JP4225033B2 - セラミック積層体とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,圧電アクチュエータ等に用いる圧電体素子として利用可能なセラミック積層体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
複数の誘電層と該誘電層に対する電圧印加用の電極層とが交互に積層されたセラミック積層体よりなる圧電体素子が知られている。中でも誘電層がチタン酸ジルコン酸鉛(PZT),電極層が銅で構成されたセラミック積層体は低コストであり,銀−パラジウム電極に見られるようなマイグレーションを起こし難いため,圧電体素子として広く利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−82387号公報
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,鉛を含む誘電層と銅を含む電極層とよりなるセラミック積層体は,該セラミック積層体製造時の未焼積層体焼成の際に,誘電層から金属鉛が遊離して,該金属鉛と電極層の金属銅とが液相を形成して,外部に流出することがある。また,誘電層から遊離した金属鉛と電極層の金属銅との反応により,電極層が凝集して切れ切れとなることがある(後述する図12参照)。また,誘電層に含まれる酸化鉛と酸化銅とが液相を形成して,誘電層内部に拡散し,誘電層を変質させることがある。
【0005】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,焼成中に未焼積層体の誘電層の成分と電極層の成分との反応が生じ難く,両成分が液相化し難く,かつ液相化した成分が外部に流出し難いセラミック積層体とその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】
第1の発明は,構成元素として鉛酸化物を含有する酸化物誘電体よりなるグリーンシートに,銅若しくは銅化合物を主成分とする電極ペーストよりなる印刷部を設けて印刷シートを形成し,上記印刷シートを複数枚積層して未焼積層体となし,該未焼積層体に含まれる有機成分を熱処理することで除去する脱脂処理を行い,上記未焼積層体を還元雰囲気で,かつ室温から400〜600℃に至るまでは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御しつつ,焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法(請求項1)にある。
【0007】
第1の発明にかかる作用効果について説明する。第1の発明は未焼積層体を脱脂処理し,還元雰囲気で焼成処理を行う。
【0008】
仮に還元雰囲気で焼成する際に誘電層となるグリーンシートから鉛が遊離した場合,この鉛と印刷部の銅とが反応し,液相を形成してグリーンシートや印刷部の他の成分を巻き込んで,外部に押出されてくることがある。また,印刷部に凝集が発生するおそれがある。
【0009】
このような鉛の遊離は未焼積層体に対して還元処理を行う際にグリーンシート中の誘電体が還元されることにより発生する場合,還元雰囲気での焼成の温度が600℃未満の時にグリーンシート中の誘電体が還元されることにより発生する場合がある。
【0010】
第1の発明によれば,還元雰囲気で焼成する際に,室温から400〜600℃にいたる還元雰囲気を銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御することで,既に遊離した鉛は酸化され,また焼成中の鉛の遊離が防止されて,それ以上鉛が増えることが防止される。このため,遊離した鉛と銅との反応が生じ難くなり,印刷部の凝集や,未焼積層体内部からの物質流出が生じ難い。
【0011】
また,上記の還元焼成の酸素分圧制御により,未焼積層体の印刷部の露出部分の近傍の銅が酸化され,鉛と反応しない酸化銅となるため,内部で鉛と銅とが反応して,一部が液相化しても,積層体内部からの物質流出が生じ難い。
【0012】
また,第2の発明は,鉛を含有する誘電層と該誘電層に対する電圧印加用の銅を含む電極層とが交互に積層され,かつ上記電極層の外部への露出部及び該露出部の近傍は酸化部であることを特徴とするセラミック積層体にある(請求項7)。
【0013】
第2の発明において,電極層の外部への露出部やその近傍には酸化部がある。この酸化部は製造途中に形成され,該酸化部によって液相化した内部からの物質流出を防止できる。また,上述した第1の発明にかかる製造方法により製作されるため,印刷部の凝集が生じ難い。
【0014】
以上,第1及び第2の発明によれば,焼成中に未焼積層体の誘電層の成分と電極層の成分との反応が生じ難く,両成分が液相化し難く,かつ液相化した成分が外部に流出し難いセラミック積層体とその製造方法を提供することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
第1及び第2の発明において,グリーンシートを構成する誘電体は,鉛酸化物を含有する,例えばチタン酸ジルコン酸鉛,Pb(Mg1/3Nb2/3)O3等の複合化合物である。また,上記印刷部は銅若しくは銅化合物であり,不純物を含まない銅であっても,NiやZn等と銅の化合物であっても良い。
【0016】
また、酸化銅を主成分とする電極ペーストよりなる印刷部を設けて印刷シートを形成することが好ましい(請求項2)。
【0017】
また、水素を含む還元雰囲気中にて,上記未焼積層体に含まれる酸化銅を主成分とする印刷部を還元処理することで銅を主成分とする印刷部とすることが好ましい(請求項3)。銅の酸化物は、水素を含む還元雰囲気で還元処理することで,銅主体の電極層へと転換される。電極ペーストの材料としては,上述の転換を行うことができるような材料を選択する。また,上記銅の酸化物は1価,2価の双方の酸化物を含む。
【0018】
上記未焼積層体の体積は8mm3以上とすることが好ましい。これにより第1の発明にかかる遊離した鉛と銅との反応の防止や,印刷部の凝集,未焼積層体内部からの物質流出の防止といった効果をさらに確実に得ることができる。
【0019】
第1の発明において,室温から400〜600℃に至るまでは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御しつつ,焼成する。上記温度範囲で上記酸素分圧以外に制御した場合は,金属鉛が遊離し,該金属鉛が金属銅と液相を形成し,外部に流出するおそれがある。
【0020】
第1の発明において未焼積層体の体積が8mm3より小である場合は,焼成時に外部雰囲気から未焼積層体の内部に拡散する酸素により,未焼積層体の表面近傍の銅が酸化されるおそれがある。この場合,印刷部が電極層となった際に電極層の導電性が低下して,電極としての機能が果たし難くなるおそれがある。
【0021】
仮に,焼成が済んだ後に研磨等の加工を施したとしても,研磨により除去できる領域(研磨代)よりも,電極層の酸化は深いところまで進行することが多く,研磨により電極層を電極として機能させることが難しい。また,電極層が部分的に酸化した場合,この未焼積層体から得られたセラミック積層体を圧電体素子として用いた場合,導通不良から誘電層に充分な電圧を印加することが難しくなり,圧電体素子の性能が低下するおそれがある。
【0022】
なお,グリーンシートや印刷部(すなわち誘電層や絶縁層)の形状は後述する実施例では正方形としたが,長方形や多角形,円形,樽型,楕円形等,所望の形状に構成することができる。
【0023】
次に,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,室温から昇温を開始し,室温から400〜600℃に至るまでは上記還元雰囲気における酸素分圧を10-10〜10-20atm(1.013×10-5(=10-4.994)〜1.013×10-15(=10-14.99)Pa)に制御することが好ましい(請求項4)。
【0024】
室温から400〜600℃に至る温度領域で酸素分圧を上述する特定範囲に制御することで,
後述する図10より知れるごとく,銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧での焼成が可能となる。したがって,金属鉛と金属銅との反応を防止することができる。また,後述するような酸化部が形成されやすくなる。
【0025】
次に,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,400〜600℃より昇温を継続し900〜1000℃に至るまでは上記還元雰囲気における酸素分圧を銅と酸化鉛とが共存可能となる酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御することが好ましい(請求項5)。
【0026】
400〜600℃より昇温を継続し900〜1000℃に至る温度領域で酸素分圧を上記条件を満たすように制御することで,銅と鉛が共存する状態を保持したまま,還元焼成を進行できる。
【0027】
温度が400〜600℃に至るまでの酸素分圧が10-20atm(1.013×10-5(=10-4.994)Pa)未満である場合,銅と酸化鉛との共存可能領域外での焼成となるため,誘電層となるグリーンシートから金属鉛が遊離して,電極層となる印刷部の金属銅と上記金属鉛とが液相を形成して,外部に流出するおそれがある。
【0028】
また,400〜600℃に至るまでの酸素分圧が10-10atm(1.013×10-5(=10-4.994)Pa)より大きい場合は,印刷部で酸素に触れる部分が広く酸化され,この印刷部から得られる電極層の電気抵抗が大きくなり,電極としての機能が低下するおそれがある。また,グリーンシートの酸化鉛と酸化銅とが液相を形成して,グリーンシートの内部,つまり誘電層の内部に拡散するおそれがある。
【0029】
温度が900〜1000℃に至るまでの酸素分圧が銅と酸化鉛とが共存可能となる酸素分圧内である場合は,誘電層となるグリーンシートから金属鉛が遊離して,電極層となる印刷部の金属銅と金属鉛とが液相を形成して,外部に流出するおそれがある。また,銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも低い酸素分圧だった場合は,金属鉛が遊離して,電極層となる印刷部の金属銅と金属鉛とが液相を形成し,外部に流出するおそれがある。また,後述する酸化部が形成され難くなり,誘電層と電極層との剥離が生じやすくなるおそれがある。
【0030】
また,『昇温を継続し900〜1000℃に至るまでは還元雰囲気における酸素分圧を銅と酸化鉛とが共存可能となる酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御する』点について説明する。銅と鉛とが含まれた系において,銅が銅の酸化物となるか,鉛が酸化鉛となるかは雰囲気の酸素分圧によって定まる。銅が酸化されていない状態で,鉛は酸化鉛の状態にあって両者が共存するような特定の酸素分圧の範囲が存在するが,請求項5では,未焼積層体の焼成時に温度が900〜1000℃に達するまでの間は,上述した銅と酸化鉛とが共存可能となる酸素分圧若しくはこの共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧(酸化側)に維持する。
【0031】
具体的には図10の線図によって示されるごとく,実線aと実線bによって囲まれた領域が銅と酸化鉛との共存領域であり,本請求項ではこの領域およびこれよりも高酸素分圧の領域で焼成を行うようにする。なお,1atm=1013hPa=1.013×105Paである。
【0032】
次に,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,各温度における酸素分圧を下記条件を満たす範囲で制御することが好ましい(請求項6)。1000℃:10-4〜10-7.9atm(10.13(=101.0056)〜1.276×10-3(=10-2.894)Pa)900℃:10-5〜10-10.1atm(1.013(=100.0056)〜8.049×10-6(=10-5.094)Pa)800℃:10-6〜10-12.2atm(1.013×10-1(=10-0.9944)〜6.393×10-8(=10-7.194)Pa)700℃:10-7〜10-14.5atm(1.013×10-2(=10-1.994)〜3.204×10-10(=10-9.494)Pa)600℃:10-8〜10-16.6atm(1.013×10-3(=10-2.994)〜2.545×10-12(=10-11.59)Pa)500℃:10-9〜10-18.8atm(1.013×10-4(=10-3.994)〜1.606×10-14(=10-13.79)Pa)
各温度範囲において上述した酸素分圧に保持して焼成することで,後述する図10より知れるごとく,銅と酸化鉛との共存可能な酸素分圧若しくは共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧での焼成が可能となり,誘電層となるグリーンシートから金属鉛が遊離して,電極層となる印刷部の金属銅と上記金属鉛とが液相を形成して,外部に流出することを防止できる。
【0033】
各温度範囲に対応する各酸素分圧より還元側に外れた領域で焼成した場合は,金属鉛が遊離して,電極層となる印刷部の金属銅と上記金属鉛とが液相を形成し,外部に流出するおそれがある。また,後述する酸化部が形成され難くなり,誘電層と電極層との剥離が生じやすくなるおそれがある。各温度範囲に対応する各酸素分圧より酸化側に外れた領域で焼成した場合は,他の誘電原料と未反応の酸化鉛が電極層となる印刷部に僅かに生成した酸化銅とが液相を形成し,積層体の内部に拡散するおそれがある。
【0034】
次に,第2の発明において,上記電極層の積層方向と垂直な方向に計った酸化部の酸化幅は0.05〜2mmであることが好ましい(請求項8)。これにより,内部が液相となった場合,外部への物質流出を遮るに足りる酸化部を得ることができる。酸化部の酸化幅が0.05mm未満である場合は,金属銅とグリーンシート内から遊離した金属鉛が反応して液相となった場合に,これが外部に流出することを防げなくなるおそれがある。一方,2mmより酸化幅が広い場合は,電極層が厚い酸化皮膜により被われることとなり,電極層の導電性が低下するおそれがある。
【0035】
さらに,仮に焼成後に研磨等の加工を施したとしても,実際は研磨により除去できる領域(研磨代)よりも,電極層の酸化が深いところまで進行していることが多く,研磨により電極層を電極として機能させることが難しい。酸化部が幅広く形成されたセラミック積層体を圧電体素子として用いた場合,電極層の導通不良から圧電体素子の性能が低下するおそれがある。
【0036】
なお,酸化幅としては,セラミック積層体の端部から酸化部の終わりまでをセラミック積層体積層方向と垂直の方向に沿って測定した最大幅を採用する。
【0037】
第2の発明において,上記誘電層における上記電極層との界面の近傍に,上記電極層を構成する成分の少なくとも1種類が拡散した拡散部があることが好ましい(請求項9)。この酸化部によって誘電層と電極層との間に充分な密着強度を得ることができる。なお,本発明にかかる酸化部の厚みとしては,電極層の表面からセラミック積層体の積層方向に沿って測定した最大厚みを採用する。
【0038】
第2の発明において,上記拡散部は上記電極層由来の銅が拡散した状態にあり,上記拡散部における上記誘電層と上記電極層との界面からの拡散距離は0.5〜2μmであり,上記拡散部における銅の含有率は0.1〜30wt%であることが好ましい(請求項10)。これにより,絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0039】
仮に拡散距離が0.5μm未満であれば,誘電層と電極層との密着強度が充分でなく,これらの層間で剥離を起こす可能性がある。2μmより大である場合は,誘電層の内部に銅を含んだ別の組成の誘電体部または低絶縁抵抗部が層状に形成されたり,まばらに点在するような状態で形成されたりする。この場合,誘電層の絶縁抵抗が低下するため,このセラミック積層体を圧電体素子として用いた場合,誘電層で絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0040】
また,仮に0.1wt%未満であれば,酸化部の密着力が弱くなり,誘電層と電極層との間で剥離が発生するおそれがある。30wt%より大である場合は,誘電層の絶縁抵抗が低下するおそれがある。
【0041】
また,第2の発明において,上記セラミック積層体は圧電体素子であることが好ましい(請求項11)。第2の発明にかかるセラミック積層体は誘電層と電極層とが剥離し難い。そのため,圧電体素子として機能させた場合,セラミック積層体は積層方向に伸縮するが,この伸縮によるストレスにより誘電層と電極層とが剥離し難く,耐久性に優れた圧電体素子となる。
【0042】
また,電極層に充分な導電性が保たれているため,誘電層に対する電圧の印加を確実に行うことができると共に,誘電層を充分に伸縮するに必要な電圧を確実に与えることができるため,優れた圧電体素子を得ることができる。このように第2の発明にかかるセラミック積層体は優れた圧電体素子として利用することができる。
【0043】
【実施例】
以下に,図面を用いて本発明の実施例について説明する。本例にかかるセラミック積層体1(図11参照)の製造方法は,図1に示すごとく,構成元素として鉛酸化物を含有する誘電体よりなるグリーンシート11,12に酸化銅を主成分とする電極ペーストよりなる印刷部13を形成し,印刷シート10となし,該印刷シート10を複数枚積層して未焼積層体15となす。
【0044】
そして,上記未焼積層体15に含まれる有機成分を大気雰囲気中で熱処理することで未焼積層体に含まれているバインダを除去する脱脂処理を行い,水素を含む還元雰囲気中にて,上記未焼積層体に含まれる酸化銅を主成分とする印刷部13を還元処理することで銅を主成分とする印刷部13となす。そして,上記未焼積層体を還元雰囲気で,かつ室温から400〜600℃に至るまでは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御しつつ,焼成する。
【0045】
これにより,図11に示すごとく,鉛を含有する誘電層31,32と該誘電層31,32に対する電圧印加用の銅を含有する電極層33とが交互に積層され,かつ上記電極層33の外部への露出部及び該露出部の近傍は酸化部335であるセラミック積層体1を得る。
【0046】
以下,詳細に説明する。本例のセラミック積層体1は圧電アクチュエータの駆動源として利用可能な圧電体素子である。このセラミック積層体1は,チタン酸ジルコン酸鉛(以下,PZTと記載,詳細な組成は後述の製造方法において記載)よりなる誘電層31,32と酸化銅を主成分とする電極層33とを交互に積層して構成した。なお,図1に未焼成積層体15の積層状態を記載したが,焼成後も本質的に同様の構成が維持される(若干焼成による収縮が生じる)。
【0047】
つまり,誘電層31,32と該誘電層31,32の表面に電極層33を形成し,また誘電層31,32の一方の側面に面する側に電極層33を形成しない非形成部330を設けた(図11参照)。本例のセラミック積層体1では,上記誘電層31,32を,電極層33の非形成部330が交互に異なる側面35,36と対面するように順序よく積層して構成した。
【0048】
次に,本例のセラミック積層体1の製造方法について詳細に説明する。まず,誘電層31,32用のグリーンシート11,12を作成する。酸化鉛と酸化タングステンをそれぞれ83.5wt%:16.5wt%に秤量し,乾式混合し,500℃,2時間焼成した。これにより,酸化鉛と酸化タングステンの一部が反応した仮焼成粉(化学式:Pb0.8350.1651.33)を得た。次に,仮焼成粉を媒体撹拌ミルにより微粒化・乾燥し反応性を高め,助剤酸化物粉とした。
【0049】
本例の圧電体素子1における誘電層31,32は,Pb(Y0.5Nb0.5)O3−PbTiO3−PbZrO3系3成分固溶体を基本組成とし,Pbの一部をSrで置換したPZTである。最終組成が上述した化合物となるよう原材料の組成を選択し,原材料を乾式混合し,850℃,7時間焼成した。これにより,誘電体仮焼成粉を得た。
【0050】
水2.5リットルと分散剤(誘電体仮焼成粉の重量に対して2.5wt%[内wt%])を予め混合し,次いで上記誘電体仮焼成粉の4.7kgを徐々に混合し,誘電体仮焼成粉スラリーを得た。誘電体仮焼成粉スラリーを媒体撹拌ミルにかけて,パールミルによりスラリー中の誘電体仮焼成粉の粒子径を0.2μm以下に制御した。
【0051】
誘電体仮焼成粉スラリーに対してバインダをスラリー中の誘電体仮焼成粉の重量に対して4wt%[内wt%],離型剤をスラリー中の誘電体仮焼成粉の重量に対して1.9wt%[内wt%],上述した助剤酸化物粉をスラリー中の誘電体仮焼成粉の重量1600gに対して13.5g(助剤酸化物粉の化学式Pb0.8350.1651.33における0.5atom%)を混合し,3時間撹拌し,スプレードライヤで乾燥し,造粒粉を得た。
【0052】
上記造粒粉を1昼夜ボールミルにてさらに微粒化し,水を混合する。次いで,ドクターブレード法によりブレード間隔125μmでシートを引いた。シートは80℃で乾燥した後,シートカッターで100mm×150mmに切断した。以上によりグリーンシート11,12を得た。
【0053】
次に,印刷部13を上記グリーンシート11,12に設けた。CuOペースト(CuO含有量50wt%,CuO比表面積10m2/g,残りはバインダー)1.800gに対して,三井金属製1050YPCu粉(イットリアとリン,銅の混合粉末)を1.11g,共粉(誘電体用の仮焼成粉と同じ成分又はその一部を含む粉体)を0.09g添加した。その後,これらを遠心力撹拌脱泡装置により混合し,電極ペーストを得た。スクリーン印刷装置により,上記グリーンシート11,12に上記電極層ペーストを5〜8μmの厚みで印刷し,130℃で1時間乾燥した。
【0054】
これにより,図1(a)に示すごとき,印刷部13を設けたグリーンシート11,12を得た。なお,印刷部13の非形成部130は積層時に隣接する誘電層31,32の間で対向する側面にそれぞれ対面するように設けるため,同図に示すように,異なる方向に非形成部130が位置する2種類のグリーンシート11,12を作製する。なお,最終的にグリーンシート11,12の周囲はカットされるため,そのカット分を考慮して印刷部13を設ける。
【0055】
次に,グリーンシート11,12を,図1(b)に示すごとく,20枚積層した。上記積層体を加圧用治具に固定し,120℃で10分,80kg/m2で熱圧着してマザーブロックを得た。このマザーブロックをシートカッターで一辺が9mm×9mmとなるよう切断した。次に,マザーブロックからカットされた切断片をラミネート装置にかけて,120℃で10分,160kg/m2で再び熱圧着した。これにより,図1(c)に示すごときユニット素子145を得た。
【0056】
上記ユニット素子145を20個積層し,ラミネート装置にかけて,80℃で10分,500kg/m2で更に熱圧着し,図1(d)に示すごとく,未焼積層体15を得た。なお,上記未焼積層体15の内部において,上記グリーンシート11,12の大きさは一片が9mmの正方形で厚さが0.1mmとなる。よって,未焼積層体15の体積は3240mm3である(印刷部13の厚みは非常に薄いため無視できる)。
【0057】
上記未焼積層体15の上下に気孔率20%の酸化マグネシウム板(15×15mm×1mm)を載置し,気体循環式脱脂炉を用いて図2に示すような温度プロファイル(脱脂処理スタートから経過する時間と温度との関係とを示した線図)に従った脱脂パターンにより気体循環式脱脂炉を用いて大気雰囲気中で脱脂を行った。
【0058】
上記脱脂は,図3(a)に示すごとく,こう鉢21(焼成の際に用いたものと同じものを使用する。図6参照。)の底面219の上に通気板211,未焼積層体15,上側の通気板212を載置して行った。なお,通気板211,212をセラミックで構成することもできる。この場合,材質は問わないが,通気性を確保する為,気孔率10%以上のセラミック板を用いることが望ましい。また通気板211は材質が同じであれば上下同じものを使用することができる。また,通気性が実質的に同程度であれば,上下で通気板211,212の大きさや寸法が異なってもよい。
【0059】
また,図3(b)に示すごとく,こう鉢21の底面219と通気板211と間にスペーサ213を設けて下部の通気を確保しても良い。なお,本例においては,スペーサ213としてコージェライトハニカムを用いた。さらに通気板211,212は,図3(c)に示すごとく,金属製のメッシュ板を用いることもできる。
【0060】
なお,上記通気板としては,通気性が良く,脱脂(特に熱)に耐えられれば,形状はハニカム状,多孔状,メッシュ状等の素材を用いることができ,また材質としてはアルミナ,チタニア等の適当な金属板を用いることができる。また,脱脂最高温度は本例では500℃としているが,400〜650℃の範囲であれば温度は問わない。また本例では脱脂を大気雰囲気で行ったが,純酸素雰囲気で行っても良い。
【0061】
次に,脱脂の終わった未焼積層体を水素雰囲気で還元処理し,その後焼成した。図4に示すような温度プロファイル(焼成スタートから経過する時間と温度との関係とを示した線図)に基づくパターンによりAr−H2(1%)5000ミリリットル及びO2(Pure)6.5〜6ミリリットルを含んだ雰囲気中で還元時酸素分圧を炉外酸素分圧で管理して,1×10-23.5atmで還元処理を行った。
【0062】
なお,本例ではAr−H2(1%),O2を用いたが,炉外酸素分圧で1×10-16〜1×10-24atmとなる環境を実現できれば,ガスの濃度及び処理量はその限りでない(この時,炉内に投入する実質的なH2とO2の比はH2:O2=50:50〜5.5)。また,温度は250〜600℃でよいが,300〜400℃が望ましい。
【0063】
さらに本例の炉室30(図7参照)の炉壁材料に酸素との反応性が電極層33の構成材料より高いステンレス金属を用いた。ある酸素分圧雰囲気下では,炉壁が微量酸素と反応して可逆的に反応可能な酸化皮膜層を形成し,酸素分圧が還元側に振れようとすると酸素を放出し,酸素分圧が酸化側に振れようとすると酸素を蓄積して酸素分圧変化を一定の範囲内に保持できる。また,電極層33の構成材料が僅かに酸化される雰囲気では電極層33の構成材料よりも先に炉壁材が酸化を受ける為,電極層33(特に銅)の保護になる。
【0064】
なお,上記範囲外の炉外酸素分圧で焼成を行うと,誘電層31,32の酸化鉛が還元されて,金属鉛が遊離する。これが電極層33の銅と反応し,327℃以上の温度で液相を生成し,好ましくない。なお,焼成の時間が長くなっても同じことが起きるため,焼成の時間は0.25〜16時間の範囲で行うことが好ましい。
【0065】
具体的な焼成方法について説明する。図5,図6に示すごとく,上記未焼積層体15を酸化マグネシウムよりなるこう鉢21の底面219にコージェライトハニカム板221,224及び酸化マグネシウム板222,223(15×15mm×1mm),酸化マグネシウム重り225(1〜10g)と共に積層載置した。なお,図6の符号210はこう鉢21の蓋である。また,焼成時に未焼積層体15より酸化鉛が蒸発して抜ける事を防止するため,図6の様にPbZrO3の塊226をこう鉢21の隅に適量配置した。上記未焼積層体15を配置したこう鉢21を,還元雰囲気で焼成可能な焼成炉3にて,図8の温度・雰囲気パターンに従い,CO2(pure),Ar−CO(10%),O2(pure)を用いて,還元焼成を行った。
【0066】
また,この還元焼成に使用する焼成炉3を図7に示す。この焼成炉3は,こう鉢21を置いて焼成を行う炉室30と,該炉室30に差し込まれた炉内酸素分圧センサ315及びこのセンサ315からの検出値を得る炉内酸素分圧計316を有し,上記炉室30にAr−CO,CO2,O2をそれぞれ導入するための各マスフローコントローラー311,312,313及び該マスコントローラー311,312,313から炉室30への流路を適宜切り替える電磁弁314を設けた流路31を有する。また,炉室30から炉外へ向かう排気系310の途中に炉外酸素分圧センサ317と,該センサ317からの出力値を得る炉外酸素分圧計318を設置した。そして,炉室30の酸素分圧の制御は炉外酸素分圧センサ317及び分圧計318および炉内酸素分圧センサ315及び分圧計316により行う。
【0067】
炉外酸素分圧センサ317はジルコニアO2センサで,内蔵するヒーターでセンサが600℃以上に常に加熱されており,炉外酸素分圧センサ317に導入されたガス中の酸素分圧を全温度範囲で計測する。一方,炉内酸素分圧センサ315はジルコニアO2センサであるがヒーターを内蔵せず,焼成炉3の炉室30の温度が400〜500℃程度以上に加熱された時に炉室30の酸素分圧が計測可能になった。この焼成炉では炉外酸素分圧センサ317は炉内温度が炉内酸素分圧センサ315の測定温度範囲が外れている時に用いた。
【0068】
昇温時は室温から580℃まで炉外酸素分圧センサ317及び分圧計318で酸素分圧の制御を行い,580℃以上からは炉内酸素分圧センサ315及び分圧計316により酸素分圧の制御を行った。また降温時は最高温度から600℃までは炉内酸素分圧センサ315及び分圧計316で酸素分圧の制御を行い,600℃以下は炉内に装備された炉外酸素分圧センサ317及び分圧計318により酸素分圧の制御を行った。
【0069】
600℃以下も再び,CO2(pure)5000ミリリットル+Ar−CO(10%)150ミリリットル+O2(pure)2.8〜5ミリリットルに流量制御を行い,炉外酸素分圧センサ317の指示値を10-20atm〜10-10atmに制御した。なお,この状態における温度と酸素分圧の制御範囲は後述する図10の黒い帯で記された範囲fに記載した。この制御の様子を時間と温度,酸素分圧との関係を図8に記載した。なお,実際の焼成における,炉内酸素分圧センサ,炉外酸素分圧センサの示す値及び炉内の温度は図9に示すような線図となった。
【0070】
また,昇温時の580℃以上から,また降温時の600℃以下からの酸素分圧と温度の制御範囲を,図10に記載した。同図に示すごとく黒い帯で記された範囲eに温度と酸素分圧が維持されるように,炉内雰囲気を制御した。なお,図10には,本例の製造方法の条件でCu+PbOの共存領域を実線aと実線bとで囲まれた範囲内として記載した。また,未焼積層体15の焼成で,実線aと実線cとで囲まれた領域の範囲に酸素分圧が制御されていれば,本例にかかるセラミック積層体の製造方法を実現することができる。なお,実線bと実線dとで囲まれた低酸素分圧でも焼成が可能となる場合がある(内部に蓄積された酸素によって焼成される)。図10の横軸は温度,縦軸は酸素分圧を10xatmで現した際のxの値である。なお,10xatmは1.013×105×10xPaに等しい。
【0071】
このように未焼積層体15を焼成し,本例にかかる,図11(b)に示すごとき,セラミック積層体1を得た。得られたセラミック積層体1の電極層33において,側面に露出する端部近傍には,図11(a)に示すごとく,酸化銅よりなる酸化部335にて覆われている。また,この酸化部335の幅Wはセラミック積層体1の側面と対面した端部からもっとも内部まで酸化部335が形成された位置までの長さである。本例では,0.4mmであった。
【0072】
得られたセラミック積層体1の断面を図12(b)のように模式図にて示した。誘電層31,32の間に電極層33が形成され,電極層33の表面から誘電層31,32に向かって拡散部330が広がっている。また,本例にかかる製法によって得られたセラミック積層体1は,厚みがだいたい均一な電極層33を有する。また,本例の電極層33の最大厚みは8μm,拡散部330は1μmであった。
【0073】
また,図10にかかる線図において,還元側,つまり酸素分圧の少ない側に炉内を保持して本例と同様の焼成を行って比較例となるセラミック積層体を作製した。これにより得られたセラミック積層体1の断面を図12(a)のように模式図で示した。この場合は途切れて不連続(符号390参照)となった電極層33が形成され,また,拡散部330も存在するが,本例にかかる製法から得られたセラミック積層体1と比較して(図12(b)参照)非常に薄かった。これは,誘電層31,32から遊離した金属鉛と電極層33の銅が反応して部分的に溶融して島状になったためである。 このような切れ切れの電極層33を持ったセラミック積層体を圧電体素子として用いた場合,誘電層31,32に対する導通不良が発生し,また,誘電層31,32に対する電圧印加面積が小さくなるため,伸縮量が少なく,性能低い圧電体素子となってしまう。
【0074】
本例の作用効果について以下に説明する。本例では製造途中に脱脂の終わった未焼積層体15を水素雰囲気で還元処理し,その後焼成したが,水素雰囲気での還元処理の際に印刷部13に含まれる酸化銅が金属銅に変化した。この時,副反応としてグリーンシート11,12(誘電層31,32)に含まれる酸化鉛及び鉛の酸化物化合物も還元し,金属鉛となった。また,焼成において,室温から酸素を殆ど含まない還元雰囲気中に保持したので,同様に未焼積層体15におけるグリーンシート11,12(誘電層31,32)に含まれる酸化鉛及び鉛の酸化物化合物が還元して金属化した鉛が遊離した。
【0075】
未焼積層体15中に鉛が存在した場合,図10のCu+PbOの共存可能領域より還元側(酸素分圧が少ない領域)で焼成を行うと,未焼積層体15中で鉛と銅とが反応して液相となり,液相化した鉛や銅が島状に密集し,切れ切れの電極層となってしまうことがある(図12(a)参照)。また,液相のまま未焼積層体15の外部へ押し出されてしまうこともある。また,この鉛と銅との反応は320℃付近という低温から生じるため,温度調整だけで防止することは難しい。従って,この問題を解決するためには,金属鉛の発生を抑止することと,既に生成された金属鉛を元の酸化鉛に戻すことが必要である。
【0076】
図10に示すような,Cu+PbOの共存可能領域より酸化側(酸素分圧が大きい領域)に制御した場合,未焼積層体15中でグリーンシート11,12(誘電層31,32)中の酸化鉛と印刷部13に含まれる酸化銅とが反応して液相化し,未焼積層体15中で680℃以上の温度において,銅酸化物が拡散する。
【0077】
この金属化した鉛を元の酸化鉛や鉛の酸化物化合物とするために,本例では上述したごとく,昇温時は室温から580℃まで,CO2(pure)5000ミリリットル+Ar−CO(10%)150ミリリットル+O2(pure)2.8〜5ミリリットルといった状態にガスの流量制御を行い,炉外酸素分圧センサ317の値が10-20〜10-10atmとなるように制御した。本例にかかる制御を行うことで,金属化した鉛の生成を抑止すると同時に,既に存在する金属化した鉛を再び酸化して酸化鉛及び鉛の酸化物化合物にもどすことができた。従って,銅と鉛との反応が生じ難くなった。
【0078】
また電極還元時に発生した鉛と銅とが反応して未焼積層体15内部で液相化した場合,外部に液相化した電極材が押し流されて出てくる。しかも液相化は低温から起こる可能性がある。
【0079】
本例に記載した温度や酸素分圧の制御による焼成を行うことで,未焼積層体15における電極層33の表面に露出する銅が室温から580℃において酸化銅(1価及び2価)(固体)へと酸化されるため,金属化した鉛と銅とが反応して未焼積層体内部で液相化した場合であっても,酸化銅がバリアとなって,つまり,図11に示すごとき酸化部335が形成される。よって,未焼積層体15の外に内部の銅等が排出される事が防止される。また切れ切れの電極層33の形成も防止される。
【0080】
以上,本例によれば,焼成中に未焼積層体の誘電層の成分と電極層の成分との反応を防止し,両成分が液相化し難いセラミック積層体とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における,未焼積層体の製造方法を示す説明図。
【図2】実施例における,脱脂の際の温度プロファイルを示す線図。
【図3】実施例における,脱脂の際の未焼積層体の設置状態の説明図。
【図4】実施例における,還元処理の際の温度プロファイルを示す線図。
【図5】実施例における,焼成の際の未焼積層体の設置状態の説明図。
【図6】実施例における,焼成の際のこう鉢の状態を示す説明図。
【図7】実施例における,焼成炉の説明図。
【図8】実施例における,焼成の際の温度及び酸素分圧の制御を示す線図。
【図9】実施例における,焼成の際の焼成炉の内部の温度及び酸素分圧を示す線図。
【図10】実施例における,Cu+PbOの共存可能領域,実施例の焼成の際の温度と酸素分圧の維持の領域を示す線図。
【図11】実施例における,(a)電極層と酸化部の説明図((b)のA−A矢視断面説明図),(b)セラミック積層体の説明図。
【図12】(a)比較例にかかる電極層及び酸化部,(b)実施例にかかる電極層及び酸化部を示す模式図。
【符号の説明】
1...セラミック積層体,
11,12...未焼成シート,
13...印刷部,
145...ユニット素子,
31,32...誘電層,
33...電極層,
330・・・拡散部,
335...酸化部,

Claims (11)

  1. 構成元素として鉛酸化物を含有する酸化物誘電体よりなるグリーンシートに,銅若しくは銅化合物を主成分とする電極ペーストよりなる印刷部を設けて印刷シートを形成し,上記印刷シートを複数枚積層して未焼積層体となし,該未焼積層体に含まれる有機成分を熱処理することで除去する脱脂処理を行い,上記未焼積層体を還元雰囲気で,かつ室温から400〜600℃に至るまでは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御しつつ,焼成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
  2. 請求項1において,酸化銅を主成分とする電極ペーストよりなる印刷部を設けて印刷シートを形成することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
  3. 請求項2において,水素を含む還元雰囲気中にて,上記未焼積層体に含まれる酸化銅を主成分とする印刷部を還元処理することで銅を主成分とする印刷部とすることを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか一項において,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,室温から昇温を開始し,室温から400〜600℃に至るまでは上記還元雰囲気における酸素分圧を10-10〜10-20atm(1.013×10-5(=10-4.994)〜1.013×10-15(=10-14.99)Pa)に制御することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項において,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,400〜600℃より昇温を継続し900〜1000℃に至るまでは上記還元雰囲気における酸素分圧を銅と酸化鉛とが共存可能となる酸素分圧若しくは銅と酸化鉛とが共存可能な酸素分圧よりも高酸素分圧に制御することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
  6. 請求項5において,上記未焼積層体を還元雰囲気で焼成するにあたり,各温度における酸素分圧を下記条件を満たす範囲で制御することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
    1000℃:10-4〜10-7.9atm(10.13(=101.0056)〜1.276×10-3(=10-2.894)Pa)
    900℃:10-5〜10-10.1atm(1.013(=100.0056)〜8.049×10-6(=10-5.094)Pa)
    800℃:10-6〜10-12.2atm(1.013×10-1(=10-0.9944)〜6.393×10-8(=10-7.194)Pa)
    700℃:10-7〜10-14.5atm(1.013×10-2(=10-1.994)〜3.204×10-10(=10-9.494)Pa)
    600℃:10-8〜10-16.6atm(1.013×10-3(=10-2.994)〜2.545×10-12(=10-11.59)Pa)
    500℃:10-9〜10-18.8atm(1.013×10-4(=10-3.994)〜1.606×10-14(=10-13.79)Pa)
  7. 請求項1〜6にかかる製造方法により製造し,鉛を含有する誘電層と該誘電層に対する電圧印加用の銅を含む電極層とが交互に積層され,かつ上記電極層の外部への露出部及び該露出部の近傍は酸化部であることを特徴とするセラミック積層体。
  8. 請求項7において,上記電極層の積層方向と垂直な方向に計った酸化部の酸化幅は0.05〜2mmであることを特徴とするセラミック積層体。
  9. 請求項6または7において,上記誘電層における上記電極層との界面の近傍に,上記電極層を構成する成分の少なくとも1種類が拡散した拡散部があることを特徴とするセラミック積層体。
  10. 請求項9において,上記拡散部は上記電極層由来の銅が拡散した状態にあり, 上記拡散部における上記誘電層と上記電極層との界面からの拡散距離は0.5〜2μmであり,上記拡散部における銅の含有率は0.1〜30wt%であることを特徴とするセラミック積層体。
  11. 請求項7〜10のいずれか一項において,上記セラミック積層体は圧電体素子であることを特徴とするセラミック積層体。
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