JP4220765B2 - D−アミノ酸オキシダーゼの安定化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、D−アミノ酸オキシダーゼの安定化方法、およびこの方法を利用するホモシステイン測定用試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホモシステインを生化学的に定量するために、還元剤で処理した検体中のホモシステインを、アデノシンおよびS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素と接触させ、残存する混合物中のアデノシン量を評価する方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、血中の総ホモシステイン測定のために必須である還元処理に用いられるチオール化合物などの還元剤の存在下では、生成する過酸化水素を、通常用いられる酸化系発色剤での測定系に導くことはできないという問題点がある。チオール化合物が、酸化系発色剤の発色を著しく阻害するからである。このため、この方法を汎用の自動分析装置に応用することはできない。
【0003】
この問題を解決するために、還元後の工程でSH試薬を用いる方法が報告されている(特許文献2参照)。この方法では、残存するホモシステイン補助基質、生成したホモシステイン変換酵素生成物、またはそれらの酵素反応生成物を、SH試薬の存在下で酸化して過酸化水素を生成させると同時に、SH試薬を用いて余剰のチオール化合物の作用をブロックすることができる。しかしながら、このSH試薬は反応性が高く、共存する酵素の安定性を著しく損なわせる原因となることがある。例えば、D−アミノ酸オキシダーゼを用いて酸化系発色剤での測定系に導く方法では、SH試薬の添加によりD−アミノ酸オキシダーゼが不安定になり、測定試薬自体の保存安定性を悪くさせる原因となっていた。
【0004】
【特許文献1】
特許第2870704号公報
【特許文献2】
国際公開第02/02802号パンフレット
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
D−アミノ酸オキシダーゼの安定化剤としては、安息香酸がよく知られているが、同時に同酵素に対する強い阻害作用も示すという問題があった。本発明の目的は、D−アミノ酸オキシダーゼの安定化方法およびこの方法を利用する安定性の高いホモシステイン測定用試薬を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために検討を重ねた結果、ジチオジニコチン酸がD−アミノ酸オキシダーゼ安定化作用を有し、かつ酵素阻害作用が無視できる程度に少ないことを見出した。さらに、陰イオン界面活性剤を用いることによって、D−アミノ酸オキシダーゼを安定化できると共に、変性して生じると考えられる不溶物の析出を防止し得ることも見出した。
【0007】
本発明は、D−アミノ酸オキシダーゼとジチオジニコチン酸とを液中で共存させる工程を含む、D−アミノ酸オキシダーゼの安定化方法を提供する。
【0008】
好適な実施態様では、上記液は、陰イオン界面活性剤を含む。
【0009】
より好適な実施態様では、上記陰イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンジアルキルアリルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルケニルアリルエーテル硫酸、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0010】
別の好適な実施態様では、上記D−アミノ酸オキシダーゼはブタ腎臓由来のD−アミノ酸オキシダーゼである。
【0011】
本発明はまた、ジチオジニコチン酸を含む、D−アミノ酸オキシダーゼ含有液を提供する。
【0012】
好適な実施態様では、上記D−アミノ酸オキシダーゼ含有液は、さらに陰イオン界面活性剤を含む。
【0013】
本発明はまた、上記いずれかのD−アミノ酸オキシダーゼ含有液を含む、D−アミノ酸測定用試薬を提供する。
【0014】
本発明はさらに、チオール化合物、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、およびD−メチオニンメチルスルホニウムを含有する試薬、および上記のD−アミノ酸測定用試薬を含む、ホモシステイン測定用キットを提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
ジチオジニコチン酸(6,6'−ジチオジニコチン酸)は、D−アミノ酸オキシダーゼを精製する場合から使用する場合までのあらゆる状況下で、D−アミノ酸オキシダーゼ含有液中でD−アミノ酸オキシダーゼ[EC 1.4.3.3]を安定化させる。例えば、ジチオジニコチン酸の存在下で通常用いる操作によってD−アミノ酸オキシダーゼを精製すると、酵素活性の低下を防止しつつ、精製酵素を得ることができる。また、例えば、D−アミノ酸オキシダーゼ含有製剤の凍結乾燥工程などでの失活を防止し得る。さらに、例えば、ホモシステイン測定用のD−アミノ酸オキシダーゼ含有液のようにN−エチルマレイミドのようなSH試薬が共存する場合、この液にジチオジニコチン酸を加えることにより、D−アミノ酸オキシダーゼの安定性は飛躍的に向上し得る。
【0016】
ジチオジニコチン酸の濃度は、D−アミノ酸オキシダーゼを安定化させるのに有効な濃度であれば、特に制限はない。例えば、後述するホモシステイン測定方法では、D−アミノ酸オキシダーゼ0.1〜100U/mlに対して、0.001〜100mM、好ましくは0.01〜10mM、さらに好ましくは0.05〜2mMの範囲で使用され得る。
【0017】
陰イオン界面活性剤は、D−アミノ酸オキシダーゼ含有液中でD−アミノ酸オキシダーゼを安定化させるだけでなく、この液中にN−エチルマレイミドのようなSH試薬を含む場合に生じる濁りの発生を防止し得る。SH試薬を含む場合の例としては、後述のホモシステイン測定方法が挙げられる。
【0018】
陰イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンジアルキルアリルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルケニルアリルエーテル硫酸、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が好適に使用される。これらのうちの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩[例:ハイテノール18E(第一工業製薬(株)製);エマール20Cおよび20A、レベノールWX(以上、花王(株)製)]、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸[例:ハイテノールN−17(第一工業製薬(株)製);エマールNC、レベノールWZ(以上、花王(株)製)]、ポリオキシエチレンジアルキルアリルエーテル硫酸[例:ハイテノールNE−15(第一工業製薬(株)製)]、ポリオキシエチレンアルケニルアリルエーテル硫酸[例:ハイテノールNF−13(第一工業製薬(株)製)]等が挙げられる。
【0019】
陰イオン界面活性剤の濃度は、D−アミノ酸オキシダーゼを安定化させるのに有効な範囲であり、さらにホモシステイン測定に悪影響を及ぼさない範囲であれば、特に制限はない。例えば、後述するホモシステイン測定方法では、0.001〜5%(w/v)、好ましくは0.01〜0.5%(w/v)で使用することが好ましい。
【0020】
D−アミノ酸オキシダーゼ含有液を利用する場合の代表的な例として、ホモシステインの測定方法について具体的に説明する(特許文献2参照)。
【0021】
D−アミノ酸オキシダーゼを用いるホモシステインの測定方法では、チオール化合物で還元処理した試料中のホモシステインに、メチル供与体存在下、メチル転移酵素を作用させた後(以下第一工程という)、生成するD−アミノ酸誘導体またはD−アミノ酸類似体にSH試薬およびジチオジニコチン酸の存在下でD−アミノ酸オキシダーゼを作用させ、そして生成する過酸化水素を酸化系発色剤によって測定する(以下第二工程という)。第二工程においては、さらに陰イオン界面活性剤も使用することが好ましい。
【0022】
この方法に供される被検試料としては、ホモシステインを含むと考えられる試料であればいずれでもよい。また、ホモシステインの存在様式としては、還元型ホモシステインのみならず、蛋白結合型、ホモシステイン2量体、ホモシステイン-システイン2量体などジスルフィド結合で他の分子に結合した酸化型ホモシステインのいずれでもよい。例えば、血清、血漿、血液、尿、およびそれらの希釈物などが挙げられる。
【0023】
この方法で用いられるチオール化合物は特に限定されず、例えば、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール、N−アセチルシステイン、ジチオエリスリトール、チオグリコール酸などが挙げられる。チオール化合物の濃度は、酸化型ホモシステインを還元型ホモシステインに変換できる範囲であればいずれでもよく、好ましくはチオール基として0.1mM以上、より好ましくは1mM以上の濃度であればよい。
【0024】
メチル供与体としては、例えば、D−メチオニンメチルスルホニウム、S−アデノシル−D−メチオニン、D−エチオニンメチルスルホニウムなどが挙げられる。好ましくは、D−メチオニンメチルスルホニウムを使用する。
【0025】
メチル転移酵素としては、D−メチオニンメチルスルホニウムおよびL−ホモシステインに作用し、D−メチオニンおよびL−メチオニンの生成を触媒するものであればどのようなものでもよく、例えば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.10]、5−メチルテトラヒドロ葉酸−ホモシステイン S−メチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.13]、5−メチルテトラヒドロプテロイルトリグルタミン酸−ホモシステイン S−メチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.14]が挙げられる。好ましくは、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ[EC 2.1.1.10]が使用される。ホモシステインメチルトランスフェラーゼの系統名は、S−アデノシル−L−メチオニン:L−ホモシステイン S−メチルトランスフェラーゼであり、メチル受容体のL−ホモシステインおよびメチル供与体のS−アデノシル−L−メチオニンを基質とし、L−メチオニンおよびS−アデノシル−L−ホモシステインを産生する酵素である(酵素ハンドブック、朝倉書店、1982年)。また、S.K.Shapiroにより、この酵素は、メチル供与体として、S−メチル−L−メチオニン(L−メチオニンメチルスルホニウム)、またはS−アデノシル−D−メチオニンも利用することが報告されている(Biochim. Biophys. Acta, 29, 405-409, 1958)。
【0026】
使用するホモシステインメチルトランスフェラーゼは、D−メチオニンメチルスルホニウムをメチル供与体とするものであればどのような由来のものでも使用できる。例えば、細菌、酵母、ラット等に由来する酵素が使用できる。
【0027】
D−メチオニンの定量は、D−アミノ酸オキシダーゼ[EC 1.4.3.3]を利用して行う。D−アミノ酸の1つであるD−メチオニンメチルスルホニウムは、ほとんどD−アミノ酸オキシダーゼの基質にならないため、D−アミノ酸変換酵素がD−メチオニンメチルスルホニウムには作用しないか、または作用してもD−メチオニンに対するよりも反応性が十分に低いものであれば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼでの反応後に残存しているD−メチオニンメチルスルホニウムを反応系外に除くことなく、生成したD−メチオニンを測定することができる。
【0028】
使用するD−アミノ酸オキシダーゼは、どのような由来のものでも使用できる。例えば、細菌、無脊椎動物、脊椎動物等に由来する酵素が使用できる。ブタ腎臓由来の酵素が最も好適である。
【0029】
D−メチオニンにD−アミノ酸オキシダーゼを作用させると、過酸化水素が生成するため、これをSH試薬の存在下で通常用いられる酸化系発色剤に導き比色定量することができる。発生した過酸化水素は、パーオキシダーゼにより通常の酸化系発色剤を発色させることができる。この発色方法は、臨床化学の分野では一般的に用いられる既知の方法である。しかし、第一工程で用いるチオール化合物の還元作用によりその発色が著しく妨害されるため、第二工程では、チオール化合物のブロック剤であるSH試薬の添加が必須となる。したがって、第二工程におけるSH試薬の添加は、第一工程で用いたS−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素が第二工程において逆反応(加水分解反応)を触媒することを阻止すると共に、チオール化合物による酸化系発色剤の発色妨害を防止する効果を有する。
【0030】
SH試薬としては、生化学辞典(第3版、p.182、東京化学同人、1998年)にも記載されるとおり、エルマン試薬などの酸化剤、p−メクリル安息香酸などのメルカプト形成剤、ヨード酢酸、N−エチルマレイミドなどのアルキル化剤が挙げられる。好ましくはアルキル化剤を、さらに好ましくはマレイミド化合物を、最も好ましくはN−エチルマレイミドを使用する。
【0031】
第二工程におけるSH試薬の濃度は、検体の還元処理に用いたチオール化合物のチオール基を酸化系発色剤による定量が妨害されない程度にブロックできる範囲であればいずれでもよく、好ましくは0.1mMから100mMの範囲で使用できる。より好ましくは1mMから30mMで用いられるが、S−アデノシル−L−ホモシステイン加水分解酵素を阻害する効果も発揮させるために、用いたチオール化合物に比べて過剰量のSH試薬を使用することが望ましい。
【0032】
酸化系発色剤としては、種々のトリンダー試薬をカップラー試薬と組み合わせて利用できる。この方法はトリンダー法とも呼ばれ、臨床化学分析の分野では一般に用いられており、ここでは詳細に説明しないが、好ましくはカップラー試薬として4−アミノアンチピリンを、トリンダー試薬としてADOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン]、DAOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン]、HDAOS[N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン]、MAOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン」、TOOS[N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン]等が用いられる。また、カップラー試薬を必要としない、o−トリジン、o−ジアニシジン、DA−67[10−(カルボシキメチルアミノカルボニル)−3,7−ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム、和光純薬工業(株)製]、TPM−PS[N,N,N',N',N",N"−ヘキサ(3−スルホプロピル)−4,4',4"−トリアミノトリフェニルメタン6ナトリウム塩、同仁化学研究所]などのロイコ型発色試薬も同様に用いることができる。特に、DA−67およびTPM−PSは、上記トリンダー試薬と比べてモル吸光係数が大きいため、より感度よく測定することができる。
【0033】
本発明のホモシステイン測定用キットは、(1)ホモシステインを還元するためのチオール化合物、メチル転移酵素(好ましくは、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ)、およびメチル供与体(好ましくは、D−メチオニンメチルスルホニウム)を含有する試薬、および(2)生成したD−メチオニンを測定するためのD−アミノ酸オキシダーゼおよびジチオジニコチン酸を含むD−アミノ酸測定用試薬を含む。好ましくは、(2)のD−アミノ酸測定用試薬は、陰イオン界面活性剤も含む。(2)のD−アミノ酸測定用試薬は、さらに、SH試薬(好ましくは、N−エチルマレイミド)、パーオキシダーゼ、および酸化系発色剤を含むことが好ましい。なお、酸化系発色試薬は、(1)の試薬に含まれていてもよい。
【0034】
【実施例】
実施例1:D−アミノ酸オキシダーゼおよびホモシステイン測定試薬に対するジチオジニコチン酸(0.5mM)の安定化効果
150mM 2−モルホリノエタンスルホン酸 (pH 6.0)、20mM N−エチルマレイミド、4U/mL ブタ腎臓由来D−アミノ酸オキシダーゼ、5.5U/mL パーオキシダーゼ、0.05% トリトンX-100を含有する液と、さらにこの液に被検物質6,6'−ジチオジニコチン酸(DTNA)、ニコチン酸(NA)、もしくは安息香酸(BA)をそれぞれ0.5mM含有する液とを調製した。調製直後および7℃で3日間および7日間保存後のD−アミノ酸オキシダーゼ(DAO)活性をそれぞれ測定し、その残存活性を算出した(図1)。DAO活性は、日立7170自動分析装置を用いて、次のようにして測定した。調製直後または保存後の液5μLに、120mM ビシン(pH 8)、1mM TOOS、および1.5mM FADを含む第1試薬を180μL添加し、37℃で約5分間反応させた。続いて、120mM ビシン(pH 8)、3mM 4−アミノアンチピリン、13.2U/mL パーオキシダーゼ、および64mM D−メチオニンを含む第2試薬を60μL添加し、37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長546nm、副波長700nm)変化を求めた。
【0035】
同時にこれらの液を、ホモシステイン(Hcy)測定の第2試薬として用いて、50μM ホモシステイン(Hcy)を含む試料を、日立7170自動分析装置を用いて測定した(図2)。すなわち、25μM Hcyを含む試料15μLに、150mM ビシン、100U/L ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、5.6mM ジチオスレイトール、0.06mM D−メチオニンメチルスルホニウム、1mM 臭化亜鉛、および0.3mM DA−67を含む第1試薬を180μL添加し、37℃で約5分間反応させた。次いで、これに上記第2試薬を120μL添加し、さらに37℃で約5分間反応させた。測定ポイント16から34における吸光度(主波長660nm、副波長700nm)変化を求めた。
【0036】
図1は、試薬調製直後の活性を100として、7℃で3日間および7日間保存後の相対活性を示した。DTNA、NA、またはBAを含有するいずれの液においても、無添加の場合よりもDAOの活性が高かった。
【0037】
図2は、調製直後の試薬(添加剤なし)を用いて試料中のHcyを測定したときの感度を100として、7℃で3日間および7日間保存後の試薬を用いて測定したときの相対感度を示した。DTNAを添加した試薬では、3日間保存後でも100%の感度を保持した。一方、BAはそのDAO阻害作用により調製直後から測定感度が非常に悪かった。また、DTNAには及ばないものの、NAも測定感度の低下が少なかった。
【0038】
実施例2:DTNAおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のDAO安定化効果
150mM N−(2−アセタミド)イミノジ酢酸 (pH 6.0)、23mM N−エチルマレイミド、4U/mL ブタ腎臓由来DAO、5.5U/mL パーオキシダーゼ、および0.05% トリトンX-100を含むA液、A液中の0.05% トリトンX-100の代わりに0.05% ハイテノール18Eを含むB液、ならびにB液にさらに0.8mM DTNAを含むC液を調製し、これらのDAO活性を測定した。次に、25℃で1日間および9日間保存後、再びDAO活性を測定し、その残存活性を算出した(図3)。
【0039】
A液は保存中に析出物が認められたが、ハイテノール18Eを含むB液およびC液は澄明であった。また、図3に示すようにハイテノール18Eの方がトリトンX-100よりもわずかながらDAO安定化効果が認められた。さらに、DAOは、DTNAにより顕著に安定化されることが明らかとなった。
【0040】
実施例3:DAOおよびHcy測定試薬に対するDTNA(0.8mM)の安定化効果
150mM 2−モルホリノエタンスルホン酸 (pH 6.0)、23mM N−エチルマレイミド、4U/mL ブタ腎臓由来DAO、5.5U/mL パーオキシダーゼ、および0.05% ハイテノール18Eを含有する液と、さらにこの液に0.8mM DTNA、1.3mM NA、0.8mM 2,2'−ジチオジ安息香酸(DTBA)、もしくは0.1mM BAを含有する液を調製した。調製直後および7℃で6日間保存後のDAO活性を測定し、その残存活性を算出した(図4)。同時にこれらの液をHcy測定の第2試薬として用いて、50μM Hcyを含む試料を測定した(図5)。
【0041】
図4は、試薬調製直後のDAO活性を100として、7℃で6日間保存後の相対活性を示した。添加剤なしの試薬では残存活性が約10%にまで低下するのに対して、DTNAおよびBAでは約80%、NAおよびDTBAでは約60%の活性が残存し、DAO安定化効果が認められた。
【0042】
図5は、添加剤なし試薬の調製直後のHcy測定感度を100として、7℃で6日間保存後の試薬を用いて測定したときの相対感度を示した。添加剤なし試薬では7℃で6日間保存後に感度が50%以下に低下するのに対して、DTNAを添加した場合には100%の感度を保持していた。一方、NA、DTBA、およびBAの場合は、それら自身の強い阻害作用のため、調製直後においても測定感度が無添加試薬での感度に対して約40%であった。
【0043】
実施例4:凍結乾燥製剤に対するDTNAの安定化効果
200mM クエン酸緩衝液(pH 5.6)、16U/mL ブタ腎臓由来DAO、22U/mL パーオキシダーゼ、および1%ラクトースを含有する溶液と、さらにこの液に被検物質DTNAを1.6mM含有する溶液を調製し、それぞれ1.5mLずつを凍結乾燥させた。各凍結乾燥製剤を、25mM N−エチルマレイミドを含む溶解液で復水し、それぞれのDAO活性を測定した。また、凍結乾燥製剤の原液に用いた緩衝液の代わりに50mM リン酸緩衝液(pH 7.0)を、そして上記溶解液の代わりに25mM N−エチルマレイミドを含む50mM クエン酸緩衝液(pH 5.6)を用いること以外は、上記と同様に操作した凍結乾燥製剤についても検討した(図6)。
【0044】
図6からわかるように、いずれの凍結乾燥製剤でも、DTNAはDAOの失活を防ぎ得ることが明らかとなった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、D−アミノ酸オキシダーゼを安定化させることができる。そのため、従来品よりも高い酵素活性を有するD−アミノ酸オキシダーゼを含有する試薬や製剤を得ることができる。また、D−アミノ酸オキシダーゼを利用する測定において、より高い感度での測定も可能である。さらに、D−アミノ酸オキシダーゼを含む試薬や製剤の保存性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の添加剤(DTNA、NA、またはBA)を含むD−アミノ酸オキシダーゼ(DAO)含有液中の残存DAO活性の経時変化を示すグラフである。
【図2】種々の添加剤(DTNA、NA、またはBA)を含むホモシステイン(Hcy)測定試薬によるHcy測定感度の経時変化を示すグラフである。
【図3】界面活性剤および/またはDTNAを含むD−アミノ酸オキシダーゼ(DAO)含有液中の1日間および9日間保存後の残存DAO活性を示すグラフである。
【図4】種々の添加剤(DTNA、NA、DTBA、またはBA)を含むD−アミノ酸オキシダーゼ(DAO)含有液中の6日間保存後の残存DAO活性を示すグラフである。
【図5】種々の添加剤(DTNA、NA、DTBA、またはBA)を含むHcy測定試薬の調製直後および6日間保存後の、Hcy測定時の相対感度を示すグラフである。
【図6】DTNAを含むDAO凍結乾燥製剤中のDAO相対活性を示すグラフである。
Claims (8)
- D−アミノ酸オキシダーゼとジチオジニコチン酸とを液中で共存させる工程を含む、D−アミノ酸オキシダーゼの安定化方法。
- 前記液が、陰イオン界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記陰イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンジアルキルアリルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルケニルアリルエーテル硫酸、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載の方法。
- 前記D−アミノ酸オキシダーゼがブタ腎臓由来のD−アミノ酸オキシダーゼである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- ジチオジニコチン酸を含む、D−アミノ酸オキシダーゼ含有液。
- さらに陰イオン界面活性剤を含む、請求項5に記載のD−アミノ酸オキシダーゼ含有液。
- 請求項5または6に記載のD−アミノ酸オキシダーゼ含有液を含む、D−アミノ酸測定用試薬。
- チオール化合物、ホモシステインメチルトランスフェラーゼ、およびD−メチオニンメチルスルホニウムを含有する試薬、および請求項7に記載のD−アミノ酸測定用試薬を含む、ホモシステイン測定用キット。
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