JP3555126B2 - 操舵制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵系と転舵系とが機械的に分離されたいわゆるステアバイワイヤシステムやパワーステアリングシステムなど、外部動力を利用してハンドル操舵軸にアシスト推力を付与する機能を備えた操舵制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の操舵制御装置の一例が、例えば特開平4−176781号に開示されている。この操舵制御装置では、操舵ハンドルの操舵角に転舵輪の転舵角が追従するように転舵モータを駆動して転舵制御を行うと共に、舵角や舵角速度を含む操舵情報を考慮して反力モータを駆動して、操舵ハンドルに付与する操舵反力の制御を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように操舵情報を考慮して操舵反力の制御を行うと、例えば、舵角速度が速ければ操舵反力は大きくなって、急激なハンドル操作を防ぐことができる。しかし、この制御は、送り操舵の際に付与する反力に関するものであり、操舵ハンドルの戻り速度に関しては何等考慮されていない。また、通常のパワーステアリングシステムでも、操舵ハンドルの戻り速度は、タイヤに外力として働くセルフアライニングトルクに依存するため、操舵ハンドルを速く或いはゆっくりと操作しても、操舵ハンドルの戻り速度は、セルフアライニングトルクで決まる所定の速さとなっていた。
【0004】
そこで、本発明は、操舵ハンドルの送り操作をゆっくりと行った場合にはゆっくりと戻り、速く操作した場合には速やかに戻るようにすることで、操舵状態にあった好適な操舵ハンドルの戻し制御を行うことができる操舵制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、請求項1にかかる操舵制御装置は、操舵ハンドルの操作量を検出する操作量検出手段と、操舵ハンドルに連結された操舵軸を回転駆動する操舵軸駆動手段と、転舵輪の転舵量を検出する転舵量検出手段と、操作量と転舵量とに基づいて転舵輪の転舵制御を行う転舵制御手段と、操舵ハンドルの送り速度を検知する送り速度検知手段と、送り速度検知手段で検知された送り速度に応じて、操舵ハンドルの戻り速度を演算する戻り速度演算手段と、戻り操舵時に、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように操舵軸駆動手段の駆動制御を行う制御手段とを備えて構成する。
【0006】
ここで、操舵ハンドルの送り速度とは、中立位置から離間する方向に操舵ハンドルを操作した場合における操舵ハンドルの操作速度をいう。また、操舵ハンドルの戻り速度とは、中立位置へ向かって復帰する操舵ハンドルの復帰速度をいう。
【0007】
戻り速度演算手段では、操舵ハンドルの送り速度に応じた戻り速度が求められる。例えば、操舵ハンドルの送り速度が速い場合には速い戻り速度となるように演算され、また、送り速度が遅い場合には遅い戻り速度となるように演算される。そして、制御手段において、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように操舵軸駆動手段の駆動制御が行われるため、操舵ハンドルを速く操作した場合には、操舵ハンドルが中立位置に向かって速やかに戻り、ゆっくりと操作した場合には、中立位置に向かってゆっくりと戻るように操舵ハンドルの戻り速度が制御される。
【0008】
請求項2にかかる操舵制御装置は、操舵ハンドルに付与される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、操舵トルクに応じた操舵補助力を発生する補助力発生手段と、操舵ハンドルの送り速度を検知する送り速度検知手段と、送り速度検知手段で検知された送り速度に応じて、操舵ハンドルの戻り速度を演算する戻り速度演算手段と、戻り操舵時に、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように補助力発生手段の駆動制御を行う制御手段とを備えて構成する。
【0009】
戻り速度演算手段では、操舵ハンドルの送り速度に応じた戻り速度が求められる。例えば、操舵ハンドルの送り速度が速い場合には速い戻り速度となるように演算され、また、送り速度が遅い場合には遅い戻り速度となるように演算される。そして、制御手段において、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように補助力発生手段の駆動制御が行われるため、操舵ハンドルを速く操作した場合には、操舵ハンドルが中立位置に向かって速やかに戻り、ゆっくりと操作した場合には、中立位置に向かってゆっくりと戻るように操舵ハンドルの戻り速度が制御される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態につき、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1に本実施形態にかかる操舵制御装置の構成を概略的に示す。この操舵制御装置は、運転者が操作するマスタ部10、転舵輪21を転舵させるスレーブ部20及びマスタ部10とスレーブ部20とを電気的に制御する制御部30で構成される。
【0012】
マスタ部10は、操舵ハンドル11が取り付けられた操舵軸12と、操舵軸12を回転駆動する操舵軸モータ13とを備えると共に、操舵軸12には、操舵ハンドル11の操作量を検出する操舵角センサ14と、操舵ハンドル11に付与される操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ15とを備えている。
【0013】
スレーブ部20は、転舵軸22を変位駆動する際の駆動源となる転舵軸モータ23を備えており、この転舵軸モータ23と転舵軸22との間には、転舵軸モータ23の回転運動を直線運動に変換して転舵軸22を軸方向に変位させる変換器24を設けている。転舵軸22の両側には、転舵輪21から転舵軸22側に付与される軸力(転舵反力)を検出する反力センサ26を設けている。また、転舵軸22には、この転舵軸22の変位量を検出する転舵変位量センサ25が設けられており、転舵軸22の変位量と転舵輪21の転舵角が対応するため、転舵軸22の変位量を転舵変位量センサ25で検出することで、転舵輪21の転舵角を把握している。
【0014】
制御部30は、操舵軸モータ13の駆動制御を行う反力制御部31と、転舵軸モータ23の駆動制御を行う転舵制御部32とを備えている。転舵制御部32では、操舵角センサ14で検出された操舵角をもとに目標転舵量を演算すると共に、転舵変位量センサ25で検出される転舵軸22の転舵変位量が目標転舵量となるように、転舵軸モータ23の駆動制御を行っている。反力制御部31では、操舵トルクセンサ15で検出された操舵トルクと反力センサ26で検出された転舵反力とを基に、操舵ハンドル11に付与する操舵反力を演算し、この演算結果に基づいて操舵軸モータ13の駆動制御を行っている。
【0015】
また、反力制御部31では、戻り操舵時における、操舵ハンドル11の戻り速度も制御している。以下、図2のフローチャートを基に、反力制御部31で行われる操舵ハンドル11の戻り速度の制御について説明する。
【0016】
まず、S102において、送り操舵、すなわち操舵ハンドル11の送り操作が開始されたかを判断する。この送り操舵は、中立位置から離間する方向に操舵ハンドル11を回転させる操作であり、例えば、操舵角センサ14の検出結果をもとに、この操舵角の変化量Δθが増大した際に、送り操舵が開始されたと判断する。このS102で送り操舵が開始されたと判断された場合には、S104に進んで、この送り操舵時間を計測するタイマの時間tを0にセットして時間計測を開始すると共に、現在の操舵角θをθ1にセットする。
【0017】
続くS106では、送り操舵が終了したか否かを判断する。ここでは、例えば、所定時間における操舵角の変化量Δθが0の場合に送り操舵が終了したものと判断する。S106で送り操舵が終了したものと判断された場合には、S108に進んで、タイマによる時間計測を終了してこの時のタイマの経過時間tをt1とすると共に、この時の操舵角θをθ2にセットする。
【0018】
操舵角θ1からθ2まで送り操舵が行われた際には、この間、操舵ハンドル11の送り速度は、例えば図3の曲線で示すように推移するが、S110において、この送り操舵が行われた間における、操舵ハンドル11の平均送り速度avθ′をavθ′=(θ2−θ1)/t1として求める。
【0019】
続くS112では、戻り操舵、すなわち操舵ハンドル11の戻し操作が開始されたか否かを判断する。この戻り操舵は、中立位置に向かって操舵ハンドル11を回転させる操作と、セルフアライニングトルクによる転舵輪21の転舵に起因して操舵ハンドル11が中立位置に向かって回転する状態との双方を含む意であり、例えば、操舵角の変化量を示すΔθの符号が反転したかで判断する。
【0020】
S112で戻り操舵が開始されたと判断された場合には、S114において以下の処理が実行される。
【0021】
まず、S110で演算された平均送り速度avθ′を基に、戻り操舵における操舵ハンドル11の平均戻り速度avθ′rmをavθ′rm=k・avθ′として演算する。なお、この右辺の「k」は車両速度に応じて定まる比例定数であり、車両速度が高速になるほど小さな値となり、車両速度が低速になるほど大きな値となる。また、平均戻り速度の値に応じて、戻り操舵時の操舵角θと戻り速度θ′rmとの関係を示す関数F(θ)が予め規定されており、演算された平均戻り速度avθ′rmの値をもとに該当する関数F(θ)が選択される(図4)。この関数F(θ)により、戻り速度θ′rmが操舵角θに応じて割り付けられることになる。
【0022】
続くS116以降では、S114で設定された関数F(θ)によって規定される戻り速度となるように、操舵ハンドル11の戻り速度の制御がなされる。
【0023】
まず、S116では、操舵ハンドル11の操舵角θが読み込まれると共に、この操舵角θの微分値をとって操舵角速度θ′が算出される。なお、この操舵角速度θ′は、操舵軸12に操舵角速度センサを設けることで直接検出してもよい。
【0024】
続くS118では、操舵角がθのときの戻り速度F(θ)とS116で算出された操舵角速度θ′との大きさが比較される。その結果、θ′>F(θ)であれば、現在の操舵角速度θ′が、操舵角θの際に規定される戻り速度F(θ)よりも大となっている。このため、S120に進んで操舵軸モータ13への印加電圧を所定値だけ減少させることで操舵軸モータ13の出力トルクを低下させ、操舵ハンドル11の戻り速度を低下させるように制御し、この後、前述したS116に戻る。
【0025】
一方、S118でθ′<F(θ)であれば、現在の操舵角速度θ′が、操舵角θの際に規定される戻り速度F(θ)よりも小となっている。このため、S122に進んで操舵軸モータ13への印加電圧を所定値だけ増加させることで操舵軸モータ13の出力トルクを増大させ、、操舵ハンドル11の戻り速度を増加させるように制御し、この後、前述したS116に戻る。
【0026】
また、S118でθ′=F(θ)の場合には、現在の操舵角速度θ′が、操舵角θの際に規定される戻り速度F(θ)に等しくなっているので、操舵軸モータ13への印加電圧がその値のまま維持され、続くS124で保舵と判断されるまで、S116以降の処理が繰り返される。
【0027】
このS124では、例えば、操舵トルクセンサ15の検出値が所定のしきい値を越えて増加した場合や、操舵角の変化量或いは操舵角速度がゼロとなった場合に、運転者が操舵ハンドル11を一定の操舵角位置に保持した保舵状態であると判断して、このルーチンを終了し、再びS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0028】
このように反力制御部31では、S118〜S122において、操舵ハンドル11の戻り操舵中、操舵ハンドル11をF(θ)で規定される戻り速度で操作した場合に操舵反力がゼロになるように制御している。具体的には、図5に示すように、操舵ハンドル11の戻り速度がF(θ)より速いθ′aの場合には、操舵反力をTaだけ増加させて戻り速度がF(θ)となるように操舵軸モータ13の駆動制御を行い、また、操舵ハンドル11の戻り速度がF(θ)より遅いθ′bの場合には、操舵反力をTbだけ減少させて戻り速度がF(θ)となるように操舵軸モータ13の駆動制御を行っている。
【0029】
従って、戻り操舵の際、たとえば、運転者が操舵ハンドル11から手を離した場合にも、操舵ハンドル11はF(θ)で規定される戻り速度で、自動的に中立位置まで戻るように制御でき、また、運転者が操舵ハンドル11の戻し操作を行った場合にも、操舵反力を増減させることで、F(θ)で規定される戻り速度となるように制御することができる。
【0030】
以上説明した実施形態では、操舵制御装置を、マスタ部10とスレーブ部20とが機械的に分離したいわゆるステアバイワイヤシステムに適用した場合を例示したが、マスタ部10とスレーブ部20とが機械的に連結されたパワーステアリングシステムにも適用することができる。
【0031】
図6に電動式パワーステアリングシステムに適用した操舵制御装置の構成を概略的に示す。なお、図1と同一の構成要素には同一の参照符号を付して示す。この場合、操舵軸12と転舵軸22とは、例えばラックアンドピニオン式のギアボックス42を介して連結されており、転舵軸22上には、電動モータ41によって操舵補助力を発生する転舵用アクチュエータ40を配設している。
【0032】
補助力制御部50は、操舵ハンドル11の送り操舵の際に、操舵トルクセンサ15の検出結果を基に電動モータ41の駆動制御を行って操舵ハンドル11に付与する補助力を制御する。また、補助力制御部50は、操舵ハンドル11の戻り操舵の際には、操舵ハンドル11の戻り速度の制御を行う。この戻り速度の制御は、操舵角センサ14の検出結果をもとに、前述の図2に示したフローチャートに沿って、操舵ハンドル11の戻り速度θ′がF(θ)で規定される戻り速度となるように、電動モータ41の印加電圧が制御される。
【0033】
なお、油圧式のパワーステアリングシステムにも勿論適用することが可能であり、この場合も同様に、操舵角センサ14の検出結果をもとに、前述の図2に示したフローチャートに沿って、操舵ハンドル11の戻り速度θ′がF(θ)で規定される戻り速度となるように、油流量を制御するなどして、アシスト推力の制御を行う。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1にかかる操舵制御装置によれば、戻り速度演算手段によって操舵ハンドルの送り速度に応じた戻り速度を演算すると共に、制御手段によって、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように操舵軸駆動手段の駆動制御を行うので、操舵ハンドルの戻り速度を操舵ハンドルの送り速度に応じて制御することが可能となる。このため、操舵ハンドルの送り操作をゆっくりと行った場合には操舵ハンドルをゆっくりと戻し、速く操作した場合には速やかに戻すような、操舵状態にあった操舵ハンドルの戻し制御が可能となる。
【0035】
また、請求項2にかかる操舵制御装置によれば、戻り速度演算手段によって操舵ハンドルの送り速度に応じた戻り速度を演算すると共に、制御手段によって、操舵ハンドルの戻り速度が演算された戻り速度となるように補助力発生手段の駆動制御を行うので、操舵ハンドルの戻り速度を操舵ハンドルの送り速度に応じて制御することが可能となる。このため、操舵ハンドルの送り操作をゆっくりと行った場合には操舵ハンドルをゆっくりと戻し、速く操作した場合には速やかに戻すような、操舵状態にあった操舵ハンドルの戻し制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】操舵制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】操舵ハンドルの戻り速度の制御を行うフローチャートである。
【図3】送り操舵における操舵ハンドルの送り速度の推移を示すグラフである。
【図4】戻り操舵時の操舵角と戻り速度との関係が規定された関数F(θ)の一例を示すグラフである。
【図5】戻り速度と、操舵ハンドルに付与される操舵反力との関係を示すグラフである。
【図6】他の実施形態にかかる操舵制御装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
10…マスタ部、11…操舵ハンドル、12…操舵軸、13…操舵軸モータ、14…操舵角センサ(操舵量検出手段)、15…操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)、20…スレーブ部、21…転舵輪、22…転舵軸、23…転舵軸モータ、25…転舵変位量センサ(転舵変位量検出手段)、30…制御部、31…反力制御部(制御手段)、32…転舵制御部、40…転舵用アクチュエータ(補助力発生手段)、41…電動モータ、50…補助力制御部(制御手段)。
Claims (2)
- 操舵ハンドルの操作量を検出する操作量検出手段と、
前記操舵ハンドルに連結された操舵軸を回転駆動する操舵軸駆動手段と、
転舵輪の転舵量を検出する転舵量検出手段と、
前記操作量と前記転舵量とに基づいて前記転舵輪の転舵制御を行う転舵制御手段と、
前記操舵ハンドルの送り速度を検知する送り速度検知手段と、
前記送り速度検知手段で検知された送り速度に応じて、前記操舵ハンドルの戻り速度を演算する戻り速度演算手段と、
戻り操舵時に、前記操舵ハンドルの戻り速度が、演算された前記戻り速度となるように前記操舵軸駆動手段の駆動制御を行う制御手段とを備える操舵制御装置。 - 操舵ハンドルに付与される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記操舵トルクに応じた操舵補助力を発生する補助力発生手段と、
前記操舵ハンドルの送り速度を検知する送り速度検知手段と、
前記送り速度検知手段で検知された送り速度に応じて、前記操舵ハンドルの戻り速度を演算する戻り速度演算手段と、
戻り操舵時に、前記操舵ハンドルの戻り速度が、演算された前記戻り速度となるように前記補助力発生手段の駆動制御を行う制御手段とを備える操舵制御装置。
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