JP4230074B2 - アルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法 - Google Patents

アルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法に関し、更に詳しくは、その製造方法において、ガラス微粒子の堆積初期にアルミニウム添加量を微少量またはゼロとすることにより、多孔質母材を透明ガラス化する際、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落することを防ぐ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、希土類元素を添加して、その元素の発光を利用するファイバーレーザー、増幅器などにおいて、それに使用されるガラス母材の出発材料の石英系多孔質母材にアルミニウムを共添加させる方法が行なわれている。
その代表的なものとしてエルビウム添加光ファイバー増幅器がある。これに使用されるエルビウム添加光ファイバーは、近年のWDM化に伴ない広帯域化が行なわれている。この広帯域化技術の一つに、光ファイバー中にアルミニウムを含有させる方法が行なわれている。そして、ファイバー中にアルミニウムを含有させるには、それに使用されるガラス母材の出発材料の石英系多孔質母材にアルミニウムを添加するが、このようにして得られた石英系多孔質母材を透明ガラス化する際、しばしば、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落するという問題点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような石英系多孔質母材を透明ガラス化する際、たびたび、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落するが、この現象はアルミニウムが添加されたガラス体は結晶し易く、石英棒とガラス体との境界部分の双方の熱膨張係数などの差異によって起こったものである。本発明の課題は上記の問題点を解決するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、アルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法において、堆積初期における原料アルミニウム供給槽の温度を 40 ℃以上 70 ℃未満の範囲内の一定温度に保持しつつ、出発石英材にガラス微粒子を堆積させることを特徴とするアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法である。
請求項2の発明は、堆積初期において、原料アルミニウム供給槽を一定温度に保持しつつ、出発石英材にガラス微粒子を堆積させ、その後、原料アルミニウム供給槽の温度を所望温度まで上昇させて、この温度に保持しつつ、この間、全て出発石英材へのガラス微粒子の堆積を継続して行うことを特徴とするアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法である。なお、前記所望温度は、 80 ℃〜 190 ℃の範囲内の温度とするのが好ましい。また、ガラス微粒子原料の供給管温度は、常時 50 ℃以上に保持するのが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の方法において、出発石英材にガラス微粒子を堆積させる方法は、公知のCVD法、VAD法などいずれの方法も使用可能である。例えば、VAD法によれば、回転しながら上昇する石英棒(種棒)の先端に、高温ガス中でSiCl4 、GeCl4 、AlCl3 などの原料から合成されるガラス微粒子を吹き付け、空気を多量に含有する多孔質ガラス母材を軸方向に成長させる。この多孔質母材を製作する化学反応はCVD法における火炎加水分解反応と同様である。次いで連続的または回分的に多孔質ガラス母材を電気炉などに挿入し、局部加熱しながら引き上げ、ガラス化した後、更に、ガラス旋盤で加熱しながら細径化する。本発明は、この多孔質母材の製造方法において、堆積初期における原料アルミニウム供給槽の温度を 40 ℃以上 70 ℃未満の範囲内の一定温度に保持することで、堆積初期におけるアルミニウム添加量を微少量またはゼロとして、出発石英材にガラス微粒子を堆積させる方法である。
【0006】
アルミニウムが添加されたガラス体は結晶し易く、石英棒とガラス体との境界部分の双方の熱膨張係数などの差異によって、しばしば、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落する。本発明の方法によれば、ガラス母材の出発材料の石英系多孔質母材の製造工程において、堆積初期における原料アルミニウム供給槽の温度を 40 ℃以上 70 ℃未満の範囲内の一定温度に保持することで、堆積初期におけるアルミニウム添加量を微少量またはゼロとすることにより、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落するのを防止することができる。以下にその具体的方法について説明する。
【0007】
本発明の方法において使用可能なアルミニウム原料は、無水塩化アルミニウムが好適である。これは塩素がスート中に混入しても無害であるからである。この純度は99.9999%以上が好適である。
本発明の方法において好ましいSi 原料は四塩化珪素であるが、モノシラン等のSiの塩素化物であれば何れの化合物でも使用できる。
本発明の方法において好ましいGe 原料は四塩化ゲルマニウムであるが、Ge の塩素化物であれば何れの化合物でも使用できる。
本発明の方法において不活性ガスとしてはアルゴンが物性およびコストの点から好ましいが、不活性ガスであれば使用可能である。また、不活性ガス以外には酸素をキャリアガスとして使用することが可能である。
【0008】
本発明の方法において、堆積初期にアルミニウム添加量を微少量またはゼロにするには、添加される原料アルミニウム(ここでは無水三塩化アルミニウムを例にとって説明する)供給槽の温度を無水三塩化アルミニウムの蒸発量がゼロかまたは微少量しか蒸発せず、キャリアのアルゴンガスにほとんど同伴されず、且つ、凝固しない温度の範囲内の一定温度に保持しつつ、暫時、出発石英材にガラス微粒子を堆積させ、その後、出発石英材にガラス微粒子を堆積させることを続行しながら、必要量の無水三塩化アルミニウムが蒸発してアルゴンガスに同伴されて燃焼バーナーに移送されることが可能な温度まで供給槽を昇温させ、この温度に保持しながら、出発石英材にガラス微粒子を堆積させて石英系多孔質母材を製造する。なお、堆積初期にはアルミニウムは添加しないのが最も好ましいが、無水三塩化アルミニウムは低温においても僅かに蒸気圧を有しているので、供給槽などから僅かに混入する可能性が大きいが、本発明においてはこの量を微少量またはゼロに抑えている。
【0009】
本発明の方法において、上記無水三塩化アルミニウムの蒸発量がゼロかまたは微少量しか蒸発せず、アルゴンガスに殆同伴されず、且つ、供給槽内で凝固しない無水三塩化アルミニウムの供給槽温度の範囲は40℃以上 70 ℃未満である。これが40℃未満では、石英系多孔質母材の原料である四塩化珪素、四塩化ゲルマニウムがアルミニウム供給槽内で凝固して、この槽から燃焼バーナーに至る原料供給導管や燃焼バーナーを閉塞させる可能性がある。また70℃を超えると原料アルミニウムが蒸発してアルゴンガスに同伴し、堆積初期に石英系多孔質母材に高濃度で添加され、その結果ガラス化工程でガラス体が脱落してしまう。なお燃焼バーナーに供給する原料の供給管の温度は50℃以上に維持すれば原料供給管及び燃焼バーナーの閉塞を防止できる。本発明の方法においては上記必要量の無水三塩化アルミニウムがアルゴンガスに同伴されて燃焼バーナーに移送され得る温度は80℃〜190℃の範囲である。ここで190℃を超える高温とすると、無水三塩化アルミニウムの融点を超え、その供給量を十分に制御できなくなる。
【0010】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1)
無水三塩化アルミニウム供給槽の温度を60℃に保持しつつ、VAD法により、合成反応バーナーに酸素ガス9リットル/分、水素ガス6リットル/分を供給して形成した火炎中に、堆積初期に、四塩化けい素(純度99.99%)0.185リットル/分、四塩化ゲルマニウム0.125リットル/分の速度で供給し、ガラス微粒子を生成させ、回転する出発材の先端にガラス微粒子を堆積させながら軸方向に成長させる操作を継続した。約10分後、無水三塩化アルミニウム供給槽の温度を120 ℃に設定し、約30分かけて120 ℃まで昇温させた後、上記原料成分に加えて、更に、無水三塩化アルミニウム(純度99.9999% )が供給されるようにして、この温度を維持しながら、ガラス微粒子を堆積させ、軸方向に成長させる操作を継続して石英系多孔質母材を製造した。次いでこれを電気炉内で透明ガラス化したが、ガラス体は種棒(石英棒,出発石英材)に密着しており、その後も脱落することはなかった。
なおVAD法による石英系多孔質母材の製造装置の一例を図1に示す。図1において、(1)は反応炉、(2)は無水三塩化アルミニウム供給槽、(3)は燃焼バーナー、(4)は原料供給導管、(5)は反応廃ガスの排出管である。また図2に実施例の各反応における無水三塩化アルミニウム供給槽の温度と時間の関係を示す。
【0011】
(比較例1)
無水三塩化アルミニウム供給槽の温度を120 ℃として、ガラス微粒子生成反応の初期から無水三塩化アルミニウムを燃焼バーナーに供給した他は、実施例1と全く同様にして、回転する出発材の先端にガラス微粒子を堆積させ石英系多孔質母材を製造した。これを電気炉内で透明ガラス化したとき、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落してしまった。
【0012】
(比較例2)
無水三塩化アルミニウム供給槽の温度を30℃とした他は、実施例1と全く同様にして、回転する出発材の先端にガラス微粒子を堆積させる操作を開始したが、5分後に原料の四塩化けい素と四塩化ゲルマニウムが、無水三塩化アルミニウム供給槽内でゲル化し始めたので原料の供給を停止した。
【0013】
以上の実施例、比較例の結果から、本発明の方法により製造した石英系多孔質母材は、これを透明ガラス化してもガラス体が種棒から脱落しないことが分かる。
【0014】
【発明の効果】
石英系多孔質母材の製造工程で初期のガラス微粒子堆積からアルミニウムを添加すると、後に透明ガラス化する際、種棒(石英棒,出発石英材)からガラス体が脱落するが、本発明の方法によれば、これを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】VAD法による石英系多孔質母材の製造装置の一例を示す略図である。
【図2】本発明の実施例の各反応における無水三塩化アルミニウム供給槽の温度と時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
(1)反応炉、
(2)無水三塩化アルミニウム供給槽、
(3)燃焼バーナー、
(4)原料供給導管、
(5)反応廃ガスの排出管。

Claims (4)

  1. バーナーに燃焼ガスを供給して形成した火炎中に、ガラス原料ガスとアルミニウム原料ガスを供給して生成させたガラス微粒子を出発石英材に堆積させるアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法において、堆積初期における原料アルミニウム供給槽の温度を 40 ℃以上 70 ℃未満の範囲内の一定温度に保持しつつ、出発石英材にガラス微粒子を堆積させることを特徴とするアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法。
  2. 堆積初期において、原料アルミニウム供給槽を一定温度に保持しつつ、出発石英材にガラス微粒子を堆積させ、その後、原料アルミニウム供給槽の温度を所望温度まで上昇させて、この温度に保持しつつ、この間、全て出発石英材へのガラス微粒子の堆積を継続して行うことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法。
  3. 堆積初期において、原料アルミニウム供給槽を一定温度に保持しつつ、出発石英材にガラス微粒子を堆積させ、その後、原料アルミニウム供給槽の温度を80℃〜190℃の範囲内の温度まで上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法。
  4. ガラス微粒子原料の供給管温度を常時50℃以上に保持することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のアルミニウム添加石英系多孔質母材の製造方法。
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