JP4221229B2 - プラスチックフイルム表面のブラスト加工方法 - Google Patents

プラスチックフイルム表面のブラスト加工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、プラスチックフイルム表面を研掃材を用いてブラスト加工し、均一なマット表面を形成する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフイルムの表面にマット加工を施してその表面を微細な凹凸にすることが従来から行われている。このマット加工を施す目的は多岐にわたるが、その主要な意図を列挙すれば、描画性の改良、印刷適性の向上、異質素材との貼り合わせ向上、コート層との密着性の改良、重ね合わせたフイルムの剥離性の改良、等が挙げられる。例えば特開平8−34865には、ポリイミドフイルムの接着性を改善するために、サンドマットをすることが開示されている。またサンドマットされたフイルムのマット面とは反対側の非マット面にアルミなどの金属を真空蒸着することにより、艶消し状のラベル・ステッカーが得られ、これは幅広い分野に用いられている。
ブラスト方法としては最も多く行われているのは、ショットブラストであり、高速で回転するブレードに研掃材を送り込み、通常「ローター」と呼ばれる装置から研掃材を噴射し、フイルム表面に当てる方法が行われる(特許文献1参照)。フイルムを一定速度で搬送させながら、数台のローターから多量の研掃材を噴射しながら、凹凸加工を施す。
ローターを使用しない方式としては、エアーブラストが知られている。このエアーブラストは、コンプレッサーの圧縮空気を使用するものと、ブロワーフアンによって、研掃材を送りだすブロワー式が知られている(特許文献2参照)。
コンプレッサーを使用するショットブラストは大量の空気圧が必要であるため、連続的にフイルム表面を処理する場合に装置、ランニングコストが高い問題がある。エアーブラストのブロワー式は研掃材を打ち込む力は弱いが装置コストが安いために、フイルム面までの距離を近づけて一部で使用されていた。
【0003】
従来のプラスチックフイルム表面のブラスト加工ではエアーブラストより、はるかに多くの研掃材を少ないパワーで噴射できるローター式ブラストを数台設けてフイルムを搬送させながらブラストを行うか、ブロワー式ブラストのみが数回行われていた。
【0004】
ショットブラストとして、ローター式の研掃材投射装置を使用した場合、1台の投射の不均一さをカバ−するために、投射装置を複数台組み合わせて、順次にフイルム面に投射するため、幅方向のマットムラや、段ムラが出やすい。ブロワー式のブラストの場合は、幅方向のマットムラや段ムラは少ないが、静電気に起因する模様や、研掃材の付着が水洗で除去できない問題があり、特に、非マット(研掃材が投射されない面)にアルミなどを蒸着する場合に蒸着面の概観ムラが発生する問題があった。
【0005】
【特許文献1】
実用新案登録第2563343号公報
【特許文献2】
特開平8−34865号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、本願発明の課題は静電気模様の発生がなく、非投射面に研掃材の付着が少なく、マット面の面状が均一にブラスト加工されるプラスチックフイルム表面のブラスト加工方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の手段により達成された。
研掃材をショットブラストした後に、更に研掃材を実質的に幅方向全幅にエアーブラストを行うプラスチックフイルム表面のブラスト加工方法。
【0008】
【発明の実施の態様】
本発明の表面加工を施す対象となるプラスチックフィルムは、種々の熱可塑性樹脂フィルムが使用できる。溶液流延されたフィルム、1軸又は2軸延伸された熱可塑性樹脂が好ましい。プラスチックフィルムの種類、その厚さ、および幅などは特に制限されない。
本発明のプラスチックフィルム表面の加工方法は、2つの必須工程からなり、第1工程に続いて第2工程を実施する。
第1工程:高速回転するローターを使用して研掃材をショットブラストする工程。
第2工程:研掃材を実質的に幅方向全幅にエアーブラストする工程。
第1工程を施した後に一旦表面加工を休止してから第2行程を実施しても良いが、第1工程に引き続いて第2工程を実施する方が好ましい。
【0009】
以下に本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のブラスト加工方法およびこの方法に使用するブラスト加工装置の一実施態様を示す概念図である。
断面図として示したブラスト加工装置1内にマット加工を施すプラスチックフィルム10は右方向から導入され3本のガイドローラー11,12,13により搬送方向を変化させて左側から加工装置の外部に送り出され、必要な次行程に搬送される。通常プラスチックフィルム10は、図示されていないロールから一定速度で送り出され、水洗、乾燥を含む必要な諸行程を経た上で別のロールに巻き取られる。
マット加工装置内では、導入されたプラスチックフィルムの片方の表面は、2つのガイドローラー11および12の間において、ローター1から噴射された研掃材によりブラスト加工が施される。その後引き続いて、プラスチックフィルムの同じ側の表面は、2つのガイドローラー12および13の間において、幅方向に実質的に全幅にブロワー2から噴射された研掃材によりさらにブラスト加工が施される。
【0010】
図2は、本発明のブラスト加工方法の別の実施態様を示す概念図である。図2(A)はブラスト加工装置の断面図であり、図2(B)はブラスト加工を施すフィルム表面の箇所を模式的に示す平面図である。
図2(A)において、使用するブラスト加工装置3は、3つのユニットA,BおよびCからなり、マット加工を施すプラスチックフィルム10はユニットAの右方向からマット加工装置3に導入され、順次ユニットBおよびCを経てユニットCの左からブラスト加工装置3の外部へ送り出され、必要な次行程に搬送される。各ユニットには3本のガイドローラーが設けられ、合計9本のガイドローラー21〜29により搬送方向を変化させている。
図2(A)に示したブラスト加工では、ユニットAおよびユニットBにおいて、それぞれ4つのローターから噴射された研掃材によりプラスチックフィルム表面にブラスト加工が施される。引き続いてユニットCにおいて、プラスチックフィルム表面には、搬送方向と直角なフィルムの幅方向に実質的に全幅にブロワー風により運ばれた研掃材が噴射される。
図2(B)には、研掃材の投射パタ−ンを模式的に示す。合計8つのローターからの投射パターンはA1〜A4およびB1〜B4に示され、2つのブロワーからの投射パターンはC1およびC2に示される。A1〜A4又はB1〜B4の幅方向の位置は、フィルムの幅方向に均一に表面加工ができるようにローターの中心位置を少しずつ変化させることが好ましい。
【0011】
図1に示すブラスト加工機は、比較的幅の狭いフィルムを比較的低速度で搬送してマット加工する場合に適している。図2に示すブラスト加工機は、比較的幅の広いフィルムを比較的高速度で搬送してマット加工する場合に適している。これらの実施態様はあくまでも例示であって、加工するフィルムの幅に応じて幅方向のローターの数を5以上にすることもできる。また、フィルムを高速度で表面加工する場合には、加工ユニットの数を適宜増やすことができる。
【0012】
通常ショットブラストに広く用いられているローター式の研掃材投射装置は、実用新案登録広報第2563343に示されているように、ディスクにブレードが設けられたローターが高速に回転して、ローターのブレードがショットに連続的に遠心力投射するように形成されているものである。プラスチック表面に凹凸加工を施す場合、一般に通常の投射装置1台の投射幅に対して、フイルム幅が広い場合には、ローター式の投射装置を複数台組み合わせて、フイルム表面の凹凸加工装置を形成する方が好ましい。また、1台の投射装置では投射角度による選択性が出たり、1台の投射装置の不均一さをカバーする意味からも、ローター式の投射装置を複数台組み合わせて、フイルムの凹凸加工装置を形成することが好ましい。
【0013】
エアーブラストに属するブロワー式ブラストは、コンプレッサーの作り出す圧縮エアーを使用せず、ブロワーフアンによって送り出させる風に研掃材をのせ、フイルムの幅に相当するスリットから、研掃材をフイルム面に吹き付けることが好ましい。フイルム面に当たる力はローター式より、弱いので、スリット口は、フイルム面に近づける方が好ましい。本発明の加工方法では、研掃材を実質的にフィルム幅方向全幅にエアーブラストする装置を使用することが好ましい。
【0014】
コンプレッサーで作った圧縮エアーを使用するエアーブラストは圧縮エアーを一度研掃材の入った加圧タンクに入れ、圧力を上げた後に一気に噴射する方式である。近距離から、強く噴射するので、この場合も研掃材がフイルム面に当たってフィルム面から分離する時の静電気の発生が強く、ブロワー式以上に、静電気模様の発生、研掃材の付着多く、金属蒸着後のムラが大きい傾向がある。従って、本発明の加工方法においては、圧縮エアーを使用するよりも、ブローワーファンによるエラーブラストが好ましい。
【0015】
本発明のブラスト加工方法は、エアーブラストを行う研掃材の平均粒径がローターを使用してショットブラストする研掃材の平均粒径よりも小さいことが好ましい。
【0016】
研掃材の平均粒径は、表面加工により得ようとするマット面の粗さの要求に応じた粒度を有する研掃材を使用することが好ましい。通常求められる粗さのマット面に対しては、ローター式ブラストでは100〜300μm、ブロワー式ブラストでは50〜150μm位の研掃材が用いられる。マット面に粗さが要求される場合は平均粒径の大きめの研掃材が用いられる。
また、ベースの種類、特にその硬度により、同じ粗さの要求であっても、粒度を変えることが好ましい。
【0017】
研掃材が投射されたマット面の均一性のためには、研掃材の粒度は細かい方がよいが、細かくすると、静電気も発生しやすく、研掃材がフイルムに付着しやすくなる。その後の水洗工程で、表面の研掃材が除去されず、その後ユーザーがアルミなどを蒸着したときに、ムラとなる問題が発生していた。あらかじめ、粗めの研掃材でショットブラストし、次に、それより細かい研掃材でショットブラストすることで、マット面のムラがなく、静電気模様の発生や、研掃材の付着が減少し、蒸着時のムラも出にくいことが確認された。
【0018】
本発明で使用される研掃材としては、珪砂、アルミナや、アルミナを含む石粉、セラミックビ−ズ、ガラスビ−ズ等が挙げられる。
一般に第1工程及び第2工程に共通した種類の研掃材を使用することが好ましい。同じ種類の研掃材を使用すると廃棄処理の負担がすくなくなる。
要求されるマット特性に応じて、第1工程及び第2工程に異なった種類の研掃材を使用することもできる。
【0019】
ブラストされるプラスチックフイルとしてはポリエステルフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリイミドフイルム、ガラスエポキシフイルム、フッ素フイルム、アイオノマ−フイルム、ポリ乳酸フイルム、ナイロンフイルムなどが使用される。
フイルムの厚みは12μmから、300μm位までのものが用いられる。フイルムの幅は40cmから1600cm位までのものが用いられる。
【0020】
本願発明者等は、エアー式のブラストが静電気を発生しやすいのを防ぐには、フイルムと研掃材の帯電序列を近づけて、両者の接触、分離による帯電圧を下げること、フイルムの非投射面にあらかじめ研掃材を付着させて、それと同一荷電の研掃材の付着を少なくすることができると考え、プラスチックフイルム表面を最初にローター式の研掃材装置を使用して、ショットし、次に、エアー式のブラスト装置で、ブラスト加工する方法を完成させたものである。ただし、前記の作用機構の真偽は本発明の特許性とは無関係である。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
直径が500mmのローターを使用して、ローターの回転速度2200rpm、研掃材として、平均粒径170μmの珪砂を用いて、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフイルムにショットブラストを行った。幅1.2mのフイルムを10m/分の速度で、搬送しながら、図1に示すように、2台のローターから、順に、各30Kg/m2の珪砂を1m離れたフイルム面にショットした後に、60m/分のブロワー風に平均粒径100μmの珪砂を送り込み、4cm幅のスリットから5cm離れたフイルムの全幅方向に吹き付けた後に、100L/分の水で1分間水洗、80℃で1分間乾燥し、ショットの行われていないフイルム面をアルミ蒸着した。
【0022】
(比較例)
図1の2の代わりに、図2のAのように、4台のローターで順にショットブラストしたもの、図1の1の代わりにブロワーでエアーブラストしたもの、図1の1の代わりにブロワーでエアーブラスト、2の代わりに、ローターでショットブラストしたものを、それぞれ、比較例1〜3として比較した。
【0023】
【表1】
Figure 0004221229
【0024】
表1の光沢度の測定は、スガ試験機(株)製のデジタル変角光沢度計UVG−4Dで行った。
表1に示されるように、最初にローター方式でブラスト加工した後に、ブロワー方式でブラスト加工したものは、静電気模様の発生なく、非マット面の蒸着時の白濁なく、外観状もきれいな蒸着面が得られた。ローター方式だけのものより、幅方向のマットムラ少なく、光沢度のバラツキも少なかった。
【0025】
実施例1と同様の25μmのPETフイルムを使用し、搬送速度を20m/分で、図2のa)のように、ローター方式で、Aで4回、Bで4回、平均粒径160μの珪砂でショットブラストし、その後で、平均粒径120μの珪砂で、ブロワーでブラストしたものも、マット面のムラがなく、均一で、静電気模様の発生なく、非マット面をアルミ蒸着したものも、白濁なく、きれいな蒸着面が得られた。
【0026】
【発明の効果】
本発明はプラスチックフイルム表面に、高速回転するローターを使用して、研掃材をショットブラストした後に、プラスチックフイルムの全面幅に、研掃材をエアーブラストすることで、マットムラが少なく、研掃材の静電気模様がなく、水洗後の研掃材の付着が少ないフイルムができ、非マット面に金属蒸着した場合の白濁がなく、きれいな蒸着面を作ることができる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブラスト加工方法の一実施態様を示す。二本のローター1からのショットブラストの後に、ブロワー2からのエアーブラストによるブラスト加工を施している。
【図2】本発明のブラスト加工方法の別の実施態様を示す。
【符号の説明】
1 ローター
2 ブロワー
3 ブラスト加工装置
10 プラスチックフィルム
11、12、13 ガイドローラー
21〜29 ガイドローラー
A1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4 ローターからの投射パターン
C1、C2 ブロワーからの投射パターン

Claims (4)

  1. 研掃材をショットブラストした後に、更に研掃材を実質的に幅方向全幅にエアーブラストすることを特徴とするプラスチックフイルム表面のブラスト加工方法。
  2. エアーブラストする研掃材の平均粒径がショットブラストする研掃材の平均粒径よりも小さい請求項1記載のブラスト加工方法。
  3. 研掃材が珪砂、アルミナ、アルミナを含む石粉、セラミックビーズ、又はガラスビーズである請求項1又は2記載のブラスト加工方法。
  4. プラスチックフイルムが、ポリエステルフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリイミドフイルム、ガラスエポキシフイルム、フッ素フイルム、アイオノマーフイルム、ポリ乳酸フイルム又はナイロンフイルムである請求項1〜3いずれか1つに記載のブラスト加工方法。
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