調整信号のデューティに応じた所望の輝度調整を行うことができる。また、上述したI1/I2の値は、容量の放電が完了するのに要する時間がON/OFF回路21によるドライブ回路13のスイッチング制御動作の作動/停止の切り換え周期よりも長くなるように設定する。
なお、図2において比較のために、図9(a)に示す従来の昇圧型スイッチング電源装置の各部の電圧波形及び電流波形を図2(b)に示している。また、図2において、最初に輝度調整信号がLowレベルからHighレベルに変化するときをスイッチング電源回路の起動時としており、スイッチング電源回路の起動時に出力電圧Voutは0(V)であり、出力コンデンサ5は全く充電されていない状態であるものとしている。
また、図1(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路に、直流電源1とスイッチング電源回路との間に設けられる電源スイッチがオフであるとき即ちスイッチング電源回路に入力電圧Vinが供給されないときにLowレベルとなる輝度調整信号を入力するようにしておけば、電源スイッチがオフであるとき即ちスイッチング電源回路に入力電圧Vinが供給されないときに容量C1に蓄えられている電荷が定電流源I2によって引き抜かれる。そして、電源スイッチがオフであるときの電荷引き抜き時間Δt2は長いので、容量C1の電荷を十分に引き抜くことができ、PchトランジスタQ1のゲート電位はグランド電位またはそれに近い電位となり、次に電源スイッチがオフからオンに切り換わる際にソフトスタート回路24がソフトスタート動作を行うことができる。
ソフトスタート回路24は、図3に示すように定電流源I1及びI2をカレントミラー回路を用いた電流源(定電流源I0と、PchトランジスタQ2及びQ3と、NchトランジスタQ4〜Q6とによって構成される電源回路)とする回路構成にすることもできるが、図4に示すように定電流源I1及びI2をそれぞれNチャンネル型デプレッショントランジスタQ7及びQ8とする回路構成にすることが望ましい。また、図4に示す回路構成では、スイッチSW1にPchトランジスタQ9を用い、スイッチSW2にNchトランジスタQ10を用いている。
図4に示すように回路構成が望ましい理由は、デプレッショントランジスタは図8に示すような静特性を有しており、ゲートとソースを短絡してゲート・ソース間電圧VGSを零にすることで、ドレイン・ソース間電圧による影響のない定電流値Icのドレイン電流IDを得ることが可能であり、さらにデプレッショントランジスタはゲート長とゲート幅の比を変えることで簡単に出力電流値を設定することができるため低コスト化や昇圧チョッパレギュレータ100の小型化に有効だからである。
次に、本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路の他の構成例を図5(a)に示す。なお、図5において図9と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
図5(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路は、入力コンデンサ2と、コイル3と、整流素子であるダイオード4と、出力コンデンサ5と、出力電流検出用抵抗R1と、1つのパッケージにIC化されコイル3に対するエネルギーの蓄積/放出を切り換えて昇圧動作を行う昇圧チョッパレギュレータ200とによって構成されている。なお、図5(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路と図9(a)に示す従来の昇圧型スイッチング電源回路との相違点は、ソフトスタート回路の構成のみである。
図5(a)に示す本発明に係る昇圧型スイッチング電源回路が具備するソフトスタート回路25は、図5(b)に示すように、端子T1〜T3と、スイッチSW1と、定電流源I3と、容量C1と、PchトランジスタQ1と、定電流源I4とによって構成される。端子T1はスイッチSW1の制御端子に接続され、端子T2はスイッチSW1及び定電流源I3を介してPchトランジスタQ1のゲートと容量C1の一端と定電流源I4の一端とに接続される。また、容量C1の他端とPchトランジスタQ1のドレインと定電流源I4の他端とはグランドに接続され、PchトランジスタQ1のソースは端子T3に接続される。なお、端子T1はコントロール端子TCTRLに接続され、端子T2は電源端子TVINに接続され、端子T3はPWMコンパレータ17の非反転入力端子とエラーアンプ18の出力端子との接続点に接続される。また、スイッチSW1は、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオンになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオフになるスイッチである。
端子T2に入力電圧Vinが供給され、端子T1に供給される輝度調整信号がHighレベルになってスイッチSW1がオンになると、定電流源I3から定電流が出力され、その定電流の一部が定電流源I4によって引き抜かれ、残りが容量C1への充電電流となる。容量C1の充電に伴って、PchトランジスタQ1のゲート電位が徐々に低電位から高電位へと立ち上がり、PchトランジスタQ1はオンからオフになる。このときのPchトランジスタQ1のゲート電位ΔV1は下記に示す(3)式で表すことができる。なお、(3)式中のC1は容量C1の容量値、I3は定電流源I3の出力電流値、I4は定電流源I4の出力電流値、Δt1は充電時間をそれぞれ示している。
ΔV1=(I3−I4)・Δt1/C1 …(3)
このようなPchトランジスタQ1のゲート電位の変化に伴って、エラーアンプ18の出力電位が徐々に立ち上がるので、ソフトスタート動作が実現される。ソフトスタート動作による出力電圧Voutの立ち上がり速度は、容量C1の容量値C1、定電流源I3の出力電流値I3、及び定電流源I4の出力電流値I4により簡単に設定することができる。また、ソフトスタート回路24では、容量C1に蓄えられている電荷を引き抜く際スイッチSW2の抵抗成分があるためPchトランジスタQ1のゲート電位が所定値以下になるとリーク電流のみでしか電荷を引き抜くことができないが、ソフトスタート回路25では、確実に定電流源I4の出力電流で容量C1に蓄えられている電荷を引き抜くことができる。
一方、端子T1に供給される輝度調整信号がLowレベルになってスイッチSW1がオフになると、容量C1に蓄えられている電荷が定電流源I4によって引き抜かれる。この電荷引き抜きによるPchトランジスタQ1のゲート電位の電圧降下ΔV2は下記に示す(4)式で表すことができる。なお、(4)式中のC1は容量C1の容量値、I4は定電流源I4の出力電流値、Δt2は電荷引き抜き時間をそれぞれ示している。
ΔV2=I4・Δt2/C1 …(4)
電圧降下ΔV2を小さくすることで、容量C1に蓄えられている電荷の引き抜きを抑えることができ、その結果エラーアンプ18の出力電位の低下を抑えることが可能となる。したがって、容量C1に蓄えられている電荷の引き抜きを抑えるために、I3/I4を大きな値にする。ここで、容量C1の充電にとって定電流源I4によって引き抜かれる電流は無駄になっているので、定電流源I4の出力電流値I4を小さくして、I3/I4をI1/I2より大きい値にするとよい。
そして、エラーアンプ18の出力電位の低下を抑えることができれば、ソフトスタート回路24がスロースタート動作を行うことができないため、本発明に係る昇圧型スイッチング電源装置の各部の電圧波形及び電流波形を示す図2(a)からも分かるように、輝度調整信号VCTRLのHighレベル期間が短くても出力電圧Voutが目標値(=V1)に達することができ、LED1〜LED6を発光させることができる。これにより、輝度調整信号の周期が短くて輝度調整信号のHighレベル期間が短い場合も輝度調整信号のデューティに応じた所望の輝度調整を行うことができる。また、上述したI3/I4の値は、容量の放電が完了するのに要する時間がON/OFF回路21によるドライブ回路13のスイッチング制御動作の作動/停止の切り換え周期よりも長くなるように設定する。
また、直流電源1とスイッチング電源回路との間に設けられる電源スイッチがオフであるとき即ちスイッチング電源回路に入力電圧Vinが供給されないときに容量C1に蓄えられている電荷が定電流源I4によって引き抜かれる。そして、電源スイッチがオフであるときの電荷引き抜き時間Δt2は長いので、容量C1の電荷を十分に引き抜くことができ、PchトランジスタQ1のゲート電位はグランド電位またはそれに近い電位となり、次に電源スイッチがオフからオンに切り換わる際にソフトスタート回路24がソフトスタート動作を行うことができる。
ソフトスタート回路25は、図6に示すように定電流源I3及びI4をカレントミラー回路を用いた電流源(定電流源I0と、PchトランジスタQ2及びQ3と、NchトランジスタQ4〜Q6とによって構成される電源回路)とする回路構成にすることもできるが、図7に示すように定電流源I3及びI4をそれぞれNチャンネル型デプレッショントランジスタQ7及びQ8とする回路構成にすることが望ましい。また、図7に示す回路構成では、スイッチSW1にPchトランジスタQ9を用いている。
図7に示すように回路構成が望ましい理由は、デプレッショントランジスタは図8に示すような静特性を有しており、ゲートとソースを短絡してゲート・ソース間電圧VGSを零にすることで、ドレイン・ソース間電圧VDSによる影響のない定電流値Icのドレイン電流IDを得ることが可能であり、さらにデプレッショントランジスタはゲート長とゲート幅の比を変えることで簡単に出力電流値を設定することができるため低コスト化や昇圧チョッパレギュレータ200の小型化に有効だからである。
なお、上記説明では、ON/OFF回路21は、輝度調整信号がHighレベルの場合にドライブ回路13のスイッチング制御動作を作動させ、輝度調整信号がHighレベルの場合にドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させていたが、輝度調整信号がLowレベルの場合にドライブ回路13のスイッチング制御動作を停止させ、輝度調整信号がHighレベルの場合にドライブ回路13のスイッチング制御動作を作動させても構わない。この場合、スイッチSW1を、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオフになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオンになるスイッチにし、スイッチSW2を、制御端子にHighレベルの信号が供給されるとオンになり、制御端子にLowレベルの信号が供給されるとオフになるスイッチにする。また、上記説明では、トランスレスの昇圧型スイッチング電源回路について説明を行ったが、本発明はスイッチングトランスを有する昇圧型スイッチング電源回路にも適用することができる。
また、本発明に係る電子機器は、駆動電流の調整が必要な負荷(例えば液晶表示装置の照明源)と、前記負荷を駆動する本発明に係るスイッチング電源回路とを搭載している。