JP4222018B2 - 電気制御操舵装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気制御操舵装置に関するものであり、特に、車両の停止状態において操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時における電気エネルギの節減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気制御操舵装置は、特許文献1ないし4にそれぞれ記載されているように、操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置を、常にはその動力転舵装置による転舵角が操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する構成とされる。
【0003】
そして、特許文献1には、据え切り後の保舵時に、動力転舵装置への供給電流の絶対値を0まで減少させることが記載されている。据え切りは車両が停止した状態で行われるため、タイヤと路面との摩擦力が大きく、タイヤが比較的大きく弾性変形させられる。そのため、据え切り開始当初はタイヤの路面との接触部は動かず(以下、このことを「タイヤが動かない」という)、タイヤを保持するディスクホイールのみが転舵され、やがてタイヤもディスクホイールと共に動くに至るが、ディスクホイールの方向とタイヤの方向(厳密には、タイヤの路面との接触部の方向であるが、以下、タイヤの方向と称する)とはずれている。なお、ディスクホイールの方向は、ディスクホイールの回転軸線と直角な平面内において、回転軸線と直交し、路面と平行な方向とし、タイヤの方向は、タイヤの路面との接触部の路面上における方向とする。
【0004】
このようにタイヤが弾性変形させられ、ディスクホイールの方向とタイヤの方向とがずれるとき、タイヤの弾性変形の復元力に基づくトルクである復元トルクがディスクホイールに作用する。この復元トルクは、タイヤと路面との摩擦力に基づくトルクである抵抗トルクと等しく、ディスクホイールの方向をタイヤの方向と一致させようとする向き、すなわち、据え切り方向とは逆向きに作用する。そのため、操舵車輪の転舵角(すなわち、ディスクホイールの転舵角)を操舵量に対応する角度に維持しようとすれば、ディスクホイールを操舵量に対応する転舵角が得られる位置に保つ保舵力をディスクホイールに作用させ続けることが必要であり、動力転舵装置に電流を供給し続けることが必要であって、据え切り後保舵状態が長く続けば電気エネルギの消費量が多くなる。また、動力転舵装置の駆動源が電動モータである場合、発熱等を防止するために電動モータの体格や駆動回路の容量を大きいものとすることが必要となり、製造コストが高くなる。
【0005】
そこで、特許文献1に記載の電気制御操舵装置においては、据え切り後保舵時には、供給電流の絶対値を0にするようにされている。供給電流の絶対値が0にされれば、ディスクホイールはタイヤの復元トルクによって据え切り方向とは逆向きに回動させられ、その方向がタイヤの方向と一致するが、操舵部材は据え切り後の位置に保たれているため、その操舵部材の操舵量に対応する方向とは一致しなくなる。もしこの状態が放置されれば、次に操舵部材が操作された場合、ディスクホイールを、その方向が操舵部材の操舵量に対応する方向と一致する位置へ転舵するための制御は、上記不一致を解消しつつ行われることとなり、ディスクホイールが不一致がない場合とは異なる運動を行い、転舵に遅れが生じたり、運転者に違和感を与えたりする。そのため、特許文献1に記載の電気制御操舵装置においては、操舵部材が自動で操作され、操舵量が、実際の転舵角に対応する量となるようにされている。それにより、動力転舵装置の消費電気エネルギが少なくて済むとともに、操舵部材の操舵量とディスクホイールの実際の方向とにずれが存在することによる上記不具合が回避される。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−278625号公報
【特許文献2】
実公平2−29017号公報
【特許文献3】
特開平10−230861号公報
【特許文献4】
特開2000−85605号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、操舵部材を自動的に操作して操舵量を操舵車輪の転舵角に合わせれば、運転者が操作しないにもかかわらず操舵部材が動くため、運転者に違和感を与える。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景とし、電気制御操舵装置あるいは動力操舵装置において、実際の転舵角の操舵部材に対応する転舵角との差が過大となることを回避しつつ所要保舵力ないし所要転舵力を低減させることと、運転者の操舵違和感を軽減することとの少なくとも一方を課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の電気制御操舵装置あるいは動力操舵装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0009】
なお、以下の各項において、 (1)項が請求項1に相当し、 (5)項が請求項2に、 (7)項が請求項3にそれぞれ相当する。
【0010】
(1)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置を、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する一方、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記動力転舵装置への供給電流の絶対値を減少させる電気制御操舵装置において、
前記制御装置に、前記据え切り後保舵時に前記動力転舵装置への供給電流の絶対値が減少して0に達する前に、実際の転舵角と、前記操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が、予め定められた設定転舵角差に達した場合に、前記供給電流の絶対値の減少を停止させる電流減少停止部を設けたことを特徴とする電気制御操舵装置。
【0011】
動力転舵装置は電動モータを駆動源とするものとすることができる。その場合、電動モータの出力が機械的に転舵機構に伝達されるものとすることも、液圧回路により転舵機構に伝達されるものとすることも可能である。後者の場合、電動モータは液圧ポンプや液圧シリンダを駆動するものとされる。電動モータを駆動源とする動力転舵装置においては、減少させられる供給電流が電動モータへの供給電流とされる場合が多いが、液圧回路により動力が伝達される場合には、電磁圧力制御弁への供給電流とされる場合もある。
上記「転舵角差が予め定められた設定転舵角差に達した」ことは、転舵角検出装置により検出された転舵角と操舵量検出装置により検出された操舵量から演算された転舵角とを比較することによって検出することができるが、逆に、転舵角検出装置により検出された転舵角から演算された操舵量と操舵量検出装置により検出された操舵量との比較によっても検出し得る。
操舵部材の代表的なものは運転者により回転操作されるステアリングホイールであるが、傾動操作されるジョイスティック等、運転者の操舵意志を制御装置に伝達し得るものであれば何でもよい。
本項の電気制御操舵装置においては、据え切り後保舵時に、動力転舵装置への供給電流の絶対値が0を目指して減少させられるが、必ずしも0まで減少させられるとは限らない。供給電流が0まで減少させられる前に転舵角差が設定転舵角差に達すれば、供給電流の減少が停止させられるからである。換言すれば、本項の電気制御操舵装置においては、転舵角差が設定転舵角差を超えない範囲で、供給電流が可及的に減少させられるのであり、据え切り後保舵のための消費電気エネルギが小さくて済むとともに、転舵角差が過大になることも回避される。また、操舵部材が自動で操作されることがなく、運転者に違和感を与えることもない。
また、運転者が操舵部材から手を離し、操舵部材が中立位置へ戻ったにもかかわらず、操舵量検出装置の検出誤差により操舵部材が中立位置以外にあると検出されて転舵装置に電流が供給される事態が生じても、検出誤差に起因して生じる転舵角差が設定転舵角差以下である限り、動力転舵装置への供給電流の絶対値が0まで減少させられるため、無駄な電気エネルギの消費が回避される。
【0012】
(2)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置の駆動源たる電動モータを、常には前記動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する一方、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記電動モータへの供給電流の絶対値を減少させる電気制御操舵装置において、
前記制御装置に、前記据え切り後保舵時に前記電動モータへの供給電流の絶対値が減少させられて0になる前に、実際の転舵角の前記操舵量に対応する転舵角と差の絶対値である転舵角差が予め定められた設定転舵角差に達した場合に、前記供給電流の絶対値の減少を停止させる電流減少停止部を設けた電気制御操舵装置。
本項の電気制御操舵装置においては、例えば、(1)項に記載の作用および効果が得られる。
【0013】
(3)運転者により操作される操舵部材と、
その操舵部材の操作量である操舵量を検出する操舵量検出装置と、
電動モータを駆動源とする動力転舵装置と、
その動力転舵装置を制御する制御装置と
を含み、かつ、その制御装置が、
前記動力転舵装置を転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する通常制御部と、
車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記電動モータへの供給電流の絶対値を減少させる電流減少部と、
その電流減少部による減少により供給電流の絶対値が0まで減少する前に、実際の転舵角の前記操舵量に対応する転舵角と差の絶対値である転舵角差が予め定められた設定転舵角差に達した場合に、前記電流減少部による供給電流の絶対値の減少を停止させる電流減少停止部と
を含む電気制御操舵装置。
本項の電気制御操舵装置においては、例えば、(1)項に記載の作用および効果が得られる。
【0014】
(4)前記制御装置が、前記設定転舵角差を設定する転舵角差設定部を含む (1)項ないし (3)項のいずれかに記載の電気制御操舵装置。
転舵角差設定部は、設定転舵角差を不変の一定値に設定するものとしたり、可変値に設定するものとしたりすることができる。後者は、例えば、設定転舵角差を据え切り保舵状態の継続時間が長い場合に短い場合に比較して大きい値に設定する時間対応設定部を含むものとしたり、動力転舵装置の電動モータや電磁圧力制御弁等電磁アクチュエータの温度(機器温度検出装置により検出された温度でも他の物理量から推定された温度でもよい)が高い場合に低い場合に比較して設定転舵角差を大きい値に設定する機器温度対応設定部としたり、外気温が高い場合に低い場合より大きい値に設定する外気温対応設定部としたり、据え切り後の保舵が開始された時点における実際の転舵角と操舵量に対応する転舵角との差である初期転舵角差が大きい場合に小さい場合より大きい値に設定する初期転舵角差対応設定部としたりすることができる。設定転舵角差は、上記継続時間,機器温度,外気温,初期転舵角差等の大きさに対応して3段階以上の多段階あるいは無限段階に設定されるようにすることが望ましい。初期転舵角差対応設定部は、例えば、設定転舵角差を初期転舵角差に比例する大きさに設定するものとすることができる。
【0015】
(5)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置を、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する一方、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記動力転舵装置への供給電流の絶対値を減少させる電気制御操舵装置において、
前記据え切り後保舵時に前記動力転舵装置への供給電流の絶対値が減少させられて0に達する前に、実際の転舵角と、前記操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が、予め定められた設定転舵角差に達する場合に、その時点から供給電流の絶対値がさらに減少させられるのに伴って生じる実際の転舵角変化量に対応する操舵量、前記操舵部材を自動で操作することにより、前記転舵角差が前記設定転舵角差を超えることを回避する自動操作装置を設けたことを特徴とする電気制御操舵装置。
【0016】
本項の電気制御操舵装置は、例えば、据え切り後保舵時に動力転舵装置への供給電流の絶対値を減少させる電流減少部と、その電流減少部によって供給電流の絶対値が減少させられるにつれて転舵角差が設定転舵角差に達した後は、操舵部材を動力転舵装置の転舵角の変化に自動で追従させる自動操作装置とを含むように構成することができる。また、上記電流減少部と、その電流減少部により供給電流の絶対値が減少させられるにつれて転舵角差が設定転舵角差に達した時点から供給電流の絶対値がさらに減少させられる際の動力転舵装置の転舵角の変化量に対応する操舵部材の操舵量を演算する操舵量演算部と、その操舵量演算部により演算された操舵量、操舵部材を自動で操作する自動操舵装置とを含むように構成することもできる。前者の場合は、まず、供給電流の絶対値の減少につれて動力転舵装置が作動し、転舵角差が設定転舵角差まで減少した後は、動力転舵装置の作動と並行して操舵部材が自動操作され、転舵角差が設定転舵角差を超えることが回避される。後者の場合は、上記と同様に作動するようにすることもできるが、動力転舵装置の作動の当初から並行して操舵部材の自動操作も行われるようにすることもでき、その分、操舵部材の操作速度を小さくすることができる。
【0017】
転舵角差が設定転舵角差に達した後、供給電流の絶対値が0まで減少させられるようにすることも、供給電流の絶対値が0になる前に操舵部材の操舵量が設定操舵量に達した場合には、供給電流の絶対値の減少が停止させられるようにすることも可能である。後者の場合には、操舵部材の自動操作量が大きくなることを回避して、運転者の違和感を軽減することができる。
【0018】
電流減少部により供給電流の絶対値が減少させられるにつれて生じる転舵角差は、実際に検出することも、演算で推定することもできる。前者の場合は、例えば、動力転舵装置の転舵角を検出する転舵角検出装置と、操舵部材の操舵量を検出する操舵量検出装置とを利用することができ、あるいは転舵角差を直接検出する転舵角差検出装置を使用することもできる。転舵角差が設定転舵角差に達した時点から供給電流の絶対値がさらに減少させられるのに伴って生じる転舵角変化量も演算によって推定することができる。
【0019】
なお、切り増し(転舵角の絶対値が増加する操舵あるいは転舵)が行われる際の動力転舵装置に対する操舵車輪の抵抗は、切り戻し(転舵角の絶対値が減少する操舵あるいは転舵)が行われる際の抵抗より大きいのが普通である。サスペンションが、転舵角の絶対値の増加に伴って操舵車輪が車体を持ち上げるように構成されており、常に転舵角の絶対値を減少させる向きの戻しトルクが作用するようにされているのが普通であるからである。したがって、厳密には、据え切りによる切り増し時と切り戻し時とでは動力転舵装置が発生すべき転舵力が異なり、供給電流の絶対値も異なるのであり、電流減少部により供給電流の絶対値が減少させられるにつれて生じる転舵角差や、転舵角差が設定転舵角差に達した時点から供給電流の絶対値がさらに減少させられるのに伴って生じる転舵角変化量(ひいてはその転舵角変化量に対応する操舵部材の操舵量)を演算で推定する場合には、上記戻しトルクを考慮に入れることが必要である。しかし、この戻しトルクは、据え切り時におけるタイヤと路面との摩擦力に基づく抵抗トルクに比較して十分小さいため、無視して、切り増し時も切り戻し時も動力転舵装置の所要転舵力は同じであるとみなしても差し支えない場合が多い。
【0020】
本項の電気制御操舵装置によれば、供給電流の絶対値が設定転舵角差に達した後、さらに減少させられるため、所要保舵力がより小さくて済み、消費電流が少なくて済む。また、操舵部材が自動で操作されて操舵車輪の動きに追従させられるため、運転者に操舵違和感が生ずるが、操舵部材は、転舵角差が設定転舵角差を越えることを回避するように自動操作されるため、操舵部材の追従は、操舵量が操舵車輪の実際の転舵角に対応する量となるようにされる場合より少なく、操舵違和感は少なくて済む。さらに、供給電流の絶対値が0になる前に、その減少を停止すれば、転舵の過不足が小さくて済む。
【0021】
(6)前記自動操作装置の作動開始前に、その自動操作装置の作動を運転者に予告する自動操作予告装置を含む (5)項に記載の電気制御操舵装置。
自動操作予告装置は、例えば、表示画面を含む表示装置により構成され、文字,図形,記号等により表示してもよく、音声出力装置により構成してもよく、ランプの点滅,点灯等により予告する装置としてもよい。
【0022】
(7)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置の駆動源たる電動モータを、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する電気制御操舵装置において、
前記制御装置に、車両の停止状態において前記操舵部材の操舵量の絶対値が増加させられた後に一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記電動モータへの供給電流の絶対値を制御することにより、前記動力転舵装置に、転舵角の絶対値を、前記一定に保たれる操舵量の絶対値に対応する転舵角の絶対値である操舵対応転舵角よりタイヤの弾性変形に対応すると推定される量増加させた後に減少させて、転舵角の絶対値をタイヤの復元トルクによりほぼ前記操舵対応転舵角まで減少させることによって所要保舵力を低減させる所要保舵力低減部を設けた電気制御操舵装置。
所要保舵力は、操舵車輪を操舵部材の操舵量に対応する転舵角が得られる転舵位置ないし転舵方向に保つのに要する力である。
上記所要保舵力低減部は、車両の停止状態において操舵部材の操舵量の絶対値が増加させられた後に一定に保たれる据え切り後保舵時に、電動モータへの供給電流の絶対値を制御することにより、動力転舵装置に、転舵角の絶対値を、上記一定に保たれる操舵量の絶対値に対応する転舵角の絶対値である操舵対応転舵角よりタイヤの弾性変形に対応すると推定される量増加させた後に減少させて、転舵角の絶対値をタイヤの復元トルクによりほぼ操舵対応転舵角まで減少させることを1回行うものであればよいが、転舵角の増加や減少を複数回行うものとすることも可能である。後者の場合、増加や減少の絶対量が徐々に小さくされるようにすることが望ましい。
電動モータへの供給電流の絶対値を増大させた後、減少させることにより、転舵角を一旦増加させた後減少させ、あるいは転舵角を一旦減少させた後、増加させることができる。
据え切り後保舵時には、タイヤの弾性変形により、タイヤの方向とディスクホイールの方向とにずれが生じているが、例えば、据え切りが転舵角が増加する方向に行われた場合、転舵角を一旦増加させれば、ディスクホイールおよびタイヤが据え切り時と同じ方向へ更に動かされ、ディスクホイールは操舵部材の操舵量に対応する転舵角が得られる位置(操舵対応転舵位置と称する)を超えて転舵させられるが、タイヤは操舵対応転舵位置に接近させられる。そのため、一旦増加させた転舵角を減少させれば、すなわち一旦増加させた電動モータへの供給電流を減少させれば、ディスクホイールは供給電流の減少に伴ってタイヤの復元トルクにより据え切り時とは逆向きに動かされ、操舵対応転舵位置へ近づけられる。それにより、供給電流の絶対値と転舵角差との両方が減少させられる。転舵角の増加量および減少量の設定が適切であれば、ディスクホイールおよびタイヤが共に操舵対応転舵位置に位置するようにでき、転舵角差と供給電流とを共に0にすることができる。
据え切りが転舵角が減少する方向に行われ、転舵角を一旦減少させた後増加させる場合も同様である。
このように本項の電気制御操舵装置によれば、据え切り後保舵状態における所要保舵力が小さくて済み、無駄な電気エネルギの消費,電動モータの体格等の増大等を抑えつつ、ディスクホイールをほぼ操舵部材の操舵量に対応する転舵角が得られる位置に位置させることができ、転舵の過不足の発生が回避される。また、操舵部材が自動で操作されることがなく、運転者が操舵違和感を感ずることがない。
(8)前記所要保舵力低減部が、前記所要保舵力を消滅させる保舵力消滅部を含む (7)項に記載の電気制御操舵装置。
【0023】
(9)制御装置により動力転舵装置が、その動力転舵装置による転舵角が操舵部材の操作量である操舵量に対応する大きさとなるように制御される動力操舵装置において、
前記制御装置に、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記転舵装置に転舵角を一旦増加させた後減少させ、あるいは一旦減少させた後増加させることにより、所要保舵力を低減させる所要保舵力低減部を設けた動力操舵装置。
本項の動力操舵装置には、前記各項に記載の電気制御操舵装置は勿論、操舵部材に加えられる操作力を倍力するいわゆるパワーステアリング装置も含まれる。
本項によれば、例えば、 (7)項に記載の作用および効果が得られる。
(10)前記所要保舵力低減部が、前記所要保舵力を消滅させる保舵力消滅部を含む (9)項に記載の動力操舵装置。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本電気制御操舵装置は、図1に示すように、操舵部材としてのステアリングホイール10,操舵量検出装置の一種である操舵角検出装置としてのロータリエンコーダ12,反力付与装置14,動力転舵装置16および制御装置18を含んでいる。ステアリングホイール10は、ステアリングシャフト20の一端部に連結されており、運転者により操作され、操作が解除されれば、ステアリングシャフト20の他端部と車体22との間に配設されたねじればね24により、所定の中立位置に復帰させられる。ねじればね24は所定の弾性力を有し、戻し装置を構成する。
【0025】
ステアリングシャフト20に、前記ロータリエンコーダ12が取り付けられており、ステアリングホイール10の操作量である操舵量としての操舵角を検出する。本実施形態においては、ロータリエンコーダ12は、ステアリングホイール10が中立位置に位置する状態での操舵角を0度、ステアリングホイール10が中立位置から、運転者から見て時計方向であって、車両を右旋回させる向き(右方向)に操作された場合の操舵角を正の値、車両を左旋回させる向き(左方向)に操作された場合の操舵角を負の値で検出するように構成されている。本実施形態では、ステアリングホイール10がいずれの回転位置にあっても、時計方向ないし右方向の回転操作が正方向の操作であり、反時計方向ないし左方向の回転操作が負方向の操作である。ステアリングホイール10が中立位置に位置する状態では、車両は直進状態とされる。
【0026】
前記反力付与装置14は、本実施形態においては電動モータ32を駆動源として構成されており、ステアリングシャフト20と同心に設けられ、ステアリングホイール10に、操舵角の絶対値に応じた大きさの力である操舵反力を与える。以後、電動モータ32を反力モータ32と称する。
【0027】
動力転舵装置16はよく知られており、簡単に説明する。動力転舵装置16は、図1に示すように、駆動源としての電動モータ40,転舵軸42および運動変換装置(図示省略)等を含む。転舵軸42は転舵軸ハウジング44により、軸方向に摺動可能にかつ回転不能に支持され、車体の左右方向に配設されており、電動モータ40の回転は運動変換装置により転舵軸42の軸方向の移動に変換され、それによりナックルアーム46およびタイロッド48を介して一対の操舵車輪50が左方向あるいは右方向に向けられ、転舵される。以後、電動モータ40を転舵モータ40と称する。本実施形態においては、ステアリングホイール10が正方向に回転操作されることにより、操舵車輪50が右方向であって正方向に転舵され、ステアリングホイール10が負方向に回転操作されることにより、操舵車輪50が左方向であって負方向に操舵される。
【0028】
操舵車輪50は、詳細な図示は省略するが、タイヤと、タイヤを保持するディスクホイールとを有し、動力転舵装置16はディスクホイールの向きを変え、それによりタイヤも向きを変えられて操舵車輪50が転舵される。このように転舵される操舵車輪50の転舵角は、転舵量検出装置としての転舵角センサ54により検出される。転舵角センサ54は、本実施形態においては、転舵軸ハウジング44と転舵軸42との相対移動位置に基づいて転舵角を検出するものとされており、絶対転舵量(絶対的に定まった基準位置、例えば中立位置からの操舵車輪の転舵角に対応する転舵量)を検出する装置であり、本実施形態においては、操舵車輪50が中立位置に位置する状態での転舵角を0度、中立位置から正方向(右方向)に転舵される場合の転舵角を正の値、中立位置から負方向(左方向)に転舵される場合の転舵角を負の値で検出するように構成されている。操舵車輪50の中立位置は、ステアリングホイール10が中立位置に位置する状態における位置である。また、転舵モータ40の回転角度は、回転角検出装置としてのロータリエンコーダ56により検出され、このロータリエンコーダ56の検出信号からも転舵角が検出される。転舵角センサ54による中立位置の検出に基づいてロータリエンコーダ56の基準点である零点が設定され、その零点およびロータリエンコーダ56から出力されるパルス信号のカウントに基づいて操舵車輪50の中立位置からの転舵角が検出される。ロータリエンコーダ56の検出信号に基づいて操舵車輪50の転舵角が検出される場合、その転舵角が操舵車輪50の転舵角として制御に使用される。なお、転舵角センサ54が検出する角度は、ディスクホイールの転舵角であり、転舵角により得られる操舵車輪の方向はディスクホイールの方向である。
【0029】
制御装置18は、コンピュータ60を主体として構成されており、動力転舵装置16等を制御する。コンピュータ60は、CPU,ROM,RAMおよびそれらを接続するバスを含んで構成されており、入出力インタフェースには、前記ロータリエンコーダ12,転舵角センサ54,ロータリエンコーダ56および車速センサ62等の各種センサが接続されている。車速センサ62は、車両の走行速度を検出する。また、駆動回路62,64をそれぞれ介して反力モータ32および転舵モータ40等を制御する。本実施形態においては、これらコンピュータ60および駆動回路62,64等が制御装置18を構成している。
【0030】
コンピュータ60のROMには、図2にフローチャートで示す動力転舵制御ルーチン等、各種プログラム等が記憶されている。本実施形態の動力転舵制御を概略的に説明する。動力転舵制御は、通常制御時には、ロータリエンコーダ12により検出されたステアリングホイール10の操舵角に基づいて操舵車輪50を転舵するための目標転舵角が演算されるとともに、目標転舵角を得るために必要な転舵モータ40の駆動電流が演算され、その駆動電流によって転舵モータ40が駆動されることにより行われ、操舵車輪50の転舵角が操舵角に対応する大きさとなるように制御される。通常制御は、車両走行中においても車両停止中においても、ステアリングホイール10の回転操作に基づいて同様に行われる。
【0031】
車両の停止状態においてステアリングホイール10が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時には、転舵モータ40の駆動電流であって、転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少制御が行われ、転舵モータ40への供給電流が少なくて済むようにされる。
【0032】
据え切りが行われる場合、タイヤと路面との摩擦力が大きいため、タイヤが弾性変形させられ、据え切り開始当初は、ディスクホイールのみが動き、タイヤは動かない。転舵角の絶対値が増大し、タイヤがその弾性変形能の限度まで弾性変形させられれば、タイヤも動き出し、その後はディスクホイールと共に転舵される。したがって、ステアリングホイール10の回転操作が停止され、据え切りが終了した状態では、図3に破線で示すように、操舵車輪50の方向(ディスクホイールの方向)とタイヤの方向とにずれがあり、ディスクホイールにタイヤの弾性変形の復元力に基づく復元トルク(タイヤと路面との摩擦力に基づく抵抗トルクに等しい)が作用する。
【0033】
そのため、操舵車輪50の方向をステアリングホイール10の操舵角に対応する方向に維持しようとすれば、上記復元トルクに抗する力が得られる電流を転舵モータ40に供給し続け、操舵車輪50を操舵角に対応する位置に保つ保舵力を作用させ続ける必要がある。図4に示すように、据え切り時には、転舵角の増大に伴って転舵力が増大させられ、保舵状態では、タイヤが路面との摩擦力によって転舵された位置に保たれ、ディスクホイールにはタイヤの弾性変形に対応する復元トルクが作用する。したがって、供給電流の絶対値が0に減少させられれば、ディスクホイールが復元トルクによってタイヤ側へ戻され、タイヤの弾性変形分、転舵角が減少するため、転舵角を据え切り終了時の大きさに保つためには、その復元トルクに抗する力が必要なのである。
【0034】
しかし、転舵モータ40に電流を供給し続ければ、消費電気エネルギが増大する等の不具合が生じるため、本実施形態では、転舵モータ40への供給電流の絶対値は減少させる。しかし、必ずしも0までは減少させず、実際の転舵角の、ステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値(転舵角差)が設定転舵角差に達した場合に、供給電流の絶対値の減少を停止する。それにより、タイヤには弾性変形が残り、復元トルクに抗する保舵力が必要であるが、小さく、供給電流を減少させつつ、ステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角と、実際の転舵角とのずれを小さく抑え、そのずれによる不具合、例えば、次のステアリングホイール10の回転操作時に運転者に与える違和感を少なく抑える。以下、動力転舵制御ルーチンに基づいて詳細に説明する。
【0035】
動力転舵制御ルーチンのステップ1(以後、S1と略記する。他のステップについても同じ。)においてステアリングホイール10の操舵角αが読み込まれ、S2において車速vが読み込まれ、S3において転舵角θが読み込まれる。S1において読み込まれる操舵角αは実操舵角であり、S3において読み込まれる転舵角θは実転舵角である。そして、S4が実行され、車速vが0であるか否かの判定が行われる。車両が停止状態にあるか否かが判定されるのであり、車両が停止しておらず、車速vが0でなければ、S4の判定結果はNOになってS5が実行され、S1において読み込まれた操舵角αがコンピュータ60のRAMに格納され、目標転舵角演算用操舵角αxとされる。操舵角αは、先に記憶されている目標転舵角演算用操舵角αxに代えて記憶される。続いてS6が実行され、カウンタのカウント値Cが0にリセットされる。カウンタは、車両が停止状態にあり、かつ、ステアリングホイール10の操舵角が一定に保たれる状態が継続する時間を計るものである。
【0036】
次にS7が実行され、目標転舵角演算用操舵角αxに基づいて目標転舵角が演算され、S8において目標転舵角に基づいて転舵モータ40の駆動に必要な電流Iであって、転舵モータ40への供給電流Iが演算される。操舵角αは、ロータリエンコーダ12により正負の符号を有して検出され、供給電流Iも正負の符号を有する値で演算され、その値の正負により転舵モータ40の回転方向が設定される。演算後、S9において供給電流Iによる転舵モータ40の駆動が指令される。それにより、転舵モータ40が供給電流Iで駆動され、一対の操舵車輪50が、ステアリングホイール10の回転操作方向および操舵角に対応する方向に対応する角度、転舵される。なお、操舵時には、反力付与装置14によってステアリングホイール10に反力が付与されるが、反力の付与は、本実施形態とは直接、関係がないため、説明を省略する。
【0037】
そして、S10が実行され、S8において演算された供給電流Iがコンピュータ60のRAMに格納され、通常制御時供給電流Ixとされる。S10においてはまた、供給電流Iが電流減少制御時供給電流の前回値Iqとしても記憶される。供給電流Iは、先のS10の実行により記憶されている通常制御時供給電流Ix,前回値Iqに代えて記憶される。電流減少制御時供給電流の前回値Iqについては後述する。続いてS11が実行され、実転舵角θがコンピュータ60のRAMに格納され、通常制御時転舵角ないし操舵対応転舵角(ステアリングホイールの操舵量である操舵角に対応する転舵角)θxとされる。
【0038】
車両が停止させられ、車速vが0になれば、S4の判定結果がYESになってS12が実行され、目標転舵角演算用操舵角αxと、S1において読み込まれた操舵角である実操舵角αとの差の絶対値が設定値Aより小さいか否かが判定される。設定値Aは操舵判別値である。設定値Aは極く小さい正の値に設定されており、S12では、操舵角が変化しなくなり、運転者によるステアリングホイール10の回転操作が停止されたか否かが判定される。両操舵角の差の絶対値が設定値A以上であり、操舵角が変化しているのであれば、S12の判定結果はNOになってS5以下のステップが実行され、目標転舵角演算用操舵角αxが更新され、カウンタがリセットされるとともに、S1において読み込まれた操舵角αに応じて目標転舵角が演算され、必要電流Iが演算されて、ステアリングホイール10の操舵角αに応じて操舵車輪50が転舵されるようにされる。この操舵は、車速vが0の状態、すなわち車両の停止状態における操舵であり、据え切りである。
【0039】
ステアリングホイール10の操作が停止され、操舵角が変化しなくなれば、S12の判定結果がYESになってS13が実行され、カウンタのカウント値Cが1増加させられる。車両が停止状態にあり、かつ、ステアリングホイール10の操舵角が一定に保たれている時間が計られるのである。そして、S14が実行されてカウント値Cが保舵状態判定値Cs以上となり、車両の停止状態においてステアリングホイール10が保舵状態にあるか否かが判定される。この判定は、保舵状態判定値Csにより設定される時間が経過するまでの間、NOであり、S7以下のステップが実行される。この際、S5は実行されないため、目標転舵角は、S12の判定結果がYESになる直前のS5の実行時に格納された目標転舵角演算用操舵角αxに基づいて演算され、実転舵角が、確実に目標転舵角演算用操舵角αxに対応する大きさになるようにされる。
【0040】
車両の停止状態においてステアリングホイール10の操舵量が一定に保たれる状態が設定時間継続すれば、S14の判定結果がYESになってS15以下のステップが実行され、据え切りが行われて保舵状態にあるのであれば、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられる。また、据え切りが行われることなく、保舵状態にあるのであれば、転舵モータ40への供給電流が0に保たれる。
【0041】
まず、車両が据え切り後保舵状態にある場合を説明する。据え切り後保舵時における転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少制御は、本実施形態においては、図3に二点鎖線および破線で示すように、ディスクホイールの実際の方向とステアリングホイール10の操舵角に対応するディスクホイールの方向との間に設定転舵角差が生じ、ディスクホイールの実際の転舵角とステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値が予め定められた設定転舵角差に達するまで、供給電流の絶対値が減少させられる。
【0042】
設定転舵角差は正の値であり、本実施形態では、据え切り時に操舵車輪50が転舵され始めてから、タイヤが弾性変形し、ディスクホイールに追従して動き始めるまでの操舵車輪50の転舵角の絶対値より小さい大きさに設定されている。そのため、供給電流の絶対値の減少により、操舵車輪50はタイヤの弾性変形に基づく復元トルクによってタイヤの方向と一致する方向に動かされるが、タイヤの方向と一致することはなく、転舵モータ40への供給電流の絶対値を小さく抑えつつ、ディスクホイールの実際の方向とステアリングホイール10の操舵角に対応する方向とのずれも少なくされる。
【0043】
S15においては、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定転舵角差Bより小さいか否かが判定される。設定転舵角差Bは、本実施形態においては予め設定されており、不変の一定値であり、本実施形態では、平地(凹凸のない水平な路面)における平均的な路面摩擦係数およびタイヤの弾性変形能等に基づいて推定される操舵車輪50の方向とタイヤの方向とのずれの角度より小さい値に設定されている。操舵対応転舵角θxは、S14の判定結果がYESになる直前のS11の実行により得られた値であり、据え切りが行われた場合には、据え切りが終了し、ステアリングホイール10が据え切り終了時の状態に保たれている際の転舵角である。車両の停止時に保舵状態が検出され、S14の判定結果がYESになって初めてS15が実行されるときには、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとは等しく、その差の絶対値は設定転舵角差Bより小さく、S15の判定結果はYESになる。
【0044】
そして、S16が実行され、供給電流Ipが (1)式に従って演算される。
Ip=Iq−Ix/n・・・・(1)
Iqは、前回のS16の実行時に得られた電流減少制御時供給電流であり、S15の判定結果がYESになって初めてS16が実行されるときには、S10において記憶された値が用いられ、通常制御時供給電流Ixと等しい。また、Ixは、S10において記憶された通常制御時供給電流であって、操舵車輪50をステアリングホイール10の操舵角に対応する角度、転舵させるのに要する電流である。nは正の整数であり、予め設定されている。
【0045】
前述のように、供給電流Iは正負の符号を有する値であり、供給電流Iが負の値であり、通常制御時供給電流Ixが負の値ならば、S16が1回目に行われる際の電流減少制御時供給電流IqおよびIx/nはいずれも負の値であり、電流減少制御時供給電流Ipは負の値であるが、 (1)式の演算が繰り返し実行されれば、供給電流Ipは増大させられ、その絶対値は減少させられる。また、供給電流Iが正の値であり、通常制御時供給電流Ixが正の値ならば、S16が1回目に行われる際の電流減少制御時供給電流IqおよびIx/nはいずれも正の値であり、電流減少制御時供給電流Ipは正の値であるが、 (1)式の演算が繰り返し実行されれば、供給電流Ipは減少させられ、絶対値も減少させられる。
【0046】
次いでS17が実行され、通常制御時供給電流Ixと電流減少制御時供給電流Ipとの積が0より大きいか否かが判定される。S16が繰り返し実行されれば、電流減少制御時供給電流Ipの絶対値が減少させられ、0を超えて減少させられれば、電流減少制御時供給電流Ipの正負の符号が通常制御時供給電流Ixとは逆転し、それらの積が負の値になる。したがって、通常制御時供給電流Ixと電流減少制御時供給電流Ipとの積が0より大きいのであれば、電流減少制御時供給電流Ipがまだ0になっていないのであり、S17の判定結果がYESになってS18が実行され、電流減少制御時供給電流Ipでの転舵モータ40の駆動が指令される。そして、S19が実行され、S16において演算された電流減少制御時供給電流Ipが前回の電流減少制御時供給電流Iqにされてルーチンの実行は終了する。この供給電流の絶対値の減少により、ディスクホイールは、タイヤの弾性変形に対応する復元トルクにより、図3に矢印で示すように、その方向がタイヤの方向と一致する方向に動かされる。
【0047】
据え切り後保舵状態では、S17の判定結果がNOになる前にS15の判定結果がNOになる。電流減少制御が開始される前の状態では、ディスクホイールの方向とタイヤの方向との間には、タイヤの弾性変形による角度差であって、設定転舵角差を超える角度差が生じているからである。図3に二点鎖線で示すように、ディスクホイールの実際の転舵角のステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差に達すれば、S20が実行され、電流減少制御時供給電流Ipが (2)式に従って演算される。
Ip=Iq+Ix/n・・・・(2)
【0048】
(2)式が繰り返し実行されれば、電流減少制御時供給電流Ipの絶対値が増大させられ、操舵車輪50が、ステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角が得られる側に転舵され、実転舵角のステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値が減少させられる。それにより操舵対応転舵角と実転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差値Bより小さくなれば、S15の判定結果がYESになって再びS16が実行される。
【0049】
据え切り後保舵時には、S15〜S20の実行により、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられ、その減少は、実際の転舵角の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差に達した場合に停止されるとともに、その際の大きさに保たれる。
【0050】
据え切りが行われたが、それによる転舵角の変更角度の絶対値が小さく、タイヤがディスクホイールと共に動き出すに至らなかった場合でも、転舵角の変更角度の絶対値が設定転舵角差以上であれば、供給電流が減少させられるとともに、実転舵角の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差に達した場合に減少が停止される。据え切りによる転舵角の変更角度の絶対値が大きいが、何らかの事情でタイヤがディスクホイールと共に動き出すに至らなかった場合も同様である。また、転舵角の変更角度の絶対値が設定転舵角差より小さければ、S15の判定結果がNOになる前にS17の判定結果がNOになってS21が実行される。供給電流が0まで減少させられるのである。
【0051】
据え切りが行われなかった場合には、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が小さいため、許容転舵角差B以上となる前に電流減少制御時供給電流Ipが0になり、S17の判定結果がNOになってS21が実行され、電流減少制御時供給電流Ipが0にされる。そして、転舵モータ40への供給電流が0にされ、転舵モータ40が停止させられる。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ60のS7ないしS9を実行する部分が通常制御部を構成し、S16を実行する部分が電流減少部を構成し、S15,S20を実行する部分が電流減少停止部を構成している。また、コンピュータ60の予め設定された設定転舵角差を記憶する部分が舵角差設定部を構成している。
【0053】
本発明の別の実施形態を図5ないし図8に基づいて説明する。本実施形態の電気制御操舵装置においては、据え切り後保舵時に、転舵モータへの供給電流を0まで減少させ、ディスクホイールの方向をタイヤの方向と一致させるとともに、ステアリングホイールに付与する操舵反力を制御してステアリングホイールを自動で操作し、ステアリングホイールの操舵角に応じた転舵角(操舵対応転舵角)と、操舵車輪の実転舵角との差の絶対値が設定転舵角差を超えないようにされる。
【0054】
本実施形態の電気制御操舵装置は、図5に示すように、前記実施形態の電気制御操舵装置とほぼ同様に構成されているが、自動操作音声予告装置80を備えている。自動操作音声予告装置80は、コンピュータ60により制御される。
【0055】
本実施形態の電気制御操舵を概略的に説明する。
動力転舵制御の通常制御および車両停止状態における保舵状態の検出は、前記実施形態と同様に行われる。据え切りが行われた場合、車両停止時において保舵状態が検出されたならば、転舵モータ40への供給電流の絶対値が0に減少させられる。それによりディスクホイールがタイヤの弾性変形に基づく復元トルクによってタイヤの方向と一致する方向へ動かされ、操舵車輪50の実際の転舵角と、ステアリングホイール10の操舵量に対応する転舵角との差の絶対値が設定転舵角差以上になったならば、自動操作音声予告装置80によりステアリングホイール10を自動で操作してディスクホイールの戻りに追従させる制御の実行が運転者に予告され、実行される。
【0056】
ステアリングホイール10の自動操作は、反力モータ32への供給電流の絶対値を増減させ、反力付与装置14がステアリングホイール10に付与する反力の絶対値を増減させることにより行われる。操舵時にステアリングホイール10に反力を付与する操舵反力制御は、通常は、操舵角に基づいて操舵反力を演算し、操舵反力に基づいて反力モータ32への供給電流を演算し、その供給電流での反力モータ32の駆動が指令されることにより行われるのであるが、自動操作時には、操舵車輪50の実際の転舵角に対応する操舵角と、ステアリングホイール10の実際の操舵角とに基づいて反力モータ32への供給電流の変更量が求められ、供給電流が変更される。供給電流の変更量は、ステアリングホイール10の実際の操舵角が、操舵車輪50の実際の転舵角に対応する操舵角と一致するように演算され、供給電流の変更によりステアリングホイール10に付与される反力の絶対値が増減させられ、ステアリングホイール10が自動で操作される。
【0057】
動力転舵制御をフローチャートに基づいて詳細に説明する。
図6に示す動力転舵制御ルーチンのS31〜S41,S43〜S45は、前記実施形態のS1〜S14と同様に実行される。但し、S36では、カウンタがリセットされるとともに、フラグF1,F2がリセットされる。フラグF2は、後述するS57において1にセットされるまで0にリセットされており、S42の判定結果はNOになる。車両の停止状態において保舵状態が設定時間継続すれば、S45の判定結果がYESになってS46以下のステップが実行され、転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少制御が行われる。以下、据え切り後保舵時における転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少制御およびステアリングホイール10の自動操作を説明する。
【0058】
S46,S48〜S51は前記実施形態のS15〜S19と同様に実行され、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられ、ディスクホイールは復元トルクによって据え切り方向とは逆方向に転舵される。フラグF1は、後述するS52においてセットされるまで、リセットされており、S47の判定結果はNOになる。そして、供給電流Ipが0になる前に、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定転舵角差B以上になれば、S46の判定結果がNOになってS54が実行され、ステアリングホイール10の自動操作の予告が指令される。設定転舵角差Bは、本実施形態では、前記実施形態と同様に設定されている。S54の実行により自動操作音声予告装置80が作動させられ、音声によって自動操作の実行が予告される。次いでS55が実行され、予告指令が発せられてから設定時間が経過したか否かの判定が行われる。設定時間は、自動操作音声予告装置80によって予告が為されるのに十分な時間に設定されており、S55の判定結果は設定時間が経過するまでNOであり、S56において電流減少制御時供給電流の前回値Iqが供給電流Ipにされ、S50,S51が実行される。
【0059】
予告指令が発せられてから設定時間が経過するまで、S31〜S34,S42〜S46,S54〜S56,S50,S51が繰り返し実行される。この間は供給電流減少制御は行われず、供給電流IpはS46の判定結果が初めてNOになったときの大きさに保たれる。設定時間が経過すれば、S55の判定結果がYESになってS57が実行され、フラグF2がセットされ、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定転舵角差Bに達するとともに、ステアリングホイール10の自動操作の予告が為されたことが記憶される。そのため、次にS42が実行されるとき、その判定結果はYESになり、S43ないしS46がスキップされてS47ないしS51が実行され、転舵モータ40への供給電流の絶対値がさらに減少させられる。
【0060】
そして、供給電流の絶対値が0に達したならば、S49の判定結果がNOになってS52が実行され、フラグF1がセットされて、供給電流の絶対値が0になったことが記憶された後、S53において供給電流減少制御時供給電流Ipが0にされる。フラグF1がセットされることにより、次にS47が実行されるとき、その判定結果はYESになり、S48,S49,S52がスキップされてS53が実行され、供給電流Ipが0に保たれる。
【0061】
ステアリングホイール10が操舵されるとき、図7に示す操舵反力制御ルーチンの実行により、操舵角に応じた反力がステアリングホイール10に加えられる。操舵反力制御ルーチンにおいては、まず、S61において実操舵角αが読み込まれ、S62において実転舵角θが読み込まれた後、S63においてフラグF2がセットされているか否かが判定される。据え切り後保舵状態にあり、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられるとともに、実転舵角の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差に達して、ステアリングホイール10を自動で操作する状態になったか否かが判定されるのである。
【0062】
フラグF2がセットされていなければ、S63の判定結果がNOになってS64が実行され、実操舵角αに基づいて操舵反力Fsが演算され、S65において操舵反力をステアリングホイール10に加えるのに必要な電流Isが演算される。そして、S66において必要電流Isによる反力モータ32の駆動指令が出力される。前述のように、操舵角αは正負の符号を有して検出され、操舵反力Fsは正負の符号を有する値で求められる。本実施形態では、ステアリングホイール10を正方向(右方向)に回転させる方向に作用する反力の方向を負方向とし、ステアリングホイール10を負方向(左方向)に回転させる方向に作用する反力の方向を正方向とする。前者の場合、必要電流Isは負の値で求められ、後者の場合、正の値で求められる。
【0063】
次いで、S66aが実行され、必要電流Isの絶対値が設定値IULより大きいか否かが判定される。S66aを実行する理由は後述する。必要電流Isの絶対値が設定値IUL以下であれば、S66aの判定結果はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0064】
フラグF2がセットされれば、S63の判定結果がYESになってS67〜S69が実行され、ステアリングホイール10の自動操作制御が行われる。図8(a)に示すように、実転舵角のステアリングホイール10の操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差に達したならば、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられるのに伴ってステアリングホイール10が自動で操作されるのである。転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少により、ディスクホイールはタイヤの復元トルクにより、据え切り時におけるステアリングホイール10の操舵に基づく転舵の方向とは逆向きに動かされ、ステアリングホイール10をディスクホイールのこの動きに追従させるべく、反力モータ32への供給電流が求められる。
【0065】
そのため、S67において必要電流Isの変更量ΔIsが演算される。変更量ΔIsは、ステアリングホイール10が、ディスクホイールの実際の転舵位置に対応する位置に位置する状態となり、実転舵角θに対応する操舵角αθが得られるように設定される。ステアリングホイール10の、ディスクホイールの実際の転舵位置に対応する位置は、ディスクホイールの実際の位置よりも、電流減少制御によるディスクホイールの戻り方向において上流側の転舵位置であって、ディスクホイールの実転舵角との差の絶対値が設定転舵角差となる転舵位置を、ステアリングホイール10の操作によって得られるべき位置(操舵対応転舵角が得られる位置)とする位置である。そのため、実転舵角θ,設定転舵角差Bおよびディスクホイールの戻り方向(例えば、転舵モータ40への供給電流ないし転舵角の検出からわかる)に基づいて、ステアリングホイール10の操舵によって得られるべき転舵角が設定され、その転舵角が得られるステアリングホイール10の操舵角θαが設定され、実際の操舵角αが設定された操舵角αθになるように変更量ΔIsが求められる。
【0066】
転舵モータ40への供給電流Ipが正であり、操舵車輪10の転舵方向が正方向であれば、実転舵角θに設定転舵角差Bを加えることにより、自動操作用転舵量としての自動操作用転舵角が求められ、その自動操作用転舵角が得られる際のステアリングホイール10の操舵角である自動操作用操舵量としての自動操作用操舵角であって、実転舵角θに対応する操舵角αθが求められる。転舵モータ40への供給電流Ipが負であり、操舵車輪10の転舵方向が負方向であれば、実転舵角θから設定転舵角差Bを引くことにより自動操作用転舵角が求められ、自動操作用操舵角であって、実転舵角θに対応する操舵角αθが求められる。いずれの場合にも、実操舵角αから、設定された操舵角αθを引き、それにより得られる値に係数hを掛けることにより変更量ΔIsが求められる。係数hは、本実施形態では負の値とされている。なお、設定転舵角差に対応する操舵角差を求め、その操舵角差,実転舵角を操舵対応転舵角とする操舵角およびディスクホイールの戻り方向に基づいて、自動操作用操舵角ないし実転舵角θに対応する操舵角αθを求めるようにしてもよい。
【0067】
転舵モータ40への供給電流の減少制御が行われるとき、運転者は、ステアリングホイール10を据え切り終了時の状態に保とうとすることもあれば、操舵車輪50の戻りに合わせて戻すこともあれば、更に据え切り方向に操作することもあり、ステアリングホイール10に作用させられる反力は、その絶対値が増大させられることもあれば、減少させられることもある。いずれにしても、実操舵角αと実転舵角θに対応する操舵角αθとの差に基づいて変更量ΔIsが設定されることにより、ステアリングホイール10は、操舵角αθが得られる位置に位置させられる。ステアリングホイール10に作用する反力の方向は、据え切り時と同じであることもあれば、逆になることもある。
【0068】
変更量ΔIsの設定後、S68が実行され、前回のS68の実行により求められた必要電流Is′にΔIsが加えられて必要電流Isが求められる。次いで、S69において必要電流Isが前回の必要電流Is′とされた後、S66が実行され、必要電流Isでの反力モータ32の駆動が指令される。
【0069】
反力モータ32への供給電流Isの絶対値は増大させられることもあれば、減少させられることもあり、ステアリングホイール10に加えられる反力が増大あるいは減少させられ、ステアリングホイール10は反力の大きさおよび作用する方向によって決まる位置であって、ディスクホイールの実転舵位置に対応する位置へ自動的に操作され、転舵モータ40への供給電流の絶対値が減少させられても、実転舵角とステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角との差の絶対値が設定転舵角差に保たれる。転舵モータ40への供給電流の絶対値の減少により実転舵角が変化すれば、それに応じて必要電流Isが変更され、ステアリングホイール10は、動力転舵装置16の転舵角の変化に自動で追従させられるのである。
【0070】
転舵モータ40への供給電流Ipが0になった後は、実転舵角θが変化しないため、自動操作用転舵角が変化せず、自動操作用操舵角ないし実転舵角θに対応する操舵角αθも変化せず、実操舵角αが操舵角αθとが等しくなれば、その差は0であって電流変更量ΔIsは0であり、反力モータ32の駆動に必要な電流Isは同じ大きさに保たれ、図8(b)に示すように、ステアリングホイール10は、その操舵角に対応する転舵角と実転舵角との差の絶対値が設定転舵角差となる位置に保たれる。実転舵角と、操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が設定転舵角差を超えることが回避されるのであり、ステアリングホイール10の操作量と、ディスクホイールの実際の方向とのずれが小さく、例えば、次に運転者がステアリングホイール10を回転操作し、操舵車輪50を転舵させる際の遅れが少なくて済む。また、ステアリングホイール10が自動で操作されるが、その量は少なく、運転者の操舵違和感が少なくて済む。さらに、転舵モータ40への供給電流量が0にされるため、動力転舵装置16の消費電気エネルギが少なくて済む。
【0071】
このようにステアリングホイール10は、転舵モータ40への供給電流量の減少によってディスクホイールがタイヤ側へ戻されるのに追従して自動操作されるのであるが、自動操作が実行される際にはフラグF2がセットされているため、図6に示す動力転舵制御ルーチンのS43が実行されず、電流減少制御が途中で行われなくなることが回避される。ステアリングホイール10が自動操作されれば、実操舵角αが変化するため、S43の判定が行われれば、その判定結果はNOになってS48の電流減少制御が行われなくなるのであるが、そのような事態が回避される。また、一旦、実転舵角と操舵対応転舵角との差の絶対値が設定転舵角差B以上になれば、以後はS46の判定は行われず、電流減少制御が行われる。
【0072】
フラグF2は、車両の走行開始によりS36においてリセットされる他、電流減少制御時にもリセットされるようにされている。本実施形態では、動力転舵制御ルーチンのS66aにおいて操舵モータ32に供給される必要電流Isの絶対値が設定値IULより大きいか否かが判定され、大きいのであれば、フラグF2がリセットされ、電流減少制御が解除されるようにされている。電流減少制御の実行中に、運転者が、操舵車輪50を更に据え切り方向に転舵すべくステアリングホイール10を操作すれば、ステアリングホイール10に作用する反力が増大し、必要電流Isの絶対値が増大する。操舵車輪50をディスクホイールの戻り方向に転舵すべくステアリングホイール10を操作した場合も同様である。そして、ステアリングホイール10の操作量が大きく、必要電流Isの絶対値が設定値を超えた場合には、運転者が更なる据え切りあるいは据え切り方向とは逆方向の転舵を望んでいるとされ、フラグF2が0にリセットされ、転舵モータ40への供給電流減少制御が終了させられ、運転者の意図に従った転舵が行われるようにされる。また、電流減少制御により、転舵モータ40への供給電流量が0になった状態において運転者がステアリングホイール10を据え切り方向あるいは逆方向に操作したのであれば、S67ないしS69の実行により、必要電流Isの絶対値が増大させられる。そして、設定値IULを超えれば、フラグF2がリセットされて電流減少制御が終了させられる。
【0073】
なお、据え切り後保舵状態におけるディスクホイールとタイヤとのずれが小さく、その差の絶対値が設定転舵角差より小さい場合には、S46の判定結果がNOになることなく、S49の判定結果がYESになってフラグF1がセットされる。この場合、転舵モータ40への供給電流が0に減少させられ、ディスクホイールが戻されるのみであり、ステアリングホイール10の自動操作は行われないのである。
【0074】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、反力付与装置14およびコンピュータ60のS67〜S69を実行する部分が自動操作装置を構成している。また、コンピュータ60のS42,S57を実行する部分が通常転舵制御禁止部を構成し、S66a,S66bを実行する部分が電流減少制御解除部ないし自動操作制御解除部を構成している。
【0075】
本発明の更に別の実施形態を図9ないし図16に基づいて説明する。本実施形態の電気制御操舵装置においては、据え切り後保舵時に、動力転舵装置に転舵角を一旦増加させた後減少させ、あるいは一旦減少させた後増加させるように転舵モータへの供給電流が制御され、所要保舵力が消滅させられる。なお、図示は省略するが、本電気制御操舵装置は、所要保舵力の消滅に関する部分以外の部分は、図1ないし図4に示す実施形態と同様に構成されている。
【0076】
本電気制御操舵装置による動力転舵制御を概略的に説明する。
動力転舵制御の通常制御および車両停止状態における保舵状態の検出は、前記実施形態と同様に行われ、保舵状態が設定時間以上継続すれば、目標転舵角が設定され、据え切り後保舵時であれば、操舵車輪50は動力転舵装置16によって据え切り方向と同じ方向へ更に転舵させられる。この転舵をオーバ転舵と称する。ステアリングホイール10は保舵状態のままである。オーバ転舵の終了後、転舵モータへの電流供給が断たれ、ディスクホイールが復元トルクにより、その方向がタイヤの方向と一致する位置へ戻されるが、実転舵角が操舵対応転舵角と一致しなければ、オーバ転舵時におけるディスクホイールの戻り角が取得され、据え切り後、2回目の転舵が行われる。この戻り角は、据え切り方向と同じ方向に転舵が行われたとき、転舵モータ40に電流が供給されている状態においてタイヤとディスクホイールとの間に生ずるずれであって、供給電流が0にされた際にディスクホイールが戻る量である。
【0077】
本実施形態では、オーバ転舵を行うための目標転舵角は、据え切り後保舵状態において転舵モータ40に供給される電流に応じた大きさに設定される。この供給電流の大きさは、タイヤの弾性変形能および路面の摩擦係数に応じて決まり、タイヤとディスクホイールとの方向のずれ量に対応する。したがって、供給電流に係数を掛けることにより、操舵車輪が据え切り方向にオーバ転舵される際のタイヤとディスクホイールとのずれの角度が得られ、その角度を操舵対応転舵角に加えることにより目標転舵角を設定すれば、ディスクホイールの目標転舵角への転舵により、タイヤは操舵角に対応する位置であって、操舵対応転舵角が得られる位置へ動き、ディスクホイールは、転舵後、供給電流が0にされたとき、復元トルクによって操舵角に対応する位置へ戻るはずである。しかし、供給電流に掛ける上記係数はタイヤの弾性変形能に基づいて予め設定され、本実施形態においては一定とされており、実際のタイヤの弾性変形能について設定されるべき係数と一致しないことがある。そのため、ディスクホイールを目標転舵角へ転舵させたとき、タイヤが操舵角に対応する位置に位置するとは限らず、転舵モータ40への供給電流を0にしたとき、ディスクホイールの戻りが不足し、あるいは過剰となって操舵角に対応する位置から外れることがあり、2回目の転舵を行ってタイヤおよびディスクホイールが操舵対応転舵角が得られる位置に位置し、互いにずれがなく、実転舵角が操舵対応転舵角となるようにする。
【0078】
2回目の転舵の目標転舵角は、ディスクホイールの戻りが不足する場合には、据え切り後1回目の転舵(オーバ転舵)とは逆向きに行われるようにし、過剰な場合には同じ方向に行われるように設定される。2回目の転舵が1回目の転舵と同じ方向に行われた場合には、それによって転舵が終了する。転舵方向が同じ場合には、1回目の転舵により得られたディスクホイールの実際の戻り量を用いて2回目の転舵の目標転舵角を設定することができ、ディスクホイールおよびタイヤの方向を操舵角に対応する方向と一致させることができるからである。
【0079】
2回目の転舵が1回目の転舵と逆方向に行われる場合、目標転舵角は1回目の転舵の方向において取得されたディスクホイールの戻り量を用いて設定されるが、逆方向における転舵時の戻り量は、1回目の転舵により得られた戻り量と同じであるとは限らず、ディスクホイールおよびタイヤの位置が操舵角に対応する位置から外れることがある。そのため、2回目の転舵が逆方向に行われ、それにより実転舵角と操舵対応転舵角とが一致する状態が得られなければ、戻り量が取得され、3回目の転舵が行われる。
【0080】
この際、実転舵角と操舵対応転舵角とのいずれが大きいかによって転舵の方向が決まり、1回目の転舵と2回目の転舵とにおいてそれぞれ取得された戻り量のうち、3回目の転舵と方向が同じである転舵において取得された戻り量を用いて目標転舵角が設定される。そのため、ディスクホイールが目標転舵角が得られる位置まで転舵させられた後、転舵モータ40への供給電流が0にされれば、ディスクホイールの戻りにより、タイヤおよびディスクホイールが操舵角に対応する位置に位置し、互いにずれがなく、実転舵角が操舵対応転舵角と一致する状態が得られる。
【0081】
フローチャートに基づいて詳細に説明する。
本実施形態の動力転舵制御ルーチンのS71〜S81,S83〜S85は、前記実施形態のS1〜14と同様に実行される。但し、S80では、供給電流Iが通常制御時供給電流とされるのみである。S82においては、本ルーチンにおいて使用されるフラグを0にリセットする処理が行われる。車両停止状態において保舵状態が設定時間以上続けば、S85の判定結果がYESになってS86が実行され、フラグFendがリセットされているか否かが判定される。フラグFendがリセットされていれば、S86の判定結果がYESになり、図10に示すS87以下のステップが実行される。これらステップは、据え切りが行われた場合も行われなかった場合も実行されるが、以下、据え切りが行われた場合を説明する。
【0082】
S87ないしS89においては、フラグF11,フラグH1,フラグG1がリセットされているか否かが判定され、いずれもリセットされていれば、S90が実行され、オーバ転舵のための目標転舵角θ1が演算される。目標転舵角θ1は、保舵状態検出時における実転舵角であって、ステアリングホイール10の操舵に対応する転舵角θxと、据え切り時における転舵モータ40への供給電流Ixに係数kを掛けることにより得られる値との和を求めることにより設定される。係数kは、前述のように、例えば、タイヤの弾性変形能に基づいて予め設定されており、正の値である。したがって、据え切り後保舵時であれば、転舵モータ40に電流が供給されているため、目標転舵角θ1は操舵対応転舵角θxとは異なる値に設定され、操舵車輪50がオーバ転舵させられる。供給電流Ixの正負は据え切り方向を表し、供給電流Ixに正の係数kを掛けることにより得られる角度の正負は据え切り方向を表す正負と同じであり、操舵対応転舵角θxの正負と同じであり、操舵対応転舵角θxの正負がいずれであっても、目標転舵角は、操舵車輪50を据え切り方向において更に転舵させる角度に設定され、オーバ転舵は据え切りと同じ方向に行われる。
【0083】
次いで、S91が実行され、フラグG1がセットされて目標転舵角θ1の演算の実行が記憶された後、S92が実行され、目標転舵角θ1と、S73において読み込まれた実転舵角θとの差の絶対値が設定値D以上であるか否かが判定される。設定値Dは極く小さい正の値に設定されており、操舵車輪50が転舵させられる場合、操舵車輪50が目標転舵角θ1が得られる位置まで転舵させられたか否かが判定されることとなる。据え切りが行われたのであれば、オーバ転舵開始当初は目標転舵角θ1と実転舵角θとは異なっており、S92の判定結果がYESになってS93が実行され、目標転舵角θ1へ操舵車輪を転舵させるために必要な電流I1が演算される。この演算は、目標転舵角θ1と実転舵角θとの差に基づいて行われ、S94において必要電流I1での転舵モータ40の駆動が指令される。
【0084】
それにより操舵車輪50が転舵させられ、目標転舵角θ1と実転舵角θとの差の絶対値が減少させられる。この差の絶対値が設定値D以上である間、S71〜S74,S83〜S89,S92〜S94繰り返し実行される。この差の絶対値が設定値Dより小さくなれば、S92の判定結果がNOになってS95が実行され、フラグH1がセットされ、操舵車輪50が目標転舵角θ1が得られる位置まで転舵させられたことが記憶される。
【0085】
次いでS96が実行され、転舵モータ40への電流供給が遮断された後、S97において操舵車輪50が停止したか否かが判定される。オーバ転舵後、転舵モータ40への電流供給が遮断されれば、ディスクホイールがタイヤの復元トルクによってタイヤ側へ戻されるが、その戻りが停止したか否かが判定されるのである。この判定は、例えば、実転舵角θの変化量の絶対値が設定値以下になったか否かにより行われる。例えば、今回、S97が実行される際の実転舵角θと、前回のS97の実行時に得られた実転舵角θとの差の絶対値が設定値以下になったか否かが判定される。S97が1回目に行われるとき、前回の実転舵角θは、例えば、0として判定が行われる。あるいはS97が設定回数行われる毎に判定が行われるようにしてもよい。S97の実行回数が設定回数に達するまでは、S97は実行されるが、その判定結果はNOになるようにされ、設定回数に達したとき、その際の実転舵角θと、前回の判定実行時における実転舵角θ、すなわち前回、S97の実行が設定回数に達したときの実転舵角θとの差の絶対値が設定値以下であるか否かが判定されるようにしてもよいのである。設定回数は、判定が行われる毎に0にリセットされる。
【0086】
ディスクホイールがタイヤの復元トルクによって動いている間はS97の判定結果はNOになる。そして、ディスクホイールが停止し、ディスクホイールの方向とタイヤの方向とが一致する状態になれば、S97の判定結果がYESになってS98が実行され、フラグF11がセットされる。次いでS99が実行され、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定値Eより小さいか否かが判定される。操舵対応転舵角θxは、ステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角であり、ディスクホイールおよびタイヤがステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角が得られる位置に位置するか否かが判定される。この差の絶対値が設定値Eより小さいのであれば、タイヤおよびディスクホイールは操舵角に対応する転舵角が得られる位置に位置し、S99の判定結果がYESになってS100が実行され、フラグFendがセットされてルーチンの実行が終了する。そのため、次にS86が実行されるとき、その判定結果はNOになってルーチンの実行が終了する。
【0087】
それに対し、ディスクホイールおよびタイヤの位置、すなわち操舵車輪の位置がステアリングホイール10の操舵角に対応する転舵角が得られる位置からずれていれば、S99の判定結果がNOになってS101が実行され、オーバ転舵が右方向に行われたか否かが判定される。オーバ転舵の方向は、例えば、据え切り時あるいはオーバ転舵時における転舵モータ40への供給電流I1の正負によりわかる。あるいはオーバ転舵時の目標転舵角θ1および据え切り時保舵状態検出時における実転舵角θからわかる。例えば、目標転舵角θ1から実転舵角θをひくことにより得られる値の正負の符号からわかる。
【0088】
オーバ転舵が右方向に行われたのであれば、S101の判定結果がYESになってS102が実行され、右オーバ転舵時戻り量θRが求められる。右オーバ転舵時戻り量θRを始めとして、本ルーチンにおいて求められる戻り量はコンピュータのRAMに記憶される。右オーバ転舵時戻り量θRは、例えば、図13(a)に示すように、ディスクホイールが、実転舵角θが目標転舵角θ1となる位置から、復元トルクによって戻された位置(現にディスクホイールが位置する位置)に戻る際の角度であり、目標転舵角θ1と実転舵角θとの差の絶対値として求められる。ディスクホイールが戻るとき、図13(a)に示すように、戻りが過剰になる場合と、図14(a)に示すように、戻りが不足する場合とがある。前者の場合、路面の摩擦係数が大きかったり、タイヤの弾性変形能が大きかったりで、タイヤの転舵角が目標転舵角θ1により設定された角度より小さかったのであって、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより小さく、後者の場合、路面の摩擦係数が小さかったり、タイヤの弾性変形能が小さかったりで、タイヤの転舵角が大きかったのであって、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより大きい。
【0089】
オーバ転舵が左方向に行われたのであれば、S101の判定結果がNOになってS103が実行され、左オーバ転舵時戻り量θLが右オーバ転舵時戻り量θRと同様に求められる。この場合にも、図15(a),図16(a)に示すように、ディスクホイールの戻りが過剰の場合と不足の場合とがあり、過剰の場合、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより大きく、不足の場合、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより小さい。
【0090】
フラグF11のセットにより、次にS87が実行されるとき、その判定結果はNOになって、図11に示すS104〜S106が実行され、フラグF12,フラグH2,フラグG2がリセットされているか否かが判定される。これらフラグがリセットされていれば、S104〜S106の判定結果がYESになってS107以下のステップが実行され、2回目の転舵のための目標転舵角θ2が設定される。
【0091】
目標転舵角θ2は、実転舵角θおよび操舵対応転舵角θxの大きさ、1回目のオーバ転舵の方向に応じて設定される。図14(a)に示すように、右オーバ転舵時であって、右オーバ転舵後の実転舵角θが操舵対応転舵角θxより大きい場合、すなわちディスクホイールの戻り量が不足する場合には、図14(b)に示すように、目標転舵角θ2は操舵対応転舵角θxから右オーバ転舵時戻り量θRを引くことにより設定される(S107,S108,S110)。右オーバ転舵時戻り量θRは絶対値で求められており、−θRは負の値であり、目標転舵角θ2は操舵対応転舵角θxより小さく、操舵車輪を負の方向、すなわち左方向に転舵させる角度である。したがって、1回目の転舵であるオーバ転舵と2回目の転舵とにおいて転舵方向が逆であり、フラグJが0にリセットされ、転舵方向が逆であって、2回目の転舵の方向が左方向であることが記憶される(S109)。
【0092】
図13(a)に示すように、右オーバ転舵時であって、実転舵角θが操舵対応転舵角θxより小さい場合、すなわちディスクホイールの戻り量が過剰な場合には、図13(b)に示すように、目標転舵角θ2は操舵対応転舵角θxに右オーバ転舵時戻り量θRを加えることにより設定される(S107,S113,S115)。右オーバ転舵時戻り量θRは絶対値で求められており、+θRは正の値であり、目標転舵角θ2は、操舵対応転舵角θxの正負に関係なく、操舵対応転舵角θxより大きく、操舵車輪50を正の方向、すなわち右方向に転舵させる角度であることとなる。したがって、オーバ転舵と2回目の転舵とで転舵方向が同じであり、フラグJが2にセットされ、転舵方向が同じであることが記憶される(S114)。
【0093】
図15(a)に示すように、左オーバ転舵時であって、実転舵角θが操舵対応転舵角θxより大きい場合、すなわちディスクホイールの戻り量が過剰な場合には、図15(b)に示すように、目標転舵角θ2は操舵対応転舵角θxから左オーバ転舵時戻り量θLを引くことにより設定される(S107,S108,S112)。したがって、2回目の転舵の方向は負方向、すなわち左方向であることとなり、オーバ転舵時と同じであり、フラグJが2にセットされ、転舵方向が同じであることが記憶される(S111)。
【0094】
図16(a)に示すように、左オーバ転舵時であって、実転舵角θが操舵対応転舵角θxより小さい場合、すなわちディスクホイールの戻り量が不足する場合には、図16(b)に示すように、目標転舵角θ2は操舵対応転舵角θxに左オーバ転舵時戻り量θLを加えることにより設定される(S107,S113,S117)。そのため、2回目の転舵の方向は正方向、すなわち右方向であることとなり、オーバ転舵とは逆であり、フラグJが1にセットされ、転舵方向が逆であって、2回目の転舵の方向が右方向であることが記憶される(S116)。
【0095】
目標転舵角θ2が演算されたならば、S118が実行されてフラグG2がセットされる。そして、S119が実行されて目標転舵角θ2と実転舵角θとの差の絶対値が設定値D以上であるか否かが判定される。オーバ転舵が行われた結果、実転舵角θと操舵対応転舵角θxとが一致する状態が得られていなければ、S119の判定結果はYESになってS120が実行され、操舵車輪50を目標転舵角θ2が得られる位置へ転舵させるのに必要な電流I2が演算され、S121において必要電流I2での転舵モータ40の駆動が指令される。
【0096】
それにより操舵車輪50が動力転舵装置16により転舵させられ、実転舵角θが目標転舵角θ2に接近させられる。1回目の転舵後、転舵モータ40への電流供給は遮断されており、2回目の転舵は、ディスクホイールがタイヤの復元トルクによって戻り、その方向がタイヤの方向と一致する状態において行われる。そして、目標転舵角θ2と実転舵角θとの差の絶対値が設定値Dより小さくなれば、S119の判定結果がNOになってS122が実行され、フラグH2がセットされる。そして、S123において転舵モータ40への電流供給が遮断された後、S124が前記S97と同様に実行される。
【0097】
ディスクホイールのタイヤの復元トルクによる戻りが停止したならば、S124の判定結果がYESになってS125が実行され、フラグF12がセットされる。次いでS126が実行され、フラグJが2にセットされていないか、すなわち0にリセットされ、あるいは1にセットされているか否かが判定される。フラグJが2にセットされていれば、S126の判定結果がNOになってS128が実行され、フラグFendがセットされてルーチンの実行は終了する。フラグJが2にセットされているのは、オーバ転舵および2回目の転舵が同じ方向に行われた場合であり、この場合、目標転舵角θ2は、実際の転舵(オーバ転舵)により得られた戻り量を用いて設定され、タイヤの弾性変形および路面の摩擦係数を考慮して設定されているため、タイヤは操舵角に対応する位置(操舵角に対応する転舵角が得られる位置)へ転舵され、復元トルクによってタイヤの方向と一致する位置へ戻されたディスクホイールの方向は、ステアリングホイール10の操舵角に対応する方向と一致するはずであり、3回目の転舵は行われず、ルーチンの実行が終了されるのである。
【0098】
それに対し、オーバ転舵と2回目の転舵との方向が逆である場合には、フラグJが0あるいは1であり、S126の判定結果がYESになってS127が実行され、操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定値Eより小さいか否かが判定される。この差の絶対値が設定値Eより小さいのであれば、復元トルクによってタイヤの方向と一致する位置へ戻されたディスクホイールの方向は、ステアリングホイール10の操舵角に対応する方向と一致しており、S127の判定結果がYESになってS128が実行されてルーチンの実行が終了する。
【0099】
操舵対応転舵角θxと実転舵角θとの差の絶対値が設定値E以上であれば、すなわちディスクホイールおよびタイヤの方向とステアリングホイール10の操舵角に対応する方向とが一致していない場合には、3回目の転舵が行われる。そのため、S127の判定結果がNOになってS129が実行され、フラグJが0にリセットされているか否かが判定される。フラグJが0にリセットされていれば、すなわちオーバ転舵の方向が右方向、2回目の転舵の方向が左方向の場合には、S129の判定結果がYESになってS130が実行され、左転舵時戻り量θLが演算される。左転舵時戻り量θLは、目標転舵角θ2から実転舵角θを引いた値の絶対値を求めることにより得られる。
【0100】
オーバ転舵時には、操舵車輪がオーバ転舵方向に転舵されたときのディスクホイールの戻り量が得られるが、操舵車輪をオーバ転舵方向とは逆の方向に転舵させた場合におけるディスクホイールの戻り量が取得されておらず、2回目の転舵によって操舵車輪50がオーバ転舵時とは逆の方向へ転舵させられた場合、それにより、逆方向におけるディスクホイールの実際の戻り量、すなわち左方向への転舵時における戻り量が求められるのである。この場合にも、図14(c),(d)に示すように、ディスクホイールの戻りが過剰な場合と不足する場合とがあり、前者の場合、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより大きく、後者の場合は小さい。
【0101】
また、フラグJが1にセットされていれば、S129の判定結果がNOになってS131が実行され、右転舵時戻り量θRが求められる。この場合にも、図16(c),(d)に示すように、ディスクホイールの戻りが不足する場合と過剰な場合とがあり、前者の場合、実転舵角θは操舵対応転舵角θxより大きく、後者の場合は小さい。
【0102】
フラグF12がセットされているため、次にS104が実行されるとき、その判定結果はNOになり、図12に示すS132以下のステップが実行される。S132およびS133においては、フラグH3,フラグG3が0にリセットされているか否かが判定される。これらがリセットされていれば、3回目の転舵のための目標転舵角の設定等が行われる。実転舵角θが操舵対応転舵角θxより大きいのであれば、図14(c),図16(c)に示すように、操舵対応転舵角θxから戻り量θLを引くことにより、3回目の転舵のための目標転舵角θ3が求められる(S134,S135)。この戻り量θLは、オーバ転舵が右方向、2回目の転舵が左方向に行われた場合には、S130において求められた左転舵時戻り量θLであり、オーバ転舵が左方向、2回目の転舵が右方向に行われた場合には、S103において求められた左転舵時戻り量θLであることとなる。
【0103】
実転舵角θが操舵対応転舵角θxより小さいのであれば、図14(d),図16(d)に示すように、操舵対応転舵角θxに戻り量θRを加えることにより、3回目の転舵のための目標転舵角θ3が求められる(S136)。戻り量θRは、オーバ転舵が右方向、2回目の転舵が左方向に行われた場合には、S102において求められた右オーバ転舵時戻り量θRであり、オーバ転舵が左方向、2回目の転舵が右方向に行われた場合には、S131において求められた右方向転舵時戻り量θRであることとなる。
【0104】
目標転舵角θ3の演算後、S137が実行され、フラグG3がセットされる。次いでS138が実行され、目標転舵角θ3と実転舵角θとの差の絶対値が設定値D以上であるか否かが判定される。この判定結果はYESであり、S139,S140が実行され、目標転舵角θ3を得るために必要な電流I3の演算,電流I3での転舵モータ40の駆動指令が為される。
【0105】
目標転舵角θ3と実転舵角θとの差の絶対値が設定値Dより小さくなれば、S138の判定結果がNOになってS141が実行され、フラグH3がセットされた後、S142において転舵モータ40への電流供給が遮断される。そして、S143においてタイヤの復元トルクによるディスクホイールの戻りが停止したか否かが判定される。この判定は当初はNOであり、ディスクホイールの戻りが停止すれば、S143の判定結果がYESになってS144が実行され、フラグFendがセットされてルーチンの実行が終了する。
【0106】
以上、据え切りが行われた場合を説明したが、据え切りが行われなかった場合には、供給電流Ixが0であり、S90において演算されるオーバ転舵のための目標転舵角θ1が操舵対応転舵角θxと等しくなる。また、実転舵角θは操舵対応転舵角θxと等しく、S92の判定結果が1回目に実行されるとき、その判定結果がNOになってS95以下のステップが実行される。そして、転舵モータ40への電流供給の遮断後、S97,S99の判定結果がいずれもYESになってS100が実行され、フラグFendがセットされてオーバ転舵実行時の処理が実行されず、ルーチンの実行が終了するようにされる。
【0107】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ60のS90,S92〜S94,S96,S102,S103,S110,S112,S115,S117,S119〜S121,S123,S130,S131,S135,S136,S138〜S140,S142を実行する部分が保舵力消滅部を構成している。
【0108】
上記実施形態においては、据え切り後保舵時には、操舵車輪が据え切りされたままの状態で転舵させられ、ディスクホイールの戻り量が取得されるようにされていたが、据え切り後保舵時の検出時に転舵モータへの供給電流を一旦、0にしてディスクホイールの戻り量を取得し、その戻り量に基づいて、操舵角に対応する転舵角が得られる位置へ操舵車輪を転舵させるための目標転舵角を設定し、転舵させるようにしてもよい。
【0109】
本電気制御操舵装置による動力転舵制御を概略的に説明する。この制御は、例えば、図17および図18に示すフローチャートに基づいて実行される。
本実施形態においては、車両停止時における保舵状態が検出されたならば(S214)、転舵モータ40への供給電流の絶対値が一旦、0に減少させられ(S215〜S220)、実転舵角と目標転舵角(操舵対応転舵角)とが一致するか否かの判定が行われ(S221)、据え切りが行われたか否かが判定される。据え切り後保舵時には、タイヤの方向とディスクホイールの方向とにずれがあり、供給電流の絶対値が0に減少させられることにより、ディスクホイールの方向は、タイヤの方向と一致させられ、ステアリングホイール10の操舵角に応じた方向からずれる。そのため、実転舵角と目標転舵角とが一致しなくなるのであり、それら転舵角を互いに一致させつつ、所要保舵力を消滅させる制御が行われる。
【0110】
そのため、ステアリングホイール10の操舵角に応じた目標転舵角(操舵対応転舵角)とは別に、新目標転舵角、すなわち保舵力消滅制御用目標転舵角が設定される(S223)。保舵力消滅制御用目標転舵角は、本実施形態においては、据え切り方向において操舵車輪50を、操舵対応転舵角を超えて据え切りする大きさに設定される。供給電流の絶対値が0に減少させられた場合に操舵車輪の実転舵角と操舵対応転舵角とに生ずるずれの大きさ(絶対値)がタイヤの弾性変形能および路面摩擦係数等に基づいて予め設定され、実際のずれの絶対値が設定値以下であれば、上記超過角度の絶対値が、予め設定されたずれの絶対値となるように保舵力消滅制御用目標転舵角が設定される。実際のずれの絶対値が設定値を超えるのであれば、上記超過角度の絶対値が、実際のずれの絶対値と等しくなるように保舵力消滅制御用目標転舵角が設定される。前者の事態は、例えば、ステアリングホイール10の操作角度が小さく、タイヤがディスクホイールと共に動き出すに至らなかった場合、あるいは路面の摩擦係数が想定された大きさより小さく、タイヤがその弾性変形が予定されたより小さい状態でディスクホイールと共に動き出した場合に生じる。そして、操舵車輪50を保舵力消滅制御用目標転舵角が得られる位置へ転舵するのに必要な電流が演算され、転舵モータ40に電流が供給されて操舵車輪50が転舵させられる(S224〜S229,S220)。
【0111】
転舵モータ40への電流供給により、操舵車輪50がステアリングホイール10の操作とは関係なく、動力転舵装置16によって保舵力消滅制御用目標転舵角が得られる位置へ転舵させられる。その状態では、タイヤの方向はステアリングホイール10の操舵角に対応する方向となることが予定され、ディスクホイールの方向は、それよりも据え切り方向へ更に転舵された方向となる。そのため、供給電流の絶対値を0まで減少させれば(S232〜S234,S220)、タイヤの復元トルクによってディスクホイールがタイヤ側へ戻され、タイヤ,ディスクホイールの各方向がいずれも、ステアリングホイール10の操舵角に対応する方向と一致する状態となる。
【0112】
但し、路面の摩擦係数等により、ディスクホイールの実際の方向が、ステアリングホイール10の操舵角に対応する方向と一致しないことがあり、それら方向にずれがあれば、そのずれを解消すべく、転舵モータ40への供給電流Inが設定され、再度、操舵車輪50が転舵させられ(S235〜S241,S220)、その後、供給電流の絶対値が0に減少させられる(S243〜S245,S220)。この操舵車輪50の再転舵時の目標転舵角は、生じたずれが解消されるように設定され、必要電流Inは、目標転舵角が得られる位置へ操舵車輪50が転舵されるように設定される。例えば、上述のように、路面の摩擦係数が小さく、タイヤとディスクホイールとのずれ(タイヤの弾性変形量)が予定された大きさより小さかった場合、操舵車輪50の保舵力消滅制御用目標転舵角が得られる位置への転舵および転舵モータ40への供給電流の消滅により、タイヤとディスクホイールとの実際のずれ(タイヤの弾性変形量)および実転舵角と操舵対応転舵角とのずれが得られ、それらに基づいて2度目の転舵の目標転舵角および転舵モータ40への供給電流が設定される。本実施形態においては、コンピュータ60のS217〜S224,S227〜S229,S232〜S236,S239〜S241,S243〜S245を実行する部分が保舵力消滅部を構成している。なお、ディスクホイールの方向をステアリングホイール10の操舵量に対応する転舵角が得られる方向と一致させるための転舵は、2回に限らず、3回以上、行ってもよい。
【0113】
図9ないし図16に示す実施形態において、オーバ転舵後の転舵のための目標転舵角は、オーバ転舵等により得られたディスクホイールの戻り量を用いて設定されていたが、戻り量を蓄積して目標転舵角の設定に使用するようにしてもよい。戻り量は、タイヤの弾性変形能や路面の摩擦係数によって異なる。したがって、据え切り後に転舵が行われる場合に得られる戻り量を転舵方向毎に蓄積し、例えば、設定個数の戻り量の平均を求めて目標転舵角の設定に使用するようにする。あるいは据え切り後の転舵時における供給電流の大きさから路面の摩擦係数の平均的な大きさを推定し、目標転舵角の設定に使用するようにしてもよい。
【0114】
また、図9ないし図16に示す実施形態において、据え切り後、1回目の転舵であるオーバ転舵のための目標転舵角は、据え切りのために転舵モータに供給される電流および係数kを用いて演算されていたが、据え切り時の供給電流からオーバ転舵時の必要電流を設定するようにしてもよい。例えば、両電流を対応付けるマップを作成してコンピュータに記憶させる。据え切り時に転舵モータに供給される電流の大きさは、タイヤの弾性変形能や路面の摩擦係数に対応しており、供給電流の大きさから操舵車輪の転舵状態(ディスクホイールとタイヤとのずれ具合等)が推定され、据え切り後に更に操舵車輪を転舵させることにより、ディスクホイールおよびタイヤを、供給電流を0にした場合に操舵角に対応する位置に位置させる目標転舵角へ転舵させる電流を得ることができる。
【0115】
さらに、図1ないし図8に示す各実施形態において設定転舵角差Bは、平地における据え切り時に操舵車輪が転舵され始めてから、タイヤが弾性変形し、ディスクホイールに追従して動き始めるまでの操舵車輪の転舵角の絶対値より小さい大きさに設定されていたが、これは不可欠ではなく、この操舵車輪の転舵角の絶対値より大きく設定してもよい。そのようにすれば、例えば、転舵モータへの供給電流量の絶対値が減少させられる際に、路面の傾斜や凹凸に起因してタイヤに作用する転舵トルクによりタイヤおよびディスクホイールの方向が大きく変わって、ステアリングホイールの操作量とディスクホイールの実際の方向との間に大きな不一致が生じることを回避することができる。例えば、据え切り後保舵状態において、転舵モータへの供給電流を、操舵対応転舵角と実転舵角との差の絶対値が設定転舵角差になるまで減少させることにより、転舵モータへの供給電流を十分に減少させることができる。また、据え切り後保舵状態において転舵モータへの供給電流を0まで減少させるとともに、ステアリングホイールを自動操作してディスクホイールの戻りに追従させる場合、ステアリングホイールが大きな角度追従させられることを回避することができる。なお、設定転舵角差Bが通常の平地上での据え切り時におけるタイヤの弾性変形に基づくタイヤとディスクホイールとの相対角度差(転舵角差)より大きく設定された場合には、平地における据え切り後に転舵モータへの供給電流が減少させられる際、タイヤとディスクホイールとの相対角度差が設定転舵角差に達する前に、転舵モータへの供給電流の絶対値が0まで減少することになる。つまり、殆どの場合に転舵モータへの供給電流の絶対値が0まで減少させられることになるのである。
【0116】
また、上記各実施形態においては、運転者による操舵車輪の操舵操作が解除されたとき、ステアリングホイールを所定の中立位置に復帰させる戻し装置が設けられていたが、戻し装置を設けることは不可欠ではなく、省略してもよい。
【0117】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である電気制御操舵装置を概略的に示す図である。
【図2】上記電気制御操舵装置の制御装置により実行される動力転舵制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】据え切り後保舵時における供給電流減少制御を説明する図である。
【図4】据え切り時および供給電流減少制御時における操舵車輪の転舵角度と転舵に要する力との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の別の実施形態である電気制御操舵装置を概略的に示す図である。
【図6】図5に示す電気制御操舵装置の制御装置により実行される動力転舵制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図5に示す電気制御操舵装置の制御装置により実行される操舵反力制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図5に示す電気制御操舵装置において動力転舵制御および操舵反力制御が実行される際のディスクホイールの方向等を説明する図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態である電気制御操舵装置の制御装置によって実行される動力転舵制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図10】動力転舵制御ルーチンの図9に示す部分に続いて実行される部分を示すフローチャートである。
【図11】動力転舵制御ルーチンの図10に示す部分に続いて実行される部分を示すフローチャートである。
【図12】動力転舵制御ルーチンの図11に示す部分に続いて実行される部分を示すフローチャートである。
【図13】図9ないし図12に示す動力転舵制御ルーチンにおいて据え切り後に操舵車輪を1,2回目共に右方向に転舵させる場合を説明する図である。
【図14】図9ないし図12に示す動力転舵制御ルーチンにおいて据え切り後に操舵車輪を1回目は右方向に、2回目は左方向に転舵させる場合を説明する図である。
【図15】図9ないし図12に示す動力転舵制御ルーチンにおいて据え切り後に操舵車輪を1,2回目共に左方向に転舵させる場合を説明する図である。
【図16】図9ないし図12に示す動力転舵制御ルーチンにおいて据え切り後に操舵車輪を1回目は左方向に、2回目は右方向に転舵させる場合を説明する図である。
【図17】本発明の更に別の実施形態である電気制御操舵装置において実行される動力転舵制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図18】図17に示す動力転舵制御ルーチンの続きを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10:ステアリングホイール 14:反力付与装置 16:動力転舵装置
18:制御装置 32:電動モータ(反力モータ) 40:電動モータ(転舵モータ) 50:操舵車輪 60:コンピュータ 80:自動操作
音声予告装置

Claims (3)

  1. 操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置を、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する一方、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記動力転舵装置への供給電流の絶対値を減少させる電気制御操舵装置において、
    前記制御装置に、前記据え切り後保舵時に前記動力転舵装置への供給電流の絶対値が減少して0に達する前に、実際の転舵角と、前記操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が、予め定められた設定転舵角差に達した場合に、前記供給電流の絶対値の減少を停止させる電流減少停止部を設けたことを特徴とする電気制御操舵装置。
  2. 操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置を、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する一方、車両の停止状態において前記操舵部材が操作された後に操舵量が一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記動力転舵装置への供給電流の絶対値を減少させる電気制御操舵装置において、
    前記据え切り後保舵時に前記動力転舵装置への供給電流の絶対値が減少させられて0に達する前に、実際の転舵角と、前記操舵量に対応する転舵角との差の絶対値である転舵角差が、予め定められた設定転舵角差に達する場合に、その時点から供給電流の絶対値がさらに減少させられるのに伴って生じる実際の転舵角変化量に対応する操舵量、前記操舵部材を自動で操作することにより、前記転舵角差が前記設定転舵角差を超えることを回避する自動操作装置を設けたことを特徴とする電気制御操舵装置。
  3. 操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、制御装置により動力転舵装置の駆動源たる電動モータを、常にはその動力転舵装置による転舵角が前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対応する大きさとなるように制御する電気制御操舵装置において、
    前記制御装置に、車両の停止状態において前記操舵部材の操舵量の絶対値が増加させられた後に一定に保たれる据え切り後保舵時に、前記電動モータへの供給電流の絶対値を制御することにより、前記動力転舵装置に、転舵角の絶対値を、前記一定に保たれる操舵量の絶対値に対応する転舵角の絶対値である操舵対応転舵角よりタイヤの弾性変形に対応すると推定される量増加させた後に減少させて、転舵角の絶対値をタイヤの復元トルクによりほぼ前記操舵対応転舵角まで減少させることによって所要保舵力を低減させる所要保舵力低減部を設けたことを特徴とする電気制御操舵装置。
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