JP2005320502A - 高分子組成物、重合性組成物、及び光記録媒体 - Google Patents

高分子組成物、重合性組成物、及び光記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】高感度な2光子吸収化合物と、高感度2光子吸収化合物が獲得した励起エネルギーを効率良く記録反応に導く2光子光化学反応系、さらに高転送レート実現のための信号増幅機構に用いる材料を提供する。
【解決手段】 高分子化合物中に、少なくとも2光子吸収化合物と酸化反応により発色する色素前駆体とを分散して成る高分子組成物、該高分子組成物と重合性化合物からなる重合性組成物、該高分子組成物又は重合性組成物を含み、2光子吸収を利用した2光子光記録媒体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、2光子吸収を利用した高分子組成物、重合性組成物、高密度光記録媒体及び高密度光記録方法に関するものである。
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことである。近年、3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収とは非共鳴2光子吸収を指す。
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波長でかつ吸収の存在しないレーザーを用いることが多い。透明領域のレーザーを用いるため、レーザー光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。その点が通常の1光子(線形)吸収に対する大きな利点となる。
一方、従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られており、追記型CD(いわゆるCD−R)、追記型DVD(いわゆるDVD−R)などが実用化されている。例えば、DVD−Rの代表的な構造は、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層からなる。
DVD−Rへの情報の記録は、可視レーザー光(通常は630nm〜680nmの範囲)を照射し、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより行われる。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。この反射率の違いはいわゆる「屈折率の変調」に基づくものである。
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上、好ましくは100GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。そのような中、DVD−Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい片面25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、3次元光記録媒体が俄然注目されてきている。3次元光記録媒体は、3次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の2次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。3次元光記録媒体を提供するためには、3次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。
2光子吸収材料を用いる3次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。2光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号[特許文献3]、アルセノフ、ヴラディミール他、特表2001−508221号[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な2光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている2光子吸収化合物の例も2光子吸収効率の極めて小さい2光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許において用いられているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式とは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
一方、河田聡、川田善正、特開平6−28672号[特許文献5]、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号[特許文献6]には、屈折率変調により3次元に情報を記録する記録装置、再生装置、および読み出し方法等が開示されてはいるが、具体的な2光子吸収光記録材料を用いた方法についての記載はない。
特表2001−524245号公報 特表2000−512061号公報 特表2001−522119号公報 特表2001−508221号公報 特開平6−28672号公報 特開平6−118306号公報
上で述べたように、非共鳴2光子吸収の極めて高い空間分解能を利用して3次元空間の任意の場所に情報を記録すれば、記録密度の観点からは究極の高密度記録媒体が実現可能となる。実際に、記録密度のみに注目した2光子光記録媒体の開発は、上述の特許文献に開示されているとおりであるが、現実の光記録媒体に求められる性能は記録密度だけにあるのではなく、記録感度や高速な記録読み出し速度(転送レート)、さらに記録安定性も極めて重要な必要性能である。ところが、上記特許文献に開示されている2光子光記録媒体では、極めて低い2光子吸収効率の2光子吸収色素を用いているために、非常に低感度で低い転送レートしか実現できず、またフォトクロミック化合物を用いる場合には記録安定性も低い。
本発明の目的は、2光子吸収を用いて高密度な光記録媒体を提供する上で重要となる高い転送レートと高い記録安定性を実現するための新たな材料および方法を提供することである。特に、高感度な2光子吸収化合物と、高感度2光子吸収化合物が獲得した励起エネルギーを効率良く記録反応に導く2光子光化学反応系、さらに高転送レート実現のための信号増幅機構に用いる材料および方法を提供することである。更に、記録の安定性を実現するための新たな記録材料と記録読み出し方法も提供する。
発明者らの鋭意検討の結果、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
(1) 高分子化合物中に、少なくとも2光子吸収化合物と酸化または還元反応により発色する色素前駆体とを分散して成ることを特徴とする高分子組成物。
(2) 該色素前駆体が、ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類またはロイコトリアリールメタン化合物類のうちの少なくとも一つであることを特徴とする(1)に記載の高分子組成物。
(3) 該色素前駆体が、ロイコトリアリールメタン化合物類であることを特徴とする(1)または(2)に記載の高分子組成物。
(4) 該色素前駆体が、オキサジンロイコ化合物類であることを特徴とする(1)または(2)に記載の高分子組成物。
(5) 該2光子吸収化合物が、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素、アゾ色素または下記一般式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の高分子組成物。
Figure 2005320502
式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R1、R2、R3、R4のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR1、R2、R3およびR4は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。X1およびX2は独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
Figure 2005320502
式中、R5は水素原子または置換基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Z1は5または6員環を形成する原子群を表す。
(6) 該2光子吸収化合物が下記一般式(3)で表されるシアニン色素、下記一般式(4)で表されるメロシアニン色素、または一般式(5)で表されるオキソノール色素であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の高分子組成物。
Figure 2005320502
一般式(3)〜(5)中、Za1、Za2及びZa3はそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za4、Za5及びZa6はそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra1、Ra2及びRa3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma1〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na1、na2及びna3はそれぞれ0または1であり、ka1、及びka3はそれぞれ0〜3の整数を表わす。ka1が2以上の時、複数のMa3、Ma4は同じでも異なってもよく、ka3が2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。ka2は0〜8の整数を表わし、ka2が2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
(7) 該2光子吸収化合物の最も長波長側に存在する線形吸収極大の波長が、200nmよりも長波長側で500nmよりも短波長側に存在することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の高分子組成物。
(8) 少なくとも、(1)〜(7)のいずれかに記載の高分子組成物と重合性化合物とから成る2光子重合性組成物。
(9) さらに、光照射によって酸を発生する光酸発生剤および/またはラジカルを発生する光ラジカル発生剤を含むことを特徴とする(8)に記載の2光子重合性組成物。
(10) (1)〜(7)のいずれかに記載の高分子組成物に、該組成物に含まれる2光子吸収色素の非共鳴2光子吸収を誘起して該色素前駆体を酸化発色させることを特徴とする非共鳴2光子発色方法。
(11) (8)または(9)に記載の2光子重合性組成物に、該組成物に含まれる2光子吸収色素の非共鳴2光子吸収を誘起して該色素前駆体を酸化発色させた後、該発色色素の線形吸収に対応する光を照射して重合性化合物の重合を行うことを特徴とする非共鳴2光子重合方法。
(12) (1)〜(7)のいずれかに記載の高分子組成物を含み、(10)に記載の2光子発色方法を用いて色素前駆体を発色させることで屈折率、吸収率または発光強度の変化を誘起して情報を記録することを特徴とする2光子光記録媒体。
(13) (8)または(9)に記載の重合性組成物を含み、(11)に記載の2光子重合方法を用いて重合を行うことで屈折率の変化を誘起して情報を記録することを特徴とする2光子光記録媒体。
(14) (12)または(13)に記載の光記録媒体に光を照射して、記録部および未記録部の反射率の違いで記録情報の再生を行うことを特徴とする2光子光記録媒体の再生方法。
(15) (12)に記載の光記録媒体に光を照射して、記録部および未記録部の発光強度の違いで記録情報の再生を行うことを特徴とする(12)に記載の2光子光記録媒体の再生方法。
(16) 光照射により記録部と未記録部の光吸収量の差を増大させることが可能な2光子光記録媒体。
(17) (12)に記載の2光子光記録媒体であって、2光子吸収を用いて色素前駆体から発色させた色素の線形吸収に対応する光を照射して、記録部と未記録部の光吸収量の差を増大させることを特徴とする(12)に記載の2光子光記録媒体。
(18) (12)または(13)に記載の2光子光記録媒体であって、記録が書き換えできない方式であることを特徴とする(12)または(13)に記載の2光子吸収光記録媒体。
本発明により、2光子吸収を用いて高密度な光記録媒体を提供する上で重要となる高い転送レートと高い記録安定性を実現するための新たな材料および方法を提供でき、特に、高感度な2光子吸収化合物と、高感度2光子吸収化合物が獲得した励起エネルギーを効率良く記録反応に導く2光子光化学反応系、さらに高転送レート実現のための信号増幅機構に用いる材料および方法を提供することができる。更に、記録の安定性を実現するための新たな記録材料と記録読み出し方法も提供できる。
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の高分子組成物について詳しく説明する。本発明の高分子組成物は、少なくとも2光子吸収色素と、酸化または還元反応で発色する色素前駆体とを高分子化合物(ポリマーマトリックス)中に分散させてなる組成物である。
本発明の高分子組成物に用いるポリマーマトリックスとしては特に制限はなく、有機高分子化合物でも無機高分子化合物でもよい。有機高分子化合物としては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独でか又は互いに組合せて使用することができ、該高分子組成物に分散される各種成分と相溶性の良いものが好ましい。本発明の高分子化合物としては以下のものが好ましい。
アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル,メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ノルボルネン系ポリマー、ポリビニルアセタール(ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、適当なバインダーとして機能する酸含有重合体及び共重合体は、米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されているものを包含する。
ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH2)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、並びにH.カモガワらによりJournal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,18巻、9〜18頁(1979)中開示されているようなカルバゾール含有重合体。
また、フッ素原子含有高分子も好ましい。より好ましくは、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1 からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
前述したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
次に本発明の酸化反応により発色する色素前駆体について詳しく説明する。本発明の色素前駆体は、酸化反応により吸光度が増大する化合物であれば特に限定はないが、ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類およびロイコトリアリールメタン化合物類のいずれかの化合物を少なくとも一種類以上含むことが好ましい。
ロイコキノン化合物類としては、一般式(6)〜(10)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2005320502
式中、炭素原子に結合した水素原子の中で明示されていないものは、その一つ以上の水素原子を置換基で置換することができ、置換基としてはアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、ベンゾイルアミノ基が好ましく、これらの基は更に置換基を有してもよい。また、ヒドロキシ基の酸素原子は結合している水素原子を除いて他の基により置換されてもよく、ヒドロキシ酸素原子の置換基としてはアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ベンゾイル基が好ましい。また、ヒドロキシ基の水素原子は金属イオンで置き換えることもでき、金属イオンとしてはナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
以下に、本発明で用いられるロイコキノン化合物類の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005320502
本発明のチアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類とは、一般式(11)または(12)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2005320502
式中、Xはイオウ原子、酸素原子、置換窒素原子を表し、R101、R102、R 103、R104は水素原子または置換基を表し、YおよびZは置換基を表す。
一般式(11)のR101としては、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノカルボキシ基が好ましく、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基がより好ましく、ベンゾイル基、アシル基、t−ブトキシカルボニル基が特に好ましい。一般式(11)のR101は更に置換基を有しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
一般式(11)のR102およびR103は、水素原子または炭素数1〜20アルキル基またはアリール基、アルキルまたはアリールカルボニルアミノ基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基が最も好ましい。一般式(11)のR102およびR103は更に置換基を有しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
一般式(11)のR104としては、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基がより好ましい。一般式(11)のR104は更に置換基を有しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
一般式(11)のYとしては、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルまたはアリールカルボニルアミノ基、アリールカルボキシ基、アルキルカルボキシ基、二置換メチル基が好ましく、ジアルキルアミノ基、アルキルまたはアリールカルボニルアミノ基がより好ましい。
一般式(11)のYは更に置換基を有しても良く、置換基としては後記一般式(3)の置換基を挙げることができる。
一般式(12)のZとしては、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルまたはアリールカルボニルアミノ基、アリールカルボキシ基、アルキルカルボキシ基、二置換メチル基が好ましく、アリールカルボニルアミノ基、二置換メチル基がより好ましく、フェニルアミノ基、ジシアノメチル基が最も好ましい。一般式(12)のZは更に置換基を有しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
以下に、本発明で用いられるロイコキノン化合物類の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005320502
Figure 2005320502
Figure 2005320502
ロイコトリアリールメタン化合物類としては、一般式(13)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
Figure 2005320502
式中、Xは水素原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基を表し、Y、Zはそれぞれ独立にアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基を表す。一般式(13)のXとしては水素原子、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基がより好ましい。一般式(13)のY、Zとしては、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基が好ましく、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基がより好ましい。
一般式(13)のX、Y、Zは更に置換基を有しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
一般式(13)において、フェニル基の炭素原子は結合する水素原子を除いて置換基を置換しても良く、置換基としては一般式(3)の置換基を挙げることができる。
以下に、本発明で用いられるロイコトリアリールメタン化合物類の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005320502
Figure 2005320502
まず、本発明の2光子吸収光記録材料に用いる2光子吸収化合物について詳しく説明する。
本発明の2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。2光子吸収光記録材料、特に2光子吸収3次元光記録材料に応用する際は、速い記録読み出し速度(転送レート)達成のために、高感度で2光子吸収を行って励起状態を効率良く生成することができる2光子吸収化合物が必要である。
2光子吸収化合物が2光子吸収を行う効率は2光子吸収断面積δで表され、1GM = 1×10-50 cm4 s / photonで定義される。本発明の2光子吸収光記録材料における2光子吸収化合物の2光子吸収断面積δは100GM以上であることが、書き込み速度向上、レーザー小型化・安価化等の点で好ましく、1000GM以上であることがより好ましく、5000GM以上であることがより好ましく、10000GM以上であることが最も好ましい。
本発明の2光子吸収化合物は好ましくは有機化合物である。なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
なお、ここで色素とは紫外域(好ましくは200〜400nm)可視光領域(400〜700nm)または近赤外領域(好ましくは700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称であり、より好ましくは可視域に吸収の一部を有する化合物の総称である。
本発明における2光子吸収化合物としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、アントラキノン色素、キノン色素、トリフェニルメタン色素、ジフェニルメタン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、フルオレノン色素、ジアリールエテン色素、スピロピラン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フタロペリレン色素、インジゴ色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、ポルフィリン色素、アザポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、縮環芳香族系色素、スチレン系色素、メタロセン色素、金属錯体色素、フェニレンビニレン色素、スチルバゾリウム色素であり、より好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、アゾ色素、ポリエン色素、アザポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素であり、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、アゾ色素、フタロシアニン色素であり、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
本発明の2光子吸収化合物がシアニン色素の時、好ましくは一般式(3)で表わすことが出来る。
一般式(3)中、Za1及びZa2はそれぞれ独立に5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−エチルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトオキサゾリル、2−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチル−α−ナフトオキサゾリル、2−5−クロロ−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−5−クロロ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−フェニルベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−5−(1−ピロリル)−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5,6−ジメチル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−スルホベンゾオキサゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−5−クロロ−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−クロロ−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−ヨードベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5、6−ジクロロ−3−エチル−1−スルホプロピルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−6−シアノ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−5−クロロ−1,3−ジエチル−6−トリフルオロメチルベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチル−1−ペンチルインドレニン、3,3、−ジメチル−1−スルホプロピルインドレニン、5−カルボキシ−1、3,3−トリメチルインドレニン、5−カルバモイル−1、3,3−トリメチルインドレニン、1,3,3,−トリメチル−4,5−ベンゾインドレニンなどが挙げられる)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−エチルキノリル、2−1−スルホブチルキノリル、4−1−ペンチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、などが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキニル基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、イミノ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイルアミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
Za1及びZa2により形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン核であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、インドレニン核であり、最も好ましくはオキサゾール核であり、特にベンゾオキサゾール核が好ましい。
Ra1及びRa2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
Ma1〜Ma7はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa1及びZa2上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。Ma1〜Ma7は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma1〜Ma7は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
na1及びna2は0または1であり、好ましくは共に0である。ka1は0〜3の整数を表し、より好ましくはka1は0〜2を表し、さらに好ましくはka1は1または2を表す。
ka1が2以上の時、複数のMa3、Ma4は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表す。
本発明の2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは一般式(4)で表される。
一般式(4)中、Za3は5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa1、Za2と同じ)、及びこれらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa1、Za2上の置換基の例と同じ))、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za3により形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン核であり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、インドレニン核である。
Za4は5員または6員環を形成する原子群を表わす。Za4から形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。
Za4として好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2-a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2-a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5-b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Za4から形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。
Za4から形成される環は置換されても良く、(好ましい置換基の例はZa3上の置換基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
Ra3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa1、Ra2と同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
Ma8〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa1及びZa2上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma8〜Ma11はそれぞれ独立に無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma8〜Ma11は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
na3は0または1であり、好ましくは0である。
ka2は0〜8の整数を表し、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは1〜3の整数を表す。
ka2が2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表す。
本発明の2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(5)で表される。
一般式(5)中、Za5及びZa6は各々5員または6員環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa4と同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa4上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za5及びZa6から形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していても良く、(好ましい置換基の例はZa5及びZa6上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
ka3は0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表す。ka3が2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表す。
また、本発明の化合物は一般式(1)にて表されることも好ましい。
一般式(1)において、R1 、R2 、R3 、R4 はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。R1 、R2 、R3 、R4 として好ましくは水素原子またはアルキル基であり、R1 、R2 、R3 、R4 のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R1 とR3 が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR1 、R2 、R3 およびR4 は同一でもそれぞれ異なってもよい。
1 およびX2 は独立に、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa1〜Ma7の置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)中、R5 は水素原子または置換基(好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
6 は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR1 〜R4 と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
1 は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、ピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環である。
1 により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く(好ましい置換基の例はZa1、Za2上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
1 およびX2 として好ましくはアリール基または一般式(2)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(2)で表される基で表される。
本発明の2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。本発明の水素結合性基としては、−COOH、−CONH2のいずれかが好ましい。
本発明の2光子吸収化合物はモノマー状態で用いても良いが、会合状態で用いても良い。ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J 会合体を形成することがより好ましい。
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明の2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いても良い。
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10-4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10-3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であっても良い。
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005320502
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他の2光子吸収化合物の好ましい例、2光子吸収化合物の合成例としては、特願2003−284959号明細書に記載されている。
更に本発明の高分子組成物は、重合性化合物、重合開始剤(光によって酸を発生する光酸発生剤および/またはラジカルを発生する光ラジカル発生剤)、バインダーを含んでもよい。その際、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方は、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことがより好ましい。
重合開始剤として好ましくは、ケトン系、有機過酸化物系、トリハロメチル置換トリアジン系、ジアゾニウム塩系、ジアリールヨードニウム塩系、スルホニウム塩系、ホウ酸塩系、ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系、スルホニウム有機ホウ素錯体系、カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系、アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系、金属アレーン錯体系、スルホン酸エステル系のいずれかのラジカル重合開始剤(ラジカル発生剤)またはカチオン重合開始剤(酸発生剤)、あるいはその両方の機能を有するものが挙げられる。重合開始剤、重合性化合物、バインダーの好ましい例として具体的には例えば、特願2003−146527号明細書に記載されている例が挙げられる。
また、アニオン重合及びアニオン重合開始剤(塩基発生剤)を用いる場合も好ましく、その場合好ましい例は具体的には例えば、特願2003−178083号明細書に記載されている例が挙げられる。
ラジカル重合開始剤を用いる際は、重合性化合物としてアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基を有することが好ましく、カチオン重合開始剤またはアニオン重合開始剤を用いる際はオキシラン環、オキセタン環またはビニルエーテル基を有することが好ましい。
本発明における重合開始剤として好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるわけではない
Figure 2005320502
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本発明の高分子組成物にはさらに電子吸引性化合物および/または電子供与性化合物を加えることも好ましい。
本発明の電子供与性化合物について詳しく説明する。本発明の電子供与性化合物は、その酸化電位が2光子吸収化合物(色素)の酸化電位よりも卑であることが好ましく、電子供与性化合物の酸化電位が2光子吸収色素酸化電位よりも0〜0.8Vの範囲で卑であることがより好ましく、0.1〜0.6Vの範囲で卑であることがさらに好ましく、0.2〜0.5Vの範囲で卑であることが最も好ましい。加えて、電子供与性化合物の酸化電位が飽和カルメロ電極(SCE)を基準にした場合に0.4〜1.0Vの範囲内であることがより好ましく、0.6〜0.9Vの範囲内であることがさらに好ましい。
本発明の電子供与性化合物として好ましくは例えば、アルキルアミン類(好ましくは例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N、N−ジメチルドデシルアミン、トリエタノールアミン、トリエトキシエチルアミン)、アニリン類(好ましくは例えば、N、N−ジオクチルアニリン、N、N−ジメチルアニリン、4−メトキシ−N、N−ジブチルアニリン、2−メトキシ−N、N−ジブチルアニリン)、フェニレンジアミン類(好ましくは例えば、N、N、N’、N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラメチル−1,2−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’―テトラエチル−1,3−フェニレンジアミン、N,N’−ジブチルフェニレンジアミン)、トリフェニルアミン類(好ましくは例えばトリフェニルアミン、トリ(4−メトキシフェニル)アミン、4−メトキシフェニルジフェニルアミン、トリ(4−ジメチルアミノフェニル)アミン、4−ジメチルアミノフェニルジフェニルアミン、TPD)、カルバゾール類(好ましくは例えば、N−ビニルカルバゾール、N−エチルカルバゾール)、フェノチアジン類(好ましくは例えば、N−メチルフェノチアジン、N−フェニルフェノチアジン、N−(4−メトキシフェニル)フェノチアジン)、フェノキサジン類(好ましくは例えば、N−メチルフェノキサジン、N−フェニルフェノキサジン)、フェナジン類(好ましくは例えば、N、N’−ジメチルフェナジン、N、N’−ジフェニルフェナジン)、ハイドロキノン類(好ましくは例えば、ハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジクロロハイドロキノン、2,3,4,5−テトラクロロハイドロキノン、2、6−ジクロロ−3、5−ジシアノハイドロキノン、2、3−ジクロロ−5、6−ジシアノハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、カテコール類(好ましくは例えば、カテコール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン)、アルコキシベンゼン類(好ましくは例えば、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジブトキシベンゼン、1,2,4−トリブトキシベンゼン、1,4−ジヘキシルオキシベンゼン)、アミノフェノール類(好ましくは例えば、4−(N、N−ジエチルアミノ)フェノール、N−オクチルアミノフェノール)、イミダゾール類(好ましくは例えば、イミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−オクチルイミダゾール、N−ブチル−2−メチルイミダゾール)、ピリジン類(好ましくは例えばピリジン、ピコリン、ルチジン、4−t−ブチルピリジン、4−オクチルオキシピリジン、4−(N、N−ジメチルアミノ)ピリジン、4−(N、N−ジブチルアミノ)ピリジン、2−(N−オクチルアミノ)ピリジン)、メタロセン類(好ましくは例えば、フェロセン、ジメチルフェロセン、チタノセン、ルテノセン)、金属錯体類(好ましくは例えば、Ruビスビピリジン錯体類、Cuフェナントロリン錯体類、Coトリスビピリジン錯体類、FeEDTA錯体類、他にもRu、Fe、Re、Pt、Cu、Co、Ni、Pd、W、Mo、Cr、Mn、Ir、Ag錯体等)、半導体微粒子(好ましくは例えば、Si、CdSe、GaP、PbS、ZnS)等が挙げられる。
電子供与性化合物としてより好ましくは、アニリン類、トリフェニルアミン類、フェノチアジン類、フェノキサジン類、フェナジン類のいずれかであり、さらに好ましくは、トリフェニルアミン類、フェノチアジン類のいずれかであり、最も好ましくはフェノチアジン類である。
本発明の電子供与性化合物は好ましくは下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)のいずれかにて表される。
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なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
一般式(1−1)にて、X1は−S−、−O−、−NR10−または−CR11R12−のいずれかを表し、好ましくは−S−、−O−、−NR10−を表し、より好ましくは−S−または−O−を表し、さらに好ましくは−S−を表す。
一般式(1−1)中、R1、R10はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以後C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、カルボキシメチル、アルコキシカルボニルメチル、N,N−ジメチルカルバモイルメチル、2−ヒドロキシエチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−ブチニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、4−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−(ジメチルアミノ)フェニル、4−シアノフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル)のいずれかを表し、より好ましくはアルキル基またはアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基を表し、最も好ましくはメチル基を表す。
一般式(1−1)中、R2、R3はそれぞれ独立に置換基を表し、置換基として好ましい例は例えば、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以後C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、カルボキシメチル、アルコキシカルボニルメチル、N,N−ジメチルカルバモイルメチル、2−ヒドロキシエチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−ブチニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、4−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−シアノフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ、メチルアミノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、またはカルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アシルオキシ基、またはアルコキシカルボニル基であり、さらに好ましくは、アルキル基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、またはアシルアミノ基である。
一般式(1−1)中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子または置換基(好ましい例はR2、R3に挙げた置換基の例に同じ)を表し、より好ましくは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
一般式(1−1)中、a2、a3はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0または1を表し、より好ましくは共に0を表す。
a2、a3が2以上の時、複数のR2、R3は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等が挙げられる。
一般式(1−2)にて、R4、R5、R6はそれぞれ独立に置換基(好ましい例はR2、R3に挙げた置換基の例に同じ)を表し、好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル基またはアリール基が置換しても良いアミノ基を表す。a4、a5、a6はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0または1を表す。a4、a5、a6が2以上の時、複数のR4、R5、R6は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等が挙げられる。
一般式(1−3)にて、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基のいずれかを表し(好ましい例は、R1、R10に挙げた置換基の例に同じ)、好ましくはアルキル基を表す。
R9は置換基(好ましい例はR2、R3に挙げた置換基の例に同じ)を表し、a9は0〜5の整数を表し、より好ましくは0〜2の整数を表す。a9が2以上の時、複数のR9は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環等が挙げられる。
本発明の電子供与性化合物は好ましくは一般式(1−1)または(1−2)で表され、より好ましく一般式(1−1)で表される。一般式(1−1)ではX1は−S−が最も好ましいため、つまり、本発明の電子供与性化合物としては、フェノチアジン類が好ましく、N−メチルフェノチアジンが最も好ましい。
以下に本発明の電子供与性化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれに限定されるわけではない。
Figure 2005320502
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本発明の電子供与性化合物は増感色素の1〜100倍モル含まれていることが好ましく、5〜50倍モル含まれていることがより好ましく、10〜30倍モル含まれていることが最も好ましい。
前記電子供与性化合物は2光子吸収化合物または発色体のラジカルカチオンを還元する能力を有する。また、前記電子受容性化合物は2光子吸収化合物または発色体のラジカルアニオンを酸化する能力を有し、共に2光子吸収化合物または発色体を再生する機能を有する。具体的には例えば、特願2003−284959に記載されている例が好ましい例として挙げられる。
本発明の高分子組成物を2光子吸収を用いて発色させる非共鳴2光子発色方法について詳しく説明する。
本発明における発色とは、200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光の波長領域で吸収スペクトルの形状が変化する現象を指し、より好ましくは吸収スペクトルの吸収極大λmaxが長波長化および/またはモル吸光係数εの増大を指し、さらに好ましくはその両方が起こることを指す。本発明における発色反応とは、上記の発色を実現するための化学反応を指す。 また、該発色反応は200〜1000nmの波長領域で起こることがより好ましく、300〜900nmの波長領域で起こることがさらに好ましい。
本発明の発色反応では、少なくとも2光子を吸収して励起状態を生成することができる2光子吸収色素と、酸化反応によって発色する色素前駆体が高分子マトリックス内に共存することで、該2光子吸収色素が2光子吸収を行う波長のレーザー光を照射して該2光子吸収色素の励起状態を生成せしめると、該色素前駆体から該2光子吸収色素励起状態への電子移動が起こり、色素前駆体が酸化されて色素が生成し、発色が起こる。本発明の非共鳴2光子発色方法は、上記の原理に基づくものである。
ところで色素の複素屈折率の実部(以下では屈折率と呼ぶ)は一般に、線形吸収極大波長(λmax)よりも長波長な波長領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な波長領域において最も高い値を取ることが多い。また、色素によってはその値は2を超え、2.5を超える高い値となる場合もある。一方、バインダーやポリマーマトリックス等のいわゆる色素ではない有機化合物では、屈折率は通常1.4〜1.6程度の低い値である。従って、本発明の非共鳴2光子吸収発色方法を用いると、生成色素の吸収極大波長よりも長波長の波長領域で大きな屈折率変化を得ることができる。より大きな屈折率変化を得るためには、既に存在する2光子吸収色素の吸収帯よりも長波長の波長領域に、色素前駆体から新たに生成する発色色素の吸収極大が存在することがより好ましい。このように、本発明の2光子吸収発色方法を用いると、光吸収率を変化させることができるだけでなく、屈折率にも大きな変化を誘起せしめることが可能である。
次に、本発明の非共鳴2光子重合方法について説明する。本発明の非共鳴2光子重合方法は、2光子重合性組成物に、該組成物に含まれる2光子吸収色素の非共鳴2光子吸収を誘起して共存する色素前駆体を酸化発色させた後、該発色色素の線形吸収に対応する光を照射して重合性化合物の重合を行う方法である。
本2光子重合方法に用いる色素前駆体は、用いる2光子吸収色素の吸収極大波長よりも長波長の波長領域に発色する化合物であることが好ましい。
本発明の2光子重合方法では、2光子吸収によって発色させた色素前駆体より成る色素を更に増感色素として用い、該発色色素の線形吸収を励起することで生成した発色色素励起状態と、共存する酸発生剤および/またはラジカル発生剤との間での電子移動またはエネルギー移動によって酸および/またはラジカルを発生させて重合性化合物の重合を行う方法である。
本方法を用いて重合を行うと、重合した部分と未重合の部分との間に大きな屈折率差を生じせしめることができる。
本発明の高分子組成物は、さらに、必要に応じて、連鎖移動剤、架橋剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いることができる。
連鎖移動剤、架橋剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の具体例として好ましい例は、特願2003−146527号に記載されている例が挙げられる。
本発明の2光子光記録媒体について詳細に説明する。
本発明の2光子光記録媒体は、該媒体に含まれる2光子吸収化合物を2光子吸収により励起して色素前駆体の光化学発色反応を誘起し、屈折率または吸収率を変化させることで情報を記録した後、読み取り光を記録媒体に照射して、記録部/未記録部の反射率の違いを検出することで記録情報を再生する方法が好ましい。
また一方で、2光子吸収化合物を2光子吸収によって励起し、該励起状態を用いて光化学反応を誘起して2光子吸収化合物自体または共存する化合物の発光強度を変化させることによる記録を行った後、読み取り光を記録材料に照射してその発光強度の違いを検出することで記録情報を再生する方法が好ましい。用いる発光は、蛍光でもりん光でも構わないが、一般に発光効率が高いという観点から蛍光を用いることが好ましい。なお、以下では、2光子光記録媒体に用いる本発明の高分子組成物を記録成分と呼称する。
本発明の2光子吸収光記録材料において屈折率差を用いて記録する場合は、記録成分から形成される色素由来の屈折率が再生に用いるレーザー波長付近で最大となることが好ましい。一方、発光強度差を用いて記録する場合には、再生光の照射において発色体と色素前駆体の発光強度に差異が存在することが好ましい。
本発明の2光子光記録媒体において、高速な転送レートを実現するための2つの記録方式を見出した。以下ではそれぞれに関して詳細に説明する。
(1)潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応による記録
「潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応方式」の概念を説明する。例えば、780nmのレーザー光を用いて2光子吸収を誘起し、2光子吸収色素の励起状態を生成させる。上述のように、本発明の高分子組成物では、色素前駆体から2光子吸収化合物の励起状態へと電子移動がおこり色素前駆体が発色する。以下ではこの発色体のことを潜像と呼称する。(以上第1の工程)。次に680〜740nmの波長域の光を照射して、潜像の線形吸収を起こし、潜像の自己増感により潜像を増幅生成させる(以上第2の工程)。第1の工程においてレーザー光を照射していない未記録部では潜像が生成しないため第2の工程においても自己増感発色反応はほとんど起きず、その結果記録部と非記録部にて大きな屈折率の差、吸収率の差または発光強度の差を形成することができる。例えば780nmのレーザーを再び用い、記録を行った2光子吸収光記録材料に照射すると、記録部と非記録部との大きな屈折率の違いに基く光の反射率の差が発生するため、これを読み出すことで再生が可能となり、780nm光記録再生による2光子吸収(3次元)光記録媒体を与えることができる。
好ましくは、少なくとも、2光子吸収色素とは吸収スペクトル形状の異なる発色体を2光子吸収露光により潜像として生成する第1の工程と、その発色体潜像に2光子吸収化合物の線形(1光子)吸収のモル吸光係数が5000以下となる波長域の光を照射して発色体の線形吸収を起こすことにより発色体を自己増感増幅生成させて、屈折率差、吸収率差または発光強度差を形成することで記録を行う第2の工程を有する2光子吸収光記録方法である。
なお、ここで「潜像」とは、「第2の工程後形成される屈折率差、吸収率差または発光強度差の好ましくは5分の1以下の屈折率差、吸収率差または発光強度差」のこと(つまり好ましくは第2の工程にて5倍以上の増幅工程が行われること)を示し、より好ましくは10分の1以下、さらに好ましくは30分の1以下の屈折率、吸収率または発光強度差画像であること(つまり第2の工程にてより好ましくは10倍以上、さらに好ましくは30倍以上の増幅工程が行われること)を示す。
ここで、第2の工程は光照射、熱印加のいずれかまたはその両方であることが好ましく、光照射であることがより好ましく、照射する光は全面露光(いわゆるベタ露光、ブランケット露光、ノンイメージワイズ露光)であることが好ましい。用いる光源として好ましくは、可視光レーザー、紫外光レーザー、赤外光レーザー、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
さらに、そのような2光子吸収光記録方法が可能である2光子吸収光記録材料としては、少なくとも、
1)第1の工程にて2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、と、
2)元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物線形吸収と異なる波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体を含み、かつ2光子吸収化合物または発色体励起状態から電子移動することにより屈折率差、吸収率差または発光強度差として記録することができる記録成分、を含むことが好ましい。なお、第2の工程にて照射する光の波長域では、2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。また、第2の工程にて照射する光の波長域では、発色体のモル吸光係数が5000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい。
(2)潜像発色−発色体増感重合反応による記録
以下に「潜像発色−発色体増感重合反応方式」の概念を説明する。潜像形成の過程は上記潜像発色−発色体自己増感増幅発色反応方式と同様である。次に780nmのレーザー光を照射して、潜像の線形吸収を起こし、重合開始剤に電子移動させることにより酸またはラジカルを生じさせて重合を開始する。例えば、重合性化合物がバインダーよりも屈折率が大きい場合、重合が起こる部分に重合性化合物が集まるため屈折率が高くなる(以上第2の工程)。第1の工程においてレーザーを照射していない未記録部では潜像が生成しないため第2の工程においても重合は起きないためにバインダーの存在比が高くなり、その結果記録部と非記録部において屈折率の変化を形成することができる。第1及び第2の工程、あるいはさらにその後の定着工程により2光子吸収化合物及び発色体を分解して消色できれば、非破壊再生及び保存性に優れかつ無色透明な2光子吸収光記録材料を提供することができる。例えば780nmのレーザーを再び用い、記録を行った2光子吸収光記録材料に照射すると、記録部と非記録部との屈折率の違いに基く光の反射率差による再生が可能となり、2光子吸収(3次元)光記録媒体を与えることができる。この場合は、第1の工程による記録、第2の工程による光重合増幅、再生いずれも780nmのレーザーを用いることができる。
好ましくは、少なくとも、潜像としての発色体を2光子吸収により生成する第1の工程と、その発色体潜像に光を照射して発色体の線形吸収に基づく重合を起こすことにより、屈折率差を形成して記録する第2の工程を有することを特徴とする2光子吸収光記録方法であり、高速書きこみ、保存性等に優れる。なお、第2の工程にて、発色体を自己増感増幅生成しつつかつ重合を起こす方法も好ましい。
そのような2光子吸収光記録材料としては、少なくとも、
1)第1の工程において2光子を吸収し励起状態を生成することができる2光子吸収化合物、と、
2)第1の工程において2光子吸収化合物励起状態から、または第2の工程にて発色体励起状態から電子移動またはエネルギー移動することにより、元の状態から吸収が長波長化しかつ2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が5000以下の波長域に吸収を有する発色体となることができる色素前駆体、
3)第2の工程において発色色素励起状態から電子移動することにより、重合性化合物の重合を開始することができる重合開始剤、
4)重合性化合物、
5)バインダー、
を含むことが好ましい。
重合開始剤、重合性化合物、バインダーとして好ましい例は上で述べた。なお、第2の工程にて照射する光の波長域では、2光子吸収化合物の線形吸収のモル吸光係数が1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。また、第2の工程にて照射する光の波長域では、発色体のモル吸光係数が5000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい
本発明の2光子吸収光記録方法及びそのような記録が可能である2光子吸収光記録材料においては、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収色素を分解して定着することが保存性及び非破壊再生の点で好ましく、さらには、第1の工程、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより2光子吸収色素を、第2の工程、またはその後の光照射、熱印加、またはその両方による定着工程のいずれかにより発色体を分解して定着することがより好ましい。
本発明の2光子吸収光記録媒体の記録にはレーザーを用いることが好ましい。本発明に用いるレーザー光は、波長200〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかであることが好ましく、波長300〜1000nmの紫外光、可視光または赤外光であることがより好ましく、波長400〜800nmの可視光または近赤外光であることがさらに好ましい。
用いることのできるレーザーには特に限定は無いが、中心波長700〜1000nm付近に発振波長を有するTi:サファイアレーザー等の固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有し、CD-Rなどでも用いられている半導体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有しDVD-Rなどで用いられている半導体レーザーや固体レーザー、400〜415nm付近の発振波長を有するGaNレーザーなどの半導体レーザーを好ましく用いることができる。また他にも、可視光域に発振波長を有するYAG・SHGレーザーなどの固体SHGレーザー、半導体SHGレーザーなども好ましく用いることができる。なお、本発明に用いるレーザーはパルスレーザーであってもCWレーザーであっても良い。
なお、本発明の2光子吸収光記録媒体に記録を行う際は、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形(1光子)吸収のモル吸光係数が10以下の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して記録を起こすことが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、線形吸収がないことが最も好ましい。
記録情報の再生に使用する読み出し光は、例えば上記レーザー光であることが好ましい。また、パワーまたはパルス形状は同じか異なるものの、記録時と同じ波長のレーザーを用いて再生することがより好ましい。さらに、読み出し光としては、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどによる光も挙げられる。特定の波長域の光を照射するために、必要に応じてシャープカットフィルターやバンドパスフィルター、回折格子等を用いることも好ましい。
本発明の2光子吸収光記録媒体において、記録により生成する反応部または発色部の大きさは10nm〜100μmの範囲内であることが好ましく、50nm〜5μmの範囲であることがより好ましく、50nm〜2μmの範囲であることがさらに好ましい。また、記録情報の再生を可能にするためには、反応部または発色部の大きさは照射光波長の1/20〜20倍の大きさであることが好ましく、1/10〜10倍の大きさであることがより好ましく、1/5〜5倍の大きさであることが最も好ましい。
本発明の2光子吸収光記録媒体においては、2光子記録の後に、光(通常の1光子)または熱、あるいはその両方により定着工程を行っても良い。特に本発明の2光子吸収光記録材料に酸増殖剤または塩基増殖剤を用いる場合、酸増殖剤または塩基増殖剤を有効に機能させる点においても定着に加熱を用いることが好ましい。
光定着を行うには、2光子吸収光記録媒体の全域に紫外光または可視光を全面照射することが好ましい。光定着に用いる光源としては、可視光レーザー、紫外光レーザー、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、LED、有機ELなどが好ましい。なお、光定着の光源に記録に用いるレーザーをそのまま、あるいはパワー、パルス、集光度、波長などを変えて用いることも好ましい。
熱定着のを行う場合には、定着に用いる温度は40℃〜160℃が好ましく、60℃〜130℃がより好ましい。光定着と熱定着を両方行う場合には、光と熱を同時に加えても、光と熱を別々に加えてもよい。
本発明の2光子吸収光記録媒体は、記録、定着、読み出しの如何なる工程においても湿式処理を行わないことが好ましい。
なお、本発明の2光子吸収光記録材料において、2光子吸収を行うことにより起こる化学反応、発色反応等は熱分解によらない反応、すなわちフォトンモードにて起こることが特に高感度化の点で好ましい。すなわち、既存のCD−RやDVD−Rにて実用されている方法とは異なる機構で記録することが、特に記録材料における書き込み転送速度を考える際に好ましい。
本発明の2光子吸収光記録再生方法は、DVD-R、DVD-BL(BR)のような光記録再生方法、近接場光記録再生方法、3次元光記録再生方法等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録再生方法に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子吸収光記録再生方法は、2光子吸収3次元光記録再生方法に用いることが好ましい。
同様に、本発明の2光子吸収光記録材料は、DVD-R、DVD-BL(BR)のような光記録媒体、近接場光記録媒体、3次元光記録媒体等に用いることが好ましいが、より好ましくは3次元光記録材料、媒体に用いることが好ましい。すなわち、本発明の2光子吸収光記録材料は、2光子吸収3次元光記録媒体に用いることが好ましい。
なお、本発明の2光子吸収光記録媒体は、遮光カートリッジを有し、保存時には該媒体が遮光カートリッジ内部に保持されることが好ましい。
また、本発明の2光子吸収化合物及び2光子吸収光記録媒体は3光子以上の多光子吸収を行っても構わない。
本発明の2光子吸収光記録媒体は、書き換えできない方式であることが好ましい。なおここで、書き換えできない方式とは、不可逆な化学反応によって記録がなされる方式であり、一たび記録された情報は、上書き記録されることなく保存される方式を指す。無論、未記録領域には新たに追加して記録することが可能である。従ってこの様な方式を一般には「追記型」または「ライトワンス型」と呼ぶ。
本発明は、自己増幅能を有する2光子光記録媒体にもある。読み取り可能な何らかの変化を記録媒体に起こさせるには、かなりの量の変化が必要となるが、圧倒的に励起効率の低い2光子吸収のみを用いてそのような変化を行うとすれば、同一個所に長時間レーザー光を照射し続けなければならなくなり、高い転送レートは実現できない。記録容量が増えれば増えるほど必然的に高い転送レートが求められる光記録媒体において、高い転送レートを実現できなければ実用上は意味がないため、高い転送レートを稼ぐ仕組みが必要である。
まず2光子吸収によって極微量の変化のみを光記録媒体に引き起こし、この微量の変化を足がかりに、読み取り可能な量にまで変化を増幅すれば、2光子吸収を用いても高転送レートの光記録媒体が実現できるとの考えに到った。2光子吸収を起こさせるためには、レーザー光が必要であるが、増幅の過程には必ずしもレーザー光は必要なく、単なるランプ等のコストの安い光源を用いることができるのも本方式の利点である。
本発明では、2光子吸収によって共存する色素前駆体が酸化されて発色色素が生成し、その後、この発色色素の線形吸収を励起し、今度は励起された発色色素が自分自身(色素前駆体)を酸化してさらに発色反応を進行させるため、これを自己増幅と呼ぶこととした。
本発明の2光子光記録媒体における自己増幅挙動について詳しく述べる。本発明の2光子光記録媒体における自己増幅とは、2光子吸収によって形成した潜像部(記録部)と非潜像部(未記録部)の発色量の差を、2光子吸収に用いたのとは異なる光によって増幅させる挙動のことを指し、自己増感挙動と発色差増幅挙動との二つの異なる現象からなる。
自己増感挙動とは、酸化されて発色した色素(これは2光子励起された2光子吸収色素によって酸化されて発色した色素前駆体である)の線形吸収を励起することで、今度は発色色素の励起状態が酸化剤となり色素前駆体(自己)を酸化、発色させる現象である。
発色差増幅挙動とは、本2光子光記録媒体の記録過程における第2の工程において、潜像部分(記録部)と非潜像部分(未記録部)の発色濃度の差が、光照射時間の経過に伴って増大する現象である。
図1には自己増幅挙動における色素前駆体の発色挙動を吸光度の変化として示した。まず、2光子吸収を用いて潜像を形成すると、潜像部分(記録部)では発色が起こるため非潜像部(未記録部)よりも吸光度が増大する(第1の工程)。このようにして、潜像部と非潜像部との吸光度差Δt0を形成した後、色素前駆体より発色した色素の線形吸収に相当する波長の光を潜像部および非潜像部を問わず照射する(第2の工程)。第2の工程の光照射において、潜像部および非潜像部の両方の部位で自己増感発色が進行するため、それぞれの部位での吸光度は増大するが、各部位での発色挙動が時間に対して直線ではない(非線形である)ため、ある時間tでの吸光度差Δtが、最初の吸光度差Δt0よりも増大する。これは即ち、初期の吸光度差が増幅されたことになる。このような発色挙動を発色差増幅挙動と呼ぶ。
一方、図2には自己増幅挙動のない場合の吸光度変化を示した。図1の場合と同様にして潜像を形成すると、潜像部と非潜像部の吸光度の差Δt0が形成される。次に第2の工程として非潜像部を問わず光を照射すると、この場合も潜像部および非潜像部の両方の部位で自己増感発色が進してそれぞれの部位での吸光度は増大するが、両部位での発色挙動は共に時間に対して直線的(線形)であるため、ある時間tでの吸光度差Δtは初期の吸光度差から変化しない。すなわち、発色差増幅挙動が実現できない場合には自己増幅挙動を付与することはできない。
発色差増幅挙動を実現するためには、図1に示したように、光照射時間に対する吸光度の変化(すなわち発色量)が、線形(直線)ではなく非線形に変化する必要がある。
なお、図には示していないが、自己増感挙動が実現できない場合には勿論、自己増幅挙動は実現できない。
本発明の2光子光記録媒体は、自己増幅挙動を有することが特徴である。
[実施例]
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[2光子吸収発色方式による3次元屈折率、吸収率変調記録]
まず、本発明の2光子吸収光記録材料の作製法、それを用いた2光子吸収による記録信号の形成とその方法および形成された信号を再生する方法について述べる。
以下の組成で、本発明の2光子吸収3次光記録媒体用の試料101〜102及び比較試料1〜2を作成した。
<試料1:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収色素:D−146 0.2質量部
色素前駆体:Lm−1 9.1質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 90.7質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
<試料2:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収色素:D−146 0.2質量部
色素前駆体:Lm−3 9.1質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 90.7質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
<比較試料1>
2光子吸収色素:D−146 0.2質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 99.8質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
<比較試料2>
色素前駆体:Lm−1 9.1質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 90.9質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
試料1〜2、比較試料1〜2はスライドガラス板上にスピンコート塗布し、評価試料とした。膜厚は約7μmであった。
本発明の2光子光記録媒体の性能評価には、700nmから1000nmの波長範囲で測定可能なTi:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、本発明の2光子光記録媒体に該レーザー光をNA0.6のレンズで集光して照射した。照射波長は2光子吸収色素の10-4M溶液において、2光子吸収断面積δが最大となる波長付近を用いた。
試料1〜2、比較試料1〜2に対しては700nmのレーザー光を照射して2光子吸収を起こした。その結果、試料1〜2において、光照射部のレーザー焦点部(記録部)において発色が確認できた。記録部と非記録部の吸収率の変化は目視で確認できた。発色部(記録部)の屈折率をエリプソメーターを用いて測定した所、レーザー非焦点部(非記録部)に比較して増加した。試料1に720nmのレーザー光を照射したところ、また、試料2に780nmのレーザー光を照射したところ、記録部と非記録部にて屈折率の違いによる反射率の違いを確認できた。また、記録した試料1〜2に633nmのレーザーを照射した所、記録部と非記録部において、吸収率の違いによる反射率の違いを確認できた。
また、レーザー焦点位置を水平及び深さ方向に走査することにより、3次元方向の任意の場所に発色させることができた。720nmのレーザー光照射(試料1)または780nmのレーザー光照射(試料2)により屈折率変調による3次元的な反射率変調が、633nmのレーザー照射により吸収率変調による3次元的な反射率変調が可能であることを確認できた。
一方、本発明の色素前駆体Lm-1または2光子吸収色素D−146を含まない比較試料1〜2は700nmのレーザーを照射しても何も変化しなかった。
[自己増幅挙動による記録信号増幅]
自己増幅による記録信号増幅について述べる。
実施例1で作製した試料1に、実施例1と同様の方法を用いて2光子吸収による潜像を形成した。その後、試料1の全面に、HOYA社製シャープカットフィルター(O58)を用いてLm−1の吸収帯に相当するキセノン光を照射して自己増幅挙動を確認した。なお、本光照射条件では、2光子吸収色素の線形吸収帯には光が当たらないため、2光子吸収色素の線形励起状態が色素前駆体を酸化して色素前駆体が発色することはない。その結果、潜像部分での色素発色量が非潜像部での色素発色量に比べて多く、潜像部分と非潜像部分との吸光度差が増大した。このときの発色色素の吸収極大波長での吸光度変化の様子を図3に示した。図3より明らかな様に、発色色素自身が増感色素となって色素前駆体(自己)を発色させる自己増感挙動と、その自己増感による発色が時間に対して非線形であるために潜像と非潜像部分の発色濃度差が増幅される発色差増幅挙動が実現されている。
[2光子吸収発色方式による発色強度変調記録]
以下の組成で、本発明の2光子吸収3次光記録媒体用の試料3及び比較試料3〜4を作成した。
<試料3:本発明の2光子吸収光記録材料>
2光子吸収色素:D−153 1.0質量部
色素前駆体:Lo−1 9.0質量部
電子供与性化合物:10-メチルフェノチアジン 36.0質量部
酸発生剤:Ph2IPF6 9.0質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 45.0質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
<比較試料3>
2光子吸収色素:D−153 0.5質量部
電子供与性化合物:10-メチルフェノチアジン 39.8質量部
酸発生剤:Ph2IPF6 10.0質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 49.8質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
<比較試料4>
色素前駆体:Lo−1 9.1質量部
電子供与性化合物:10-メチルフェノチアジン 36.4質量部
酸発生剤:Ph2IPF6 9.1質量部
高分子化合物:アルドリッチ社製 ポリメチルメタクリレート
(平均分子量120,000) 45.5質量部
溶媒:クロロホルム 上記成分の3倍質量
試料3、比較試料3〜4はスライドガラス板上にスピンコート塗布し、評価試料とした。膜厚は約7μmであった。
本発明の2光子光記録媒体の性能評価には、Ti:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)のパルス光をOPAにより532nmに波長変換し、本発明の2光子光記録媒体に該レーザー光をNA0.6のレンズで集光して照射した。
試料3、比較試料3〜4に対しては532nmのレーザー光を照射して2光子吸収を起こした。その結果、試料3において、光照射部のレーザー焦点部(記録部)で発光が確認できた。記録部と非記録部の吸収率の変化を測定したところ、発色部(記録部)の吸光度はレーザー非焦点部(非記録部)に比較して増加した。また試料3に633nmのレーザー光を照射して700nmでの蛍光強度を比較したところ、記録部と非記録部との蛍光強度に違いが生じ、記録部は非記録部に比べて蛍光強度が増加した。
また、レーザー焦点位置を水平及び深さ方向に走査することで、3次元空間の任意の場所に発色および蛍光発現させることができた。
一方、本発明の色素前駆体Lo−1または2光子吸収色素D−153を含まない比較試料3〜4は532nmのレーザーを照射しても700nmのの発光強度には何も変化しなかった。
自己増幅挙動がある場合の吸光度変化 自己増幅挙動がない場合の吸光度変化 実施例2における自己増幅挙動

Claims (18)

  1. 高分子化合物中に、少なくとも2光子吸収化合物と酸化反応により発色する色素前駆体とを分散して成ることを特徴とする高分子組成物。
  2. 該色素前駆体が、ロイコキノン化合物類、チアジンロイコ化合物類、オキサジンロイコ化合物類、フェナジンロイコ化合物類またはロイコトリアリールメタン化合物類のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の高分子組成物。
  3. 該色素前駆体が、ロイコトリアリールメタン化合物類であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子組成物。
  4. 該色素前駆体が、オキサジンロイコ化合物類であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子組成物。
  5. 該2光子吸収化合物が、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素、アゾ色素または下記一般式(1)で表される化合物のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子組成物。
    Figure 2005320502
    式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R1、R2、R3、R4のうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR1、R2、R3およびR4は同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。X1およびX2は独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
    Figure 2005320502
    式中、R5は水素原子または置換基を表し、R6は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Z1は5または6員環を形成する原子群を表す。
  6. 該2光子吸収化合物が下記一般式(3)で表されるシアニン色素、下記一般式(4)で表されるメロシアニン色素、または一般式(5)で表されるオキソノール色素である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子組成物。
    Figure 2005320502
    一般式(3)〜(5)中、Za1、Za2及びZa3はそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za4、Za5及びZa6はそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra1、Ra2及びRa3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
    Ma1〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na1、na2及びna3はそれぞれ0または1であり、ka1、及びka3はそれぞれ0〜3の整数を表わす。ka1が2以上の時、複数のMa3、Ma4は同じでも異なってもよく、ka3が2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。ka2は0〜8の整数を表わし、ka2が2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
  7. 該2光子吸収化合物の最も長波長側に存在する線形吸収極大の波長が、200nmよりも長波長側で500nmよりも短波長側に存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高分子組成物。
  8. 少なくとも、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子組成物と重合性化合物とから成る2光子重合性組成物。
  9. さらに、光照射によって酸を発生する光酸発生剤および/またはラジカルを発生する光ラジカル発生剤を含むことを特徴とする請求項8に記載の2光子重合性組成物。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子組成物に、該組成物に含まれる2光子吸収色素の非共鳴2光子吸収を誘起して該色素前駆体を酸化発色させることを特徴とする非共鳴2光子発色方法。
  11. 請求項8または9に記載の2光子重合性組成物に、該組成物に含まれる2光子吸収色素の非共鳴2光子吸収を誘起して該色素前駆体を酸化発色させた後、該発色色素の線形吸収に対応する光を照射して重合性化合物の重合を行うことを特徴とする非共鳴2光子重合方法。
  12. 請求項1〜7のいずれかに記載の高分子組成物を含み、請求項10に記載の2光子発色方法を用いて色素前駆体を発色させることで屈折率、吸収率または発光強度の変化を誘起して情報を記録することを特徴とする2光子光記録媒体。
  13. 請求項8または9に記載の重合性組成物を含み、請求項11に記載の2光子重合方法を用いて重合を行うことで屈折率の変化を誘起して情報を記録することを特徴とする2光子光記録媒体。
  14. 請求項12または13に記載の光記録媒体に光を照射して、記録部および未記録部の反射率の違いで記録情報の再生を行うことを特徴とする2光子光記録媒体の再生方法。
  15. 請求項12に記載の光記録媒体に光を照射して、記録部および未記録部の発光強度の違いで記録情報の再生を行うことを特徴とする請求項12記載の2光子光記録媒体の再生方法。
  16. 光照射により記録部と未記録部の光吸収量の差を増大させることが可能な2光子光記録媒体。
  17. 請求項12に記載の2光子光記録媒体であって、2光子吸収を用いて色素前駆体から発色させた色素の線形吸収に対応する光を照射して、記録部と未記録部の光吸収量の差を増大させることを特徴とする請求項12記載の2光子光記録媒体。
  18. 請求項12または13に記載の2光子光記録媒体であって、記録が書き換えできない方式であることを特徴とする請求項12または13に記載の2光子吸収光記録媒体。
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