JP4224528B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキペダルが急速度で踏み込まれたとき、又はブレーキペダルが深く踏み込まれたときに、自動的に制動力を増大させて運転者のブレーキペダル操作を補助するブレーキアシスト制御機能を備えた車両の制動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両を走行中、例えば緊急制動時にはブレーキペダルが急速度で踏み込まれるが、踏力が不十分あるいは踏力の維持が困難で、適切な制動力が得られないということが生じ得る。このような点に鑑み、近時、ブレーキアシスト制御機能を付加することが提案され、既に一部の市販車両に搭載されている。このブレーキアシスト制御は、ブレーキペダルが急速度で踏み込まれたときに、自動的に制動力を増大させて運転者のブレーキペダル操作を補助するものであり、一般的にバキュームブースタの倍圧機能を制御することが行われている。
【0003】
ここで、バキュームブースタを完全に又は部分的に節約することを目的として、アンチスキッド制御又はトラクション制御用のポンプを用いてブレーキアシスト制御を行う技術(特開平8−230634号公報)が知られている。具体的には、このものは、ホイールシリンダと、マスタシリンダと、マスタシリンダをホイールシリンダに接続する主液圧路と、主液圧路を開閉する第1の開閉弁と、第1の開閉弁とホイールシリンダとの間に吐出側を接続しホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプと、液圧ポンプの吸入側をマスタシリンダに接続する補助液圧路と、補助液圧路を開閉する第2の開閉弁と、第1の開閉弁及びホイールシリンダ間に配設された流入弁と、ホイールシリンダに接続された補助リザーバと、ホイールシリンダ及び補助リザーバ間に配設された流出弁とを備えている。
【0004】
また、マスタシリンダの出力液圧を検出する圧力センサが設けられ、マスタシリンダ液圧が所定液圧以上で且つマスタシリンダ液圧の増加割合が所定割合を越えた場合に、液圧ポンプ並びに第1及び第2の開閉弁が制御されてブレーキアシスト制御が行われる。更に、マスタシリンダ液圧が閾値を下回った場合に、所定時間流出弁が開放されると共に、流入弁が閉じられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧が減圧される。そして、所定時間経過後、流出弁、流入弁、第1及び第2開閉弁並びに液圧ポンプを相応に制御することにより、増圧の元の状態が実現される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のものでは、マスタシリンダ液圧が閾値を下回った場合には、単に所定時間流出弁が開放されるだけであるので、運転者の意志(ブレーキペダル操作)に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧することができない。つまり、運転者の意志に応じて円滑に通常ブレーキに移行することができない。
【0006】
故に、本発明は、ブレーキアシスト制御終了時に運転者のブレーキ操作に応じて適切にホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧させ得ることを、その技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するため、請求項1の発明の車両の制動制御装置は、車両の車輪に装着され制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作量に応じて液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダを前記ホイールシリンダに接続する主液圧路と、前記主液圧路を開閉する第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出側を接続し前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの吸入側を前記マスタシリンダに接続する補助液圧路と、前記補助液圧路を開閉する第2の開閉弁と、前記ブレーキペダルの操作に関する値を検出するブレーキ操作検出手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定する開始判定手段と、前記開始判定手段によりブレーキアシスト制御開始要と判定されたときに、前記第1及び第2の開閉弁並びに前記液圧ポンプを制御しブレーキアシスト制御を行うブレーキアシスト制御手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定する終了判定手段とを備えた車両の制動制御装置において、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出されるマスタシリンダ液圧を検出し、前記終了判定手段により前記検出されたマスタシリンダ液圧がブレーキアシスト制御中のマスタシリンダ液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定されたとき、その時点の前記ブレーキペダル操作に関する値に応じて、前記ブレーキアシスト制御された前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧する終了特定制御手段を更に備えたものである。
【0008】
請求項1の発明によれば、ブレーキ操作検出手段にてブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出されるマスタシリンダ液圧を検出し、終了判定手段が検出されたマスタシリンダ液圧がブレーキアシスト制御中のマスタシリンダ液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定したときに、その時点のブレーキペダル操作に関する値に応じて、ブレーキアシスト制御されたホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配でホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧するので、ブレーキアシスト制御終了時に運転者のブレーキ操作に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧を適切に減圧することができる。その結果、運転者の意志に応じて円滑に通常ブレーキに移行することができる。
【0009】
請求項1において、請求項2の発明に示すように、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作速度を検出するブレーキ操作速度検出手段を有し、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの操作速度に応じて前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧するように構成すると、好ましい。この構成によれば、ブレーキペダルの操作速度に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定するので、運転者の意志に応じて一層円滑に通常ブレーキに移行することができる。
【0010】
請求項2において、請求項3の発明に示すように、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの解放速度に応じて、前記第1の開閉弁を駆動するためのデューティを設定するデューティ設定手段と、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時に、前記デューティ設定手段が設定したデューティで所定時間前記第1の開閉弁を駆動すると共に、前記第2の開閉弁を閉駆動する開閉弁駆動手段とから構成されると、好ましい。この構成によれば、制御終了要と判定された時に、ブレーキペダルの解放速度に応じて設定されたデューティで第1の開閉弁を駆動するので、ブレーキアシスト制御終了時に運転者のブレーキ操作に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧を一層適切に減圧することができる。また、アンチスキッド制御等のため、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのモジュレータやホイールシリンダのブレーキ液を排出するための補助リザーバが設けられる場合には、上記のように第1の開閉弁をデューティ駆動すれば、補助リザーバにホイールシリンダのブレーキ液が排出されるのを回避できる。
【0011】
請求項1において、請求項4の発明に示すように、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記ブレーキペダルの操作量に基づき前記ブレーキペダルの操作速度を演算するブレーキ操作速度演算手段とを有し、前記開始判定手段は、前記ブレーキペダルの操作量及び操作速度に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定し、前記終了判定手段は、前記ブレーキペダルの操作量に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定し、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの解放速度に応じて前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧するように構成すると、好ましい。
【0012】
請求項1において、請求項5の発明に示すように、前記第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に介装され、前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータを更に備えると、好ましい。
【0013】
上記技術的課題を解決するため、請求項6の発明の車両の制動制御装置は、車両の車輪に装着され制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作量に応じて液圧を発生する液圧発生装置と、前記液圧発生装置を前記ホイールシリンダに接続する主液圧路と、前記主液圧路に配設され前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータと、前記ホイールシリンダに対し加圧ブレーキ液を出力する補助液圧源と、前記ブレーキペダルの操作に関する値を検出するブレーキ操作検出手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定する開始判定手段と、前記開始判定手段によりブレーキアシスト制御開始要と判定されたときに、前記補助液圧源の加圧ブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給しブレーキアシスト制御を行うブレーキアシスト制御手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定する終了判定手段とを備えた車両の制動制御装置において、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出される前記液圧発生装置が発生する液圧を検出し、前記終了判定手段により前記検出された液圧発生装置が発生する液圧がブレーキアシスト制御中の前記液圧発生装置が発生する液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定されたときに、その時点の前記ブレーキペダル操作に関する値に応じて、前記ブレーキアシスト制御された前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧する終了特定制御手段を更に備えたものである。
【0014】
請求項6の発明によれば、ブレーキ操作検出手段にてブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出される前記液圧発生装置が発生する液圧を検出し、終了判定手段が前記検出された液圧発生装置が発生する液圧がブレーキアシスト制御中の前記液圧発生装置が発生する液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定したときに、その時点のブレーキペダル操作に関する値に応じて、ブレーキアシスト制御されたホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配でホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧するので、ブレーキアシスト制御終了時に運転者のブレーキ操作に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧を適切に減圧することができる。その結果、運転者の意志に応じて円滑に通常ブレーキに移行することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の制動制御装置の一実施形態を示すもので、エンジンEGはスロットル制御装置TH及び燃料噴射装置FIを備えた内燃機関で、スロットル制御装置THにおいてはアクセルペダルAPの操作に応じてメインスロットルバルブMTのメインスロットル開度が制御される。また、電子制御装置ECUの出力に応じて、スロットル制御装置THのサブスロットルバルブSTが駆動されサブスロットル開度が制御されると共に、燃料噴射装置FIが駆動され燃料噴射量が制御されるように構成されている。本実施形態のエンジンEGは変速制御装置GS及びディファレンシャルギヤDFを介して車両前方の車輪FL,FRに連結されており、所謂前輪駆動方式が構成されているが、本発明における駆動方式をこれに限定するものではない。
【0017】
次に、制動系については、車輪FL,FR,RL,RRに夫々ホイールシリンダWfl,Wfr,Wrl,Wrrが装着されており、これらのホイールシリンダWfl等にブレーキ液圧制御装置PCが接続されている。尚、車輪RL、RRは従動輪を示している。ブレーキ液圧制御装置PCは図2に示すように構成されており、これについては後述する。
【0018】
車輪FL,FR,RL,RRには車輪速度センサWSl乃至WS4が配設され、これらが電子制御装置ECUに接続されており、各車輪の回転速度、即ち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。また、マスタシリンダMCの出力ブレーキ液圧(以下マスタシリンダ液圧という)Pmcを検出する液圧センサPSが電子制御装置ECUに接続されており、マスタシリンダ液圧Pmcを表す信号が電子制御装置ECUに入力されるように構成されている。更に、ブレーキペダルBPが踏み込まれたときオンとなるブレーキスイッチBS、車両前方の車輪FL,FRの舵角θfを検出する前輪舵角センサ(図示せず)、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサ(図示せず)及び車両ヨーレイトγを検出するヨーレイトセンサ(図示せず)等が電子制御装置ECUに接続されている。
【0019】
本実施形態の電子制御装置ECUは、バスを介して相互に接続されたプロセシングユニットCPU、メモリROM、RAM、入力ポートIPT及び出力ポートOPT等から成るマイクロコンピュータMCPを備えている。上記車輪速度センサWSl乃至WS4、液圧センサPS、ブレーキスイッチBS、前輪舵角センサ、ヨーレイトセンサ、横加速度センサ等の出力信号は増幅回路AMPを介して夫々入力ポートIPTからプロセシングユニットCPUに入力されるように構成されている。また、出力ポートOPTからは駆動回路ACTを介してスロットル制御装置TH及びブレーキ液圧制御装置PCに夫々制御信号が出力されるように構成されている。
【0020】
マイクロコンピュータMCPにおいては、メモリROMは図3乃至図9に示したフローチャートを含む種々の処理に供するプログラムを記憶し、プロセシングユニットCPUは図示しないイグニッションスイッチが閉成されている間当該プログラムを実行し、メモリRAMは当該プログラムの実行に必要な変数データを一時的に記憶する。尚、スロットル制御等の各制御毎に、もしくは関連する制御を適宜組合せて複数のマイクロコンピュータを構成し、相互間を電気的に接続することとしてもよい。
【0021】
ブレーキ液圧制御装置BCを示すもので、ブレーキペダルBPの操作に応じてバキュームブースタVBを介してマスタシリンダMCが倍力駆動され、マスタリザーバLRS内のブレーキ液が昇圧されて車輪FR,RL及び車輪FL,RR側の液圧系統にマスタシリンダ液圧が出力されるようになっている。マスタシリンダMCはタンデム型のマスタシリンダで、2つの圧力室が夫々各ブレーキ液圧系統に接続されている。即ち、第1の圧力室MCaは車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統に連通接続され、第2の圧力室MCbは車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統に連通接続される。
【0022】
車輪FR,RL側のブレーキ液圧系統においては、第1の圧力室MCaは主液圧路MF及びその分岐液圧路MFr,MFlを介して夫々ホイールシリンダWfr,Wrlに接続されている。主液圧路MFには、常開型の2ポート2位置の第1の電磁開閉弁SC1(所謂カットオフ弁として機能するもので、以下、単に開閉弁SC1という)が配設されている。また、第1の圧力室MCaは補助液圧路MFcを介して後述する逆止弁CV5,CV6に接続されている。補助液圧路MFcには前述の液圧センサPSが接続されており、マスタシリンダ液圧Pmcが検出される。尚、ブレーキペダルBPの操作状態を検出するセンサとしては、液圧センサPSの代わりに、ブレーキペダルBPのストロークを検出するストロークセンサを用いても良い。
【0023】
分岐液圧路MFr,MFlには夫々、常開型の2ポート2位置の電磁開閉弁PC1及びPC2(以下、単に開閉弁PC1,PC2という)が配設されている。また、これらと並列に夫々逆止弁CV1,CV2が配設されている。逆止弁CV1,CV2は、マスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れのみを許容するもので、これらの逆止弁CV1,CV2及び開閉弁SC1を介してホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液がマスタシリンダMCひいてはマスタシリンダリザーバLRSに戻されるようになっている。従って、ブレーキペダルBPが開放された時に、ホイールシリンダWfr,Wrl内の液圧はマスタシリンダMC側の液圧低下に迅速に追従し得る。また、ホイールシリンダWfr,Wrlに連通接続される排出側の分岐液圧路RFr,RFlに、夫々常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁PC5,PC6(以下、単に開閉弁PC5,PC6という)が配設され、分岐液圧路RFr,RFlが合流した排出液圧路RFは補助リザーバRS1に接続されている。
【0024】
補助リザーバRS1には、逆止弁CV6,CV5を介して液圧ポンプHP1の吸入側が接続され、その吐出側は逆止弁CV7及び液圧路MFpを介して開閉弁PC1,PC2の上流側に接続されている。液圧ポンプHP1は、液圧ポンプHP2と共に単一の電動モータMによって駆動され、吸入側からブレーキ液を導入し所定の圧力に昇圧して吐出側から出力する。補助リザーバRS1は、マスタシリンダMCのマスタリザーバLRSとは独立して設けられたもので、アキュムレータということもでき、ピストンとスプリングを備え、所定の容量のブレーキ液を貯蔵し得るように構成されている。
【0025】
マスタシリンダMCは、補助液圧路MFcを介して液圧ポンプHP1の吸入側の逆止弁CV5と逆止弁CV6との間に連通接続されている。逆止弁CV5は、補助リザーバRS1へのブレーキ液の流れを阻止し、逆方向への流れを許容するものである。また、逆止弁CV6,CV7は、液圧ポンプHP1を介して吐出されるブレーキ液の流れを一定方向に規制するもので、通常は液圧ポンプHP1内に一体的に構成されている。而して、開閉弁SI1は、図2に示す常態の閉位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸入側との連通が遮断され、開位置でマスタシリンダMCと液圧ポンプHP1の吸入側が連通するように切り換えられる。
【0026】
また、開閉弁SC1には並列に、リリーフ弁RV1及び逆止弁AV1が配設されている。リリーフ弁RV1は、マスタシリンダMCから開閉弁PC1,PC2方向へのブレーキ液の流れを制限し、開閉弁PC1,PC2側のブレーキ液圧がマスタシリンダ液圧に対し所定の設定圧以上大になった時に、マスタシリンダMC方向へのブレーキ液の流れを許容するもの(所謂相対圧リリーフ弁)で、これにより液圧ポンプHP1の吐出ブレーキ液が所定の圧力を越えるのを回避できる。逆止弁AV1は、ホイールシリンダWfr,Wrl方向へのブレーキ液の流れを許容し、逆方向への流れを禁止するものである。この逆止弁AV1の存在により、開閉弁SC1が閉位置であっても、ブレーキペダルBPが踏み込まれた場合にはホイールシリンダWfr,Wrl内のブレーキ液圧が増圧される。尚、液圧ポンプHP1の吐出側にダンパDP1が配設され、後輪側のホイールシリンダWrlに至る液圧路にプロポーショニングバルブPV1が介装されている。
【0027】
一方、車輪FL,RR側のブレーキ液圧系統においても同様に、リザーバRS2、ダンパDP2及びプロポーショニングバルブPV2をはじめ、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁SC2(第1の開閉弁)、常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁SI2(第2の開閉弁)、常開型の2ポート2位置電磁開閉弁PC3,PC4、常閉型の2ポート2位置電磁開閉弁PC7,PC8、逆止弁CV3,CV4,CV8及至CV10、リリーフ弁RV2並びに逆止弁AV2が配設されている。液圧ポンプHP2は、電動モータMによって液圧ポンプHP1と共に駆動される。
【0028】
上記電動モータM、開閉弁SC1,SC2,SI1,SI2並びに開閉弁PC1及至PC8は、前述の電子制御装置ECUによって駆動制御され、後述するブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御、制動操舵制御(オーバーステア抑制制御又はアンダーステア抑制制御)、前後制動力配分制御、トラクション制御等の各種制御が行われる。
【0029】
上記のように構成された本実施形態においては、電子制御装置ECUにより制動操舵制御、ブレーキアシスト制御、アンチスキッド制御等の一連の処理が行なわれ、イグニッションスイッチ(図示せず)が開成されると図3乃至図8等のフローチャートに対応したプログラムの実行が開始する。
【0030】
図3は制動制御の作動を示すもので、先ずステップ101にてマイクロコンピュータMCPが初期化され、各種の演算値がクリアされる。次にステップ102において、車輪速度センサWS1乃至WS4の検出信号が読み込まれると共に、液圧センサPSの検出信号(マスタシリンダ液圧Pmc)が読み込まれる。また、前輪舵角センサの検出信号(舵角θf)、ヨーレイトセンサの検出信号(実ヨーレイトγ)及び横加速度センサの検出信号(即ち、実横加速度Gya)が読み込まれる。
【0031】
続いてステップ103に進み、マスタシリンダ液圧Pmcが微分され、マスタシリンダ液圧変化割合DPmcが求められる。そして、ステップ104にて各車輪の車輪速度Vw** (**は各車輪を表す)が演算されると共に、各車輪の車輪速度Vw** が微分されて各車輪の車輪加速度DVw** が演算される。次いで、ステップ105において、各車輪の車輪速度Vw** に基づき車両の重心位置における推定車体速度VsoがVso=MAX(Vw** )として演算されると共に、各車輪位置における推定車体速度Vso**が求められる。更に、必要に応じ、この各輪位置車体速度Vso**に対し、車両旋回時の内外輪差等に基づく誤差を低減するため正規化が行われる。更に、車両の重心位置における前後方向の車体減速度(以下車体減速度という)DVsoが重心位置での車体速度Vsoを微分することにより演算される。尚、ここでは説明の便宜上、車体減速度としたが、符号を逆にすれば車体加速度となる)。
【0032】
次いで、ステップ106にて、上記ステップ103及び104で求められた各車輪の車輪速度Vw** と各輪位置での推定車体速度Vso**(あるいは、正規化された各輪位置推定車体速度)に基づき、各車輪の実スリップ率Sa** がSa** =(Vso**−Vw**)/Vso**として求められる。次いで、ステップ107にて重心位置での車体減速度DVso及び実横加速度Gyaに基づき、路面摩擦係数μが近似的にμ=(DVso2 +Gya2 )1/2 として推定される。尚、この路面摩擦係数μ及び各車輪のホイールシリンダ液圧Pw**の推定値に基づき、各車輪位置の路面摩擦係数μ**も演算しても良い。
【0033】
続いて、ステップ108にてブレーキアシスト制御が行われるが、これについては後述する。そして、ステップ109に進み、アンチスキッド制御等の各種制御モードが設定され、各種制御モードに供する目標スリップ率が設定される。次いで、ステップ110の液圧サーボ制御により、ブレーキ液圧制御装置PCが制御され各車輪に対する制動力が制御される。特に、ブレーキアシスト制御においては、電動モータM、開閉弁SC1,SC2,SI1,SI2が駆動制御される。
【0034】
次に、図4を参照して図3のステップ108におけるブレーキアシスト制御の具体的内容について説明する。
【0035】
まずステップ201において、ブレーキアシスト制御フラグFLがフラグF1又はフラグF2か否かが判定され、そうでなければステップ202に進む。ここで、フラグF1は開始特定制御中を、F2は本制御中を夫々意味する。ステップ202では、BA制御開始条件を充足しているか否かが判定され、そうであればステップ203に進み、制御フラグFLが開始特定制御中フラグF1にセットされる。ここで、上記ブレーキアシスト制御の開始条件は、液圧センサPSの検出液圧Pmcが所定値以上であり、且つその検出液圧の変化割合DPmcが所定割合以上である。
【0036】
続いて、ステップ203からステップ204に進み、開始特定制御演算が行われる。即ち、開始特定制御に供する開閉弁SI*のデューティDis及び開始特定制御の実行時間Tsが設定される。具体的には、開閉弁SI*のデューティDisは、制御開始要判定時点のマスタシリンダ液圧Pmcとマスタシリンダ液圧の変化割合DPmcに応じて、マップ(図示せず)の中から選択される。マスタシリンダ液圧Pmcが高い程開閉弁SI*のデューティDisが大きく設定され、マスタシリンダ液圧の変化割合(増加割合)DPmcが大きい程開閉弁SI*のデューティDisが大きく設定される。また、開始特定制御の実行時間Tsは、ホイールシリンダWCに供給すべき目標のブレーキ液量Vcを開閉弁SI*のデューティDis等を考慮した液圧ポンプHPの単位時間当たりの吐出量Vpで除した値(時間)と一定時間Tc(例えば1sec)の小さい方の時間に設定される。
【0037】
そして、ステップ205に進み、開始特定制御用の開閉弁SI*のデューティがステップ204で選択された値に設定されると共に、開閉弁SC*のデューティが100%に設定される。次いで、ステップ206において、ブレーキアシスト制御開始後上記の実行時間Ts経過したか否かが判定され、経過してなければそのまま図3のメインルーチンに戻り、経過していればステップ207において制御フラグFLがF2にセットされた後、図3のメインルーチンに戻る。
【0038】
一方、ステップ201で制御フラグFLが開始特定制御中フラグF1又は本制御中フラグF2と判定されると、ステップ208に進み、ブレーキアシスト制御終了条件が充足しているか否か(即ち制御終了要否)が判定される。ここで、ブレーキスイッチBSがオフ、重心位置での車体速度Vsoが所定速度以下、マスタシリンダ液圧Pmcが所定の下限値Pa(例えば1MPa)以下、の何れか1つの条件が成立した場合、制御終了要と判定される。ステップ208において、終了条件が充足していないと判定されると、ステップ209に進み、制御フラグFLが開始特定制御中フラグF1か否かが判定される。そうであれば、再びステップ205及至207の処理が実行される。ステップ209で制御フラグFLがF1でないと判定されると、制御フラグFLが本制御中グラグF2であるので、ステップ210及至213に進み本制御の処理が実行される。
【0039】
まず、ステップ210において、マスタシリンダ液圧Pmcに応じた車両減速度Gmに対し、ブレーキアシスト制御用として所定の液圧に応じた車両減速度Δgが加算され、車両の目標減速度G*が設定される。つまり、ブレーキペダルBPの操作量に応じた目標減速度G*が設定される。続いて、ステップ211に進み、上記の車両の目標減速度G*と実減速度として用いる重心位置での車体減速度DVsoとの差が演算される。
【0040】
次いで、ステップ212に進み、減速度偏差ΔGを制御偏差として、ブレーキアシスト制御量の演算が行われる。即ち、図8のグラフを用いて減速度偏差ΔGに基づき開閉弁SI*,SC*のデューティ(通電時間の割合)が設定される。具体的には、増圧側(減速度偏差ΔGが正)では、開閉弁SI*のデューティDiが減速度偏差に比例するように設定されると共に、開閉弁SC*のデューティDcが100%近傍の一定値とされ、略閉位置とされる。ここで、減速度偏差0<ΔG<Gkのときには開閉弁SI*のデューティDiが0%とされ、開閉弁SI*が閉位置とされる。一方、減圧側(減速度偏差ΔGが負)では、開閉弁SC*のデューティDcが減速度偏差に比例するように設定されると共に、開閉弁SI*のデューティDiが0%近傍の一定値とされ、略閉位置とされる。また、開閉弁SI*のデューティDiに対し所定の制限が加えられている。つまり、減速度偏差ΔGが大きくても、開閉弁SI*のデューティDiが所定の上限値Dupを越えないように設定されている。これは、マスタシリンダMCから過剰な量のブレーキ液が液圧ポンプHPに吸込まれるのを極力回避するためで、これによりブレーキペダルBPの沈み込みや液圧センサPSの出力信号の変動を極力抑えることができる。
【0041】
続いて、ステップ213に進み、ブレーキアシスト制動力配分制御量演算が行われる。これは、ブレーキアシスト制御中にも、各車輪間の制動力配分を調整して安定した制動状態を維持するもので、各車輪の目標スリップ率が設定される。その後、図3のメインルーチンに戻る。
【0042】
一方、ステップ208でブレーキアシスト制御終了条件が充足していると判定されると、ステップ214に進み、制御フラグFLが終了特定制御中フラグF3にセットされる。次いで、ステップ215において、終了特定制御演算が実行される。即ち、制御終了要判定時点のマスタシリンダ液圧の変化割合(減圧割合)DPmcに応じて、図9のグラフを用いて終了特定制御に供する開閉弁SC*のデューティDceが設定される。図9から明らかなように、DPmc≦DPmc1(例えば100kgf/cm2/sec)の場合、DceはDce2(例えば85%)に、DPmc1<DPmc≦DPmc2(例えば150kgf/cm2/sec)の場合、 DceはDce2よりも小さいDce1(例えば20%)に、DPmc2<DPmcの場合、Dceは0%にそれぞれ設定される。つまり、開閉弁SC*のデューティDceは、運転者の意志を反映するため、マスタリンダ液圧の減少割合が大きいと小さくされている。また、終了特定制御の実行時間Teが、一定時間(例えば0.2sec)に設定される。
【0043】
そして、ステップ216に進み、終了特定制御用の開閉弁SC*のデューティがステップ215で選択された値に設定されると共に、開閉弁SI*のデューティが0%に設定される。次いで、ステップ217において、ブレーキアシスト制御終了後上記実行時間Teを経過したか否かが判定され、経過してなければ図3のメインルーチンに戻り、経過していればステップ218に進み、制御フラグFLがF0にセットされた後、図3のメインルーチンに戻る。
【0044】
一方、ステップ202において、BA制御開始条件が充足していない(即ち終了特定制御中又は非制御)と判定されると、ステップ219に進み、制御フラグFLが終了特定制御中フラグF3か否かが判定され、そうであれば、ステップ216及至218が再び実行された後、図3のメインルーチンに戻る。ステップ219で制御フラグFLが終了特定制御中フラグF3でないと判定されると、非制御を意味するので図3のメインルーチンに戻る。
【0045】
図5は上記のブレーキアシスト制御を説明するタイミングチャートであり、(A)の特性は液圧センサPSの検出マスタシリンダ液圧Pmcを示し、ブレーキペダルBPの踏力に略対応する。実線はブレーキアシスト制御時の特性の一例を示し、2点鎖線はブレーキアシスト制御が行われない場合の特性を示す。尚、ブレーキアシスト制御時のホイールシリンダのブレーキ液圧を破線で示している。(B)はブレーキアシスト制御の制御モードを示し、図5の左側から開始特定制御、ゲインダウン制御、本制御、終了特定制御の順で行われる。従って、これら以外はブレーキアシスト非制御である。(C)の特性はブレーキアシスト制御に起因するマスタシリンダ液圧Pmcの変化(落込量)を示し、(D)の特性はブレーキアシスト制御時の液圧センサPSの出力に対する依存度を示す。(E)の特性は減速度偏差ΔGの変化を示し、(F)の特性は開閉弁SI*,SC*のデューティの変化を示す。
【0046】
同図において、液圧センサPSの検出マスタシリンダ液圧Pmcが所定値以上で、その変化割合DPmcが所定割合以上となったa点で、ブレーキアシスト制御の開始特定制御が開始し、実行時間Ts後のb点までの間、開閉弁SI*のデューティDisが前述のマップに基づく一定値に設定される。b点で開始特定制御が終了すると、その後ゲインダウン制御が行われ、実行時間Td経過後のc点までの間、開閉弁SI*のデューティDiが本制御時の50%に制限される。
【0047】
その後、f点まで本制御が行われ、開閉弁SI*のデューティDi及び開閉弁SC*のデューティDcが減速度偏差ΔGに比例するように設定され、それに基づき開閉弁SI*,SC*が開閉制御される。即ち、(A)の破線で示すように、ホイールシリンダ液圧が、2点鎖線のマスタシリンダ液圧に対し所定圧力分、嵩上げされた液圧に調整される。但し、ブレーキアシスト制御中のマスタシリンダ液圧Pmcは、実線で示すようにマスタシリンダMC内のブレーキ液が液圧ポンプHPに吸込まれる分、2点鎖線のマスタシリンダ液圧に対し低い値になる。
【0048】
本制御中、例えばd点でブレーキペダルBPの踏力が弱められると、減速度偏差ΔGが負の値(即ち加速度)となり、更に、e点でブレーキペダルの踏力が増大すると、減速度偏差ΔGが増加する。この減速度偏差ΔGの増加に応じ開閉弁SI*のデューティDiが増加するが、そのまま(F)の破線で示すように増加すると、それだけ液圧ポンプHPに吸込まれるブレーキ液の量が増加し、(A)のe点近傍に破線で示すようにマスタシリンダ液圧が急減し、ブレーキペダルBPの踏力が極端に低下するので、運転者に違和感を与えることとなる。このため、開閉弁SI*のデューティDiが上限値Dupを越えないように設定され、(F)のe点近傍の実線で示すように制限が加えられる。そして、f点で液圧センサPSの検出マスタシリンダ液圧Pmcが所定値未満と判定されると、終了特定制御が行われ、実行時間Teの間、図9に示すグラフに応じて設定された開閉弁SC*のデューティDceに基づき開閉弁SC*が駆動された後、ブレーキアシスト制御が終了する。
【0049】
最後に、図6及び図7を参照して、図3のステップ109の液圧サーボ制御の詳細を説明するが、ここでは開閉弁SI*,SC*の駆動制御並びに各車輪についてホイールシリンダ液圧のスリップ率サーボ制御が行なわれる。
【0050】
先ず、ステップ301にて制動操舵制御モードか否かが判定され、そうであればステップ302に進み、予め設定された制動操舵制御用の目標スリップ率Sv**が各車輪の目標スリップ率St**とされ、そうでなければステップ303に進み、各車輪の目標スリップ率St**が0とされた後、ステップ304に進む。ステップ304では、ブレーキアシスト制動力配分制御中か否かが判定され、そうであれば、ステップ305にて目標スリップ率St**にブレーキアシスト制動力配分制御用のスリップ率補正量ΔSb**が加算された後、ステップ306に進み、そうでなければそのままステップ306に進む。ステップ306では、目標スリップ率St**に対し前後制動力配分制御用のスリップ率補正量ΔSd**、トラクション制御用のスリップ率補正量ΔSr**、アンチスキッド制御用のスリップ率補正量ΔSs**が加算されて目標スリップ率St** が更新される。尚、ΔSd**、ΔSr**、ΔSs**の値は該当する制御が行われていない時には0とされる。
【0051】
そして、ステップ307において各車輪毎にスリップ率偏差ΔSt** が演算されると共に、ステップ308にて車体加速度偏差ΔDVso**が演算される。具体的には、ステップ307において、各車輪の目標スリップ率St** と実スリップ率Sa** の差が演算されスリップ率偏差ΔSt** が求められる(ΔSt** =St** −Sa** )。また、ステップ308において、車両重心位置での車体減速度DVsoと制御対象の車輪における車輪加速度DVw**の差が演算され、車体減速度偏差ΔDVso**が求められる。このときの各車輪の実スリップ率Sa** 及び車体減速度偏差ΔDVso**はアンチスキッド制御、トラクション制御等の制御モードに応じて演算が異なるが、これらについては説明を省略する。
【0052】
続いて、ステップ309に進みスリップ率偏差ΔSt** が所定値Ka と比較され、所定値Ka 以上であればステップ311にてスリップ率偏差ΔSt** の積分値が更新される。即ち、今回のスリップ率偏差ΔSt** にゲインGI** を乗じた値が前回のスリップ率偏差積分値IΔSt** に加算され、今回のスリップ率偏差積分値IΔSt** が求められる。スリップ率偏差|ΔSt**|が所定値Kaを下回るときにはステップ310にてスリップ率偏差積分値IΔSt** はクリア(0)される。次に、ステップ312乃至315において、スリップ率偏差積分値IΔSt** が上限値Kb 以下で下限値Kc 以上の値に制限され、上限値Kb を超えるときはKb に設定され、下限値Kc を下回るときはKc に設定された後、ステップ316に進む。
【0053】
ステップ316においては、各制御モードにおけるブレーキ液圧制御に供する一つのパラメータY**がGs** ・(ΔSt** +IΔSt** )として演算される。また、ステップ317において、ブレーキ液圧制御に供する別のパラメーラX**がGd** ・ΔDVso**として演算される。尚、ゲインGs** ,Gd** は予め設定された固定ゲインである。
【0054】
この後、ステップ318に進み、各車輪毎に、上記パラメータX**,Y**に基づき、図10に示す制御マップに従って液圧モードが設定される。図10においては予め急減圧領域、パルス減圧領域、保持領域、パルス増圧領域及び急増圧領域の各領域が設定されており、パラメータX**及びY**の値に応じて、何れの領域に該当するかが判定される。尚、非制御状態では液圧モードは設定されない(ソレノイドオフ)。
【0055】
ステップ318にて今回判定された領域が、前回判定された領域に対し、増圧から減圧もしくは減圧から増圧に切換わる場合には、ブレーキ液圧の立下りもしくは立上りを円滑にする必要があるので、ステップ319において増減圧補償処理が行なわれる。例えば急減圧モードからパルス増圧モードに切換るときには、急増圧制御が行なわれ、その時間は直前の急減圧モードの持続時間に基づいて決定される。続いて、ステップ320にて各車輪の制御モードが他の車輪との関係において設定される。例えば、リアローセレクト制御が行われ、後方の車輪RR,RLについて低速側の車輪に基づいて液圧制御が行われる。
【0056】
そして、ステップ321において、図4のステップ205,212及び216で設定された開閉弁SI*のデューティDi及び開閉弁SC*のデューティDcに基づき、開閉弁SI*,SC*が開閉駆動(即ちデューティ駆動)されると共に、電動モータMも駆動される。尚、ステップ321では、上記液圧制御モード、増減圧補償処理及び各輪制御モード処理に応じて、開閉弁PC1及至PC8のソレノイドも駆動され、各車輪の制動力が制御される。
【0057】
尚、本実施形態では、終了特定制御において、開閉弁SC*をデューティ駆動したが、モジュレータである常閉型の制御弁PC5〜PC8をデューティ駆動しても良い。
【0058】
また、本発明は、アキュムレータを用いてブレーキアシスト制御を行うものにも適用できる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、ブレーキアシスト制御終了要と判定されたときに、その時点のブレーキペダル操作に関する値に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配でホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧するので、ブレーキアシスト制御終了時に運転者のブレーキ操作に応じてホイールシリンダのブレーキ液圧を適切に減圧することができる。その結果、運転者の意志に応じて円滑に通常ブレーキに移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動制御装置の一実施形態の全体構成図である。
【図2】図1のブレーキ液圧制御装置の一例を示す構成図である。
【図3】本発明の一実施形態における車両の制動制御の全体を示すフローチャートである。
【図4】図3のブレーキアシスト制御の詳細を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態におけるマスタシリンダ液圧、ブレーキアシスト制御モード、減速度偏差、各開閉弁のデュ−ティ等の変動状況を示すタイミングチャートである。
【図6】図3の液圧サーボ制御の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図3の液圧サーボ制御の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図4のブレーキアシスト制御量演算の詳細を示すグラフである。
【図9】本実施形態において、マスタシリンダ液圧の減圧割合と終了特定制御に供するデューティDceとの関係を示すグラフである。
【図10】本実施形態において、ブレーキ液圧制御に供するパラメータと液圧モードとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
FR,FL,RR,RL 車輪
Wfr,Wfl,Wrr,Wrl ホイールシリンダ
BP ブレーキペダル
MC マスタシリンダ
MF 主液圧路
SC1,SC2 第1の開閉弁
HP1,HP2 液圧ポンプ
MFc 補助液圧路
SI1,SI2 第2の開閉弁
PS 液圧センサ(ブレーキ操作量検出手段)
PC1〜PC8 開閉弁(モジュレータ)
ECU 電子制御装置
Claims (6)
- 車両の車輪に装着され制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作量に応じて液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダを前記ホイールシリンダに接続する主液圧路と、前記主液圧路を開閉する第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に吐出側を接続し前記ホイールシリンダに対し昇圧したブレーキ液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの吸入側を前記マスタシリンダに接続する補助液圧路と、前記補助液圧路を開閉する第2の開閉弁と、前記ブレーキペダルの操作に関する値を検出するブレーキ操作検出手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定する開始判定手段と、前記開始判定手段によりブレーキアシスト制御開始要と判定されたときに、前記第1及び第2の開閉弁並びに前記液圧ポンプを制御しブレーキアシスト制御を行うブレーキアシスト制御手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定する終了判定手段とを備えた車両の制動制御装置において、
前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出されるマスタシリンダ液圧を検出し、
前記終了判定手段により前記検出されたマスタシリンダ液圧がブレーキアシスト制御中のマスタシリンダ液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定されたとき、
その時点の前記ブレーキペダル操作に関する値に応じて、前記ブレーキアシスト制御された前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧する終了特定制御手段を更に備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項1において、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作速度を検出するブレーキ操作速度検出手段を有し、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの操作速度に応じて前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧することを特徴とする車両の制動制御装置。
- 請求項2において、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの解放速度に応じて、前記第1の開閉弁を駆動するためのデューティを設定するデューティ設定手段と、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時に、前記デューティ設定手段が設定したデューティで所定時間前記第1の開閉弁を駆動すると共に、前記第2の開閉弁を閉駆動する開閉弁駆動手段とを有することを特徴とする車両の制動制御装置。
- 請求項1において、前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記ブレーキペダルの操作量に基づき前記ブレーキペダルの操作速度を演算するブレーキ操作速度演算手段とを有し、前記開始判定手段は、前記ブレーキペダルの操作量及び操作速度に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定し、前記終了判定手段は、前記ブレーキペダルの操作量に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定し、前記終了特定制御手段は、前記終了判定手段により制御終了要と判定された時点の前記ブレーキペダルの解放速度に応じて前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧することを特徴とする車両の制動制御装置。
- 請求項1において、前記第1の開閉弁と前記ホイールシリンダとの間に介装され、前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータを更に備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
- 車両の車輪に装着され制動力を付与するホイールシリンダと、ブレーキペダルの操作量に応じて液圧を発生する液圧発生装置と、前記液圧発生装置を前記ホイールシリンダに接続する主液圧路と、前記主液圧路に配設され前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を調整するモジュレータと、前記ホイールシリンダに対し加圧ブレーキ液を出力する補助液圧源と、前記ブレーキペダルの操作に関する値を検出するブレーキ操作検出手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の開始の要否を判定する開始判定手段と、前記開始判定手段によりブレーキアシスト制御開始要と判定されたときに、前記補助液圧源の加圧ブレーキ液を前記ホイールシリンダに供給しブレーキアシスト制御を行うブレーキアシスト制御手段と、前記ブレーキ操作検出手段の検出結果に基づきブレーキアシスト制御の終了の要否を判定する終了判定手段とを備えた車両の制動制御装置において、
前記ブレーキ操作検出手段は、前記ブレーキペダルの操作に関する値として液圧センサにて検出される前記液圧発生装置が発生する液圧を検出し、
前記終了判定手段により前記検出された液圧発生装置が発生する液圧がブレーキアシスト制御中の前記液圧発生装置が発生する液圧より小さい所定値未満になりブレーキアシスト制御終了要と判定されたときに、その時点の前記ブレーキペダル操作に関する値に応じて、前記ブレーキアシスト制御された前記ホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧勾配を設定し、該減圧勾配で前記ホイールシリンダのブレーキ液圧を減圧する終了特定制御手段を更に備えたことを特徴とする車両の制動制御装置。
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