JP2007227482A - 積層セラミック素子の製造方法及びセッター - Google Patents

積層セラミック素子の製造方法及びセッター Download PDF

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Abstract

【課題】 積層セラミック素子においてクラックの発生や内部電極層の溶出を確実に抑制可能とする。
【解決手段】 セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体12をセッター11上で脱脂した後、焼成する積層セラミック素子の製造方法であって、セッター11には、積層体12が載置される載置面に凹凸が形成されており、当該凹凸により形成される積層体12下の空間の体積Aと、積層体12の体積Bとの比率A/Bが15%以上である。セッター11の凹凸において、積層体12と接触する凸部の先端には実質的に平坦部が存在しないことが好ましい。セッター11の凹凸は例えば互いに平行な複数の溝13である。
【選択図】 図4

Description

本発明は、セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体をセッター上で脱脂した後、焼成する積層セラミック素子の製造方法に関する。また、本発明は、前記積層セラミック素子の製造方法に用いられるセッターに関する。
例えば圧電素子等に代表される積層セラミック素子は、セラミック材料にバインダーや溶剤等を加えてグリーンシートを形成し、このグリーンシート表面に導体ペーストを印刷し、当該グリーンシートを積層して積層体とした後、加熱炉等において脱脂及び焼成を行うことにより製造される。前記脱脂は、通常、セッターと呼ばれるセラミック板上にグリーンシートの積層体を載置した状態で行われる。
ところで、前記脱脂により積層体中のバインダーや溶剤等を極力除去することが望ましいが、積層体のセッターと接する面においては、前記バインダーや溶剤等が除去され難いため、炭素成分が多く残留する傾向にある。前記残留炭素が多くなると、脱脂後の焼成工程において前記残留炭素が蒸発することにより、セラミックの焼結の遅れや、クラック発生等の不具合を生じることがある。
また、銅やニッケル等の卑金属を内部電極に使用する場合、前記卑金属の酸化を避けるために還元雰囲気中で加熱処理(脱脂)を行うが、還元雰囲気中では有機物質の酸化反応が起こりにくいため、積層体中の残留炭素が増える傾向にある。このとき、セラミック材料に酸化鉛を含み、且つ内部電極に銅を含む場合、残留炭素が焼成時に蒸発することにより前記還元雰囲気をさらに還元し、結果としてセラミック材料中の酸化鉛が金属化したり、生成した金属鉛が銅と共晶反応することにより溶融する等の不具合を発生させることがある。
そこで、このような不具合を解消するための試みがなされている。例えば特許文献1には、セラミックグリーンを焼成してセラミック基板を製造するセラミック基板の製造方法であって、前記セラミックグリーンを載置した状態で前記セラミックグリーンを加熱させたときに発生する物質を前記セラミックグリーンから逃がすための物質逃げ用凹凸部が形成された載置面を有するセッターを用意する工程と、バインダを含有する前記セラミックグリーンを成形する工程と、前記セッターの前記載置面に前記セラミックグリーンを載せて、前記セラミックグリーンの脱バインダを行う工程と、前記セラミックグリーンの脱バインダを行った後に、前記セッターの前記載置面に前記セラミックグリーンを載せたまま、前記セラミックグリーンの焼成を行う工程とを含むセラミック基板の製造方法が開示されており、さらに、前記セッターとして、前記載置面の中心線平均粗さRaが1〜20μmとなるように前記物質逃げ用凹凸部を形成したものを使用することが開示されている。前記従来技術によれば、載置面に物質逃げ用凹凸部が形成されたセッターを使用することにより、セッターとセラミックグリーンとの接触面積が小さくなり、このため、セラミックグリーンの脱バインダ工程において、バインダの燃えかすがセラミックグリーンの裏面(セッターと対向する面)から逃げやすくなり、いわゆる脱バインダ性が良好となる。
特開2005−170769
しかしながら、本発明者らの検討の結果、前記従来技術に記載されるようなセッターを用いたとしても、積層体の裏面側における炭素成分の除去は不十分であり、前記残留炭素に起因するクラック発生や内部電極の溶出等の不具合を完全に解消するには至らないことがわかってきた。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、クラックの発生や内部電極の溶出を確実に抑えることが可能な積層セラミック素子の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記製造方法に用いられるセッターを提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明に係る積層セラミック素子の製造方法は、セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体をセッター上で脱脂した後、焼成する積層セラミック素子の製造方法であって、前記セッターには、前記積層体が載置される載置面に凹凸が形成されており、当該凹凸により形成される積層体下の空間の体積Aと、前記積層体の体積Bとの比率A/Bが15%以上であることを特徴とする。また、本発明に係るセッターは、セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体を脱脂する際に用いられるセッターであって、前記積層体が載置される載置面に凹凸が形成されており、当該凹凸により形成される積層体下の空間の体積Aと、前記積層体の体積Bとの比率A/Bが15%以上であることを特徴とする。
脱脂に際して積層体下に充分な空間が確保されるようなセッターを用いるので、積層体のセッター側における炭素成分の分解除去が円滑に進み、積層体中の残留炭素量が大幅に低減する。このため、脱脂後の焼成工程において残留炭素に起因するセラミックの焼結の遅れやクラック発生、内部電極の溶出等が抑えられる。
本発明によれば、積層体下の空間の体積Aと積層体の体積Bとの比率A/Bが前記範囲となるようなセッターを脱脂の際に用いることで、クラックや内部電極の溶出のない積層セラミック素子を製造することができる。
以下、本発明を適用した積層セラミック素子の製造方法及びセッターについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法の対象である積層セラミック素子(ここでは積層圧電素子)の一例を示すものである。積層圧電素子1は、図1に示すように、複数のセラミック層(圧電体層2)の間に内部電極層3が挿入された積層体4を備えており、この積層体4が活性部分として変位に寄与する。圧電体層2の1層あたりの厚さは任意に設定することができるが、例えば1μm〜100μm程度に設定するのが通常である。積層体4の両側には、不活性領域として内部電極層3が形成されていない不活性圧電層領域5を有するが、この不活性圧電層領域5の圧電層の厚さは、内部電極層3の間の圧電体層2の厚さよりも厚く設定される場合もある。
前記内部電極層3は、図2に示すように交互に逆方向に延長されており、各延長方向の端部には、それぞれ内部電極層3と電気的に接続された端子電極(図示は省略する。)が設けられている。前記端子電極は、例えばAu等の金属をスパッタリングすることにより形成されていてもよいし、電極用ペーストを焼き付けることにより形成されていてもよい。前記端子電極の厚さは、用途や積層圧電素子1のサイズ等によって適宜設定されるが、通常は、10μm〜50μm程度である。
前記積層圧電素子において、前記内部電極層3は、各圧電体層2に電圧を印加する電極としての機能を有するものであり、導電材料により構成される。この場合、導電材料として、Ag、Au、Pt、Pd等の貴金属を用いることもできるが、本発明では、Cu、Ni等の卑金属を用いることが好ましい。導電材料としてCuを用いる場合、Cuペーストを塗布し焼成することにより前記内部電極層3を形成する。前記Cu等の卑金属を電極材料として用いることで、積層圧電素子1の製造コストの削減に繋がる。
一方、前記圧電体層2には、圧電磁器組成物を用いるが、使用する圧電磁器組成物は、例えばPb、Ti、及びZrを構成元素とする複合酸化物を主成分とするものである。ここで、前記複合酸化物は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の他、チタン酸鉛(PbTiO)とジルコン酸鉛(PbZrO)、及び亜鉛・ニオブ酸鉛〔Pb(Zn1/3Nb2/3)O〕により構成される3元系の複合酸化物や、前記3元系の複合酸化物においてPbの一部をSr、Ba、Ca等で置換した複合酸化物等を挙げることができる。
係る3元系の複合酸化物の具体的な組成としては、下記(A)式、あるいは(B)式で表される組成を挙げることができる。なお、これら(A)式、あるいは(B)式において、酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、実際の組成においては、化学量論組成からのずれは許容されるものとする。
Pb[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(A)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。)
(Pba−bMe)[(Zn1/3Nb2/3TiZr]O ・・・(B)
(ただし、0.96≦a≦1.03、0<b≦0.1、0.05≦x≦0.15、0.25≦y≦0.5、0.35≦z≦0.6、x+y+z=1である。また、式中のMeは、Sr、Ca、Baから選ばれる少なくとも1種を表す。)
前述の積層圧電素子1は、焼成後にセラミック層(圧電体層2)や内部電極層3となるセラミック前駆体層と内部電極前駆体層を交互に積層して積層体とする積層工程、積層体を脱脂処理する脱脂工程、及び脱脂した積層体を焼成する焼成工程とにより作製される。以下、積層圧電素子1の製造方法について説明する。
積層圧電素子1を作製するには、先ず、積層工程を行うが、この積層工程では、圧電体層2の原料を用意し、目的とする組成に応じて秤量した後、混合し、仮焼きしてから粉砕してセラミック前駆体粉体を得る。圧電体層2の原料には、圧電体層2を構成する元素の酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物等が用いられるが、例えば圧電体層2が前記チタン酸ジルコン酸鉛である場合、酸化鉛(PbO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)が原料として用いられる。次いで、得られたセラミック前駆体粉体にバインダー等を加えてセラミック原料混合物とし、このセラミック原料混合物をシート状に成形し、セラミック前駆体層を形成する。
同様に、内部電極層3の原料である卑金属、例えば金属銅を用意し、バインダー等を加えて内部電極原料混合物とする。内部電極層3の原料としては、前記金属銅を単独で用いてもよいし、他の材料と混合して用いてもよい。この場合、他の材料としては、例えば焼成後に金属銅となる銅酸化物又は有機銅化合物、さらには、金属銅以外の金属や金属酸化物、有機金属化合物等を挙げることができる。また、内部電極原料混合物には、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料等の添加物を添加してもよい。
前記内部電極原料混合物を前記セラミック前駆体層上に例えばスクリーン印刷することにより、内部電極前駆体層を形成する。以上により、内部電極前駆体層を形成したセラミック前駆体層を複数積層し、セラミック前駆体層と内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体を得る。
前述の積層工程の後、脱脂工程において、得られた積層体に対して脱脂処理を行う。脱脂工程は、積層体を構成する各セラミック前駆体層、内部電極前駆体層に含まれるバインダー等を加熱により分解除去する工程である。本発明では、図3に示すように、セッター11上に前記積層体12を載置した状態で前記脱脂処理を行う。
前記脱脂処理の際、積層体12の下に充分な空間を存在させることにより、分解したバインダー等を積層体12の裏面側から除去することが容易となり、脱脂後の積層体12中の残留炭素量を低減することができる。したがって、セッター11としては、積層体12を載置したとき、積層体12下に充分な空間を与え得る凹凸が載置面に形成されているものを用いることとし、具体的には、図4に示すように、セッター11の前記凹凸により形成される積層体12下の空間の体積Aと積層体12の体積Bとの比率A/Bが15%以上であるものを用いる。ここで、凹凸により形成される積層体12下の空間とは、セッター11上に積層体12が載置された状態を平面視したときに、積層体12のセッター11に対向する面とセッター11の載置面とによって挟まれる空間のことをいう。比率A/Bが15%未満である場合、積層体12下に存在する空間が狭いため、積層体12の裏面からのバインダー等の除去が妨げられる結果、脱脂後の積層体12中の残留炭素量が多くなる。なお、比率A/Bを大きくするほど、クラック発生防止等、本発明の効果を得る観点では好ましい。ただし、比率A/Bが100%を超えると積層体の支持が難しくなるため、この点を考慮して比率A/Bを適宜設定すればよい。
セッター11の積層体載置面の凹凸は、図3及び図4に示すように、例えば互いに平行な複数の溝13により形成される。凹凸として複数の溝13を互いに平衡に配置すると、積層体12の裏面からガス化した残留炭素成分を積層体12下を通る溝13内を介して横方向へ速やかに移動させることができる。したがって、残留炭素の除去をより効率的に行うことができる。
凹凸を形成する互いに平行な複数の溝13の形状は、図3及び図4に示すような断面三角形状に限らず、積層体12下に前記比率A/Bが15%以上となるような空間を与えるものであればよく、例えば断面円弧状、断面矩形状等、任意に設定することができる。また、凹凸を形成する溝13の深さ、ピッチ等も任意に設定することができる。
また、前記セッター11の載置面に形成される凹凸の形状は、積層体12下に前記比率A/Bが15%以上となるような空間を与えるものであれば、前述のような互いに平行な複数の溝13に限るものではなく、例えば突起状等、任意の形状とすることができる。
ただし、セッター11と積層体12とが面接触していると、積層体12のセッター11との接触面に炭素成分が残留し易くなることから、セッター11の積層体12と接触する凸部14の先端には実質的に平坦部が存在しないことが好ましい。セッター11の積層体12と接触する凸部14の先端に実質的に平坦部が存在しないとは、セッター11の載置面における凹凸が互いに平行な複数の溝13として形成されている場合、図5に示すように、溝13間の凸部14において平坦部の幅が0.5mm以下のときのことをいうものとする。
前記セッター11の材料としては、ジルコニア、マグネシア等を挙げることができる。前記セッター11の凹凸は、ジルコニア、マグネシア等の平板の表面を、例えば機械加工することにより形成することができる。
前記脱脂工程は、内部電極層3の原料として含まれる金属の酸化を抑えるため、還元雰囲気中で行うことが好ましい。還元雰囲気で脱脂処理を行う場合、バインダー等の分解が起こり難いため前記クラック発生や内部電極溶出等が大きな問題となるが、比率A/Bが本発明の範囲となるセッターを用いることで、前記問題を解消しつつ脱脂処理を還元雰囲気中で行うことの利点を得ることができる。
前記還元雰囲気とは、具体的には、セラミック前駆体層がセラミック層(圧電体層2)の原料として含む酸化物と、内部電極前駆体層が内部電極層3の原料として含む金属とが共存可能な酸素分圧を有する雰囲気ガスのことである。例えば圧電体層2が酸化物として酸化鉛(PbO)を含み、内部電極層3が金属として銅(Cu)を含む場合、CuとPbOとが共存可能な酸素分圧を有する雰囲気ガス中で脱脂工程を行うことが好ましい。金属と酸化物とが共存可能な酸素分圧を有する雰囲気ガスとは、図6に示すように、金属(例えばCu)が酸化せず、且つ酸化物(例えばPbO)が還元しない酸素分圧を有する雰囲気ガスのことをいう。
また、窒素(N)又はアルゴン(Ar)等の不活性ガスと水蒸気、必要に応じて水素を含む雰囲気ガスを炉内に導入し、式(1)に示した酸素分圧雰囲気中で前記脱脂工程を行うことも、好ましい形態である。前記酸素分圧は式(2)に示した範囲内であることがより好ましい。
p(O)≦(25331×Kp)2/3 ・・・(1)
Kp×10≦p(O2)≦(25331×Kp)2/3 ・・・(2)
〔ただし、式中Kpは水の解離平衡定数を表す。また、酸素分圧p(O)の単位はPaである。〕
前記脱脂工程において、脱脂処理時の温度は、600℃以下とすることが好ましい。脱脂処理温度が600℃を超えると、鉛系のセラミック材料が焼結し始めるので、緻密化して通気孔が閉塞し、バインダーの分解揮発が妨げられるおそれがあるからである。
前記脱脂工程の後、焼成工程において積層体を焼成し、積層セラミック素子1を得る。焼成温度は、脱脂処理温度より高温に設定し、例えば900℃〜1000℃に設定する。焼成工程は還元雰囲気中で行うことが好ましい。前記還元雰囲気とは、前記脱脂工程における説明と同様に、セラミック前駆体層がセラミック層(圧電体層2)の原料として含む酸化物と、内部電極前駆体層が内部電極層3の原料として含む金属とが共存可能な酸素分圧を有する雰囲気ガスのことをいう。
また、前記焼成工程においては、炉内の温度が100℃を超えた時点で、下記式(3)に示される範囲内に酸素分圧を調整した所定の雰囲気ガスを導入することにより、焼成雰囲気を前記還元雰囲気に制御してもよい。前記所定の雰囲気ガスは、例えば不活性ガス(窒素やAr等)、水素、及び水蒸気を含有するものである。焼成工程において炉内の温度が100℃を超えた時点で前記雰囲気ガスを導入することにより、複雑な制御を行わなくとも内部電極層3の酸化や溶出を抑えることができる。
1010×Kp≦P(O)≦1014×Kp ・・・(3)
〔ただし、式中Kpは水の解離平衡定数を表す。また、酸素分圧P(O)の単位はPaである。〕
以上のような製造方法によれば、積層体が載置される載置面の凹凸により形成される積層体下の空間の体積Aと、積層体の体積Bとの比率A/Bが15%以上であるセッターを脱脂工程において用いることで、積層体からバインダー等を充分に除去することができるため、その後の焼成工程においてクラックの発生や内部電極層に用いられる金属等の溶出のような不具合の発生を確実に抑えることができる。
なお、本発明は、バインダー等が除去され難い大型の積層体を脱脂の対象とする場合に特に有効であり、具体的には積層体の体積Bが20mm以上であるときに特に有効である。
また、前述の説明では、積層セラミック素子として積層圧電素子を主な例に挙げたが、本発明はそれ以外の積層セラミック素子の製造方法全般に適用可能であることは言うまでもない。
以下、本発明を適用した実施例について説明する。
<比率A/Bの検討>
(サンプル1)
原料としてPbO、ZrO、TiO、SrCO、ZnO、Nb、Taを用い、これら原料粉をそれぞれ所定量秤量して材料粉末とした。この材料粉末をボールミルにより16時間湿式混合し、乾燥した後、大気雰囲気中700℃〜900℃で2時間仮焼した。その後、さらにボールミルにより16時間湿式粉砕し、乾燥してセラミック前駆体粉末を得た。このセラミック前駆体粉末をアクリル系バインダー、溶剤等と混合してスラリー化し、ドクターブレード法によりグリーンシート(セラミック前駆体層)を形成した。
一方、金属銅粉末にエチルセルロース系バインダー、溶剤等を混合してペースト化し、前記グリーンシート上に1〜2μm未満の厚みになるように印刷した。印刷後、300層のグリーンシートを積層して80℃、1ton/cmの条件で熱圧着し、7×7×30mmに切断してグリーン積層体を得た。
このグリーン積層体100個をジルコニア製のセッター上に設置して、インコネル製の管状炉に挿入し、550℃で32時間保持して脱脂処理を行った。脱脂処理に際しては、脱脂処理温度において金属銅と酸化鉛が共存可能な酸素分圧になるようNとHに水蒸気を含ませた混合ガスを雰囲気ガスとして炉内に投入した。
前記セッターとしては、グリーン積層体の載置面に互いに平行な複数の溝が形成されており、前記溝により形成される積層体下の空間の体積Aと前記積層体の体積Bとの比率A/Bが15%であり、且つ、溝間の凸部の先端に幅0.5mmを超える平坦部が存在しないものを用いた。
脱脂処理終了後、10個の積層体を抜き取り、残留炭素量を分析した。分析には、酸素気流中燃焼・赤外吸収法を用いた。
次に、焼成処理を行った。脱脂処理終了後の残りの積層体については、前記セッターごと匣鉢内に設置した。また、匣鉢の上蓋と枠の間に0.5mm厚のスペーサを設置して、インコネル製の管状炉に挿入し、950℃で2時間保持して焼成を行い、積層セラミック素子を得た。焼成に際しては、焼成温度において金属銅と酸化鉛が共存可能な酸素分圧になるようNとHに水蒸気を含ませた混合ガスを雰囲気ガスとして炉内に投入した。
(サンプル2)
前記脱脂処理の際、溝の深さ及び幅を変更することにより前記比率A/Bを24%としたセッターを用いた。また、脱脂処理後の積層体をサンプル1で用いたものと同様のセッターに載せ替えた後、前記焼成処理を行った。その他は、サンプル1と同様にして積層セラミック素子を得た。
(サンプル3)
前記脱脂処理の際、溝の深さ及び幅を変更することにより前記比率A/Bを36%としたセッターを用いた。また、脱脂処理後の積層体をサンプル1で用いたものと同様のセッターに載せ替えた後、前記焼成処理を行った。その他は、サンプル1と同様にして積層セラミック素子を得た。
(サンプル4)
前記脱脂処理の際、溝の深さ及び幅を変更することにより前記比率A/Bを7%としたセッターを用いた。また、脱脂処理後の積層体をサンプル1で用いたものと同様のセッターに載せ替えた後、前記焼成処理を行った。その他は、サンプル1と同様にして積層セラミック素子を得た。
(サンプル5)
前記脱脂処理の際、溝の形成されていない平板状のセッターを用いた。また、脱脂処理後の積層体をサンプル1で用いたものと同様のセッターに載せ替えた後、前記焼成処理を行った。その他は、サンプル1と同様にして積層セラミック素子を得た。
以上のサンプル1〜5の積層セラミック素子の外観を目視により観察し、クラックや内部電極溶出の有無を確認した。結果を表1に示す。
Figure 2007227482
表1から明らかなように、脱脂処理に際して前記比率A/Bが15%以上となるようなセッターを用いたサンプル1〜サンプル3では、平板状セッターを用いたサンプル6に比べて残炭素量が大幅に低減しており、また、得られた積層セラミック素子に外観上問題は認められなかった。これに対し、脱脂処理に際して平板状セッターを用いたサンプル5ではクラック発生及び内部電極溶出が認められ、また、比率A/Bが15%未満となるようなセッターを用いたサンプル4では、内部電極の溶出が認められた。したがって、脱脂処理に際しては、前記比率A/Bが15%以上となるようなセッターを用いることで、積層セラミック素子を不具合のなく製造できることが確認された。
<平坦部の検討>
(サンプル6)
前記脱脂処理の際、比率A/Bが15%であり、且つ、凸部の先端に幅0.5mmを超える平坦部が存在するセッターを用いた。また、脱処理後の積層体をサンプル1で用いたものと同様のセッターに載せ替えた後、前記焼成処理を行った。その他はサンプル1と同様にして積層セラミック素子を得、外観検査を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007227482
表2から明らかなように、サンプル6では比率A/Bが15%以上であっても内部電極の溶出が認められた。したがって、積層体と接触する凸部の先端に実質的に平坦部が存在しないセッターを脱脂工程で用いることが好ましいとわかった。
積層セラミック素子の一例を示す概略斜視図である。 圧電体層と内部電極層の積層状態の一例を示す概略断面図である。 (a)は脱脂工程におけるセッターと積層体との関係を示す概略平面図であり、(b)は概略断面図である。 脱脂工程におけるセッターと積層体との関係を示す要部概略断面図である。 セッターの要部拡大断面図である。 銅及び鉛の酸素解離曲線を示す図である。
符号の説明
1 積層圧電素子、2 セラミック層(圧電体層)、3 内部電極層、4 積層体、5 不活性圧電層領域、11 セッター、12 積層体、13 溝、14 凸部

Claims (10)

  1. セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体をセッター上で脱脂した後、焼成する積層セラミック素子の製造方法であって、
    前記セッターには、前記積層体が載置される載置面に凹凸が形成されており、当該凹凸により形成される積層体下の空間の体積Aと、前記積層体の体積Bとの比率A/Bが15%以上であることを特徴とする積層セラミック素子の製造方法。
  2. 前記セッターの凹凸において、前記積層体と接触する凸部の先端には実質的に平坦部が存在しないことを特徴とする請求項1記載の積層セラミック素子の製造方法。
  3. 前記セッターの前記載置面に、前記凹凸として互いに平行な複数の溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の積層セラミック素子の製造方法。
  4. 前記溝間の凸部において、平坦部の幅が0.5mm以下とされていることを特徴とする請求項3記載の積層セラミック素子の製造方法。
  5. 還元雰囲気中で前記脱脂を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の積層セラミック素子の製造方法。
  6. 前記セラミック前駆体層は前記原料として酸化物を含み、前記内部電極前駆体層は前記原料として金属を含み、
    前記還元雰囲気として、前記酸化物と前記金属とが共存可能な酸素分圧を有する雰囲気ガスを用いることを特徴とする請求項5記載の積層セラミック素子の製造方法。
  7. 前記積層体の体積が20mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の積層セラミック素子の製造方法。
  8. 前記セラミック前駆体層は前記原料として酸化鉛を含み、前記内部電極前駆体層は前記原料として銅を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の積層セラミック素子の製造方法。
  9. 前記セラミック層はセラミックとしてチタン酸ジルコン酸鉛を含み、前記内部電極層は銅電極層であることを特徴とする請求項8記載の積層セラミック素子の製造方法。
  10. セラミック層の原料を含むセラミック前駆体層と内部電極層の原料を含む内部電極前駆体層とを交互に積層した積層体を脱脂する際に用いられるセッターであって、
    前記積層体が載置される載置面に凹凸が形成されており、当該凹凸により形成される積層体下の空間の体積Aと、前記積層体の体積Bとの比率A/Bが15%以上であることを特徴とするセッター。
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JP2010062303A (ja) * 2008-09-03 2010-03-18 Murata Mfg Co Ltd セラミック素子の製造方法
JP2014512674A (ja) * 2011-03-16 2014-05-22 エプコス アーゲー 圧電アクチュエータ素子の製造方法

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