JP4222670B2 - 触媒用スラリー塗布装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒用スラリーを触媒担体に塗布する触媒用スラリー塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスは、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分を含有している。この排気ガスをそのまま排出することは、公害や環境の悪化を引き起こす。このため、これらの排気ガスは触媒コンバータ等を用いて浄化された後に大気中に排出されている。
【0003】
このような触媒コンバーターは、耐熱性セラミックス、耐熱性金属等で形成された触媒担体と、この触媒担体表面に塗布された耐熱性多孔質層と、この多孔質層に担持された触媒成分と、から構成されている。この触媒コンバーターの多孔質層は、触媒成分を含有したあるいは含有しない耐熱性粉末のスラリーを触媒担体に接触、含浸させることで製造されている。
【0004】
触媒コンバーターは、排気ガスの浄化を目的としているため、浄化される排気ガスとの接触面積が大きくなるように形成されている。このことは、微視的には触媒成分が耐熱性多孔質層に担持されることで、巨視的には触媒担体自身の表面積が大きくなるように形成されている。触媒担体自身の表面積を上げる方法としては、例えば、耐熱性基材により製造されたモノリスハニカム触媒担体をあげることができる。このハニカム担体は、排気ガスの流れる軸方向の管状通路を多数もうけることで接触面積を大きくしている。
【0005】
このようなハニカム担体においても、触媒担体に触媒成分を含有したあるいは含有しない耐熱性粉末のスラリーを接触、含浸させることで耐熱性多孔質層を形成している。
しかし、スラリーは不安定であるとともに、粘性を有しているため管状通路内への導入や、管状通路からの排出が容易ではなかった。
【0006】
このような、多数の管状通路を有する触媒担体に粘性を有するスラリーをコートする方法としては、スラリーを管状通路の一端側に配置し、このスラリーに圧力を加えることでスラリーを管状通路内に供給し、その後余分なスラリーを排出することで塗布する方法が一般的である。
このスラリーのコート方法としては、スラリーに加えられる圧力の向きにより吸引コート法と、加圧コート法とに大別される。ここで、吸引コート法とは、触媒担体の一端部側に配置したスラリーを他端側から管状通路を介して吸引して管状通路内にスラリーを供給した後に余分なスラリーを排出するコート方法である。また、加圧コート法とは、触媒担体の一端部側に配置されたスラリーを加圧して管状通路内に圧入して管状通路内にスラリーを供給した後に余分なスラリーを排出するコート方法である。
【0007】
例えば、特公昭60−28695公報には、吸引コート法によるスラリー塗布方法および装置が開示されている。このスラリー塗布方法は、モノリス担体の上端にスラリーを配置し、下端側からスラリーを吸引することで、管状通路内に粘性のスラリーを供給するとともに余分なスラリーを排出してスラリーを触媒担体に塗布する方法が、スラリー塗布装置にはこの塗布方法によるスラリー塗布装置が示されている。
【0008】
また、吸引コート法の別の例が、特許第2737837号に開示されている。このスラリー塗布方法は、触媒担体の下端をスラリー溶液に浸漬し、上端から触媒担体の管状通路を通してスラリーを吸引する方法である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前述の公報に記載のスラリー塗布方法を用いて触媒担体にスラリーを塗布する装置においては、スラリーを触媒担体の一端側に供給し、他端側から触媒担体を介してスラリーを吸引するため、触媒担体の気密性のために、硬質ポリウレタン等よりなるシール材を吸引部の触媒担体との接触部に用いていた。
【0010】
しかしながら、このようなシール材では、スラリーの吸引時において、触媒担体とシール材との間の密着性が悪いという問題を有していた。シール材の密着性が悪くなると、触媒担体とシール材との間からスラリーが漏れ出すようになる。
また、スラリーが漏れ出すことは、スラリー塗布装置に漏れだしたスラリーのロスを生じるだけでなく、装置の清掃の必要も生じるようになり余計なコストが掛かるようになり好ましくなかった。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、触媒担体にスラリーをコートするときに、触媒担体を液密的に保持する触媒用スラリー塗布装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明者らは触媒用スラリー塗布装置において、触媒担体を液密的に保持することについて検討を重ねた結果、触媒担体の軸方向の両端を液密的に保持する上座と下座とで保持することで上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の触媒用スラリー塗布装置は、軸方向に管状通路を有する筒状触媒担体の下端周縁部を液密的に保持するとともに保持された触媒担体の管状通路に触媒用スラリーを供給または排出する下座と、触媒担体の上端周縁部を液密的に保持する上座と、下座と上座を相対的に近接または離脱させ、触媒担体を下座および上座間に着脱する座駆動装置と、下座にスラリーを供給、排出するスラリー供排手段と、を有し、下座からスラリーを管状通路内に供給した後に、スラリーを管状通路から排出することを特徴とする。
【0014】
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、軸方向に管状通路を有する筒状触媒担体の上端および下端を保持する上座と下座とを座駆動装置で相対的に近接させることで、触媒担体を液密的に保持して、スラリー塗布時にスラリーが漏れ出すことを防止している。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、下座と、上座と、座駆動装置と、スラリー供排手段と、を有する。
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、軸方向に管状通路を有する筒状触媒担体に触媒用スラリーを塗布するスラリー塗布装置である。ここで、筒状触媒担体の筒状とは、管状通路の軸方向にのびた柱状の外周形状をしており、円柱形状あるいは楕円柱形状であることが好ましい。軸方向に管状通路を有する触媒担体としては、モノリスハニカム担体等をあげることができる。また、触媒担体は、通常の触媒コンバータに用いられる触媒担体と同様な材質で形成してあればよく、耐熱性セラミックス、耐熱性金属により形成される。例えば、コーディエライト、ステンレス鋼をあげることができる。
【0016】
下座は、筒状触媒担体の下端周縁部を液密的に保持するとともに保持された触媒担体の管状通路に触媒用スラリーを供給または排出する。筒状触媒担体の下端周縁部を液密的に保持することで、下座と触媒担体の当接部からスラリーが漏れ出すことを防いでいる。
上座は、触媒担体の上端周縁部を液密的に保持する。上座が触媒担体の上端を液密的に保持することで、上座と触媒担体の当接部からスラリーが漏れ出すことを防いでいる。
【0017】
座駆動装置は、下座と上座を相対的に近接または離脱させ、触媒担体を下座および上座間に着脱させる。座駆動装置により上座と下座の相対距離を開くことで、触媒担体を上座および下座から着脱させることができる。また、座駆動装置は、上座と下座の相対距離を変動させるだけでなく、上座と下座を適当な加圧力で押圧することができる。この押圧力により触媒担体をその軸方向で保持する圧力が大きくなり、触媒担体をより液密的に保持できるようになる。
【0018】
スラリー供排手段は、触媒用スラリー塗布装置の外部の系から下座にスラリーを供給、排出する手段である。スラリー供排手段は、スラリーを触媒担体に供給するとともに、触媒担体に供給された後に過剰なスラリー分が、触媒担体から排出されるための手段である。
下座は、筒状触媒担体の管状通路と連通されるとともにその開口部から漏斗状に内径が小さくなるスラリー流路を区画する基部と、基部と一体的に形成され開口部の周縁部に上方に突出して形成されたひだ部と、からなる保持体を有することが好ましい。
【0019】
保持体の基部は、内径が漏斗状に変化するスラリー流路を区画している。スラリー流路は、スラリー供排手段によりスラリー塗布装置に供給あるいは排出されるスラリーを触媒担体に導くためのものである。スラリー流路は、開口部が触媒担体の下端の端面の外周形状と合致するように開口している。保持体は、この開口部が触媒担体の下端の端面の外周部と当接するように触媒担体を当接する。また、スラリー流路は、スラリー供排手段に接続される。
【0020】
保持体のひだ部は、保持体のスラリー流路の開口部の周縁部に形成され、触媒担体を開口部に当接させたときに、触媒担体の下端部の外周面と当接して触媒担体を保持する。ひだ部は、保持体に保持された触媒担体の下端部の外周面との接触面積を大きくすることで、より密着性が向上する。
ひだ部は、基部側の厚さが厚くなるようにテーパを有することが好ましい。ひだ部がテーパを有し、このひだ部を上方から押圧することで求心的にひだ部を付勢し、より液密的に触媒担体を保持できるようになる。
【0021】
保持体は、ウレタンゴムにより形成されることが好ましい。弾性を有するウレタンゴムにより保持体を形成することで、触媒担体を液密的に保持することができる。すなわち、弾性を有する保持体に触媒担体を押さえつけることができるとともに、押さえつけられることで触媒担体と保持体との間にスラリーが漏れだすもととなる空隙が発生しなくなる。さらに、ウレタンゴムは、耐摩耗性にすぐれているとともに弾性を有していることから、保持体に好適である。
【0022】
上座は、触媒担体の上端の端面の周縁部との当接部にシール部を有することが好ましい。触媒担体の上端側を保持する上座の触媒担体との当接部側にシール部をもうけることで、触媒担体を液密的に保持できる。シール部を介して触媒担体と上座とが当接することで、当接部の空隙が生じることによるスラリーの漏れ出しを抑えることができる。
【0023】
シール部は、ウレタンゴムにより形成されていることが好ましい。ウレタンゴムは、耐摩耗性にすぐれているとともに弾性を有していることからシール部として好ましい。触媒担体の上端は、シール部に押しつけられることで触媒担体と上座の液密性を発揮するものであり、シール部は適度な弾性を有している必要がある。
【0024】
上座は、リング状に形成された保持体のひだ部を押圧するリング部を有することが好ましい。リング部の形成されたリング状とは、リングの内部に触媒担体が挿入できるとともに下座の保持体のひだ部と当接できる形状である。ひだ部を押圧することで、ひだ部が求心方向に付勢され触媒担体側に押さえつけられるようになり、下座の保持体が触媒担体をより液密的に保持できるようになる。このため、リング部は、上座のより下座に近い位置にもうけられている。
【0025】
リング部は、そのリング状の内周面の下方側が広くなるテーパがもうけられていることが好ましい。このように、下方側が広くなるようにテーパを有することで上座と下座の相対位置が接近したときに、リング部が保持体のひだ部を容易に押圧できる。
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、上座と下座とが1〜5kg/cm2の圧力で触媒担体を軸方向に保持することが好ましい。上座と下座とで触媒担体の保持に加圧力を用いることで、触媒担体の保持がより液密的になる。この加圧力は、担体のサイズにより決定することができる。また、この加圧力は、座駆動装置より得ることができる。
【0026】
スラリー供排手段は、上座にもうけられ触媒担体に加圧されたガスを供給するガス供給手段を有することが好ましい。加圧されたガスを触媒担体に供給することで、触媒担体の管状通路にたまったスラリーを下座側のスラリー供排手段に排出する。
触媒担体の管状通路内に供給されたスラリーは、管状通路壁面にコートされた後、過剰量がスラリー供排手段を通じて排出されるものであるが、スラリーは粘性を有していることから細い管路からの自然な重力等による排出は容易ではなく、強制的に排出しなければならない。このため強制的なスラリーの排出の手段として、加圧されたガスが供給される。このとき、加圧されたガスの圧力は、スラリーの種類あるいは粘度により適宜決定される。
【0027】
触媒用スラリーとしては、無機酸化物と、バインダーと、水を含むことが好ましい。無機酸化物としては、たとえば、活性アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア等からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の無機酸化物をあげることができる。また、触媒用スラリーは、触媒成分を含んだスラリーであってもよい。
【0028】
スラリーは、スラリー中に分散した粒子成分が互いの分子間力によりゆるく結合して、その粘度にばらつきが生じるようになっている。スラリーの粘度にばらつきが生じると、スラリーの流動が不均一となり、触媒担体の管状通路内へのスラリーの供給も不均一になるという不具合を生じる。このため、スラリー粘度にばらつきが生じないようにその粘度を一定に保持しておく必要がある。
【0029】
スラリーの粘度を保持する方法としては、スラリーを常に一定の流速で循環させておくことが好ましい。スラリーを常に一定の流速で循環させておくことで、スラリーにかかるせん断力が一定となり、粘度のばらつきをおさえることができる。
スラリーは、その粘度が50〜1000cpsの範囲内であることが好ましい。スラリーの粘度が50cps未満ではスラリーの流動性がよく、スラリーが触媒担体にのりにくくなり、1000cpsを超えるとスラリーの流動性が悪くなり触媒担体の管状通路の目詰まりが生じやすくなる。
【0030】
スラリーの粘度は、従来の回転羽根のような攪拌機のスラリーを攪拌する攪拌速度にも影響される。すなわち、スラリーの攪拌速度が大きくなるとスラリーの粘度は低下し、攪拌速度が小さくなるとスラリーの粘度は大きくなり、場合によっては沈殿などが生じる。
また、スラリー粘度は、スラリーの温度にも依存している。すなわち、スラリーの温度が変化すると、スラリーのチキソトロピーが変化し、その結果スラリーの粘度も変化するようになる。
【0031】
このため、スラリー調整装置は、スラリーを保持するスラリーストックタンクと、スラリーストックタンク内のスラリーの粘度を測定する粘度計と、粘度計と接続されスラリーストックタンク内のスラリーを攪拌する攪拌機と、スラリーストックタンクに一体的に形成され、スラリー温度を測定するとともにスラリー温度を一定に保持する調温手段と、を有することが好ましい。
【0032】
粘度計は、スラリーストックタンク内のスラリーの粘度を測定するものである。触媒用スラリーは粘度が変化すると触媒担体へのスラリー付着量にばらつきが生じるようになるため、触媒用スラリーの粘度を制御するため粘度計を用いて粘度の測定がなされている。
攪拌機は、粘度計と接続され、スラリーストックタンク内のスラリーを攪拌する。スラリーが排出されると、スラリーストックタンク内のスラリー量が変化し、攪拌機の攪拌速度が変化するようになる。攪拌速度が変化すると、スラリーのスラリー粘度が変化し、触媒担体へのスラリーの付着量にばらつきが生じるようになる不具合が生じる。このため、スラリーストックタンク内のスラリーの粘度を一定の範囲に保つために、粘度計と接続した攪拌機の攪拌を制御される。
【0033】
攪拌機は、従来の触媒用スラリー調整装置に用いられている攪拌機を用いることができる。すなわち、モーターと、このモーターの回転軸の先端に連結された回転羽根と、から構成される攪拌機を用いることができる。なお、攪拌機は、粘度計により測定されたスラリーの粘度をフィードバックして回転数を制御できる。
【0034】
調温手段は、スラリーストックタンクに一体的に形成され、スラリー温度を測定するとともにスラリー温度を一定に保持するものである。調温手段によりスラリーの温度を一定の範囲に保つことで、スラリーの粘度の変動を抑えている。すなわち、スラリーの温度が変化すると、スラリーのチキソトロピーが変化する。スラリーのチキソトロピーの変化は、スラリーの粘度の変化を生じさせ、さらには触媒担体へのスラリー付着量にばらつきが生じるようになる。
【0035】
調温手段は、触媒用スラリーの温度を測定する温度測定機と、触媒用スラリーの温度を一定に保持する調温機と、から構成される。温度測定機としては、触媒用スラリーの温度を測定できるものであればよく、熱電対等を使用できる。調温機は、温度測定機により測定された触媒用スラリーの温度をフィードバックして加熱することができるものである。
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、下座に供給されるスラリーを貯留するスラリーストックタンクを有し、スラリーストックタンクには、下座を介して触媒担体の管状通路から排出された触媒用スラリーが流入することが好ましい。これにより、触媒担体から排出されたスラリーは、スラリーストックタンクに還元され、再び、触媒担体の塗布に用いられる。
本発明の触媒用スラリー塗布装置において、下座は、触媒担体の管状通路と連通されるとともにその開口部から漏斗状に内径が小さくなるスラリー流路を区画する基部と、基部と一体的に形成され開口部の周縁部に上方に突出して形成された基部側の厚さが厚くなるように外周面が傾斜したテーパ状をなすように形成されたひだ部と、からなる保持体を有し、上座は、リング状に形成された保持体のひだ部のテーパ面を押圧するリング部を有し、下座と上座とが近接したときに、リング部がひだ部のテーパ面の外周面を押圧することが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
(触媒用スラリー塗布装置)
本発明の実施例として、触媒用スラリー塗布装置を作製した。この触媒用スラリー塗布装置を図1に示した。
【0037】
実施例のスラリー塗布装置は、軸方向に貫通した通路よりなるセルを有する円筒状の触媒担体1にスラリーを塗布する装置であり、下座2と、上座3と、エアーシリンダー(図示せず)と、スラリー供排装置(図示せず)と、を有する。
下座2は、下座基材20と、保持体23と、から構成され、触媒担体1の下端11を保持する。
【0038】
下座基材20は、スラリー供排手段と接続され、スラリー供排手段からのスラリーが供給、排出されるスラリー供排孔21が開口している。
保持体23は、下座基材20のスラリー供排孔21の開口部に形成され、ウレタンゴムよりなる部材である。保持体23は、下座基材20に開口したスラリー供排孔21と連通され、スラリー供排孔21の開口部から漏斗状に内径が大きくなりその開口部25で最大となるスラリー流路24を区画している。スラリー流路24の開口部25は、触媒担体1の下端11の端面と一致する大きさで開口している。スラリー流路24は、スラリー供排孔21から供給および排出されるスラリーを触媒担体1に供給および排出するために流通させる。
【0039】
スラリー流路24の開口部25の周縁部には、開口部25にそって上方に延びた円筒状のひだ部27が形成されている。このひだ部27は、円筒状の内周面28が開口部25の内径を有し、円筒状の外周面29がその上方の端部側に進むにつれて肉厚が薄くなるようにテーパがもうけられている。
下座2の保持体23に触媒担体1を保持するときには、触媒担体1の下端11の端面の外周部が保持体23のスラリー流路24の開口部25と当接して、スラリー流路24と触媒担体1のセルが連通されるとともに、ひだ部27が触媒担体1の下端11の周縁部と密着して液密的に保持する。
【0040】
上座3は、上座基材31と、リング部材36と、シール部材34と、から構成され、触媒担体の上端を保持する。
上座基材31は、加圧されたガスが供給されるガス室32が開口している。ガス室32は、スラリー供排手段と接続され、加圧されたガスが供給される。このガス室32は、触媒担体1にスラリーを塗布するときに、触媒担体1のセルを通って触媒担体1の上端13からしみ出たスラリーをためることができる。
【0041】
シール部材34は、上座基材31に形成されたガス室32の開口した周縁部にリング状にもうけられている。シール部材34は、ウレタンゴムにより形成されている。シール部材34は、触媒担体1のセルがガス室32と連通するように上端13の端面とは接触をせず、端面の周縁部と接触するようにテーパがもうけられている。
【0042】
リング部材36は、内径が触媒担体の外径より大きなリング状の部材であり、上座基材31から下方に突出した位置にもうけられている。リング部材36は、スラリー塗布時に下座2の保持体23のひだ部27と当接する部材であり、リング部材36の内周面側はひだ部の外周面29に形成されたテーパと合致する形状にテーパがもうけられている。
【0043】
エアーシリンダーは、上座3が接続され、上座3と下座2とがかみ合うように上座3を移動させるとともに、適当な加圧力で上座3を下座2に押しつけるものである。
スラリー供排装置は、下座2と接続したスラリー流通管によりスラリーを下座2に供給および排出するとともに、上座3と接続したガス管により上座3のガス室32に加圧したガスを供給する。このスラリー供排装置から供給されるスラリーは、加圧力をもって下座2に供給される。この加圧力によりスラリーを触媒担体1のセルに圧入する。また、ガス室32に加圧されたガスを供給することで、このガス室32と連通した触媒担体1のセルにガスを供給し、ガス圧によりセル中のスラリーを下座2に押しやってセルから排出する。
【0044】
(評価)
実施例の触媒用スラリー塗布装置を用いて、実際にスラリーを触媒担体に塗布した。
(触媒用スラリーコート装置)
実施例の触媒用スラリー塗布装置を有するスラリーコート装置を作製した。このスラリーコート装置を図2に示した。
【0045】
スラリーコート装置は、スラリー塗布装置と、排出ガス供給管と、スラリーストックタンク40と、スラリー循環管5と、スラリー供排管6と、供給ガス供給管70と、スラリー供給管43と、水供給管45と、攪拌機80と、温調機90と、から、構成されている。
スラリー塗布装置は、前述したスラリー塗布装置であり、上座3と、下座2と、を有する。
【0046】
スラリーストックタンク40は、触媒用スラリーが保持される上方が開口した槽状の容器である。
スラリー循環管5は、一端部51がスラリーストックタンク40の底面に開口し、スラリーストックタンク40の外部を通り他端部52がスラリーストックタンク40に開口した管路である。また、スラリー循環管5は、一端部51と他端部52の間にポンプ55を、ポンプ55と他端部52の間にバルブ53がもうけられている。ポンプ55は、一端部51から吸入されたスラリーを、他端部52から排出するものである。バルブ53は、スラリー循環管5を循環するスラリーを遮断するものである。
【0047】
スラリー循環管5は、その管路中に管の内径が太くなったスラリーだめ56を有する。スラリーだめ56は、スラリー供排管6よりスラリー塗布装置に供給されるスラリーを、所定量供給するためにスラリー循環管5中に保持するためにもうけられている。
スラリー供排管6は、スラリー循環管5のポンプ55とスラリーだめ56との間に接続されている。スラリー供排管6は、スラリー循環管5およびスラリーだめ56を循環しているスラリーをスラリー塗布装置に供給するための管路である。このスラリー供排管6とスラリー循環管5との接続は、スラリーの流れる管の切り替えが可能なバルブ61を介してなされている。
【0048】
また、スラリー供排管6には、バルブ62を介してスラリー還元管65が接続されている。スラリー還元管65は、スラリー塗布装置に送出されたスラリーの過剰量をスラリーストックタンク40に還元するための管であり、その開口部はスラリーストックタンク40に開口している。バルブ62により、バルブ61からスラリー塗布装置へと、あるいはスラリー塗布装置から開口部63へと、スラリーが流れる管路が切り替えられるようになっている。
【0049】
供給ガス供給管70は、スラリー循環管5と接続され、スラリー循環管5に加圧されたガスを供給するものである。供給ガス供給管70より供給される加圧されたガスを供給することで、スラリー循環管5内のスラリーをスラリー供排管6に供給する。
供給ガス供給管70は、加圧されたガスの供給を制御するバルブ71と、ガス供給管70内の加圧されたガスを排出するバルブ72と、がもうけられている。また、バルブ71とスラリー循環管5との間に加圧されたガスを保持するガスだめ73がもうけられている。ガスだめ73を有することでガス供給管70は、スラリー循環管5からのスラリーの逆流を防止できる。
【0050】
排出ガス供給管75は、スラリー塗布装置の上座3のガス室32にスラリー排出のための加圧されたガスを供給するものである。排出ガス供給管75は、上座3に接続され、管路中の加圧されたガスを流通あるいは排出できるバルブ76を有する。排出ガス供給管75より供給される加圧されたガスにより、触媒担体のセル内のスラリーをスラリー供排管6に排出する。
【0051】
スラリー供給管43は、原料スラリーをスラリーストックタンクに供給する管であり、一端部がスラリーストックタンク40に開口している。
また、水供給管45も、スラリー供給管43と同様に一端部がスラリーストックタンク40に開口している。このスラリーコート装置は、スラリー塗布装置からの過剰なスラリーがスラリーストックタンク40に還元されるが、この過剰なスラリーは、触媒担体の材質によってはスラリー中の水分が触媒担体に吸収されるため、スラリーの粘度を保つために水が供給される。
【0052】
攪拌機80は、回転数を制御できるモーター81と、モーター81の回転軸の先端に回転羽根82を有している。攪拌機80は、スラリーストックタンク40内のスラリーを攪拌できるように、回転羽根82がスラリー中で回転できるように設置されている。
攪拌機80は、粘度計85と接続されている。攪拌機80の粘度計85との接続は、攪拌機80の回転数を制御する制御装置87を介してなされている。攪拌機80が粘度計85と接続されていることで、粘度計85により得られたスラリー粘度をフィードバックして、攪拌機80の回転数を制御することでスラリー粘度を一定の値に保つことができる。
【0053】
温調機90は、スラリーストックタンク40と一体的に形成され、スラリー温度を測定する温度計と、この温度計と接続されたヒーターとから構成されている。温調機は、温度計で測定されたスラリー温度をフィードバックしてヒーターの制御を行うことでスラリー温度を一定に保つものである。
(スラリーの循環)
本実施例のスラリーコート装置は、以下のようにスラリーが循環している。
【0054】
スラリーストックタンク40に供給されたスラリーは、ポンプ55によりスラリー循環管5の一端部51からバルブ61、スラリーだめ56、バルブ53を通って他端部52からスラリーストックタンク40に還元されて循環する。
スラリーがスラリー循環管5を循環している間は、バルブ61は循環するスラリーがスラリー供排管6に流れないように、バルブ53はスラリー循環管5にスラリーが流れるように調節されている。また、供給ガス供給管70にもうけられたバルブ72が開放され、バルブ71が遮断されていることで、ガス供給管70およびスラリー循環管5内に加圧されたエアーが入らないようになっている。
【0055】
(スラリーのコート)
触媒用スラリーコート装置を用いて、実際に調整したスラリーを触媒担体にコートした。このときのコート方法を図1および2を用いて説明する。
触媒担体1には、直径103mm、長さ155mmの円筒状で、400セル/平方インチ、壁厚4ミル(うす壁)、体積1.3lのコーディエライト製触媒担体が用いられた。また、触媒担体に塗布されるスラリーには、アルミナを主成分とする比重1.5のコーティングスラリーが用いられた。
【0056】
コーティングスラリーは、スラリー調整装置により粘度が60cps±10%となるように保持されている。また、このスラリーは、温度が25℃に保持されていた。
まず、触媒担体1の下端11を下座2の保持体23のスラリー流路24と連通するように円筒状のひだ部27内に挿入して、下座2に触媒担体1を保持する。(図1−a)
触媒担体1を下座2に保持した状態で、エアーシリンダーを稼働させて上座3と下座2とがかみ合うように、上座3を降下させる。その後、上座3が下座2とかみ合った状態でエアーシリンダーが3kg/cm2の圧力で下座2が上座3に押圧される。(図1−b)
上座3を降下させることで、上座3のガス室32の開口部の周縁部に形成されたシール部材34が触媒担体1の上端13の端面の外周部と圧着され、触媒担体1と上座3との間に液密性を生じている。また、上座3の降下により、触媒担体1が下方に押圧されるため、触媒担体1の下端11の端面の外周部も保持体23の開口部25に圧着されて液密性を生じる。
【0057】
また、上座3の降下にともない、上座3に形成されたリング部材36も降下する。リング部材36の降下により、リング部材36が保持体23のひだ部27を押圧する。リング部材36がひだ部27を押圧することは、リング部材36およびひだ部27の外周面29にもうけられたテーパの作用により、ひだ部27が触媒担体1の下端11の壁面に押しつけられる。このため、触媒担体1と下座2との間の液密性がより向上する。
【0058】
触媒担体1を保持した状態で、スラリーを下座2に供給することで、触媒担体1のセルにスラリーを導入し、触媒担体1にスラリーをコートした。なお、このときの上座3に接続した排出ガス供給管75のバルブ76は加圧されたガスが供給されないとともに大気側に開放されている。
スラリーの下座2への供給は、スラリーが循環しているスラリー循環管5のバルブ53を遮断し、バルブ61を切り替えてスラリー循環管5のスラリーだめ56からスラリー供排管6にスラリーが流れるようにする。スラリー供配管6は、バルブ62を切り替えて、スラリー還元管65にスラリーが流れないようにする。
【0059】
その後、供給ガス供給管70のバルブ72を遮断、バルブ71を開放して、供給ガス供給管70およびスラリー循環管5に加圧されたガスを導入して、このガスの圧力によりスラリー循環管5およびスラリーだめ56中のスラリーをスラリー供排管6を通じてスラリー塗布装置に供給する。
スラリー塗布装置に供給されたスラリーは、下座2のスラリー流路24を通って下座2に保持された触媒担体1の下端11の端面から触媒担体1のセル内にスラリーが圧入される。このスラリーの圧入は、スラリー供給に用いられた供給ガス供給管70より供給された加圧されたガスの圧力を用いて行われた。
【0060】
触媒担体1の下端11の端面から圧入されたスラリーが上端13の端面からしみ出たところで、バルブを切り替えることでスラリー塗布装置へのスラリーの供給をストップするとともに、スラリー供配管6とスラリー還元管65が導通するようにした。このスラリーのしみ出しは、センサー等により検知できる。
上座3に接続された排出ガス供給管75のバルブ76を切り替えて、加圧されたガスを上座3に供給して、このガスの圧力を利用して上座3側から下座2側にスラリーを排出する。排出ガス供給管75から供給されたガスは、ガス室32を介して、上座3に保持された触媒担体1の上端13の端面からセルに供給され、このガスの圧力により、セル中のスラリーを排出する。このときのガスの圧力は、3〜5kg/cm2(60〜100kgf程度)の圧力であった。
【0061】
この排出ガス供給管75から供給されたガスの圧力により排出されたスラリーは、スラリー供配管6およびスラリー還元管65を介して、スラリーストックタンク40に還元される。
実施例の触媒用スラリーコート装置は、上記手順により触媒担体にスラリーを塗布することができる。
【0062】
実施例の触媒用スラリー塗布装置は、加圧コート法によるスラリー塗布時に、上座3および下座2の触媒担体1の保持部からのスラリーの漏れ出しが確認されなかった。実施例の触媒用スラリー塗布装置は、スラリーの漏れ出しが見られないため、スラリーのロスが生じなくなっている。
【0063】
【発明の効果】
本発明の触媒用スラリー塗布装置は、触媒担体にスラリーを塗布するときに、触媒担体の上端および下端を液密的に保持することで、スラリーの漏れ出しを防いでいる。このため、スラリーが漏れ出すことにより生じていた、漏れだしたスラリーを除去するための装置の清掃にかかる時間や作業コストの低減、漏れだしたスラリーによるスラリー原料のロスの防止という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)実施例の触媒用スラリー塗布装置において、触媒担体を保持した状態の断面を示した図である。(b)実施例の触媒用スラリー塗布装置において、上座と下座が押圧された状態の断面を示した図である。
【図2】 実施例の触媒用スラリーのコート装置を示した図である。
【符号の説明】
1…触媒担体 11…触媒担体下端 13…触媒担体上端
2…下座 21…下座基材 23…保持体
24…スラリー流路 27…ひだ部
3…上座 31…上座基材 32…ガス室
34…シール部材 36…リング部材
40…スラリーストックタンク 5…スラリー循環管
6…スラリー供配管 70、75…ガス供給管
80…攪拌機 90…温調機

Claims (11)

  1. 軸方向に管状通路を有する筒状触媒担体の下端周縁部を液密的に保持するとともに保持された該触媒担体の該管状通路に触媒用スラリーを供給または排出する下座と、
    該触媒担体の上端周縁部を液密的に保持する上座と、
    該下座と該上座を相対的に近接または離脱させ、該触媒担体を該下座および該上座間に着脱する座駆動装置と、
    該下座に該スラリーを供給、排出するスラリー供排手段と、
    を有し、該下座から該スラリーを該管状通路内に供給した後に、該スラリーを該管状通路から排出することを特徴とする触媒用スラリー塗布装置。
  2. 前記下座は、前記筒状触媒担体の前記管状通路と連通されるとともにその開口部から漏斗状に内径が小さくなるスラリー流路を区画する基部と、該基部と一体的に形成され該開口部の周縁部に上方に突出して形成されたひだ部と、からなる保持体を有する請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  3. 前記ひだ部は、前記基部側の厚さが厚くなるようにテーパを有することを特徴とする請求項2記載の触媒用スラリー塗布装置。
  4. 前記保持体は、ウレタンゴムにより形成されていることを特徴とする請求項2記載の触媒用スラリー塗布装置。
  5. 前記上座は、前記触媒担体の上端の端面の周縁部との当接部にシール部を有する請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  6. 前記シール部は、ウレタンゴムにより形成されていることを特徴とする請求項5記載の触媒用スラリー塗布装置。
  7. 前記上座は、リング状に形成された前記保持体の前記ひだ部を押圧するリング部を有することを特徴とする請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  8. 前記スラリー供排手段は、前記上座に保持された前記触媒担体に加圧されたガスを供給するガス供給手段を有する請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  9. 前記触媒用スラリーは、無機酸化物と、バインダーと、水を含む請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  10. 前記触媒用スラリー塗布装置は、前記下座に供給される前記スラリーを貯留するスラリーストックタンクを有し、
    該スラリーストックタンクには、前記下座を介して前記触媒担体の前記管状通路から排出された前記触媒用スラリーが流入する請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
  11. 前記下座は、前記触媒担体の前記管状通路と連通されるとともにその開口部から漏斗状に内径が小さくなるスラリー流路を区画する基部と、該基部と一体的に形成され該開口部の周縁部に上方に突出して形成された基部側の厚さが厚くなるように外周面が傾斜したテーパ状をなすように形成されたひだ部と、からなる保持体を有し、
    前記上座は、リング状に形成された前記保持体の前記ひだ部のテーパ面を押圧するリング部を有し、
    該下座と該上座とが近接したときに、該リング部が該ひだ部の該テーパ面の外周面を押圧する請求項1記載の触媒用スラリー塗布装置。
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