JP4226985B2 - 光学センサの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、光学センサおよびその製造方法に関し、特に、光検出素子と光検出素子に光線を導く集光部品とを有する光学センサにおいて、集光部品としてフォトニック結晶レンズを用いることにより、従来の集光部品を用いる場合と比較してより高感度化、高精度化、小型化された光学センサおよびその製造方法に関する。
何れの型の光学センサも、光学センサの検出素子受光面に測定対象物から放射される光線を直接に受光させることもできるが、対象物から放射される光線を効率的に集光し、特定の波長域の光線のみを受光面に導くには検出素子受光面の前面に何らかの集光部品を配置する必要がある。
従来、この種の用に供される集光部品としては、レンズ、導波管、波長フィルタがある。受光面の前面に凸型のセラミックレンズを設置して赤外線を受光面に集光する例が開示されている(特許文献1 参照)。そして、赤外線を集光するバイナリレンズと共に、特定の波長の赤外線のみを通過させる波長フィルタを同時に形成した例が開示されている(特許文献2、3 参照)。また、反射集光部品を用いて赤外線入射面の背面に受光面を設置する例も開示されている(特許文献4 参照)。一方、赤外線を一定距離導波させて受光面に導く導波管を備えた例が開示されている(特許文献5 参照)。
ところで、屈折率の異なる媒質を周期的に配列させた人工結晶材料は、フォトニック結晶と呼ばれて既存の光学材料に依っては実現することができない様々の高度な光制御部材、例えば、負の屈折率によるスーパーレンズ効果を発揮する部材、低損失の急激屈曲光導波路、超小型の光集積回路を実現する技術として注目されている。フォトニック結晶は屈折率周期を電磁波の波長に合わせることにより、原理的に如何なる波長域の電磁波に対しても集光部品として用いることができる。現在、フォトニック結晶は光通信技術分野で既存の光素子を代替する技術として研究が活発に行われているが、フォトニック結晶を集光部品として用いる素子利用形態は今までのところ報告されていない。以降、フォトニック結晶を用いた集光機能を有する素子をフォトニック結晶レンズと称す。
特開2001−281053号 公報 特開2001−349785号 公報 特開2002−48646号 公報 特開2001−48637号 公報 特公平5−28621号 公報
上述した赤外線センサは、感度をより高くすることおよび測定精度をより高くすることを要請されており、この光検出素子に適用される現状の集光部品についても種々の問題が指摘されている。
特許文献5には、導波管を用いて赤外光を赤外線検出素子の受光部に導く方法が提示されているが、導波管が風の如き外界の影響を受けると、導波管と、赤外線検出素子を形成した基準温度となるべき基板との間に温度差が生じ、導波管内面から放出される誤差赤外線も検出して測定精度が低下する問題があった。
特許文献2、3は、赤外線を集光するバイナリレンズと共に、レンズを形成した基板上に特定の波長の赤外線のみを通過させる波長フィルタを同時に形成する構成を具備している。波長フィルタとレンズが一体化されてはいるが、波長領域を絞る多層膜による波長フィルタを形成する必要があり、レンズの加工と波長フィルタの成膜がそれぞれ別々の製造工程になるという問題があった。
また、特許文献2は、バイナリレンズの一部をサーモパイルチップを形成した基板上の冷接点に接合させることにより、レンズと冷接点の温度差を小さくして測定精度を上げるものであるが、これにはレンズと赤外線検出素子とが非常に接近しているところから赤外線を充分に集光することができず、感度が落ちるという問題があった。この問題を解決するに、特許文献3は、バイナリレンズを回路基板を挟んで一定距離だけ離す提案であるが、集光部品と赤外線検出素子との間の位置関係に制約が生じる問題があった。即ち、集光部品としてレンズを用いた場合は、レンズと赤外線検出素子を接近させることによる測定精度の向上と赤外線を充分に集光する感度の向上の両立を達成することができないという問題があった。
特許文献4においては、反射集光部品を用いて赤外線検出素子の受光面に集光させている。入射角を制限することにより、誤差となる外部からの熱の影響を低減できるという利点があるが、対象物からの信号赤外線と凹面反射鏡の間に赤外線検出素子が入る構造のため赤外線の一部は赤外線検出素子によって遮蔽され、感度が悪くなるという問題があった。
特許文献3は、赤外線センサの光軸と入射する赤外線の光軸がずれた場合でも温度測定の精度を維持するために、レンズと赤外線検出素子を複数形成した赤外線センサを提案している。しかし、この方法は素子が大きくなり、製造コストが高くなるという問題があった。
ところで、フォトニック結晶を集光部品として用いる素子利用形態は、上述した通り、今までのところ報告されてはいないが、このフォトニック結晶レンズを単体で製造して赤外線センサその他のデバイスと複合化、一体化しようとすると、別々に製造して精密な位置合わせを行って一体化する工程が必要であり、工程が複雑になり、製造コストが高くなるという問題があった。
以上の通り、光学センサの集光部品は、測定精度の向上、感度の高度化、小型化、製造コストの低減化の実現には、集光部品と光検出素子の間の互いの位置関係をなるべく接近或いは接触する配置にすること、互いの位置を接近或いは接触させた位置関係で、且つ光線を充分に集光して集光スポットを小さくすること、光線の入射角依存性、光軸敏感性を小さくすること、或いは用途によっては入射角を制限、指向性を制御すること、レンズおよび波長フィルタの如き必要な光線制御部材を集積化して一つの製造工程で製造すること、更に、光線検出素子と集光部品を一体化する際の位置合わせ精度の向上、製造工程の簡略化、を達成することを要請される。
この発明は、従来の光学センサに内在する上述の問題を、フォトニック結晶レンズより成る集光部品を採用し、フォトニック結晶レンズを光検出素子と効率よく一体化し、簡便で位置合わせ精度が良好で、光検出素子性能を向上させる光学センサおよびその製造方法を提供するものである。
請求項1:光検出素子の前面に、少なくとも加熱または光化学反応により析出する物質を含むガラス材料を用いて、上記物質が析出した一部領域と、析出しないその他の領域とを持つようにフォトニツク結晶立体素子を一体化して形成し、上記フォトニック結晶立体素子の上記一部領域が、上記物質の析出により屈折率をその他の領域の屈折率と異なるように変化させることにより、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする光学センサの製造方法を構成した。
請求項2:光検出素子の前面に、周期的な孔が多数個形成され、光化学反応により析出可能な物質を含む第1のガラス材料の層と、周期的な孔が多数個形成され、光化学反応により析出可能な物質を含まない第2のガラス材料の層とを、多層に積層してフォトニック結晶立体素子を一体化して形成し、上記フォトニック結晶立体素子の光検出素子側とは反対の表面側から光検出素子に収束するように焦点を絞って部分的に紫外線を照射して、第1のガラス材料の層の紫外線を照射した部分に上記物質を析出させて屈折率を変化させることにより、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする請求項1記載の光学センサの製造方法を構成した。
請求項3:温度調整部を有するノズルを具備するインクジェット装置を用い、加熱により析出可能な物質を含むガラス材料の球状粒子をノズルの温度を調整して光検出素子の前面にパターニングして吐出して、加熱された粒子からなる一部領域と、上記加熱された粒子とは屈折率の異なる加熱されない粒子からなるその他の領域を持った球状粒子層を形成し、斯かる一部領域が光検出素子の前面に積層するように、球状粒子層を多層に積層形成することによリ、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする光学センサの製造方法を構成した。
請求項4:球状粒子を光検出素子の前面に吐出するに先だって、光検出素子の前面にバッファ層を形成しておき、フォトニック結晶レンズ形成後にバッファ層の光検出部に対応する領域を除去することを特徴とする請求項3記載の光学センサの製造方法を構成した。
請求項5:バッファ層として高熱伝導性の熱可塑性接着剤シートを用い、フォトニック結晶レンズ形成後にフォトニック結晶レンズを介して赤外線を光検出素子に収束するように照射して、バッファ層の光検出部に対応し、赤外線が照射された領域のみを溶解除去することを特徴とする請求項4記載の光学センサの製造方法を構成した。
この発明は、集光部品としてフォトニック結晶レンズを用いることにより、集光部品と光検出素子とを接近させた状態で、特定の波長領域の光線を低損失で受光部に導き、光線を小さいスポットに集光し、光軸が受光面とずれている場合でも効率的に集光することができるので、光学センサを高感度化することができる。そして、フォトニック結晶の一部と光検出素子を形成した基板を接近、接触させることにより、ノイズとなる光線の発生を抑えて測定精度を向上することができる。また、集光、波長選択、入射角制御、シャッタをフォトニック結晶中に集積化し、少ない製造プロセスで製造することにより、フォトニック結晶一つで必要とされる光線の制御をすることができ、低コストで小型の光学センサを提供することができる。
赤外線を受光してこれを電気信号に変換する赤外線検出素子と赤外線を赤外線検出素子に導く集光部品とを有する光学センサの製造方法において、基板表面に光検出素子を形成し、光検出素子の上面に一体化してフォトニック結晶レンズを形成する。ここで、フォトニック結晶レンズの屈折率周期構造を形成する工程として、2種類の屈折率の異なる材料でフォトニック結晶の立体素子を形成し、その後、フォトニック結晶の立体素子に紫外線を照射して内部に第3の屈折率を示す部分を形成する工程を有する。
そして、赤外線を受光してこれを電気信号に変換する赤外線検出素子と、赤外線を赤外線検出素子に導く集光部品とを有する赤外線センサにおいて、この集光部品としてフォトニック結晶レンズを用い、フォトニック結晶レンズが少なくとも3種類の異なる屈折率材料から構成され、フォトニック結晶は銀含有ガラスの如き高屈折率材料と空気の周期構造を用いるものである。
また、フォトニック結晶レンズをインクジェット装置から吐出した球状粒子を積層して作製し、吐出させるに際してノズルの温度を調整することにより吐出した球状粒子に屈折率変化を付与する工程を有する。
更に、赤外線を受光してこれを電気信号に変換する赤外線検出素子と、赤外線を赤外線検出素子に導く集光部品とを有する赤外線センサの製造方法において、基板上に形成した赤外線検出素子の赤外線吸層の上部にバッファ層を形成し、その上に一体化してフォトニック結晶レンズを形成した後、フォトニック結晶レンズに赤外線を入射してそのエネルギーによりバッファ層の一部を除去する工程を用いる。ここで、インクジェット装置の液体吐出方式としては如何なるものであっても用いることができ、ピエゾ素子を用いた方式、加熱によるバブルジェット(登録商標)方式、所謂ディスペンサーの様な方式、その他の各種の方式を用いることができる。
以下、発明を実施するための最良の形態を図の実施例を参照して説明する。
[実施例1]
実施例1を図1を参照して説明する。図1(b)は図1(a)における線a−a’に沿った断面を示す図である。
基板として、図示されない表面酸化層を形成したSi基板1を使用する。Si基板1の表面にサーモパイル型赤外線検出素子2を形成した。サーモパイル型赤外線検出素子2は、基板1の表面に形成されたダイアフラム層21、ダイアフラム層21の表面に形成されるn型半導体とp型半導体より成る熱電材料22および電極23により構成される。次いで、ダイアフラム層21を含むサーモパイル型赤外線検出素子2の表面に電気絶縁薄膜であるパッシベーション層24としてSiO2 薄膜をスパッタ法により形成した。そして、サーモパイル型赤外線検出素子2の温接点に赤外線吸収部25として黒化金を蒸着により形成した。更に、基板1の表面に突出形成されたサーモパイル型赤外線検出素子2に対して、シリコンのアルコキシドを用いたSiO2 系ゾルゲル溶液をスピンコートし、その上から図示されない平坦な基板で加圧して平坦化層26を形成する。
この実施例1は、以上のサーモパイル型赤外線検出素子2の上面に直接に集光部品であるフォトニック結晶レンズ90を形成する。以下、説明する。
フォトニック結晶レンズ90を構成する原材料として、Ag2 O−TiO2 −S
iO2 系ゾルゲルガラスより成る銀含有ガラスを用いる。先ず、チタンのアルコキシドとシリコンのアルコキシドおよび硝酸銀を混合して、ゾルゲル溶液を調整する。このゾルゲル溶液をサーモパイル型赤外線検出素子2の上面に相当する平坦化層26にスピンコートし、ゾルゲル膜を形成する。この膜厚は、フォトニック結晶デバイスの設計に依存するが、実施例はこれを3μmとしている。そして、平坦な基板で加圧し、可塑性を示す程度に加熱して銀含有ガラス層31を形成する。ここで、Siの柱が周期的にマトリクス状に配列形成された図示されない型をリソグラフィとエッチングにより製造して準備しておき、この型を銀含有ガラス層31に押し付けることにより、膜厚3μm、孔直径3μm、周期4μmの銀含有ガラスパターン31’が形成される。
銀を含有しないSiO2 系ゾルゲル溶液を銀含有ガラスパターン31’の表面
にスピンコートし、ゾルゲル膜を形成する。そして、平坦な基板で加圧し、可塑性を示す程度に加熱してSiO2 ガラス層41を形成する。このSiO2 ガラス層41に先の型を押し付けることにより、膜厚3μm、孔直径3μm、周期4μmのSiO2 ガラスパターン41’を形成する。このSiO2 ガラス層41に型を押し付ける場合、型に対して、型に周期的にマトリクス状に配列形成されている柱が、銀含有ガラスパターン31’に既に形成された型の柱による孔に対して適切な位置に位置決め調整をし、押し付けを実行する。引き続いて、銀含有ガラスパターン32’、SiO2 ガラスパターン42’を形成し、以降において更に、銀含有ガラスパターン、ガラスパターンを順次に交互に形成することにより、3次元フォトニック結晶の立体素子9を構成する。
以上の3次元フォトニック結晶立体素子9に対して、紫外線をレンズにより焦点を絞って斜線30の形状に照射する。この紫外線照射により、銀含有ガラスパターン31’、32’、・・・・の内部には金属銀が析出する。金属銀が析出することにより、銀含有ガラスパターンの屈折率は変化する。銀含有ガラスパターンの屈折率の変化は、銀含有ガラスパターンの屈折率と銀を含有しないガラスパターンの屈折率との間の屈折率の差を増大する。銀含有ガラスパターンの屈折率と銀を含有しないガラスパターンの屈折率の間の屈折率の差が増大することにより、3次元フォトニック結晶立体素子9に効率的なレンズ効果が付与された3次元フォトニック結晶レンズ90が形成されることになる。
[実施例2]
実施例2を図2を参照して説明する。実施例2においても、サーモパイル型赤外線検出素子2の形成の仕方は、図1の実施例1と同様である。即ち、基板として図示されない表面酸化層を形成したSi基板1を使用する。Si基板1の表面にサーモパイル型赤外線検出素子2を形成した。サーモパイル型赤外線検出素子2は、基板1の表面に形成されたダイアフラム層21、ダイアフラム層21の表面に形成されたn型半導体とp型半導体より成る熱電材料22および電極23により構成される。次いで、ダイアフラム層21を含むサーモパイル型赤外線検出素子2の表面に電気絶縁薄膜であるパッシベーション層24としてSiO2 薄膜をスパッタ法により形成した。そして、サーモパイル型赤外線検出素子2の温接点に赤外線吸収部25として黒化金を蒸着により形成した。
図2の実施例2は、サーモパイル型赤外線検出素子2の上面に集光部品を一体化して形成するに、実施例1とは異なる次の通りの工程を採用する。
銀含有ガラス材料自体は実施例1と同一の、Ag2 O−TiO2 −SiO2 系ゾルゲルガラスを用いる。先ず、チタンのアルコキシドとシリコンのアルコキシドおよび硝酸銀を混合し、ゾルゲル溶液を調整する。このゾルゲル溶液をインクジェット装置5に充填し、ノズル51からゾルゲル溶液の球状粒子50を吐出させ、これを3次元的に積み重ねて行くことにより、3次元フォトニック結晶立体素子9を製造する。球状粒子50の直径は4μmに調整する。ノズル51に高温用温度調節部511を構成し、これによりインクジェット装置5のノズル51の温度を調整することにより、吐出するゾルゲルガラスの球状粒子50に金属銀を析出させることができる。図2の如くに低屈折率粒子層52および高屈折率粒子層53をパターニングすることにより、3次元フォトニック結晶立体素子9に効率的なレンズ効果が付与された3次元フォトニック結晶レンズ90が形成されることになる。ゾルゲルガラス中に金属銀が析出するノズル先端温度は350℃程度以上である。
[実施例3]
実施例3を図3および図4を参照して説明する。
実施例3においても、サーモパイル型赤外線検出素子2の形成の仕方は、実施例1、2と同様である。即ち、基板として図示されない表面酸化層を形成したSi基板1を使用する。Si基板1の表面にサーモパイル型赤外線検出素子2を形成した。サーモパイル型赤外線検出素子2は、基板1の表面に形成されたダイアフラム層21、ダイアフラム層21の表面に形成されたn型半導体とp型半導体より成る熱電材料22および電極23により構成される。次いで、ダイアフラム層21を含むサーモパイル型赤外線検出素子2の表面に電気絶縁薄膜であるパッシベーション層24としてSiO2 薄膜をスパッタ法により形成した。そして、
サーモパイル型赤外線検出素子2の温接点に赤外線吸収部25として黒化金を蒸着により形成した。
実施例3は、サーモパイル型赤外線検出素子2の上面に集光部品である3次元フォトニック結晶レンズ90を一体化して形成するに、次の通りの工程を採用する。
先ず、サーモパイル型赤外線検出素子2上面に熱可塑性接着剤シートより成るバッファ層6を貼り付けておく。熱可塑性接着剤シートとしては、Techno Alpha Co.,Ltd.のフィルムタイプ50μm厚みの熱可塑性接着剤STAYSTIKを採用することができる。このバッファ層6としては、導電性、絶縁性その他の種々の特性を有するものを選択することができるが、実施例3は絶縁性で高熱伝導性のタイプの接着剤シートをバッファ層6として選択した。これは、サーモパイル型赤外線検出素子2の配線上にもそのまま貼り付けることができ、且つサーモパイル型赤外線検出素子2の冷接点のヒートシンクとしても動作するからである。
この熱可塑性接着剤シートより成るバッファ層6の上面に、実施例2と同様にして3次元フォトニック結晶立体素子9を形成する。即ち、銀含有ガラス材料は実施例2と同一のAg2 O−TiO2 −SiO2 系ゾルゲルガラスを用いる。先ず、チタンのアルコキシドとシリコンのアルコキシドおよび硝酸銀を混合し、ゾルゲル溶液を調整する。図3(a)、(b)を参照するに、このゾルゲル溶液をインクジェット装置5に充填し、ノズルからゾルゲル溶液の球状粒子50を吐出させて、これを2次元に積み重ねて行くことにより、3次元フォトニック結晶立体素子9を製造する。球状粒子50の直径は4μmに調整する。インクジェット装置5のノズル51の温度を調整することにより、吐出するゾルゲルガラスの球状粒子50に金属銀を析出させることができ、これをパターニングすることにより、3次元フォトニック結晶立体素子9に効率的なレンズ効果を付与することができる。ゾルゲルガラス中に金属銀が析出するノズル先端温度は350℃程度以上である。
実施例3において、バッファ層6は溶解するリフロー温度が170℃程度の材料であるので、内部で金属銀が析出する球状粒子はバッファ層6に到達する迄に冷却せしめられている必要がある。これに対応して、インクジェット装置5のノズル51の形状構造を工夫して、高温用温度調整部511の下側に低温用温度調整部512を付加するか、或いは環境温度を低温にする工夫を行っている。
3次元フォトニック結晶レンズ90を形成した後、サーモパイル型赤外線検出素子2の上面の温接点である赤外線吸収部25の上面に位置するバッファ層6を除去する。フォトニック結晶レンズ90に矢印の向きに赤外線を照射し、赤外線吸収部25に収束せしめてその温度をリフロー温度(170℃)或いは熱分解温度(200℃)迄上昇させることにより、バッファ層6の赤外線吸収部25に対応する領域を加熱する。この加熱工程はイソプロピルアルコール中において実施し、先の材料より成るバッファ層6を溶解除去する。フォトニック結晶レンズ90を以上の通りに巧みに利用することにより赤外線吸収部25の上部のバッファ層のみを除去することができる。即ち、赤外線吸収部25が赤外線を吸収して効率よく温度上昇することが高感度な赤外線センサの実現につながる訳であるが、これには赤外線吸収部25の熱伝導率を低くして熱伝導に起因する温度低下を小さくすることが望ましい。空気は非常に低い熱伝導率を有しているので、赤外線吸収部25の上部は空気層61とすることが、赤外線センサの感度、効率を著しく上昇させることになる。一方、冷接点の温度はヒートシンクを設けて周囲温度と同等の温度にすると好適である。この実施例3はバッファ層6を高熱伝導率の材料を用いて構成することによりこれを実現している。
[実施例4]
実施例4を図5および図6を参照して説明する。
実施例4は、実施例3において、赤外線吸収部25の上面のバッファ層6を除去する方法としてイソプロピルアルコールを用いることはせずに、赤外線吸収部25の周辺の平坦化層26にリソグラフィとエッチングにより、図5(b)に示される如くバッファ層溜り261を予め形成しておく。3次元フォトニック結晶レンズ90を形成した後、フォトニック結晶レンズ90に、図6(c)に示される如く矢印の向きに赤外線を照射する。これにより、赤外線吸収部25の温度をリフロー温度の170℃近傍の温度まで上昇させ、溶けたバッファ層6をバッファ層溜り261に流入せしめることにより、図6(d)に示される如く赤外線検出素子の温接点に対応する赤外線吸収部25の上部のバッファ層6を除去して空気層61を形成することができる。
[実施例5]
実施例5を図7を参照して説明する。
実施例5は実施例1の赤外線センサのフォトニック結晶レンズ90の上面にフォトニック結晶をフィルタ7として形成した例に相当する。このフォトニック結晶フィルタ7は、フォトニック結晶レンズ90の上面にゾルゲルガラスの膜厚を変化させてスピンコートすることにより形成する。この実施例はスピンコートの膜厚を2μmとしたが、この膜厚を変化させることによりフィルタリング特性を制御することができる。
[比較例1]
図8を参照して比較例1を説明するに、比較例1のサーモパイル型赤外線検出素子2の形成の仕方は図1の実施例1と同様である。即ち、Si基板1の表面にサーモパイル型赤外線検出素子2を形成した。サーモパイル型赤外線検出素子2は、基板1の表面に形成されたダイアフラム層21、ダイアフラム層21の表面に形成されたn型半導体とp型半導体より成る熱電材料22および電極23により構成される。次いで、ダイアフラム層21を含むサーモパイル型赤外線検出素子2の表面に電気絶縁薄膜であるパッシベーション層24としてSiO2 薄膜をスパッタ法により形成した。そして、サーモパイル型赤外線検出素子2の温接点に赤外線吸収部25として黒化金を蒸着により形成した。比較例1はフォトニック結晶レンズ90の代わりに凸レンズ8を用いている。
ここで、実施例1ないし実施例4と比較例1を、素子効率、感度、素子の外形寸法の観点で比較した。
レンズに入射した光が赤外線吸収部に集光する割合については、実施例1はほぼ100%の赤外線を集光することができるのに対して、比較例1は30%程度にしか過ぎなかった。そして、素子の厚みについては、実施例1はフォトニック結晶レンズは100μm程度の厚みであるのに対して、比較例1は赤外線吸収部から凸レンズ8上面までの距離は1mm以上を必要とした。また、素子効率について、実施例3と比較例1を比較すると、赤外線吸収部の温接点は上部が空気層であることは両者共に同様であるが、実施例3は冷接点が高熱伝導性のバッファ層6を介してフォトニック結晶レンズに接触しており、フォトニック結晶レンズがヒートシンクとなって冷接点を外気温に素早く均一化するのに対して、比較例1は冷接点の上部は空気層となっており、熱伝導は基板のみからしか行われないので冷却効率は悪い。更に、レンズによる集光ビームの位置ずれについては、比較例1はレンズから熱電素子までの距離が長いので組み立て精度の影響が強く現われるのに対して、実施例は、何れも、熱電素子に直接レンズを作り込むのでレンズと熱電素子の光軸がずれることはない。
以上の通り、赤外線センサの実施例1ないし実施例4は、素子効率が高く、高感度で、素子の外形寸法が小さい。そして、これらの実施例は、本質的に組み立て精度が高いので生産性がよい。
フォトニック結晶レンズにフォトニック結晶フィルタを複合形成した赤外線センサの実施例5は、素子構造、製造プロセスが非常に簡単である。これは同様な考え方で、フォトニック結晶で実現できる素子、例えば、スイッチ、シャッタ、チューナブルフィルタ、アッテネータ、導波路も複合化することができる。そして、上述した赤外線素子、基板、パッシベーション層、赤外線吸収部、フォトニック結晶、バッファ層の材質、種類、その形状は、特に、制限を受けるものではなく、公知のものの何れも用いることができる。
実施例1を説明する図。 実施例2を説明する図。 実施例3を説明する図。 図3の続き。 実施例4を説明する図。 図5の続き。 実施例5を説明する図。 比較例1を説明する図。
符号の説明
1 基板 2 サーモパイル型赤外線検出素子
21 ダイアフラム層 22 熱電材料
23 電極 24 パッシベーション層
25 光検出部 26 平坦化層
261 バッファ層溜り 30 斜線
31 銀含有ガラス層 31’銀含有ガラスパターン
32’銀含有ガラスパターン 41 SiO2 ガラス層
41’SiO2 ガラスパターン 42’SiO2 ガラスパターン
5 インクジェット装置 50 球状粒子
51 ノズル 511 高温用温度調節部
512 低温用温度調整部 52 低屈折率粒子層
53 高屈折率粒子層 6 バッファ層
61 空気層 7 フォトニック結晶フィルタ
8 凸レンズ 9 3次元フォトニック結晶立体素子
90 フォトニック結晶レンズ

Claims (5)

  1. 光検出素子の前面に、少なくとも加熱または光化学反応により析出する物質を含むガラス材料を用いて、上記物質が析出した一部領域と、析出しないその他の領域とを持つようにフォトニツク結晶立体素子を一体化して形成し、上記フォトニック結晶立体素子の上記一部領域が、上記物質の析出により屈折率をその他の領域の屈折率と異なるように変化させることにより、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする光学センサの製造方法。
  2. 光検出素子の前面に、周期的な孔が多数個形成され、光化学反応により析出可能な物質を含む第1のガラス材料の層と、周期的な孔が多数個形成され、光化学反応により析出可能な物質を含まない第2のガラス材料の層とを、多層に積層してフォトニック結晶立体素子を一体化して形成し、上記フォトニック結晶立体素子の光検出素子側とは反対の表面側から光検出素子に収束するように焦点を絞って部分的に紫外線を照射して、第1のガラス材料の層の紫外線を照射した部分に上記物質を析出させて屈折率を変化させることにより、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする請求項1記載の光学センサの製造方法。
  3. 温度調整部を有するノズルを具備するインクジェット装置を用い、加熱により析出可能な物質を含むガラス材料の球状粒子をノズルの温度を調整して光検出素子の前面にパターニングして吐出して、加熱された粒子からなる一部領域と、上記加熱された粒子とは屈折率の異なる加熱されない粒子からなるその他の領域を持った球状粒子層を形成し、斯かる一部領域が光検出素子の前面に積層するように、球状粒子層を多層に積層形成することによリ、光検出素子の前面にフォトニック結晶レンズを一体化して形成することを特徴とする光学センサの製造方法。
  4. 球状粒子を光検出素子の前面に吐出するに先だって、光検出素子の前面にバッファ層を形成しておき、フォトニック結晶レンズ形成後にバッファ層の光検出部に対応する領域を除去することを特徴とする請求項3記載の光学センサの製造方法。
  5. バッファ層として高熱伝導性の熱可塑性接着剤シートを用い、フォトニック結晶レンズ形成後にフォトニック結晶レンズを介して赤外線を光検出素子に収束するように照射して、バッファ層の光検出部に対応し、赤外線が照射された領域のみを溶解除去することを特徴とする請求項4記載の光学センサの製造方法。
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