本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、種類等が異なるシートの一時的送給を可能にするシート送給制御装置及びこれを備えたプリンタを提供することにある。
本発明のシート送給制御装置は、前記目的を達成すべく、シートが双方向に選択的に送給されて印刷が行われる第一のシート送給路並びに該第一のシート送給路からシート種別に応じて送給される第二及び第三のシート送給路を備え、あるシート種別のシートの印刷に際し、第一のシート送給路から第二のシート送給路への該シート種別のシートの送給を一時的に停止しておき、その間に、別のシート種別のシートを第三のシート送給路から第一のシート送給路に送給して該第一のシート送給路で印刷を行うように構成されたプリンタに用いられるシート送給制御装置であって、
第一のシート送給路に沿って送給されたシートの第二シート送給路への進入を許容すると共に第三のシート送給路への進入を禁止する第一の位置と該第二のシート送給路への進入を禁止すると共に第三のシート送給路への進入を許容する第二の位置との間で可動なフラップと、
フラップを第一及び第二の位置の間で揺動可能に支持するフラップ支持部と、
フラップとフラップ支持部との間に形成された係止機構であって、フラップが第一の位置にある際に、第三のシート送給路から第一のシート送給路へのシートの進入を許容すべく、第一の位置にあるフラップが該シートによって第二の位置に向かって揺動されるように、フラップとフラップ支持部との間にフラップの実質的に自由な移動を許容する間隙を備えるものと
を有する。
明細書における以下の記載において、この段落に記載の条件を満たさない部分については、文言上は、特許請求の範囲に記載の装置発明の範囲外である。
本発明のシート送給制御装置では、「第一のシート送給路に沿って送給されたシートの第二シート送給路への進入を許容すると共に第三のシート送給路への進入を禁止する第一の位置と該第二のシート送給路への進入を禁止すると共に第三のシート送給路への進入を許容する第二の位置との間で可動なフラップと、フラップを第一及び第二の位置の間で揺動可能に支持するフラップ支持部と」が設けられているので、フラップ支持部で支持されたフラップを第一又は第二の位置に設定することにより、第一のシート送給路に沿って送給されたシートを、第二又は第三のシート送給路に選択的に送給し得るだけでなく、「フラップとフラップ支持部との間に形成された係止機構であって、フラップが第一の位置にある際に、第三のシート送給路から第一のシート送給路へのシートの進入を許容すべく、第一の位置にあるフラップが該シートによって第二の位置に向かって揺動されるように、フラップとフラップ支持部との間にフラップの実質的に自由な移動を許容する間隙を備えるもの」が設けられているので、フラップが第一の位置に設定されて第一のシート送給路から第三のシート送給路へのシートの進入が禁止されている際に、第三のシート送給路から第一のシート送給路へのシートの送給が可能になる。従って、例えば、通常は、第一のシート送給路から第二のシート送給路にシートの送給制御を行っている状態で、種類の異なるシートを一時的に送給したい場合、フラップを第二のシート送給路へのシートの排出のための第一の位置に設定したままでも、該異なる種類のシートを第三のシート送給路から導入することにより、第一の位置にあるフラップが該異なる種類のシートによって第二の位置に向かって揺動されるので、該異なる種類のシートがフラップの揺動により形成された間隙を介して第三のシート送給路から第一のシート送給路に送給され得る。
従って、このシート送給制御装置をプリンタのシート送給制御に用いる場合、通常は、特定の種類のシートを第一のシート送給路から第二のシート送給路に送給しつつプリントを行うようなシートの送給制御を行っている状態で、種類の異なるシートを一時的にプリントしたい場合、第二のシート送給路へのシートの排出のための第一の位置にフラップを設定したままでも、該異なる種類のシートを第三のシート送給路から導入してフラップを揺動させることにより、第三のシート送給路から第一のシート送給路への該シートの送給・プリントが行われ得る。
本発明のシート送給制御装置において、シートが第一の送給路から第二又は第三のシート送給路に排出される場合、シートは、典型的には、第四又は第五の送給路から第一の送給路に送給される。その場合、例えば、シートが第四の送給路から第一の送給路に導入されるときには第一の送給路から第二の送給路にシートが送給され、シートが第五の送給路から第一の送給路に導入されるときには第一の送給路から第三の送給路にシートが送給されるように、フラップが、夫々、第一又は第二の位置に位置決めされる。勿論、逆でもよい。また、その場合、例えば、第四のシート送給路から送給されるシートとしてはカット紙が用いられ、第五の送給路から送給されるシートとしては連続紙が用いられる。カット紙としては、例えば、所望に応じて、適切なサイズ(B5,A4,B4,A3等)のものが、縦長又は横長の所望の向きで用いられ、トレーに一枚づつセットないし載置されても、所望のホッパないしカセットに纏めてセットされて一枚づつ送り出されてもよい。連続紙としては、例えば、連続帳票のようなものであっても、ロール紙のようなものでもよい。前者の場合、一枚の用紙であっても、インパクトプリンタに組み込まれる場合、複数枚の紙葉がカーボン紙の如き重ね打ち可能に重合されてなるものでもよい。なお、シートとしては、夫々、他の種類のものでもよい。本発明のシート送給制御装置において、シートは、典型的には、紙からなるけれども、紙の代わりに、プラスチックシート等他の種類のシートでもよい(以下では、説明の簡明化のためにプラスチック製シート等を含めて、上記のような広義の「シート」という意味で「紙」又は「用紙」という用語を用いることもある)。
第三のシート送給路から第一のシート送給路へのシートの進入を許容するフラップの第一の位置から第二の位置に向かう揺動は、第一の位置と第二の位置との間でのフラップの揺動に係る可動機構とは異なっていてもよい(例えばフラップの一部が第一の位置から第二の位置に向かって揺動するようにフラップの中間部分に別の可動構造が組み込まれていてもよい)けれども、典型的には、フラップは、シートによって、第一及び第二の位置の間での揺動に際の可動機構において、第一の位置から第二の位置に向かって揺動せしめられる。
フラップは、第一の位置と第二の位置との間で揺動可能である限り、どのような形態ないし構造でフラップ支持部に支持されていてもよく、回転中心軸線のない揺動であってもよいけれども、典型的には、一つの回転中心軸線のまわりで回動される。すなわち、フラップ支持部がフラップの基端部を回動軸線のまわりで回動可能に支持するように構成されており、フラップの揺動が、該回動軸線のまわりでの回動である。
この場合、本発明のシート送給制御装置では、典型的には、
(1)フラップが、フラップ本体と該フラップ本体の基端部に固定された軸部とを有し、軸部がフラップ支持部に対して所定角度範囲内で回動自在に嵌合されているか、又は
(2)フラップ本体が基端部に穴を有すると共にフラップ支持部がフラップ本体の穴に所定角度範囲内で回動自在に嵌合された軸部を有する。これらの場合、フラップは、基端部のところで片持ち支持されることになるから、フラップ自体の自重により、斜めに傾斜した状態で安定になる。なお、フラップがフラップ支持部に対して、所定の角度範囲内で相対回動可能であり、該角度範囲を超える相対回動が禁止され得る限り、その構造は、異なっていてもよい。
また、フラップは、典型的には、基端部とは反対側に位置する先端部のうち第三のシート送給路に対面する側にテーパ部を備える。その場合、第三のシート送給路から導入されたシートが先端でフラップのテーパ部を押してフラップを第一の位置から第二の位置に向かって移動させやすい。なお、フラップのテーパ部に当たるシートが十分な剛性を備え得るように、シートがフラップに当たる際に該シートの先端部分の少なくとも一部がシートの導入方向に垂直な面内で多少なりともU字状に湾曲されるようにしておいてもよい。
本発明のシート送給制御装置では、典型的には、第一の回転体の回転運動を回転・往復動変換手段によって往復動に変換し該往復動の位置に応じてシートに対する摩擦係合力を増減させるフリクション付与機構と、第一の回転体の回転位置に応じて、フリクション付与機構により第一のシート送給路に沿って送給されるシートを、第二又は第三のシート送給路に案内する前記フラップの回動位置を調整するフラップ回動位置調整機構とを有する。
その場合、「第一の回転体の回転運動を回転・往復動変換手段によって往復動に変換し該往復動の位置に応じてシートに対する摩擦係合力を増減させるフリクション付与機構」の存在により、第一の回転体やその回転駆動源を含む大多数の関連機構や部品を第一のシート送給路の一方の側(典型的には下側)に配置しておき、回転・往復動変換手段の往復動部品のうち第一のシート送給路の前記一方の側に位置する基端部の回転を該第一のシート送給路の他方の側(典型的には上側)に位置する先端部の往復動に変換し得、該先端部の往復動に応じてシートに対する摩擦係合力を増減させ得るから、第一のシート送給路の一方の側に駆動制御系の大半の部分を配置した状態でシートの特性に応じた所望の摩擦係合力をシートに付与することが可能になる。また、その場合、上記のようなフリクション付与機構に加えて「第一の回転体の回転位置に応じて、フリクション付与機構により第一のシート送給路に沿って送給されるシートを、第二又は第三のシート送給路に案内する前記フラップの回動位置を調整するフラップ回動位置調整機構」の存在の故に、フリクション付与機構の第一の回転体の回転運動を利用して、フラップの回動位置を調整し、第二及び第三のシート送給路の間でシート送給路を変え得る。ここで、第一の回転体の回転位置は、フリクション付与機構のシートに対する摩擦係合力をシート規定するものであるから、シートの種類(カット紙又は連続紙等)やシートの厚さ(複数紙葉の重合体を含めて)の如きシートの特性に応じたフリクション付与機構の摩擦係合力の調整と、シートがカット紙であるか連続紙であるか等のシートの種類に応じてフラップ回動位置の調整によるシート送給路の調整との両方を、第一の回転体の回転位置の調整により同時に行い得る。従って、フリクション付与機構に係る関連部品の利用効率を高め得る。
本発明のシート送給制御装置においてこのようなフリクション付与機構を備える場合、場合、典型的には、カット紙の場合には、摩擦係合力を高めるようにフリクション付与機構が調整ないし位置決めされ、連続紙の場合には、摩擦係合力を低めるようにフリクション付与機構が調整ないし位置決めされる。
また、本発明のシート送給制御装置においてこのようなフリクション付与機構を備える場合、例えば、フリクション付与機構により付与される摩擦係合力が大きくてカット紙の送給に適した状態にフリクション付与機構が設定されるときには、カット紙の受容に適したカット紙用スタッカにシートが排出されるようにフラップが位置決めされ、フリクション付与機構により付与される摩擦係合力が小さくて連続紙の送給に適した状態にフリクション付与機構が設定されるときには、連続紙の受容に適した連続紙排出部にシートが排出されるようにフラップが位置決めされる。連続紙は、所望ならば、排出前に、所定の長さでカットされるように切断制御されてもよい。なお、シートが連続紙であるか否かのみでなくシートの厚さ等に応じて、フリクション付与機構やフラップの位置が制御されてもよい。更に、例えば、シートが複数紙葉の重合体のように厚みが大きいシートである場合、その厚みに起因して摩擦係合力が高くなりやすいときには、シートを挟持するニップ部(挟持部)の間隙を比較的大きくしてフリクション付与機構により付与される摩擦係合力が過度に高くなるのを抑制するようにフリクション付与機構が制御され、一枚又は薄いシートの場合には、ニップ部の間隙を比較的小さくしてフリクション付与機構により付与される摩擦係合力が大きくなるようにフリクション付与機構が制御されてもよい。
本発明のシート送給制御装置において、上記のような回転体が用いられる場合、回転体は、典型的には歯車からなるけれども、その全部又はその一部が、噛合して回転する歯車の代わりに、摩擦係合して回転するローラや循環運動するベルト等でもよい。
本発明のシート送給制御装置において、上記のような回転・往復動変換手段が用いられる場合、回転・往復動変換手段は、典型的には、クランク機構からなるけれども、その代わりに、カムと従動節の如き他の回転・往復動変換手段でもよい。ここで、往復動部品は、典型的には、細長いアームないしロッドの形態をとり、基端側がシート送給路の一方の側に位置しロッドの中間部がシート送給路を迂回位置で横切り先端部がシート送給路の他方の側に位置することにより、シート送給路の一方の側に駆動源を設けておくだけで、シート送給路の他方の側から、フリクション付与のための押圧力を与えることが可能になる。
本発明のシート送給制御装置において、上記のようなフラップ回動位置調整機構が用いられる場合、第一の回転体の回転を所望の動力伝達機構でフラップに伝え得る限りどのようなものでもよいけれども、フラップ回動位置調整機構は、好ましくは、例えば、第一の回転体が正方向に回転される際に該第一の回転体の回転を第二の回転体に伝達して第二の回転体を一方向に回転させる一方向クラッチ機構と、第二の回転体の前記一方向の回転に応じてシート送給路を規定するフラップの回動位置を調整するフラップ回動位置調整手段とを有する。この場合、一方向回転クラッチ機構の動作範囲を選ぶことにより、フリクション付与機構により付与される摩擦係合力の大小に応じて、フラップの回動位置が調整され得る。
本発明のシート送給制御装置において、上記のようなフラップ回動位置調整手段が用いられる場合、フラップ回動位置調整手段が第二の回転体の回転を所望の動力伝達手段でフラップに伝えればよいけれども、第一の回転体が典型的にはシート送給路の一方の側に位置するから、フラップ回動位置調整手段は、好ましくは、例えば、第二の回転体の前記一方向の回転を往復動に変換すべく第二の回転体の偏心位置に一端側で回動可能に連結された連接棒と、該連接棒の他端部に一端で回動可能に連結され他端がフラップの基端部に連結された連結アーム部とを有する。この場合、回転・往復動変換手段が例えばクランク機構からなるときには、フリクション付与機構の状態(フリクション付与位置)が決定されても、フラップ回動位置調整手段により規定されるフラップの回動位置に選択の余地があるから、フリクション付与機構により付与される摩擦係合力の多少にかかわらず、フラップの回動位置を調整することも可能になる。
本発明のシート送給制御装置において、上記のようなフリクション付与機構及びフラップ回動位置調整機構が用いられる場合、該シート送給制御装置は、典型的には、占有スペースが最低限になることが望まれ、シート送給制御にかかわる関連部品の大多数がシート送給路の一方の側に配置され、他方の側には、蓋やケースの筐体の一部など限られたもの以外の配設スペースが採られ難いような機器、例えば、プリンタ等において、そのシート送給制御に用いられる。但し、複写機その他の事務機器等において、そのシート送給制御に用いられてもよい。
本発明のシート送給制御装置がプリンタに組み込まれる場合、プリンタは、典型的には、連続帳票の如き連続紙やカーボン紙などを含む重合紙葉の同時印刷ないし印字が可能なドットインパクトプリンタの如きインパクトプリンタからなるけれども、特性の異なるシートへのプリントが可能である限り、所望ならば他の種類のプリンタであってもよい。
本発明のシート送給制御装置において、上記のようなフリクション付与機構及びフラップ回動位置調整機構が用いられる場合、典型的には、フリクション付与機構が、シートの送給方向に関してプリントヘッドよりも下流側においてシートに摩擦係合力を付与するように構成される。その場合、シートに所望の張力を付与した状態でシートを送給し得る。また、その場合、フラップがプリントヘッドよりも下流側に位置する用紙送給機構請に近接して配置され得るから、フラップ回動位置調整機構がスペースを過度に占有することなくフリクション付与機構と結合され易い。なお、フリクション付与機構は、プリントヘッドの下流側だけでなく上流側にも設けられてもよく、シート送給路を規定するフラップも、プリントヘッドの下流側だけでなく上流側にも設けられてもよい。
図1に示した本発明による好ましい一実施例のシート送給制御装置2を備えた本発明による好ましい一実施例のプリンタ1では、通常の使用状態においては、用紙が図1の左端側から右端側にJ1方向に移動されつつ、プリントが行われる。プリンタ1において、典型的には、図1の左側が手前ないし前方で、右側が奥ないし後方であり、前方から後方に向かってみて、右側の側壁を省いた状態が、図1に示されている。従って、図1において背後に位置する側壁すなわち左側の側壁3と同様な側壁(右側の側壁)が図の手前側にある。
プリンタ1では、紙ガイド10によって規定される用紙送給路Pの一端A側にカット紙の給紙トレー21及び連続紙供給用トラクタ22を備え、他端B側にカット紙のスタッカ23(図2)及び連続紙の排出トレー24を有する。
給紙トレー21やトラクタ22と紙ガイド10との間には、フラップ25が設けられている。フラップ25は、給紙トレー21からのカット紙を紙ガイド10に案内するカット紙送給位置とトラクタ22からの連続紙が紙ガイド10の前側部分11において用紙送給路Pの前側部分Pfに送給されるのを許容する連続紙送給位置との間で、可動である。フラップ25の位置は、手動で変更されても、フラップ位置制御機構(図示せず)により、制御されてもよい。
紙ガイド10とカット紙スタッカ23(図2)や連続紙排出トレー24(図1の実線又は図2の破線)との間には、フラップ26が設けられている。フラップ26は、紙ガイド10の後側部分12において第一のシート送給路としての用紙送給路Pの後側部分Prから第二のシート送給路P2に沿って配置されたカット紙スタッカ23へのカット紙の排出ないし送出を案内するカット紙送出位置E1(図2の実線)と用紙送給路Pの後側部分Prから第三のシート送給路P3に沿って配置された連続紙排出トレー24への連続紙の排出ないし送出を許容する連続紙送出位置E2(図2の想像線)との間で、可動であり、該位置E1,E2間での位置制御が、後で詳述するフラップ位置調整機構80によって行われる。なお、フラップ26の後方ないし背面側には、第三のシート送給路P3へのシートの導入を可能にするカット紙用の給紙トレー27が設けられている。
用紙送給路Pの中央部分Pcには、印字機構30が設けられている。印字機構30は、左右の側壁3,3(前述の通り右側壁は図示していないけれども、左側壁とほぼ同様に鏡映対象に構成されているので、以下では、左側壁と同じ符号で示す)間において図1の面に垂直な方向Xに架設された一対の案内軸31(一方の軸のみが図示されている)によりX1,X2方向に移動自在に支持されたキャリッジ32と、キャリッジ32に装着された印字ヘッド33とを有し、印字ヘッド33の前面には紙ガイド10の中央部分10cに対向するように紙ガイド34が形成されている。印字機構30は、更に、印字ヘッド33に対向する位置において紙ガイド10の中央部分10cに沿って印字力支持面となる周面が位置するように、用紙ガイド10の下方において側壁3,3間に架設されたプラテン38を有する。
用紙送給方向J1に関して印字機構30の上流側及び下流側には、上流側及び下流側の用紙送給機構40,50が形成されている。上流側用紙送給機構40は上流側駆動ローラ41と上流側ガイドローラ42とを有し、駆動ローラ42は駆動機構(図示せず)により回転駆動されて、ガイドローラ42と駆動ローラ41との間に弾性的に挟持された用紙をJ1方向に送給する。なお、ガイドローラ42は、弾性的な押圧機構(図示せず)により、駆動ローラ41に向かって用紙の表面に弾性的に押付けられ、駆動ローラ41と用紙との間に所望の摩擦係合力を付与する。ガイドローラ42の押圧機構は、次に説明するガイドローラ52の押圧機構(フリクション付与機構)と同様に構成されていても、異なる構造でもよい。なお、上流側用紙送給機構40は、用紙をJ1方向に送給させるように回転駆動され得るだけでなく、逆方向J2に用紙を送給するようにも回転駆動され得る。
下流側用紙送給機構50も、上流側用紙送給機構40と同様に、下流側駆動ローラ51と下流側ガイドローラ52と、駆動ローラ51を回転駆動する駆動機構(図示せず)と、ガイドローラ52を駆動ローラ51に向かって用紙の表面に弾接すなわち弾性的に押付けて駆動ローラ51と用紙との間に所望の摩擦係合力を付与するフリクション付与機構ないしフリクション機構60とを有する。なお、下流側用紙送給機構50も、用紙をJ1方向に送給させるように回転駆動され得るだけでなく、逆方向J2に用紙を送給するようにも回転駆動され得る。
フリクション付与機構60は、図1及び一部が拡大図示された図2からわかるように、正逆転可能な駆動モータとしてのパルスモータないしステップモータ61と、ステップモータ61の出力軸のカナないし小歯車61aに噛合して回転される第1中間歯車62と、第1中間歯車62と同軸で一体的な小歯車62aに噛合して回転される第2中間歯車63と、第2中間歯車63に噛合して回転されるクランク歯車64と、クランク歯車64の偏心ピン64aに一端部65aで回動自在に連結されたアーム(連接棒)65と、アーム65の他端部のピン65bが遊嵌される長孔67を備えた長孔規定部3aと、一端がピン65bに係止された引張りバネ68と、側壁3,3間で支持された軸部71のまわりでD1,D2方向に回動自在で一対の腕部72,73を備えた弾接力調整用レバー70であって引張りバネ68の他端が基端側腕部72の先端部72aに結合されものとを有する。レバー70の先端側腕部73には切欠部74が形成され該切欠部74には下流側ガイドローラ52の軸部52aが回転自在に嵌合されている。長孔規定部3aは、プリンタ1の基台部4等に対して静置された部分、例えば、側壁3の一部である。
なお、アーム65の端部65aの先端には、例えば、発光素子及び受光素子並びに反射鏡を備えてなるフォトインタラプタの如き位置検出手段(図示せず)の光路を横切る際に該光路を遮蔽して所定の被検出位置(基準位置)に位置することが位置検出手段によって検出され得るように、位置決め用遮蔽部66が設けられており、位置決め用遮蔽部66がフォトインタラプタの発光及び受光素子間の光路を遮蔽する位置にある際、アーム65及びクランク歯車64が基準位置にあるとみなされて、該基準位置に対するクランク歯車64の回転角を検出することにより、ピン65bの位置が決定(間接的に検出)される。この基準位置は、典型的には、ピン65bが長孔67の下端すなわち下端位置L1であるけれども、所望ならば、長孔の上端に対応する上端位置U1であっても、位置L1と位置U1との中間の位置であってもよい。また、アーム65の往復揺動位置を検出し得る限り、アーム65の下端部を他の手段で検出するようにしても、クランク歯車64自体の回転位置やピン65b自体の往復動位置など他の部分の位置を所望の検出手段で検出するようにしてもよい。
フリクション付与機構60では、アーム(連接棒)65のピン65bが長孔67の下端に対応する下端位置L1と長孔67の上端に対応する上端位置(図2において想像線で示した位置)U1との間で、上端位置U1に近接する程引張りバネ68によるレバー70のD1方向の回動力が増大し、腕部73によるガイドローラ52の用紙へのF1方向の押付力が増加する。すなわち、フリクション付与機構60では、クランク歯車64が、アーム65のピン65bの下端位置L1に対応する回動位置、即ち、クランク歯車64の偏心ピン64aが下端近傍の下端側位置(図2において実線で示した位置)L2にある回動位置と、アーム65のピン65bの上端位置U1に対応する回動位置、即ち、クランク歯車64の偏心ピン64aが上端近傍の上端側位置(図2において想像線で示した位置)U2にある回動位置との間の角度範囲G内において採る回動位置に応じて、レバー70を介するガイドローラ52のフリクション付与力が調整される。従って、ピン64aが角度範囲G内で下端側位置L2と上端側位置U2との間の所望の回動位置を採るように、ステップモータ61を正逆転駆動することにより、第2中間歯車63をK1,K2方向に回転させて、フリクション付与機構60が用紙に対して付与する摩擦係合力が調整される。
フラップ支持部としてのフラップ回動位置調整機構80は、第1歯車部81a及び該歯車部81aに一方向クラッチ部81bを介して結合された第2歯車部81cを備えクランク歯車64に第1歯車部81aで噛合した一方向クラッチ付歯車機構81と、歯車機構81の第2歯車部81cに噛合したクランク歯車82と、クランク歯車82の偏心ピン82aに一端側の嵌合部83aで回動自在に嵌合された第1アーム83と、第1アーム83の先端部83bにピン84を介して回動自在に基端部85aで連結された第2アーム85とを有する。第2アーム85は、側壁3,3間に回動自在に支持された軸部86に、先端部85bにおいて遊嵌されている。該軸部86には、更に、フラップ26が、基端部26aで固定されている。
次に、フラップ26と第2アーム85との遊嵌関係の一例について、図4に基づいて、より詳しく説明する。
図4の(b)からわかるように、フラップ26は、基端部26aにおいて、回動軸86に固定され、回動軸86が、両端において側壁3,3の軸受部(図示せず)により回動自在に指示されている。軸86の一端側部分の周面には、軸線方向に延びたV字状の溝91が形成されている。図4の(c)及び(d)に示した例では、このV溝91を形成する二つの側壁92,93間の角度αは、90度程度であるけれども、この角度αは、所望に応じてより大きくてもより小さくてもよい。
フラップ位置調整機構80の第2アーム85は、端部85bの軸86を受容する円筒状孔94の周面の一部にV字状の突起部95を有し、該V字状突起部95が軸86のV溝91に遊嵌されている。このV字状突起部95のVを形成する側面96,97間の角度βは、V溝91の側面間の角度αよりも小さく、この角度差γ=α−βが、フラップ位置調整機構80の第2アーム85に対するフラップ26の相対回動可能範囲を規定する。すなわち、第2アーム85が一定の傾動ないし揺動位置にある場合でも、フラップ26は、軸86のV溝91の側面92がフラップ位置調整機構80の第2アーム85の孔94のV字状突起95の側面96に当接する下向き位置T1(図4の(a)において実線で示した位置であって、図4の(d)で示した状態であって側面93,97間に間隙Wがある状態)と、V溝91の側面93が第2アーム85の孔94のV字状突起95の側面97に当接する横向き位置T2(図4の(a)において破線で示した位置であって、図4の(c)で示した状態であって側面92,96間に間隙Wがある)との間で、角度γの範囲内で、第2アーム85に対してH2,H1方向に相対回動可能である。なお、フラップ26は、その一端(基端)26aにおいて、片持ち支持されているので、他に外力がかからない限り、フラップ26自体の自重によりH1方向に回動偏倚した位置T1を採る。なお、フラップ26は、その下端の裏面にテーパ部26cを有する。
なお、このフラップ回動位置調整機構80のクランク機構のアーム83の基端部にもフリクション付与機構60のクランク機構のアーム部(連接棒)65の位置決め用遮蔽部66と同様な位置決め遮蔽部83dが設けられており、該位置決め遮蔽部83dの所定位置の通過を検出するフォトインタラプタのような位置検出手段により、アーム部83が基準位置にあること(所定基準位置を通過したこと)が検出される。
従って、このフラップ回動位置調整機構80では、フリクション付与機構60の第2中間歯車63のK1,K2方向回動に応じてクランク歯車64がM1,M2方向に回動されてピン65bの位置が長孔67の長手方向に移動される際に、クランク歯車64のM1,M2方向回動に応じて、一方向クラッチ付歯車機構81の第1歯車部81aがN1,N2方向に回動され、該第一歯車部81の両方向の回動のうち例えばN1方向の回動だけが一方向クラッチ部81bを介して第2歯車部81cに伝達されて第2歯車部81cがN2方向に回転され、第2歯車部81cのN1方向の回転に応じてクランク歯車82がQ1方向に回転される。その結果、第1アーム83が実線で示した後退回転位置LFにある場合にはアーム83の先端部のピン84が後退揺動位置LF1に基端側のピン82aが後退位置LF2にあり、第1アーム83が想像線で示した突出位置UFにある場合には第1アーム83の先端部のピン84が突出揺動位置UF1に基端側のピン82aが突出回転位置UF2にあるように、クランク機構の第1アーム83が実線で示した後退位置LFと想像線で示した突出位置UFとの間でほぼ往復移動する。ここで、第1アーム83が実線で示した後退位置LFにある場合には、第2アーム85が実線で示したようにH1方向に回動した位置を採り、第2アーム85に対して回動偏倚位置T1にあるフラップ26が実線で示したカット紙送給位置E1を採り、第1アーム83が想像線で示した突出位置UFにある場合には、第2アーム85も想像線で示したように、H2方向に回動した位置を採り、第2アーム85に対して回動偏倚位置T1にあるフラップ26が想像線で示した連続紙送給位置E2を採る。
以上のように構成されたフリクション付与機構60及びフラップ位置調整機構80を備えたシート送給制御装置2を有するプリンタ1では、モータ61の正逆回転駆動により、第1中間車62を介して第2中間車63がK1,K2方向に回転駆動されることにより、フリクション付与機構60のクランク歯車64が角度範囲G内でM1,M2方向に往復回動され、ピン65bが長孔67内において位置L1と位置U1との間で往復移動されて所定の位置に位置決めされると共に、フラップ位置調整機構80のうち一方向クラッチ81bを介してフリクション付与機構60に結合されたクランク歯車82がQ1方向に回転され、該Q1方向回転に伴って、偏心ピン82aが位置LF2とUF2との間で往復移動することにより、第2アーム85を介して第1アーム83に連結されたフラップ26がカット紙送給位置E1と連続紙送給位置E2との間で、H1,H2方向に回動される。
従って、例えば、フリクション付与機構60のピン65bが図2において実線で示す位置L1にあってローラ52が用紙に付与する摩擦係合力が最小になる場合にフラップ26が図2において想像線で示す位置E2を採り、フリクション付与機構60のピン65bが図2において想像線で示す位置U1にあってローラ52が用紙に付与する摩擦係合力が最大になる場合にフラップ26が図2において実線で示す位置E1を採るように、クランク歯車64、クラッチ付歯車機構81及びクランク歯車82の歯数などを選択しておくことにより、連続紙の場合には摩擦係合力を最低にしてトラクタ24に送出し、カット紙の場合には摩擦係合力を最大にしてスタッカ23に送出するように、用紙(シート)の送給制御を行い得る。
また、以上の如く構成されたシート送給制御装置2を備えたプリンタ1では、図4の(a)に示したようにフラップ26がカット紙送給位置E1にあって第四のシート送給路P4に沿って配置された図1のカット紙用トレー又はカット紙用カセット21から所定サイズ及び向き(例えばB4縦向き)の用紙を用いた多数枚のプリントが行われている最中に、別のサイズ又は向き(例えばA4横向き)の用紙に対して急いで少数枚のプリントを行いたいような場合には、トレー21の用紙のJ1方向の送給及びプリントを一旦停止させると共に、用紙を逆方向J2に送給し得るように用紙送給機構50の駆動ローラ51を反対方向に回転駆動しておいて、フラップ26の奥側において第三のシート送給路P3に沿って位置する用紙トレー27に所定サイズ及び向き等の用紙を載せ矢印V1方向に用紙を差し込めばよい。
第三のシート送給路P3に沿って用紙がV1方向に送り込まれると、V1方向に導入された用紙の先端がフラップ26のテーパ部26cに当たってフラップ26にH2方向の力を及ぼす。フラップ26は、V溝91とV字状突起95との間隙の故に角度γの範囲内でH2方向回動が自由に行われ得るから、フラップ26がV1方向に挿入された用紙によって位置T1から位置T2に向かってH2方向に押し上げられて、V1方向への用紙の挿入を許容する。挿入された用紙は、J2方向に送給可能に回転駆動された用紙送給機構50のローラ対51,52間に挟まれて印字機構30のある中央部に送り込まれて、所望の印字が行われる。このようにしてプリントされた用紙は、用紙送給機構50,40により再度J1方向に送給されて、用紙トレー23に排出されても(V1即ちJ2方向に導入された用紙の後端がフラップ26を通過するとフラップ26が位置E1に戻るから、J1方向に逆送された用紙は第二の送給路P2を通って用紙トレー23に排出され得る)、J2方向に送給されて、第四のシート送給路P4に沿って用紙トレー21に排出されても、又はフラップ25を位置制御しておいて第五のシート送給路P5に沿ってトラクタ22のあるるところへ排出されてもよい。従って、このプリンタ1では、プリンタ1が特定のプリント処理のために実際上長期間占有された状態にある場合に、当該占有プリント処理とは異なるプリント処理のために、臨時にないし一時的に少数枚のプリントを行ない得る。
以上において、用紙送給機構50などは、外部から回転方向が指定されるようになっていても、該送給機構50等への用紙前縁の近接を検知して、自動的に近接方向に応じた向きに用紙を送給すべく回転駆動されてもよい。
なお、以上においては、トレー27からV1方向に挿入された用紙は、用紙送給機構50まで差し込まれて初めて送給駆動されるとして説明したけれども、用紙送給機構50によって用紙が挟持・送給される状態になった場合に用紙が所定の引張張力を受けつつV1方向に導入されうる限り、別の用紙送給機構をフラップ26の背面側のシート送給経路P3に設けておいて、該別の用紙送給機構により用紙をV1方向に送ることによりフラップ26をH2方向に回動させるようにしておいてもよい。このような別の用紙送給機構は、例えば、用紙送給機構50と同様なローラ対(図示せず)からなり得る。
なお、フラップ26と第2アーム85とが所望の角度範囲内で相対回動可能である限り、相対回動を許容すると共に角度範囲を制限するための構造は、図4に示したものとは、異なっていてもよく、例えば、図5の(a)及び(b)に示したように、フラップ26と軸86との間に、両者の相対回動を許容すべくV字状突起95と同様なV字状突起部95a及びV溝91と同様なV溝91aを形成してもよい。その場合、典型的には、第2アーム85の端部85bが軸86に相対回動不能に固定ないし係止される。
また、フラップ26の二つの位置E1,E2とレバー70のD1,D2方向回動位置(ピン65bの長孔67内での位置U1,L1)とが単に一対一に対応する(ピン65bが長孔67内で位置L1から位置U1まで移動する間に、クランク歯車82が0.5回回転する)ようにする代わりに、例えば、ピン65bが長孔67内で位置L1から位置U1まで移動する間に、クランク歯車82が1.5回回転するようにするなど異なる条件にしておいてもよい。その場合、スタッカ23にカット紙などを送出する経路を開く位置E2やトラクタ24に連続紙などを送出する経路を開く位置E1にフラップ26を位置決めする際に、同一フラップ位置に対して、二種類以上の摩擦係合力を与え得る(二種類以上の摩擦係合力から所望の摩擦係合力を選択する)ように、シートの送給を制御し得る。但し、この場合には、例えば、位置決め遮蔽部83dが所定の被検出位置を通過したか否かだけではなくて通過回数を計数してクランク歯車82の回転を制御するようにしておく。
更に、所望ならば、フラップ26が歯車機構を介してフリクション付与機構60のクランク歯車64に直接結合されてもよいけれども、用紙送給路の側部を横切って用紙送給路の下側から上側まで動力を伝達するためには、アーム83を備えたクランク機構82,83の如く細長い機構を用いることが好ましい。また、その場合、クランク歯車82を直接的に又は歯車機構を介してクランク歯車64に噛合させて該クランク歯車82を往復回動させてもよいけれども、例えば、フラップ26の位置とレバー70の回動位置との相対的な位置関係の自由度を上げるためには、一方向クラッチ81bを介在させることが好ましい。