以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態(以下、単に「実施形態」という)を説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能および形状等を有する構成部品等については、同一符号を付すことによりその説明をできるだけ省略する。図において一対で構成されていて特別に区別して説明する必要がない構成部品は、説明の簡明化を図る上から、その片方を適宜記載することでその説明に代えるものとする。
まず、図19を参照して、本実施形態を適用する印刷装置の一例としての孔版印刷装置の全体構成とその動作について説明する。
図19において、符号50は、装置本体フレームを示す。装置本体フレーム50の上部にある、符号80で示す部分は原稿読取部を構成し、その下方の符号1Xで示す部分は製版部、その左側に符号13で示す部分は多孔性の版胴15が配置されたドラム部、その左の符号70で示す部分は排版部、製版部1Xの下方の符号110で示す部分は給紙部、版胴15の下方の符号120で示す部分は印圧部、装置本体フレーム50の左下方の符号130で示す部分は排紙部を、それぞれ示している。
この孔版印刷装置の動作について以下に説明する。
先ず、原稿読取部80の上部に配置された原稿載置台(図示せず)に、印刷すべき画像を持った原稿60を載置し、図示しない製版スタートキーを押す。この製版スタートキーの押下に伴い、先ず排版工程が実行される。すなわち、この状態においては、ドラム部13の版胴15の外周面に前回の印刷で使用された使用済みのマスタ2が装着されたまま残っている。
版胴15を回転する版胴駆動手段としてのメインモータ16の回転駆動により、版胴15が反時計回り方向に回転し、版胴15外周面の使用済みのマスタ2の後端部が排版部70における排版剥離ローラ対71a,71bに近づくと、同ローラ対71a,71bは回転しつつ一方の排版剥離ローラ71bで使用済みのマスタ2の後端部をすくい上げ、排版剥離ローラ対71a,71bの左方に配設された排版コロ対73a,73bと排版剥離ローラ対71a,71bとの間に掛け渡された排版搬送ベルト対72a,72bで矢印Y1方向へ搬送されつつ排版ボックス74内へ排出され、使用済みのマスタ2が版胴15の外周面から引き剥がされ排版工程が終了する。このとき版胴15は反時計回り方向への回転を続けている。剥離排出された使用済みのマスタ2は、その後、圧縮板75により排版ボックス74の内部で圧縮される。
排版工程と並行して、原稿読取部80では原稿読取が行なわれる。すなわち、図示を省略した原稿載置台に載置された原稿60は、分離ローラ81、前原稿搬送ローラ対82a,82bおよび後原稿搬送ローラ対83a,83bのそれぞれの回転により矢印Y2からY3方向に搬送されつつ露光読み取りに供される。このとき、原稿60が多数枚あるときは、分離ブレード84の作用でその最下部の原稿のみが搬送される。原稿60の画像読み取りは、コンタクトガラス85上を搬送されつつ、蛍光灯86により照明された原稿60の表面からの反射光を、ミラー87で反射させレンズ88を通して、CCD(電荷結合素子)から成る画像センサ89に入射させることにより行なわれる。その画像が読み取られた原稿60は原稿トレイ80A上に排出される。画像センサ89で光電変換された電気信号は、装置本体フレーム50内の図示を省略したアナログ/デジタル(A/D)変換基板に入力されデジタル画像信号に変換される。
一方、この画像読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像情報に基づき製版および給版工程が行なわれる。この製版工程では、後述するマスタストック手段によって、強制的に製版済みのマスタ2にタワミを形成するタワミ製版モードが実行される。マスタ2は、製版部1Xの所定部位にマスタ2を繰り出し可能にセットされ、芯管2aの周りにロール状に巻かれて形成されたマスタロール2Aから引き出され、サーマルヘッド3にマスタ2を介して押圧しているプラテンローラ4、および一対のテンションローラ6a,6bの回転によりマスタ搬送方向Yの下流側に搬送される。このように搬送されるマスタ2に対して、サーマルヘッド3の主走査方向にライン状に並んだ複数個の微小な発熱体(図示せず)が、A/D変換基板(図示せず)から送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱体に接触しているマスタ2の熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。このように、画像情報に応じたマスタ2の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
プラテンローラ4は、実施形態1で詳述するマスタ搬送機構に含まれるステッピングモータからなるマスタ搬送モータ19に連結されていて、マスタ搬送モータ19により回転される。マスタ搬送モータ19の回転駆動力は、上記マスタ搬送機構のギヤ等の回転伝達部材(後述する)を介してテンションローラ対6a,6bの駆動側であるテンションローラ6aへ伝達されるようになっている。さらに、マスタ搬送モータ19の回転駆動力は、同マスタ搬送機構のギヤ等の回転伝達部材(後述する)および電磁クラッチ(後述する)を介して、版胴15外周面近傍におけるマスタ搬送方向Yの下流側に設けられた互いに接触状態にある給版ローラ対としてのゴム製の反転ローラ上・下対7,8Xへ伝達されるようになっている。反転ローラ上7は駆動ローラ、反転ローラ下8Xは反転ローラ上7と連れ回りする従動ローラでそれぞれ構成されていて、図示を省略したバネ等の付勢手段によって適度な圧接力が付与されるようになっている。したがって、マスタ搬送モータ19は、反転ローラ上7を回転するローラ駆動手段を兼ねている。
こうして、マスタ搬送モータ19の回転駆動によって、プラテンローラ4およびテンションローラ対6a,6bが回転され、上記電磁クラッチがオンすることにより反転ローラ上7が回転され、製版済みのマスタ2はマスタ搬送方向Yの下流側に搬送される。このとき、マスタ搬送モータ19のステップ数より、製版済みのマスタ2の先端が案内板9aに案内されて反転ローラ上・下対7,8Xに搬送され、反転ローラ上・下対7,8Xで挟持されたと図示を省略した制御装置で判断されると、上記制御装置からの指令によって上記電磁クラッチがオフすることにより、反転ローラ上7の回転が停止され、反転ローラ上・下対7,8Xの回転が停止する。
その先端を反転ローラ上・下対7,8Xで挟持された製版済みのマスタ2の未製版部分には、引き続きサーマルヘッド3での穿孔製版が行なわれる。そして先端を反転ローラ上・下対7,8Xで挟持された製版済みのマスタ2は、その後続部をプラテンローラ4およびテンションローラ対6a,6bで搬送されることにより、その中間部が案内板9a上より上方に向かって逆U字状に撓み、タワミボックス10の開口からタワミボックス10の内部に搬送される。このとき、上記制御装置からの指令により吸引ファン11が回転し、タワミボックス10内部の空気をその内側から外側に流動させ、製版済みのマスタ2はタワミ案内板10Aの先端部を回り込むようにタワミボックス10内部に導入され、図8に示すようにタワミボックス10の内部に貯留される。
製版工程と並行して進行していた排版工程が完了し、版胴15が図19に示す給版位置状態となると、直ちに給版工程が開始される。このとき、サーマルヘッド3では、引き続きマスタ2に対する製版動作が続行している。そして、光反射型フォトセンサからなるタワミ検知センサ12がオンすることにより、製版済みのマスタ2によってタワミボックス10の内部に所定量のタワミを形成していることが確認されると、上記制御装置からの指令により停止していた版胴15および反転ローラ上・下対7,8Xは再び回転を開始し、製版済みのマスタ2は、反転ガイド板9bにより進行方向を下方に変えられ、給版位置状態にある版胴15のマスタクランパ軸14aを回転軸として拡開したマスタクランパ14(仮想線で示す)へ向かって垂れ下がる。このとき版胴15は、排版工程により使用済みのマスタ2を既に除去されている。そして、製版済みのマスタ2の先端がマスタクランパ14へと搬送され、一定のタイミングでマスタクランパ14が閉じることによりその先端部を版胴15の外周面上に係止される。マスタクランパ14によりクランプされると、次いで、上記制御装置からの指令により版胴15は図中A方向(時計回り方向)に回転しつつ外周面に製版済みのマスタ2を徐々に巻き付けていく。
このマスタ巻装時においては、吸引ファン11は作動しており、タワミボックス10の内部の製版済みのマスタ2には適度の張力が継続して付与されているので、ジャムの発生が抑制されている。上記巻装時における版胴15の周速度は、反転ローラ上7の周速度よりも僅かに速く設定されている。これにより、版胴15外周面と反転ローラ上・下対7,8Xとの間の製版済みのマスタ2は、所定の張力が作用され張設されている状態にあり、反転ローラ下8Xは製版済みのマスタ2のバックテンションを受けている状態にある。なお、マスタ巻装時においては、機種によっては、上記電磁クラッチがオフした状態、すなわち版胴15外周面に製版済みのマスタ2の先端部が係止された後の版胴15の回転による製版済みのマスタ2の張力によって、反転ローラ上・下対7,8Xを連れ回り・従動回転させながら反転ローラ下8Xにバックテンションを掛けながら巻き付ける方式も行なわれている。
上記版胴15による巻装動作が進行し、タワミボックス10の内部に貯留された製版済みのマスタ2が版胴15へと搬送されてタワミ検知センサ12がオフすると、上記制御装置からの指令により、版胴15および反転ローラ上・下対7,8Xの回転が一時停止される。この間にもサーマルヘッド3ではマスタ2に対する製版が継続して行なわれており、プラテンローラ4およびテンションローラ対6a,6bは回転しているので、案内板9a上に搬送された製版済みのマスタ2は再びタワミボックス10の内部に搬送され、タワミ検知センサ12をオンさせる。タワミ検知センサ12がオンすると、上記制御装置からの指令により、停止していた版胴15および反転ローラ上・下対7,8Xが再び回転し、タワミボックス10の内部に貯留された製版済みのマスタ2を版胴15の外周面に巻装する。このようにタワミ検知センサ12のオン/オフ動作に伴って、上記制御装置からの指令により、版胴15および反転ローラ上・下対7,8Xが間欠的に回転して、版胴15外周面上への製版済みのマスタ2の給版動作が進行する。
マスタ搬送モータ19のステップ数より、一版分の製版済みのマスタ2が製版されたと上記制御装置で判断されると、上記制御装置からの指令によりプラテンローラ4、テンションローラ対6a,6bの作動がそれぞれ停止される。そして、マスタ搬送モータ19のステップ数より、タワミボックス10の内部に貯留された製版済みのマスタ2が、版胴15へと搬送されたことを上記制御装置で判断されると、上記制御装置からの指令により反転ローラ上・下対7,8X、版胴15および吸引ファン11の回転がそれぞれ停止されると共に、カッタ5の回転刃が移動して製版済みのマスタ2の後端部を所定の長さに切断する。その後、上記制御装置からの指令により、再び、反転ローラ上・下対7,8Xおよび版胴15が作動し、版胴15を図中A方向に回転させて一版分の製版済みのマスタ2を巻装し、給版工程が完了する。
上記したとおり、本実施形態を具体的に適用する給版装置は、製版部1Xの一部(カッタ5、上記マスタストック手段、反転ローラ上・下対7,8Xおよび上記マスタ搬送機構)とドラム部13とから主に構成されている。マスタストック手段は、タワミボックス10、吸引ファン11、タワミ検知センサ12および吸引ファン11を回転する吸引ファン駆動モータ(図示せず)から主に構成される。マスタストック手段は、穿孔製版された製版済みのマスタ2にタワミを形成するとともに、そのタワミを一時的に貯留する周知の機能を有する。
次いで、印刷工程が開始される。先ず、給紙台51上に積載された印刷用紙62の内の最上位の1枚が、給紙コロ111および分離コロ対112a,112bによりレジストローラ対113a,113bに向けて矢印Y4方向に送り出され、さらにレジストローラ対113a,113bにより版胴15の回転と同期した所定のタイミングで印圧部120に送られる。送り出された印刷用紙62が、版胴15とプレスローラ103との間にくると、版胴15の外周面下方に離間していたプレスローラ103が上方に移動されることにより、版胴15の外周面に巻装された製版済みのマスタ2に押圧される。こうして、版胴15の多孔部および製版済みのマスタ2の穿孔パターン部からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙62の表面に転移されて、印刷画像が形成される。
このとき、版胴15の内周側では、インキ供給管104からインキローラ105とドクターローラ106との間に形成されたインキ溜り107にインキが供給され、版胴15の回転方向と同一方向に、かつ、版胴15の回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインキローラ105により、インキが版胴15の内周側に供給される。
印圧部120において印刷画像が形成された印刷用紙62は、排紙部130における排紙剥離爪114により版胴15から剥がされ、吸着用ファン118に吸着されつつ、吸着排紙入口ローラ115および吸着排紙出口ローラ116に掛け渡された搬送ベルト117の反時計回り方向の回転により、矢印Y5のように排紙部130へ向かって搬送され、排紙台52上に順次排出積載される。このようにして所謂試し刷りが終了する。
次に、図示を省略したテンキーで印刷枚数をセットし、図示を省略した印刷スタートキーを押下すると上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷および排紙の各工程がセットした印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。
(実施形態1)
図1ないし図18を参照して、第1の実施形態(以下、単に「実施形態1」という)について説明する。
図1において、符号1は実施形態1における給版装置を示す。この給版装置1は、図19に示した製版部1Xの一部(カッタ5、上記マスタストック手段、反転ローラ上・下対7,8Xおよび上記マスタ搬送機構)とドラム部13とから主に構成されていた従来の給版装置に対して、反転ローラ下8Xに代えて、マスタ搬送方向Yと直交するマスタ幅方向Xの両側からマスタ中央部に向けて先細りとなる鼓状ローラからなる第1の給版ローラとしての反転ローラ下8を有すること、図4に示すマスタ搬送機構18の構成部品でもある電磁クラッチ21およびマスタ搬送モータ19に反転ローラ上7に停止状態を含む回転負荷を与えるための回転負荷付与手段の機能を付加したこと、製版済みのマスタ2の先端部を版胴15外周面に係止した後、上記回転負荷付与手段による反転ローラ上7に対する回転負荷状態を間欠的に変える回転負荷制御手段としての図12に示す制御装置40を付設したことが主に相違する。
以下、反転ローラ上・下対7,8周り、マスタ搬送機構18周り、制御装置40の構成と共に、マスタ2、サーマルヘッド3、プラテンローラ4、カッタ5、テンションローラ対6a,6bおよびドラム部13周りの構成についても詳述する。
マスタ2は、実施例的に言うと、図5に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)系の細い合成繊維が100%入っているベース2−2(多孔質支持体)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)系の厚さt1:1.5μmの熱可塑性樹脂フィルム2−1とを貼り合わせた厚さt2:25〜30μmのいわゆる合成繊維ベースマスタ(以下、単に「マスタ2」といい、「従来のマスタ2」と区別する)を用いている。ベース2−2におけるポリエチレンテレフタレート系の糸の径は、4〜14μm(線密度で0.1d〜1.1d、d:デニール)の範囲のものを用い、かつ、均一な太さでできており、ベース2−2はポリエチレンテレフタレート系の細い糸が縦方向および横方向に丁度織り合わされるようにして形成されている。
ここで、従来のマスタ2と合成繊維ベースマスタ2とについて、代表特性として曲げ剛性(剛度とも言われている)をL&W剛度試験機(Lorentzen&Wettre社製)で測定した。なお、L&W剛度試験機は、JIS等の測定方法では測定できないくらいマスタ2等の弱い剛度を測定するものである。L&W剛度試験機は、概略図6(a),(b)に示すような試験装置をなすものであり、L&W剛度試験機でのマスタ2の剛度の測定要領を概略的に説明すると、同図に示すように、矩形(50mm×32mm)の試験片48としてのマスタ2の長手方向を水平にして、マスタ2の一端をクランプ装置45で挟み付けクランプし、マスタ2の他端をナイフエッジ46にマスタ2のフィルム面側をセットする。そして、クランプ装置45を垂直回転軸であるピポット軸44の周りに30°回転し、そのときの試験片48(マスタ2)が曲げられることによって生じる力をナイフエッジ46で受け、ナイフエッジ46の位置調整ネジ付きのトランスデューサ47で変換し測定するものである。
同試験機における測定条件としては、下記の条件で行なった。
試験片 =50mm×32mm
測定スパン=1.0mm
曲げ角 =30°
曲げ速度 =測定時:5°/秒
なお、図6(a)において、測定スパン=1.0mmは、図を見やすくするために実際よりも長い寸法で誇張して描いてある。
従来のマスタ2と合成繊維ベースマスタ2とについて、上記したL&W剛度試験機でタテ剛度およびヨコ剛度を測定し、比較した結果は、次のとおりである。なお、タテ剛度およびヨコ剛度の区分について述べると、従来のマスタ2あるいは合成繊維ベースマスタ2の上記試験片を仮りにマスタ搬送方向Yに平行にセットした状態において、マスタ搬送方向Yの曲げ剛性をタテ剛度と言い、マスタ幅方向Xの曲げ剛性をヨコ剛度と言う。従来のマスタ2の仕様としては、麻が60%入っているベースと、ポリエチレンテレフタレート(PET)系の厚さ:1.5μmの熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせた厚さ:43〜47μmのものを用いて測定した。
従来のマスタ2……………約128/70mN(タテ/ヨコ、単位:ミリニュートン)
合成繊維ベースマスタ2……約35/22mN(タテ/ヨコ、単位:ミリニュートン)
マスタロール2Aは、図4における手前側および奥側にマスタ搬送路を挟んで配設されている図示を省略した製版側板対に設けられたマスタロール支持部材2Bに、マスタロール2Aの両側の芯管2aを着脱することで着脱自在となっている。
サーマルヘッド3は、プラテンローラ4の軸4aと平行に延在して設けられていて、図示を省略したバネおよびカム等を備えた接離手段によりマスタ2を介してプラテンローラ4に接離自在となっている。
カッタ5は、図12にのみ示すカッタモータ20にワイヤプーリおよびワイヤ等を介して連結され、カッタモータ20の回転駆動によってレール部材(図示せず)に案内されつつマスタ幅方向に回転移動される周知の回転刃とマスタガイド板を兼ねた固定刃とで構成されている。カッタ5の上記回転刃は、その非作動時において、マスタ2の搬送に支障を与えないようにマスタ搬送路の片側端に待機している。
マスタ搬送機構18は、図4に示すように、マスタ搬送モータ19、モータプーリ22、タイミングベルト23、駆動プーリ24、駆動ギヤ25、プラテンローラ4、プラテンローラギヤ26、アイドルギヤ27、第1テンションローラギヤ28A、テンションローラ対6a,6b、第2テンションローラギヤ28B、アイドル小径ギヤ29、アイドル大径ギヤ30、第1反転ローラ上ギヤ31、電磁クラッチ21、反転ローラ上・下対7,8、第2反転ローラ上ギヤ32、アイドルカウンターギヤ33、カウンターギヤ35およびカウンターローラ34から主に構成されている。
プラテンローラ4は、図4および図8に示すように、プラテンローラ軸4aと一体的に形成されていて、プラテンローラ軸4aの両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、図中矢印で示す時計回り方向に回転自在となっている。プラテンローラ4の手前側のプラテンローラ軸4a端部には、図4にのみ示すように、プラテンローラギヤ26が固設されている。
プラテンローラ4の近傍における手前側の製版側板には、その出力軸(図示せず)に固設された歯付きのモータプーリ22を有するマスタ搬送モータ19が取付け固定されている。また、プラテンローラ4の近傍には、歯付きの駆動プーリ24が配設されていて、この駆動プーリ24は、手前側の製版側板に回転自在に支持された軸24aに一体的に取付けられている。モータプーリ22と駆動プーリ24との間には、タイミングベルト23が掛け渡されている。一方、マスタ搬送モータ19とプラテンローラ4との間には、駆動プーリ24と同軸24aに固定して設けられプラテンローラギヤ26と噛合する駆動ギヤ25が配設されている。
上側のテンションローラ6aは、図4および図8等に示すように、ゴムでできていて、軸と一体的に形成された駆動ローラを構成している。テンションローラ6aは、軸の両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、図中矢印で示す時計回り方向に回転自在となっている。下側のテンションローラ6bは、金属でできていて、軸と一体的に形成された従動ローラを構成している。テンションローラ6bは、軸の両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、図中反時計回り方向に回転自在となっている。テンションローラ対6a,6bは、バネ等の付勢手段により適度な押圧力を与えられて圧接して設けられていて、プラテンローラ4のマスタ搬送方向Y下流側に位置するマスタ2に張力を与える機能を有する。テンションローラ6aの軸の手前側端部には第1テンションローラギヤ28Aが、同軸の奥側の端部には第2テンションローラギヤ28Bがそれぞれ固設されている。
プラテンローラ4とテンションローラ6aとの間には、手前側の製版側板に回転自在に支持された軸27aに一体的に取付けられ、プラテンローラギヤ26および第1テンションローラギヤ28Aと噛合するアイドルギヤ27が図中反時計回り方向に回転自在に設けられている。
反転ローラ上・下対7,8は、図1、図2、図4および図8等に示すように、版胴15外周面近傍におけるマスタ搬送方向Yの下流側に設けられていて、軸方向の全周面領域に亘り互いに接触状態にあり、図示を省略したバネ等の付勢手段によって適度な圧接力(実施例的に言うと、合成繊維ベースマスタ2の試験片の引き抜き力で1.15N〜1.30N、設計的には反転ローラ上・下対7,8の外側端部寄りの後述する外径と軸間距離=14.7mmとで設定される)が付与されるようになっている。第2の給版ローラとしての反転ローラ上7と第1の給版ローラとしての反転ローラ下8とで給版ローラ対が構成されている。
反転ローラ上7は、図1、図2、図4および図8に示すように、発泡ポリウレタンゴムでできていて、金属製の軸7aと一体的に形成された駆動ローラを構成している。反転ローラ上7の形状およびゴム硬度(代用値)について、実施例的に言うと、図2に示すように、軸7aの外径7d1=10mm、ローラ外径7d2=18.5mm、発泡ゴム密度:85±10kg/cm3で、かつ、JIS硬度F型硬度:90°以上で形成されている。反転ローラ上7は、軸7aの両端部が上記製版側板対に回転可能に支持されていることにより、時計回り方向に回転自在となっている。反転ローラ上7は、軸方向の全周面領域に亘り反転ローラ下8との接触状態を保持するため、上記のような形状的に追従性の大きいスポンジローラであることが好ましい。
反転ローラ上7の軸7aの手前側端部には第2反転ローラ上ギヤ32が固定して取付けられ、同軸7aの奥側の端部には電磁クラッチ21を介して第1反転ローラ上ギヤ31がそれぞれ配設されている。上記したように、マスタ搬送機構18に含まれる電磁クラッチ21およびマスタ搬送モータ19は、反転ローラ上7に停止状態を含む回転負荷を与えるための回転負荷付与手段の機能を有する。また、上記したマスタ搬送機構18の構成のとおり、マスタ搬送モータ19は、反転ローラ上7を回転するローラ駆動手段を兼ねている。それ故に、電磁クラッチ21は、反転ローラ上7とローラ駆動手段を兼ねているマスタ搬送モータ19との間に介装されていて、マスタ搬送モータ19の回転駆動力を反転ローラ上7に接続したり、断ったりする回転力断接手段としての機能を有する。
反転ローラ下8は、図1、図3、図4および図8に示すように、金属でできている。反転ローラ下8の鼓状の形状は、実施例的に言うと、図3にそのテーパを誇張して示すように、マスタ幅方向Xにおけるマスタ中央部に接触する先細り部の外径8d1=11.5mm、同マスタ幅方向Xの長さ寸法8L2=20mm、両ローラ端の外径8d2=12mm、先細り部の外径8d1とローラ端の外径8d2までの長さ寸法8L1=152mmで形成されている。
また、反転ローラ下8のマスタ2と接触する外周面(上記各長さ寸法8L1,8L2の範囲の外周面)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で、好ましくは、1.6μm〜3.2μmの範囲内で付与されている。このときの評価長さ(ln)は、実使用長で320mmである。この範囲の表面粗さは、例えば、金属製の反転ローラ下8の場合では上記外周面を旋削や研削等により機械加工することで、後述するような合成樹脂製の反転ローラ下8の場合では上記外周面を金型等により成形することでそれぞれ施される。
なお、JIS B0601 -1994における算術平均粗さ(Ra)の表示法では、その評価長さ(ln)が算術平均粗さ(Ra)の値により変わるため、実際上、反転ローラ下8の表面粗さが必要とされる部位の長さとして実使用長で320mmとしたが、これは使用されるマスタ2のサイズによって変わるものである。
反転ローラ下8の上記外周面の表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で、0.8μm〜12.5μmの範囲内であれば、給版時においてマスタ2のシワ発生抑制効果のあることが後述する表1の評価データから裏付けられている。
反転ローラ下8は、軸8aと一体的に形成され反転ローラ上7と連れ回りする従動ローラとして構成されている。反転ローラ下8は、図1に示すように、版胴15外周面と反転ローラ上・下対7,8との間に製版済みのマスタ2が張設されている状態で、製版済みのマスタ2のバックテンションBTを受ける状態に配設されている。反転ローラ下8は、安定したバックテンションBTの点から金属のように比較的剛性の高いものが好ましく、この点からは例えばポリカーボネートのような合成樹脂であってもよい。
テンションローラ6aと反転ローラ上7との間には、奥側の製版側板に回転自在に支持された軸29aと一体的に取付けられ第2テンションローラギヤ28Bと噛合するアイドル小径ギヤ29が、同軸29aと一体的に取付けられ第1反転ローラ上ギヤ31と噛合するアイドル大径ギヤ30がそれぞれ図中反時計回り方向に回転自在に設けられている。
カウンターローラ34は、図4および図7に示すように、反転ガイド板9bの開口部に緩く嵌入していて、反転ローラ上7に食い込むように配置された金属製の複数個の串刺し状ローラからなる。カウンターローラ34は、上記製版側板対に回転自在に支持された軸34aと一体的に取付けられ、反転ローラ上7の回転方向(図中時計回り方向)と同一方向に、かつ、その周速度よりも速い周速度で回転されるように後述するギヤ列のギヤ比が設定されている。カウンターローラ34は、低湿度状態等において、反転ローラ上・下対7,8のニップ部に挾持され反転ローラ上7の回転駆動により搬送されてきた製版済みのマスタ2が、反転ローラ上7に静電気的に吸着して巻き上がるのを防止する周知の機能を有する。
カウンターローラ34の手前側端部には、カウンターギヤ35が固設されている。反転ローラ上7とカウンターローラ34との間には、手前側の製版側板にその軸を回転自在に支持され、第2反転ローラ上ギヤ32およびカウンターギヤ35と噛合するアイドルカウンターギヤ33が設けられている。なお、図4におけるカウンターローラ34の図示状態は、図の簡明化を図るため反転ローラ上7から離れているように描かれているが、図7に示す状態が正確な配置状態である。
上記したとおり、マスタ搬送モータ19の回転駆動力は、モータプーリ22、タイミングベルト23、駆動プーリ24、駆動ギヤ25、プラテンローラギヤ26、プラテンローラ4へと順次伝達されると共に、アイドルギヤ27、第1テンションローラギヤ28A、テンションローラ対6a,6b、第2テンションローラギヤ28B、アイドル小径ギヤ29、アイドル大径ギヤ30、第1反転ローラ上ギヤ31、電磁クラッチ21、反転ローラ上・下対7,8、第2反転ローラ上ギヤ32、アイドルカウンターギヤ33、カウンターギヤ35およびカウンターローラ34へと順次伝達される。
ドラム部13は、図9等に示すように、版胴駆動手段としてのメインモータ16によりインキ供給管104を兼ねる支軸104の周りに回転される版胴15を有する。版胴15の手前側端面に取付けられた端板15aには、ドラムギヤ15bが固設されていて、このドラムギヤ15bがメインモータ16に連結された駆動ギヤ(図示せず)に選択的に噛合するようになっている。メインモータ16としては、制御用モータであるDCモータが用いられる。
版胴15には、図9等に示すように、製版済みのマスタ2の先端部を係止するマスタクランパ14が版胴15の外周部の一母線に沿って配設されている。マスタクランパ14は、クランパ軸14aをもって版胴15の外周部に枢着され、揺動・開閉自在となっている。マスタクランパ14は、ゴム磁石を有していて、版胴15が給版位置を占めたときに、装置本体フレーム50側に配設された開閉手段により版胴15の外周部に設けられた強磁性体からなるステージ部14bに対して開閉される。クランパ軸14aの端部には、クランパギヤ14cが固設されている。一方、版胴15の端板15a外周部には、クランパギヤ14cと常に噛合するセクタギヤ14dが揺動自在に配設されている。セクタギヤ14dの基端部と自由端部との間には、カム面14eが形成されている。セクタギヤ14dの自由端部には、マスタクランパ14を閉じる向きに常に付勢するバネ14f(引張バネ)が張設されている。
上記開閉手段は、図9および図10に示すように、装置本体フレーム50側の不動部材(図示せず)に固設されたプランジャ17pを有するクランパソレノイド17と、その一端がプランジャ17pに連結され装置本体フレーム50側の不動部材(図示せず)に設けられた支点軸17bを中心として揺動自在なリンク17aと、このリンク17aの他端にピンを介して連結され図中矢印方向およびこれと反対方向に進退自在な開きコロ17cと、装置本体フレーム50側の不動部材(図示せず)にネジを介して取付けられ開きコロ17cを進退自在にガイドするガイド部材17eと、開きコロ17cの一端部に張設され開きコロ17cを図中矢印方向と反対方向に退行する向きに常に付勢するバネ17dとから主に構成される。
上記開閉手段の構造のとおり、クランパソレノイド17がオンすることにより、プランジャ17pがバネ17dの付勢力に抗して図中矢印方向に吸引移動され、リンク17aが支点軸17bを中心として図中矢印方向に揺動され、開きコロ17cがガイド部材17eにガイドされつつ図中矢印方向に突出進行することとなる。クランパソレノイド17がオフすると、バネ17dの付勢力により、上記動作と反対方向の動作が行なわれて、開きコロ17cが図中矢印方向と反対方向に退行することとなる。
図11に示すように、版胴15の一方のドラムフランジに対向した装置本体フレーム50側の所定位置には、版胴15がそのマスタクランパ14を図18に示すように版胴15の真上に位置させるホームポジションを占めたときに、そのホームポジションを検知するための第1ホームポジションセンサ37と、版胴15がそのマスタクランパ14を図17に示すように排版部70付近に位置させる位置を占めたときに、その版胴15の回転位置を検知するための第2ホームポジションセンサ38とがそれぞれ設けられている。第1ホームポジションセンサ37および第2ホームポジションセンサ38は、発光素子および受光素子を具備した周知の光透過型のフォトセンサからなる。
版胴15の一方の端板15aには、第1ホームポジションセンサ37または第2ホームポジションセンサ38と選択的に係合する遮光板39が突出して設けられている。給版位置を検知する検知手段は、第1ホームポジションセンサ37を兼用・利用しており、給版位置および排版位置は、版胴15がホームポジションを占めたときに第1ホームポジションセンサ37からのオン信号出力時を起点として、メインモータ16に付属して設けられた光学式ロータリエンコーダ等により版胴15の回転量(回転角度)を検出することにより検知されるようになっている。
次に、図12を参照して給版装置1の主な制御構成について説明する。
図12において、符号40は制御装置を示す。制御装置40は、駆動回路や適宜の電子回路を介して、第1ホームポジションセンサ37および第2ホームポジションセンサ38と、タワミ検知センサ12と、マスタ搬送モータ19と、電磁クラッチ21と、カッタモータ20と、メインモータ16と、クランパソレノイド17との間で、指令信号やオン/オフ信号あるいはデータ信号を送受信し、給版装置1の上記各部における制御対象駆動部分の起動、停止および動作タイミング等に係るシステムを制御している。
制御装置40は、マイクロコンピュータを具備していて、図示を省略したCPU(中央演算処理装置)、I/O(入出力)ポートおよびROM(読み出し専用記憶装置)、RAM(読み書き可能な記憶装置)およびタイマ等を備え、信号バスによって接続された構成を有する。制御装置40は、製版済みのマスタ2の先端部を版胴15外周面に係止した後、上記回転負荷付与手段による反転ローラ上7に対する回転負荷状態を間欠的に変える回転負荷制御手段の機能を有する。
制御装置40の上記CPUは、製版済みのマスタ2の先端部をクランパソレノイド17をオン・オフさせることで版胴15外周面に係止した後、マスタ搬送モータ19の駆動を停止させた状態で、版胴15の回転によって反転ローラ上・下対7,8とマスタクランパ14との間における製版済みのマスタ2が版胴15外周面に接触した直後に、電磁クラッチ21をオンして反転ローラ上7の回転を停止状態とさせ、製版済みのマスタ2の後端が反転ローラ上・下対7,8のニップ部を抜ける付近で、電磁クラッチ21をオフして反転ローラ上7を回転自在とさせる機能を有する。制御装置40の上記RAMは、上記CPUでの演算結果を一時記憶したり、上記各センサおよび各キーから入力されたオン/オフ信号やデータ信号を随時記憶する。制御装置40の上記ROMには、後述するタイミングチャートにより給版装置1の給版動作を実行するためのプログラムおよびそのデータ等が記憶されている。
第1ホームポジションセンサ37、第2ホームポジションセンサ38およびタワミ検知センサ12からのオン/オフ信号やデータ信号は、制御装置40に送信される。制御装置40は、マスタ搬送モータ19、電磁クラッチ21、カッタモータ20、メインモータ16およびクランパソレノイド17に、それらの起動、停止および動作タイミング等を制御する指令信号を送信する。
以下、図14ないし図18に示した各動作を併用しながら、給版装置1の動作を図13に示すタイミングチャートに基づいて、図19を参照して説明した従来の製版および給版動作と相違する点を中心に説明する。上記タイミングチャートは、給版装置1による各動作を理解・実施できる程度に示したものである。
画像読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像情報に基づき従来と同様のタワミ製版モードによって、画像情報に応じたマスタ2の位置選択的な溶融穿孔が行なわれ、マスタ搬送モータ19がオン駆動されることで製版済みのマスタ2がマスタ搬送方向Yに搬送されつつ、上記マスタストック手段により製版済みのマスタ2に強制的にタワミが形成され、製版済みのマスタ2の先端部が反転ローラ上・下対7,8で挟持され、そのニップ部から版胴15側に約6mm突出した状態に保持されている状態にある。この時、電磁クラッチ21はオフしていることにより、マスタ搬送モータ19のオン駆動による回転駆動力はマスタ搬送機構18を介して反転ローラ上7には伝達されず、反転ローラ上・下対7,8は回転停止状態にある。
この時、版胴15は給版位置を占めるべく給版位置に近づくと、制御装置40の指令により上記開閉手段が作動し、マスタクランパ14が拡開される。すなわち、図11において、第1ホームポジションセンサ37を版胴15の遮光板39が通過後、制御装置40の指令によりクランパソレノイド17がオンすることにより、図9および図10に示すように、開きコロ17cがガイド部材17eにガイドされつつ図中矢印方向に突出進行し、図9で反時計回り方向に回転する版胴15の端板15aに近づく。版胴15がさらに反時計回り方向に回転し、給版位置に近づくと、セクタギヤ14dのカム面14eが開きコロ17cに乗り上げることで、セクタギヤ14dを時計回り方向に、これに噛み合うクランパギヤ14cを反時計回り方向に回転し、マスタクランパ14がステージ部14bから拡開される。これと同時に、版胴15は給版位置に停止される。
図14に示す状態の時間T1において、タワミ検知センサ12がオンすることにより、製版済みのマスタ2によってタワミボックス10の内部に所定量のタワミを形成していることが確認されると、制御装置40の指令により電磁クラッチ21がオンする。これにより、マスタ搬送モータ19のオン駆動による回転駆動力がマスタ搬送機構18を介して反転ローラ上7に伝達され、反転ローラ上・下対7,8が回転されることによって製版済みのマスタ2が一定量搬送され、製版済みのマスタ2は、反転ガイド板9bにより進行方向を下方に変えられ、給版位置状態にある版胴15の拡開したマスタクランパ14へ向かって垂れ下がる。この時、版胴15は、排版工程により使用済みのマスタ2を既に除去されている。
そして、マスタ搬送モータ19のステップ数より、製版済みのマスタ2の先端がマスタクランパ14へ届くように一定量搬送されたと制御装置40で判断されると、時間T2で電磁クラッチ21がオフすることにより、反転ローラ上・下対7,8の回転が停止する。これと同時に、クランパソレノイド17がオフすることにより、図15に示すようにマスタクランパ14が閉じられ、製版済みのマスタ2の先端部がマスタクランパ14とステージ部14bとの間に係止される。
時間T3近くに至るまで、その先端部を反転ローラ上・下対7,8で挟持された製版済みのマスタ2の未製版部分には、引き続きサーマルヘッド3での穿孔製版が行なわれている。すなわち、図8、図14および図15に示すように、その先端部を反転ローラ上・下対7,8で挟持された製版済みのマスタ2は、その後続部をプラテンローラ4およびテンションローラ対6a,6bで搬送されることにより、その中間部がガイド板9a上より上方に向かって逆U字状に撓み、タワミボックス10の開口10aからタワミボックス10の内部に搬送される。この時、制御装置40からの指令により吸引ファン11が回転し、タワミボックス10内部の空気をその内側から外側に流動させ、製版済みのマスタ2はタワミ案内板10Aの先端部を回り込むようにタワミボックス10内部に導入され、タワミボックス10の内部に貯留される。
製版済みのマスタ2の先端部がマスタクランパ14により係止された後、版胴15は製版が終了するまで給版位置に待機している。製版終了後から時間T3に至るまで、マスタ製版部の位置出しをしてマスタ後端部の切断位置を正確にするため、マスタ搬送モータ19の所定ステップ数の回転駆動により、プラテンローラ4、テンションローラ対6a,6bが一定量回転されることで、製版済みのマスタ2の後端部がマスタ搬送方向Yに搬送される。
マスタ搬送モータ19のステップ数より、一版分の製版済みのマスタ2が製版されたと制御装置40で判断されると、時間T3において、制御装置40からの指令によってマスタ搬送モータ19の回転駆動が停止されることにより、プラテンローラ4、テンションローラ対6a,6bの回転がそれぞれ停止される。そして、カッタ5の回転刃がマスタ幅方向Xに移動して製版済みのマスタ2の後端部を所定の長さに切断する。この時に切断された製版済みのマスタ2の後端部は、テンションローラ対6a,6bのニップ部に挾持されている。
製版済みのマスタ2の切断後、制御装置40からの指令によりメインモータ16がオンして、図1および図16に示すように、版胴15は図中A方向(時計回り方向)に回転を始め、反転ローラ上・下対7,8とマスタクランパ14との間における製版済みのマスタ2が引っ張られ版胴15外周面に接触する版胴15の回転量である回転角50°回転した直後、制御装置40からの指令により電磁クラッチ21がオンする(時間T4)。このように、版胴15が回転角50°回転するまでは電磁クラッチ21はオフしており、反転ローラ下8および反転ローラ上・下対7,8とマスタクランパ14との間における製版済みのマスタ2には僅かなバックテンションが掛るぐらいとなっている。
電磁クラッチ21がオンした後では、反転ローラ上7はマスタ搬送機構18の停止状態(マスタ搬送モータ19はオフ状態)の負荷を受けることにより停止(ロック)状態となり、反転ローラ下8は版胴15の回転による製版済みのマスタ2の搬送力を受けることにより連れ回り・従動回転をする。この状態では、図1に示すように、反転ローラ下8および反転ローラ上・下対7,8とマスタクランパ14との間における製版済みのマスタ2には適度なバックテンションBTが与えられる。反転ローラ下8は、上記したようにマスタ幅方向Xの両側からマスタ中央部に向けて先細りとなる特有の鼓状ローラであるため、反転ローラ下8の中央部における外径の細い側よりもその両端側の外径の太い側の周速度が大きくなるので、製版済みのマスタ2がマスタ幅方向Xの中央部から両側端側へマスタ搬送方向Yに向けて徐々に大きくなる斜めの適度なテンション(張力)FTを受けて、製版済みのマスタ2がズレることなく、製版済みのマスタ2が両側端を張られた状態で、かつ、空気の入り込みも非常に少ない状態で版胴15の回転により外周面に徐々に巻き付けられていく(図1および図16と図17参照)。
そして、あるタイミングの時間T5において、第2ホームポジションセンサ38がオンすると、制御装置40からの指令によりマスタ搬送モータ19がオンされることによって、テンションローラ対6a,6bが回転され、切断された製版済みのマスタ2の後端がガイド板9a側へと送り出される。これは、製版済みのマスタ2のタワミが大きい時に、そのマスタ2の後端をフリーにしていると、タワミが形成されている製版済みのマスタ2間同士が静電気により帯電してくっつき、折りたたんだ状態で給版されるのを防ぐためと、製版済みのマスタ2のバックテンションを一定にするためである。なおこの時、反転ローラ上7側に設けられた電磁クラッチ21はオンのままであるので、マスタ搬送モータ19の回転駆動力が反転ローラ上7にも伝達されるが、巻装時における版胴15の周速度(v1=99.5mm/sec)と反転ローラ上7との周速度(v2=25mm/sec)との差が適正に設定されていることから、それほどバックテンションへは影響しないようになされている。マスタ搬送モータ19の回転駆動により、製版済みのマスタ2の後端が一定量送られ、テンションローラ対6a,6bから抜けた後、制御装置40からの指令によりマスタ搬送モータ19がオフされる。
その後、版胴15の回転による製版済みのマスタ2の巻き付けが続き、図18に示すように、タワミ検知センサ12によりタワミボックス10における製版済みのマスタ2のタワミが検知されなくなり、製版済みのマスタ2の後端が反転ローラ上・下対7,8を抜ける付近(このタイミングは時間T6)において、第1ホームポジションセンサ37がオンし、このオン信号に基づく制御装置40からの指令により電磁クラッチ21がオフされる。これにより、反転ローラ上7が回転自在(フリー)状態となり、反転ローラ上・下対7,8共に連れ回り状態となって、反転ローラ上・下対7,8と版胴15外周面との間における製版済みのマスタ2へのテンションを小さくし、製版済みのマスタ2の後端が反転ローラ上・下対7,8から抜ける際のマスタ挙動をやわらげることで、版胴15による製版済みのマスタ2の巻装時のシワの発生やスキュー等を防ぐことができる。そして、版胴15を図中A方向に回転させて一版分の製版済みのマスタ2を巻装した後、給版工程が完了する。
上述したように、実施形態1の給版装置1では、製版済みのマスタ2の先端部を版胴15外周面に係止した後、反転ローラ上7に対する停止状態を含む回転負荷状態を間欠的に変えることにより、反転ローラ上・下対7,8と版胴15との間における製版済みのマスタ2のテンションを調整しながら版胴15の回転によって版胴15外周面に製版済みのマスタ2を巻き付ける給版方法が用いられていた。さらに詳しく述べれば、製版済みのマスタ2の先端部を版胴15外周面に係止した後、版胴15の回転によって、反転ローラ上・下対7,8と版胴15との間における製版済みのマスタ2が版胴15外周面に接触した直後に、反転ローラ上7の回転を停止状態とし、製版済みのマスタ2の後端が反転ローラ上・下対7,8のニップ部を抜ける付近で、反転ローラ上7を回転自在とする給版方法が用いられていた。
表1に、給排版テストによる評価データを示す。この給排版テストによる評価は、従来の給版装置を具備した孔版印刷装置と本実施形態1の給版装置1を具備した孔版印刷装置とを用いて、4種類の環境条件の下で、排版させ、上記した実施形態1の合成繊維ベースマスタ2に製版しながら版胴15へのマスタ巻装を行なう給排版工程を繰返し、版胴に巻装した製版済みのマスタ2のシワ発生有無の確認を行なったものである。
ここで、低温低湿とは室温10℃、相対湿度20%、常温常湿とは室温23℃、相対湿度65%、高温高湿とは室温30℃、相対湿度90%、常温低湿とは室温23℃、相対湿度10%の環境条件をそれぞれ示す。
反転ローラ下形状ストレートの場合は、図19に示した孔版印刷装置によるものに相当し、圧接力:合成繊維ベースマスタ2の試験片の引き抜き力で0.78N〜0.98Nの条件で行なった。
反転ローラ下形状鼓型の場合は、上記実施形態1から反転ローラ下8の表面粗さ指定および制御装置40による電磁クラッチ21への特有の制御を除去し、図19に示した孔版印刷装置の上記制御装置によるものに相当する。
反転ローラ下形状鼓型+電磁クラッチ制御追加の場合は、上記実施形態1において反転ローラ下8の表面粗さ指定を行なわず、制御装置40により電磁クラッチ21への特有の制御を行なったものである。
反転ローラ下形状鼓型+反転ローラ下表面粗さ指定+電磁クラッチ制御追加の場合は、上記実施形態1における全ての給版条件の反映実施、すなわち反転ローラ下8を上記した鼓状ローラ形状とし、反転ローラ下8の表面粗さ指定を行なうと共に、同実施形態1における制御装置40により電磁クラッチ21への特有の制御を行なったものである。
なお、評価記号は、上記表1の下に記載しているとおりの4段階評価とし、給排版テスト回数に対するシワ発生回数の割合の程度で表しており、ちなみに二重丸記号マークはシワ発生率ゼロを表す。
上記給排版テストから、反転ローラ下形状鼓型+反転ローラ下表面粗さ指定+電磁クラッチ制御追加の場合(実施形態1に同じ)は、全ての環境条件においてシワ発生回数はゼロであり、良好な評価結果を得ることができた。また、反転ローラ下形状鼓型の場合は、反転ローラ下形状ストレートの場合よりは、シワ発生回数は相対的に少なく、反転ローラ下形状鼓型の場合だけでもある程度の効果が得られることが分かる。
反転ローラ下形状鼓型+電磁クラッチ制御追加の場合では、反転ローラ下8が上記したような特有の鼓状ローラ形状であるために、製版済みのマスタ2の版胴15外周面への巻装時において発生するバックテンションに僅かながらもテンション勾配が発生してしまうことがあるが、反転ローラ下形状鼓型+反転ローラ下表面粗さ指定+電磁クラッチ制御追加の場合(実施形態1に同じ)では、反転ローラ下8の上記外周面に適度な表面粗さ(上記算術平均粗さ(Ra)で、0.8μm〜12.5μmの範囲内)を施したことにより、合成繊維ベースマスタのようにその厚さが非常に薄く、かつ、剛性が小さく腰が弱いマスタ2を給版する場合であっても、上記適度な表面粗さの機械的な抵抗力が適切に作用することで、テンション勾配によるマスタ2のズレが発生せず、マスタ2の反転ローラ下8との接触位置にそのマスタ2を保持することができるので、曲がって巻き付けられたり、シワを発生して巻き付けられたりすることがなくなるものと推察される。
なお、上記給排版テストにおいては、合成繊維ベースのマスタ2を用いた場合のテスト結果であったが、従来のマスタや実質的に熱可塑性合成樹脂フィルムのみからなるマスタであっても、上記テスト結果に準じた評価結果を得ることが推察される。実質的に熱可塑性合成樹脂フィルムのみからなるマスタとは、マスタが熱可塑性樹脂フィルムのみから成るものの他、熱可塑性樹脂フィルムに帯電防止剤等の微量成分を含有してなるもの、さらには熱可塑性樹脂フィルムの両主面、すなわち表面又は裏面のうち少なくとも一方に、オーバーコート層等の薄膜層を1層又は複数層形成してなるものを含む。
したがって、実施形態1によれば、合成繊維ベースマスタのようにその厚さが非常に薄く、かつ、剛性が小さく腰が弱いマスタ2を給版する場合であっても、製版済みのマスタ2の版胴15外周面への巻装時、曲がって巻き付けられたり、シワを発生して巻き付けられたりすることのない給版装置1を提供することができる。また、特有の鼓状ローラ形状を有する反転ローラ下8以外の機械的な構成が図19に示した給版装置と略同様であるので、従来の給版装置に対して、反転ローラ下8および制御装置40を付加するだけで簡単に対応することができる利点もある。
本発明の実施形態は、上記実施形態1に限らず、電磁クラッチ21をオフした反転ローラ上7の従動回転状態で、反転ローラ上7の回転負荷を変える制動手段を付設して、反転ローラ上7の回転負荷を停止状態を含み変えるようにしてもよい。この場合、制動力を可変できる制動手段を用いて、マスタ2の剛度の大きさに応じて反転ローラ上7の回転負荷を変えるように制御装置で回転負荷制御を行なうようにしてもよい。
反転ローラ上・下対7,8を回転するローラ駆動手段は、上記実施形態1のようにマスタ搬送モータ19を兼ねる構成に限らず、マスタ搬送モータ19とは別個のステッピングモータ等で回転するようにしてもよい。
以上述べたとおり、本発明を実施例を含む特定の実施形態等について説明したが、本発明の構成は、上述した実施形態1等に限定されるものではなく、これらを適宜組合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性及び用途等に応じて種々の実施形態や実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。