JP4231741B2 - 光感応性高分子組成物、それを用いた着色方法及び記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形光学効果を発現する材料に関し、特に非共鳴2光子吸収断面積が大きく、非共鳴2光子吸収により生成した励起状態から効率よく発色または着色が可能な光感応性高分子組成物ならびにその着色方法および記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見い出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収とは非共鳴2光子吸収を指す。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波で吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。化合物の色が変化するということはすなわち複素屈折率(n+ik)の実部である屈折率nと虚部である消衰係数kが変化することである。したがって、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて3次元空間内部の任意の点で色素前駆体の発色や色素の吸収変化を誘起せしめることができれば(即ち、屈折率変化を誘起せしめることができれば)、情報を3次元空間に立体的に書き込める3次元光記録媒体や、画像を立体に表示できる3次元画像表示媒体等への応用が可能となる。
【0006】
非共鳴2光子吸収化合物を用いた光情報記録媒体および画像表示媒体は、国際公開WO97/09043号公報[特許文献1]に開示されている。該公報に示された方法は、蛍光性2光子吸収色素を含む高分子組成物を記録媒体および画像表示媒体に用い、Ti:Sapphireレーザーのフェムト秒パルスをレンズで絞って該記録媒体もしくは画像表示媒体に照射すると、焦点位置付近で2光子吸収が起こり、該2光子吸収色素が光分解して蛍光強度が弱くなることを利用して、周りの非照射部分の強い蛍光強度との差を読み出すものであるが、この方法では2光子吸収色素が光分解するほどの光照射が必要となるため感度が低くなることに加え、四方八方に輻射する蛍光の強度の強弱を読み出すため、記録部と非記録部のコントラストが低くなるという問題点がある。
【0007】
一方、S.Kawata et al.,Chem.Rev.2000年,100巻,1777頁[非特許文献1]には、フォトクロミック色素の2光子フォトクロミズムを利用して吸収の変化を誘起することで情報を記録する光記録媒体の例が報告されているが、該記録媒体に用いられているフォトクロミック色素の2光子吸収断面積が小さいため、極めて感度の低い記録媒体しか得られていない。
【0008】
【特許文献1】
国際公開第97/09043号パンフレット
【非特許文献1】
S.Kawata et al.,Chem.Rev.2000年,100巻,1777頁
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、2光子吸収を利用して、光照射部と非照射部で大きなコントラストが得られる発色または吸収変化(すなわち屈折率nおよび消衰係数kの変化)をフォトンモードで誘起可能であり、かつ2光子吸収断面積の大きな高感度の非共鳴2光子吸収化合物と組み合わせることで高感度化の可能な光感応性高分子組成物を提供することである。さらには、これを用いた着色方法及び記録方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らによる鋭意検討の結果、上記目的は下記の手段により達成できることを見出した。
【0011】
(1) 少なくとも、(A)高分子化合物、(B)非共鳴2光子吸収化合物、(C)非共鳴2光子吸収により生じた非共鳴2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことにより酸を発生する酸発生剤、および(D)酸により顕色化または色が変化する化合物を含有し、非共鳴2光子吸収により発色もしくは色の変化が起こることを特徴とする光感応性高分子組成物。
(2) 該非共鳴2光子吸収化合物(B)が、500GM以上の2光子吸収断面積を有する非共鳴2光子吸収化合物であることを特徴とする(1)記載の光感応性高分子組成物
(3) 該酸発生剤(C)が、オニウム塩系化合物、スルホン酸エステル系化合物、ジスルホン系化合物、金属アレーン錯体系化合物、有機ハロゲン化合物、トリアジン系化合物、イソシアヌル酸系化合物、アゾール系化合物のうちの少なくとも一種であることを特徴とする(1)または(2)に記載の光感応性高分子組成物。
(4) 該酸発生剤(C)が、オニウム塩系化合物、スルホン酸エステル系化合物、金属アレーン錯体系化合物、有機ハロゲン化合物、トリアジン系化合物、アゾール系化合物のうちの少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。
(5) 該酸発生剤(C)が、オニウム塩系化合物、スルホン酸エステル系化合物、金属アレーン錯体系化合物の少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。
(6) 該オニウム塩系化合物が、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物のうちの少なくとも一種であることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。
(7) 該酸により顕色化または色が変化する化合物(D)が、トリフェニルメタン系色素、フェノチアジン系色素、フェノキサジン系色素、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、キサンテン系色素、フタリド系色素、ジフェニルメタン系色素、クロメノピラゾール系色素、ロイコオーラミン色素、メチン色素、アゾメチン系色素、ローダミンラクタム系色素、キナゾリン系色素、ジアザキサンテン系色素、フルオレン系色素、スピロピラン系色素のうちの少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。好ましくはフタリド系色素(トリフェニルメタンフタリド系色素、インドリルフタリド系色素、アザフタリド系色素を含む)、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、スピロピラン系色素、メチン色素、またはアゾメチン系色素である。
(8) 該酸により顕色化または色が変化する化合物(D)が、トリフェニルメタンフタリド系色素、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、フタリド系色素、インドリルフタリド系色素、アザフタリド系色素、ローダミンラクタム系色素、スピロピラン系色素のうちの少なくとも一種であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。
(9) (1)〜(8)に記載の光感応性高分子組成物に、該組成物の最も長波長の吸収波長よりも長波長側で、かつ該組成物の吸収の存在しない波長の光を照射して高分子組成物を着色することを特徴とする光感応性高分子組成物の着色方法。
(10)(1)〜(8)に記載の光感応性高分子組成物に、該高分子組成物に含まれる(B)非共鳴2光子吸収化合物の非共鳴2光子吸収極大波長に対応する光を照射して、着色した光感応性高分子組成物を得ることを特徴とする請求項9に記載の着色方法。
(11)(1)〜(8)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物を含有することを特徴とする光記録材料。
(12)(1)〜(8)のいずれかに記載の光感応性高分子組成物を含有することを特徴とする記録媒体及び記録方法、特に3次元光記録媒体および3次元光記録方法。
(13) 非共鳴2光子吸収により生じた光透過率または光反射率の変化を記録または読み出しに利用することを特徴とする(12)記載の記録媒体及び記録方法、特に3次元光記録媒体および3次元光記録方法。
(14) 非共鳴2光子吸収により生じた屈折率の変化を記録または読み出しに利用することを特徴とする(12)記載の記録媒体及び記録方法、特に3次元光記録媒体および3次元光記録方法。
(15)(1)〜(8)に記載の光感応性高分子組成物を含むことを特徴とする画像形成材料および画像形成方法、特に3次元画像形成材料および3次元画像形成方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の光感応性高分子組成物について詳しく説明する。
【0013】
本発明の光感応性高分子組成物は、少なくとも、(A)高分子化合物、(B)非共鳴2光子吸収化合物、(C)非共鳴2光子吸収により生じた非共鳴2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことにより酸を発生する酸発生剤、(D)酸により顕色化または色が変化する化合物の少なくとも4成分から成り、非共鳴2光子吸収により発色もしくは色の変化が起こることを特徴とする。また必要により熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いることができる。以下にそれらの各成分について詳しく説明する。
【0014】
はじめに本発明の光重合性組成物における高分子化合物(A)について説明する。
本発明の高分子化合物には特に限定はなく、有機高分子化合物でも無機高分子化合物でもよい。有機高分子化合物としては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独でか又は互いに組合せて使用することができ、非共鳴2光子吸収化合物、非共鳴2光子吸収により生じた非共鳴2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことにより酸を発生する酸発生剤、酸により顕色化または色が変化する化合物と相溶性の良いものが好ましい。本発明の高分子化合物としては以下のものが好ましい。
アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ノルボルネン系ポリマー、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、適当なバインダーとして機能する酸含有重合体及び共重合体(米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されているものを包含する。)、ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH2)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、並びにH.カモガワらによりJournal of PolymerScience:Polymer Chemistry Edition,18巻、9〜18頁(1979)中開示されているようなカルバゾール含有重合体。
【0015】
また、フッ素原子含有高分子も好ましい。より好ましくは、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0016】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1 からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0017】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が市販されており、これらも使用することができる。
【0018】
次に本発明の光重合性組成物における非共鳴2光子吸収化合物(B)について説明する。
【0019】
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0020】
本発明に用いられる非共鳴2光子吸収化合物は、500GM(1GM=1.0×10−50cm4 s photon−1)以上の2光子吸収断面積を有するものが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる非共鳴2光子吸収化合物としては特に限定は無いが、下記に示したような色素化合物を挙げることができる。
例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、または金属錯体色素。
【0022】
好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、または金属錯体色素が挙げられ、より好ましくはシアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素等、メチン色素が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、またはオキソノール色素である。
【0023】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
【0024】
シアニン色素、メロシアニン色素またはオキソノール色素の具体例としては、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0025】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0026】
本発明の色素がシアニン色素の時、好ましくは下記一般式(1)にて表わされる。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(1)中、Za1及びZa2はそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、C数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
【0029】
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えば、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、またはカルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0030】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0031】
Za1及びZa2により形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、インドレニン環であり、最も好ましくはオキサゾール核である。
【0032】
Ra1及びRa2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、またはヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0033】
Ma1〜Ma7はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa1及びZa2上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma1〜Ma7は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma1〜Ma7は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0034】
na1及びna2は0または1であり、好ましくは共に0である。
【0035】
ka1は0〜3の整数を表わし、より好ましくはka1は1〜3を表し、さらに好ましくはka1は1または2を表す。
ka1が2以上の時、複数のMa3、Ma4は同じでも異なってもよい。
【0036】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0037】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは下記一般式(2)で表わされる。
【0038】
【化2】
【0039】
一般式(2)中、Za3は5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa1、Za2と同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa1、Za2上の置換基の例と同じ))、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
【0040】
Za3により形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、インドレニン環である。
【0041】
Za4は5員または6員環を形成する原子群を表わす。Za4から形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。
Za4として好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Za4から形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、またはクマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、または2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、または2−チオバルビツール酸である。
【0042】
Za4から形成される環は置換されても良く、(好ましい置換基の例はZa3上の置換基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0043】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0044】
Ra3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa1、Ra2と同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0045】
Ma8〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa1及びZa2上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma8〜Ma11は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma8〜Ma11は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0046】
na3は0または1であり、好ましくは0である。
【0047】
ka2は0〜8の整数を表わし、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは2〜4の整数を表す。
ka2が2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
【0048】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0049】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(3)で表わされる。
【0050】
【化3】
【0051】
一般式(3)中、Za5及びZa6は各々5員または6員環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa4と同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa4上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za5及びZa6から形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
【0052】
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していても良く、(好ましい置換基の例はZa5及びZa6上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。
Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0053】
ka3は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表し、最も好ましくは2を表す。
ka3が2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
【0054】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0055】
また、本発明の非共鳴2光子吸収化合物は下記一般式(4)にて表されることも好ましい。
【0056】
【化4】
【0057】
一般式(4)において、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、またはヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
R1 、R2 、R3 、R4 として好ましくは水素原子またはアルキル基である。
R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R1 とR3 が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0058】
一般式(4)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0059】
X1 およびX2 は独立に、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa1〜Ma7の置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または下記一般式(5)で表される基を表す。
【0060】
【化5】
【0061】
一般式(5)中、R5 は水素原子または置換基(好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
R6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0062】
Z1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、またはピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、またはキノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、またはベンゾイミダゾール環である。
Z1 により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く(好ましい置換基の例はZa1、Za2上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0063】
X1 およびX2 として好ましくはアリール基または一般式(5)で表される基であり、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(5)で表される基である。
【0064】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。
また本発明の水素結合性基を有する化合物は溶液または固体状態にて水素結合性基同士の相互作用により会合的相互作用することが好ましく、分子内相互作用でも分子間相互作用でも良いが、分子間相互作用である方がより好ましい。
【0065】
水素結合性基として好ましくは、−COOH、−CONHR11、−SO3H、−SO2NHR12、−P(O)(OH)OR13、−OH、−SH、−NHR14、−NHCOR15、−NR16C(O)NHR17のいずれかで表される。ここで、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、−COR18または−SO2R19を表し、R13〜R19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す(以上好ましい例はR11、R12と同じ)。
【0066】
R11として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基、または−SO2R19基を表し、その際R18、R19としてはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基が好ましい。
R11としてより好ましくは水素原子、アルキル基、または−SO2R19基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
R12として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基、または−SO2R19基を表し、その際R18、R19としてはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基が好ましい。
R12としてより好ましくは水素原子、アルキル基、または−COR18基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
R13として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
R14として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
R15として好ましくはアルキル基、またはアリール基を表す。
R16として好ましくは水素原子を表し、R17として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
【0067】
水素結合性基としてより好ましくは、−COOH、−CONHR11、−SO2NHR12、−NHCOR15、−NR16C(O)NHR17のいずれかであり、さらに好ましくは−COOH、−CONHR11、−SO2NHR12のいずれかであり、最も好ましく−COOH、−CONH2のいずれかである。
【0068】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物はモノマー状態で用いても良いが、会合状態で用いても良い。
ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。
本発明の非共鳴2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いても良い。
【0069】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J−Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0070】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(Chemical Physics Letters),第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschrift fur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁、(1941年)に詳細な説明がある。
【0071】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(Charles Reich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0072】
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0073】
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10-4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10-3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であっても良い。
【0074】
以下に、本発明で用いられる非共鳴2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化6】
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
【化13】
【0083】
【化14】
【0084】
【化15】
【0085】
【化16】
【0086】
【化17】
【0087】
【化18】
【0088】
【化19】
【0089】
【化20】
【0090】
【化21】
【0091】
次に本発明の光感応性高分子組成物における酸発生剤(C)について説明する。
本発明の酸発生剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた非共鳴2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことにより酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生する化合物である。
以下に、本発明の酸発生剤として好ましい例を挙げるが、本発明の酸発生剤はこれらの化合物のみに限定されるものではない。なお、これらの酸発生剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0092】
1)オニウム塩系酸発生剤
本発明のオニウム塩系酸発生剤としては、ジアゾニウム塩系酸発生剤、ヨードニウム塩系酸発生剤、スルホニウム塩系酸発生剤が挙げられる。
【0093】
本発明のジアゾニウム塩系酸発生剤としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Baletal,Polymer,21,423(1980)に記載の化合物を挙げることができる。
【0094】
本発明のジアゾニウム塩系酸発生剤として好ましくは以下の一般式(6)にて表される化合物である。
【0095】
【化22】
【0096】
R26はアリール基またはヘテロ環基を表し(以上好ましい例はZa1上の置換基と同じ)、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
R27は置換基を表し(好ましい例はZa1上の置換基と同じ)、a21は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR27は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
X21 -は、HX21がpKa4以下(水中、25℃)、好ましくは3以下、より好ましくは2以下の酸となる陰イオンで、好ましくは例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート,テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどである。
【0097】
ジアゾニウム系酸発生剤の具体例としては例えば、ベンゼンジアゾニウム、4−メトキシジアゾニウム、4−メチルジアゾニウムの上記X21 -塩などが挙げられる。
【0098】
本発明のヨードニウム塩系酸発生剤としては、例えばJ.V.Crivelloetal,Macromolecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特開平2−150848号、特開平2−296514号、特願平3−5569号等に記載のヨードニウム塩系酸発生剤を挙げることができる。
【0099】
本発明のヨードニウム塩系酸発生剤として好ましくは、ジアリールヨードニウム塩系酸発生剤であり、以下の一般式(7)にて表される化合物である。
【0100】
【化23】
【0101】
一般式(7)中、X21 -は一般式(6)と同義である。R28、R29はそれぞれ独立に置換基を表し(好ましい例はZa1上の置換基と同じ)、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
a22、a23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜1の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR28、R29は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
【0102】
ジアリールヨードニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメチルジフェニルヨードニウム、4,4' −t-ブチルジフェニルヨードニウム、3,3'−ジニトロジフェニルヨードニウム、フェニル(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−シアノフェニル)ヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、以下に示すI−1〜I−3などが挙げられる。
【0103】
【化24】
【0104】
本発明のスルホニウム塩系酸発生剤としては、例えばJ.V.Crivelloetal,PolymerJ.,17,73(1985)、J.V.Crivelloetal.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Wattetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivelloetal,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivelloetal,Macromolecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号、特開平7−25846号、特開平7−28237号、特開平7−92675号、特開平8−27120号、J.Photopolym.Sci.,Tech.,Vol.7,No.3,423(1994)等に記載のスルホニウム塩を挙げることができる。
【0105】
本発明のスルホニウム塩系酸発生剤として好ましくは、以下の一般式(8)にて表される化合物である。
【0106】
【化25】
【0107】
一般式(8)中、X21 -は一般式(6)と同義である。R30、R31、R32はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基(以上好ましい例はZa1上の置換基と同じ)を表し、好ましくは、アルキル基、フェナシル基、またはアリール基を表す。
【0108】
スルホニウム塩系酸発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス( 4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムなどのスルホニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、以下に示すI−4〜I−10などが挙げられる。
【0109】
【化26】
【0110】
さらに、上記以外のオニウム塩としては、例えばD.C.Neckeretal,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wenetal,Teh,Proc.Conf.Rad,CuringASIA,p478Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3‐140140号等に記載のホスホニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、同Re27,992号、特開平4−365049号に記載のアンモニウム塩、J.V.Crivelloetal,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivelloetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wenetal,Teh,Proc.Conf.Rad.CuringASIA,p478Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩も好適に用いることができる。
【0111】
2)スルホン酸エステル系酸発生剤
本発明のスルホン酸エステル系酸発生剤としては、例えばM.Tunookaetal,PolymerPreprintsJapan,38(8)、G.Berner etal,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijsetal,CoatingTechnol.,55(697),45(1983)、Akzo,H.Adachietal,PolymerPreprints,Japan,37(3)、欧州特許第199,672号、同84,515号、同199,672号、同44,115号、同101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特願平3−140109号に記載のイミノスルホネート、特開平9−96900号及び特開平6−67433号のオキシムスルホネート、特開平6−236024号、特開平6−214391号、特開平6−214392号、特開平7−244378号に記載のN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル類等を挙げることができる。
【0112】
具体例としてはベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、o−ニトロベンジルトシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド、α−シアノベンジリデントシルアミン、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。
【0113】
3)ジスルホン系酸発生剤
本発明のジスルホン系酸発生剤としては、例えば特開昭61−166544号、特開平1−284554号、特公平1−57777 号、特開平2−71270号、特開平3−103854号、特開平3−103856号、特開平4−1210960号等に開示されている化合物を挙げることができる。具体的には、1,2−ジフェニルジスルホン、1,2−ジ−n−プロピルジスルホン及び1−(4−メチルフェニル)2−フェニルジスルホンが挙げられる。
【0114】
4)金属アレーン錯体系酸発生剤
本発明の金属アレーン錯体系酸発生剤としては、中心金属が鉄またはチタンの錯体が好ましい。例えば、鉄−アレーン錯体は、二価の鉄イオンがシクロペンタジエン環のような芳香環と錯体を形成した錯体であり、A. N. Nesmeyanov et al.、Docl. Acad. Nauk.USSR,160巻,1327頁(1965年)やK.Meler et al.、J.Imaging Sci.,30巻,174頁(1986年)に具体例が示されている。金属イオンに配位する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環およびペリレン環等が好ましく、これらの芳香環は置換基を有していても良い。置換基の具体例としては、メチル基やエチル基等のアルキル基、メトキシ基やエトキシ基等のアルコキシ基、塩素や臭素等のハロゲン原子、アシル基、エステル基、カルボキシル基等をげられる。また、特開平1−54440号、欧州特許第109851号、欧州特許第126712号、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の鉄アレーン錯体も好ましい例として挙げることができる。本発明の金属アレーン錯体は種々対アニオンと組み合わせても良く、組み合わせる対アニオンとしてはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェ−ト、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。「オルガノメタリックス(Organometallics)」、第8巻、第2737頁(1989年)には、鉄アレーン錯体の有機ホウ酸塩の具体例が開示されている。また、特開昭61−151197号公報に開示されているチタセノン類も好ましい例として挙げることができる。
【0115】
5)有機ハロゲン化合物系酸発生剤
本発明の有機ハロゲン化合物系酸発生剤としては、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭59−180543号、特開昭59−148784号、特開昭60−138539号、特公昭60−27673号、特開昭60−239736号、特公昭49−21601号、特開昭63−58440号、特公昭57−1819号等、米国特許第3,905,815号、、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、特開平4−19666号、特開昭59−107344号に記載の化合物を挙げることができる。
【0116】
具体例としては、四臭化炭素、1,2,3−トリブロモプロパン、1,2,3,4−テトラブロモブタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン、ジブロモテトラクロロエタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,4−ジブロモブタン、ヨードホルム、ヘキサブロモシクロヘキサン、ヘキサブロモシクロドデカン、などの炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素類、特に炭素数1〜10のハロゲン含有炭化水素類が挙げられる。
【0117】
6)トリアジン系酸発生剤
本発明のトリアジン系酸発生剤としては、特開昭53−133428、特開昭63−153542号、特開昭53−36223号に開示されているトリアジン系化合物を挙げることができる。
【0118】
本発明のトリアジン系酸発生剤として好ましくは、以下の一般式(9)にて表されるトリハロメチル置換トリアジン系化合物である。
【0119】
【化27】
【0120】
一般式(9)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立にハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、−CR21R22R23、または置換基を表す(置換基の好ましい例はZa1上の置換基と同じ)。R24は好ましくは−CR21R22R23を、より好ましくは−CCl3基を表し、R25は好ましくは、 −CR21R22R23、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基である。
【0121】
トリハロメチル置換トリアジン系酸発生剤の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。好ましい例として、英国特許1388492号および特開昭53−133428号公報記載の化合物も挙げられる。
【0122】
7)イソシアヌル酸系酸発生剤
本発明のイソシアヌル酸系酸発生剤としては、特開昭62−164045号等に記載されているイソシアヌル酸系光酸発生剤を用いることができる。具体的には、イソシアヌル酸トリス(2,3−ジブロモプロピル)等が挙げられる。
【0123】
8)アゾール系酸発生剤
本発明のアゾール化合物系酸発生剤としては、特開昭55−77742号に記載のハロメチル−ビニル−オキサジアゾール化合物や、ビスイミダゾール系化合物が挙げられる。
【0124】
ビスイミダゾール系酸発生剤にて好ましいのは、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール誘導体であり、例えばビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー(CDM−HABI)、1,1’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’5,5’−テトラフェニル(o−Cl−HABI)、1H−イミダゾール、2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−〔3,4−ジメトキシフェニル〕−ダイマー(TCTM−HABI)などが挙げられる。
【0125】
ビスイミダゾール系酸発生剤は水素供与体と共に用いられることが好ましい。水素供与体として好ましくは、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、などが挙げられる。
【0126】
9)イオン性非共鳴2光子吸収色素‐酸発生剤対塩錯体
さらに本発明の酸発生剤(重合開始剤)としては、イオン性の前記(B)の非共鳴2光子吸収色素と、該色素の反対電荷を有するイオン性酸発生剤とを対塩化した非共鳴2光子吸収化合物‐酸発生剤錯体を用いることもできる。すなわち、非共鳴2光子吸収色素が正電荷を有するカチオン性色素の場合には負電荷を有する酸発生剤との組み合わせにて対塩化した化合物を、逆に非共鳴2光子吸収色素が負電荷を有するアニオン性色素の場合には、正電荷を有する酸発生剤との組み合わせにて対塩化した化合物を酸発生剤として用いることができる。
【0127】
本発明の酸発生剤がイオン性非共鳴2光子吸収色素−酸発生剤対塩錯体の場合には、そのイオン性非共鳴2光子吸収化合物が本発明の非共鳴2光子吸収化合物の役割を行っても良い。
【0128】
以下に、本発明のイオン性非共鳴2光子吸収色素−酸発生剤対塩錯体の具体例として、アニオン性非共鳴2光子吸収化合物オニウム塩錯体系酸発生剤の例を一般式(10)に挙げるが、本発明のイオン性非共鳴2光子吸収色素−酸発生剤対塩錯体はこれらのみに限定されるものではない。
【0129】
【化28】
【0130】
一般式(10)中、(Dye‐2)−は非共鳴2光子吸収を行いかつアニオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。X23 +は一般式(6)のジアゾニウム塩のカチオン部分、一般式(7)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分、または一般式(8)のスルホニウム塩のカチオン部分を表し(いずれも好ましい例は先述した通り)、好ましくは一般式(7)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分または一般式(8)のスルホニウム塩のカチオン部分である。
【0131】
アニオン性非共鳴2光子吸収化合物オニウム塩錯体系化合物(重合開始剤)の具体例としては例えば、以下に示すI−15〜I−32等が挙げられる。
【0132】
【化29】
【0133】
10)その他の酸発生剤
本発明に用いる上記以外の酸発生剤としてはS.Hayaseetal,J.PolymerSci.,25,753(1987)、E.Reichmanisetal,J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,23,1(1985)、D.H.R.Bartonetal,J.Chem.Soc.3571(1965)、P.M.Collinsetal,J.Chem.Soc.,PerkinI,1695(1975)、M.Rudinsteinetal,TetrahedronLett.,(17),1445(1975)、J.W.Walkeretal,J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busmanetal,J.ImagingTechnol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihanetal,Macromolecules,21,2001(1988)、P.M.Collinsetal,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayaseetal,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanisetal,J.Electrochem.Soc.,SolidStateSci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihanetal,Macro‐molecules,21,2001(1988)、欧州特許第290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号などに開示されているo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、特開平4−338757号に開示されているハロゲン化スルホラン誘導体(具体的には、3,4−ジブロモスルホラン、3,4−ジクロロスルホランなど)、メチレングリコールビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテルなどのハロゲン含有アルキレングリコールエーテル化合物類、1,1,3,3−テトラブロモアセトン、ヘキサクロロアセトンなどのハロゲン含有ケトン類、2,3−ジブロモプロパノールなどのハロゲン含有アルコール類なども挙げることができる。
【0134】
11)酸を発生する基を主鎖もしくは側鎖に導入したポリマー
本発明の酸発生剤として酸を発生する基を主鎖もしくは側鎖に導入したポリマーを用いることもできる。本発明の酸発生剤が酸を発生する基を主鎖もしくは側鎖に導入したポリマーである場合には、該ポリマーが(A)高分子化合物の役割を行ってもよい。
【0135】
本発明の酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物として具体的には、M.E.Woodhouseetal,J.Am.Chem.Soc.,104,5586(1982)、S.P.Pappasetal,J.ImagingSci.,30(5),218(1986)、S.Kondoetal.Makromol.Chem.,RapidCommun.,9,625(1988)、J.V.Crivelloetal.J.PolymerSci.,PolymerChem.Ed.,17,3845(1979)、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146037号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号、特開2000‐143796号に開示されている化合物を用いることができる。
【0136】
次に、本発明の光重合組成物における酸により顕色化または色が変化する化合物(D)について説明する。
本発明の酸により顕色化または色が変化する化合物は、酸との反応により構造が変化して顕色化または色(吸収スペクトル)が変化する性質を有する化合物であれば特に限定はないが、好ましくはトリフェニルメタン系色素、フタリド系色素、インドリルフタリド系色素、アザフタリド系色素、トリフェニルメタンフタリド系色素、フェノチアジン系色素、フェノキサジン系色素、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、キサンテン系色素、ジフェニルメタン系色素、クロメノピラゾール系色素、ロイコオーラミン色素、メチン色素、アゾメチン系色素、ローダミンラクタム系色素、キナゾリン系色素、ジアザキサンテン系色素、フルオレン系色素、スピロピラン系色素が挙げられる。これらの化合物の具体例は、例えば特開2002−156454号およびその引用特許、特開2000‐281920号、特開平11‐279328号、特開平8‐240908号等に開示されている。
【0137】
本発明の(D)酸により顕色化または色が変化する化合物としてより好ましくは、ラクトン、ラクタム、スピロピラン等の部分構造を有するロイコ色素であり、フタリド系色素(トリフェニルメタンフタリド系色素、インドリルフタリド系色素、アザフタリド系色素を含む)、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、ローダミンラクタム系色素、またはスピロピラン系色素が挙げられ、好ましくはトリフェニルメタンフタリド系色素である。
【0138】
以下に、これらの色素の具体例を挙げるが、本発明の(D)酸により顕色化または色が変化する化合物は以下の具体例のみに限定されるものではない。
フタリド系色素として好ましくは下記の一般式(11)にて示される。
【0139】
【化30】
【0140】
一般式(11)中、Xは炭素原子または窒素原子を表し、R67、R68はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜24のアリール基、炭素数1〜24のヘテロ環基または下記の一般式(12)で表される基を表し、R69はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくは一般式(1)のZa1およびZa2の置換基として示された基を挙げることができる。R69としてより好ましくは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリール基を有するアリールアミノ基、それぞれ独立に炭素数6〜24のアリール基を有するジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはヘテロ環基を表し、k70〜4の整数を表し、k7 が2以上の整数のとき、複数個のR69はそれぞれ独立して上記の基を表す。これらの基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。
【0141】
【化31】
【0142】
一般式(12)中、R70は炭素数1〜3のアルキレン基を表し、k8は0〜1の整数を表し、R71は置換基を表し、一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。R71の置換基としてより好ましくは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリール基を有するアリールアミノ基、それぞれ独立に炭素数6〜24のアリール基を有するジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはヘテロ環基を表し、k9は0〜5の整数を表し、k9が2以上の整数のとき、複数個のR71はそれぞれ独立して上記の基を表す。これらの基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。
【0143】
一般式(11)中、R67、R68で表されるヘテロ環基としてさらに好ましくは、下記の一般式(13)で表されるインドリル基である。
【0144】
【化32】
【0145】
一般式(13)中、R72は置換基を表し、一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。R72の置換基して好ましくは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリール基を有するアリールアミノ基、それぞれ独立に炭素数6〜24のアリール基を有するジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはヘテロ環基を表し、k10は0〜4の整数を表し、k10が2以上の整数のとき、複数個のR72はそれぞれ独立して上記の基を表し、R73は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R74は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。これらの基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。
【0146】
フタリド系色素(インドリルフタリド系色素、アザフタリド系色素を含む)の具体例としては、3,3−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1、3−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−6−ヒドロキシフタリド、3,3−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フタリド、3,3−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)−6−メトキシフタリド等が挙げられる。
【0147】
一般式(14)で示されるフタリド系色素としてさらに好ましくは、下記の一般式(14)にて示されるトリフェニルメタンフタリド系色素である。
【0148】
【化33】
【0149】
一般式(14)中、R61、R62、R63はそれぞれ独立に置換基を表し、一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。R61、R62、R63の置換基として好ましくは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリール基を有するアリールアミノ基、それぞれ独立に炭素数6〜24のアリール基を有するジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ヘテロ環基を表し、k1、k2、k3はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、k1、k2、k3のそれぞれが2以上の整数のとき、複数個のk1、k2、k3はそれぞれ独立して上記の基を表す。これらの基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。
【0150】
トリフェニルメタンフタリド系色素の具体例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(すなわちクリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、4−ヒドロキシ‐4’−ジメチルアミノトリフェニルメタンラクトン、4,4’−ビスジヒドロキシ‐3,3’−ビスジアミノトリフェニルメタンラクトン、3,3−ビス(p−ジオクチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシフタリド、3,3−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)フタリド、3,3−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)−6−メトキシフタリド等が挙げられる。
【0151】
フルオラン系色素として好ましくは下記の一般式(15)にて示される。
【0152】
【化34】
【0153】
一般式(15)中、R64、R65、R66はそれぞれ独立に、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルアミノ基、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、炭素数6〜24のアリール基を有するアリールアミノ基、それぞれ独立に炭素数6〜14のアリール基を有するジアリールアミノ基、ヒドロキシル基、またはヘテロ環基を表し、k4、k5、k6はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、k4、k5、k6のそれぞれが2以上の整数のとき、複数個のR64、R65、R66はそれぞれ独立して上記の基を表す。これらの基はさらに置換基を有してもよく、置換基としては一般式(1)のZa1及びZa2の置換基として示された基を挙げることができる。
【0154】
フルオラン系色素の具体例としては、3−ジエチルアミノ−6−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−6−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチル−6−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ)−7−メチル−6−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−7−メチル−6−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソペンチルアミノ−7−メチル−6−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチル−6−キシリジノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,7−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシ−6−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジメチルアミノ−6−メトシキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチル−6−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メトキシフルオラン、3,6−ビスジエチルアミノフルオラン、3,6−ジヘキシルオキシフルオラン、3,6−ジクロロフルオラン、3,6−ジアセチルオキシフルオラン等が挙げられる。
【0155】
ローダミンラクタム系色素の具体例としては、ローダミン−B−アニリノラクタム、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(p−クロロアニリノ)ラクタム、ローダミン−B−(o−クロロアニリノ)ラクタム等が挙げられる。
【0156】
スピロピラン系色素の具体例としては、3−メチル−スピロジナフトピラン、3−エチル−スピロジナフトピラン、3,3’−ジクロロ−スピロジナフトピラン、3−ベンジル−スピロジナフトピラン、3−プロピル−スピロジベンゾピラン、3−フェニル−8’−メトキシベンゾインドリノスピロピラン、8’−メトキシベンゾインドリノスピロピラン、4,7,8’−トリメトキシベンゾインドリノスピロピラン等が挙げられる。
さらには、特開2000−281920号公報に開示されているスピロピラン系色素も具体例として挙げることができる。
【0157】
また、本発明の(D)酸により顕色化または色が変化する化合物には、特開2000−284475号公報に開示されている一般式(6)で示されるBLD化合物や特開2000−144004号に開示されているロイコ色素、および下記に示した構造のロイコ色素も好適に用いることができる。
【0158】
【化35】
【0159】
本発明の光感応性高分子組成物は、必要により酸増幅剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を適宜用いることができる。
【0160】
本発明の光感応性高分子組成物には、酸増殖剤として上記の酸発生剤より発生した酸の作用により酸を増殖する機能を有する化合物を添加することができる。
そのような酸増殖剤としては、米国特許第5,286,612号、同第5,395,736号、同第5,441,850号、特表平8−503081号、同8−503082号、特開平8−248561号、K.Ichimura、Chem.Lett.1995年、551頁、特開平11−180048号等に記載の化合物を用いることができる。
また、酸発生機能および酸増殖機能を付与した高分子化合物として特開2000−118147記載に開示されているポリマーも本発明に好適に用いることができる。
【0161】
本発明の光感応性高分子組成物には、保存時の重合を防止し、保存安定性を保つ目的で熱安定剤(熱重合禁止剤)を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
熱安定剤は高分子化合物100質量部に対して0.001から5質量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0162】
可塑剤は光感応性高分子組成物の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために用いられる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0163】
本発明の光感応性高分子組成物は通常の方法で調製してよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が挙げられる。
本発明の光重合性組成物は基体上に直接塗布することも、スピンコートすることもできるし、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基体にラミネートすることもできる。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。
【0164】
本発明の2光子吸収重合性組成物中の各成分の割合は、一般的に組成物の全質量を基準に以下の%の範囲内であることが好ましい。
高分子化合物:好ましくは0〜90質量%、より好ましくは45〜80質量%
非共鳴2光子吸収化合物:好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.03〜7質量%
酸発生剤:好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%
酸により顕色化または色が変化する化合物:好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%
【0165】
本発明の光感応性高分子組成物は、光記録材料、特に3次元光記録媒体に応用することができる。この3次元光記録媒体は、光照射部分で(D)酸により顕色化または色が変化する化合物の吸収波長(透過率、反射率)が変化すること、あるいは屈折率が変化することを利用して情報の記録を行い、該光照射部の透過率変化や反射率変化あるいは屈折率変化を記録情報として読み出すことができる。2光子吸収の特徴である、極めて高い3次元空間分解能のために3次元空間内の任意の一点で重合−発色を誘起することが可能なため、3次元の立体的に情報を書き込むことの可能な超高密度光記録媒体が可能となる。
【0166】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0167】
[実施例1]
本発明の非共鳴2光子吸収化合物の合成
【0168】
(1)D−73の合成
【0169】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−73は以下の方法により合成することができる。
【0170】
【化36】
【0171】
4級塩[1]14.3g(40mmol)を水50mlに溶解し、水酸化ナトリウム1.6g(40mmol)を加えて室温にて30分攪拌した。酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、メチレンベース[2]のオイル9.2g(収率100%)を得た。
【0172】
ジメチルアミノアクロレイン[3]3.97g(40mmol)をアセトニトリル50mlに溶解し、0℃に冷却しながらオキシ塩化リン6.75g(44mmol)を滴下し、0℃にて10分間攪拌した。続いてメチレンベース[2]9.2gのアセトニトリル溶液を滴下し、35℃にて4時間攪拌した。氷水100mlに注いだ後、16gの水酸化ナトリウムを加え、10分間還流した。冷却後、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=1:10→1:3)で精製し、アルデヒド[4]のオイル4.4g(収率39%)を得た。
【0173】
シクロペンタノン0.126g(1.5mmol)、アルデヒド[4] 0.85g(3mmol)を脱水メタノール30mlに溶解し、暗所にて窒素雰囲気下還流した。均一になった後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液0.69g (3.6mmol )を加え、さらに6時間還流した。冷却後析出した結晶をろ別しメタノールにて洗浄し、D−73の深緑色結晶0.50g (収率54% )を得た。なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0174】
(2)D−84の合成
【0175】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−84は以下の方法により合成することができる。
【0176】
【化37】
【0177】
シクロペンタノン33.6g(0.4mol)、DBN2ml、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール400gを5日間還流した。濃縮後アセトンを加えて冷却して結晶をロ別し、冷アセトンで洗浄し、[5]の結晶32.4g(収率42%)を得た。
【0178】
[5]0.78g(4mmol)、4級塩[6]2.78g(8mmol)、ピリジン20mlを窒素雰囲気下暗所にて4時間還流した。冷却後酢酸エチルを加えて結晶をロ別し、酢酸エチルで洗浄した。結晶をメタノールに分散してロ別し、目的のD−84の深青色結晶2.14g(収率56%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0179】
また、他の本発明の一般式(1)で表される非共鳴2光子吸収化合物についてもD−73、D−84の合成法や、Tetrahedron.Lett.,42巻,6129頁,(2001年)等に記載の方法等に準じて合成することができる。
【0180】
(3)D−1の合成
【0181】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−1は以下の方法により合成することができる。
【0182】
【化38】
【0183】
ベンゾオキサゾール[7]52.25g(0.2mol)、プロパンサルトン[8]45.75g(0.375 mol)を140℃にて4時間加熱攪拌した。冷却後アセトンを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して4級塩[9]70.42g(収率85%)を得た。
【0184】
4級塩[9]66.2g (0.2mol)、オルソプロピオン酸トリエチル[10]200ml、ピリジン200ml、酢酸80mlを120℃にて1時間加熱攪拌した。冷却後、酢酸エチルで3回デカンテション洗浄した。メタノール100mlに溶解して攪拌したところに、酢酸ナトリウム4.0g(50mmol)/メタノール20ml溶液を添加し、生じた結晶をロ別した。さらにメタノールに分散してロ別し、目的のD−1の朱色結晶31.36g(収率43.4%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0185】
(4)D−42の合成
【0186】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−42は以下の方法により合成することができる。
【0187】
【化39】
【0188】
4級塩[11]2.81g(10mmol)、[12]6.67g(30mmol)、無水酢酸10g、アセトニトリル50mlを30分間還流した。濃縮後酢酸エチルでデカンテーションし、アニル体[13]の粗製品を得た。
アニル体[13]の粗製品にチオバルビツール酸[14]2.00g(10mmol)、トリエチルアミン3.0g(30mmol)、エタノール100mlを加えて1時間還流した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=20:1→10:1)にて精製し、さらにメタノール−イソプロピルアルコールにて再結晶することにより、目的のD−42の結晶2.55g(トータル収率41.3%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0189】
(5)D−56の合成
【0190】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−56は以下の方法により合成することができる。
【0191】
【化40】
【0192】
バルビツール酸[15]3.12g(20mmol)、[16]2.85g(10mmol)、トリエチルアミン4.1g(40mmol)をDMF30mlに溶解し、室温にて2時間攪拌した。希塩酸を加えて生じた結晶をロ別し、水で洗浄、乾燥し、目的のD−56の結晶2.99g(収率80.0%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0193】
(6)D−104の合成
【0194】
本発明の非共鳴2光子吸収化合物D−104は以下の方法により合成することができる。
【0195】
【化41】
【0196】
3−(9−エチルカルバゾール−3−イル)プロペナール [17]3.3g(13mmol)およびシクロペンタノン 0.55g(6.6mmol)を脱水メタノール100mlに溶解し、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液1mlを滴下して室温にて2時間攪拌した。析出した結晶をロ別し、メタノールで洗浄した後乾燥し、目的のD−104の結晶2.5g(収率70.0%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0197】
また、他のシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素等についても、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊、D.M.Sturmer著、Heterocyclic Compounds− Special Topics in Heterocyclic Chemistry、第18章、第14節、第482から515頁、John&Wiley&Sons、New York、London等に記載の方法等に準じて合成することができる。
【0198】
[実施例2]
2光子吸収断面積の評価
本発明の非共鳴2光子吸収化合物の2光子吸収断面積の評価は、該化合物が蛍光性の場合には蛍光法を、該化合物が非蛍光性の場合にはZ−Scan法を用いて行った。
【0199】
<蛍光法>
2光子吸収断面積の蛍光法による評価は、M.A.Albota et al.,Appl.Opt.1998,37,7352.記載の方法を参考に行った。この測定法は、非共鳴2光子吸収が起こることにより誘起された励起状態からの発光の強度を、基準物質と被測定物質との間で比較する方法であり、2光子発光を起こす化合物でなければ測定できないが、他の方法に比べて簡便で比較的正確な値が得られるのが特徴である。2光子吸収断面積測定用の光源には、Ti:sapphire パルスレーザー(パルス幅:100fs 、繰り返し:80MHz 、平均出力:1W、ピークパワー:100kW )を用い、700nmから1000nmの波長範囲で2光子吸収断面積を測定した。また、基準物質としてローダミンBおよびフルオレセインを測定し、得られた測定値をC.Xu et al.,J.Opt.Soc.Am.B 1996,13,481.に記載のローダミンB およびフルオレセインの2光子吸収断面積の値を用いて補正することで、各化合物の2光子吸収断面積を得た。2光子吸収測定用の試料には、1×10-3の濃度でクロロホルムまたはDMSOに化合物を溶かした溶液を用いた。
【0200】
<Z−Scan法>
2光子吸収断面積のZ−Scan法による評価は、MANSOOR SHEIK−BAHAE et al.,IEEE.Journal of Quantum Electronics.1990,26,760.記載のZスキャン法で行った。Zスキャン法は、非線形光学定数の測定方法として、広く用いられている方法であり、集光したレーザビームの焦点付近で、測定試料をビームに沿って移動させ、透過する光量の変化を記録する。試料の位置により、入射光のパワー密度が変化するため、非線形吸収がある場合には、焦点付近で透過光量が減衰する。透過光量変化を、入射光強度、集光スポットサイズ、試料厚み、試料濃度などから予測される理論曲線に対し、フィッティングを行うことにより、2光子吸収断面積を算出した。2光子吸収断面積測定用の光源には、Ti:sapphire パルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、700nmから1000nmの波長範囲で2光子吸収断面積を測定した。2光子吸収測定用の試料には、1×10-3の濃度でクロロホルムに化合物を溶かした溶液を用いた。
【0201】
上記の方法にて評価した本発明の非共鳴2光子吸収化合物の2光子吸収断面積を表1に示した。
【0202】
【表1】
【0203】
[実施例3]
本発明の光感応性高分子組成物の調製
【0204】
光感応性高分子組成物(1)の組成
高分子化合物: アルドリッチ社製 ポリ(ブチルメタクリレート−co−
イソブチルメタクリレート) 100質量部
非共鳴2光子吸収化合物: D−104 0.5質量部
酸発生剤:ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸 3.0質量部
(D)の化合物:クリスタルバイオレットラクトン 3.0質量部
【0205】
光感応性高分子組成物(2)の組成
高分子化合物: アルドリッチ社製 ポリ(ブチルメタクリレート−co−
イソブチルメタクリレート) 100質量部
非共鳴2光子吸収化合物: D−104 0.05質量部
酸発生剤:ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸 3.0質量部
(D)の化合物:クリスタルバイオレットラクトン 3.0質量部
【0206】
光感応性高分子組成物(3)の組成
高分子化合物: アルドリッチ社製 ポリ(ブチルメタクリレート−co−
イソブチルメタクリレート) 100質量部
非共鳴2光子吸収化合物: D−104 0.5質量部
酸発生剤:ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸 3.0質量部
(D)の化合物:ローダミンB ベース 3.0質量部
【0207】
【0208】
比較例(2)の組成物の組成
高分子化合物: アルドリッチ社製 ポリ(ブチルメタクリレート−co−
イソブチルメタクリレート) 100質量部
非共鳴2光子吸収化合物: D−104 0.5質量部
酸発生剤:ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸 3.0質量部
【0209】
比較例(3)の組成物の組成
高分子化合物: アルドリッチ社製 ポリ(ブチルメタクリレート−co−
イソブチルメタクリレート) 100質量部
非共鳴2光子吸収化合物: 非特許文献1に記載のジアリールエテン
0.5質量部
なお、非共鳴2光子吸収化合物として用いたジアリールエテンは、2光子吸収によるフォトクロミズムで520nm付近に新たな吸収が出現する化合物である。該化合物の2光子吸収断面積の極大値は10GMである。
【0210】
【化42】
【0211】
[性能評価]
本発明の光重合性組成物の性能評価には、上記の各組成に調製した光感応性高分子組成物を2枚のカバーガラスの間に挟み(厚さ約100μm)、非共鳴2光子吸収化合物の2光子吸収極大波長に相当する波長のフェムト秒レーザーパルス光を照射した後、光照射部における酸発色色素またはフォトクロミック化合物の発色の有無を目視にて観測した。なお、照射したレーザーパルス光の強度および照射時間は各組成物間で一定とした。
結果を表2に示した。
【0212】
【表2】
【0213】
なお、非共鳴2光子吸収化合物D−104をD−4、D−5、D−42、D−56、D−76、D−77、D−94、D−139、D−140、D−142、D−144、D−145等に替えても、酸発生剤をトリス(4−メチルフェニル)スルホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、I−2、I−3、I−4、I−6、I−9、4−メチルジアゾニウム、2,5−ジニトロベンジルトシレート、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等に替えても、また(D)の化合物を3,3−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、4,4’−ビスヒドロキシ−3,3’−ビスジアミノトリフェニルメタンラクトン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、ローダミン(p−ニトロアニリノ)ラクタム、3−メチル−スピロジナフトピラン、R−1、R−2、R−3、R−4、R−5、R−6等に替えても同様に効果が得られる。
また、上記の着色した高分子組成物は、着色部と非着色部の光透過率または光反射率の差を利用して情報を読み取ることができる。さらには、着色部と非着色部の屈折率差による屈折率変調画像を形成することもでき、該部分の屈折率差を光照射による反射率変化等により読み取ることができる。従って、本発明の光感応性高分子組成物は3次元光記録媒体よびその記録−再生方法への応用も可能である。
【0214】
【発明の効果】
以上の評価結果より、本発明の光感応性高分子組成物を用いることで、2光子吸収により発色(すなわち消衰係数kの変化および屈折率nの変化)を高感度に誘起できる高分子組成物を得ることができる。
Claims (8)
- 少なくとも、(A)高分子化合物、(B)非共鳴2光子吸収化合物、(C)非共鳴2光子吸収により生じた非共鳴2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことにより酸を発生する酸発生剤、および(D)酸により顕色化または色が変化する化合物を含有し、非共鳴2光子吸収により発色もしくは色の変化が起こることを特徴とする光感応性高分子組成物。
- 該非共鳴2光子吸収化合物(B)が、500GM以上の2光子吸収断面積を有する非共鳴2光子吸収化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光感応性高分子組成物。
- 該酸発生剤(C)が、オニウム塩系化合物、スルホン酸エステル系化合物、ジスルホン系化合物、金属アレーン錯体系化合物、有機ハロゲン化合物、トリアジン系化合物、イソシアヌル酸系化合物、アゾール系化合物のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の光感応性高分子組成物。
- 該酸により顕色化または色が変化する化合物(D)が、トリフェニルメタン系色素、フェノチアジン系色素、フェノキサジン系色素、フルオラン系色素、チオフルオラン系色素、キサンテン系色素、フタリド系色素、ジフェニルメタン系色素、クロメノピラゾール系色素、ロイコオーラミン色素、メチン色素、アゾメチン系色素、ローダミンラクタム系色素、キナゾリン系色素、ジアザキサンテン系色素、フルオレン系色素、スピロピラン系色素のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光感応性高分子組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光感応性高分子組成物に、該組成物の最も長波長の吸収波長よりも長波長側で、かつ該組成物の吸収の存在しない波長の光を照射して高分子組成物を着色することを特徴とする光感応性高分子組成物の着色方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光感応性高分子組成物に、該高分子組成物に含まれる(B)非共鳴2光子吸収化合物の非共鳴2光子吸収極大波長に対応する光を照射して、着色した光感応性高分子組成物を得ることを特徴とする請求項5に記載の着色方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光感応性高分子組成物を用いることを特徴とする光記録方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の光感応性高分子組成物を含有することを特徴とする光記録材料。
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