JP3774655B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操作部材の操作反力を操作用アクチュエータの制御により付与する車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
操作部材の操作に応じた操舵用アクチュエータの動きを車輪に舵角が変化するように伝達する際に、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比を変化させることができる車両の操舵装置が提案されている。そのような操舵装置として、操作部材を車輪に機械的に連結しない所謂ステアバイワイヤシステムを採用したものと機械的に連結したものとがある。ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、ステアリングホイールを模した操作部材を車輪に機械的に連結することなく、操舵用アクチュエータの動きを、その動きに応じて舵角が変化するように車輪に伝達し、その伝達に際して操舵用アクチュエータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。また、操作部材を車輪に機械的に連結した操舵装置においては、ステアリングホイールの操作に応じた入力シャフトの回転を出力シャフトに遊星ギヤ機構等の伝達比可変機構を介して伝達し、その伝達に際して遊星ギヤ機構を構成するリングギヤ等を駆動する操舵用アクチュエータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。
【0003】
ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、車輪と路面との間の摩擦に基づく操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材に伝達されない。また、ステアリングホイールと車輪とが伝達比可変機構を介して機械的に連結されている操舵装置においては、その操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材の操作量に対応しない。そのため、ドライバーに適正な操舵フィーリングを与える手段が必要とされている。
【0004】
そこで、その操作部材を中立位置へ復帰させる方向に作用する反力を発生する操作用アクチュエータを設けている。その操作用アクチュエータにより、走行中においては例えば舵角に比例する反力を付与することで、ドライバーに操舵フィーリングを与えている。また、その操作用アクチュエータの発生反力は、操作部材の中立位置からの操作量の減少時は増大時に比べ、戻し反力の付加により設定値だけ大きくされている。これにより、操作部材の中立位置からの操作量の減少時は、ドライバーが操作部材から手を離した時でも確実に中立位置近傍まで復帰させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
その操作部材の中立位置への復帰途中で操作速度の大きさを小さくした場合や、舵角を一定に保持するために操作部材の動きを停止させた場合、中立位置から操作量を増大させる場合に比べて、反力の大きさは戻し反力の大きさだけ一挙に増大する。そのような操作部材を中立位置へ復帰させる反力が一挙に大きくなるのを感じると、ドライバーは違和感や不安感を覚えるという問題がある。
本発明は上記従来技術の問題点を解決することのできる車両の操舵装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操作部材と、その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、その操舵用アクチュエータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータと、その操作部材の中立位置からの操作量を検出するセンサと、その操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、その操舵用アクチュエータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、その操作用アクチュエータは、その操作部材の中立位置からの操作量の減少時は増大時に比べ、その反力の大きさが戻し反力の付加により設定値だけ大きくなるように制御される車両の操舵装置であって、その操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値未満の時、その操作用アクチュエータは前記戻し反力が設定値まで漸増するように制御されることを特徴とする。
本発明によれば、操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値未満の時、中立位置から操作量を増大させる場合に比べて、反力の大きさは戻し反力が付加されることで設定値だけ大きくされる。この際、操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値未満である時は、その戻し反力は一挙に付加されるのではなく漸増される。これにより、操作部材の中立位置への復帰時の操作速度の大きさが小さい場合や、中立位置への復帰途中で舵角を一定に保持するために操作部材の動きを停止させた場合に、操作部材を中立位置へ復帰させる反力が大きくなるのをドライバーが感じるのを防止できる。
【0007】
その操作部材の中立位置への操作速度の大きさが戻し反力の漸増途中に前記設定値以上になった場合、その戻し反力は操作速度の大きさに応じた設定値とされ、その後に操作部材の中立位置への操作速度の大きさが前記設定値未満になった場合、その戻し反力は、操作速度の大きさが前記設定値以上になった時の値よりも小さな値から漸増されるのが好ましい。
これにより、操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値以上である場合は戻し反力を一挙に設定値まで大きくしてドライバーの操作を補助することができる。しかも、その後に操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値未満になることで再び戻し反力を漸増させる時、操作速度の大きさが設定値以上になった時の値よりも小さな値から漸増させるので、操作部材を中立位置へ復帰させる反力が大きくなるのをドライバーが感じるのを防止できる。この場合、その操作部材の中立位置への操作速度の大きさが戻し反力の漸増途中に前記設定値以上になった後に設定値未満になった場合、その戻し反力は、その設定値以上であった時間が長い程に、その設定値未満になった当初の値から大きく減少されるのが好ましい。これにより、操作部材を中立位置へ復帰させる反力が大きくなるのをドライバーが感じるのをより確実に防止できる。
【0008】
操作部材の中立位置からの操作量が設定値未満である場合、および、車速が設定値以上である場合の中の少なくとも一方である場合は、その戻し反力の付加は解除されるのが好ましい。操作部材が中立位置近傍まで復帰した場合や、車速が大きく走行安定性が要求されるために戻し反力を大きくする必要がない場合に、不必要な制御が不要になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に示す車両の操舵装置は、ステアリングホイールを模した操作部材1と、その操作部材1の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータ2と、その操舵用アクチュエータ2の動きを、その操作部材1を前部左右車輪4に機械的に連結することなく、舵角変化が生じるように前部左右車輪4に伝達する機構としてステアリングギヤ3とを備える。
【0010】
その操舵用アクチュエータ2は、例えば公知のブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。そのステアリングギヤ3は、その操舵用アクチュエータ2の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動に変換する例えばボールネジ機構等の運動変換機構により構成されている。そのステアリングロッド7の動きがタイロッド8とナックルアーム9を介して車輪4に伝達され、車輪4のトー角が変化する。そのステアリングギヤ3は、公知のものを用いることができ、操舵用アクチュエータ2の動きを舵角が変化するように前部左右車輪4に伝達できれば構成は限定されない。なお、操舵用アクチュエータ2が駆動されていない状態では、前部左右車輪4はセルフアライニングトルクにより直進位置に復帰できるようにホイールアラインメントが設定されている。
【0011】
その操作部材1は、車体側により回転可能に支持される回転シャフト10に連結されている。その回転シャフト10に操作用アクチュエータ19の出力シャフトが一体化されている。その操作用アクチュエータ19は操作部材1の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する。その操作用アクチュエータ19はブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。
【0012】
操作部材1の中立位置からの操作量を操作角δhとして検出する角度センサ11が設けられている。車輪4の転舵量に対応する舵角δを検出する手段として舵角センサ13が設けられ、本実施形態では、その舵角δに対応する操舵用アクチュエータ2の出力シャフト回転角を検出するセンサにより構成されている。車速Vを検出する速度センサ14が設けられている。さらに、操舵用アクチュエータ2の負荷対応値として駆動電流を検出する電流センサ25と、操作用アクチュエータ19の負荷対応値として駆動電流を検出する電流センサ26が設けられている。その角度センサ11、舵角センサ13、速度センサ14、電流センサ25、26は、コンピュータにより構成される制御装置20に接続される。制御装置20は、時系列に検知される回転角度の検出値から操作部材1の中立位置からの操作角δhが増大しているか減少しているかを判断し、また、操作部材1の操作速度dδh/dtを演算する。
【0013】
その制御装置20は駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2を制御する制御系を構成する。例えば、制御装置20は操作部材1の操作角δhと車速Vと目標舵角との間の関係を予め定めて記憶し、目標舵角と検出舵角δとの偏差をなくすように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2の駆動信号を出力する。その操作角δhと車速Vと目標舵角との間の関係は、例えば車速Vが大きくなる程に目標舵角が小さくなるものとされている。これにより、操舵用アクチュエータ2の動きを車輪4に舵角が変化するように伝達する際に、操作部材1の操作角δhと車輪4の転舵量との比を変化させることが可能とされている。操作部材1の操作角δhに対する車輪4の転舵量の比を低車速で大きくすることで旋回性能を向上し、高車速で小さくすることで走行安定性を向上できる。なお、このような操舵用アクチュエータ2の制御方法は特に限定されず、操作部材1の操作に応じて操舵用アクチュエータ2が駆動されるものであれば良い。
【0014】
その制御装置20は駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19を制御する制御系を構成する。本実施形態では、車両の走行時であって操作部材1の中立位置からの操作角δhの増大時は、その操作角δhに比例する舵角比例反力Rpを操作用アクチュエータ19が発生するものとされ、その操作角δhと舵角比例反力Rpとの関係は予め定められて制御装置20に記憶され、その関係に従って操作用アクチュエータ19が制御される。なお、その操作角δhと舵角比例反力Rpとの関係は比例関係に限定されず、ドライバーに適正な操舵フィーリングを与えるものであればよい。
【0015】
車両の走行時であって、操作部材1の中立位置からの操作角δhが減少する時は、その操作角δhの増加時に発生する反力に戻し反力を付加した反力を操作用アクチュエータ19が発生するものとされ、その操作角δhと反力との関係は予め定められて制御装置20に記憶され、その関係に従って操作用アクチュエータ19が制御される。これにより操作用アクチュエータ19は、操作部材1の中立位置からの操作角δhの減少時は増大時に比べ、その反力の大きさが戻し反力の付加により設定値Rlimitだけ大きくなるように制御される。
【0016】
その操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが予め定められて制御装置20に記憶された設定値C(例えば90deg/s)未満の時、その戻し反力が設定値Rlimitまで漸増されるように操作用アクチュエータ19は制御される。その漸増速度は予め定められて制御装置20に記憶される。
【0017】
その操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが戻し反力の漸増途中に上記設定値C以上になった場合、その戻し反力は操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさに応じた値Ryに設定される非漸増戻し反力とされる。その操作速度dδh/dtの大きさと非漸増戻し反力の設定値Ryとの関係は予め定められて制御装置20に記憶され、例えば図9に示すような関係とされる。その戻し反力の漸増途中に上記設定値C以上になった後に、操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが再び上記設定値C未満になった場合、その戻し反力は、操作速度dδh/dtの大きさが上記設定値C以上になった時の値よりも小さな値から漸増される。この場合、その中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上であった時間が長い程に、その設定値C未満になった当初の戻し反力の値は大きく減少される。
【0018】
操作部材1の中立位置からの操作角δhの大きさが設定値A未満である場合、および、車速Vが予め定められて記憶された設定値Va以上である場合の中の少なくとも一方である場合は、その戻し反力の付加は解除される。その操作角δhの大きさが設定値A未満であれば、操作部材1は遊びの範囲で操作されていると判断される。その車速Vが設定値Va以上であれば、操作部材1の中立位置からの操作角δhの増大時に作用する反力が十分に大きくされ、戻し反力の付加を作用させる必要はないものとされている。
【0019】
検出車速Vが零の停車時にあっては、操作部材1の操作量に対応する操作角δhと車輪4の転舵量に対応する舵角δとの偏差が設定値GAPよりも大きい場合は、その偏差が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくされ、本実施形態では、その偏差と設定値GAPとの差に操作用アクチュエータ19の発生反力は比例するものとされている。さらに、その偏差の設定値GAPは操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが大きい程に大きくされ、本実施形態では図11に示すように、その偏差の設定値GAPは操作速度dδh/dtの大きさに比例するものとされている。
【0020】
上記のように操作用アクチュエータ19は、車両の走行状態に対応した大きさの反力と、停車状態に対応した大きさの反力とを発生するように制御され、その走行状態に対応した反力の大きさと停車状態に対応した反力の大きさとは相異する。制御装置20は、車両の停車状態と走行状態との間での状態移行の有無を判断し、その状態移行直前の操作用アクチュエータ19の発生反力を旧反力として記憶する。また、その状態移行直後に、その移行後の状態に対応して操作用アクチュエータ19が発生すべき反力を新反力として演算する。換言すれば、その状態移行の影響を受けることなく、停車状態と走行状態それぞれに対応して定められた制御ロジックに従って操作用アクチュエータ19の発生反力を新反力として演算する。その旧反力の大きさと新反力の大きさとの偏差の大きさが設定値δfを超える時、発生反力Rの大きさが状態移行直前の旧反力の大きさから状態移行直後に演算された新反力の大きさまで漸次変化するように操作用アクチュエータ19は制御される。その操作用アクチュエータ19の発生反力の大きさの旧反力の大きさからの漸次変化速度は、車両の加速度dV/dtが大きい程に大きくされる。その操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが設定値Hを超える時、操作用アクチュエータ19の発生反力の大きさの旧反力の大きさからの漸次変化は中断されると共に、その発生反力の大きさは状態移行直後に演算された新反力の大きさとされる。
【0021】
制御装置20により記憶したプログラムに従い駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19を制御する際、電流センサ26により検出する操作用アクチュエータ19の駆動電流と反力に対応する電流指示値との偏差をなくすように閉ループ制御するのが好ましい。
【0022】
図2のフローチャートを参照して制御装置20による操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、初期設定を行い(ステップS1)、各センサによる検出値を読み込み(ステップS2)、操作部材1の中立位置復帰方向へ作用する反力Rが生じるように操作用アクチュエータ19を制御する(ステップS3)。また、操作部材1の操作に応じて車両が挙動するように、検出した操作角δh、車速V、舵角δに基づき操舵用アクチュエータ2を例えばフィードバック制御する(ステップS4)。しかる後に、制御を終了するか否かを判断し(ステップS5)、終了しない場合はステップS2に戻る。その終了判断は、例えば車両の始動用キースイッチがオンか否かにより判断できる。
【0023】
図3〜図6のフローチャートを参照して制御装置20による操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、車速Vが零でないか否かを判断する(ステップS101)。車速Vが零でなく走行中であれば走行フラグをオンし(ステップS102)、操作角δhの大きさが設定値A未満か否かを判断する(ステップS103)。その操作角δhの大きさが設定値A未満か否かにより、操作部材1が遊びの範囲で操作されているか否かを判断する。ステップS103において操作角δhの大きさが設定値A以上であれば舵角比例反力Rpを演算し(ステップS104)、操作部材1の中立位置からの操作角δhが増加しているか否かの判断を行う(ステップS105)。この判断は、操作角δhの符号と操作速度dδh/dtの符号とが同一であるか否かにより行うことができる。本実施形態では右操舵状態が正、左操舵状態が負とされる。ステップS105において操作角δhが増加していれば、舵角比例反力Rpを反力Rとして設定する(ステップS106)。ステップS105において操作角δhが増加していなければ後述の戻し反力制御を行い(ステップS107)、操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C未満か否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において操作速度dδh/dtの大きさが設定値C未満であれば、戻し反力制御により漸増される戻し反力Rfと上記舵角比例反力Rpとの和を反力Rとして設定する(ステップS109)。ステップS108において操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上であれば、ドライバーが操作部材1を積極的に中立位置へ復帰させているため、戻し反力を漸増させる必要はない。この場合、戻し反力制御により操作速度dδh/dtの大きさに応じた値Ryに設定された上記非漸増戻し反力Rftと上記舵角比例反力Rpとの和を反力Rとして設定する(ステップS110)。
【0024】
上記ステップS103において操作角δhの大きさが設定値Aよりも小さい場合、操作部材1は遊び範囲で操作されていると判断される。この場合、図4に示すように、操作角δhの符号から操作部材1の操作方向が右方向か否かを判断する(ステップS111)。右操作であれば、遊び範囲の操作部材1を中立位置に戻すための予め定められて記憶した設定値Rnを反力Rとして設定する(ステップS112)。右操舵でなければ操作部材1が停止中か否かを操作速度dδh/dtの大きさが零か否かにより判断する(ステップS113)。操作部材が停止中であれば反力Rを零に設定する(ステップS114)。ステップS113において操作部材1が停止していなければ左操作であるので、右操作の場合と大きさが等しく符号が逆の設定値−Rnを反力Rとして設定する(ステップS115)。
【0025】
ステップS101において車両が停止中であると判断された場合、据え切りフラグをオンし(ステップS116)、図5に示すように、操作部材1の操作方向が右方向か否かを判断する(ステップS117)。ステップS117において右操作状態であれば、据え切り状態での基準となる反力として予め定められて記憶した設定値Rsを据え切り基準反力R′として設定する(ステップS118)。その据え切り基準反力R′は、例えば操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが一定以上では一定値に設定され、操作速度dδh/dtの大きさが一定未満では零に設定される。ステップS117において右操作でなければ操作部材1が停止しているか否かを判断し(ステップS119)、操作部材1が停止していれば据え切り基準反力R′を零に設定する(ステップS120)。ステップS119において操作部材1が停止していなければ左操作であるので、右操作の場合と大きさが等しく符号が逆の設定値−Rsを据え切り基準反力R′として設定する(ステップS121)。しかる後に後述の据え切り反力制御を行って反力Rの設定を行う(ステップS122)。
【0026】
上記ステップS106、S109あるいはS110において反力Rの設定を行った後に、車両が据え切り状態から走行状態に移行したか否かの判断を行う。すなわち、ステップS106、S109あるいはS110において反力Rを設定したならば、図6に示すように、据え切りフラグがオンか否かを判断する(ステップS123)。ステップS123において据え切りフラグがオンでなければ、車両は据え切り状態から走行状態に移行した直後ではない。この場合、移行制御中フラグ(Sフラグ)がオフか否かを判断する(ステップS124)。移行制御中フラグがオフであれば、操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが予め定めた設定値B以上か否かを判断する(ステップS125)。ステップS125において操作速度dδh/dtの大きさが設定値B以上であれば、緊急操舵に対応できるように予め定めて記憶した設定値Rrを反力Rとして設定し(ステップS126)、図5に示すように、その反力Rを旧反力Roldとして記憶する(ステップS127)。ステップS125において操作速度dδh/dtの大きさが設定値B未満であれば、ステップS106、S109あるいはS110において設定した反力Rを旧反力Roldとして記憶する(ステップS127)。ステップS123において据え切りフラグがオンであれば、車両は据え切り状態から走行状態に移行した直後である。この場合、その状態移行直後に、その移行後の状態に対応して操作用アクチュエータ19が発生すべき反力として演算した新反力Rnewを、移行当初反力Rmとして記憶し(ステップS128)、据え切りフラグをオフし(ステップS129)、後述の移行制御により据え切り状態から走行状態に移行する場合における反力Rの設定を行い(ステップS130)、ステップS125に進む。ステップS124において移行制御中フラグ(Sフラグ)がオンである場合、移行制御の途中であることからステップS130において移行制御を継続する。
【0027】
また、上記ステップS122の据え切り反力制御において反力Rの設定を行った後に、車両が走行状態から据え切り状態に移行したか否かの判断を行う。すなわち、ステップS122において反力Rを設定したならば、走行フラグがオンか否かを判断する(ステップS131)。ステップS131において走行フラグがオンでなければ、車両は走行状態から据え切り状態に移行した直後ではない。この場合、移行制御中フラグ(Sフラグ)がオフか否かを判断する(ステップS132)。移行制御中フラグがオフであれば、ステップS122において設定した反力RをステップS127において旧反力Roldとして記憶する。ステップS131において走行フラグがオンであれば、車両は据え切り状態から走行状態に移行した直後である。この場合、その状態移行直後に、その移行後の状態に対応して操作用アクチュエータ19が発生すべき反力として演算した新反力Rnewを、移行当初反力Rmとして記憶し(ステップS133)、走行フラグをオフし(ステップS134)、後述の移行制御により据え切り状態から走行状態に移行する場合における反力Rの設定を行い(ステップS135)、ステップS127に進む。ステップS132において移行制御中フラグ(Sフラグ)がオンである場合、移行制御の途中であることからステップS135において移行制御を継続する。
【0028】
次に図7、図8のフローチャートを参照して、上記ステップS107における戻し反力制御を説明する。
まず、操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが設定値C未満か否かを判断する(ステップS201)。その設定値C未満であればドライバーは操作部材1を操作することなく保持しているか、積極的に中立位置まで戻そうとしていないと判断する。この場合、操作部材1の操作角度δhの大きさが上記設定値A以上か否かを判断する(ステップS202)。その設定値A以上である場合、操作部材1は遊びの範囲を超えて操作されているので戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)をオンし(ステップS203)、予め定めて記憶した初期値Rfoを仮戻し反力Rf′として設定する(ステップS204)。ステップS202において操作角度δhの大きさが設定値A未満であれば、操作部材1は中立位置近傍にあるので、戻し反力Rfの設定値を零にし、戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)をオフし、積算時間Σtを零にすることで戻し反力制御をリセットし(ステップS205)、リターンする。ステップS201において操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上である場合は、操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさに応じた値Ryを非漸増戻し反力Rftとして設定し(ステップS206)、戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)をオフし(ステップS207)、積算時間Σtを零にする(ステップS208)。
ステップS204において仮戻し反力Rf′を設定し、あるいはステップS208において積算時間Σtを零にした後に、戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)がオンか否かを判断する(ステップS209)。ステップS209において戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)がオンであれば、積算時間Σtが設定時間T未満か否かを判断する(ステップS210)。ステップS210において積算時間Σtが設定時間T未満であれば積算時間Σtに単位時間Δtを加える(ステップS211)。その積算時間Σtは初期値が零とされ、その単位時間Δtは本実施形態では一制御周期に相当する時間とされている。その設定時間Tは戻し反力Rfの漸増速度に応じて適宜設定すればよい。ステップS210において積算時間Σtが設定時間Tに至っていれば、積算時間Σtを零にリセットし(ステップS212)、仮戻し反力Rf′が最大値Rmax未満か否かを判断し(ステップS213)、最大値Rmax未満であれば仮戻し反力Rf′に単位戻し反力ΔRaを加算した値を新たな仮戻し反力Rf′に設定する(ステップS214)。これにより、仮戻し反力Rf′を設定時間T毎に単位戻し反力ΔRaずつ漸増させることができる。
ステップS211、ステップS214の処理の後、あるいはステップS213で仮戻し反力Rf′が最大値Rmax以上であると判断された後、仮戻し反力Rf′が上限値Rlimit以下か否かを判断する(ステップS215)。その上限値Rlimitは最大値Rmaxよりも小さくされる。ステップS215において仮戻し反力Rf′が上限値Rlimitよりも大きければ、その上限値Rlimitを仮戻し反力Rf′として設定する(ステップS216)。ステップS215において仮戻し反力Rf′が上限値Rlimit以下であれば、現在の仮戻し反力Rf′が継続して用いられる。これにより、仮戻し反力Rf′は上限値Rlimitまで漸増される。
ステップS209において戻し反力漸増フラグ(Mフラグ)がオフであれば、仮戻し反力Rf′が零より大きいか否かを判断し(ステップS217)、零より大きければ仮戻し反力Rf′から予め定めた値Rbを差し引いた値を新たな仮戻し反力Rf′として設定する(ステップS218)。これにより仮戻し反力Rf′は、操作部材1の中立位置への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上になると、その設定値C以上である時間が長い程に、その設定値C未満になった当初の値から減少される。ステップS217において仮戻し反力Rf′が零以下になっていれば、現在の仮戻し反力Rf′が継続して用いられる。
次に、車速Vが設定値Va未満であるか否かを判断し(ステップS219)、設定値Va以上であれば仮戻し反力Rf′を零に設定する(ステップS220)。これにより、車速が大きく走行安定性が要求されるために戻し反力を大きくする必要がない場合に、不必要な制御が不要になる。その設定値Vaは予め定められて記憶され、例えば30km/hとされる。ステップS219において車速Vが設定値Va未満であれば現在の仮戻し反力Rf′が継続して用いられる。次に、操作部材1の操作方向が右方向か否かを判断する(ステップS221)。右操作であれば設定された仮戻し反力Rf′を戻し反力Rfとして設定する(ステップS222)。右操舵でなければ左操作であるので、設定された仮戻し反力Rf′と大きさが等しく符号が逆の値−Rf′を戻し反力Rfとして設定する(ステップS223)。
【0029】
次に、図10のフローチャートを参照して上記ステップS122における据え切り反力制御を説明する。
まず、操作部材1の操作量に対応する操作角δhと車輪4の転舵量に対応する舵角δとの偏差の設定値GAPを設定する(ステップS301)。その設定値GAPは正値とされ、例えば図11に示すように操作速度dδh/dtの大きさに比例するように設定される。次に、舵角δから操作角δhを差し引くことで求められる偏差(δ−δh)が設定値GAPよりも大きいか否かを判断する(ステップS302)。本実施形態では車輪4の転舵量に対応する舵角δとして操舵用アクチュエータ2の出力シャフトの回転角を検出するので、右操舵状態であれば偏差(δ−δh)は正になる。ステップS302において偏差(δ−δh)が設定値GAPよりも大きい場合、その偏差(δ−δh)から設定値GAPを引いた値に予め設定した係数Kを乗じた値を、右操舵状態での反力加算値ΔFとして設定する(ステップS303)。ステップS302において偏差(δ−δh)が設定値GAP以下の場合、操作角δhから舵角δを差し引くことで求められる偏差(δh−δ)が設定値GAPよりも大きいか否かを判断する(ステップS304)。ステップS304において偏差(δh−δ)が設定値GAPよりも大きい場合、その偏差(δh−δ)から設定値GAPを引いた値に予め設定した係数Kと−1とを乗じた値を、左操舵状態での反力加算値ΔFとして設定する(ステップS305)。ステップS304において偏差(δh−δ)が設定値GAP以下である場合、操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との偏差は小さいので据え切り反力を大きくする必要はない。よって、この場合は反力加算値ΔFを零に設定する(ステップS306)。しかる後に、上記設定した据え切り基準反力R′と反力加算値ΔFとの和を反力Rとして設定する(ステップS307)。これにより、図12に示すように、その反力加算値ΔFは設定値GAP以上では設定値GAPに比例することから、操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との偏差が設定値GAPよりも大きい場合は、その偏差が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力Rが大きくなる。なお、反力加算値ΔFと設定値GAPとの関係は図12のような比例関係に限定されず、その偏差が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくなる関係であればよい。
【0030】
なお、据え切り反力制御の変形例として、車速が零の停車時において、操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが設定値以下の時に、操舵用アクチュエータ2の負荷対応値である電流値が設定値よりも大きい場合は、その電流値が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力を大きくしてもよい。
図13のフローチャートを参照して変形例に係る据え切り反力制御を説明する。まず、操舵部材1の操作速度dδh/dtの大きさが設定値η未満か否かを判断する(ステップS401)。その設定値ηは、通常ならば操作速度dδh/dtの大きさが設定値η未満であれば操舵用アクチュエータ2の負荷が過大になることがないように設定すればよく、例えば45deg/sとされる。その操作速度dδh/dtの大きさが設定値η未満であれば、操舵用アクチュエータ2の検出駆動電流iが設定電流iaよりも大きいか否かを判断する(ステップS402)。その設定電流iaは、操作速度dδh/dtの大きさが設定値η未満の時は操舵用アクチュエータ2の駆動電流iが通常ならば設定電流ia以下になるように設定すれば良く、例えば20Aとされる。その検出駆動電流iが設定電流iaよりも大きければ、その検出駆動電流iに予め設定した係数Keを乗じた値を反力加算値ΔFとして設定する(ステップS403)。ステップS401において操作速度dδh/dtの大きさが設定値η以上である場合、ステップS402において駆動電流iが設定電流ia以下である場合、反力加算値ΔFを零に設定する(ステップS404)。しかる後に、上記設定した据え切り基準反力R′と反力加算値ΔFとの和を反力Rとして設定する(ステップS405)。これにより、図14に示すように、操作速度dδh/dtの大きさが設定値η未満であって検出駆動電流iが設定電流iaよりも大きい場合は、反力加算値ΔFは操舵用アクチュエータ2の駆動電流iに比例することから、操舵用アクチュエータ2の負荷が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力Rが大きくされる。
これにより、据え切り操舵時に操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが小さいにも関わらず操舵用アクチュエータ2の負荷が過大になると、操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくなる。よって、障害物によって車輪4の転舵が阻止されているような場合に、ドライバーに障害物の存在を気付かせることができる。
【0031】
なお、据え切り反力制御の変形例において、操舵用アクチュエータ2の負荷対応値として操舵用アクチュエータ2の駆動電流以外を検出してもよく、例えば、上記直線的に動くステアリングロッド7に作用する軸方向力を負荷対応値として検出してもよい。また、反力加算値ΔFと負荷対応値との関係は図14に示すような比例関係に限定されず、その負荷対応値が大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくなる関係であればよい。
【0032】
次に、図15、図16のフローチャートを参照して上記ステップS130、S135における移行制御を説明する。
まず、偏差演算フラグ(Hフラグ)と移行制御中フラグ(Sフラグ)とをオンする(ステップS501)。次に、操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが設定値Hより大きいか否かを判断する(ステップS502)。その設定値Hは、操作速度dδh/dtの大きさが設定値H以下であれば、停車状態から走行状態への移行時に反力を漸次変化させても操作が軽くなり過ぎることがないように定めればよい。ステップS502において操作速度dδh/dtの大きさが設定値Hよりも大きい場合、偏差演算フラグをオフし(ステップS503)、移行制御中フラグをオフし(ステップS504)、上記移行当初反力Rmを反力Rとして設定し(ステップS505)、リターンする。ステップS502において操作速度dδh/dtの大きさが設定値H以下である場合は、偏差演算フラグと移行制御中フラグをオフすることなく、現在の反力Rを新反力Rnewとして設定する(ステップS506)。次に、偏差演算フラグがオンか否かを判断する(ステップS507)。ステップS507において偏差演算フラグがオンであれば、旧反力Roldに予め定めた設定値δfを加えた値が新反力Rnewよりも小さいか否かを判断する(ステップS508)。ステップS508において新反力Rnewが旧反力Roldと設定値δfとの和よりも大きい場合、新反力Rnewから旧反力Roldを差し引いた偏差(Rnew−Rold)を分割数Nにより除することで、漸次付加反力δRを求める(ステップS509)。ステップS508において新反力Rnewが旧反力Roldと設定値δfとの和以下である場合、旧反力Roldから設定値δfを差し引いた値が新反力Rnewよりも大きいか否かを判断する(ステップS510)。ステップS510において新反力Rnewが旧反力Roldと設定値δfとの差よりも小さい場合、旧反力Roldから新反力Rnewを差し引いた偏差(Rold−Rnew)を分割数Nにより除することで、漸次付加反力δRを求める(ステップS511)。その分割数Nは本実施形態では車両の加速度の関数とされ、加速度dV/dtに反比例し、加速度dV/dtが大きい程に小さくなる。これにより、加速度dV/dtが大きい程に操作用アクチュエータ19の発生反力の大きさの旧反力の大きさからの漸次変化速度は大きくなる。ステップS510において新反力Rnewが旧反力Roldと設定値δfとの差以上の場合、漸次付加反力δRを零に設定する(ステップS512)。しかる後に偏差演算フラグをオフにし(ステップS513)、移行制御中フラグがオンか否かを判断する(ステップS514)。ステップS507において偏差演算フラグがオフの場合にもステップS514において同様に判断を行う。ステップS514において移行制御中フラグがオンであれば、新反力Rnewから旧反力Roldを差し引いた偏差(Rnew−Rold)が漸次付加反力δRよりも大きいか否かを判断する(ステップS515)。ステップS515において偏差(Rnew−Rold)が漸次付加反力δRよりも大きければ、旧反力Roldと漸次付加反力δRとの和を新反力Rnewとして設定する(ステップS516)。ステップS515において偏差(Rnew−Rold)が漸次付加反力δR以下であれば、旧反力Roldから新反力Rnewを差し引いた偏差(Rold−Rnew)が漸次付加反力δRよりも大きいか否かを判断する(ステップS517)。ステップS517において偏差(Rold−Rnew)が漸次付加反力δRよりも大きければ、旧反力Roldから漸次付加反力δRを差し引いた値を新反力Rnewとして設定する(ステップS518)。ステップS516あるいはステップS518において設定した新反力Rnewを反力Rとして設定し(ステップS519)、リターンする。ステップS517において偏差(Rold−Rnew)が漸次付加反力δR以下であれば、移行制御中フラグをオフする(ステップS520)。ステップS514において移行制御中フラグがオフである場合、あるいはステップS520において移行制御中フラグがオフされたならばリターンする。
【0033】
上記実施形態によれば、操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C未満の時、中立位置から操作量を増大させる場合に比べて、反力Rの大きさは戻し反力Rfの大きさだけ大きくされる。この際、その戻し反力Rfは、操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値未満になった時に一挙に付加されるのではなく漸増される。これにより、操作部材1の中立位置への復帰時の操作速度dδh/dtの大きさが小さい場合や、中立位置への復帰途中で舵角を一定に保持するために操作部材1の動きを停止させた場合に、操作部材1を中立位置へ復帰させる反力Rが大きくなるのをドライバーが感じるのを防止できる。また、操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上である場合は戻し反力Rfを大きくしてドライバーの操作を補助することができる。しかも、その後に操作部材1の中立位置復帰方向への操作速度dδh/dtの大きさが設定値C未満になることで再び戻し反力Rfを漸増させる時、操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上になった時の値よりも小さな値から漸増させるので、操作部材1を中立位置へ復帰させる反力が大きくなるのをドライバーが感じるのを防止できる。この場合、その戻し反力Rfは、その操作速度dδh/dtの大きさが設定値C以上であった時間が長い程に、その設定値C未満になった当初の値から大きく減少される。これにより、操作部材1を中立位置へ復帰させる反力Rが大きくなるのをドライバーが感じるのをより確実に防止できる。さらに、操作部材1の中立位置からの操作量が設定値A未満である場合や、車速Vが設定値Va以上である場合、その戻し反力Rfの付加は解除される。よって、操作部材1が中立位置近傍まで復帰した場合や、車速Vが大きく走行安定性のために戻し反力Rfを大きくする必要がない場合に、不必要な制御が不要になる。
【0034】
また、据え切り操舵時に操作部材1の操作速度dδh/dtの大きさが過大になると反力Rが大きくなるので、据え切り操舵の頻度が必要以上に多くなるのを抑制し、操作部材1の操作に対する操舵用アクチュエータ2の応答遅れが生じるのを防止できる。さらに、操作速度dδh/dtの大きさが小さいにも関わらず操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との偏差が大きくなると反力Rを大きくすることができる。よって、障害物によって車輪4の転舵が阻止されているような場合に反力Rを大きくし、ドライバーに障害物の存在を気付かせることができる。また、操作速度dδh/dtの大きさが大きい場合は、操作部材1の操作量と車輪4の転舵量との偏差が多少大きくなっても反力Rを大きくすることがないので、より操作性を向上できる。
【0035】
さらに、車両が停車状態と走行状態との間で状態移行した時に、その状態移行直前の操作用アクチュエータ19の発生反力Roldと、状態移行直後に、その状態移行後における操作用アクチュエータ19の発生反力として演算した値Rmとの偏差が設定値δfを超える場合、その状態移行後における反力Rは、その状態移行前の反力Roldから、状態移行直後に状態移行後の状態に対応して演算された操作用アクチュエータ19が発生すべき反力Rmまで漸次変化する。これにより、その状態移行時における反力Rの急変を防止できるので、操作部材1を操作した停車状態から車両を発進させた時の急激な反力増加と、操作部材1を操作した走行状態から停車させた時の急激な反力減少を緩和できる。例えば車庫入れ等の際に、舵角δが大きな状態で次第に車速Vを減少させて停車させる時に、急激な反力減少なく操作部材1の操作を円滑に連続して行うことができる。また、操作速度dδh/dtの大きさが設定値Hを超える場合、その反力Rの漸次変化を中断し、状態移行直後に状態移行後の状態に対応して演算された操作用アクチュエータ19が発生すべき反力Rmを作用させることで、操作部材1の操作が軽くなり過ぎるのを防止できる。さらに、車両の加速度dV/dtが大きい場合は迅速に反力Rを大きくして高速走行時における走行安定性を向上することができる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では操作部材1と車輪4とが機械的に連結されていないステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置に本発明を適用したが、図17の変形例に示すように、操作部材であるステアリングホイールHが車輪(図示省略)に機械的に連結された操舵装置101に本発明を適用してもよい。そのステアリングホイールHの操作に応じた入力シャフト102の回転は、回転伝達機構130により出力シャフト111に伝達され、その出力シャフト111の回転が車輪に舵角が変化するようにステアリングギヤ(図示省略)により伝達される。そのステアリングギヤはラックピニオン式ステアリングギヤやボールスクリュー式ステアリングギヤ等の公知のものを用いることができる。その回転伝達機構130の構成要素をモータ(操舵用アクチュエータ)139により駆動することで、そのモータ139の動きが車輪に舵角が変化するように伝達される。その入力シャフト102と出力シャフト111は互いに同軸心に隙間を介して配置され、ベアリング107、108、112、113を介してハウジング110により支持されている。その回転伝達機構130は、本変形例では遊星ギヤ機構とされ、サンギヤ131とリングギヤ132とに噛み合う遊星ギヤ133をキャリア134により保持する。そのサンギヤ131は、入力シャフト102の端部に同行回転するように連結されている。そのキャリア134は、出力シャフト111に同行回転するように連結されている。そのリングギヤ132は、入力シャフト102を囲むホルダー136にボルト362を介して固定されている。そのホルダー136は、入力シャフト102を囲むようにハウジング110に固定された筒状部材135によりベアリング109を介して支持されている。そのホルダー136の外周にウォームホイール137が同行回転するように嵌め合わされている。そのウォームホイール137に噛み合うウォーム138がハウジング110により支持されている。そのウォーム138がハウジング110に取り付けられたモータ139により駆動される。また、そのステアリングホイールHの中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータ119が設けられている。その操作用アクチュエータ119の制御系を上記実施形態と同様に構成することで本発明を適用することができる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、操作部材の操作反力を操作用アクチュエータの制御により付与する車両において、ドライバーに違和感や不安感を与えることなく操作部材を確実に中立位置に復帰させる戻し反力を付与できる操舵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の車両の操舵装置の構成説明図
【図2】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図3】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図4】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図6】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図7】本発明の実施形態の車両の操舵装置における戻し反力制御の制御手順を示すフローチャート
【図8】本発明の実施形態の車両の操舵装置における戻し反力制御の制御手順を示すフローチャート
【図9】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作部材の操作速度と非漸増戻し反力の設定値との関係を示す図
【図10】本発明の実施形態の車両の操舵装置における据え切り反力制御の制御手順を示すフローチャート
【図11】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作部材の操作角と車輪の転舵量に対応する舵角との偏差の設定値と操作部材の操作速度との関係を示す図
【図12】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作部材の操作角と車輪の転舵量に対応する舵角との偏差の設定値と反力加算値との関係を示す図
【図13】本発明の変形例の車両の操舵装置における据え切り反力制御の制御手順を示すフローチャート
【図14】本発明の変形例の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータの電流値と反力加算値との関係を示す図
【図15】本発明の実施形態の車両の操舵装置における移行制御の制御手順を示すフローチャート
【図16】本発明の実施形態の車両の操舵装置における移行制御の制御手順を示すフローチャート
【図17】本発明の変形例の車両の操舵装置の構成説明図
【符号の説明】
1 操作部材
2 操舵用アクチュエータ
3 ステアリングギヤ
4 車輪
11 角度センサ
13 舵角センサ
14 速度センサ
19 操作用アクチュエータ
20 制御装置
119 操作用アクチュエータ
139 モータ
H ステアリングホイール
Claims (4)
- 操作部材と、
その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、
その操舵用アクチュエータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、
その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータと、
その操作部材の中立位置からの操作量を検出するセンサと、
その操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、
その操舵用アクチュエータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、
その操作用アクチュエータは、その操作部材の中立位置からの操作量の減少時は増大時に比べ、その反力の大きさが戻し反力の付加により設定値だけ大きくなるように制御される車両の操舵装置であって、
その操作部材の中立位置復帰方向への操作速度の大きさが設定値未満の時、その操作用アクチュエータは前記戻し反力が設定値まで漸増するように制御されることを特徴とする車両の操舵装置。 - その操作部材の中立位置への操作速度の大きさが戻し反力の漸増途中に前記設定値以上になった場合、その戻し反力は操作速度の大きさに応じた設定値とされ、
その後に操作部材の中立位置への操作速度の大きさが前記設定値未満になった場合、その戻し反力は、操作速度の大きさが前記設定値以上になった時の値よりも小さな値から漸増される請求項1に記載の車両の操舵装置。 - その操作部材の中立位置への操作速度の大きさが戻し反力の漸増途中に前記設定値以上になった後に設定値未満になった場合、その戻し反力は、その設定値以上であった時間が長い程に、その設定値未満になった当初の値から大きく減少される請求項2に記載の車両の操舵装置。
- 操作部材の中立位置からの操作量が設定値未満である場合、および、車速が設定値以上である場合の中の少なくとも一方である場合は、その戻し反力の付加は解除される請求項1〜3の中の何れかに記載の車両の操舵装置。
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