JP4234237B2 - 二輪車用ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキをかけるための左ハンドルレバーまたはペダルと右ハンドルレバーとが設けられた二輪車に好適に用いられる二輪車用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、二輪車は、右ハンドルにフロントブレーキをかけるための右ハンドルレバーが設けられ、左ハンドルにクラッチレバーが設けられ、また、車体の左側の足元に変速用のペダルが設けられ、車体の右側の足元にリヤブレーキをかけるためのペダルが設けられている。
【0003】
また、二輪車には、運転時の操作を容易にするために無段階変速装置を用いたスクータ等があり、この種のスクータでは、クラッチレバー、変速用のペダルを必要としないため、左ハンドルにはリヤブレーキをかけるための左ハンドルレバーが設けられている。
【0004】
この種の従来技術による二輪車用ブレーキ装置は、例えば、左側のハンドルに設けられた左ハンドルレバーまたは車体の右側に設けられたペダルと、右側のハンドルに設けられた右ハンドルレバーと、該右ハンドルレバーの回動によって前輪に制動を与えるフロントブレーキと、前記左ハンドルレバーまたはペダルの回動によって後輪に制動を与えるリヤブレーキとから構成されたものが知られている。ここで、二輪車用ブレーキ装置では、制動時に大きな荷重が作用するフロントブレーキを制動性能に優れたディスクブレーキによって構成し、フロントブレーキに比較して制動時に作用する荷重が軽いリヤブレーキには安価なドラムブレーキを用いている。
【0005】
そして、この従来技術による二輪車用ブレーキ装置では、右ハンドルレバーを操作することにより、マスタシリンダのピストンを押動してブレーキ液を押圧し、フロントディスクブレーキを作動させて前輪に制動を与える。また、左ハンドルレバー等を操作することにより、ブレーキ駆動ワイヤを介してリヤドラムブレーキを作動させて後輪に制動を与える。従って、左,右のハンドルレバーを適宜回動操作することにより、前輪,後輪に制動を与えて車両を減速、または停止させることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による二輪車用ブレーキ装置では、右ハンドルレバーを操作することによってフロントディスクブレーキに制動力を与え、左ハンドルレバー等を操作することによってリヤドラムブレーキに制動力を与える構成となっている。このため、制動距離を短くするためには、フロントディスクブレーキの制動力とリヤドラムブレーキの制動力とを適度なバランスに調整する必要があり、レバー操作が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、左のハンドルレバーまたはペダルを操作したときにフロントブレーキとリヤブレーキにそれぞれ制動を与えることにより、操作性や制動能力を向上できるようにした二輪車用ブレーキ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による二輪車用ブレーキ装置は、軸方向の一側にピストンが摺動可能に挿嵌されたシリンダ穴を有するマスタシリンダのハウジングと、該ハウジングの軸方向に対しほぼ直交して該ハウジングの軸方向一側に配置され、長さ方向の一側を回動支点として該ハウジングに枢支された回動レバーと、前記回動レバーの長さ方向の中間位置と前記ハウジング内のピストンとの間に設けられ、該ピストンを押動する押動部材と、前記ハウジングの軸方向にほぼ平行に配置され、長さ方向に延びた長穴が前記回動レバーの長さ方向の中間位置で係合されると共に、右ハンドルに設けられた右ハンドルレバーに連結されて引っ張り操作される第1の連結レバーと、前記ハウジングの軸方向にほぼ直交して配置され、長さ方向の中間位置で左ハンドルに設けられた左ハンドルレバーまたは車体の右側に設けられたペダルに連結されて引っ張り操作されるイコライザと、前記ハウジングの軸方向にほぼ平行に配置され、該イコライザの長さ方向の他側で枢支されると共に、長さ方向に延びた長穴が前記回動レバーの長さ方向の他側で係合した第2の連結レバーと、前記ハウジングの軸方向他側に径方向へ突出して形成され、前記左ハンドルレバーまたはペダルによって前記イコライザが大きく引っ張り操作されたときに、該イコライザの長さ方向の他側に当接して変位を規制するイコライザストッパと、該イコライザストッパを利用して設けられ、前記ハウジングのシリンダ穴に連通する配管接続口と、該配管接続口とフロントブレーキとを接続するブレーキ配管と、前記イコライザの長さ方向の一側とリヤブレーキとの間を接続する接続体とによって構成し、前記回動レバー、第1の連結レバー、第2の連結レバーおよびイコライザは、前記ハウジングの周りを取り囲んで一体的に取付けられる構成としる。
【0009】
このように構成したことにより、右ハンドルレバーを回動させると、第1の連結レバーが引っ張られて回動レバーが回動し、該回動レバーに接続された押動部材によってハウジング内のピストンが押動されるから、該ピストンによってシリンダ穴内のブレーキ液が押圧され、このブレーキ液圧が配管接続口、ブレーキ配管を介してフロントブレーキに作用し、該フロントブレーキに制動が与えられる。このときには、第1の連結レバーと押動部材とがそれぞれ回動レバーの長さ方向の中間位置に接続されており、右ハンドルレバーの回動による引っ張り力が第1の連結レバーから押動部材にほぼ直接的に伝達されるから、右ハンドルレバーの操作量をそのままにフロントブレーキに制動を与えることができる。
【0010】
また、左ハンドルレバーを握りまたはペダルを踏み込んで、これらを回動させると、イコライザが引っ張り操作され、該イコライザの長さ方向の一側に接続された接続体を介してリヤブレーキに制動が与えられる。同時に、前記イコライザの長さ方向の他側に接続された第2の連結レバーによって回動レバーが回動されるから、該回動レバーの回動に応じてハウジング内のピストンが押動部材によって押動され、フロントブレーキに制動が与えられる。
【0011】
さらに、例えば、ブレーキ液の漏洩等の失陥によってフロントブレーキを使用できなくなった状態で、左ハンドルレバーまたはペダルによってイコライザを引っ張り操作すると、ピストンが抵抗なく押し込まれ、該イコライザの長さ方向の他側がハウジングに突設されたイコライザストッパに当接するから、この当接点を支点としてイコライザの長さ方向の一側を回動させることができる。これにより、イコライザの長さ方向一側に接続された接続体を左ハンドルレバーによって引っ張り操作することができ、リヤブレーキに制動を与えることができる。
【0012】
一方、ブレーキ配管が接続される配管接続口をハウジングの軸方向の他側に設けられたイコライザストッパを利用して設けているから、配管接続口を設けるための突出部、所謂ボス部を設けることなく配管接続口を形成することができ、ハウジングの形状を簡略化することができる。
【0013】
請求項2の発明は、ハウジングには、押動部材を挟んでピストンの反対側に止め輪を嵌着して設け、該止め輪を押動部材に当接させることによりピストンの戻り位置を規定する構成としたことにある。
【0014】
このように構成したことにより、ピストンの戻り位置を止め輪によって規定でき、ブレーキ性能を安定させることができる。しかも、止め輪は押動部材を介してピストンの戻り位置を直接的に規定しているから、加工精度を緩和することができる。
【0015】
請求項3の発明は、回動レバーには、その長さ方向の一側にハウジングに当接し、ピストンの戻り位置を規定する調整ねじを設ける構成としたことにある。
【0016】
このように構成したことにより、ピストンの戻り位置を調整ねじによって規定でき、ブレーキ性能を安定させることができる。しかも、調整ねじによってピストンの戻り位置を微調整できるから、加工精度を緩和することができる。
【0017】
請求項4の発明は、ハウジングには、配管接続口に連通するブリーダ穴を設け、少なくとも該ブリーダ穴と配管接続口のうちいずれか一方をシリンダ穴に連通させる構成としたことにある。
【0018】
このように構成したことにより、ブレーキ液中の空気をブリーダ穴から容易に抜くことができる。また、ブリーダ穴と配管接続口のうちいずれか一方をシリンダ穴に連通させることにより、ブリーダ穴と配管接続口の両方をシリンダ穴に連通させることができる。
【0019】
請求項5の発明は、回動レバーは、長さ方向の一側に位置してハウジングに回動可能に取付けられた取付部と、該取付部からハウジングの外周側を長さ方向の他側に延びた第1のレバー部と、ハウジングを挟んで該第1のレバー部の反対側を長さ方向の他側に延びた第2のレバー部とによって二又状に形成し、第1の連結レバーを前記第1のレバー部に接続し、前記第2の連結レバーを前記取付部を基点として第1の連結レバーよりも離れた位置で前記第2のレバー部に接続し、押動部材を前記取付部と第1の連結レバーとの間に位置して前記第1のレバー部と第2のレバー部との間に設ける構成としたことにある。
【0020】
このように構成したことにより、回動レバーは、第1の連結レバーが引っ張られたときに、第1のレバー部と第2のレバー部とを取付部を回動支点として回動し、第2の連結レバーが引っ張られたときにも、第1のレバー部と第2のレバー部とを取付部を回動支点として回動する。また、ハウジングの軸方向に対する押動部材の組付け寸法が小さくなる上に、押動部材によって第1のレバー部と第2のレバー部とが連結され、回動レバーの強度が高まる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による二輪車用ブレーキ装置を添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示すに、本実施の形態では、左ハンドルレバーと右ハンドルレバーとによってブレーキ操作する場合について説明する。
【0023】
1は運転者の左手側に位置する左ハンドル2に設けられた左ハンドルレバー、3は運転者の右手側に位置する右ハンドル4に設けられた右ハンドルレバーで、左,右のハンドルレバー1,3は握られて回動することにより、後述するフロントディスクブレーキ5、リヤドラムブレーキ7を作動させるものである。
【0024】
5は前輪(図示せず)に設けられたフロントディスクブレーキで、該フロントディスクブレーキ5は、後述するハウジング11の配管接続口21に例えば可撓配管(ホース)等からなるブレーキ配管6を介して接続されている。そして、フロントディスクブレーキ5は、ハウジング11のシリンダ穴12内のブレーキ液がピストン24によって押圧されることにより、前記ブレーキ配管6を介して供給される液圧によって作動し、前輪に制動を与えるものである。
【0025】
7は後輪(図示せず)に設けられたリヤドラムブレーキで、該リヤドラムブレーキ7は、後述するブレーキ駆動ワイヤ39が引っ張られることにより作動し、後輪に制動を与えるものである。
【0026】
11は二輪車の車体(図示せず)に取付けられるマスタシリンダのハウジングで、該ハウジング11は例えばアルミニウム材料等を用いた鋳造品として形成されている。また、ハウジング11の内部には、図2に示す如く、該ハウジング11の軸線O−Oを中心として軸方向となる上,下方向に伸長するシリンダ穴12が形成されている。そして、シリンダ穴12は、奥部側に位置して後述のピストン24が摺動可能に嵌合する小径なピストン挿入部12Aと、下側に位置して後述の閉塞部材25等が挿嵌される大径な開口部12Bとからなり、該開口部12Bの開口端側には、後述の止め輪43が嵌着される嵌着溝12Cが形成されている。
【0027】
ここで、ハウジング11の外周形状の説明をするにあたり、該ハウジング11が車体に取付けられたときの前側、即ち図3に示す面をハウジング11の前側とし、かつ図3の上側、下側、左側、右側をハウジング11の上側、下側、左側、右側として他図の説明も行なうものとする。
【0028】
13はハウジング11の前側に設けられた前側ブラケットで、該前側ブラケット13は、図4に示すようにハウジング11の上端部から前方に突出して設けられている。また、前側ブラケット13には、左,右方向のほぼ中央部に位置して後述する左ブレーキワイヤ36のチューブ36Bが螺着されるねじ穴13Aが形成されている。
【0029】
また、14はハウジング11の軸方向上側に位置して前側ブラケット13の右側に設けられたイコライザストッパで、該イコライザストッパ14は、図5に示す如く、前側ブラケット13よりも大きく前方に突出した角柱状に形成されている。そして、イコライザストッパ14は、その下面を当接面14Aとして後述するイコライザ33の円弧状突部33Dを当接させるものである。
【0030】
15はハウジング11の前側に位置して上,下方向の中間部に設けられた中間ブラケットで、該中間ブラケット15は、図3に示すように、ブレーキ駆動ワイヤ39のチューブ39Bを支持するものである。ここで、中間ブラケット15の上端面は、リヤドラムブレーキ7内のばね力によりブレーキ駆動ワイヤ39を介して引っ張られるイコライザ33の一側を突き当てることにより、該イコライザ33を位置決めするストッパ面15Aとなっている。
【0031】
16は前側ブラケット13と軸線O−Oを挟んだハウジング11の後側に設けられた後側ブラケットで、該後側ブラケット16は、図6に示すように、上端部の右側寄りから後方に突出して設けられている。また、後側ブラケット16には、後述する右ブレーキワイヤ38のチューブ38Bが螺着されるねじ穴16Aが形成されている。
【0032】
さらに、17はハウジング11の下側に設けられたレバー取付部で、該レバー取付部17は、ハウジング11の左側面から左方に突出して形成され、後述の回動レバー26が回動可能に取付けられている。
【0033】
18はレバー取付部17と軸線O−Oを挟んだハウジング11の右側に設けられた2個の係止突起で、これら係止突起18には後述する引っ張りばね40が係止されている。
【0034】
19はハウジング11の下側に位置してシリンダ穴12の開口部12Bを前,後方向に貫いて形成された方形状のピン挿通溝で、該ピン挿通溝19は後述の押動ピン35を進入させることにより該押動ピン35によるピストン24の押動を許すものである。
【0035】
20はハウジング11の上,下方向の中間部に位置し、左斜め後方に筒状に突出して設けられたホース取付部で、該ホース取付部20内は、図2に示すようにシリンダ穴12のピストン挿入部12Aに連通している。また、ホース取付部20には後述の中継ホース42が取付けられている。
【0036】
一方、21はハウジング11の上側に設けられた配管接続口で、該配管接続口21は、イコライザストッパ14の前面14Bに開口するように前,後方向に延びて設けられ、その最深部はハウジング11の軸線O−Oを越える位置まで延びている。また、配管接続口21は角柱状のイコライザストッパ14をボス部として利用して設けられ、該配管接続口21にはブレーキ配管6が取付けられている。また、配管接続口21は後述のブリーダ穴22を介してシリンダ穴12のピストン挿入部12Aに連通されている。
【0037】
22はハウジング11の上側に設けられたブリーダ穴で、該ブリーダ穴22は、図7に示すように、ハウジング11の軸線O−Oにほぼ直交し、配管接続口21が設けられた平面とほぼ同一平面上に設けられている。また、ブリーダ穴22は、左,右方向に延びて設けられ、奥部位置は小径通路22Aとなってシリンダ穴12のピストン挿入部12Aに連通し、その最深部は配管接続口21に連通されている。そして、ブリーダ穴22は、ブレーキ液中の空気を抜くための穴で、通常はプラグ23によって閉塞されている。
【0038】
24はシリンダ穴12のピストン挿入穴12A内に軸線O−Oを中心として軸方向に摺動可能に挿嵌されたピストンで、該ピストン24は、図2に示すように、シリンダ穴12の開口部12Bに挿嵌された円筒状の閉塞部材25によって抜止めされ、該閉塞部材25はブレーキ液の漏れを防止する働きを兼ねている。そして、ピストン24は、押動ピン35によって押動されることによりシリンダ穴12のピストン挿入部12A内のブレーキ液を押圧し、配管接続口21に接続されるブレーキ配管6を介してフロントディスクブレーキ5に液圧を供給するものである。また、ピストン24を押動する力を取除くと、該ピストン24は突出する方向に付勢され、後述する止め輪43によって規定された戻り位置まで戻される。
【0039】
26はハウジング11の下側に位置し、両側が軸線O−Oを挟んで左,右方向に伸長して設けられた回動レバーで、該回動レバー26は、図8に示すように、長さ方向の一側に位置してコ字状に屈曲した取付部27と、該取付部27からハウジング11の後側を長さ方向の他側に延びた第1のレバー部28と、ハウジング11を挟んで該第1のレバー部28の反対側となる前側を長さ方向の他側に延びた第2のレバー部29とによって二又状に形成されている。また、取付部27にはボルト挿通穴27Aが穿設され、該取付部27はボルト挿通穴27Aに挿通されるボルト・ナット30によってレバー取付部17に回動可能に枢支されている。さらに、第1のレバー部28と第2のレバー部29とは、第1のレバー部28よりも第2のレバー部29が長尺に形成されている。
【0040】
また、第1のレバー部28の先端側には後述する第1の連結レバー31が連結される第1のレバー接続穴28Aが形成され、前記第2のレバー部29の先端側には後述する第2の連結レバー34が連結される第2のレバー接続穴29Aが形成されている。さらに、第1のレバー部28、第2のレバー部29の長さ方向の中間位置には押動ピン35の両端が挿嵌されるピン挿嵌穴28B,29Bが形成されている。なお、第1のレバー接続穴28Aは、第1のレバー部28の先端側に形成されているが、第1のレバー部28よりも第2のレバー部29が長尺に形成されているため、回動レバー26の全長に対して中間位置に形成されていることになる。
【0041】
ここで、第1のレバー接続穴28Aは回動レバー26の回動支点となるボルト挿通穴27Aの中心を基点とし距離寸法(長さ寸法)L1 だけ離れた位置に配設され、ピン挿嵌穴28B,29Bはボルト挿通穴27Aの中心に対し距離寸法L2 だけ離れた位置に配設され、第2のレバー接続穴29Aはボルト挿通穴27Aの中心に対し距離寸法L3 だけ離れた位置に配設されている。そして、ボルト挿通穴27Aと第1のレバー接続穴28Aとの間の距離寸法L1 と、ボルト挿通穴27Aとピン挿嵌穴28B,29Bとの間の距離寸法L2 とは近い寸法となっており、この距離寸法L1 ,L2 に対する、ボルト挿通穴27Aと第2のレバー接続穴29Aとの間の距離寸法L3 の比率は、例えば約1:1.3〜1:2.5の範囲に設定され、好ましくはほぼ1:1.8程度に設定されている。
【0042】
31はハウジング11内の後側に位置し、該ハウジング11の軸線O−Oとほぼ平行となるように上,下方向に配設された第1の連結レバーで、該第1の連結レバー31の下側寄りには長さ方向に延びるように長穴31Aが穿設されている。また、第1の連結レバー31の上端部には、右ブレーキワイヤ38のワイヤ本体38Aが接続されるワイヤ接続穴31Bが形成されている。そして、第1の連結レバー31は、その長穴31Aがピン32を介して回動レバー26の第1のレバー部28に形成された第1のレバー接続穴28Aに接続されている。
【0043】
33はハウジング11の上,下方向の中間部に位置して自由状態で設けられたイコライザで、該イコライザ33はハウジング11の軸線O−Oとほぼ直交した状態で、かつ回動レバー26の上方に重なる位置に配設されている。また、イコライザ33には、長さ方向の中間部に位置して左ブレーキワイヤ36のワイヤ本体36Aが接続されるワイヤ接続穴33Aと、長さ方向の一側に位置してブレーキ駆動ワイヤ39のワイヤ本体39Aが接続されるワイヤ接続穴33Bと、長さ方向の他側に位置して第2の連結レバー34が接続されるレバー接続穴33Cとが形成されている。さらに、イコライザ33の他側にはフロントディスクブレーキ5側の失陥時にイコライザストッパ14の当接面14Aに当接する円弧状突部33Dが形成されている。
【0044】
ここで、リヤドラムブレーキ7側に接続されるワイヤ接続穴33Bは左ブレーキワイヤ36側に接続されるワイヤ接続穴33Aに対し距離寸法(長さ寸法)L4 だけ離れた位置に配設され、回動レバー26側に接続されるレバー接続穴33Cはワイヤ接続穴33Aに対し距離寸法L5 だけ離れた位置に配設されている。そして、ワイヤ接続穴33Aとワイヤ接続穴33Bとの間の距離寸法L4 に対する、ワイヤ接続穴33Aとレバー接続穴33Cとの間の距離寸法L5 の比率は、例えば約1:2〜1:3の範囲に設定され、好ましくはほぼ1:2.7程度に設定されている。
【0045】
34はハウジング11の軸線O−Oに対してほぼ直交し、第1の連結レバー31に平行に並ぶように配置された第2の連結レバーで、該第2の連結レバー34の下側寄りにはハウジング11の軸方向に延びるように長穴34Aが穿設されている。そして、第2の連結レバー34は、上端側がピン32を介してイコライザ33の長さ方向の他側に形成されたレバー接続穴33Cに接続され、長穴34Aがピン32を介して第2のレバー部29の長さ方向の他側に形成された第2のレバー接続穴29Aに接続されている。
【0046】
35は回動レバー26の第1のレバー部28と第2のレバー部29との間に設けられた押動部材をなす押動ピンで、該押動ピン35は、ハウジング11の軸線O−Oと直交するように前,後方向に伸長する円柱状のピンとして形成され、その両側が第1のレバー部28のピン挿嵌穴28B、第2のレバー部29のピン挿嵌穴29Bに支持されている。また、押動ピン35の長さ方向の中央部は円弧状に膨出した円弧面部35Aとなり、該円弧面部35Aはピストン24を押動する部位で、押動ピン35が傾きを生じた場合でも、ピストン24を軸方向に真直に押動することができる。
【0047】
ここで、ピストン24、回動レバー26、第1の連結レバー31、イコライザ33、第2の連結レバー34、押動ピン35等はハウジング11に一体的に組付けられ、二輪車用ブレーキ装置における一の部品ユニットを構成している。そして、回動レバー26、第1の連結レバー31、イコライザ33、第2の連結レバー34等は、図3、図4および図6〜図9に示すように、ハウジング11の周りを取り囲んで一体的に取付けられている。
【0048】
36は左ブレーキワイヤで、該左ブレーキワイヤ36は、図3に示す如く、一端側が左ハンドルレバー1に接続され、他端側がイコライザ33のワイヤ接続穴33Aに接続されたワイヤ本体36Aと、該ワイヤ本体36Aの外周側に設けられたチューブ36Bとから構成され、該チューブ36Bの他端外周側にはねじ部36B1 が形成されている。また、チューブ36Bは、その他端側が前側ブラケット13のねじ穴13Aに位置調整可能に螺着され、ナット37によって該前側ブラケット13に固定されている。
【0049】
38は右ブレーキワイヤで、該右ブレーキワイヤ38は、図6に示す如く、一端側が右ハンドルレバー3に接続され、他端側が第1の連結レバー31のワイヤ接続穴31Bに接続されたワイヤ本体38Aと、該ワイヤ本体38Aの外周側に設けられたチューブ38Bとから構成され、該チューブ38Bの他端外周側にはねじ部38B1 が形成されている。また、チューブ38Bは、その他端側が後側ブラケット16のねじ穴16Aに位置調整可能に螺着され、ナット37によって該後側ブラケット16に固定されている。
【0050】
39は接続体となるブレーキ駆動ワイヤで、該ブレーキ駆動ワイヤ39は、一端側がイコライザ33のワイヤ接続穴33Bに接続され、他端側がリヤドラムブレーキ7に接続されたワイヤ本体39Aと、該ワイヤ本体39Aの外周側に設けられたチューブ39Bとから構成され、該チューブ39Bの一端側は中間ブラケット15に位置決め状態で嵌合されている。
【0051】
40,40は係止突起18,18とイコライザ33,第1の連結レバー31との間に設けられた引っ張りばねで、該各引っ張りばね40は左ハンドルレバー1、右ハンドルレバー3のがたつきを防止するものである。
【0052】
また、41はハウジング11のホース取付部20に中継ホース42を介して接続されたリザーバタンクで、該リザーバタンク41内には所定量のブレーキ液が充填され、外部から目視によってブレーキ液量が確認できる位置に取付けられている。
【0053】
43はハウジング11の下側に設けられたストッパ手段をなす止め輪で、該止め輪43は、図2に示すように押動ピン35を挟んでピストン24の反対側に位置し、シリンダ穴12の開口部12Bに形成された嵌着溝12Cに嵌着されている。
【0054】
そして、止め輪43は、ピストン24への外力を取除いたときに、該ピストン24と一緒に変位する押動ピン35を当接させることによりピストン24の戻り位置を規定している。なお、止め輪43としては、図8に示すように一般に市販されている汎用の止め輪が用いられている。
【0055】
本実施の形態による二輪車用ブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、各ワイヤ36,38,39の取付け手順と各部の調整方法について説明する。
【0056】
まず、ブレーキ駆動ワイヤ39のワイヤ本体39Aをイコライザ33のワイヤ接続穴33Bに接続し、チューブ39Bを中間ブラケット15に取付ける。次に、左ブレーキワイヤ36のワイヤ本体36Aをイコライザ33のワイヤ接続穴33Aに接続し、チューブ36Bのねじ部36B1 を前側ブラケット13のねじ穴13Aに螺着し、ナット37によって固定する。また、右ブレーキワイヤ38のワイヤ本体38Aを第1の連結レバー31のワイヤ接続穴31Bに接続し、チューブ38Bのねじ部38B1 を後側ブラケット16のねじ穴16Aに螺着し、ナット37によって固定する。
【0057】
このようにして、各ワイヤ36,38,39を取付けたら、第1の連結レバー31の長穴31Aとピン32との間、第2の連結レバー34の長穴34Aとピン32との間に隙間をなくし、かつリヤドラムブレーキ7内のばね力によってイコライザ33が中間ブラケット15のストッパ面15Aに突き当たる位置まで、チューブ36B,38Bに螺着されたナット37,37によってブレーキワイヤ36,38のワイヤ本体36A,38Aの突出量を調整する。これにより、各部のがたつきがなくなり、また、ブレーキ操作時の応答性を良好にすることができる。
【0058】
一方、押動ピン35をハウジング11に形成されたピン挿通溝19内に挿通した状態で、シリンダ穴12の嵌着溝12Cに止め輪43を嵌着することにより、該止め輪43により押動ピン35を介してピストン24の戻り位置を直接的に規定することができる。
【0059】
次に、上述したように各ワイヤ36,38,39が取付けられたブレーキ装置の作動について説明する。
【0060】
まず、右ハンドルレバー3を握って回動させると、右ブレーキワイヤ38によって第1の連結レバー31が矢示A方向に引っ張られる。これにより、回動レバー26が矢示B方向に回動し、該回動レバー26に取付けられた押動ピン35によってピストン24が矢示A方向に押動されるから、該ピストン24によってシリンダ穴12内のブレーキ液が押圧され、この液圧によってフロントディスクブレーキ5を動作させ、前輪に制動を与える。
【0061】
このときには、第1の連結レバー31、押動ピン35は、回動支点となるボルト挿通穴27Aから近い寸法となる距離寸法L1 ,L2 だけ離間して配設された第1のレバー接続穴28A、ピン挿嵌穴28B,29Bに接続されているから、右ハンドルレバー3を回動させたときの操作量をそのままにフロントディスクブレーキ5を作動させることができ、前輪に与える制動力を的確に調整することができる。
【0062】
一方、左ハンドルレバー1を握って回動させると、左ブレーキワイヤ36によってイコライザ33が矢示A方向に引っ張られる。これにより、イコライザ33がブレーキ駆動ワイヤ39を引っ張ってリヤドラムブレーキ7を作動させ、後輪に制動を与える。
【0063】
また、イコライザ33が矢示A方向に引っ張られたときには、第2の連結レバー34を介して回動レバー26が矢示B方向に回動し、押動ピン35によってピストン24を押動してフロントディスクブレーキ5を動作させ、前輪にも制動を与える。
【0064】
このときに、ワイヤ接続穴33Aとワイヤ接続穴33Bとの間の距離寸法L4 に対する、ワイヤ接続穴33Aとレバー接続穴33Cとの間の距離寸法L5 の比率は、1:2.7程度に設定されているから、ワイヤ接続穴33Bに接続されたブレーキ駆動ワイヤ39が大きな力で引っ張られ、リヤドラムブレーキ7によって後輪に大きな制動が与えられる。一方、第2の連結レバー34は前述した比率に応じて小さな力で引っ張られ、回動レバー26を矢示B方向に回動させる。
【0065】
続いて、ボルト挿通穴27Aとピン挿嵌穴28B,29Bとの間の距離寸法L2 に対する、ボルト挿通穴27Aと第2のレバー接続穴29Aとの間の距離寸法L3 の比率は、1:1.8程度に設定されているから、第2の連結レバー34によって回動レバー26を回動させた場合には、このときの回動量の1.8分の1のストロークで押動ピン35を押動する。
【0066】
従って、左ハンドルレバー1を回動操作したときには、その操作力がイコライザ33によって2.7分の1程度に小さくなるが、回動レバー26では、押動ピン35を押動する力がボルト挿通穴27Aに対するピン挿嵌穴28B,29Bと第2のレバー接続穴29Aとの距離関係で、右ハンドルレバー3を回動操作したときの1.8倍に増幅されることになるから、フロントディスクブレーキ5を補助的に作動させることができ、前輪に制動を与えることができる。
【0067】
次に、二輪車を運転中に、例えばシリンダ穴12内のブレーキ液が漏洩してフロントディスクブレーキ5が使用不可能になった場合について説明する。
【0068】
まず、シリンダ穴12内のブレーキ液が漏洩した状態で左ハンドルレバー1を握って回動させると、左ブレーキワイヤ36によってイコライザ33が矢示A方向に引っ張られる。このときには、図9に示す如く、回動レバー26が自由状態となるから、該回動レバー26が矢示C方向に大きく回動し、イコライザ33の円弧状突部33Dがイコライザストッパ14の当接面14Aに当接する。
【0069】
しかし、イコライザ33の円弧状突部33Dがイコライザストッパ14に当接した状態から、さらに左ハンドルレバー1を回動させることにより、イコライザ33の一側を矢示D方向に回動させてブレーキ駆動ワイヤ39を引っ張ることができる。これにより、リヤドラムブレーキ7を作動させて後輪に制動力を与えることができる。
【0070】
かくして、本実施の形態による二輪車用ブレーキ装置によれば、左ハンドルレバー1を回動操作したときには、リヤドラムブレーキ7によって後輪に制動を与えると同時に、フロントディスクブレーキ5によって前輪に補助的に制動を与えることができるから、減速時には左ハンドルレバー1を操作するだけでも、前輪と後輪に適度な制動を与えることができ、レバー操作を容易にし、かつ安定した制動力を得ることができる。
【0071】
また、右ハンドルレバー3によってフロントディスクブレーキ5を作動させるときには、該右ハンドルレバー3の操作量をそのままにフロントディスクブレーキ5を作動させることができるから、制動時に荷重がかかる前輪に的確な制動を与えることができ、制動時の安定性を高めることができる。
【0072】
また、左ハンドルレバー1を操作したときには、リヤドラムブレーキ7を優先的に作動させ、後輪に大きな制動を与え、フロントディスクブレーキ5によって前輪に補助的な制動を与えるようにしているから、制動時に後輪を先行してロックさせることができ、制動時に車体を安定させることができる。
【0073】
また、マスタシリンダのケースをハウジング11として利用し、ピストン24、回動レバー26、第1の連結レバー31、イコライザ33、第2の連結レバー34、押動ピン35等を一体的に組付けているから、別途ハウジングを用いることなくブレーキ装置を構成することができ、コストの低減、ブレーキ装置の小型化を図ることができる。
【0074】
また、ハウジング11をアルミニウム材料等からなる鋳造品として形成することにより、ハウジングとしての剛性を高めることができるから、ブレーキ操作時に大きな荷重が作用した場合でも、この荷重による変形を抑えて、的確なブレーキ操作を行なわせることができ、操作性、耐久性を向上することができる。
【0075】
一方、ブレーキ配管6が接続される配管接続口21をイコライザストッパ14に設けているから、このイコライザストッパ14を配管接続口21のボス部として利用することができ、ハウジング11の形状を簡略化して、ブレーキ装置の小型化、軽量化を図ることができる。
【0076】
また、ハウジング11にブリーダ穴22を設けているから、ブレーキ液中の空気を容易に抜くことができ、組立作業性を向上し、ブレーキ性能を安定化させることができる。
【0077】
しかも、ブリーダ穴22をシリンダ穴12と連通させ、該ブリーダ穴22の最深部を配管接続口21に連通させているから、イコライザストッパ14のように設置位置に制約がある場所に配管接続口21を設けたにも拘らず、ブリーダ穴22によってシリンダ穴12と配管接続口21とを連通させることができ、加工工数の削減、ハウジング11の小型化等を図ることができる。
【0078】
また、市販の止め輪43により押動ピン35を介してピストン24の戻り位置を直接的に規定することができるから、高い加工精度を必要とすることなく、ピストン24の戻り位置を安定させることができ、ブレーキ性能を向上し、また、コストを低減することができる。
【0079】
さらに、止め輪43は簡単な作業で取外すことができるから、ピストン24等の交換、メンテナンス作業を容易に行なうことができる。
【0080】
また、回動レバー26をハウジング11に取付けるにあたって、該回動レバー26の一側をハウジング11のレバー取付部17に枢支し、第1の連結レバー31、第2の連結レバー34、押動ピン35を回動レバー26の他側にまとめて接続しているから、回動レバー26周りの取付スペースを小さくできる。
【0081】
また、回動レバー26を軸線O−Oを挟んで長さ方向の一側をハウジング11に枢支すると共に、該回動レバー26の上方に重なるようにイコライザ33を配設しているから、イコライザ33を回動レバー26の長さ寸法内に収めることができ、左,右方向の取付寸法を小さくして、ブレーキ装置全体を小型化することができる。
【0082】
また、回動レバー26を取付部27と、該取付部27からハウジング11の前側、後側に伸長した第1のレバー部28、第2のレバー部29とから二又状に形成し、左ブレーキワイヤ36による操作系統を前側に、右ブレーキワイヤ38による操作系統を後側に独立して配設しているから、ハウジング11の前面、後面を有効に利用することができ、ブレーキ装置の小型化を図ることができる上に、各部品を余裕をもって組付けることができ、組立性、メンテナンス性を向上することができる。
【0083】
さらにまた、ピストン24を押動する押動ピン35をハウジング11の軸線O−Oと直交して配設しているから、押動ピン35をハウジング11側に組付けたときの軸方向(上,下方向)寸法を小さくすることができる。
【0084】
また、押動ピン35の両側を回動レバー26の第1のレバー部28、第2のレバー部29に支持させているから、操作時のねじれ等に対する回動レバー26の剛性を高めることができ、耐久性、操作性の向上を図ることができる。
【0085】
また、押動ピン35の長さ方向の中央部に円弧面部35Aを設けているから、押動ピン35が傾きを生じた場合でも、押動ピン35によってピストン24を軸方向に真直に押動することができ、ピストン24のかじり等による損傷、動作不良等を防止することができる。
【0086】
さらに、ブレーキ液の漏洩等の失陥によってフロントディスクブレーキ5を使用できなくなった状態でも、左ハンドルレバー1によってイコライザ33を引っ張り操作し、該イコライザ33の円弧状突部33Dをイコライザストッパ14に当接させることにより、この当接点を支点としてイコライザ33を回動することができ、ブレーキ駆動ワイヤ39を介してリヤドラムブレーキ7に制動を与えることができる。これにより、走行状態から確実に減速することができ、安全性を維持することができる。
【0087】
また、左ハンドルレバー1を操作したときのフロントディスクブレーキ5による制動力を、回動レバー26、イコライザ33への各部材の取付け位置による比率によって機械的に設定しているから、この比率を適宜調整することにより、さまざまな種類の二輪車に容易に対応することができ、当該ブレーキ装置の使用範囲を広めることができる。
【0088】
次に、図10は本発明の第2の実施の形態を示すに、本実施の形態の特徴は、回動レバーには、その長さ方向の一側にハウジングに当接し、ピストンの戻り位置を規定する調整ねじを設けたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0089】
51は第1の実施の形態によるハウジング11に代えて用いられた本実施の形態によるハウジングで、該ハウジング51は、第1の実施の形態によるハウジング11とほぼ同様に、内部にシリンダ穴52を有し、外部に前側ブラケット53、イコライザストッパ54、中間ブラケット55、後側ブラケット(図示せず)、レバー取付部56、ホース取付部57等を有している。
【0090】
しかし、本実施の形態によるハウジング51は、レバー取付部56よりも下側に位置する部位が削除され、第1の実施の形態で設けられていた嵌着溝12Cが廃止されている点と、レバー取付部56に後述の調整ねじ62の先端が当接するねじ受部56Aが突設されている点で第1の実施の形態によるハウジング11と相違している。
【0091】
58は第1の実施の形態による回動レバー26に代えて用いられた本実施の形態による回動レバーで、該回動レバー58は、前述した第1の実施の形態による回動レバー26とほぼ同様に、取付部59、第1のレバー部60、第2のレバー部61によって構成されているが、前記取付部59にレバー取付部56のねじ受部56Aに対応する位置に調整ねじ62が螺着されるねじ穴59Aが形成されている点で、第1の実施の形態による回動レバー26と相違している。
【0092】
62は回動レバー58の取付部59に設けられた調整ねじで、該調整ねじ62は、取付部59のねじ穴59Aに位置調整可能に螺着され、ナット63によって固定されている。そして、調整ねじ62は、ねじ穴59Aに螺着されることにより、その先端をレバー取付部56のねじ受部56Aに当接させて回動レバー58の回動量を制限し、押動ピン35を介してピストン24の戻り位置を規定するものである。
【0093】
かくして、このように構成された本実施の形態においても、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができるが、特に、本実施の形態では、各部の加工精度にばらつきがある場合でも、調整ねじ62によってピストン24の戻り位置を正確に規定することができるから、加工コストの低減、ブレーキ性能の向上等を図ることができる。
【0094】
なお、第1の実施の形態では、ボルト挿通穴27Aと第1のレバー接続穴28Aとの間の距離寸法L1 、ボルト挿通穴27Aとピン挿嵌穴28B,29Bとの間の距離寸法L2 に対する、ボルト挿通穴27Aと第2のレバー接続穴29Aとの間の距離寸法L3 の比率を1:1.8程度に設定し、ワイヤ接続穴33Aとワイヤ接続穴33Bとの間の距離寸法L4 に対する、ワイヤ接続穴33Aとレバー接続穴33Cとの間の距離寸法L5 の比率を1:2.7程度に設定した場合を例示したが、本発明はこれに限らず、車両の性能や重量配分等に応じ、距離寸法L1 ,L2 に対する距離寸法L3 の比率を約1:1.3〜1:2.5の範囲で他の値に設定し、距離寸法L4 に対する距離寸法L5 の比率を約1:2〜1:3の範囲で他の値に設定してもよい。この構成は第2の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0095】
また、各実施の形態では、ハウジング11,51をアルミニウム材料からなる鋳造品として形成した場合を例示したが、ハウジング11,51を鋳鉄等の他の材料から形成してもよく、また、切削加工等の他の加工方法を用いてハウジング11,51を形成してもよい。
【0096】
さらに、第1の実施の形態では、内部にシリンダ穴12を有し、外周側に各ブラケット13,15,16等が一体に形成された単一部材からなるハウジング11を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、各ブラケット13,15,16等が形成された外カバーと、マスタシリンダとを別体に設け、該マスタシリンダを外カバー内に入子式(カートリッジ式)に設けることにより、ハウジングを構成してもよい。この構成は第2の実施の形態にも同様に適用することができる。
【0097】
また、各実施の形態では、接続体としてブレーキ駆動ワイヤ39を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに替えて、例えば、棒状体を連結して接続体を形成する構成としてもよい。
【0098】
一方、各実施の形態では、左ハンドル2に設けられた左ハンドルレバー1によってリヤドラムブレーキ7に制動を与えた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、図11に示す変形例のように、車体(図示せず)の右側に設けられたペダル71によってリヤドラムブレーキ7に制動を与えるようにしてもよい。
【0099】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、右ハンドルレバーを回動させることにより、第1の連結レバーを引っ張って回動レバーを回動し、該回動レバーに接続された押動部材によってハウジング内のピストンを押動してブレーキ液を押圧し、このブレーキ液圧によりフロントブレーキに制動を与えることができる。このときには、右ハンドルレバーの回動による引っ張り力を第1の連結レバーからピストンに直接的に伝達することができるから、右ハンドルレバーの操作量をそのままにフロントブレーキを作動させることができ、制動時に荷重がかかる前輪に的確な制動を与え、制動時の安定性を高めることができる。
【0100】
また、左ハンドルレバーまたはペダルを回動させることにより、イコライザを引っ張って操作し、該イコライザの長さ方向の一側に接続された接続体を介してリヤブレーキに制動を与えることができる。同時に、前記イコライザの長さ方向の他側に接続された第2の連結レバーによって回動レバーを回動させることができるから、該回動レバーの回動に応じてハウジング内のピストンを押動部材によって押動し、フロントブレーキに制動を与えることができる。
【0101】
従って、減速時には左ハンドルレバーまたはペダルを操作するだけでも、前輪と後輪に適度な制動を与えることができ、レバー、ペダル操作を容易にし、かつ安定した制動力を得ることができる。また、左,右のハンドルレバーを同時に操作したときには、前輪と後輪に各レバー等の操作力に応じた制動を与えることができる。この場合、前輪には、左ハンドルレバーまたはペダルの操作による力と右ハンドルレバーの操作による力とが回動レバーに重なった状態で作用するが、大きい方の力に依存してブレーキ力が発生するので、操作に違和感を感じることもない。
【0102】
一方、ブレーキ配管が接続される配管接続口をハウジングに設けられたイコライザストッパを利用して設けているから、配管接続口を設けるための突出部、所謂ボス部を設けることなく配管接続口を形成することができ、ハウジングの形状を簡略化することができる。これにより、ハウジングを容易かつ安価に製造することができる。また、回動レバー、第1の連結レバー、第2の連結レバーおよびイコライザが、前記ハウジングの周りを取り囲んで一体的に取付けられているので、ブレーキ装置全体を小型化することができる。
【0103】
請求項2の発明によれば、ハウジングには、押動部材を挟んでピストンの反対側に止め輪を嵌着して設け、該止め輪を押動部材に当接させることによりピストンの戻り位置を規定する構成としているから、ピストンの戻り位置を止め輪によって規定でき、ブレーキ性能を安定させることができる。しかも、止め輪は押動部材を介してピストンの戻り位置を直接的に規定しているから、加工精度を緩和した状態でピストンの戻り位置を正確に規定することができる。また、市販の止め輪を用いることができ、製造コストを低減することができる。
【0104】
請求項3の発明によれば、回動レバーには、その長さ方向の一側にハウジングに当接し、ピストンの戻り位置を規定する調整ねじを設ける構成としているから、ピストンの戻り位置を調整ねじによって規定でき、ブレーキ性能を安定させることができる。しかも、調整ねじによってピストンの戻り位置を微調整できるから、ピストンの戻り位置を正確に調整することができる。
【0105】
請求項4の発明によれば、ハウジングには、配管接続口に連通するブリーダ穴を設け、少なくとも該ブリーダ穴と配管接続口のうちいずれか一方をシリンダ穴に連通させる構成としているから、ブレーキ液中の空気をブリーダ穴から容易に抜くことができ、作業性、ブレーキ性能を向上することができる。また、ブリーダ穴と配管接続口のうちいずれか一方をシリンダ穴に連通させることにより、ブリーダ穴と配管接続口の両方をシリンダ穴に連通させることができるから、加工作業を容易にして製造コストを低減することができる。
【0106】
請求項5の発明によれば、回動レバーは、長さ方向の一側に位置してハウジングの回動可能に取付けられた取付部と、該取付部からハウジングの外周側を長さ方向の他側に延びた第1のレバー部と、ハウジングを挟んで該第1のレバー部の反対側を長さ方向の他側に延びた第2のレバー部とによって二又状に形成しているから、第1の連結レバー、該第1の連結レバーを右ハンドルレバーに接続するブレーキワイヤ等を第1のレバー部側に、イコライザ、第2の連結レバー、該第2の連結レバーを左ハンドルレバーまたはペダルに接続するブレーキワイヤ等を第2のレバー部側に独立して配設することができるから、左,右方向の取付寸法を小さくして、ブレーキ装置全体を小型化することができる。
【0107】
また、第1の連結レバーを第1のレバー部に接続し、第2の連結レバーを取付部を基点として第1の連結レバーよりも離れた位置で第2のレバー部に接続し、押動部材を取付部と第1の連結レバーとの間に位置して第1のレバー部と第2のレバー部との間に設ける構成としているから、左ハンドルレバーによってピストンに作用する力と右ハンドルレバーによってピストンに作用する力をそれぞれ適した値に設定することができ、安定した制動力を得ることができる。しかも、押動部材によって第1のレバー部と第2のレバー部とを連結することができ、回動レバーの強度を高め、耐久性、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による二輪車用ブレーキ装置を示す一部破断の全体構成図である。
【図2】図1中のハウジングの内部構造を示す縦断面図である。
【図3】第1の実施の形態による二輪車用ブレーキ装置を示す正面図である。
【図4】図3に示す二輪車用ブレーキ装置の右側面図である。
【図5】図3に示す二輪車用ブレーキ装置の平面図である。
【図6】図3に示す二輪車用ブレーキ装置の背面図である。
【図7】図3に示す二輪車用ブレーキ装置の左側面図である。
【図8】図3に示す二輪車用ブレーキ装置の底面図である。
【図9】シリンダ穴からブレーキ液が漏洩した状態で左ハンドルレバーを操作した場合を示す二輪車用ブレーキ装置の正面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態による二輪車用ブレーキ装置を示す正面図である。
【図11】本発明の変形例による二輪車用ブレーキ装置を示す一部破断の全体構成図である。
【符号の説明】
1 左ハンドルレバー
2 左ハンドル
3 右ハンドルレバー
4 右ハンドル
5 フロントディスクブレーキ
6 ブレーキ配管
7 リヤドラムブレーキ
11,51 ハウジング
14,54 イコライザストッパ
21 配管接続口
22 ブリーダ穴
24 ピストン
26,58 回動レバー
27,59 取付部
28,60 第1のレバー部
29,61 第2のレバー部
31 第1の連結レバー
33 イコライザ
34 第2の連結レバー
35 押動ピン(押動部材)
39 ブレーキ駆動ワイヤ(接続体)
43 止め輪
62 調整ねじ
71 ペダル
O−O ハウジング11の軸線

Claims (5)

  1. 軸方向の一側にピストンが摺動可能に挿嵌されたシリンダ穴を有するマスタシリンダのハウジングと、
    該ハウジングの軸方向に対しほぼ直交して該ハウジングの軸方向一側に配置され、長さ方向の一側を回動支点として該ハウジングに枢支された回動レバーと、
    前記回動レバーの長さ方向の中間位置と前記ハウジング内のピストンとの間に設けられ、該ピストンを押動する押動部材と、
    前記ハウジングの軸方向にほぼ平行に配置され、長さ方向に延びた長穴が前記回動レバーの長さ方向の中間位置で係合されると共に、右ハンドルに設けられた右ハンドルレバーに連結されて引っ張り操作される第1の連結レバーと、
    前記ハウジングの軸方向にほぼ直交して配置され、長さ方向の中間位置で左ハンドルに設けられた左ハンドルレバーまたは車体の右側に設けられたペダルに連結されて引っ張り操作されるイコライザと、
    前記ハウジングの軸方向にほぼ平行に配置され、該イコライザの長さ方向の他側で枢支されると共に、長さ方向に延びた長穴が前記回動レバーの長さ方向の他側で係合した第2の連結レバーと
    記ハウジングの軸方向他側に径方向へ突出して形成され、前記左ハンドルレバーまたはペダルによって前記イコライザが大きく引っ張り操作されたときに、該イコライザの長さ方向の他側に当接して変位を規制するイコライザストッパと、
    該イコライザストッパを利用して設けられ、前記ハウジングのシリンダ穴に連通する配管接続口と、
    該配管接続口とフロントブレーキとを接続するブレーキ配管と
    記イコライザの長さ方向の一側とリヤブレーキとの間を接続する接続体とによって構成し
    前記回動レバー、第1の連結レバー、第2の連結レバーおよびイコライザは、前記ハウジングの周りを取り囲んで一体的に取付けられる構成としてなる二輪車用ブレーキ装置。
  2. 前記ハウジングには、前記押動部材を挟んで前記ピストンの反対側に止め輪を嵌着して設け、該止め輪を前記押動部材に当接させることにより前記ピストンの戻り位置を規定する構成としてなる請求項1に記載の二輪車用ブレーキ装置。
  3. 前記回動レバーには、その長さ方向の一側にハウジングに当接し、前記ピストンの戻り位置を規定する調整ねじを設ける構成としてなる請求項1に記載の二輪車用ブレーキ装置。
  4. 前記ハウジングには、前記配管接続口に連通するブリーダ穴を設け、少なくとも該ブリーダ穴と配管接続口のうちいずれか一方を前記シリンダ穴に連通させる構成としてなる請求項1,2または3に記載の二輪車用ブレーキ装置。
  5. 前記回動レバーは、長さ方向の一側に位置して前記ハウジングに回動可能に取付けられた取付部と、該取付部から前記ハウジングの外周側を長さ方向の他側に延びた第1のレバー部と、前記ハウジングを挟んで該第1のレバー部の反対側を長さ方向の他側に延びた第2のレバー部とによって二又状に形成し、前記第1の連結レバーを前記第1のレバー部に接続し、前記第2の連結レバーを前記取付部を基点として前記第1の連結レバーよりも離れた位置で前記第2のレバー部に接続し、前記押動部材を前記取付部と第1の連結レバーとの間に位置して前記第1のレバー部と第2のレバー部との間に設ける構成としてなる請求項1,2,3または4に記載の二輪車用ブレーキ装置。
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