JP3841674B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータの制御により車両の操舵特性を変更可能な車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクチュエータにより操舵補助力を付与することで車両の操舵特性を変更可能なパワーステアリング装置が一般的に用いられている。また、操作部材の操作に応じた操舵用アクチュエータの動きを車輪に舵角が変化するように伝達する際に、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比を変化させることで操舵特性を変更可能な車両の操舵装置も提案されている。そのような操舵装置として、操作部材を車輪に機械的に連結しない所謂ステアバイワイヤシステムを採用したものと機械的に連結したものとがある。ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、ステアリングホイールを模した操作部材を車輪に機械的に連結することなく、操舵用アクチュエータの動きを、その動きに応じて舵角が変化するように車輪に伝達し、その伝達に際して操舵用アクチュエータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。また、操作部材を車輪に機械的に連結した操舵装置においては、ステアリングホイールの操作に応じた入力シャフトの回転を出力シャフトに遊星ギヤ機構等の伝達比可変機構を介して伝達し、その伝達に際して遊星ギヤ機構を構成するリングギヤ等を駆動する操舵用アクチュエータを制御することで操作量と転舵量との比を変更している。
【0003】
ステアバイワイヤシステムを採用した操舵装置においては、車輪と路面との間の摩擦に基づく操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材に伝達されない。また、ステアリングホイールと車輪とが伝達比可変機構を介して機械的に連結されている操舵装置においては、その操舵抵抗やセルフアライニングトルクは操作部材の操作量に対応しない。そのため、ドライバーに適正な操舵フィーリングを与える手段が必要とされている。そこで、その操作部材を中立位置へ復帰させる方向に作用する反力を発生する操作用アクチュエータを設けている。その操作用アクチュエータにより、走行中においては例えば舵角に比例する反力を付与することで、ドライバーに操舵フィーリングを与えている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような車両の操舵装置において、操作部材の操舵補助力や操作反力や操作量と転舵量との比を、操舵トルクや車速といった車両の状態に応じてのみ制御した場合、道路状況の如何によってドライバーの負担が大きくなったり、適切な操舵フィーリングを与えることができないことがある。そこで、カメラ、センサ、ナビゲーションシステム等により得た道路状況や、ドライバーの操作特性に応じて、操作量と転舵量との比を制御することが提案されている(特開平11−78944号、特開平11−99956号)。しかし、道路状況やドライバーの操作特性に応じて操作量と転舵量との比を制御しただけでは、ドライバーの負担軽減や操舵フィーリングの向上を十分に行うことができなかった。
本発明は上記問題を解決することのできる車両の操舵装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操作部材と、その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、その操舵用アクチュエータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータと、その操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、その操舵用アクチュエータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、その操作用アクチュエータは、反力が変化するように制御可能とされている車両の操舵装置に適用される。
また本発明は、車輪に機械的に連結される操作部材と、操舵補助力発生用アクチュエータと、その操作部材の操作トルクを検出するセンサと、その操舵補助力発生用アクチュエータの制御系とを備え、その操舵補助力発生用アクチュエータは、少なくとも操作トルクに応じて操舵補助力が変化するように制御可能とされている車両の操舵装置に適用される。
【0008】
本発明の特徴は、車両の現在位置を求める手段と、予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する手段と、現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路を決定する手段とが設けられ、その決定された現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性に応じて、前記反力あるいは操舵補助力が変化するように、前記操作用アクチュエータあるいは操舵補助力発生用アクチュエータが制御される点にある。
これにより、車両がこれから走行しようとする道路状況に応じて反力あるいは操舵補助力を変化させることができる。その将来の車両走行経路を決定する手段として、例えばカーナビゲーション装置を用いることができる。なお、その反力と共に操作部材の操作量と車輪の転舵量との比も併せて制御するようにしてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1に示す第1比較例の車両の操舵装置は、ステアリングホイールを模した操作部材1と、その操作部材1の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータ2と、その操舵用アクチュエータ2の動きを、その操作部材1を前部左右車輪4に機械的に連結することなく、舵角変化が生じるように前部左右車輪4に伝達する機構としてステアリングギヤ3とを備える。
【0010】
その操舵用アクチュエータ2は、例えば公知のブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。そのステアリングギヤ3は、その操舵用アクチュエータ2の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動に変換する例えばボールネジ機構等の運動変換機構により構成されている。そのステアリングロッド7の動きがタイロッド8とナックルアーム9を介して車輪4に伝達され、車輪4のトー角が変化する。そのステアリングギヤ3は、公知のものを用いることができ、操舵用アクチュエータ2の動きを舵角が変化するように前部左右車輪4に伝達できれば構成は限定されない。操舵用アクチュエータ2が駆動されていない状態では、前部左右車輪4はセルフアライニングトルクにより直進位置に復帰できるようにホイールアラインメントが設定されている。
【0011】
その操作部材1は、車体側により回転可能に支持される回転シャフト10に連結されている。その回転シャフト10に操作用アクチュエータ19の出力シャフトが一体化されている。その操作用アクチュエータ19は操作部材1の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する。その操作用アクチュエータ19はブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。
【0012】
操作部材1の操作量として中立位置からの操作角δhを検出する角度センサ11が設けられている。車輪4の転舵量として舵角δを検出する舵角センサ13が設けられ、本比較例では、その舵角δとして車輪4の転舵量に対応するステアリングロッド7の移動量を検出する。車速Vを検出する速度センサ14が設けられている。操作部材1の操作トルクThとして回転シャフト10により伝達されるトルクを検出するトルクセンサ44が設けられている。その操作トルクThが操作用アクチュエータ19の発生反力に対応する。その角度センサ11、舵角センサ13、速度センサ14、トルクセンサ44は、コンピュータにより構成される制御装置20に接続される。
【0013】
その制御装置20は駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2を制御する制御系を構成する。例えば制御装置20は、操作部材1の操作角δhと車速Vと目標舵角との間の関係を予め定めて記憶し、検出舵角δと目標舵角との偏差をなくすように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2の駆動信号を出力する。その操作角δhと車速Vと目標舵角との間の関係は、例えば車速Vが大きくなる程に目標舵角が小さくなるものとされている。これにより、操舵用アクチュエータ2の動きを車輪4に舵角が変化するように伝達する際に、操作角δhと舵角δとの比を変化させることが可能とされている。例えば、操作角δhに対する舵角δの比を低車速で大きくすることで旋回性能を向上し、高車速で小さくすることで走行安定性を向上できる。なお、操作角δhと舵角δとの比は車速に応じて変化するものに限定されず、その比が変化するように操舵用アクチュエータ2が制御されるものであればよい。
【0014】
制御装置20は駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19を制御する制御系を構成する。例えば制御装置20は、操作部材1の操作角δhと目標反力として目標操作トルクTh* との間の関係を予め定めて記憶し、検出操作トルクThと目標操作トルクTh* との偏差をなくすように駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19の駆動信号を出力する。本比較例では、操作角δhに比例する操作トルクThを操作用アクチュエータ19が発生するものとされ、その比例関係を記憶した制御装置20により操作用アクチュエータ19が制御される。なお、その操作用アクチュエータ19の制御は操作角δhと操作トルクThとが比例するものに限定されず、ドライバーに適正な操舵フィーリングを与えるように反力が変化するように制御されるものであればよい。
【0015】
制御装置20は、過去から現時点までの設定範囲に亘る車両走行経路における操作部材1の操作履歴を蓄積する。その車両走行経路における過去から現時点までの設定範囲は、時間により設定してもよいし距離により設定してもよい。その操作履歴としては、例えば操作角δh、操作トルクTh、操作速度d(δh)/dtの履歴を時系列に蓄積する。制御装置20は、その蓄積した操作履歴からドライバーの操作特性を求める。その操作特性として、例えば操作角δhの頻度分布、操作トルクThの頻度分布、あるいは操作速度d(δh)/dtの頻度分布を表す標準偏差等の統計値を求める。
【0016】
上記操作用アクチュエータ19は、その求めた操作特性に応じて上記反力が漸次変化するように制御装置20により制御され、また、上記操舵用アクチュエータ2は上記比δ/δhが漸次変化するように制御装置20により制御される。
例えば、1分前から現時点までの操作角δhの頻度分布、操作トルクThの頻度分布、あるいは操作速度d(δh)/dtの頻度分布が大きい程に、操作トルクThが漸次小さくなるように操作用アクチュエータ19が制御され、また、比δ/δhが漸次大きくなるように操舵用アクチュエータ2が制御される。
【0017】
図2の(1)、(2)は操作角δhの頻度分布を示し、図2の(1)におけるよりも図2の(2)における方が頻度分布が大きい。このような頻度分布の大小比較は例えば標準偏差等の数値を求めて比較することで行えばよい。
【0018】
図3は、操作用アクチュエータ19の発生反力に対応する目標操作トルクTh* と操作角δhとの関係の一例を、1分前から現時点までの操作角δhの頻度分布が大きい場合を実線、小さい場合を一点鎖線、その中間の場合を破線で示す。その目標操作トルクTh* は、操作角δhに応じて変化すると共に操作角δhの頻度分布が大きい程に小さくされる。
【0019】
図4は、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhと車速Vとの関係の一例を、1分前から現時点までの操作角δhの頻度分布が大きい場合を破線、小さい場合を一点鎖線、その中間の場合を実線で示す。その比δ/δhは、車速Vに応じて変化すると共に操作角δhの頻度分布が大きい程に大きくされる。
【0020】
図5のフローチャートを参照して制御装置20による操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS1)、制御開始から設定時間(本比較例では1分)が経過したか否かを判断する(ステップS2)。設定時間が経過していなければ操作角δhの標準偏差σを初期値に設定する(ステップS3)。設定時間が経過していれば、設定時間前から現時点まで蓄積した検出操作角δhの標準偏差σを演算する(ステップS4)。次に、検出操作角δhとステップS3またはステップS4で得られた標準偏差σとに応じて、目標操作トルクTh* を演算し(ステップS5)、その目標操作トルクTh* と検出操作トルクThとの偏差を低減するように操作用アクチュエータ19を制御する(ステップS6)。また、検出車速VとステップS3またはステップS4で得られた標準偏差σとに応じて、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを演算し、その比δ/δhと検出操作角δhとから目標舵角δ* を演算し(比×検出操作角)(ステップS7)、その目標舵角δ* と検出舵角δとの偏差を低減するように操舵用アクチュエータ2を制御する(ステップS8)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS9)、終了しない場合はステップS1に戻る。
【0021】
上記第1比較例によれば、道路状況に応じたドライバーの操作履歴から求められるドライバーの操作特性に応じて操作トルクTh、および操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを変化させることができる。これにより、道路状況に応じてドライバーの負担を軽減することで操舵フィーリングを向上できる。
【0022】
本発明の第2比較例として、図1において2点鎖線で示すように制御装置20に車両の現在位置を求める手段として測位装置21を接続する以外は第1比較例と同様の構成を有し、その制御装置20により第1比較例とは異なる制御を行ってもよい。その測位装置21としては、例えばGPSを利用して測位する市販のカーナビゲーション装置を用いることができる。なお、上記第1比較例と同様部分は同一符号で表される。
【0023】
第2比較例における制御装置20は、第1比較例と同様に、過去から現時点までの設定範囲に亘る車両走行経路における操作部材1の操作履歴を蓄積し、その蓄積した操作履歴からドライバーの操作特性として例えば第1比較例と同様の標準偏差σを求める。
【0024】
制御装置20は、予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する。その予め定めた車両走行経路としては、市販のカーナビゲーション装置に記憶されている走行経路情報を利用できる。その標準操作特性は、例えば、記憶する車両走行経路における複数の一般的ドライバーの操作角δh、操作トルクTh、操作速度d(δh)/dtの履歴を平均化することで標準操作履歴を求め、その標準操作履歴として求められた操作角δhの頻度分布、操作トルクThの頻度分布、操作速度d(δh)/dtの頻度分布等を表す標準偏差のような統計値として求める。
【0025】
制御装置20は、その求めた操作特性と、その過去から現時点までの設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性との差に応じて、反力として操作トルクThが漸次変化するように操作用アクチュエータ19を制御し、また、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhが漸次変化するように操舵用アクチュエータ2を制御する。その操作特性と標準操作特性との差として例えば上記のような標準偏差の差を求める。その操作特性を表す標準偏差が標準操作特性を表す標準偏差よりも大きい程に操作トルクThが小さくされ、比δ/δhが大きくされる。なお、操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の何れか一方のみを制御するようにしてもよい。他は第1比較例と同様とされている。
【0026】
図6のフローチャートを参照して第2比較例の制御装置20による操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS201)、制御開始から設定時間(本比較例では1分)が経過したか否かを判断する(ステップS202)。設定時間が経過していなければ操作角δhの標準偏差σを初期値に設定する(ステップS203)。設定時間が経過していれば、設定時間前から現時点まで蓄積した検出操作角δhの標準偏差σを演算する(ステップS204)。また、設定時間前から現時点まで測位装置21により測定した車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作履歴、本比較例では複数の一般的ドライバーの操作角δhの履歴の平均値、の標準偏差σoを標準操作特性として読み出す(ステップS205)。次に、ステップS203またはステップS204で求めた標準偏差σとステップS205で求めた標準偏差σoとの差に応じて、目標操作トルクTh* を演算し(ステップS206)、その目標操作トルクTh* と検出操作トルクThとの偏差を低減するように操作用アクチュエータ19を制御する(ステップS207)。また、その標準偏差の差(σ−σo)と検出車速Vとに応じて、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを演算し、その比δ/δhと検出操作角δhとから目標舵角δ* を演算し(比×検出操作角)(ステップS208)、その目標舵角δ* と検出舵角δとの偏差を低減するように操舵用アクチュエータ2を制御する(ステップS209)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS210)、終了しない場合はステップS201に戻る。
【0027】
上記第2比較例によれば、車両が走行した経路における標準的な操作特性と、その経路を走行した実際のドライバーの操作特性との差に応じて、操作トルクTh、および操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを制御できる。これにより、ドライバーの個人差に応じて操作トルクThおよび比δ/δhを最適化できる。
【0028】
図7に示す第3比較例の車両の操舵装置は、前部左右車輪204に機械的に連結されるステアリングホイール(操作部材)201と、このステアリングホイール201に連結される入力シャフト202と、この入力シャフト202にトルクセンサ211を介して連結される出力シャフト203とを備える。その出力シャフト203に回転伝達可能に連結されるピニオン205にかみ合うラック206に、タイロッド、ナックルアームを介して車輪204が連結される。これにより、ステアリングホイール201の回転が入力シャフト202、出力シャフト203、ピニオン205を介して伝達されることでラック206が移動する。そのラック206の移動により車輪204の転舵量が変化する。その出力シャフト203に減速ギヤ機構207を介して操舵補助力発生用アクチュエータ(モータ)208が接続されている。これによりアクチュエータ208の出力が操舵補助力として出力シャフト203に伝達される。
【0029】
その操舵補助力発生用アクチュエータ208の制御系を構成する制御装置210に、入力シャフト202により伝達されるステアリングホイール201の操作トルクThを検出するトルクセンサ211と、車速Vを検出する速度センサ212と、ステアリングホイール201の操作角δhを検出する角度センサ213が接続されている。例えば図8に示すように、その制御装置210により制御される操舵補助力発生用アクチュエータ208の目標出力I* は、操作トルクThが大きい程、また車速Vが小さい程に大きくされる。これにより、操作トルクThと車速Vに応じて操舵補助力が変化するようにアクチュエータ208は制御される。その制御装置210に車両の現在位置を求める手段として第2比較例と同様にカーナビゲーション装置により構成される測位装置221が接続されている。
【0030】
制御装置210は、第1比較例と同様に、過去から現時点までの設定範囲に亘る車両走行経路におけるステアリングホイール201の操作履歴を蓄積し、その蓄積した操作履歴からドライバーの操作特性として例えば第1比較例と同様の標準偏差σを求める。
【0031】
制御装置210は、第2比較例と同様に、予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する。その標準操作特性として、例えば第2比較例と同様の標準偏差σoを求める。
【0032】
制御装置210は、その求めた操作特性と、その過去から現時点までの設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性との差に応じて操舵補助力が漸次変化するように操舵補助力発生用アクチュエータ208を制御する。その操作特性と標準操作特性との差として例えば上記のような標準偏差の差を求める。その操作特性を表す標準偏差が標準操作特性を表す標準偏差よりも大きい程に操舵補助力が大きくされる。図9は、アクチュエータ208の目標出力I* と操作トルクThとの関係を、その操作特性を表す標準偏差が標準操作特性を表す標準偏差よりも大きい場合を破線、小さい場合を一点鎖線、その中間の場合を実線で示す。
【0033】
図10のフローチャートを参照して制御装置210による操舵補助力発生用アクチュエータ208の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS301)、制御開始から設定時間(本比較例では1分)が経過したか否かを判断する(ステップS302)。設定時間が経過していなければ操作角δhの標準偏差σを初期値に設定する(ステップS303)。設定時間が経過していれば、設定時間前から現時点まで蓄積した検出操作角δhの標準偏差σを演算する(ステップS304)。また、設定時間前から現時点まで測位装置221により測定した車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作履歴、本比較例では複数の一般的ドライバーの操作角δhの履歴の平均値、の標準偏差σoを標準操作特性として読み出す(ステップS305)。次に、検出操作トルクThと、検出車速Vと、ステップS303またはステップS304で求めた標準偏差σとステップS305で求めた標準偏差σoとの差とに応じて、アクチュエータ208の目標出力I* を演算し(ステップS306)、その目標出力I* と実際の出力との偏差を低減するようにアクチュエータ208を制御する(ステップS307)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS308)、終了しない場合はステップS301に戻る。
【0034】
上記第3比較例によれば、車両が走行した経路における標準的な操作特性と、その経路を走行した実際のドライバーの操作特性との差に応じて、操舵補助力を制御できる。これにより、ドライバーの個人差に応じて操舵補助力を最適化できる。
【0035】
本発明の第1実施形態の車両の操舵装置として、上記第2比較例と同様に車両の現在位置を求める手段としてカーナビゲーション装置により構成される測位装置21を備える以外は第1比較例と同様の構成を有し、また、制御装置20によって以下のように第1、第2比較例とは異なる制御を行っている。なお、第1実施形態の説明において第1比較例と同様部分は同一符号で表される。
【0036】
第1実施形態における制御装置20は、予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材1の標準操作特性とを対応付けて記憶する。例えば、車両走行経路における複数の一般的ドライバーの操作角δh、操作トルクTh、操作速度d(δh)/dtの履歴を平均化することで標準操作履歴を求め、その操作角δhの頻度分布、操作トルクThの頻度分布、操作速度d(δh)/dtの頻度分布等を表す標準偏差を標準操作特性として求める。
【0037】
制御装置20は、現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路を決定する。その将来の車両走行経路の決定は、測位装置21により求めた車両の現在位置情報と、例えば測位装置21を構成するカーナビゲーション装置にドライバーが入力した目的地情報や、そのカーナビゲーション装置に記憶されている走行経路情報や、車両の方向指示器の操作情報に基づき決定する。例えば、現在位置情報と目的地情報と走行経路情報とから車両走行経路を決定する。また、現在位置情報と、方向指示器の操作情報と、走行経路情報と、その走行経路情報に含まれる目的地までに存在する交差点の形状、大きさ、交差角度とから決定した交差点における進行方向とから車両走行経路を決定する。その車両走行経路における現時点から将来の設定範囲は、時間により設定してもよいし距離により設定してもよく、例えば制御装置20の1制御周期を設定範囲としてもよい。
【0038】
制御装置20は、その決定された現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性に応じて、反力として操作トルクThが漸次変化するように操作用アクチュエータ19を制御し、また、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhが漸次変化するように操舵用アクチュエータ2を制御する。その標準操作特性を表す標準偏差が大きい程に操作トルクThが小さくされ、比δ/δhが大きくされる。なお、操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の何れか一方のみを制御するようにしてもよい。他は第1比較例と同様とされている。
【0039】
図11のフローチャートを参照して第1実施形態の制御装置20による操舵用アクチュエータ2と操作用アクチュエータ19の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS401)、現時点から将来の設定範囲(本実施形態では1制御周期)の車両走行経路を決定する(ステップS402)。次に、その現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作履歴、本実施形態では複数の一般的ドライバーの操作角δhの履歴の平均値、の標準偏差σoを標準操作特性として読み出す(ステップS403)。ステップS403で読み出した標準操作特性σoに応じて目標操作トルクTh* を演算し(ステップS404)、その目標操作トルクTh* と検出操作トルクThとの偏差を低減するように操作用アクチュエータ19を制御する(ステップS405)。また、ステップS403で読み出した標準操作特性σoと検出車速Vとに応じて、操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを演算し、その比δ/δhと検出操作角δhとから目標舵角δ* を演算し(比×検出操作角)(ステップS406)、その目標舵角δ* と検出舵角δとの偏差を低減するように操舵用アクチュエータ2を制御する(ステップS407)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS408)、終了しない場合はステップS401に戻る。
【0040】
上記第1実施形態によれば、車両がこれから走行しようとする道路状況に応じて操作トルクTh、および操作角δhに対する舵角δの比δ/δhを最適化することができる。
【0041】
本発明の第2実施形態の車両の操舵装置として、上記第3比較例と同様の構成を有し、制御装置210によって以下のように第3比較例とは異なる制御を行っている。なお、第2実施形態の説明において第3比較例と同様部分は同一符号で表される。
【0042】
第2実施形態における制御装置210は、第1実施形態と同様に、予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する。その標準操作特性として、第1実施形態と同様に車両走行経路における複数の一般的ドライバーの操作角δh、操作トルクTh、操作速度d(δh)/dtの履歴を平均化することで求めた標準操作履歴の頻度分布を表す標準偏差等を求める。また、制御装置210は、現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路を第1実施形態と同様に決定する。
【0043】
制御装置210は、その決定された現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性に応じて操舵補助力が漸次変化するように操舵補助力発生用アクチュエータ208を制御する。例えば、その標準操作特性を表す標準偏差が大きい程に操舵補助力が大きくされる。他は第3比較例と同様とされている。
【0044】
図12のフローチャートを参照して制御装置210による操舵補助力発生用アクチュエータ208の制御手順を説明する。
まず、各センサによる検出値を読み込み(ステップS501)、現時点から将来の設定範囲(本実施形態では1制御周期)の車両走行経路を決定する(ステップS502)。次に、その現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作履歴、本実施形態では複数の一般的ドライバーの操作角δhの履歴の平均値、の標準偏差σoを標準操作特性として読み出す(ステップS503)。次に、検出操作トルクThと、検出車速Vと、ステップS503で読み出した標準操作特性σoに応じてアクチュエータ208の目標出力I* を演算し(ステップS504)、その目標出力I* と実際の出力との偏差を低減するようにアクチュエータ208を制御する(ステップS505)。そして制御を終了するか否かを判断し(ステップS506)、終了しない場合はステップS501に戻る。
【0045】
上記第2実施形態によれば、車両がこれから走行しようとする道路状況に応じて操舵補助力を最適化することができる。
【0046】
図13の変形例に示すように、操作部材であるステアリングホイールHが車輪(図示省略)に機械的に連結され、且つ、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比を変化させることができる操舵装置101に本発明を適用してもよい。そのステアリングホイールHの操作に応じた入力シャフト102の回転は、回転伝達機構130により出力シャフト111に伝達され、その出力シャフト111の回転が車輪に舵角が変化するようにステアリングギヤ(図示省略)により伝達される。そのステアリングギヤはラックピニオン式ステアリングギヤやボールスクリュー式ステアリングギヤ等の公知のものを用いることができる。その回転伝達機構130の構成要素をモータ(操舵用アクチュエータ)139により駆動することで、そのモータ139の動きが車輪に舵角が変化するように伝達される。その入力シャフト102と出力シャフト111は互いに同軸心に隙間を介して配置され、ベアリング107、108、112、113を介してハウジング110により支持されている。その回転伝達機構130は、本変形例では遊星ギヤ機構とされ、サンギヤ131とリングギヤ132とに噛み合う遊星ギヤ133をキャリア134により保持する。そのサンギヤ131は、入力シャフト102の端部に同行回転するように連結されている。そのキャリア134は、出力シャフト111に同行回転するように連結されている。そのリングギヤ132は、入力シャフト102を囲むホルダー136にボルト362を介して固定されている。そのホルダー136は、入力シャフト102を囲むようにハウジング110に固定された筒状部材135によりベアリング109を介して支持されている。そのホルダー136の外周にウォームホイール137が同行回転するように嵌め合わされている。そのウォームホイール137に噛み合うウォーム138がハウジング110により支持されている。そのウォーム138がハウジング110に取り付けられたモータ139により駆動される。また、そのステアリングホイールHの中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータ119が設けられている。その操作用アクチュエータ119の制御によって反力を変化させ、そのモータ139の制御によってステアリングホイールHの操作量と車輪の転舵量との比を変化させることができる。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、道路状況やドライバーの個人差に応じた最適な操作反力、操舵補助力、あるいは操作量と転舵量との比を付与することで、ドライバーの負担を軽減して操舵フィーリングを向上できる車両の操舵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1比較例の車両の操舵装置の構成説明図
【図2】(1)、(2)はそれぞれ本発明の第1比較例の車両の操舵装置における操作角の頻度分布を示す図
【図3】本発明の第1比較例の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの目標操作トルクと操作角との関係を示す図
【図4】本発明の第1比較例の車両の操舵装置における操作角に対する舵角の比と車速との関係を示す図
【図5】本発明の第1比較例の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図6】本発明の第2比較例の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図7】本発明の第3比較例の車両の操舵装置の構成説明図
【図8】本発明の第3比較例の車両の操舵装置における操舵補助力発生用アクチュエータの目標出力と操作トルクと車速との関係を示す図
【図9】本発明の第3比較例の車両の操舵装置における操舵補助力発生用アクチュエータの目標出力と、操作トルクと、操作角の頻度分布との関係を示す図
【図10】本発明の第3比較例の車両の操舵装置における操舵補助力発生用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図11】本発明の第1実施形態の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図12】本発明の第2実施形態の車両の操舵装置における操舵補助力発生用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【図13】本発明の変形例の車両の操舵装置の構成説明図
【符号の説明】
1 操作部材
2 操舵用アクチュエータ
3 ステアリングギヤ
4、204 車輪
19 操作用アクチュエータ
20、210 制御装置
21、221 測位装置
22、211 トルクセンサ
139 モータ
201、H ステアリングホイール
208 操舵補助力発生用アクチュエータ
Claims (2)
- 操作部材と、
その操作部材の操作に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、
その操舵用アクチュエータの動きを舵角変化が生じるように車輪に伝達する機構と、
その操作部材の中立位置復帰方向へ作用する反力を発生する操作用アクチュエータと、
その操舵用アクチュエータと操作用アクチュエータの制御系とを備え、
その操舵用アクチュエータは、操作部材の操作量と車輪の転舵量との比が変化するように制御可能とされ、
その操作用アクチュエータは、反力が変化するように制御可能とされている車両の操舵装置において、
車両の現在位置を求める手段と、
予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する手段と、
現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路を決定する手段とが設けられ、
その決定された現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性に応じて前記反力が変化するように、前記操作用アクチュエータが制御されることを特徴とする車両の操舵装置。 - 車輪に機械的に連結される操作部材と、
操舵補助力発生用アクチュエータと、
その操作部材の操作トルクを検出するセンサと、
その操舵補助力発生用アクチュエータの制御系とを備え、
その操舵補助力発生用アクチュエータは、少なくとも操作トルクに応じて操舵補助力が変化するように制御可能とされている車両の操舵装置において、
車両の現在位置を求める手段と、
予め定めた車両走行経路と、その車両走行経路における予め定めた操作部材の標準操作特性とを対応付けて記憶する手段と、
現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路を決定する手段とが設けられ、
その決定された現時点から将来の設定範囲に亘る車両走行経路に対応付けられて記憶された標準操作特性に応じて前記操舵補助力が変化するように、前記操舵補助力発生用アクチュエータが制御されることを特徴とする車両の操舵装置。
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