JP4224334B2 - 粉体担持構造体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉体担持構造体に関する。特に、オゾン分解フィルタ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、有機溶媒吸着フィルタ、脱臭フィルタ、イオン交換フィルタなどの用途に好適に使用できる粉体担持構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、オゾン分解フィルタ、脱臭フィルタ等の大風量で、高性能かつ低圧力損失が要求される分野において、機能性触媒を担持したセラミックハニカム焼結体が広く使用されている。しかしながら、このセラミックハニカム焼結体のセル壁厚を薄くし、単位面積あたりのセル数を増やし、単位体積あたりの表面積を広くして更に高性能かつ低圧力損失としようとすると、脆く、弱い衝撃によっても破損しやすいため、取り扱い性の悪いものであった。そのため、必然的にセルの壁厚を厚くする必要があるため、単位面積あたりのセル数が少なく、単位体積あたりの表面積が狭いため、高性能化が難しいものであった。
【0003】
また、金属箔及び/又は紙を用いて形成したハニカム体に金属酸化物を付着させたオゾン分解用触媒も提案されている(例えば、特許文献1)。このようなオゾン分解用触媒を構成するハニカム体は、厚さの薄い金属箔及び/又は紙から構成されているため、単位面積あたりのセル数が多く、単位体積あたりの表面積の広いものであることが可能であるが、ハニカム体をバインダーと金属酸化物とを含むスラリー中に浸漬して付着させているため、弱い衝撃によっても容易に金属酸化物が脱落し、取り扱い性の悪いものであった。また、バインダーによって金属酸化物表面が被覆され、触媒反応に関与できる面積が狭くなり、金属酸化物が本来有する触媒反応作用を十分に発揮できないという問題もあった。
【0004】
更に、叩解した繊維間にオゾン分解能を有する触媒物質を漉き込んだ平板状又はペーパー状物を、ガスの流れ方向に多数の貫通孔を有するように成形した担体が提案されている(例えば、特許文献2)。この担体においては、平板状又はペーパー状物を形成する際に、叩解した繊維とオゾン分解能を有する触媒物質とを分散させるための増粘剤や、叩解した繊維とオゾン分解能を有する触媒物質とを結合させるための接着剤が必要であるため、増粘剤又は接着剤によって触媒物質表面が被覆され、触媒反応に関与できる面積が狭くなり、触媒物質が本来有する触媒反応作用を十分に発揮できないものであった。
【0005】
このような状況に鑑み、本願出願人は、(1)オゾン分解触媒の粉粒体をフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレン樹脂により保持させたオゾン分解用シート(特許文献3、4、5)、(2)可撓性シート上に、機能性粉体を含む突起物が散在した機能性粉体担持シートが積層又は巻回され、前記突起物によって流体の移動空間が形成された機能性粉体担持構造体(特許文献6)、(3)粉体と、繊維径が4μm以下で繊維長が3mm以下の極細短繊維とを分散した状態で含む、湿式法以外の方法により形成した粉体含有繊維ウエブから形成した粉体固着不織布をコルゲート加工したもの(特許文献7)を提案した。
【0006】
しかしながら、(1)のオゾン分解用シートはポリテトラフルオロエチレン樹脂を使用しているため、ハニカム形態やコルゲート加工した際にオゾン分解用シート同士を接着させるのが困難であり、保形性が不十分であった。また、(2)の機能性粉体担持構造体は突起物によって圧力損失が高くなりやすいものであるとともに、突起物中に機能性粉体が含まれているため、突起物の形態を維持するために使用している接着剤によって機能性粉体表面が被覆され、機能性粉体の機能を十分に発揮できないものであった。そして、(3)の粉体固着不織布をコルゲート加工した場合、粉体固着不織布がある程度厚さがあり、保形性に優れる場合にはコルゲート加工をすることができたが、粉体固着不織布の厚さを薄くし、単位面積あたりのセル数を増やすようにコルゲート加工をすると、壁を構成する粉体固着不織布が湾曲するなどして変形するため、コルゲート加工したものを何層にも積層することができず、結果として高性能化が困難であった。
【0007】
【特許文献1】
実開平3−83633号公報(実用新案登録請求の範囲、実施例1など)
【特許文献2】
特開平4−104840号公報(特許請求の範囲、実施例1など)
【特許文献3】
特開平4−235718号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献4】
特開平5−4247号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献5】
特開平4−342744号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献6】
特開2001−38150号公報(特許請求の範囲、実施例1など)
【特許文献7】
特開2002−235268号公報(実施例2など)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、衝撃によっても破損したり粉体が脱落しにくいため取り扱いやすく、粉体の有する機能を十分に発揮することができる、高性能かつ低圧力損失の粉体担持構造体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる発明は、「壁によって貫通した流体流路が多数形成された粉体担持構造体であり、前記壁は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造した、個々が分散した熱可塑性繊維と粉体とのみが混在した粉体含有繊維シートからなる基材からなり、前記流体流路は粉体含有繊維シート基材の積層により形成されており、しかも粉体担持構造体の流体流路と直交する面における流体流路数が、1cmあたり62個以上あることを特徴とする粉体担持構造体」である。この粉体担持構造体は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造した粉体含有繊維シート基材を壁として使用し、粉体表面が増粘剤及び/又は液状接着剤によって被覆されていないため、粉体の有する機能を十分に発揮できる。また、粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維によって引張強度、曲げ強度等が付与されているため、衝撃によっても破損しにくい保形性に優れる取り扱い性の優れるものである。なお、粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維と粉体とが混在しており、粉体は熱可塑性繊維に保持された状態にあるため、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものである。更に、粉体担持構造体は、粉体担持構造体の流体流路と直交する面における流体流路数が1cmあたり62個以上という、流体と作用できる表面積の広い高性能なものである。なお、粉体含有繊維シート基材の厚さは流体流路数を1cmあたり62個以上とできる薄いものであるため、圧力損失も低いものである。
【0011】
本発明の請求項にかかる発明は、「前記熱可塑性繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の粉体担持構造体」である。このように極細繊維を含んでいると、粉体含有繊維シート基材の厚さがより薄いことができるため、流体流路と直交する面における流体流路数が更に多く、圧力損失の低い、更に高性能な粉体担持構造体であることができる。
【0012】
本発明の請求項にかかる発明は、「前記熱可塑性繊維として、繊維径が4μmを超える太繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1または請求項 2 に記載の粉体担持構造体」である。このような太繊維を含んでいることによって、粉体含有繊維シート基材の引張強度、曲げ強度等が向上するため、衝撃によっても破損しにくい保形性のより優れる取り扱い性のより優れるものである。
【0013】
本発明の請求項にかかる発明は、「前記熱可塑性繊維として、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体」である。このように、融点の低い樹脂を繊維表面に備えた繊維を含んでいることによって、融点の低い樹脂の溶融によって粉体を確実に固定することができ、粉体の脱落が更に生じにくい。
【0014】
本発明の請求項にかかる発明は、「前記基材における粉体の充填率が30体積%以上であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体」である。このような充填率であると、粉体量が多いため、粉体のもつ機能を十分に発揮することができる。
【0015】
本発明の請求項にかかる発明は、「前記基材の厚さが150μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体」である。基材の厚さが150μm以下であると、流体流路と直交する面における流体流路数が更に多く、圧力損失の低い、更に高性能な粉体担持構造体であることができる。
【0016】
本発明の請求項にかかる発明は、「一部又は全部の壁同士が前記熱可塑性繊維の可塑化により接着していることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体」である。このように接着していると、粉体担持構造体の保形性に優れている。
【0017】
本発明の請求項にかかる発明は、「オゾン分解フィルタ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、有機溶媒吸着フィルタ、脱臭フィルタ、イオン交換フィルタの群の中から選ばれる用途に使用することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体」である。このように、各種フィルタ用途又はマスク用途に好適に使用できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の粉体担持構造体は、壁によって貫通した流体流路が多数形成された粉体担持構造体であり、しかも粉体担持構造体の流体流路と直交する面における流体流路数が1cmあたり62個以上あるものであるが、前記壁を構成する基材が、(1)増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造した、熱可塑性繊維と粉体とが混在した粉体含有繊維シート基材からなる場合(以下、「第1粉体担持構造体」という)と、(2)繊維シートと、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物とが混在一体化した粉体含有複合繊維シート基材からなる場合(以下、「第2粉体担持構造体」という)の2種類がある。以下、各粉体担持構造体について、順に説明する。
【0019】
(第1粉体担持構造体)
第1粉体担持構造体は図1に第1粉体担持構造体1の斜視図を示すように、壁によって貫通した流体流路が多数形成されている。図1においては、平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとの積層により、一平面から他平面へ貫通する流体流路3(気体流路又は液体流路)が形成されている。本発明の第1粉体担持構造体は図1のような流体流路に限定されず、流体流路の貫通方向と直交する方向における断面形状が六角形、三角形、四角形などの多角形形状の流体流路であっても良い。また、図1は平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとを一方向に積層した第1粉体担持構造体1であるが、平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとの積層単位をロール状に巻き込んだ第1粉体担持構造体であっても良い。更に、平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとは、同じ種類の基材であっても、異なる種類の基材であっても良い。
【0020】
第1粉体担持構造体においては、流体と作用できる表面積が広く、高性能であるように、第1粉体担持構造体1の流体流路3と直交する面(図1におけるA)における流体流路数が、1cmあたり62個以上存在している。この流体流路数が多ければ多いほど、流体と作用できる表面積が広くなり、更に高性能であることができるため、前記流体流路数は1cmあたり70個以上であるのが好ましく、77個以上であるのが更に好ましく、100個以上であるのが更に好ましく、120個以上であるのが更に好ましい。上述の通り、前記流体流路数が多ければ多い程、高性能であることができるため、前記流体流路数の上限は特に限定するものではない。前記1cmあたりの流体流路数は、全流体流路数を流体流路と直交する面の面積(平滑平面とみなした面積)で除して算出した値をいう。なお、算出の結果、端数が生じた場合には四捨五入して1cmあたりの流体流路数とする。
【0021】
なお、第1粉体担持構造体の壁を構成する粉体含有繊維シート基材の厚さは、流体流路数を1cmあたり62個以上とできる薄いものであるため、圧力損失も低いものである。より具体的には、粉体含有繊維シート基材の厚さは150μm以下であるのが好ましい。この粉体含有繊維シート基材の厚さが薄ければ薄い程、流体流路数を多くでき、しかも低圧力損失であることができるため、120μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが更に好ましい。一方、粉体含有繊維シート基材の厚さが薄すぎると、粉体が脱落しやすくなり、また第1粉体担持構造体の保形性が低下する傾向があるため、20μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましい。なお、本発明における「厚さ」は、JIS B 7502:1994に規定されている外側マイクロメーター(0〜25mm)を用いて、JIS C2111 5.1(1)の測定法で、無作為に選んで測定した10点の平均値をいう。
【0022】
本発明の第1粉体担持構造体を構成する前記壁は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造した、熱可塑性繊維と粉体とが混在した粉体含有繊維シート基材からなる。このように、粉体含有繊維シート基材は増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造したものであり、粉体表面は増粘剤及び/又は液状接着剤によって被覆されていないため、粉体の有する機能を十分に発揮できるものである。また、粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維によって引張強度、曲げ強度等が付与されているため、衝撃によっても破損しにくい保形性に優れる取り扱い性の優れるものである。更に、粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維と粉体とが混在しており、粉体は熱可塑性繊維に保持された状態にあるため、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものである。
【0023】
この粉体含有繊維シート基材を構成する熱可塑性繊維は特に限定するものではないが、繊維径が4μm以下の極細繊維を含んでいるのが好ましい。このような極細繊維を含んでいることによって、粉体の保持性に優れ、粉体の脱落が生じにくいとともに、粉体含有繊維シート基材の厚さをより薄くすることができ、流体流路と直交する面における流体流路数を多くできるとともに、圧力損失の低い、更なる高性能な第1粉体担持構造体であることができるためである。
【0024】
この極細繊維の繊維径が小さければ小さい程、粉体の保持性に優れ、また粉体含有繊維シート基材の厚さをより薄くすることができるため、極細繊維の繊維径は3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが更に好ましい。なお、極細繊維の繊維径の下限は特に限定するものではないが、粉体含有繊維シート基材の加工に耐える強度を有するように、0.01μm以上であるのが好ましい。本明細書における「繊維径」は、繊維の横断面形状が円形である場合にはその直径をいい、繊維の横断面形状が非円形である場合には横断面積と面積の同じ円の直径をいう。
【0025】
本発明で使用できる極細繊維は均一分散性に優れているように、その繊維長は3mm以下であるのが好ましく、2mm以下であるのがより好ましい。なお、極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、繊維長が均一であるように、3mm以下(好ましくは2mm以下)に切断された極細繊維であるのが好ましい。本明細書における「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)により得られる長さをいう。
【0026】
本発明で用いることのできる極細繊維を構成する熱可塑性樹脂は特に限定するものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、結晶性ポリスチレン系樹脂などの結晶性の熱可塑性樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂、非晶性ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などの非晶性の熱可塑性樹脂などを挙げることができる。なお、極細繊維は前記熱可塑性樹脂1種類又は2種類以上から構成することができる。
【0027】
なお、極細繊維が融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている複合極細繊維からなると、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の可塑化による接着によって、粉体含有繊維シート基材の各種強度が高くなり、また粉体の保持性が高くなるため、好適な態様である。この複合極細繊維は融点の相違する2種類以上の熱可塑性樹脂から構成されていれば良く、種類の数は限定するものではないが、2種類で十分である。なお、融点差は特に限定するものではないが、最も融点の高い樹脂によって、繊維形態を維持できるように、10℃以上の融点差があるのが好ましく、20℃以上の融点差があるのがより好ましい。なお、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の繊維表面における占有面積が広ければ広い程、粉体含有繊維シート基材の各種強度が高くなり、また粉体の保持性が高くなるため、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が複合極細繊維表面の50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上)を占めているのが好ましく、100%(両端部を除く)を占めているのがより好ましい。複合極細繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、海島状、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の繊維表面における占有面積の広い、芯鞘型又は海島状であるのが好ましい。本発明における「融点」は、JIS K 7121(熱流束示差走査熱流量測定(DSC))に規定されている方法により、昇温速度10℃/分の条件下で得られる測定値をいう。
【0028】
本発明で用いることのできる極細繊維は、粉体含有繊維シート基材全体に亘って粉体を均一に保持できるように、各極細繊維がその繊維軸方向において直径が実質的に変化しない(すなわち、実質的に同じ直径を有している)のが好ましい。このように、個々の極細繊維において繊維軸方向に直径が実質的に同一で変化していない極細繊維は、例えば、紡糸口金部で海成分中に口金規制して島成分を押し出して複合する複合紡糸法で得た海島型繊維の海成分を除去して得ることができる。なお、極細繊維は束の状態で存在しておらず、均一に分散しているのが好ましい。更に、極細繊維は未延伸状態であることもできるが、強度的に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。なお、「延伸状態」とは、紡糸工程とは別の延伸工程(例えば、延伸ねん糸機による延伸工程)により延伸されていることをいい、例えば、メルトブロー法のように溶融押し出した樹脂に対して熱風を吹き付けて繊維化した繊維は、紡糸工程と延伸工程とが同じであるため延伸状態にはない。また、極細繊維を海島型繊維の海成分を除去することによって製造する場合、海島型繊維が延伸工程を経ている場合には、得られる極細繊維も延伸状態にある。
【0029】
このような極細繊維の充填率は、粉体の保持性に優れているように、10体積%以上含まれているのが好ましく、20体積%以上含まれているのがより好ましく、25体積%以上含まれているのが更に好ましい。他方、粉体の機能を十分に発揮できるように、極細繊維の充填率は粉体含有繊維シート基材中、70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。この「極細繊維の充填率」は次の式から算出される値をいう。
【0030】
Frf={Vf/(Vft+Vp)}×100
ここで、Frfは極細繊維の充填率(%)、Vfは極細繊維の容積、Vftは熱可塑性繊維(極細繊維、太繊維)の容積、Vpは粉体の容積をそれぞれ意味する。なお、後述の「太繊維の充填率(Frt、単位:%)」及び「粉体の充填率(Frp、単位:%)」は次の式から算出される値をいう。なお、Vtは太繊維の容積を意味する。
Frt={Vt/(Vft+Vp)}×100
Frp={Vp/(Vft+Vp)}×100
【0031】
本発明の粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維として、上述の極細繊維に加えて、又は替えて、繊維径が4μmを超える太繊維を含んでいるのが好ましい。このような太繊維を含んでいることによって、粉体含有繊維シート基材の引張強度、曲げ強度等が向上するため、衝撃によっても破損しにくい、保形性のより優れる取り扱い性のより優れる第1粉体担持構造体とすることができる。
【0032】
このような太繊維を使用する場合、繊維径の上限は特に限定するものではないが、粉体含有繊維シート基材の厚さを薄くし、流体流路数が1cmあたり62個以上であることができるように、太繊維の繊維径の上限は50μm程度であるのが好ましい。なお、太繊維も粉体含有繊維シート基材中で均一に分散して粉体を保持できるように、繊維長は10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.1mm程度が適当である。また、太繊維も均一な長さであるように、10mm以下(好ましくは5mm以下)に切断されたものであるのが好ましい。
【0033】
この太繊維も極細繊維と同様の熱可塑性樹脂1種類又は2種類以上から構成することができる。なお、太繊維も極細繊維と同様に、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている複合太繊維からなると、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の可塑化による接着によって、粉体含有繊維シート基材の各種強度が高くなり、また粉体の保持性が高くなるため、好適な態様である。この複合太繊維は融点の相違する2種類以上の熱可塑性樹脂から構成されていれば良く、種類の数は限定するものではないが、2種類で十分である。なお、融点差は特に限定するものではないが、最も融点の高い樹脂によって、繊維形態を維持できるように、10℃以上の融点差があるのが好ましく、20℃以上の融点差があるのがより好ましい。なお、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の繊維表面における占有面積が広ければ広い程、粉体含有繊維シート基材の各種強度が高くなり、また粉体の保持性が高くなるため、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が複合太繊維表面の50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上)を占めているのが好ましく、100%(両端部を除く)を占めているのがより好ましい。複合太繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、海島状、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の繊維表面における占有面積の広い、芯鞘型又は海島状であるのが好ましい。また、太繊維は未延伸状態であることもできるが、強度的に優れているように、延伸状態にあるのが好ましい。
【0034】
なお、太繊維が引張強さの強い高強度太繊維であると、粉体含有繊維シート基材の厚さが薄くても、基材の成形時及び第1粉体担持構造体の使用時における変形が生じにくいため好適である。より具体的には、引張強さが5.74cN/dtex以上であるのが好ましく、6.0cN/dtex以上であるのがより好ましく、6.3cN/dtex以上であるのが更に好ましい。本発明においては、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている複合高強度太繊維を特に好適に使用できる。このような複合高強度太繊維は、例えば、特開2002−180330号公報に記載の方法によって得ることができる。この「引張強さ」はJIS L 1015(化学繊維ステープル試験法、定速緊張形)により測定した値をいう。
【0035】
このような太繊維の充填率は、粉体の保持性に優れているように、0.5体積%以上含まれているのが好ましく、1体積%以上含まれているのがより好ましく、2体積%以上含まれているのが更に好ましい。他方、粉体の機能を十分に発揮できるように、粉体含有繊維シート基材中、70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。
【0036】
なお、前述のような極細繊維と太繊維とを含んでいる場合には、極細繊維と太繊維との総量の充填率が10体積%以上であるのが好ましく、20体積%以上であるのがより好ましく、25体積%以上であるのが更に好ましい。また、極細繊維と太繊維との総量の充填率が70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。
【0037】
また、前述のような極細繊維と太繊維とを含んでいる場合には、その体積比は粉体の保持性と第1粉体担持構造体の保型性の両方に優れているように、(極細繊維):(太繊維)=95〜50:5〜50であるのが好ましく、(極細繊維):(太繊維)=90〜60:10〜40であるのがより好ましい。
【0038】
更に、熱可塑性繊維として、前述のような融点の低い樹脂を繊維表面に備えた複合極細繊維及び/又は複合太繊維を含んでいると、融点の低い樹脂の溶融によって粉体を確実に固定することができ、粉体の脱落が更に生じにくいため好適である。また、壁同士の接着に関与でき、第1粉体担持構造体の保形性を高めることができるため好適である。このような複合繊維(複合極細繊維及び複合太繊維)は粉体含有繊維シート基材中における充填率が高ければ高い程、前記効果に優れているため、熱可塑性繊維中、50体積%以上を占めているのが好ましく、75体積%以上を占めているのがより好ましく、熱可塑性繊維全部が複合繊維からなるのが更に好ましい。
【0039】
本発明の粉体含有繊維シート基材は、上述のような熱可塑性繊維と粉体が混在していることによって、粉体は熱可塑性繊維に保持された状態にあり、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものである。熱可塑性繊維の可塑化により粉体が接着していると、更に粉体が脱落しにくいためより好適である。
【0040】
本発明の粉体含有繊維シート基材を構成する粉体は、第1粉体担持構造体を適用する用途によって異なるため、特に限定するものではない。例えば、本発明の第1粉体担持構造体の好適な適用用途であるオゾン分解フィルタの場合には、活性炭、二酸化マンガン、白金、酸化第二鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、チタン含有酸化物、天然ゼオライトのマンガンイオン交換物などを1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、又は有機溶媒吸着フィルタの場合には、酸やアルカリを添着した多孔質粉体(例えば、活性炭)、アミノ基を担持した多孔質粉体、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、ジルコニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、活性白土、イオン交換樹脂、光触媒(例えば、金属酸化物、金属カルコゲイド、第IV族元素、III−V族化合物、有機半導体、これら半導体に、ヒ素、リン、アルミニウム、ホウ素、ナトリウム、ハロゲンなどの不純物をドープしたものなど)、光触媒を担持した多孔質粉体を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、脱臭フィルタの場合には、活性炭、水蒸気賦活炭、アルカリ処理活性炭、酸処理活性炭、イオン交換樹脂を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、イオン交換フィルタの場合には、イオン交換樹脂粉末、イオン交換基を有する多孔質物質(例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、ジルコニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、活性白土)を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができる。
【0041】
なお、粉体として、例えば、熱可塑性樹脂粉体(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、熱硬化性樹脂粉体(例えば、熱硬化性ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂)を含んでいると、これら粉体の接着作用によって粉体を熱可塑性繊維に固着することができ、粉体の脱落を更に抑制することができる。また、粉体自体の表面の一部にのみ熱可塑性樹脂が付着していると、この熱可塑性樹脂によって粉体を熱可塑性繊維に固着することができ、粉体の脱落を更に抑制することができる。なお、熱可塑性樹脂粉体又は熱硬化性樹脂粉体は液状接着剤のように流動性が高くないため、粉体表面を被覆して粉体の機能を低下させにくいものである。
【0042】
本発明の粉体含有繊維シート基材中に、前述のような極細繊維を含んでいると、従来は脱落しやすかった平均粒径が50μm以下の粉体であっても保持性に優れている。粉体は熱可塑性繊維によって保持されているため、熱可塑性繊維の繊維径によって保持することのできる粉体の粒子径も変化する。すなわち、保持すべき粉体の平均粒径に応じて、適切な繊維径を有する熱可塑性繊維を選択するのが好ましい。例えば、熱可塑性繊維の繊維径と最適な粉体の平均粒径との関係は表1のようになる。
【0043】
【表1】
Figure 0004224334
【0044】
なお、粉体の平均粒径が50μmを越えていても、熱可塑性繊維(特に太繊維)によって粉体を保持することができる。また、粉体は一次粒子であっても、凝集した二次粒子であっても良い。この粉体の「平均粒径」は、コールターカウンター法により得られる値をいう。
【0045】
本発明の粉体含有繊維シート基材は熱可塑性繊維と粉体とが混在した状態にあるが、粉体は熱可塑性繊維によって包囲されて固定された状態、熱可塑性繊維の可塑化接着によって固定された状態、ファンデルワールス力によって固定された状態、或いはこれら複数の要因によって固定された状態にあるのが好ましい。
【0046】
本発明の粉体含有繊維シート基材は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造したものであることが重要である。つまり、粉体含有繊維シート基材を製造する際に、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いると、増粘剤及び/又は液状接着剤によって粉体表面が被覆され、粉体の機能を十分に発揮できないが、本発明の粉体含有繊維シート基材は増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造したものであるため、粉体の機能を十分に発揮できるのである。なお、増粘剤とは繊維等の分散媒体として使用する液体(特に水)の粘度を高くする作用を奏する薬剤をいい、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。また、液状接着剤とは状態が流動性を有する液体状の接着剤をいい、特に接着時に皮膜を形成する接着剤をいう。例えば、ポリマーを媒体中に分散させたエマルジョン型接着剤や、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液型接着剤が液状接着剤に該当する。
【0047】
本発明の粉体含有繊維シート基材は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造したものであり、例えば、湿式法ではない方法により製造したものであり、気体を分散媒体として熱可塑性繊維と粉体とを分散させて製造したものである。例えば、特開2002−235268号公報に記載の方法により厚さの厚い粉体含有前駆繊維シートを形成した後、加圧(必要に応じて加熱)して、厚さの薄い粉体含有繊維シート基材を製造することができる。
【0048】
より具体的には、粉体と、熱可塑性繊維(特に極細繊維、太繊維)を用意する。なお、熱可塑性繊維は集合体(特には、束状の集合体)、若しくは集合体群(特には、複数の束状集合体を束状で含む集合体群)の状態であるのが一般的である。なお、集合体若しくは集合体群の状態にある場合、繊維同士は絡んだ状態にないのが好ましい。例えば、機械的に分割可能な分割性繊維をビーターなどによって叩解した極細繊維集合体、ビーターなどによって叩解したパルプ、あるいはフラッシュ紡糸法により得られた極細繊維集合体などは、極細繊維同士が絡んだ状態にあるため使用しないのが好ましい。なお、後述の圧縮気体の作用によって機械的に分割して、極細繊維を発生可能な分割性繊維若しくはそれらの集合体(例えば、全芳香族ポリアミド繊維若しくはそれらの集合体、溶剤抽出法により得られたセルロース繊維若しくはそれらの集合体など)は使用することができる。
【0049】
次いで、前記のような繊維、繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は、分割性繊維若しくはそれらの集合体を、粉体と共に、ノズルへ供給するとともに、それらに圧縮気体を作用させることにより、ノズルから気体中に噴出させ、繊維集合体若しくはそれらの集合体群から個々の繊維に分離し、それらの繊維を分散させ、及び/又は分割性繊維若しくはそれらの集合体から極細繊維を発生させ、それらの極細繊維を分散させると同時に粉体も分散させる。なお、ノズルへ供給する気体の流れは、繊維同士が絡みにくく、繊維が分散しやすいように、実質的に層流であるのが好ましい。このように気体の流れを実質的に層流とするために、ノズルとしてベンチュリー管を使用するのが好ましい。
【0050】
また、前記ノズルから噴出させた粉体、並びに繊維集合体(若しくはそれらの集合体群)及び/又は分割性繊維(若しくはそれらの集合体)を、ノズル噴射口の前方に設けられた衝突部材(例えば、邪魔板)に衝突させ、粉体、並びに繊維集合体若しくはそれらの集合体群、及び/又は分割性繊維(若しくはそれらの集合体)から、繊維の分散性を向上させることができる。
【0051】
圧縮気体としては任意の気体を利用することができ、空気を用いるのが製造上好適である。また、圧縮気体は、粉体を分散させるとともに、繊維集合体若しくはそれらの集合体群を充分に分散することができ、及び/又は分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細繊維に分割して充分に分散させることができるように、ノズル噴出口における気体通過速度が100m/sec.以上であるのが好ましい。この「気体通過速度」は、ノズルから噴出された気体の1気圧における流量(m3/sec.)を、ノズル噴出口における横断面積(m)で除した値をいう。また、圧縮気体の圧力は、粉体を分散させるとともに、前記繊維集合体若しくはそれらの集合体群を充分に分散、及び/又は分割性繊維若しくはそれらの集合体を極細繊維に分割し、充分に分散させることができるように、2kg/cm以上であるのが好ましい。
【0052】
次いで、この分散した粉体及び分散した繊維を集積して、粉体含有前駆繊維シートを形成する。この粉体及び繊維の集積は、例えば、多孔性のロールやネットなどの支持体を利用して実施できる。なお、粉体及び繊維は自然落下させて集積することができ、あるいは支持体の下方から気体を吸引して集積することができる。
【0053】
次いで、この粉体含有前駆繊維シート中に含まれている粉体を固着させるのが好ましい。この固着方法は特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性繊維及び/又は粉体の可塑性を利用して接着する方法を挙げることができる。このように熱可塑性繊維の可塑性を利用する場合には、ドライヤー等により熱可塑性繊維及び/又は粉体を構成する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱して実施することができる。
【0054】
このように製造した粉体含有前駆繊維シートは厚さが厚いため、カレンダー、フラットプレス機等により加圧(必要に応じて加熱)して、厚さの薄い粉体含有繊維シート基材を得ることができる。なお、粉体を固着させるのと同時に厚さを薄くすることもできる。この場合には、熱可塑性繊維及び/又は粉体を構成する熱可塑性樹脂の融点以上に加熱した状態で、加圧して実施できる。例えば、熱カレンダーを使用して実施できる。
【0055】
本発明の粉体含有繊維シート基材は前述の通り、熱可塑性繊維と粉体とが混在したものであるが、粉体量が多く、粉体のもつ機能を十分に発揮できるように、基材における粉体の充填率が30体積%以上であるのが好ましく、40体積%以上であるのがより好ましく、45体積%以上であるのが更に好ましく、50体積%以上であるのが更に好ましい。他方、熱可塑性繊維との兼ね合いから、90体積%以下であるのが好ましく、80体積%以下であるのがより好ましく、75体積%以下であるのが更に好ましい。
【0056】
また、本発明の粉体含有繊維シート基材の厚さは、前述の通り、第1粉体担持構造体の流体流路数を1cmあたり62個以上としやすいように、150μm以下であるのが好ましく、120μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましい。一方、粉体が脱落しにくく、また第1粉体担持構造体の保形性に優れているように、20μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましい。
【0057】
本発明の第1粉体担持構造体は前述のような粉体含有繊維シート基材を壁としたものである。従来、流体流路数を多くするために厚さが薄い(例えば、150μm以下)ものを使用する必要があったため、熱コルゲート加工などの成形時に、湾曲するなどして変形し、何層にも積層することが困難であった。そこで、第1粉体担持構造体は、例えば、(1)粉体含有繊維シート基材を、成形時に熱変形(例えば収縮、伸びなど)しないか、熱変形の程度の小さい保形性シートに固定した状態で、常法により成形するか、(2)高強度太繊維(好ましくは複合高強度太繊維)を含む粉体含有繊維シート基材を使用し、常法により成形することによって、本発明のような流体流路数をもつ、表面積が広く、高性能で圧力損失の低い第1粉体担持構造体を製造することが可能となった。
【0058】
前者(1)の保形性シートとして、例えば、成形温度よりも高い融点(好ましくは20℃以上)を有する熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂、無機物質からなる不織布、織物、編物、メンブレンなどのシートを使用することができる。より具体的には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維を1種類又は2種類以上含む不織布を使用することができる。なお、粉体含有繊維シート基材を保形性シートで固定するには、例えば、保形性シートと粉体含有繊維シート基材とを積層した後に、加熱及び加圧し、保形性シート及び/又は粉体含有繊維シート基材の熱可塑性を利用して固定する方法、を挙げることができる。
【0059】
後者(2)の高強度太繊維によって成形性を付与する場合には、高強度太繊維として、粉体(場合により極細繊維)と接着性に優れているように、粉体よりも融点の低い(好ましくは10℃以上)熱可塑性樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている高強度太繊維が好ましく、極細繊維も含んでいる場合には、極細繊維よりも融点の低い(好ましくは10℃以上)熱可塑性樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている高強度太繊維が好ましい。特に、高強度太繊維が融点の点で相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の全部(両端部を除く)を占めている(横断面形状:芯鞘状又は海島状)と、粉体含有繊維シート基材の成形性に優れているため好適である。なお、粉体含有繊維シート基材が繊維として極細繊維と高強度太繊維から構成されている場合、その体積比は、粉体の固定と成形性のバランスに優れているように、(極細繊維):(高強度太繊維)=95〜50:5〜50であるのが好ましく、(極細繊維):(高強度太繊維)=90〜60:10〜40であるのがより好ましい。
【0060】
なお、本発明の第1粉体担持構造体における一部又は全部の壁同士が粉体含有繊維シート基材を構成する熱可塑性繊維の可塑化により接着していると、第1粉体担持構造体の保形性に優れているため好適な態様である。このような態様の第1粉体担持構造体は、例えば、粉体含有繊維シート基材を積層する際に、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の軟化点から融点までの温度範囲の熱を作用させることによって製造することができる。なお、壁同士の間に隙間が生じないように、全部の壁同士を熱可塑性繊維の可塑化により接着して、或いは壁同士が変形しない程度に密に積層して、若しくは流体流路と直交する面にホットメルト接着剤を塗布して壁同士を固定するのが好ましい。また、ロール状に巻き込んだ第1粉体担持構造体の場合には、平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとの積層単位を、テンションをかけながらロール状に巻回し、その最外周に、例えば、ポリウレタンなどからなる弾性シートを接着剤や両面粘着テープ等を介して巻きつけ、積層単位を固定して製造することができる。
【0061】
(第2粉体担持構造体)
第2粉体担持構造体は上述の第1粉体担持構造体と使用している基材が異なること以外は、全く同様である。そのため、第2粉体担持構造体を構成する基材についてのみ説明する。
【0062】
本発明の第2粉体担持構造体を構成する前記壁は、繊維シートと、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物とが混在一体化した粉体含有複合繊維シート基材からなる。このように、粉体含有複合繊維シート基材は増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物が混在一体化したものであり、粉体表面は増粘剤及び/又は液状接着剤によって被覆されていないため、粉体の有する機能を十分に発揮できるものである。また、粉体含有複合繊維シート基材は熱可塑性繊維及び繊維シートによって引張強度、曲げ強度等が付与されているため、衝撃によっても破損しにくい保形性に優れる取り扱い性の優れるものである。更に、粉体含有複合繊維シート基材において、粉体は繊維シートと熱可塑性繊維とに保持された状態にあるため、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものである。
【0063】
この粉体含有複合繊維シート基材を構成する熱可塑性繊維は、第1粉体担持構造体を構成できる極細繊維と同様の極細繊維から構成することができる。つまり、粉体含有複合繊維シート基材を構成する極細繊維も、粉体含有繊維シート基材と同様の理由で、極細繊維の繊維径は0.01〜3μmであるのが好ましく、0.01〜2μmであるのが更に好ましい。また、極細繊維の繊維長は0.1〜3mmであるのが好ましく、0.1〜2mmであるのがより好ましく、また、0.1〜3mm(好ましくは0.1〜2mm)に切断された極細繊維であるのが好ましい。極細繊維を構成する熱可塑性樹脂も同様の熱可塑性樹脂であることができ、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂(融点差が10℃以上であるのが好ましく、20℃以上あるのがより好ましい)が繊維表面の一部又は全部を占めている複合極細繊維からなるのが好ましい。複合極細繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、海島状、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の繊維表面における占有面積が広い、芯鞘型又は海島状であるのが好ましい。また、極細繊維はその繊維軸方向において直径が実質的に変化しないのが好ましい。更に、極細繊維は延伸状態にあるのが好ましい。
【0064】
このような極細繊維の充填率は、粉体の保持性に優れているように、10体積%以上含まれているのが好ましく、20体積%以上含まれているのがより好ましく、25体積%以上含まれているのが更に好ましい。他方、粉体の機能を十分に発揮できるように、粉体含有複合繊維シート基材中、70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。
【0065】
この粉体含有複合繊維シート基材を構成する熱可塑性繊維は、第1粉体担持構造体を構成できる太繊維と同様の太繊維から構成することができる。つまり、繊維径は4μmを超え、50μm以下であるのが好ましく、繊維長は0.1〜3mmであるのが好ましく、0.1〜2mmであるのがより好ましい。また、太繊維も0.1〜3mm(好ましくは0.1〜2mm)に切断されたものであるのが好ましい。
【0066】
この太繊維も極細繊維と同様の熱可塑性樹脂1種類又は2種類以上から構成することができ、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂(10℃以上の融点差があるのが好ましく、20℃以上の融点差があるのがより好ましい)が繊維表面の一部又は全部を占めている複合太繊維からなるのが好ましい。複合太繊維の横断面形状は、例えば、芯鞘型、海島状、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型であることができ、芯鞘型又は海島状であるのが好ましい。また、太繊維は延伸状態にあるのが好ましい。更に、引張強さが5.74cN/dtex以上(6.0cN/dtex以上であるのが好ましく、6.3cN/dtex以上であるのがより好ましい)の高強度太繊維を含んでいるのが好ましく、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている複合高強度太繊維を含んでいるのが好ましい。
【0067】
このような太繊維の充填率は、粉体の保持性に優れているように、0.5体積%以上含まれているのが好ましく、1体積%以上含まれているのがより好ましく、2体積%以上含まれているのが更に好ましい。他方、粉体の機能を十分に発揮できるように、粉体含有複合繊維シート基材中、70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。
【0068】
なお、熱可塑性繊維として前述のような極細繊維と太繊維とを含んでいる場合には、極細繊維と太繊維との総量の充填率が10体積%以上であるのが好ましく、20体積%以上であるのがより好ましく、25体積%以上であるのが更に好ましい。また、極細繊維と太繊維との総量の充填率が70体積%以下であるのが好ましく、60体積%以下であるのがより好ましく、55体積%以下であるのが更に好ましく、50体積%以下であるのが更に好ましい。
【0069】
また、前述のような極細繊維と太繊維とを含んでいる場合には、その体積比は粉体の保持性と第1粉体担持構造体の保型性の両方に優れているように、(極細繊維):(太繊維)=95〜50:5〜50であるのが好ましく、(極細繊維):(太繊維)=90〜60:10〜40であるのがより好ましい。
【0070】
更に、前述のように、融点の低い樹脂を繊維表面に備えた複合極細繊維及び/又は複合太繊維を含んでいるのが好ましい。このような複合繊維(複合極細繊維及び複合太繊維)は熱可塑性繊維中、50体積%以上を占めているのが好ましく、75体積%以上を占めているのがより好ましく、熱可塑性繊維全部が複合繊維からなるのが更に好ましい。
【0071】
第2粉体担持構造体の粉体含有複合繊維シート基材の、上述のような熱可塑性繊維に加えて混在している粉体は、熱可塑性繊維及び繊維シートに保持された状態にあり、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものである。粉体は熱可塑性繊維及び/又は繊維シート構成繊維の可塑化接着により固定されているのが好ましい。
【0072】
本発明の第2粉体含有複合繊維シート基材を構成する粉体は、第1粉体含有複合繊維シート基材と全く同様の粉体から構成することができる。つまり、例えば、本発明の第1粉体担持構造体の好適な適用用途であるオゾン分解フィルタの場合には、活性炭、二酸化マンガン、白金、酸化第二鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化亜鉛、チタン含有酸化物、天然ゼオライトのマンガンイオン交換物などを1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、又は有機溶媒吸着フィルタの場合には、酸やアルカリを添着した多孔質粉体(例えば、活性炭)、アミノ基を担持した多孔質粉体、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、ジルコニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、活性白土、イオン交換樹脂、光触媒(例えば、金属酸化物、金属カルコゲイド、第IV族元素、III−V族化合物、有機半導体、これら半導体に、ヒ素、リン、アルミニウム、ホウ素、ナトリウム、ハロゲンなどの不純物をドープしたものなど)、光触媒を担持した多孔質粉体を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、脱臭フィルタの場合には、活性炭、水蒸気賦活炭、アルカリ処理活性炭、酸処理活性炭、イオン交換樹脂を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができ、イオン交換フィルタの場合には、イオン交換樹脂粉末、イオン交換基を有する多孔質物質(例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、ジルコニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、活性白土)を1種類又は2種類以上を混合又は複合化して使用することができる。
【0073】
なお、粉体として、熱可塑性樹脂粉体(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、熱硬化性樹脂粉体(例えば、熱硬化性ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂)を含んでいても良い。また、粉体自体の表面の一部にのみ熱可塑性樹脂が付着していても良い。粉体の平均粒径は限定するものではないが、50μm以下であるのが好ましく、熱可塑性繊維の繊維径と粉体の平均粒径との関係も第1粉体含有複合繊維シート基材と全く同様である。更に、粉体は一次粒子であっても、凝集した二次粒子であっても良い。
【0074】
本発明の第2粉体含有複合繊維シート基材は、更に繊維シートを含んでいる。この繊維シートは上述のような熱可塑性繊維と粉体を含む分散物と混在一体化していることによって、第2粉体含有複合繊維シート基材に引張強度、曲げ強度等を付与し、衝撃によっても破損しにくい、保形性の優れるものとするとともに、粉体を保持することによって、衝撃によって粉体が脱落しにくくする。更に、粉体含有複合繊維シート基材の厚さは流体流路数を1cmあたり62個以上とできる薄いものである必要があるが、このように厚さが薄いと、成形時に湾曲するなどして変形して成形性に劣るが、この繊維シートによって成形時の変形を抑制することができる。
【0075】
この第2粉体含有複合繊維シート基材を構成する繊維シートは、上述の分散物を構成できる太繊維と全く同様の太繊維から構成する繊維シート(例えば、不織布、織物など)から構成することができる。特に、この繊維シートによって成形性に優れているように、高強度太繊維を含む(好ましくは50mass%以上含む、より好ましくは80mass%以上含む、更に好ましくは100mass%含む)繊維シートを好適に使用できる。なお、繊維シートは1種類又は2種類以上の繊維(例えば太繊維)から構成することができる。また、繊維シートを構成する繊維(例えば太繊維)としては、可塑化接着によって粉体を固定できるように、また、第2粉体含有複合繊維シート基材の形態安定性に優れているように、熱可塑性繊維(例えば極細繊維、太繊維)の表面を構成する熱可塑性樹脂と融点が同じか近い(好ましくは10℃以内)樹脂を繊維表面に備えた繊維を含んでいるのが好ましい。更に、第2粉体含有複合繊維シート基材を構成する繊維シートは、第2粉体担持構造体の流体流路数を1cmあたり62個以上としやすいように、目付は5〜50g/m(好ましくは10〜40g/m)であるのが好ましく、厚さは10〜100μm(好ましくは20〜75μm)であるのがより好ましい。
【0076】
本発明の粉体含有複合繊維シート基材は、繊維シートと、熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物とが混在一体化した状態にあるが、粉体は熱可塑性繊維及び繊維シート構成繊維によって包囲されて固定された状態、熱可塑性繊維及び/又は繊維シート構成繊維の融着によって固定された状態、ファンデルワールス力によって固定された状態、或いはこれら複数の要因によって固定された状態にあるのが好ましい。
【0077】
本発明の粉体含有複合繊維シート基材においては、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物であることが重要である。つまり、粉体含有複合繊維シート基材を製造する際に、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いて分散させた熱可塑性繊維と粉体とを用いると、増粘剤及び/又は液状接着剤によって粉体表面が被覆され、粉体の機能を十分に発揮できないが、本発明の粉体含有複合繊維シート基材は増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含んでいるため、粉体の機能を十分に発揮できるのである。
【0078】
本発明の粉体含有複合繊維シート基材は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく分散させた熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物と繊維シートとが混在一体化したものであり、例えば、湿式法ではない方法により熱可塑性繊維と粉体とを分散させ、繊維シートと混在一体化させて製造したものであり、気体を分散媒体として熱可塑性繊維と粉体とを分散させ、繊維シートと混在一体化させて製造したものである。
【0079】
例えば、第1粉体担持構造体を構成する粉体含有繊維シート基材を製造する場合と同様にして分散させた熱可塑性繊維と粉体とを、繊維シート上に集積させた厚さの厚い粉体含有複合前駆繊維シート基材を形成した後、加圧(必要に応じて加熱)して、厚さの薄い粉体含有複合繊維シート基材を製造することができる。つまり、熱可塑性繊維と粉体とを分散させた分散物を、繊維シート上に集積させること以外は、第1粉体担持構造体を構成する粉体含有繊維シート基材と全く同様に製造できる。このように、繊維シート上に熱可塑性繊維と粉体とを分散させた分散物を集積させるためには、多孔性のロールやネットなどの支持体上に、前述のような繊維シートを配置しておき、熱可塑性繊維と粉体とを分散させた分散物を、自然落下又は支持体の下方から気体を吸引して集積することができる。
【0080】
本発明の粉体含有複合繊維シート基材は前述の通り、熱可塑性繊維と粉体とを含む分散物と繊維シートとが混在一体化したものであるが、粉体量が多く、粉体のもつ機能を十分に発揮できるように、基材における粉体の充填率が30体積%以上であるのが好ましく、40体積%以上であるのがより好ましく、45体積%以上であるのが更に好ましく、50体積%以上であるのが更に好ましい。他方、熱可塑性繊維と繊維シートとの兼ね合いから、90体積%以下であるのが好ましく、80体積%以下であるのがより好ましく、75体積%以下であるのが更に好ましい。
【0081】
また、本発明の粉体含有複合繊維シート基材の厚さは、第2粉体担持構造体の流体流路数を1cmあたり62個以上としやすいように、150μm以下であるのが好ましく、120μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましい。一方、粉体が脱落しにくく、また第2粉体担持構造体の保形性に優れているように、20μm以上であるのが好ましく、30μm以上であるのがより好ましい。
【0082】
本発明の第2粉体担持構造体は前述のような粉体含有複合繊維シート基材を壁としたものである。従来、流体流路数を多くするために厚さが薄い(例えば、150μm以下)ものを使用する必要があったため、熱コルゲート加工などの成形時に、湾曲するなどして変形し、何層にも積層することが困難であった。しかしながら、第2粉体担持構造体は、既にある程度の形態安定性を有する繊維シートを含んでいることによって、成形時の変形を防止できるため、常法により成形することが可能である。
【0083】
なお、本発明の第2粉体担持構造体を構成する粉体含有複合繊維シート基材からなる、一部又は全部の壁同士が熱可塑性繊維の可塑化により接着していると、第2粉体担持構造体の保形性に優れているため好適な態様である。このような態様の第2粉体担持構造体は、例えば、粉体含有複合繊維シート基材を積層する際に、最も融点の高い樹脂以外の樹脂の軟化点から融点までの温度範囲の熱を作用させることによって製造することができる。なお、壁同士の間に隙間が生じないように、全部の壁同士を熱可塑性繊維の可塑化により接着して、或いは壁同士が変形しない程度に密に積層して、若しくは流体流路と直交する面にホットメルト接着剤を塗布して壁同士を固定するのが好ましい。また、ロール状に巻き込んだ第2粉体担持構造体の場合には、平板状の粉体含有繊維シート基材2aと正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材2bとの積層単位を、テンションをかけながらロール状に巻回し、その最外周に、例えば、ポリウレタンなどからなる弾性シートを接着剤や両面粘着テープ等を介して巻きつけ、積層単位を固定して製造することができる。
【0084】
以上説明した本発明の粉体担持構造体(第1粉体担持構造体、第2粉体担持構造体)は、粉体表面が増粘剤及び/又は液状接着剤によって被覆されておらず、粉体の有する機能を十分に発揮でき、また、衝撃によっても破損しにくい保形性に優れる取り扱い性の優れるものであり、衝撃によっても粉体が脱落しにくいものであり、更には、流体と作用できる表面積の広い高性能で、圧力損失も低いものである。そのため、大量の流体を粉体によって処理するのが必要な用途に好適に使用できる。例えば、オゾン分解フィルタ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、有機溶媒吸着フィルタ、脱臭フィルタ、イオン交換フィルタなどの用途に好適に使用できる。
【0085】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
(実施例1)
ポリ乳酸からなる海成分中に、高密度ポリエチレン(融点:130℃)とポリプロピレン(融点:160℃)とからなる島成分が25個存在し、複合紡糸法により得た海島型繊維(繊度:1.7dtex、切断繊維長:1mm)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を除去した後、風乾して、高密度ポリエチレン中にポリプロピレンが点在した海島型極細複合短繊維(繊維径:2μm、切断繊維長:1mm、フィブリル化していない、延伸状態、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する)が束状となった海島型極細複合短繊維の集合体を得た。また、粉体として、平均粒径が25μmの二酸化マンガン粉体を用意した。
【0087】
次いで、図2に示す製造装置と同様の装置を用いて、粉体含有繊維シート基材83を調製した。すなわち、束状の海島型極細複合短繊維集合体及び二酸化マンガン粉体を、13:87の質量比でミキサー10に供給して解すとともに混合した後、噴出口における横断面形状が円形(直径:8.5mm)のベンチュリー管30へ圧縮気体導入口20から圧縮空気(圧力:6kg/cm、実質的に層流)を導入することにより、前記解した海島型極細複合短繊維集合体及び二酸化マンガン粉体をベンチュリー管30へ供給し、前記ベンチュリー管30から海島型極細複合短繊維集合体及び二酸化マンガン粉体70を空気40中に噴出(ベンチュリー管30の噴出口における気体通過速度:147m/sec.、噴出口からの噴出量:約0.5m/min.)し、前記ベンチュリー管30の噴出口前方に設けた衝突部材45(円錐状の突起部と平板状の衝突部とが一体化した衝突部材、衝突部材の衝突部のノズル噴出部側表面との距離:15mm)に衝突させて、海島型極細複合短繊維及び二酸化マンガン粉体70を分散させた。
【0088】
次いで、この分散させた海島型極細複合短繊維及び二酸化マンガン粉体70を、移動する支持体(ネット)50上に集積させ、粉体含有前駆繊維ウエブ80を形成した。なお、集積させる際には、支持体50の下に設置されたサクションボックス60により空気40を吸引(0.7m/min.)した。
【0089】
次いで、前記粉体含有前駆繊維ウエブ80を、温度135℃、圧力0.2MPaに設定されたリライアントプレス機90により加熱加圧して、海島型極細複合短繊維の高密度ポリエチレン成分を可塑化させて接着させた。続いて、温度115℃、圧力3.9MPaに設定されたカレンダーロール間を通過させ、個々の海島型極細複合短繊維が分散しており、二酸化マンガン粉体が混在した、目付が140g/m2で、厚さが80μmの粉体含有繊維シート基材83(二酸化マンガン粉体の充填率:55体積%、海島型極細複合短繊維の充填率:45体積%)を製造した。この基材においては、二酸化マンガン粉末の周囲を囲むように海島型極細複合短繊維が絡合しているとともに、海島型極細複合短繊維を構成する高密度ポリエチレン成分によって、海島型極細複合短繊維同士、及び海島型極細複合短繊維と二酸化マンガン粉末とが接着した状態にあった。
【0090】
次いで、上記粉体含有繊維シート基材をコルゲート加工用の波型プレート間に挟んだ状態で、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、ピッチが1.5mmで、山高さが0.92mmの正弦波状の基材(図1における2b)を作製した。
【0091】
他方、移動する支持体(ネット)50上に保形性シート(ポリエステル繊維からなる湿式不織布(目付:20g/m))を配置しておき、この保形性シート上に、分散させた海島型極細複合短繊維及び二酸化マンガン粉体70を集積させたこと以外は、上記粉体含有前駆繊維ウエブ80と全く同様にして、保形性シート/粉体含有前駆ウエブ複合体を形成した。
【0092】
次いで、前記保形性シート/粉体含有前駆ウエブ複合体を、温度135℃、圧力0.2MPaに設定されたリライアントプレス機により加熱加圧して、海島型極細複合短繊維の高密度ポリエチレン成分を可塑化させて接着させた。続いて、温度115℃、圧力3.9MPaに設定されたカレンダーロール間を通過させ、個々の海島型極細複合短繊維が分散しており、二酸化マンガン粉体が混在した、目付が140g/m2で、厚さが80μmの粉体含有繊維シート基材(二酸化マンガン粉体の充填率:55体積%、海島型極細複合短繊維の充填率:45体積%)と保形性シートとの複合体を製造した。この平板状の粉体含有繊維シート基材(図1における2aに相当)においては、二酸化マンガン粉末の周囲を囲むように海島型極細複合短繊維が絡合しているとともに、海島型極細複合短繊維を構成する高密度ポリエチレン成分によって、海島型極細複合短繊維同士、及び海島型極細複合短繊維と二酸化マンガン粉末とが接着した状態にあった。
【0093】
次いで、前記正弦波状の基材(2b)と複合体とを、前記複合体の粉体含有繊維シート基材(2a)とが当接するように積層し、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、高密度ポリエチレンの可塑化によって接着して、正弦波状の基材(2b)と複合体とを一体化した後、保形性シートを剥がして、正弦波状の基材(2b)と平板状の基材(2a)とからなる粉体担持構造体単位を作製した。
【0094】
次いで、この粉体担持構造体単位の正弦波状の基材(2b)が上となるようにして、100mmの高さまで100段積み重ねた後、幅が100mmで、奥行き(流体流路の長さ)が20mmとなるように切断し、その周縁に、ホットメルト樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)層を備えたポリエステル製スパンボンド不織布のホットメルト樹脂層が当接するように押し付けた状態で、温度150℃に加熱した後に冷却し、前記ホットメルト樹脂層の接着により前記積層基材を固定し、図1に示すような、壁によって貫通した流体流路が多数形成された二酸化マンガン粉体担持構造体(流体流路と直交する面における流体流路数:133個/1cm)を製造した。
【0095】
(実施例2)
高密度ポリエチレン(融点:130℃)を鞘成分とし、ポリプロピレン(融点:160℃)を芯成分とする、芯鞘型太複合高強度短繊維(繊維径:9μm、切断繊維長:5mm、引張り強さ:8.0cN/dtex、フィブリル化していない、延伸状態、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する)が束状となった芯鞘型太複合高強度短繊維の集合体を用意した。更に、実施例1と同様の海島型極細複合短繊維の集合体と、二酸化マンガン粉体を用意した。
【0096】
次いで、図2に示す製造装置と同様の装置を用いて、粉体含有繊維シート基材83を調製した。すなわち、束状の海島型極細複合短繊維集合体、芯鞘型太複合高強度短繊維の集合体、二酸化マンガン粉体を、15:3:82の質量比でミキサー10に供給して解すとともに混合したこと以外は、実施例1と全く同様に操作して、粉体含有前駆繊維ウエブ80を形成した。
【0097】
次いで、前記粉体含有前駆繊維ウエブ80を、温度135℃、圧力0.2MPaに設定されたリライアントプレス機90により加熱加圧して、海島型極細複合短繊維の高密度ポリエチレン成分、及び芯鞘型太複合高強度短繊維の高密度ポリエチレン成分を可塑化させて接着させた。続いて、温度115℃、圧力3.9MPaのカレンダーロール間を通過させて、個々の海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維が分散しており、二酸化マンガン粉体が混在した、目付が140g/m2で、厚さが80μmの粉体含有繊維シート基材83(二酸化マンガン粉体の充填率:45体積%、海島型極細複合短繊維と芯鞘型太複合高強度短繊維の総量の充填率:55体積%、海島型極細複合短繊維と芯鞘型太複合高強度短繊維の体積比:80:20)を製造した。この基材においては、二酸化マンガン粉末の周囲を囲むように海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維が絡合しているとともに、海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維を構成する高密度ポリエチレン成分によって、繊維同士、及び海島型極細複合短繊維又は芯鞘型太複合高強度短繊維と二酸化マンガン粉末とが接着した状態にあった。
【0098】
次いで、上記粉体含有繊維シート基材をコルゲート加工用の波型プレート間に挟んだ状態で、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、ピッチが1.5mmで、山高さが0.92mmの正弦波状の基材(図1における2b)を作製した。
【0099】
次いで、前記正弦波状の基材(2b)と成形していない平板状の前記粉体含有繊維シート基材(図1の2aに相当)とを積層し、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、高密度ポリエチレンの可塑化によって接着して、正弦波状の基材(2b)と平板状基材(2a)とを一体化して、粉体担持構造体単位を作製した。
【0100】
次いで、この粉体担持構造体単位の正弦波状の基材(2b)が上となるようにして、100mmの高さまで100段積み重ねた後、幅が100mmで、奥行き(流体流路の長さ)が20mmとなるように切断し、その周縁に、ホットメルト樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)層を備えたポリエステル製スパンボンド不織布のホットメルト樹脂層が当接するように押し付けた状態で、温度150℃に加熱した後に冷却し、前記ホットメルト樹脂層の接着により前記積層基材を固定し、図1に示すような、壁によって貫通した流体流路が多数形成された二酸化マンガン粉体担持構造体(流体流路と直交する面における流体流路数:133個/1cm)を製造した。
【0101】
(実施例3)
高密度ポリエチレン(融点:130℃)を鞘成分とし、ポリプロピレン(融点:160℃)を芯成分とする、芯鞘型太複合高強度短繊維(繊維径:12μm、切断繊維長:5mm、引張り強さ:8.0cN/dtex、フィブリル化していない、延伸状態、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する)のみを分散させたスラリーから湿式繊維ウエブを形成した。その後、湿式繊維ウエブを温度140℃に設定したオーブンで熱処理を実施し、前記芯鞘型太複合高強度短繊維の高密度ポリエチレンで融着した繊維シート(目付:10g/m、厚さ:75μm)を製造した。また、実施例1と同様の海島型極細複合短繊維の集合体、及び二酸化マンガン粉体を用意した。
【0102】
次いで、移動する支持体(ネット)50上に前記繊維シートを配置しておき、この繊維シート上に、分散させた海島型極細複合短繊維及び二酸化マンガン粉体70を集積させたこと以外は、実施例1と全く同様にして、粉体含有複合前駆繊維シートを形成した。
【0103】
次いで、前記粉体含有複合前駆繊維シートを、温度135℃、圧力0.2MPaに設定されたリライアントプレス機90により加熱加圧して、海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維の高密度ポリエチレン成分を可塑化させて接着させた。続いて、温度115℃、圧力3.9MPaに設定されたカレンダーロール間を通過させ、個々の海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維が分散しており、二酸化マンガン粉体が混在した、目付が145g/m2で、厚さが84μmの粉体含有複合繊維シート基材83(二酸化マンガン粉体の充填率:55体積%、海島型極細複合短繊維と芯鞘型太複合高強度短繊維の総量の充填率:45体積%、海島型極細複合短繊維と芯鞘型太複合高強度短繊維の体積比=80:20、繊維シートの厚さ:25μm)を製造した。この基材においては、二酸化マンガン粉末の周囲を囲むように海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維が絡合しているとともに、海島型極細複合短繊維及び芯鞘型太複合高強度短繊維を構成する高密度ポリエチレン成分によって、繊維同士、及び海島型極細複合短繊維又は芯鞘型太複合高強度短繊維と二酸化マンガン粉末とが接着した状態にあった。
【0104】
次いで、上記粉体含有複合繊維シート基材をコルゲート加工用の波型プレート間に挟んだ状態で、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、ピッチが1.5mmで、山高さが0.92mmの正弦波状の基材(図1における2b)を作製した。
【0105】
次いで、前記正弦波状の基材(2b)と成形していない平板状の前記粉体含有複合繊維シート基材(図1の2aに相当)とが当接するようにこれらを積層し、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、高密度ポリエチレンの可塑化によって接着して、正弦波状の基材(2b)と平板状基材(2a)とを一体化して、粉体担持構造体単位を作製した。
【0106】
次いで、この粉体担持構造体単位の正弦波状の基材(2b)が上となるようにして、100mmの高さまで100段積み重ねた後、幅が100mmで、奥行き(流体流路の長さ)が20mmとなるように切断し、その周縁に、ホットメルト樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)層を備えたポリエステル製スパンボンド不織布のホットメルト樹脂層が当接するように押し付けた状態で、温度150℃に加熱した後に冷却し、前記ホットメルト樹脂層の接着により前記積層基材を固定し、図1に示すような、壁によって貫通した流体流路が多数形成された二酸化マンガン粉体担持構造体(流体流路と直交する面における流体流路数:133個/1cm)を製造した。
【0107】
(比較例1)
複写機からオゾン分解フィルタ(高さ:100mm、幅:100mm、奥行き:20mm、流体流路と直交する面における流体流路数:117個/1cm)を取り外した。このオゾン分解フィルタは、アルミニウム箔をハニカム状に成形した基材の表面に、二酸化マンガン粉体を接着剤によって担持させたものであった。
【0108】
(比較例2)
パルプ10gを水中で十分叩解させた後、高密度ポリエチレン(融点:130℃)を鞘成分とし、ポリプロピレン(融点:160℃)を芯成分とする、芯鞘型太複合短繊維(繊維径:22μm、切断繊維長:5mm)を10gと、二酸化マンガン粉体(平均粒径:25μm)を80g添加し、二酸化マンガン粉体が沈降分離しないように、増粘剤としてポリエチレンオキサイド(PEO)を加えて粘度調整を行った。その後、更に接着剤としてアクリル酸エステル系ラテックスを20g(乾燥時換算)を添加して混合液を調製した。
【0109】
次いで、この混合液を漉き上げて繊維ウエブを形成した後に乾燥し、目付が290g/mで厚さが1mmの二酸化マンガン粉体含有繊維シート基材を製造した。
【0110】
その後、前記二酸化マンガン粉体含有繊維シート基材をコルゲート加工用の波型プレート間に挟んだ状態で、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、ピッチが4mmで、山高さが1.5mmの正弦波状の基材(図1における2b)を作製した。
【0111】
次いで、前記正弦波状の基材(2b)と成形していない平板状の前記二酸化マンガン粉体含有繊維シート基材(図1の2aに相当)とを、シリカゾル接着剤により接着して積層し、正弦波状の基材(2b)と平板状基材(2a)とを一体化し、粉体担持構造体単位を作製した。
【0112】
次いで、この粉体担持構造体単位の正弦波状の基材(2b)が上となるようにして、100mmの高さまで積み重ねた後、幅が100mmで、奥行き(流体流路の長さ)が20mmとなるように切断し、その周縁に、ホットメルト樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)層を備えたポリエステル製スパンボンド不織布のホットメルト樹脂層が当接するように押し付けた状態で、温度150℃に加熱した後に冷却し、前記ホットメルト樹脂層の接着により前記積層基材を固定し、図1に示すような、壁によって貫通した流体流路が多数形成された二酸化マンガン粉体担持構造体(流体流路と直交する面における流体流路数:10個/1cm)を製造した。この二酸化マンガン粉体含有繊維シート基材は、コルゲート加工時の成形性及び保形性が悪く、流体流路数の多いコルゲート加工は困難であった。また、ラテックス皮膜が二酸化マンガン粉体表面を被覆した状態にあった。
【0113】
(比較例3)
二酸化マンガン粉体80gを水50gとイソプロピルアルコール50gとの混合溶液中に分散させ、これを攪拌しながらポリテトラフルオロエチレンディスパージョン(濃度:60%)33.3gを添加した後、ニーダーにより十分混練した。
【0114】
次いで、この混練物をカレンダーロールにより、たて方向及びよこ方向に交互に圧延を繰り返して、厚さが200μmのシートを製造した。次いで、このシートを温度150℃に加熱したオーブン中に放置し、水とイソプロピルアルコールとを除去し、二酸化マンガン粉体がポリテトラフルオロエチレンのフィブリルの絡合によって固定された二酸化マンガン粉体含有シート基材を製造した。
【0115】
この二酸化マンガン粉体含有シート基材を波型プレート間に挟み、加熱加圧してコルゲート加工を試みたが、成形性、保形性ともに著しく不良で、しかも適切な接着力を得ることのできる接着剤もなかったため、二酸化マンガン粉体担持構造体を製造することができなかった。
【0116】
(比較例4)
二酸化マンガン粉体100容量部、熱硬化性ポリエステル粉体塗料75容量部、ウィスカー10容量部からなる混合粉体を、アルミ箔(厚さ:70μm)上に置いた格子スクリーンの上から塗布した後、オーブン(温度:180℃)で加熱して乾燥した。その後、前記格子スクリーンを取り除いて、アルミ箔上に二酸化マンガン粉体担持突起物(正面方向から見た時に、流体の流れ方向と直交方向に0.75mm、流体の流れ方向に0.90mm、高さ0.93mmの四角柱状の突起物、39個/cm)が存在する二酸化マンガン粉体含有シート基材(突起部とアルミ箔の厚さの合計:1mm)を製造した。
【0117】
この基材を100mmの高さまで積み重ねた後、幅が100mmで、奥行き(流体流路の長さ)が40mmとなるように切断し、その周縁に、ホットメルト樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)層を備えたポリエステル製スパンボンド不織布のホットメルト樹脂層が当接するように押し付けた状態で、温度150℃に加熱した後に冷却し、前記ホットメルト樹脂層の接着により前記積層基材を固定し、突起物によって貫通した流体流路が多数形成された二酸化マンガン粉体担持構造体(流体流路と直交する面における流体流路数:66個/1cm)を製造した。この構造体における二酸化マンガン粉体表面のかなりの部分は、熱硬化性ポリエステル粉体塗料によって覆われていた。また、振動により粉体が脱落しやすく、また開孔率が小さい(47%)ため、非常に圧力損失の高いものであった。
【0118】
(比較例5)
実施例1と全く同様にして、目付が140g/m2で、厚さが80μmの粉体含有繊維シート基材83(二酸化マンガン粉体の充填率:55体積%、海島型極細複合短繊維の充填率:45体積%)を製造した。
【0119】
次いで、上記粉体含有繊維シート基材をコルゲート加工用の波型プレート間に挟んだ状態で、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧し、ピッチが1.5mmで、山高さが1.0mmの正弦波状の基材(図1における2b)を作製した。
【0120】
次いで、前記正弦波状の基材(2b)と未成形の前記平板状の粉体含有繊維シート基材(図1の2aに相当)とを積層し、温度120℃、圧力0.98MPaで加圧して、正弦波状の基材(2b)と平板状基材(2a)とを一体化しようとしたが、平板状基材(2a)の収縮が大きく、著しく湾曲変形したため、粉体担持構造体単位を作製することができなかった。そのため、二酸化マンガン粉体担持構造体を製造することもできなかった。
【0121】
(オゾン分解性能の評価)
オゾン発生器を用いて発生させた10ppm濃度のオゾンを、面風速1m/sec.の速度で各構造体の流体流路を通過させ、通過後のオゾン濃度(Ca、単位:ppm)を測定した。そして、次の式からオゾン分解率(Dr、単位:%)を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
Dr={(10−Ca)/10}×100
【0122】
(開孔率)
各構造体の開孔率(Or、単位:%)を次の式から算出した。つまり、開孔率は流体流路と直交する面(面積:St)が平滑平面とした時における、流体流路の占める面積(Sf)の百分率をいう。この開口率が高いことは圧力損失が低いことを意味する。
Or=(Sf/St)×100
【0123】
(耐衝撃性)
各二酸化マンガン粉体担持構造体を1mの高さから床に落下させた時の状態を観察し、次の評価基準にしたがって耐衝撃性を評価した。この結果は表1に示す通りであった。
大きく変形するとともに、二酸化マンガン粉体が大量に脱離 ・・ ×
あまり変形せず、二酸化マンガン粉体の脱離も少量 ・・ △
変形はないものの、二酸化マンガン粉体が少量脱離 ・・ ○
変形せず、二酸化マンガン粉体の脱離もなし ・・ ◎
【0124】
(耐粉体脱落性)
各二酸化マンガン粉体担持構造体を指先で擦った時の状態を観察し、次の評価基準にしたがって耐粉体脱落性を評価した。この結果は表1に示す通りであった。
二酸化マンガン粉体が多く脱離する ・・ ×
二酸化マンガン粉体が少量脱離する ・・ △
二酸化マンガン粉体が僅かに脱離する ・・ ○
二酸化マンガン粉体が脱離しない ・・ ◎
【0125】
【表2】
Figure 0004224334
【0126】
【発明の効果】
本発明の粉体担持構造体は、衝撃によっても破損したり粉体が脱落しにくいため取り扱いやすく、粉体の有する機能を十分に発揮することができる、高性能かつ低圧力損失のものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の粉体担持構造体の斜視図
【図2】 本発明の粉体含有繊維シート製造装置の模式的断面図
【符号の説明】
1 粉体担持構造体
2a 平板状の粉体含有繊維シート基材
2b 正弦波状に湾曲した粉体含有繊維シート基材
3 流体流路
A 流体流路との直交面
10 ミキサー
20 圧縮気体導入口
30 ベンチュリー管
40 空気
45 衝突部材
50 支持体
60 サクションボックス
70 熱可塑性繊維及び粉体
80 粉体含有繊維ウエブ
83 粉体含有繊維シート基材
90 リライアントプレス機

Claims (8)

  1. 壁によって貫通した流体流路が多数形成された粉体担持構造体であり、前記壁は、増粘剤及び/又は液状接着剤を用いることなく製造した、個々が分散した熱可塑性繊維と粉体とのみが混在した粉体含有繊維シートからなる基材からなり、前記流体流路は粉体含有繊維シート基材の積層により形成されており、しかも粉体担持構造体の流体流路と直交する面における流体流路数が、1cmあたり62個以上あることを特徴とする粉体担持構造体。
  2. 前記熱可塑性繊維として、繊維径が4μm以下の極細繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の粉体担持構造体。
  3. 前記熱可塑性繊維として、繊維径が4μmを超える太繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1または請求項 2 に記載の粉体担持構造体。
  4. 前記熱可塑性繊維として、融点の相違する2種類以上の樹脂からなり、最も融点の高い樹脂以外の樹脂が繊維表面の一部又は全部を占めている繊維を含んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体。
  5. 前記基材における粉体の充填率が30体積%以上であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体。
  6. 前記基材の厚さが150μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体。
  7. 一部又は全部の壁同士が前記熱可塑性繊維の可塑化により接着していることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体。
  8. オゾン分解フィルタ、揮発性有機化合物ガス除去フィルタ、有毒ガス吸着マスク、有機溶媒吸着フィルタ、脱臭フィルタ、イオン交換フィルタの群の中から選ばれる用途に使用することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の粉体担持構造体。
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