請求項1に記載の発明は、断熱箱体内の最上部に形成された冷蔵室の背面に冷蔵室ダクトが設けられ、前記冷蔵室ダクトは前記冷蔵室の正面から見ての側面であって、左右両側面に通風口である吐出口と、前記吐出口より下方で片側側面のみに通風口である吸込口と、を備え、前記冷蔵室ダクト側面から前記冷蔵室内側面までの間に前記吐出口及び前記吸込口にそれぞれ連通され、前記冷蔵室内の温度分布の均一化を図るためのチャンバー空間を備えたことにより、冷蔵室ダクトの前面には冷気の吐出口が存在しないので、冷蔵室内の食品等が凍ってしまう不具合を回避することができる。また、冷蔵室ダクト側面の通風口である吐出口から吐出された冷気はチャンバー空間で風速が低下されつつ、庫内の空気と混合されて循環するので、食品を局所的に温度低下させる可能性を低減できる。また、冷蔵室ダクトの前面には冷気の吐出口が存在しないので、冷蔵室の扉を開けたとき、吐出口が前面に見えないので、冷蔵室の見栄えがよくなる。
また、冷蔵室の扉を開けたとき、通風口である吐出口と吸込口との両方が前面に見えないので、見栄えが更によくなる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷蔵室ダクトは、その中央部に上方に向けて前記吐出口に通じる冷気循環経路と、この冷気循環経路の下方部に隣接して前記吸込口に通じる冷気循環経路と、を備えたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記冷蔵室より下方に配置され前記断熱箱体を冷却する蒸発器を備え、前記冷蔵室から前記蒸発器へ冷気を送る冷蔵室戻りダクトを、前記吸込口と同側方で前記吸込口に通じて下方に向かって配置したものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記冷蔵室ダクトは、前記冷蔵室の背面にほぼ左右中央に配置され、前記冷蔵室ダクト側面が前記冷蔵室の背面中央と庫内両側壁面の略中央に位置することにより、吐出口から十分な冷気を吐き出すことができ、また、吸込口から十分な冷気を吸い込むことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記冷蔵室ダクトは、断熱風路と前記断熱風路前面に取り付けられた前面パネルとで構成され、側面の通風口である吐出口は前記断熱風路で構成され、前記前面パネルに直接吐出冷気が接触しない位置に配置されたことにより、前面パネルが冷されることによる局部的な結露や着霜が発生することを防止できる。
以下、本発明の冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態1における冷蔵庫100は、観音開き式の扉を備える冷蔵庫100であり、複数に区画された貯蔵室を断熱箱体101内に備えている。貯蔵室は、その機能(冷却温度)によって、冷蔵室102、製氷室105、切換室106、野菜室104、および冷凍室103等と称される。
冷蔵室102の前面開口部には、例えばウレタンのような発泡断熱材を発泡充填した回転式の断熱扉107が設けられている。また、製氷室105、切換室106、野菜室104、および冷凍室103には、それぞれ引出の前板となる断熱板108が設けられ、これにより冷気の漏れがないように貯蔵室を密閉している。
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図である。
具体的には、図2は、図1におけるA−A線で切断した部分の断面図である。
断熱箱体101は、主に金属鋼板で構成される外箱と、主に真空成型された樹脂で構成される内箱との間に、硬質発泡ウレタンなどの断熱材を充填して形成される箱本体である。この断熱箱体101は、周囲から断熱箱体101内部への熱移動を抑制し断熱している。
冷蔵室102は、冷蔵保存のため、凍らない程度の低い温度に維持される貯蔵室である。具体的な温度の下限としては、通常1〜5℃に設定される。特に生鮮品の保鮮性を向上させるために温度設定を0〜1℃としている場合もある。
野菜室104は、冷蔵室102と同等もしくは若干高く温度設定される貯蔵室である。具体的には、2〜7℃に設定される。低温にするほど、葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。冷蔵室102に比べて若干高めに温度設定するのは、ナスやキュウリなど低温で低温障害と呼ばれる鮮度劣化の影響を抑制することが狙いである。また、冷蔵室102と比べて野菜を収納する野菜室104は収納食品から発せられる水分により高湿度となるため、局所的に冷えすぎると結露することがある。比較的高温に温度設定することで、空気中の水分保有量が増加すると共に、温度維持に必要な冷却量も少なくなるので、野菜室104内の温度変動が抑制されるために結露発生を抑制できる。
冷凍室103は、冷凍温度帯に設定される貯蔵室である。具体的には、冷凍保存のため、通常は−22〜−18℃に設定されるが、冷凍保存状態の向上のため、例えば−30℃や−25℃などの低温に設定されることもある。
製氷室105は、冷蔵室102に配置された給水タンク(図示しない)から定期的に水を給水し、製氷メカ(図示しない)で自動的に製氷を行い、その氷を保存する貯蔵室である。
切換室106は、製氷室105の側方に併設され、庫内の温度が変更可能な貯蔵室である。冷蔵庫100に取り付けられた操作盤により、用途に応じて冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切り換えることができるようになっている。
断熱箱体101の天面部は、冷蔵庫の背面方向に向かって階段状となるように凹部113が形成され、第1の天面部111と第2の天面部112とを備えている。この階段状の凹部113には、圧縮機114、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等、冷凍サイクルを形成する高圧側の構成部品が主に収納されている。すなわち、圧縮機114が配設される凹部113は、冷蔵室102内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。したがって、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に圧縮機114は配置されない。
冷凍室103と野菜室104の背面には、両室にまたがる態様で冷却室115が設けられている。冷却室115は、仕切り壁としての断熱性を有する第1の仕切り116で冷凍室103および野菜室104から仕切られている。また、冷凍室103と野菜室104との間には、断熱仕切り壁としての断熱性を有する第2の仕切り117が配設されている。
第1の仕切り116および第2の仕切り117は、断熱箱体101の発泡後、断熱箱体101に組み付けられる部品である。そのため、通常断熱材としては発泡ポリスチレン等の発泡樹脂が断熱性の観点から使われる。なお、さらに断熱性能や剛性を向上させるために硬質発泡ウレタンを用いてもよく、また高断熱性の真空断熱材を挿入して仕切り構造のさらなる薄型化を図ってもよい。また、並列に配置された製氷室105と切換室106の天面部である第三の仕切り118と底面部の第四の仕切り119は、断熱箱体101と同じ発泡断熱材で一体成形されている。
冷却室115は、冷却手段の一部を構成するものであり、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の蒸発器120を備えている。また、冷却室115は、冷凍室103と野菜室104とにまたがって上下方向に縦長に配設されている。ただし、蒸発器120は、冷凍室103に対向する面積よりも野菜室104に対向する面積の方が小さくなるように配置されている。これは、冷却室115が冷蔵庫100の中で最も低温になるため、当該低温状態が野菜室104に与える影響を少なくするためである。
蒸発器120の上部空間には冷却ファン121が配置されている。冷却ファン121は、蒸発器120で冷却された冷気を送風し、各貯蔵室に強制的に冷気を対流させ、冷蔵庫100内で冷気を循環させるものである。
冷蔵庫100の内部には、冷気が強制的に循環する循環経路が形成されている。具体的には、蒸発器120で冷却された冷気は、冷却ファン121により強制的に送風状態となり、各貯蔵室と断熱箱体101との間に設けられるダクトを通って各室に運ばれ、各室を冷却し、吸込ダクトを通って蒸発器120に戻される。なお、冷蔵室102内に備えられた冷蔵室吐出用ダクト129aの吐出口付近には除菌装置200が設けられ、吸込み口付近には脱臭装置(図示しない)が設けられている。
また、冷蔵室102は庫内に食品等を収納する食品収納棚201が複数設けられ、最下段にはスライドケース202が備えられ冷蔵室102の棚部よりも若干低めの温度設定により、主に肉魚等の収納を目的とするチルド室が設けられている。さらに扉側にも複数の扉棚201が備えられており、食品収納棚201と扉棚203は使用者の使い勝手に応じて、取付位置を差換えて変更することが可能となっている。これにより、上下間隔を調節して食品が入る高さを変更することができ、多様な収納性を向上させることができる。
図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のダクト構成を表す図である。
図3に示すように、冷蔵庫100には、比較的高温の冷気が循環する冷蔵室102・野菜室104循環経路と、比較的低温の冷気が循環する製氷室105循環経路と、冷凍室103循環経路と、切換室106循環経路とが存在する。このような冷気循環経路はダクトによって形成される。
以下、冷蔵室102・野菜室104循環経路について詳しく説明する。
蒸発器120で冷却された冷気は、冷却ファン121により、冷蔵室吐出用ダクト129aを通して冷蔵室102に送風される。ただし、蒸発器120で冷却される冷気は、冷凍室103の冷凍温度に十分対応できる温度にまで冷却されている。したがって、比較的低温の冷気状態で冷蔵室102に送風され続けると冷蔵室102が低温になり過ぎる。
そこで、冷蔵室102を含む冷気の循環経路には、冷気の挿通を制御することのできるツインダンパー128が設けられている。蒸発器120で冷却された冷気は、ツインダンパー128により挿通(冷気の流通のON・OFF)が制御されており、冷蔵室102・野菜室104経路を常に循環しているわけではない。また、冷蔵庫100全体が十分に冷えているときは、冷却ファン121の回転が停止し、冷気の循環も停止する。この際、冷却サイクル、つまり圧縮機114等も停止する。
蒸発器120で冷却された冷気は、前記制御に従い冷蔵室吐出用ダクト129aを下方から上方に向けて通過し、冷蔵室102上部で開口する通風口130a,130b,130c,130d,130e,130fから吐き出される。冷蔵室102を通過した冷気は、冷蔵室102下部で開口する吸込口131aに吸い込まれる。吸込口131aに吸い込まれた冷気は、排出口131bから冷蔵室戻りダクト137に排出され、この冷蔵室戻りダクト137を経由して野菜室104上部で開口する吐出口136から一部分が吐き出される。吐出口136から吐き出された一部の冷気は、野菜室104を循環した後再び合流して蒸発器120に戻るようになっている。
以上が冷蔵室102・野菜室104循環経路の説明である。
なお、製氷室105や切換室106でも、吐出冷気を断続制御するダンパーにより冷気の循環が制御され、各室の温度が制御される。すなわち、冷蔵室102、製氷室105、切換室106には、それぞれ庫内温度を制御する温度センサー(図示せず)が搭載されている。この温度センサーによって検知された温度に基づいて、冷蔵庫100背面に取り付けられている制御基板122(図2参照)がダンパーの開閉を制御する。つまり、温度センサーが予め設定された第1温度より高い場合はダンパーを開放させ、第2温度より低い場合はダンパーを閉鎖させて、庫内温度を所定の温度に調節する。
製氷室105を断続制御する製氷室用ダンパー123は、冷却室115内上部に設置され、冷却ファン121から送風された冷気は製氷室用ダンパー123と製氷室用吐出ダクト124aとを通り製氷室105内に吐き出され、熱交換された後、製氷室用戻りダクト124bを経由して蒸発器120に戻るダクト構成となっている。
ツインダンパー128は、冷蔵室102を断続制御するダンパーと切換室106を断続制御するダンパーとを一体に備え、さらに、冷蔵室102の冷気を断続させる冷蔵室用フラップ125と切換室106の冷気を断続させる切換室用フラップ126とを備え、加えて、フラップを駆動させるモータ部127も一体に備えている。ツインダンパー128は、製氷室105と切換室106の背面あたりに設置されている。
ところで、従来の冷蔵庫では、図9に示したように、冷蔵室502から冷気を吸い込む吸込口531と、冷蔵室502に冷気を吐き出す吐出口530a〜530fとがダクト529aの前面にあり、冷蔵室502内に置かれた食品や飲料が吐出口の近傍に置かれて凍ることがある。また、食品収納棚201は差換え可能であり、特に変更した棚位置によっては食品に直接冷気があたり、凍結しやすい問題がある。また、冷蔵室502の扉を開けたとき、吸込口531および吐出口530a〜530fが見えることになるので、見栄えが悪いという問題がある。さらに食品収納棚が差換えられたときには、吐出穴の位置が棚間隔と不統一に配置され見栄えが悪くなる。
そこで、本発明の実施の形態では、これらの問題を解決するために、以下の構成を採用している。
図4および図5は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のダクトの概観図である。
ここでいうダクトとは冷蔵室吐出用ダクト129aであり、以下でも冷蔵室吐出用ダクト129aを単に「ダクト129a」ということにする。図4は、冷蔵室102の扉を開けたときに見える面(前面)を示し、図5は、その裏面を示している。これらの図に示すように、ダクト129aは発泡ポリスチレンなどで成型される断熱風路300とポリプロピレンやポリスチレンやABSなどの樹脂で成型された前面パネル301とを組合わせてある。基本的な風路は断熱風路300で構成され、前面パネル301は意匠性や強度から外観部に設けられている。また、前面パネル301は断熱風路300の横幅よりも大きい幅としてあり、側面部や通風口が正面から見えにくくすることで、意匠性を向上させている。
ダクト129aの側面には通風口として冷蔵室102に冷気を吐き出す吐出口130a〜130fと、冷蔵室102から冷気を吸い込む吸込口131aとが備えられている。吐出口130a〜130fと吸込口131aの形状は、穴でも切り欠きでもよく特に限定されるものではない。このとき、吐出口130a〜130fは断熱風路300で形状を作られており、前面パネル301が直接吐出冷気に接触しない構成となっているので、前面パネル301が冷されて局部的な結露や着霜が発生することを防止できる。
ダクト129aの横幅は、冷蔵室102の横幅より狭くして、十分なチャンバー空間302を確保しておくことが必要である。ダクト129aの両側面に吐出口があるので、十分なチャンバー空間302を確保するためには、ダクト129aを冷蔵室102庫内のほぼ中央に配置して、ダクト129aの側面が庫内中央から側壁面(W1)の略中央(W2)に位置する位置にダクト129aの横幅を設計する。従来のようにダクト129aの横幅を冷蔵室102の横幅とほぼ同程度にすると、吐出口130a〜130fから十分な冷気を吐き出すことができず、また、吸込口131aから十分な冷気を吸い込むことができないからである。さらに吸込口131aに食品や異物や液体が落下混入しにくい構成とすることができる。
さらに、吐出口130a〜130fは庫内空間に対して低温の冷気が最初に吐き出される場所であり、冷蔵室102内で最も低い空気温度となる上に、庫内の他の空気対流と比べて吐出流速が高くなっているので、吐出口130a〜130fがダクト129a正面ではなくダクト側面に配置され、かつ十分なチャンバー空間302を側面に設けることにより食品に冷気があたる前に、冷気温度を庫内空気と混合してなまらすと共に、吐出流速を低減することで、局所的に食品の温度を下げることがなく凍結防止を行うものである。
なお、十分なチャンバー空間302を確保するためには、ダクト129aを冷蔵室102庫内のほぼ中央に配置して、ダクト129aの側面は、庫内中央から側壁面(W1)の略中央(W2)に位置する位置にダクト129aの横幅を設計することとしたが、好ましいのは、(1/4)×W1<ダクト129aの側面の位置<(3/4)×W1の範囲である。
具体的には、ダクト129aの側面の位置>(3/4)×W1になると、チャンバー空間302が小さくなり、局所的に低温化されることとなり、食品等が凍ってしまう不具合が起こる可能性が高い。
一方、ダクト129aの側面の位置<(1/4)×W1になると、ダクト内容積を確保するために、ダクト129aの奥行き方向が大きくなり(すなわち、ダクトが庫内の手前側になる)、庫内容積を圧迫することとなる。また、チャンバー空間302が大きくなり、吐出口から吐出された冷気の風速が低下し、後方から前方へ冷気がまわりにくくなり、冷蔵室内の温度分布が均一になりにくくなる。
すなわち、本実施の形態で、好ましいチャンバー空間302とは、ダクト129aを冷蔵室102庫内のほぼ中央に配置して、庫内中央から側壁面までの距離をW1とした場合に、ダクト129aの側面の位置が、(1/4)×W1<ダクト129aの側面の位置<(3/4)×W1、の範囲に入るように、ダクト129aの横幅を設計して得られる空間のことであり、庫内容積を圧迫することがなく、冷蔵室内の温度分布を均一にするとともに、食品に冷気があたる前に、冷気温度を庫内空気と混合してなまらすとともに、冷気の吐出流速を低減することで、局所的な低温化がなく食品等の凍結防止を行える。
また、発明者らは、上記した、好ましいチャンバー空間である、(1/4)×W1<ダクト129aの側面の位置<(3/4)×W1、を詳細に分析した結果、以下の知見を得た。
具体的には、(1/2)×W1<ダクト129aの側面の位置、にすることで、左側の吐出口から出る冷気と、右側の吐出口から出る冷気と、がラップする領域が大きくなり(すなわち、重なり合う領域が大きくなり)、非効率的な冷却となる。また、冷気がラップする領域である庫内中央部近傍で、局所的に冷却される可能性もある。
これに対して、(1/2)×W1>ダクト129aの側面の位置、にすることで、左側の吐出口から出る冷気と、右側の吐出口から出る冷気と、がラップする領域が小さくなり(すなわち、重なり合う領域が小さくなり)、効率な冷却となる。さらには、左側の吐出口から出る冷気と右側の吐出口から出る冷気とで、庫内の左右のそれぞれの壁面近傍にも冷気が届きやすくなり、庫内の左右方向で、庫内の温度分布をより均一にできる(すなわち、庫内の左右のそれぞれの壁面近傍と中央部近傍とで温度差が少なくなる)。また、冷気がラップする領域が小さくなり、庫内中央部で、局所的に冷却される可能性も低くなる。
よって、より好ましいチャンバー空間302とは、ダクト129aを冷蔵室102庫内のほぼ中央に配置して、庫内中央から側壁面までの距離をW1とした場合に、ダクト129aの側面の位置が、(1/2)×W1<ダクト129aの側面の位置<(3/4)×W1、の範囲に入るように、ダクト129aの横幅を設計して得られる空間のことであり、ダクト129aの横幅の小型化の度合いは少なくなるものの、(1/2)×W1<ダクト129aの側面の位置、にすることで、ダクト129aの奥行き方向がより大きくなることがなく、庫内容積を圧迫することが少なくなるため、冷蔵庫の使い勝手を低下させることがなく、かつ、左側の吐出口から出る冷気と、右側の吐出口から出る冷気と、がラップする領域が小さくなり、効率的な冷却ができ、かつ、庫内の左右のそれぞれの壁面近傍にも冷気が届きやすくなり、冷蔵室内の温度分布を均一にするとともに、食品に冷気があたる前に、冷気温度を庫内空気と混合してなまらすとともに、冷気の吐出流速を低減することで、局所的な低温化がなく食品等の凍結防止を行える。
このようなチャンバー空間302を得られるようにダクト129aの横幅を設計することで、冷蔵室ダクトの横幅が従来に比べて狭くなるので、材料使用量を削減して省資源に貢献し、部品流通に関る搬送エネルギーを削減することで省エネにも貢献し、結果的に製造コストを下げることが可能という効果もある。
また、ダクト129aの断熱風路300は左右対称形状としたことにより、その結果、チャンバー空間302も左右対称形状となり、左方向からと右方向からとの冷気の流れがほぼ同じになるので、冷蔵室内の温度分布がより均一になる。
また、従来の構成(特許文献2)では、図11(B)に示すように、左右に均一に冷気を吹き出すために、ダクト板15を設け、風路を左方向と右方向とに分岐させ、ひとつの風路(例えば右方向)に対してひとつの開口方向としている。そして、このダクト板15には照明手段収納部15dを設けており、このダクト板15の部分は風路となっておらず、実質的には中央部であるダクト板15の部分は無効空間となっている。
しかしながら、本実施の形態では、図5に示すように、ダクトの断熱風路の下方部分は、中央から左方向と右方向に分岐させることなく、中央でひとつの風路となっており、従来の構成(特許文献2)のような無効空間はなく、吐出口の先に各々チャンバー空間を備えることで、吐出口が閉塞されて風路抵抗のバランスが崩れることもないので、冷蔵室ダクトの横幅を狭くできることとなり、材料使用量を削減して省資源に貢献できる。
また、食品収納棚201の差換えや上下移動が吐出口の位置を気にせずに行える。
既に説明した通り、冷却された冷気は、ダクト129aを上方に向けて流れ、冷蔵室102上部で開口する吐出口130a〜130fから吐き出される。このように冷蔵室102に吐き出された冷気は、冷蔵室102下部で開口する吸込口131aから吸い込まれて下方に向けて流れ、排出口131bから冷蔵室戻りダクト137に排出される。
下方から上方に冷気が流れるので上方から下方に冷気を流す方法と比べて、十分に冷気を上部まで循環させるためには、大きな流速が必要となるので吐出流速が大きくなるために特にこの方法において有効な効果が得られる。
なお、チャンバー空間部には断熱箱体101の背面部内方から前方に向けて、食品収納棚201の延長上に、リブが設けられ、食品落下防止とする場合がある。
本実施の形態では、上段と下段の食品収納棚が、この食品落下防止手段を用いているので以下に説明する。
具体的には、冷蔵室102には、庫内に食品等を収納する食品収納棚201が複数設けられている。冷蔵室102には、食品収納棚201は、上段と中段と下段とに三枚あり、冷蔵室102の左側面から右側面に渡って架橋状に設置されたものである。
図12は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の下段の食品収納棚の斜視図である。
図13は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の下段の食品収納棚の位置で切断した平面断面図である。
図12に示すように、下段の食品収納棚は、奥側の辺221Aが直線状である食品収納棚221である。
具体的には、食品収納棚221は、食品等が置かれる食品載置スペース211Aを備え、食品載置スペース211Aはガラスで構成されている。
また、食品載置スペース211Aの周囲には、樹脂からなる枠部211Cが設けられている。
図13に示すように、チャンバー空間302には断熱箱体101の背面部内面から前方に向けて、ダクト129aを挟んで、左右それぞれにリブ223を形成し、このリブ223は食品収納棚221の奥側(断熱箱体の背部内面側)の端面の延長線上に配置されている。
これにより、食品収納棚221の奥側の辺は直線状であるため、食品収納棚自体は複雑な加工をすることなく、食品収納棚221の奥側の端面と断熱箱体101の背部内面とで形成される隙間を、リブ223によって狭めることとなり、食品収納棚221の奥側に置かれた食品で、特に小さな食品等が奥側におされた際に、チャンバー空間302へ食品が落下することを防止することができる。
なお、ここでは、下段の食品収納棚について説明したが、本実施の形態では、上段の食品収納棚についても下段の食品収納棚と同様の構成としている。
また、一方では、食品収納棚の形状を工夫して、食品落下防止とする場合がある。
本実施の形態では、中段の食品収納棚が、この食品落下防止手段を用いているので以下に説明する。
中段の食品収納棚は、冷蔵室102の左側面から右側面に渡って架橋状に設置されたものであり、冷蔵室ダクト129aの周囲を囲うような形状とした食品収納棚211である。
図14は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の中段の食品収納棚の斜視図である。
図15は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の中段の食品収納棚の位置で切断した平面断面図である。
図14に示すように、食品収納棚211は、食品等が置かれる食品載置スペース211Aと、食品設置スペース211Aの奥側に設けられたガイドリブ211Bと、からなり、食品載置スペース211Aはガラスで構成されており、また、ガイドリブ211Bは樹脂で構成されている。
より具体的には、食品載置スペース211Aの周囲には、樹脂からなる枠部211Cが設けられており、食品収納棚211の奥側は、この枠部211Cを後方に延長させて、ガイドリブ211Bとしたものである。
また、食品載置スペース211Aとガイドリブ211Bとの間には、ガイドリブ211Bが高くなるように段差が設けられている。通常、ガイドリブ211Bには、食品は置かれない。
そして、ガイドリブ211Bが、チャンバー空間302に配置される。
これにより、冷蔵室ダクト129aの周囲を囲うような形状とした食品収納棚211、すなわち、食品収納棚の奥側の辺にガイドリブ211Bを設けることで、食品収納棚211の奥側の端面と断熱箱体101の背部内面とで形成される隙間を、ガイドリブ211Bによって狭めることとなり、食品収納棚211の奥側に置かれた食品で、特に小さな食品等が奥側におされた際に、チャンバー空間302へ食品が落下することを防止することができる。
なお、本実施の形態では、上段と下段との食品収納棚は、奥側の辺221Aが直線状である食品収納棚221とし、中段の食品収納棚は、冷蔵室ダクト129aの周囲を囲うような形状とした食品収納棚211としたが、複数の食品収納棚の全てについて、奥側の辺221Aが直線状である食品収納棚221として、背面部内面から前方に向けて、リブ223を形成してもよい。また、反対に、複数の食品収納棚の全てについて、冷蔵室ダクト129aの周囲を囲うような形状とした食品収納棚211として、リブを設けなくてもよい。
ただし、上下の位置を変更できる食品収納棚は、見栄えの面から、リブ223を設けないで、冷蔵室ダクト129aの周囲を囲うような形状とした食品収納棚211とした、すなわち、食品収納棚の形状を工夫するほうが、好ましい。
つまり、断熱箱体の背部内面の形状を工夫すること、あるいは、食品収納棚の形状を工夫こと、すなわち、食品の落下防止手段を設けることにより、冷蔵室ダクト側面から冷蔵室内側面までにチャンバー空間を備えた冷蔵庫においては、食品収納棚の奥側に置かれた食品で、特に小さな食品等が奥側におされた際に、チャンバー空間302へ食品が落下することを防止することができる。
図6は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵室の内部構造を示す図である。
ここでは、ダクト129aを固定する前の状態を示している。図6に示すように、断熱箱体101の中間位置には、縦2列に突出部101aおよび101bが形成されている。突出部101aおよび101bは、内箱を突出させたものであり、ダクト129aと係合することになる。したがって、突出部101aと101bの間の距離はダクト129aの横幅と略等しく、吐出口130a〜130fや吸込口131aに対応する位置に突出部は存在しない。
図7は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫が備えるダクトの説明図である。
ここでは、冷蔵室102の扉を開けたとき、正面に見える部分を表している。すなわち、断熱構造である冷蔵室102の断熱箱体101に沿ってダクト129aが設けられ、このダクト129aと断熱箱体101との間にY字状の冷気循環経路が形成されている。冷蔵庫102内の冷気は、図7中に矢印で示すように、冷蔵室102下方で開口する吸込口131aから吸い込まれて各貯蔵室を循環した後、冷蔵室102上方で開口する吐出口130a〜130fから吐き出される。
ここで、吐出口130a〜130fも吸込口131aもダクト129aの側面に備えられる。すなわち、ダクト129aの前面には吐出口130a〜130fも吸込口131aも存在せず、また吐出口130a〜130fの先にはチャンバー空間302が設けられてあるので、冷蔵室102内の食品等が凍ってしまう不具合を回避することができると共に、冷蔵室の扉を開けたとき、吐出口と吸込口が前面に見えないので、冷蔵室102の見栄えが良くなる。
ところで、従来の冷蔵庫では、図10に示したように、断熱箱体501の両サイドの角部にダクト係合用の突起部501aおよび501bが形成されるが、突起部501aおよび501bは小さいので、精度よく突起部501aおよび501bを形成することができないという問題がある。そこで、本発明の実施の形態では、この問題を解決するために、以下の構成を採用している。
図8(A)は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫のダクトの固定前を示す図である。図8(B)は、本発明の実施の形態1おける冷蔵庫のダクトの固定後を示す図である。
ここでは、冷蔵室102の背面部分における横断面図を示している。図8(A)に示すように、断熱箱体101の中間位置には、ダクト係合用の突出部101aおよび101bが形成されている。この突出部101aおよび101bと対向させてダクト129aを嵌め込むと、図8(B)に示すように、突出部101aおよび101bとダクト129aとが係合するようになっている。このように、断熱箱体101の中間位置に突出部101aおよび101bを形成すれば、断熱箱体101の角部に形成する場合に比べてスペース的に余裕ができて精度よく突出部101aおよび101bを形成することが可能となる。
しかも、断熱箱体101の中間位置に突出部101aおよび101bを形成しているので、突出部101aおよび101bの外側でダクト129aと係合することが可能となる。すなわち、突出部101aおよび101bの外側に張り出した部位をダクト129aが抱きかかえるようなかたちとなっている。
この点について更に詳しく説明すると、従来のように、断熱箱体101の両サイドの角部に突出部101aおよび101bを形成した場合は、突出部101aおよび101bの内側でダクト129aと係合するしかない(図10参照)。しかしながら、本発明では、断熱箱体101の中間位置に突出部101aおよび101bを形成しているので、突出部101aおよび101bの内側はもちろん、突出部101aおよび101bの外側でもダクト129aと係合することが可能となる。このように、本発明は、突出部101aおよび101bの形状に選択の余地があり(すなわち、形状の自由度が高い)、多様性の面でも従来技術より優れているといえる。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施の形態における冷蔵庫によれば、ダクトの前面には冷気の吐出口も吸込口も存在せず、ダクト129a側面と庫内側壁面との間にチャンバー空間302を設けてあるので、低温で流速の高い吐出冷気が直接冷蔵室内の食品等にあたることを防止し、食品が凍ってしまう不具合を回避することができると共に、冷蔵室の見栄えが良くなる。また、ダクト129aの横幅が従来に比べて狭くなるので、省資源かつ省エネルギーに貢献し結果として製造コストが下がるという効果もある。
さらに、ダクト係合用の突出部は断熱箱体の中間位置に形成されるので、断熱箱体の角部に形成する場合に比べて、スペース的に余裕ができて精度よく突出部を形成することが可能となり、また、突出部の形状の多様性が増す。加えて、ダクト係合用の突出部は断熱箱体に設けられているため、ダクトと係合するための別部品が不要であるという効果もある。
なお、上記の説明では特に言及しなかったが、リベットなどの固定部材を用いてダクト129aを固定する方法を採用することも可能である。この場合、ダクト129a内の冷気の流れをコントロールする位置(例えば、ダクト側面の吐出口に向って冷気の流れを偏向する場所など)に、シール性を確保する固定部材(リベットなど)を配置するのが好ましい。このようにすれば、シール性を確保することができると同時に、冷気をガイドする役割も果たすことができるからである。もちろん、この固定部材にガイド部材を設ければ、冷気をガイドする効果を更に向上させることが可能となる。さらに、Y字状の冷気循環経路の分岐位置などに固定部材(リベットなど)を配置すれば、下方からの冷気が2つに分岐して上方へ流れやすくなり、冷気の循環が良くなることはいうまでもない。
また、上記の説明では、6つの吐出口130a〜130fの配置位置については詳しく言及しなかったが、これらの配置位置は特に限定されるものではない。ただし、冷蔵室102内の温度分布がなるべく均一になるように、6つの吐出口130a〜130fを配置するのが好ましい。
また、上記の説明では、6つの吐出口130a〜130fを例示したが、吐出口の数は特に限定されるものではない。同様に、1つの吸込口131aを例示したが、吸込口の数も特に限定されるものではない。
なお、冷凍室が最下段に配置されるレイアウトで説明を例示したが、冷凍室が中央に配置されるいわゆるミッドフリーザータイプのレイアウトでも同様の効果を得ることができる。