JP4230764B2 - 熱可逆性記録媒体および熱可逆性記録カード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを制御することにより情報の可視表示と消去書き換えが可能な熱可逆性記録媒体およびそれを用いて形成される熱可逆性記録カードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
会員カード、IDカード、クレジットカード、キャッシュカードあるいはICカード等は、カードの一部に磁気テープやICチップ等の情報記憶部が配置された情報記録タイプのものであるが、この情報記憶部に特に金銭などの個人機密情報等を記録でき、小型サイズで利便性が高いために現在社会の各国で広く普及されている。この情報記録タイプのカードは、記録された情報を特別な機器を使用して読取り書き換えを行なうなどして使用されるが、カード所有者が記録された情報を直接視覚で認識できない欠点を有しているものである。
【0003】
一方、支持体上に熱により色調が可逆的に変化する性質を有する熱可逆性記録層を設けてなる熱可逆性記録媒体は、その性質を利用して一時的な画像形成を行ない、不要となったときにはその画像の消去ができ、すなわち表面に情報が可視的に表示され、また該表示情報の書き換えができるため、リライトカードとして近年市場で使用されている。
この熱可逆性記録層の代表的な例としては、有機低分子物質を主成分として母材樹脂中に分散したものであって加熱温度変化によって白濁と透明との間を可逆的に変化するものと、長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物のような顕色剤とロイコ染料のような発色剤を主成分として母材樹脂中に分散したものであって加熱温度変化によって色調が変化するもの(例えば、特許文献1、2参照。)があるが、視認性の点においては後者が好ましいものと考えられている。
【0004】
該熱可逆性記録媒体としては、薄手のPETフィルムのような支持体を用い、その支持体自体に磁気記録層を設けたものが主にポイントカードとして市場で使われているが、このカードは、画像表示部として情報を可視的に表示し、かつ書き換えができ、また磁気記録層が情報記憶部となって情報を記録し書き換えできる情報記録表示タイプのカードである。
【0005】
さらに、この熱可逆性記録媒体は、クレジットカード等のような従来からある情報記録タイプの厚手カードが有する上述の欠点を充分補填できるものとして応用され、画像表示部として情報を可視的に表示し、かつ書き換え可能とする機能と、情報記憶部として情報を記録し書き換え可能とする機能の双方を合わせ持つ情報記録表示タイプの厚手カードが開発され、最近市場で使われ始めている。
この情報記録表示タイプの厚手カードは、基本的には、ICチップやアンテナコイル等によって情報記憶機能を内蔵させた従来の情報記録タイプのカードをコアシートとして用い、支持体上に少なくとも熱可逆性記録層が設けられた熱可逆性記録媒体の支持体側を、該コアシートに重ねて、さらに必要な場合コアシートの熱可逆性記録媒体と反対側のオーバーシートを重ねて、この積層物を熱圧着等することによって形成されるものである。
さらに、この情報記録表示タイプの厚手カードには、情報記憶機能を内蔵しない厚手の樹脂シートをコアシートとし、上記の薄手の支持体自体に磁気テープ等によって磁気記録層を設けた熱可逆性記録媒体を用いて、同様にして作製されるものもある。
さらに、厚手の樹脂シートをコアシートとし、薄手の支持体を用いて作製された該熱可逆性記録媒体を用いて、同様にして両者を重ね熱圧着等によって作製し、画像表示部として情報を可視的に表示し、かつ書き換え可能とする機能だけを有し情報記憶機能を有しない、情報表示タイプの厚手カードもある。
このように該熱可逆性記録媒体が用いられた厚手カードとして、情報記録表示タイプと情報表示タイプの2種類があるが、以後これらを熱可逆性記録カードと総称する。
【0006】
通常、熱可逆性記録媒体とコアシートとしてのカード基材とが容易に貼り合わせできるように、熱可逆性記録層を設けた支持体の反対面に接着層が設けられ、該接着層の接着性は常温で発現せずカード基材との接着時の加熱温度で発現する熱可逆性記録媒体が用いられる。そのような接着層が設けられた熱可逆性記録媒体について、従来なされている提案内容について説明する。
【0007】
熱可逆性記録媒体の接着層を構成する材料として、軟化点150℃以下の高分子材料を用い、カード基材として塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂(PETG等)が記載され、具体的には接着剤塗料成分としてポリエステル系樹脂を用いてカード基材としての白色塩ビシートに貼り付けることが示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
また、熱可逆性記録媒体の接着層を構成する材料として、ガラス転移点(Tg)が55〜85℃の、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体樹脂またはポリエステル系樹脂のような熱塑性樹脂を用い、イソシアネート化合物またはその誘導体を接着性向上のための架橋剤として配合し、カード基材として塩化ビニル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂(PETG)が記載され、具体的にはポリエステル樹脂系(イソシアネート化合物架橋タイプ、Tg:75℃)接着剤を用いてカード基材としてのポリ塩化ビニルに貼り付けることが示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0009】
さらに、熱可逆性記録媒体の接着層を構成する材料として、ホットラミネータタイプの各種樹脂が挙げられ、硬化材を含有させて強度アップを図ることが記され、カード基材として塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂等が示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
また、支持体上に印刷層、光透過度50%以上の透明支持体、可逆性記録層および保護層を設けた可逆性記録フイルムをオーバーシートとし、この支持体側とコアシートとを接着剤で一体化してなる厚手の情報記録表示カードが提案され、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂が接着剤として用いられている(例えば、特許文献6参照。)。
【0011】
しかしながら、これらの熱可逆性記録媒体の接着層に用いられる接着材料の多くは、加熱加圧して得られるカードを観察すると、塩化ビニルシート(PVC)、非晶性コポリエステル(PET−G)およびアクリル系樹脂等の樹脂の材質を問わず様々なカード基材に対して一様に同レベルの充分な接着強度をもたらすことが難しく、カード作製後特にほぼ5℃以下の低温環境下においては接着力が低下してきて、その環境下で消去印字装置によって加熱と加圧を繰り返すと、カード基材と接着層面の間で特にカードのエッジ部分から剥離が発生し、その結果熱可逆性記録媒体としての消去と印字に不良が発生し、本来の繰り返し使用能力を発揮できなくなり、使用回数を重ねるにしたがって剥がれが広がり、カードとしての機能が消失していまうという問題がある。
なお、カード作製後の、低温環境下における熱可逆性記録媒体とカード基材との接着性を低温接着性という。
【0012】
一方、前述の接着層を設けてなる熱可逆性記録媒体の中には、接着材料として低温環境下での接着強度を維持できる程に接着力の強いものもある。
一般的に、このような熱可逆性記録媒体は、製造後カード基材に貼りつける工程前時点では、ロール状に巻いた形態かあるいは所定の大きさに裁断し多数枚を重ねて包装して、場合によってはそれ自体商品として扱われるものである。
したがって、熱可逆性記録媒体同士が重ね置かれて熱と圧力が加わる状態にあるために、接着力の強いものは、逆に記録層側の表面層に接着層が貼り付き易く、いわゆるブロッキングが発生してしまい、このような現象が発生すると熱可逆性記録媒体として使用することができなくなってしまう問題がある。
【0013】
なお、熱可逆性記録媒体に関するものではないが、低温接着性と耐ブロッキング性を向上させるために、ガラス転移温度が−22℃以上0℃以下で、融点が100℃以上130℃以下のポリエステル系ホットメルト樹脂を使用し、場合によってポリオレフィン系重合体を併用して形成した接着層が設けられた積層フイルムについての提案がある(例えば、特許文献7参照。)。
しかしながら、該積層フイルムを構成する接着層を熱可逆性記録媒体に用い、カード基材と貼り合わせてカードを作製しても、作製したカードは低温接着性も耐ブロッキング性も不充分なものである。
この理由は、ホットメルト樹脂は一般に薄膜化することが難しく、薄膜化ができてもカード基材の材質に関係なく希望する接着力が得られることはできず、例えば、カード基材がアクリル系樹脂シートの場合には、ポリエステル系ホットメルト樹脂とのSP値の差が大きいために、接着力が低下するものと推察される。
【0014】
本発明者等の調査によると、接着層が設けられた熱可逆性記録媒体の技術分野において、このような低温接着性およびブロッキング性を問題として取り上げられ記載された公知の文献は皆無であることを確認した。
【0015】
【特許文献1】
特開平5−124360号公報
【特許文献2】
特開平6−210954号公報
【特許文献3】
特開2000−94866号公報(請求項3、段落[0029]および[0030]、実施例2段落[0050]〜[0053])
【特許文献4】
特開2001−63228号公報(請求項1、段落[0020]および[0021]、第6欄第26〜34頁)
【特許文献5】
特開2002−103654号公報(請求項7、段落[0019]、[0027]、[0031])
【特許文献6】
特開2001−341427号公報(請求項3、段落[0034]、[0035])
【特許文献7】
特開2001−279226号公報(請求項2、請求項4、段落[0010]〜[0014])
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、カード基材の材質を問わず同じような接着性能を有し、かつブロッキング性のない、接着層が設けられた熱可逆性記録媒体を提供することである。
また、本発明の課題は、低温環境下においても剥離が起きず、かつ繰り返し使用耐久性に優れた熱可逆性記録カードを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題は、本発明の(1)「支持体上に熱により色調が可逆的に変化する熱可逆性記録層を設け、支持体の反対面に接着層を有する熱可逆性記録媒体において、該接着層は少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成されたものであり、前記接着層を構成する2種類の樹脂のガラス転移点(Tg)が−30〜10℃の樹脂と30〜80℃の樹脂であり、かつガラス転移点(Tg)の差が30℃以上であることを特徴とする熱可逆性記録媒体」、(2)「前記−30〜10℃のガラス転移点(Tg)を有する樹脂の含有量が50%以上95%以下であることを特徴とする前記第(1)項に記載の熱可逆性記録媒体」、(3)「前記−30〜10℃のガラス転移点(Tg)を有する樹脂が飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の熱可逆性記録媒体」、(4)「前記接着層の樹脂が水酸基を持つことを特徴とする前記第(1)項乃至(3)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体」、(5)「前記接着層を構成する樹脂が架橋されていることを特徴とする(1)項乃至(4)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体」、(6)「前記接着層を構成する樹脂が水酸基を有するものであって、架橋剤のイソシアネート基と樹脂の水酸基の比(NCO/OH)が0.3〜3.5であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体」、(7)「前記接着層にフィラーやワックスを添加したことを特徴とする前記第(1)項乃至第(6)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体」、(8)「ロール状態に巻かれてなることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体」によって解決される。
また、上記課題は、本発明の(9)「前記第(1)項乃至第(7)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体とカード基材とが一体化されてなることを特徴とする熱可逆性記録カード」、(10)「熱可逆性記録媒体の接着層とカード基材とが貼り合わせたものであることを特徴とする前記第(9)項に記載の熱可逆性記録カード」、(11)「熱可逆性記録媒体の熱可逆記録層からなる情報表示部と情報記憶部とを有することを特徴とする前記第(9)項又は第(10)項に記載の熱可逆性記録カード」、(12)「前記情報記憶部が、磁気記録層、IC、光メモリから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記第(11)項に記載の熱可逆性記録カード」によって解決される。
また、上記課題は、本発明の(13)「前記第(1)項乃至第(12)項の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体又は熱可逆性記録カードの熱可逆記録層を加熱することによって、表示画像の形成及び/又は表示画像の消去方法」、(14)「サーマルヘッド又はレーザーを用いて加熱することを特徴とする前記第(13)項に記載の表示画像の形成及び/又は表示画像の消去方法」、(15)「サーマルヘッド、セラミックヒーター、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロックおよびレーザーの少なくとも1種を用いて加熱することを特徴とする前記第(13)項又は第(14)項に記載の表示画像の消去方法」によって解決される。
【0018】
以下、本発明の概要を説明する。
本発明者等は、接着層として少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成されたものを用いると、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
さらに、混合する2種類の樹脂のガラス転移点、樹脂の配合比および/または接着剤中の樹脂のイソシアネート基と水酸基の比等の各種条件を特定範囲に調整して作製すると、より好ましい結果が得られることを確認した。
【0019】
すなわち、本発明は、支持体上に熱により色調が可逆的に変化する熱可逆性記録層を設け、支持体の反対面に接着層を有する熱可逆性記録媒体であって、該接着層は少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成されるものである。
この2種類の樹脂としてガラス転移点(Tg)の差は大きいほど好ましく、特に30℃以上の差がある2種類の樹脂を組み合わせてを用いると、本発明の課題解決に特に有効である。
【0020】
さらに、この2種類の樹脂のガラス転移点(Tg)が、−30〜10℃のものと30〜80℃のものを用いるとより優れた結果が得られる。
また、より優れた結果をもたらす条件として、該接着層を構成する樹脂の中でガラス転移点(Tg)が−30〜10℃である樹脂が50%以上95%以下であること、接着層中の樹脂のイソシアネート基と水酸基の比(NCO/OH)が0.3〜3.5であること、フィラーやワックスを添加すること等を挙げることができる。
【0021】
このような本発明の熱可逆性記録媒体は、その接着層とカード基材とを重ね合わせて、熱圧着して熱可逆性記録カードを作製するのに用いられる。
本発明の熱可逆性記録カードとしては、先述のように、情報記録表示タイプと情報表示タイプのものが包含される。
熱可逆性記録カードを構成する熱可逆性記録層部分が、画像表示部として情報を可視的に表示しかつ書き換え可能とする機能を担うものである。
情報記録表示タイプのカードは、熱可逆性記録層が担う上記機能と、情報を記憶し書き換え可能とする機能の双方を合わせ持つものであるが、この情報記憶部を設けるには、熱可逆性記録媒体を構成する薄手の支持体に磁気記録層を設けるやり方と、厚手のカード基材自体にICチップやアンテナコイル等の情報記憶手段を内蔵させるやり方とがある。
いずれにせよ、情報記録表示タイプのカードは、情報記憶部に記憶された情報を熱可逆性表示部に表示することによって、特別な装置がなくても情報を確認することができるものであるため、利便性が高いものである。
本発明の熱可逆性記録カードには、熱可逆性記録媒体をカード基材の全面に貼りつけたものと、部分的に貼りつけるものとが包含される。
【0022】
また、本発明の熱可逆性記録カードとしては、熱可逆性記録媒体をカード基材に貼りつけたものに、エンボス加工を施したものが包含される。
エンボス加工によって形成される「浮き出し表示」は、特にクレジットカードと銀行カードなどについては、ユーザーおよび各種関連業者からの要求が高く、現在社会においてはなくてはならないものになってきている。
この「浮き出し表示」としては、主にカード番号、有効期限、所有者氏名などを挙げることができ、例えば店における決済時に複写伝票にカードを挟みこみ、ローラによって「浮き出し表示」を写し取る機能を有し、国内外で普及しているものである。
【0023】
以下、本発明の熱可逆性記録媒体について詳しく説明する。
接着層は、少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成される。
このような条件の2種類の樹脂を用いることによって機能分離し、一方の樹脂に接着力を高める機能を、他方の樹脂に耐ブロッキング性を高める機能を持たせ、さらに架橋剤を入れて加熱すると樹脂が架橋して分子量が大きくなって接着層の接着力が常温ばかりでなく低温環境下でも高まるものと考えられる。
【0024】
ガラス転移点が低い樹脂は、貼り合わせ用カード基材の材質を問わず同様なレベルの接着性を発揮させるが、常温環境下でタック性が発現してブロッキングの発生要因となり、この問題を解決するために本発明においては、カード基材に対する接着力が低いが、常温環境でのタック性が少ないガラス転移点の高い樹脂を併用した。
【0025】
しかしながら、温度環境条件を問わず繰り返し使用される熱可逆性記録カードの場合においては、低温環境下においても剥離が起こらないような接着力が必要とされ、その接着強度の低下を抑えるには、2種の樹脂を組み合わせて用いるだけでは不充分であり、本発明においては、イソシアネート基を持つ架橋剤を配合することによって、低温環境下における接着強度の低下の発生を防止することが可能としたものである。
これは、架橋剤を用いて樹脂同士を程良い架橋状態にして、樹脂の分子量が大きくなって接着力が向上することになって、低温環境下における接着力を維持することができるものと推察される。
すなわち、長い分子同士が架橋剤によって繋がると、接着剤樹脂の見かけの分子量が増え、さらに長い分子鎖が絡み合い、また膜強度も向上して、接着力が上昇することが考えられ、また、架橋によって現れるウレタン結合が基材と分子間相互作用を起こすことで接着力が向上するものとも考えられ、さらに樹脂同士間を架橋剤が橋かけすることによって樹脂同士の間に柔軟性を発現させて、接着力の向上に繋がることが考えられ、また架橋剤自身が可塑剤的な役割を与え、ラミネート後に逆に硬化して膜を硬くする効果があるものとも推察される。
さらにまた、一般的に樹脂自体は本来、溶剤に溶解して塗工すると、薄膜化することができるが、反面大きな分子量にすることはできないものであり、そのために架橋剤を加えると、塗工後に分子量を大きくすることができて、上記のような効果を得ることができるものと考えられる。
【0026】
接着層を構成する樹脂が水酸基を有するものを用いる場合、架橋剤のイソシアネート基と樹脂の水酸基の比(NCO/OH)が0.3〜3.5であることが、本発明における接着層が持つ性能を発揮させるために効果的である。
このイソシアネート基と水酸基の比(NCO/OH)が、0.3未満の場合には架橋が充分行なわれなくなる傾向がでてきて、そのような場合には低温環境下での接着力の低下を抑えることできず、架橋剤を添加する効果が見られない。
また、3.5を越えた場合には、樹脂膜の硬化促進が高くなる傾向になり、塗膜全体の軟化点が上昇してラミネートが不可能となってしまう場合があり、好ましくない。
このイソシアネート基と水酸基の比としては、好ましくは0.5〜2.5であり、更に好ましくは0.7〜2.0である。
【0027】
また、2種類の樹脂のガラス転移点の差が30℃以上である場合、低温接着性と耐ブロッキング性を両立させるのに特に有効な条件である。
ガラス転移点の差が、30℃未満になると双方の効果が低下してきたり、接着力はあるがブロッキングし易すくなったり、ブロッキングしにくいが接着力が低いというものになるように、低温環境下での繰り返し耐久性とブロッキング性の両立が低減する傾向がある。
この2種類の樹脂のガラス転移点の差としては、より好ましくは35℃以上であり、更に好ましくは45℃以上である。
【0028】
また、接着層を構成する2種類の樹脂としては、ガラス転移点(Tg)が−30〜10℃の樹脂と30〜80℃の樹脂を用いることが好ましい。
ガラス転移点が−30〜10℃である樹脂を用いると、不特定多種類の貼り合わせ用カード基材に同様なレベルの接着性を持たせるのに有効であり、特に塩化ビニルシート(PVC)、非晶性コポリエステル(PET−G)シートおよびアクリル系樹脂シートに対しては、その効果が顕著に現れるため有効である。
しかし、常温環境下では、このガラス転移点が−30〜10℃である樹脂は、タック性を発現する場合があり、そのような場合には熱可逆性記録媒体の間でブロッキングが発生することになる。
【0029】
この可能性ある問題に対処するために、ガラス転移点が30〜80℃のように高い樹脂を組み合わせて用いると、ガラス転移点の高い樹脂は低い樹脂よりも、カード基材に対する接着力が低くなる傾向があるが、逆に常温環境でのタック性がなくなりブロッキングが抑えられることとなるため、好ましい。
したがって、ガラス転移点の低い樹脂と高い樹脂とを組み合わせることによって、より高い接着性と耐ブロッキング性を持たせることができる。
なお、ガラス転移点の低い樹脂と高い樹脂とは、1種のみならず2種以上用いることができる。
【0030】
ガラス転移点の低い樹脂については、ガラス転移点が−30℃未満のものでは、常温でのタック性が非常に強くなり耐ブロッキング性が非常に悪くなる傾向があり、ガラス転移点が10℃を越えたものでは、接着力が低下してしまう傾向がある。
ガラス転移点の低い樹脂として、より好ましくは−20〜10℃であり、更に好ましくは−15〜10℃である。
【0031】
ガラス転移点の高い樹脂については、ガラス転移点が30℃未満のものでは、常温でのタック性が強くなり、ブロッキング性が強くなる傾向があり、ガラス転移点の低い樹脂と混合する効果を消失してしまい、また、80℃を越えたものでは、接着力が低下する傾向がでてきて、樹脂膜の軟化温度が高くなるためにラミネート温度が高くなってしまい、充分な接着力が得られなくなる傾向がある
ガラス転移点の高い樹脂として、より好ましくは30〜75℃であり、更に好ましくは50〜70℃である。
【0032】
さらに、接着層を構成する樹脂の中でガラス転移点の低い樹脂を、全体の樹脂組成に対して50%以上95%以下用いることが好ましい。
50%未満の場合、特に低温環境での繰り返し耐久性が大きく低下する傾向がある。また、95%を越えると、耐ブロッキング性が低くなる傾向がある。
このガラス転移点の低い樹脂の比率は、より好ましくは60〜90%であり、更に好ましくは70〜85%である。
【0033】
本発明における接着層にフィラーやワックスを添加すると、耐ブロッキング性をより向上させることができて好ましい。
特に、耐ブロッキング性の観点から考えると、フィラーやワックスが接着層表面に現れるように作製すると、接着層に接する熱下逆記録媒体の表面層に接着層が貼り付きにくくなるため好ましい。
ただし、添加量が多くなりすぎると接着力が低下するという問題が発生するため、フィラーやワックスは接着層の樹脂成分に対して30%以下であることが望ましく、好ましくは20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。
【0034】
さらに本発明を詳しく説明する。
本発明の熱可逆性記録媒体を構成する接着層に用いる樹脂材料としては、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、少なくともガラス転移点が異なる2種類のものが使用され、特に熱可逆性記録媒体の支持体上に塗布後固定しやすく、しかもカード基材との接着性が高く貼り付け後低温環境下でも剥離しない接着層が形成されるように、樹脂を選択することが重要である。
また特に、例えばポリ塩化ビニル系樹脂、PET−G、アクリル系樹脂およびとPETフィルム等の、カード基材として従来から用いられているものに対しては、接着力の点から、接着層を構成する樹脂としてポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂が好ましく、特にポリエステル系樹脂が好ましい。
さらにまた、本発明においては、末端およびまたは側鎖に水酸基を持っている樹脂を用いることが望ましい。
【0036】
本発明において、接着層に添加される架橋剤としてイソシアネート基を有するものが用いられるが、その具体例としてはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)等、およびこれらのトリメチロールプロパンなどによるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ及びブロック化イソシネート類等が挙げられる。
中でも、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく、アダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましく用いられる。
【0037】
さらに、耐ブロッキング性の向上剤として、例えばポリエチレンワックス、カルバナワックス並びにシリコーンワックス等のワックス類、及びシリカ、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、シリコーン樹脂微粒子及びアクリル粒子等のフィラー類を用いることができる。
また、可塑剤や難燃剤等の従来公知のものを必要に応じて添加剤を添加しても良い。
【0038】
接着層の膜厚は、特に限定的でないが、1〜20μmであることが好ましい。
1μm未満と薄過ぎると、充分な接着力が得ることができず、また20μmを越えると、カード基材とラミネートする際に、記録媒体の側面から接着剤がはみ出してしまうことがあり、そうなると記録媒体表面を汚してしまい消去印字に不良を起こしてしまう。
さらに、好ましくは2〜15μmであり、特に好ましくは5〜15μmである。
また、接着層と支持体の間には接着性を向上させるための易接着層や中間層、クッション層等を設けても良い。また、支持体上を表面処理を施しても良い。
【0039】
熱可逆性記録媒体を構成する支持体としては、耐熱性や引っ張り強度等に優れた強靭なプラスチックフィルムが好ましく適用できる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。その中でもPETフィルムを用いることが好ましい。
【0040】
カード基材としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、PETフィルムおよびポリカーボネート樹脂等の単独、あるいは混合されたシートが挙げられる。また、これらの基材をラミネートし、その後表面をアクリル樹脂等で処理したものでも良い。
【0041】
次に、熱可逆性記録媒体の接着層を形成するやり方について説明する。
熱可逆性記録媒体の支持体上に接着層を設ける方法としては、樹脂等を溶剤に溶解して支持体に塗布する溶剤コート法と溶剤を介在させない無溶媒コート法がある。
しかしながら、本発明の特徴である少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成されている接着層の膜厚を薄くし、塗布後に架橋させて分子量を増やす方法を行なうためには、前者の溶媒に溶解して塗布する溶媒コート法で行なうことが好ましい。
溶媒の具体例としては、水、アルコール類、ケトン類、アミド類、エーテル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0042】
本発明において接着層を設けるために用いる塗工方法については、特に制限はなく、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の塗工方法や、版印刷法、グラビア法などの凹版印刷法、オフセット方式の平版印刷法、あるいはスクリーン製版を用いた孔版印刷法等の公知の印刷方法を用いることができる。
【0043】
接着層は、支持体上に塗布後、乾燥し次いで硬化処理を行なって形成される。
この硬化処理は、製造後の接着層が、常温ではブロッキングを起さないように接着性を発現せず、加熱によって初めて接着性を発現して熱圧着によってカード基材に接着し貼りつき、しかも貼りついた後は低温環境下においても剥離せずに繰り返し使用耐久性能を発揮できるものとするために、重要な工程である。
【0044】
硬化処理は、恒温槽等を用いて行なうが、比較的高温で短時間でもよく、また、比較的低温で長時間かけて熱処理してもよい。
架橋反応の具体的な条件としては、反応性の点から20〜130℃程度の温度条件で1分〜240時間程度加温することが好ましい。
また、架橋が充分完了するまで時間をかけるのは生産性の点から言えば、好ましくなく、そのために乾燥過程とは別に架橋工程を設けてもよい。
架橋工程の条件としては、20〜130℃の温度条件で1分〜240時間程度加温することが好ましい。
また、接着層塗布後、ロール状に巻き取る際に、セパレーターを設けて架橋工程を行なっても良い。
【0045】
本発明の熱可逆性記録媒体は、ロール状、シート状、リボン状に加工され、それらを用いてその使用用途に応じた形でラミネート加工され、具体的にはシート状、カード状に加工される。
カード状に加工する際に用いられる基材としては、薄手のものも厚手のものも、カードの種類によって用いられる。
カードの種類には、プリペイドカードやポイントカード、さらには定期券等の交通アプリケーション、工程管理用のFR−ID、クレジットカードなどへの応用が挙げられ、A4サイズなど一般文書サイズに加工されたシート状のものは、印字/消去装置を用いることにより、試し印字はもちろんのこと、回覧文書や会議資料などに広く用いることができる。
【0046】
本発明の熱可逆性記録媒体をカード基材にラミネートして貼り合せるやり方について、図1および図2に基づいて説明する。
ラミネートするために熱可逆性記録媒体(3)の接着層にカード基材シート(4)を積層して両者を鏡面板と対向するように載置した後、2枚の鏡面板(2)で挟み込み、さらに2枚の熱板(1)で挟み、熱圧着する。熱圧着は、通常熱プレス機等を用いて行なわれる。
また、図2の例で説明すると、厚さ250μmの白色ポリ塩化ビニル樹脂シートを2枚積層したコアシート(6)と、このコアシート(6)の表裏面に厚さ100μmの透明ポリ塩化ビニル樹脂シートをオーバーシート(7)として積層したもの(4)、あるいは例えば厚さ250μmの白色PET−Gシートを2枚積層したコアシート(6)と、このコアシートの表裏面に厚さ100μmの透明PET−Gをオーバーシート(7)として積層したものなどが挙げられる。
【0047】
熱圧着温度としては、80〜160℃であることが好ましく、より好ましくは90〜150℃、更に好ましくは100〜140℃である。
圧力としては、5〜50kgf/cm2であることが好ましく、より好ましくは10〜30kgf/cm2である。
【0048】
温度と圧力は、使用する貼り合わせ基材によって設定される。
なお、加熱圧着時の加熱温度または圧力が、上記範囲よりも低い場合にはカード基材同士の接着やカード基材と熱可逆性感熱記録媒体との接着性が充分に得ることができずに剥がれが発生する。
また、上記範囲よりも高い場合には、貼り合わせ基材が溶融し変形するか、あるいは熱可逆性記録媒体への熱と圧力の負荷がかかって、印字消去特性に悪い影響を及ぼしてしまう。
この熱圧着は、上記した条件下に、例えば1時間未満、好ましくは1〜50分間程度保持した状態で行なうことができる。
【0049】
本発明の熱可逆性記録媒体に用いられる「色調が可逆的に変化する感熱層」とは、温度変化によって目に見える変化を可逆的に起こす材料である。
目に見える変化は色の状態の変化と形状の変化に分けられるが、本発明では主に色の状態の変化を起こす材料を使用する。色の状態の変化には、透過率、反射率、吸収波長、散乱度などの変化があり、実際の熱可逆記録材料はこれらの変化の組み合わせで表示を行なっている。
より具体的には、熱により透明度や色調が可逆的に変化するものならばなんでも良いが、例えば常温より高い第一の特定温度で第一の色の状態となり、第一の特定温度よりも高い第二の特定温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となるもの、等が挙げられる。特に第一の特定温度と第二の特定温度で色の状態が変化するものが好適に用いられる。
【0050】
これらの例としては、第一の特定温度で透明状態となり、第二の特定温度で白濁状態となるもの(特開昭55−154198号公報)、第二の特定温度で発色し、第一の特定温度で消色するもの(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報等)、第一の特定温度で白濁状態となり、第二の特定温度で透明状態となるもの(特開平3−169590号公報)、第一の特定温度で黒、赤、青等に発色し、第二の特定温度で消色するもの(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報)等が挙げられる。この中で特に樹脂母材中に高級脂肪酸のような有機低分子物質を分散した系とロイコ染料と長鎖アルキル顕色剤を用いた系が好ましい。
【0051】
図3は、ロイコ染料と長鎖アルキル顕色剤を用いた系の熱可逆性記録媒体の基本的な発色/消色プロセスを示したものである。
消色した状態から加熱し、可逆発色成分が溶融する温度T1以上にいったん加熱したのち急冷するとロイコ染料が発色状態で固定され、発色状態からT1より低温側にある消色温度範囲(T2〜T1)に加熱するとロイコ染料が消色し、元の状態に戻せる。
【0052】
ロイコ染料としては、この種の熱可逆性記録媒体に用いられる化合物を1種または2種以上用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。
【0053】
長鎖アルキル顕色剤としては、代表例として、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報などに記載の記録層である。ここで用いる顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させる顕色能をもつ構造、たとえばフェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基などと、分子間の凝集力を制御する構造、たとえば長鎖炭化水素基が連結した構造を一つ以上もつ化合物である。連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していても良く、また長鎖炭化水素基中にも同様の連結基および/または芳香族基が含まれていても良い。このような可逆性顕色剤の具体例はたとえば特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報に記載に示され、1種または2種以上を混合して用いても良い。
【0054】
熱可逆性記録層には、必要に応じて塗布特性や発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。
これらの添加剤には、たとえば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤などがある。
熱可逆性記録層は、ロイコ染料、顕色剤、種々の添加剤をバインダー樹脂とともに形成する。このとき用いられる樹脂は支持体上にこれらの材料を結着できれば良く、従来公知の樹脂が1種または2種以上を混合して用いられる。
なかでも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱や紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化型の樹脂、例えばアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが特に好ましく用いられる。しかし、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。また、架橋をさせた場合、記録層のゲル分率は30%以上であることが好ましい。これよりも低いと架橋状態が充分でなく耐久性に劣る。この値は50%以上であると更に好ましく、特に好ましくは70%以上である。記録層中の発色成分と樹脂の割合は、発色成分1に対して0.1から10が好ましく、これより少ないと記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。また、本発明におけるバインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。すなわち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶け出し、溶質中には残らなくなるためである。
【0055】
硬化剤は、特に限定されるものではないが、好ましくはイソシアネート系硬化剤が用いられる。
イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)等、およびこれらのトリメチロールプロパンなどによるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ及びブロック化イソシネート類等が挙げられる。中でも特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく、このアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましく用いられる。
ただし、硬化剤は添加した全量が架橋反応をしていても、していなくても良い。すなわち、未反応硬化剤が存在していても良い。
この種の架橋反応は経時的に進行するため、未反応の硬化剤が存在していることは架橋反応が全く進行していないことを示すのではなく、未反応の硬化剤が検出されることにより架橋状態にある樹脂が存在することが示唆されるからである。また更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0056】
熱可逆性記録層は、ロイコ染料、顕色剤、種々の添加剤、バインダー樹脂ならびに塗液溶媒よりなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液を用いて形成する。塗液調製に用いられる溶媒の具体例としてはアルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を例示することができるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0057】
塗液調製はペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等公知の塗液分散装置を用いて行なうことができる。また、上記塗液分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散しても良いし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせても良い。更に加熱溶解して急冷または徐冷によって析出させても良い。
【0058】
塗工方法については特に制限はなく、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法を用いることができる。
【0059】
保護層は、上記記載の溶媒、バインダー樹脂とともに有機/無機フィラー、紫外線吸収剤、滑剤、着色顔料などを用いることができ、上記記載の分散装置、塗工方法を用いて塗膜を作製することができる。
【0060】
記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。また、記録層の上に設置される保護層、中間層には、酸素透過性の低い樹脂を用いることにより記録層中の発色剤および顕色剤の酸化を防止または低減することが可能になる。
中間層は主に樹脂からなり、必要に応じてフィラーを含んでいてもよい。また、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
中間層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。また、中間層中のフィラーの含有量は体積分率で1〜95%、より好ましくは5〜75%である。中間層中に前記保護層中に用いられた有機紫外線吸収剤を含有しても良く、その含有量はバインダー100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記記録層、保護層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0061】
また、発色感度の向上、接着性の向上のためにアンダー層を設けても良い。また、記録層と保護層との間に中間層を設ける場合には、その層中には、上記記載の溶媒、バインダー樹脂とともに、有機/無機フィラー、紫外線吸収剤、滑剤、着色顔料などを用いることができ、上記記載の分散装置、塗工方法を用いて塗膜を作製することができる。
【0062】
無機フィラーの具体例としては、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられる。
また、有機フィラーの具体例としては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げらる。
紫外線吸収剤の具体例としては、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などを有する化合物が挙げられる。
滑剤の具体例としては、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類などが挙げられる。ただし本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
また、レーザー記録が可能にするためレーザー光を吸収して光を熱に変換する光熱変換層を設けても良い。
【0063】
熱可逆性記録層には、図3に示すプロセスで発色・消色する。初期の消色状態(A)を加熱すると温度T1以上でロイコ染料と顕色剤が溶融混合して発色し(B)、この状態を急冷すると発色状態が固定される。
発色状態(C)を加熱すると、発色温度より低い温度T2で消色し、冷却すれば初期と同様の消色状態となる。
このように記録層は加熱温度および加熱後の冷却速度の制御によって記録消去ができる。
【0064】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱したのち急冷されるようにすればよい。具体的には、例えばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると感熱記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。
一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラー、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。
また、感熱記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。もちろん、熱ローラー、熱スタンプによって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0065】
本発明の熱可逆性記録媒体は、非可逆の感熱記録層を併用しても良く、このときそれぞれの記録層の発色色調は同じでも異なっても良い。また、本発明の熱可逆性記録媒体の一部分もしくは全面に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、またはインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けても良く、さらに着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けても良い。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
・塗布する支持体
25μm厚の透明なポリエステルフィルム(帝人デュポン社製、テトロンフィルムHPE)
【0067】
・記録層
(記録層液の調整)
1)顕色剤:下記構造の顕色剤 3部
【0068】
【化1】
2)ジアルキル尿素(日本化成社製、ハクリーンSB) 1部
3)アクリルポリオール50%溶液(三菱レイヨン社製、LR327) 9部
4)メチルエチルケトン 70部
上記組成物を、ボールミルを用いて平均粒径約1μmまでなるように粉砕分散した。
5)2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン 1部
6)イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 3部
顕色剤を粉砕分散した分散液に上記組成物を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
(熱可逆性記録媒体の作成)
上記組成の記録層塗布液を光熱変換層、隠蔽層が塗布されているフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃2分で乾燥後、60℃24時間キュアーを行なって膜厚約10g/m2の記録層を設けた。
【0069】
・中間層
(中間層液の調整)
1)アクリルポリオール樹脂50%溶液(三菱レーヨン社製、LR327)3部
2)酸化亜鉛微粒子30%分散液(住友セメント社製、ZS303) 7部
3)イソシアネート(日本ポリウレタン社製、コロネートHL) 1.5部
4)メチルエチルケトン 7部
上記組成物を加え良く攪拌し中間層塗布液を調整した。
前記記録層塗布済みフィルム上に、中間層塗布液をワイヤーバーにて塗布し90℃1分の加熱乾燥後、60℃48時間加熱し、膜厚約1μmの塗布膜を作成した。
【0070】
・保護層
(保護層液の調整)
1)ペンタエリスルトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、KAYARAD DPHA) 3部
2)ウレタンアクリレートオリゴマー
(根上工業社製、アートレジンUN−3320HA) 3部
3)ジペンタエリスリトールカプロラクトンのアクリル酸エステル
(日本化薬社製、KAYARADDPCA−120) 3部
4)シリカ(水澤化学工業社製、P−526) 1部
5)光重合開始剤(日本チバガイギー社製、イルガキュア184) 0.5部
6)イソプロピルアルコール 11部
上記組成物を加え良く攪拌して保護層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層塗布済みフィルム上に、保護層塗布液をワイヤーバーにて塗布し加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させ、膜厚約2.5μmの塗布膜を作成した。
【0071】
・接着層
(接着層液の調整)
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 6部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−178N) 0.55部
(NCO/OH=0.94)
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
6)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0072】
実施例2
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)ポリエステルポリウレタン樹脂
(東洋紡績社製、UR8200:Tg=73℃) 6部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(日本ポリウレタン社製、コロネートHL)
(NCO/OH=1.7) 2部
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
6)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0073】
実施例3
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東洋紡績社製、MD1930:Tg=−10℃) 18部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−2353A25:Tg=35℃) 12部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、WD−725)
(NCO/OH=2.0) 1.5部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0074】
実施例4
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 18部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 12部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−178N)
(NCO/OH=1.3) 0.75部
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0075】
実施例5
25μm厚の透明なポリエステルフィルム(帝人デュポン社製、テトロンフィルムHPE)に約400ÅのAlを真空蒸着して光反射層を設けた。その上に
塩化ビニル−酢酸ビニル−リン酸エステル共重合体 10部
(電気化学工業社製、デンカビニール♯1000P)
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
よりなる溶液を塗布、加熱乾燥し、約0.5μm厚の接着層を設けた。
次に、塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン社製、M110)26部をメチルエチルケトン210部に溶解した樹脂溶解液中に
直鎖炭化水素含有化合物(A);下記構造式(1)の材料 3部
直鎖炭化水素含有化合物(B);
ベヘン酸ドコシル(ミヨシ油脂社試作品) 7部
【0076】
【化2】
構造式(1)
を加え、ガラス瓶中に直径2mmのセラミックビーズを入れて、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)を用い48時間分散し、均一な分散液を作成した。その分散液にイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、コロネート2298−90T)4部を加え記録層液を作成し、前記光反射層を有するPETフィルムの接着層上に加熱乾燥した後、65℃24時間加熱し約10μm厚の記録層を設けた。
【0077】
この記録層上に、
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂の75%酢酸ブチル溶液 10部
(大日本インキ化学工業社製、ユニディックC7−157)
イソプロピルアルコール 10部
炭酸カルシウム 3部
よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後、80w/cmの紫外線ランプで架橋させ、約3μm厚の保護層膜を作成した。
【0078】
・接着層
(接着層液の調整)
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 6部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−170N)
(NCO/OH=1.3) 1部
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
6)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0079】
実施例6
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 6部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−178N)
(NCO/OH=0.6) 0.35部
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
6)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0080】
実施例7
ベースフィルム、記録層、中間層および保護層は、実施例1と同じものを、接着層については下記の組成からなるもの用いて、熱可逆性記録媒体を作製した。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東洋紡績社製、MD1985:Tg=−20℃) 18部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−2353A25:Tg=35℃) 12部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、WD−725) 1.5部
(NCO/OH=2.0)
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記、記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に、該接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0081】
実施例8
ベースフィルム、記録層、中間層および保護層は、実施例1と同じものを、接着層については下記の組成からなるもの用いて、熱可逆性記録媒体を作製した。
・接着層
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 6部
3)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−178N) 0.9部
(NCO/OH=1.55)
4)トルエン 56部
5)メチルエチルケトン 14部
6)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
7)シリコーン樹脂微粒子
(東芝シリコーン社製、トスパール3120) 3部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記、記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0082】
比較例1
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
(接着層液の調整)
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 30部
2)トルエン 56部
3)メチルエチルケトン 14部
4)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0083】
比較例2
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
(接着層液の調整)
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 30部
2)トルエン 56部
3)メチルエチルケトン 14部
4)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0084】
比較例3
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
(接着層液の調整)
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 30部
2)HDI系イソシアネート架橋剤
(三井武田ケミカル社製、D−178N) 0.55部
(NCO/OH=0.94)
3)トルエン 56部
4)メチルエチルケトン 14部
5)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0085】
比較例4
ベースフィルム、記録層、中間層、保護層は実施例1と同様。
・接着層
<接着層液の調整>
1)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−355S30:Tg=5.5℃) 24部
2)飽和ポリエステル樹脂
(東亞合成社製、PES−360S30:Tg=65℃) 6部
3)トルエン 56部
4)メチルエチルケトン 14部
5)多価アルコール脂肪酸エステル
(理研ビタミン社製、SL−02) 0.6部
上記組成物を加えて良く攪拌して接着層塗布液を作成した。
前記、記録層、中間層、保護層塗布済みフィルムの反対面に接着層塗布液をワイヤーバーにて塗布し100℃2分の加熱乾燥後50℃48時間加熱し膜厚約10μmの塗布膜を作成した。
【0086】
<熱可逆性記録カードの作成>
このようにして作成した熱可逆性記録媒体と透明な塩化ビニルとの2枚のオーバーシートの間に、白色の塩化ビニルからなるコアシート2枚を挟みこんだサンプルを、圧力15kg/cm2、温度130℃、時間20分でラミネートして塩化ビニルからなる熱可逆性記録カードを作成した。
さらに、熱可逆性記録媒体と透明な非晶性コポリエステルからなるオーバーシート2枚の間に白色の非晶性コポリエステルからなるコアシート2枚を挟みこんだサンプルを圧力15kg/cm2、温度110℃、時間20分でラミネートして非晶性コポリエステルからなる熱可逆性記録カードを作成した。
またさらに、塩化ビニルシートをラミネートしてその表面がアクリル系樹脂で処理された基材に熱可逆性記録媒体を圧力15kg/cm2、温度130℃、時間20分でラミネートして塩化ビニルからなる熱可逆性記録カードを作成した。
こうしてラミネートして作成したサンプルは、カードサイズに加工する。
【0087】
評価1(低温環境(5℃)における繰返し耐久性)
上記で作成したカードとカードリーダーライターR28000(九州松下社製)を5℃の環境の恒温恒湿槽へ入れて充分に調温した後に、印字エネルギー0.75mJ/dot、消去温度136℃設定にて消去と印字を繰り返して行ない100回実施した。
評価結果を以下の様に判断した。
○:繰返し消去印字を行なったがカードに剥がれが発生せず印字部、消去部ともに明瞭に判断できる。
△:繰返し消去印字を行なうと印字部、消去部の一部に剥がれによる不良部分が観察される。
×:繰返し消去印字を行なうとカードエッジ部分から剥がれが生じ、100回繰返し使用することができない。
【0088】
評価2(低温環境(5℃)における接着力)
実施例、比較例で作成した薄いフィルム状の熱可逆性記録媒体を10mm巾のテープ状にカットして、上記貼り合せに使用した塩化ビニルシート(太平化学社製:M1063)、非晶性コポリエステルシート(三菱樹脂社製:PG−CHI)、アクリル(アクリル系樹脂で処理された塩化ビニル基材)に対して20kg/cm2、120℃、1分にてラミネート試験機(ユニーク社製)にて貼り合せた後、引っ張り試験機(テスター産業)と共に5℃の環境の恒温恒湿槽へ入れて充分に調温する。その後、剥離速度300mm/minで180度剥離を行なった。同様に常温環境(22℃)でも測定を行なった。
そのときの接着強度を以下の様に判断した。
○:接着力が500g/cm以上又は基材破断するため充分な接着力がある。
△:接着力が250g/cm以上である。
×:接着力が250g/cm未満である。
【0089】
評価3(媒体表面との耐ブロッキング性の評価)
上記で作成した熱可逆性記録媒体の記録層面側と接着層を重ねて、50℃環境で3kg/cm2の荷重をかけて24時間保持した後に取り出し、両者を剥がして行なった。そのときの耐ブロッキング性を以下の様に判断した。
◎:表面層と接着層に貼り付きが全くない。
○:表面層と接着層に多少の貼り付きがあるが問題ない。
△:表面層と接着層の貼り付きが強い。
×:表面層が接着層に貼り付き剥がれが生じる。
【0090】
【表1】
【0091】
表1より、低温環境下において、塩化ビニル、非晶性コポリエステル、アクリル系表面層の各貼り合せ基材について消去と印字を繰り返す耐久性試験を行なっても剥離が発生せず、良好な印字と消去を繰り返すことができる。また、繰返し耐久性と熱可逆性記録媒体の記録層面側の表面層と接着層との耐ブロッキング性を両立することができる。
【0092】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の熱可逆性記録媒体は低温環境下での繰返し消去印字に対する耐久性が高く、且つ媒体表面層とのブロッキングがない優れた媒体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における可逆性感熱記録ラベルと基体シートの熱圧着工程の一例を示す図である。
【図2】本発明における可逆性感熱記録ラベルと基体シートの熱圧着工程の他の例を示す図である。
【図3】本発明の可逆性感熱記録媒体の発色・消色特性を示す図である。
【符号の説明】
1 熱板
2 鏡面板
3 熱可逆性記録媒体
4 基材シート
5 熱可逆性記録媒体
6 コアシート
7 オーバーシート
Claims (15)
- 支持体上に熱により色調が可逆的に変化する熱可逆性記録層を設け、支持体の反対面に接着層を有する熱可逆性記録媒体において、該接着層は少なくともガラス転移点(Tg)に差がある2種類の樹脂とイソシアネート基を持つ架橋剤が混合され加熱して作成されたものであり、前記接着層を構成する2種類の樹脂のガラス転移点(Tg)が−30〜10℃の樹脂と30〜80℃の樹脂であり、かつガラス転移点(Tg)の差が30℃以上であることを特徴とする熱可逆性記録媒体。
- 前記−30〜10℃のガラス転移点(Tg)を有する樹脂の含有量が50%以上95%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記−30〜10℃のガラス転移点(Tg)を有する樹脂が飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記接着層の樹脂が水酸基を持つことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記接着層を構成する樹脂が架橋されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記接着層を構成する樹脂が水酸基を有するものであって、架橋剤のイソシアネート基と樹脂の水酸基の比(NCO/OH)が0.3〜3.5であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体。
- 前記接着層にフィラーやワックスを添加したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体。
- ロール状態に巻かれてなることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体。
- 請求項1乃至7の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体とカード基材とが一体化されてなることを特徴とする熱可逆性記録カード。
- 熱可逆性記録媒体の接着層とカード基材とが貼り合わせたものであることを特徴とする請求項9に記載の熱可逆性記録カード。
- 熱可逆性記録媒体の熱可逆記録層からなる情報表示部と情報記憶部とを有することを特徴とする請求項9又は10に記載の熱可逆性記録カード。
- 前記情報記憶部が、磁気記録層、IC、光メモリから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の熱可逆性記録カード。
- 請求項1乃至12の何れか1に記載の熱可逆性記録媒体又は熱可逆性記録カードの熱可逆記録層を加熱することによって、表示画像の形成及び/又は表示画像の消去方法。
- サーマルヘッド又はレーザーを用いて加熱することを特徴とする請求項13に記載の表示画像の形成及び/又は表示画像の消去方法。
- サーマルヘッド、セラミックヒーター、ヒートロール、ホットスタンプ、ヒートブロックおよびレーザーの少なくとも1種を用いて加熱することを特徴とする請求項13又は14に記載の表示画像の消去方法。
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