JP4217820B2 - Elパネル製造方法、elディスプレイ及び液滴噴射装置 - Google Patents

Elパネル製造方法、elディスプレイ及び液滴噴射装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL(Electroluminescence)パネルを用いたELディスプレイ及びELパネルを製造するELパネル製造方法、並びにELパネルの製造に用いる液滴噴射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、CRTに代わる新しい表示技術として、蛍光物質であるEL(Electroluminescence)材料を用いてEL発光を得る技術が研究されている。
【0003】
蛍光物質であるEL材料としては、まず無機EL材料を用いる研究がされていたが、その後、無機ELにはない長所を有する有機EL材料について注目されてきている。有機EL材料は、無機EL材料に比べて、カラー化が容易なことと、はるかに低い電圧の電流で動作すること等の長所を有する。有機EL材料を用いた有機EL層薄膜を金属電極で挟み込み直流電流印加による電荷注入を行う素子は有機薄膜ELダイオードと呼ばれ、その応用によるフラットパネルディスプレイの実現を目指し多くの研究が為されてきた。
【0004】
有機EL素子によるフルカラーディスプレイのRGB(赤色、緑色、青色)画素構造としては、▲1▼有機EL素子の白色発光とRGBカラーフィルタを用いる方法、▲2▼有機EL素子の青色発光とG,Rの色波長変換層を用いる方法、▲3▼RGBの各有機EL素子を各画素に形成する方法、等が提案されている。この中で▲3▼は、カラーフィルタや色波長変換層のような光出射量/光入射量が低い部材を設けることなく、各RGBの有機EL素子の各色の光を直接表示しているので、所定輝度に対して最も低消費電力が実現できるものとして期待されている。▲3▼の構造を高解像度で実現させるためには、EL発光を行う有機EL層薄膜の微細パターン形成を行わなければならない。有機EL層薄膜は、ダメージを受け易く、一般に有機薄膜のエッチングは困難であり、そのパターン形成は有機EL素子を用いたELパネルディスプレイ実現の技術問題となっている。
【0005】
有機EL素子の製膜方法は材料等の条件に応じて湿式コーティング法と抵抗加熱蒸着によるドライ蒸着加熱法に大別され、それぞれの製膜技術に対応したパターン形成方法として湿式コーティング法はジェットプリンティング法が、ドライ蒸着加熱法はシャドウマスク法が提案されている。
【0006】
図11〜図13を参照して、従来のジェットプリンティング式の有機EL層形成方式を説明する。図11は、従来のELパネル80の構造と液滴噴射ヘッド91の位置を示す上面図であり、図12は、従来のELパネル80の構造を示す概略断面図であり、図13は、従来の液滴噴射装置90の概略図である。
【0007】
ELパネル80上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の有機EL層81R,81G,81Bを形成するために、液滴噴射装置90の液滴噴射ヘッド91の赤、緑、青の有機EL材料の溶液を、赤、緑、青の溶液を噴射するノズル91r,91g,91bを介して、それぞれ隔壁82で区分された各セル83R,83G,83Bに噴射する。
【0008】
図12に示すように、ELパネル80は、ガラス等の透明基板84上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電体であるアノード電極85を形成し、赤の各セル83R(及び緑、青のセル83G,83B)を区分するSiN(窒化シリコン)等の隔壁82を形成し、正孔輸送層86を形成し、各セル83R(及び緑、青のセル83G,83B)への発光材料の液滴噴射により有機EL層81R(及び緑、青の有機EL層81G,81B)を形成する。アノード電極85をそれぞれ備える1セルを1画素とする。
【0009】
実際には、この後、各画素共通の電極であるカソード電極を形成し、封止材、封止ガラスを順に形成して、ELパネル80となる。また、各有機EL層の発光のスイッチングを行うTFT(Thin Film Transistor)は図面上省略されている。
【0010】
図13に示すように、有機EL材料を各セル83R,83G,83Bに液滴噴射する液滴噴射装置90は、有機EL材料を各セル83R,83G,83Bに液滴噴射し上下方向及びELパネル80の平面のXY方向移動自在に可動する液滴噴射ヘッド91と、有機EL材料の溶液を貯める溶液タンク92と、溶液タンク92の溶液を液滴噴射ヘッド91へ供給する長い溶液供給ライン93と、溶液タンク92と溶液供給ライン93との間に設ける接続口である溶液供給口94と、溶液タンク92へ大気を通す大気通用口95とを設ける。実際には、有機EL材料として、赤、緑、青の発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、それぞれに溶液タンク92、溶液供給ライン93、溶液供給口94、大気通用口95を設ける。
【0011】
溶液タンク92中の有機EL材料の溶液は、有機EL材料を溶媒に溶かした液体であり、溶液滴噴射ヘッド91と溶液供給口94との間の上下方向の水頭差を調整することにより、液滴噴射ヘッド91のノズル91r,91g,91b内の溶液の圧力を変化させ、大気通用口95からの大気圧と平衡させて、液滴の噴射量を安定させる。
【0012】
透明基板84上にアノード電極85及び隔壁82を形成したELパネル80のXY平面上に、液滴噴射ヘッド91を移動させ、目的のセルに液滴を噴射させ、噴射された有機EL材料の溶媒を蒸発させて乾燥させ、有機EL層81R,81G,81Bを形成していた。各セル83R,83G,83Bは、ELパネル80を用いたディスプレイの画素毎に形成される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のジェットプリンティング式の有機EL層形成方式によれば、液滴噴射ヘッド91のノズル91r,91g,91bからの吐出量は通常数十〜数[pl]であり、濃度を1〜99[wt%]程度の溶液を滴下する場合、有機EL層の仕上がり膜厚が数十[nm]であることを考慮すると、セルあたりの滴下量は数滴となる。よって、一つのセル内での溶液一滴のミスファイアにより、つまり一滴分溶液の増減によりセル内のEL層の仕上がり膜厚に数十%の変化が生じ、その結果輝点不良や上下ショート等の画素不良を生じていた。
【0014】
従来のジェットプリンティング式の有機EL層形成方式を用いて、例えば640*480*3(RGB)のディスプレイを製造する場合を考えると、その画素数は921,600となる。一セル当り3滴を滴下するとすれば、ディスプレイあたりの総滴下数は約300万滴に達する。即ちもし、当該ジェットプリンティング式の有機EL層形成方式で10万回に1回の過滴下又は滴下不足のミスファイアを生じた場合、その画素不良は最大約30箇所にも及ぶ。即ち、隔壁82を用いたセル83R,83G,83Bを画素単位で形成する従来の方法では、ディスプレイ製造時に著しく高い不良率が生ずる可能性があった。
【0015】
これを回避する方法として、十分に希釈した溶液において乾燥後の再塗布を繰り返し、適正な膜厚とする方法も考えられるが、一旦乾燥した膜上への再吐出は、既に形成されている膜の再溶解を生じる事で不均一な膜を形成してしまっていた。
【0016】
また、従来の液滴噴射装置90についても問題があった。有機EL層81R,81G,81Bは、数十nm〜百数十nmの超薄膜から構成されており、径がこの薄膜と同程度以上の導電性の微粒子等の不溶物が薄膜中に混入すると導電パスとなり、アノード−カソード間でショートすることによりダークスポットの要因となる。
【0017】
また有機EL材料は、非局在化したπ電子平面を持つものが多く、一般に溶媒への溶解性は低いので、溶液中で分子鎖が会合して微粒子を形成しやすい構造となっている。このまま微粒子状を含んだ状態で成膜すると厚さが均一にならないために発光特性にバラツキが生じる。そのため、従来のジェットプリンティング式の有機EL層形成方式を用いる場合、製膜直前に有機EL溶液をメンブランフィルタ等でフィルタリングを行い、微粒子を除去させるのが一般的である。そこで、溶液供給ライン93中にメンブランフィルタ等のフィルタを設けると、当該フィルタを通過させるために溶液に圧力をかけることが必要となる。
【0018】
この時、吐出に必要な負圧条件を妨げてしまい、安定な溶液の吐出が困難となってしまっていた。また、高価な有機EL材料の利用率を上げるためには、溶液供給ライン93を短くすることが望ましく、溶液タンク92の溶液供給口94を液滴噴射ヘッド91の近傍下方に設けるのが理想的である。このとき、溶液タンク92内の溶液の液面の高さ(残溶液の重量)によって、液滴噴射ヘッド91内の溶液の圧力が変化してしまい、安定した溶液の吐出が困難となってしまっていた。
【0019】
本発明の課題は、安定した膜厚の有機EL層の形成を行うことである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、有機EL層となる有機EL材料の溶液を液滴噴射するELパネル製造方法であって、複数の色の複数の画素のうち同一色で連結されている画素群で構成され、隣接する異なる色の画素群と隔壁によって区切られており、前記隔壁が同一色の前記画素間の連結されている部分でくびれているセルに、液滴噴射装置の液滴噴射ヘッドのノズルから前記溶液を液滴噴射する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項1の発明によれば、複数の画素を定義するセルに液滴噴射装置の液滴噴射ヘッドのノズルから前記溶液を液滴噴射することができるので、仮にある画素で有機EL材料の溶液の液滴噴射でのミスファイアが発生しても、ミスファイアした画素の溶液量と同一セル内の他の画素の溶液量とが均一になるように同一セル内で溶液が移動するので、ミスファイアによる有機EL層の膜厚への変化の影響を減少させ、安定した膜厚の有機EL層を形成し、輝点不良等の画像不良を無くすことができる。
【0028】
請求項に記載の発明は、前記セルの配列は、前記画素を対角に連結して同色の有機EL層が形成されるセルを、隣同士異なる色に並べるモザイク状であり、前記ノズルは複数であり、前記溶液を前記セル中に液滴噴射する場合、前記各ノズルは前記各セル内の複数の画素に順に連続して液滴噴射する、ことを特徴とする。
【0029】
請求項の発明によれば、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネルの有機EL層形成において、液滴噴射ヘッドのノズルをセルの長手方向、つまり対角方向に走査して有機EL材料の溶液を連続して液滴噴射する。
【0030】
従って、請求項の発明によれば、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0031】
請求項に記載の発明は、前記セルの配列は、前記画素を対角に連結して同色の有機EL層が形成されるセルを、隣同士異なる色に並べるモザイク状であり、前記液滴噴射ヘッドの移動方向は前記セルの長手方向と異なり、前記ノズルは各色毎に複数であり、前記溶液を前記セル中に液滴噴射する場合、前記液滴噴射ヘッドの移動にともない前記画素の色に対応する前記ノズルを選択して対応する画素に液滴噴射する、ことを特徴とする。
【0032】
請求項の発明によれば、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネルの有機EL層形成において、液滴噴射ヘッドのノズルから発光材料の溶液を連続して液滴噴射する。
【0033】
従って、請求項の発明によれば、溶液の液滴噴射の時間間隔により先に噴射した溶液が先に乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0034】
請求項に記載の発明は、前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、前記溶液タンク内の溶液の液面の位置又は溶液の重量を検出し、前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定にするように、前記検出したデータにしたがって前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする。
【0035】
請求項に記載の発明は、前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、前記噴射ヘッド内の溶液の自重による圧力を検出し、前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定するように、前記検出したデータにしたがって、前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする。
【0036】
請求項に記載の発明は、前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、前記ノズルのノズル口の溶液の液面の形状を検出し、前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定するように、前記検出したデータにしたがって、前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする。
【0038】
請求項記載の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、溶液タンク内の残溶液の液面の位置又は重量を検出して、溶液の残量の減少に伴い発生する、当該液面の位置又は重量に対応する揚力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行う。
【0039】
従って、請求項記載の発明によれば、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0040】
請求項の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッド中の溶液の圧力を検出して、溶液の残量の減少に伴い発生する揚力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行う。
【0041】
従って、請求項の発明によれば、密度、粘度のうち少なくとも1つが異なる溶液別に圧力の算出を行うことなく、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0042】
請求項の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッドのノズルのノズル口での溶液の液面の形状を検出して、最適な液面の形状を保つ負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、液滴噴射ヘッドを選ぶことなく、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0043】
請求項記載の発明は、前記溶液タンクから前記液滴噴射ヘッドへの前記溶液の供給は、当該溶液中の不溶物を取除くフィルタを介して行う、ことを特徴とする。
【0045】
請求項の発明によれば、フィルタを介して溶液の不要物を取除いてダークスポット及びリーク電流の発生を防ぎ、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0046】
請求項に記載の発明は、請求項1、2、3、4、5、又は記載のELパネル製造方法により製造されたELパネルを備えて画像を表示するELディスプレイ、であることを特徴とする。
【0047】
請求項記載の発明によれば、安定した膜の有機EL層を形成されたELパネルを用いるので、画素毎に安定した発光を行う画像を表示することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1〜第6の実施の形態を順に説明する。
【0049】
(第1の実施の形態)
本実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施の形態のELパネル10の構造と液滴噴射ヘッド21Aの位置を示す上面図であり、図2は、ELパネル10のセル構造を示す概略断面図であり、図3は、ELパネル10の電極構造を示す概略断面図であり、図4は、液滴噴射装置20の概略図であり、図5は、XY位置決め制御装置Cの上面図である。
【0050】
図1に示すように、ELパネル10上に、赤(R)、緑(G)、青(B)の有機EL層11R,11G,11Bを形成するために、液滴噴射装置20の液滴噴射ヘッド21Aの赤、緑、青の有機ELの発光材料の溶液を、赤、緑、青のノズル21Ar,21Ag,21Abを介して、それぞれ隔壁12で区分された各セル13R,13G,13Bに噴射する。以下、各符号において、R,rは赤色を意味し、G,gは緑色を意味し、B,bは青色を意味するものとする。
【0051】
ここで、ELパネル10の構造を説明する。図2は、図1の液滴噴射ヘッド21Aの走査方向に沿った断面図であり、四方を隔壁12で区分された一つのセル13Rを示している。図2及び図3には、赤のセル13R、有機EL層11Rを示すが、緑、青のセル13G,13B、有機EL層11G,11Bについても同様である。ELパネル10は、ガラス等の透明基板14と、透明基板14上に形成する、ITO、SnO2等の透明な導電体からなる走査方向と直行する方向に延在するアノード電極15、及び、セル13R,13G,13Bを区分するSiN等の絶縁材料からなる隔壁12と、セル13R,13G,13Bへの有機EL材料の溶液の液滴噴射により形成される有機EL層11R,11G,11Bとを有する。
【0052】
ELパネル10の各アノード電極15と後述するカソード電極16とがそれぞれ重なり合う有機EL層の発光区域が1画素であり、1セル内に10画素(10個のアノード電極15)を有する構成となる。ELパネル10は、赤、緑、青のセル13R,13G,13Bについて、1つセルに10個の画素を液滴噴射ヘッド21Aの走査方向に平行に連結させ、各色のセルをストライプ状に配列した構成である。
【0053】
ELパネル10は、完成時には、図3に示すように、有機EL層11Rの形成の後、有機EL層11R,11G,11B及び隔壁13R上に形成する、各共通の電極であるカソード電極16と、カソード電極16上の封止材17、封止材17上の封止ガラス18も有する。また、各画素の有機EL層の発光のスイッチングを行うTFT等は図面上省略されている。TFTは、例えば隔壁12の下に形成される。
【0054】
有機EL層11R,11G,11Bは、例えば、アノード電極15から順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であっても良いし、アノード電極15から順に正孔輸送層、電子輸送層を兼ねた発光層となる二層構造であっても良いし、発光層からなる一層構造であっても良いし、その他の層構造であっても良い。
【0055】
つまり、有機EL層11R,11G,11Bは、正孔及び電子を注入する機能、正孔及び電子を輸送する機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成して発光する機能を有する。有機EL層11R,11G,11Bは、電子的に中立な有機化合物であることが望ましく、これにより正孔と電子が有機EL層11R,11G,11Bでバランス良く注入及び輸送される。
【0056】
なお、電子輸送性の物質が発光層に適宜混合されていても良いし、正孔輸送性の物質が発光層に適宜混合されても良いし、電子輸送性の物質及び正孔輸送性の物質が発光層に適宜混合されていても良い。
【0057】
また、有機EL層11R,11G,11Bの発光層には、発光材料が含有されている。発光材料としては、高分子系材料が用いられることになる。高分子系材料としては、ポリカルバゾール、ポリパラフェニレン、ポリアリーレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリシラン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリピリジンビニレン、ポリピロールが挙げられる。また、その他の高分子材料としては、上記高分子材料(ポリマー)を形成しているモノマーまたはオリゴマーの共重合体、或いはモノマーまたはオリゴマーの誘導物の重合体及び共重合体と、オキサゾール(オキサンジアゾール、トリアゾール、ジアゾール)又はトリフェニルアミン骨格を有するモノマーを重合した重合体及び共重合体を挙げることができる。また、これらポリマーのモノマーとしては、熱、圧、UV、電子線などを与える事で上述の化合物を形成するモノマー及びプレカーサポリマーを含むものである。また、これらモノマー間を結合する非共役系ユニットを導入しても構わない。
【0058】
高分子材料の具体的なものとしては、ポリピニルカルバゾール、ポリトデシルチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリスチレンスルフォン酸分散体変性物、ポリ9,9−ジアルキルフルオレン、ポリ(チエニレン−9,9−ジアルキルフルオレン)、ポリ(2,5−ジアルキルパラフェニレン−チエニレン)、(ジアルキル:R=C1〜C20)、ポリパラフェニレンビニレン、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシロキシ)−パラフェニレンビニレン)、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル−ペンチロキシ)−パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−ジメチル−パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(2,5−ジメトキシパラフェニレンビニレン)、ポリ(1,4−パラフェニレンシアノビニレン)などが挙げられる。
【0059】
また、高分子系材料に限られるものではなく、低分子材料をポリマー分散して用いるものとしても良い。また、低分子材料の性質によっては、低分子材料を溶媒に溶かした状態で塗布して使用するものとしても良い。そして、低分子材料をポリマー分散する際のポリマーとしては、周知の汎用ポリマーを含む各種ポリマーを状況に応じて使用することができる。
【0060】
低分子の発光材料(発光物質またはドーパント)としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキゾリン、ビススチリル、ピラジン、オキシン、アミノキノリン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物等、4−ジシアノメチレン−4H−ピラン及び4−ジシアノメチレン−4H−チオピラン、ジケトン、クロリン系化合物やこれらの誘導体が挙げられる。低分子発光材料の具体的なものとしては、Alq3、キナクリドンなどが挙げられる。
【0061】
また、発光材料は、次式に示すポリフルオレン系材料も用いられる。
【化1】
Figure 0004217820
当該ポリフルオレン系材料は、5未満の多分散度を有する化合物である。
【0062】
但し、上式中、Eは各々独立に、水素、ハロゲン、アリール又は連鎖延長もしくは架橋することのできる反応性基で置換されたアリール、又はトリアルキルシロキシ部分であり、R1は、各々独立に、C1-20ヒドロカルビル又はS、N、O、PもしくはSiのヘテロ原子を1以上含むC1-20ヒドロカルビルであり、又は2つのR1はフルオレン環の9位の炭素と共に、C5-20環構造又はS、NもしくはOのヘテロ原子を1以上含むC4-20環構造を形成してもよく、R2は、各々独立に、C1-20ヒドロカルビル、C1-20ヒドロカルビルオキシ、C1-20チオエーテル、C1-20ヒドロカルビルオキシカルボニル、C1-20ヒドロカルビルカルボニルオキシ、又はシアノである。aは、各々独立に、0〜1の数であり、そしてmは負でない数である。なお、発光材料は、上述のものに限定されるものではない。
【0063】
発光層或いは電子輸送層に含有する電子輸送性物質としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノール又はその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体などが挙げられる。
【0064】
発光層或いは正孔輸送層に含有する正孔輸送性物質としては、テトラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミンないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、フタロシアニン系化合物(phthalocyanines)、ナタフタロシアニン系化合物(naphthalocyanines)、ポルフィリン系化合物(porphyrins)、トリアゾール(triazole)、イミダゾール(imidazole)、イミダゾロン(imidazolon)、イミダゾールチオン(imidazolethione)、ピラゾリン(pyrazoline)、ピラゾロン(pyrazoline)、テトラヒドロイミダゾール(tetrahydroimidazole)、オキサゾール(oxazole)、オキサジアゾール(oxadiazole)、ヒドラゾン(hydrazone)、アシルヒドラゾン(acylhydrazone)、ポリアリールアルカン(polyarylalkane)スチルベン(stilbene)、ブタジエン(butadiene)、ベンジジン型トリフェニルアミン(benzidine-triphenylamine)、スチリルアミン型トリフェニルアミン(styrylamine-triphenylamine)、ジアミン型トリフェニルアミン(diamine-triphenylamine)やこれ等の誘導体(derivative)、ポリビニルカルバゾール(polyvinylcarbazole)、ポリシラン(polysilane)、ポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylenedioxythiophophen:PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(polysthyrenesulfonate:PPS)、ポリアニリン(polyaniline)等の導電性の高分子材料の中から少なくとも1種類以上選択された材料であり、より好ましくは、次式
【化2】
Figure 0004217820
(式中、n,lは負でない整数である。)で表されるPEDOTをPSS等の保護コロイド(protective colloid)により分散重合してなる重合体を適用する材料も挙げられる。
【0065】
カソード電極16は、隔壁12上にも形成されている。つまりカソード電極16は、ELパネル10に設けられる画素全てに共通する層である。カソード電極16の具体的なものとして、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム若しくはこれらの合金又はこれら金属若しくは合金にリチウム、マグネシウム若しくはインジウムを含む化合物若しくは混合物等が挙げられる。また、カソード電極16は、以上の各種材料の層が積層された積層構造となっていても良く、具体的には、例えば、有機EL層11R,11G,11B上にマグネシウムを銀を共蒸着させたマグネシウム/銀電極層等の通常の電極層が使用できるが、特にアルミニウム/リチウム電極層は他の材料の電極に比べて、有機EL層への電子の注入効率がよいため、EL素子の発光効率、発光輝度を高めることができ、異常な発熱の発生によるEL素子の発光寿命、安定性も更に向上する。また、高純度のバリウム層、高純度アルミニウム層を順に形成する積層構造も挙げられる。
【0066】
以上のように積層構造となるELパネル10の発光動作時には、図示しないTFTのスイッチングにより、アノード電極15とカソード電極17との間に電界が生じると、アノード電極15から正孔が有機EL層11R,11G,11Bの発光層に注入され、カソード電極16から有機EL層11R,11G,11Bの発光層に電子が注入される。
【0067】
そして、有機EL層11R,11G,11Bの発光層へ正孔及び電子が輸送されて、発光層にて正孔及び電子が再結合することによって励起子が生成され、励起子が消滅するときに光子が発生して発光する。発生した光子は、アノード電極15、透明基板14を順に透過して出力される。
【0068】
有機EL層11R,11G,11Bの発光材料の各色の色分けは、赤、緑、青の各色を発光する各発光材料を用いる、又は、白色発光する発光材料に前記各色の蛍光塗料を混ぜることにより行われる。
【0069】
有機EL層11R,11G,11Bの形成は、以上説明した有機EL材料をエチレン等の溶媒に溶解させて、発光材料の溶液を生成し、当該溶液を液滴噴射装置20で液滴噴射させる。
【0070】
ここで、図4に示す液滴噴射装置20を説明する。液滴噴射装置20は、有機EL材料の溶液を各セル13R,13G,13Gに液滴噴射しELパネル80の平面のXY方向移動自在に可動する液滴噴射ヘッド21Aと、有機EL材料の溶液を貯める溶液タンク22と、溶液タンク22の溶液を液滴噴射ヘッド21Aへ供給する短い溶液供給ライン23と、溶液タンク22と溶液供給ライン23との間の接続口である溶液供給口24と、溶液供給ライン23上に設けたメンブランフィルタ等のフィルタ25と、溶液タンク22に負の気圧(負圧)を供給する圧力源26と、溶液タンク22の液面の位置を検出して内部の溶液の残量を検出する液面センサ(液面位置検出手段)27と、液面センサ27で検出した液面の位置に基づき圧力源76を制御するコントローラ(制御手段)28とを有する。
【0071】
液滴噴射ヘッド21Aは、赤、緑、青の有機EL材料の発光材料の溶液を噴射するノズル21Ar,21Ag,21Abをそれぞれ隣同士が異なる色となるよう、各色3個ずつ、全12個を設ける。実際には、液滴噴射装置20は、それぞれのノズル21Ar,21Ag,21Abに対応して、溶液タンク22、溶液供給ライン23、溶液供給口24、フィルタ25、圧力源26、液面センサ27、コントローラ28とをそれぞれ設ける。
【0072】
更に、正孔輸送層、電子輸送層を形成する場合、それぞれの材料の溶液に対応して、溶液タンク22、溶液供給ライン23、溶液供給口24、フィルタ25、圧力源26、液面センサ27、コントローラ28とをそれぞれ設け、発光層以外の正孔輸送材料、電子輸送材料の液滴噴射においては、全色同じ材料を用いてもよい。
【0073】
液滴噴射ヘッド21A中の溶液を噴射するために、ノズル21Ar,21Ag,21Abは、サーマルジェット式、ピエゾ式又は静電式等の液滴噴射機構を有する。
【0074】
サーマルジェット式液滴噴射機構は、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の溶液に接した図示しない発熱体を発熱させることにより、当該発熱体の周りに溶液の気泡を発生させて、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の圧力を変化させることにより、液滴を吐出させる構成である。
【0075】
ピエゾ式液滴噴射機構は、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の溶液に接した図示しない圧電体であるピエゾ素子に通電することにより、当該ピエゾ素子内の容積を変化させて、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の溶液に加わる圧力を変化させることにより、液滴を吐出させる構成である。
【0076】
静電式液滴噴射機構は、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の溶液に接した図示しない第1の電極と、第1の電極とギャップを有して平行に設けられ溶液に接しない図示しない第2の電極とを設けてコンデンサとし、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加することによって、第2の電極に対する第1の電極のクーロン力による引力又は斥力を変化させて、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の溶液の圧力を変化させることにより、液滴を吐出させる構成である。
【0077】
溶液タンク22中の溶液の残量の重量により、溶液供給口24、短い溶液供給ライン23を介し、また溶液中の微粒子等の不溶物除去用のフィルタ25を介して、液滴噴射ヘッド21A中の溶液に圧力がかかる。当該重量による圧力は、溶液タンク22中の溶液の残量の体積(液面の値)に対応する。コントローラ28は、プログラム制御により、溶液タンク22中の液面の位置情報を液面センサ27により検出させ、液面センサ27で検出した液面の位置情報を用いて、溶液の重量による圧力を打消すような最適な負圧を算出し、算出した負圧を圧力源26から供給させてフィードバック制御する。
【0078】
手順としては、先ず、溶液タンク22中の溶液の残量の重量により、溶液タンク22中の溶液は、溶液供給口24、溶液供給ライン23を介し、フィルタ25を通過することができる。そして、液滴噴射ヘッド21A中に溶液が充填し、コントローラ28は、圧力源26から液滴噴射ヘッド21A中の溶液にかかる重量による圧力を打消す最適な負圧を算出して供給させる。溶液タンク22中の液面が下がった場合、溶液の体積も減少して、液滴噴射ヘッド21A中の溶液の重量による圧力が減少するので、減少した重量による圧力に対応して圧力源26から供給する負圧も減少させる。
【0079】
コントローラ28には予め液滴噴射ヘッド21A中の溶液の種類に応じた溶液の密度、粘性、濃度や初期状態での残量、必要な噴射量が入力されている。コントローラ28における、液滴噴射ヘッド21A中の溶液にかかる重量による圧力を打消す負圧の算出方法は、先ず、液面センサ27で検出した溶液タンク22中の液面の位置情報から、溶液の残量の自重によってフィルタ25或いは液滴噴射ヘッド21Aに加わる圧力を計算する。フィルタ25或いは液滴噴射ヘッド21Aに掛かる圧力が一定となるように、噴射により減少する溶液自体の圧力の変化を算出し、この算出データにしたがって圧力源26が圧力を加える。つまり溶液タンク22中の溶液が初期状態で満たされているときでも、噴射して残量が減っているときでも、液滴噴射ヘッド21Aは同じ動作で常に一定量の溶液を噴射することができる。このように、液滴噴射ヘッド21Aでの噴射機構を複雑にすることなく、容易に噴射量を制御することができる。溶液の噴射量は成膜時の有機EL層の厚さ、溶液タンク22中の溶液の濃度に依存しているが、有機EL層11R,11G,11Bの種類毎に適宜噴射量を変えることにより発光色のバランスを最適化してもよい。このとき、液滴噴射装置20は、有機EL層11R,11G,11B毎に別体とすることが望ましい。
【0080】
次に、図5に示す液滴噴射ヘッド21Aを移動するXY位置決め制御装置Cについて説明する。XY位置決め制御装置Cは、ELパネル10を搬送する図示しないELパネル搬送装置に対して直角に、かつ、当該ELパネル搬送装置を跨ぐようにして設けられる二本の支持梁C1,C2と、Y軸方向へ移動自在となるように二本の支持梁C1,C2間に架け渡されるビームC3と、ビームC3の長手方向に移動自在に取付けられるヘッドC4と、ビームC3の各端で支持梁C1,C2それぞれの長手方向の移動の駆動力を供給するY軸リニアモータC5,C6と、ヘッドC4に対してビームC3の長手方向の移動の駆動力を供給するX軸リニアモータC7と、ビームC3のY軸位置を検出するための位置検出手段であり、支持梁C1,C2にそれぞれ設けられたY軸リニアエンコーダC8,C9と、ヘッドC4のX軸位置を検出するための位置検出手段であるX軸リニアエンコーダC10と、各部を制御する図示しない位置決め制御部とを有する。
【0081】
支持梁C1の長手方向をY1軸方向とし、支持梁C2の長手方向をY2軸方向とし、ビームC3の長手方向をX軸方向とする。そして、ヘッドC4に液滴噴射ヘッド21Aを搭載する構成であるとする。
【0082】
XY位置決め制御装置Cは、位置決め制御部が、位置指令(ビームC3及びヘッドC4の位置、ELパネル10のセル13R,13G,13B位置等に関する情報)と、Y軸リニアエンコーダC8,C9から出力されたビームC3のY1軸、Y2軸の位置フィードバック情報と、X軸リニアエンコーダC10から出力されたヘッドC4のX軸の位置フィードバック情報とを用いて、それぞれ駆動手段であるY軸リニアモータC5,C6、X軸リニアモータC7の駆動を制御することで、ヘッドC4をELパネル10上の所定位置に移動させる構成である。
【0083】
XY位置決め制御装置Cは、Y軸の位置決め制御において、Y1軸側のY軸リニアモータC5には、共通な位置指令と、Y軸リニアエンコーダC8から出力されたビームC3のY1軸の位置フィードバック情報とを用いて位置決め制御し、Y2軸側のY軸リニアモータC6には、共通な位置指令と、Y軸リニアエンコーダC9から出力されたビームC3のY2軸の位置フィードバック情報とを用いて位置決め制御し、Y1軸側とY2軸側で別々に制御する全軸式位置決め制御方式を採用している。
【0084】
また、Y1軸側をマスタ側、Y2軸側をスレーブ側として、Y2軸側のY軸リニアエンコーダC9を設けずに、Y軸リニアモータC5,C6の両方に、位置指令及びY軸リニアエンコーダC8から出力されたビームC3のY1軸の位置フィードバック情報とを用いてY1軸方向及びY2軸方向を共通に位置決め制御するマスタスレーブ式位置決め制御方式を採用する構成でもよい。この場合、マスタ側とスレーブ側を代えた構成でもよい。
【0085】
次に、ELパネル10製造方法を説明する。先ず、透明基板14上にアノード電極15、隔壁12を形成し、XY位置決め制御装置Cにおいて、ELパネル搬送装置によって搬送されたELパネル10上の各セル13R,13G,13Gの所定位置に、ヘッドC4に搭載された液滴噴射ヘッド21AをX軸方向及びY軸方向移動自在に位置決め制御し、セル13R,13G,13Gの長手方向に走査しつつ、液滴噴射装置20において、コントローラ28は、液面センサ27に溶液タンク22内の発光材料の溶液の液面の位置を検出して、検出した液面の位置に対応する適切な負圧を圧力源26から出力させて、ヘッドC4に搭載された液滴噴射ヘッド21A内の溶液の圧力を最適な圧力に保ち、上記の液滴噴射機構により、ノズル21Ar,21Ag,21Ab内の発光材料の溶液の圧力を微調整して、溶液の液滴を各セル13R,13G,13Bの画素に連続して噴射して、有機EL層11R,11G,11Bの発光層を形成する。
【0086】
上記の製造方法の説明は、有機EL層11R,11G,11Bが、発光層のみによる1層構造の場合であるが、2層構造の場合、セル13R,13G,13B内に、正孔輸送材料、発光材料の溶液を順に液滴噴射して、正孔輸送層、発光層の順に形成し、3層構造の場合、セル13R,13G,13B内に、正孔輸送材料、発光材料、電子輸送材料の溶液を順に液滴噴射して、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を順に形成して、有機EL層11R,11G,11Bを形成する。但し、有機EL材料の発光層以外の正孔輸送材料、電子輸送材料の液滴噴射を行う場合、赤、青、緑で同じ材料を用いてもよい。
【0087】
有機EL層11R,11G,11Bを形成した後、有機EL層11R,11G,11B及び隔壁12上に、カソード電極16を形成し、カソード電極16上に封止材17を、封止材17上に封止ガラス18を順に形成して、ELパネル10を製造する。
【0088】
例えば、画素毎の適正な有機EL層の膜厚形成に必要な溶液の滴下量が4滴であるとすると、従来の1セルあたり1画素の構成では、1画素に1つのミスファイアが生じれば、溶液の滴下量は1セル全体の1/4、つまり25%減或いは25%増を生じてしまっていた。本実施の形態のように1セルあたり10画素を有する構成においては、1セル内では40滴が必要となる。ミスファイアの発生確率が10万分の1であるとすると、1セル内の10画素中で連続したミスファイアの生じる確率は、著しく低くなり、有機EL層の膜厚の不安定による画像不良を防ぐことができる。例えば、1セル(10画素)に1つの滴下不足のミスファイアが生じれば、1セル全体の1/40、つまり2.5%減或いは2.5%増を生じるに過ぎない。これは、実質的に輝点不良となる程度に至らない。
【0089】
よって、ELパネル10の有機EL層形成において、有機EL材料の溶液の液滴噴射でのミスファイアの発生による有機EL層の膜厚への変化の影響を減少させ、安定した膜厚の有機EL層を形成し、輝点不良等の画像不良を無くすことができる。
【0090】
また、セル13R,13G,13Bの長手方向と液滴噴射ヘッド21Aの走査方向を同一にして、液滴噴射ヘッド21Eから有機EL材料の溶液を連続して噴射し、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0091】
また、液滴噴射ヘッド21Aのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、溶液タンク22内の液面の位置を液面センサ27で検出して、検出した液面の位置(溶液の残量)に対応する圧力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、フィルタ25を介して不溶物を取除いてダークスポット及びリーク電流の発生を防ぎ、安定した量の液滴を噴射させることができる。
【0092】
更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要とせず、短い溶液供給ライン23を設けるので、高価な有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0093】
なお、本実施の形態では、1セルあたりの画素数は10個としたが、これに限定されるものではなく、これ以外の複数の画素数で形成される構成でもよい。
【0094】
また、本実施の形態では、液滴噴射装置20において、溶液タンク22内の溶液の残量を求めるのに、液面センサ27で検出した液面の位置を検出して用いたが、溶液タンク22の重量を計測する重量秤等の他の計測機器やセンサで計測する構成でもよい。
【0095】
(第2の実施の形態)
本実施の形態を図6を参照して説明する。図6は、本実施の形態のELパネル30の構造と液滴噴射ヘッド21Dの位置を示す上面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のELパネル10をELパネル30に代え、液滴噴射装置20の液滴噴射ヘッド21Aを液滴噴射ヘッド21Dに代えた構成であり、同様な部分の説明は省略する。
【0096】
ELパネル30は、赤、緑、青のセル33R,33G,33Bについて、1つのセルに29個の画素を液滴噴射ヘッド21Dの走査方向に垂直に連結させ、各色のセルをストライプ状に配列するように、赤、緑、青の有機EL層31R,31G,31B及び隔壁32を形成した構成である。
【0097】
液滴噴射ヘッド21Dは、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液を噴射する液滴噴射ヘッド21DR,21DG,21DBを有し、液滴噴射ヘッド21DR,21DG,21DBそれぞれに、各29個の同色の発光材料の溶液を噴射するノズル21Dr,21Dg,21Dbを設ける。つまり一つの画素に一つのヘッドが対応して配置されている。
【0098】
ELパネル30と、液滴噴射ヘッド21Dの構成によれば、ELパネル30の有機EL層形成方法において、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液の液滴を、ノズル21Dr,21Dg,21Dbから、各セル毎の全画素に一度に噴射することができる。有機EL材料の発光層以外の正孔輸送材料、電子輸送材料の溶液の液滴噴射を行う場合は、全色同じ材料を用いてもよい。このように29個の画素、つまり複数の画素をまとめてその周囲を隔壁32で囲むことにより画素1個に対して仮にミスファイアがあったとしても、セル内で溶液の高さが均等になるように溶液が移動するので、一画素でのミスファイアの影響を低減することができる。
【0099】
よって、液滴噴射ヘッド21Dのノズルから各セル毎の全画素に一度に有機EL材料の溶液を噴射することができるので、液滴噴射ヘッド21Dの移動による時間差によって、先に噴射した溶液が先に乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0100】
なお、1セルあたりの画素数は29個としたが、これに限定されるものではなく、これ以外の複数の画素数で形成される構成でもよい。
【0101】
(第3の実施の形態)
本実施の形態を図7を参照して説明する。図7は、本実施の形態のELパネル40の構造と液滴噴射ヘッド21Eの位置を示す上面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のELパネル10をELパネル40に代え、液滴噴射装置20の液滴噴射ヘッド21Aを液滴噴射ヘッド21Eに代えた構成であり、同様な部分の説明は省略する。
【0102】
ELパネル40は、赤、緑、青のセル43R,43G,43Bについて、1つのセルに10個の画素を対角に連結させ、各色のセルをモザイク状に配列するように、赤、緑、青の有機EL層41R,41G,41B及び隔壁42を形成した構成である。なお、ELパネル40の端では、その形状に合せて、1セル内の画素数を増減させる。
【0103】
液滴噴射ヘッド21Eは、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液を隣同士が異色となるように噴射するよう配置された各色3個ずつ、全12個のノズル21Er,21Eg,21Ebを設ける。
【0104】
ELパネル40と、液滴噴射ヘッド21Eの構成によれば、ELパネル40の有機EL層形成方法において、液滴噴射ヘッド21Eを対角の走査方向に移動させつつ、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液の液滴を、ノズル21Er,21Eg,21Ebから、乾燥以前に連続して噴射する。有機EL材料の発光層以外の正孔輸送材料、電子輸送材料の溶液の液滴噴射を行う際は、全色同じ材料を用いてもよい。このように複数の画素をまとめてその周囲を隔壁32で囲んでいるので画素1個に対して仮にミスファイアがあったとしても、溶液の高さが均等になるように隔壁42でのくびれ部から溶液が移動するので、一画素でのミスファイアでの膜厚のバラツキを低減することができる。
【0105】
よって、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネル40における有機EL層形成において、液滴噴射ヘッド21Eのノズルを対角方向に走査して有機EL材料の溶液を連続して液滴噴射するので、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0106】
なお、1セルあたりの画素数は10個としたが、これに限定されるものではなく、これ以外の複数の画素数で形成される構成でもよい。
【0107】
(第4の実施の形態)
本実施の形態を図8を参照して説明する。図8は、本実施の形態のELパネル50の構造と液滴噴射ヘッド21Fの位置を示す上面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のELパネル10をELパネル50に代え、液滴噴射装置20の液滴噴射ヘッド21Aを液滴噴射ヘッド21Fに代えた構成であり、同様な部分の説明は省略する。
【0108】
ELパネル50は、赤、緑、青のセル53R,53G,53Bについて、1つのセルに12個の画素を対角方向に連結させ、更に液滴噴射ヘッド21Fの走査方向に対して垂直方向に12個の画素毎に区切り、各色のセルをモザイク配列するように、赤、緑、青の有機EL層51R,51G,51B及び隔壁52を形成した構成である。なお、ELパネル50の端では、その形状に合せて、1セル内の画素数を増減させる。
【0109】
液滴噴射ヘッド21Fは、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液を噴射する液滴噴射ヘッド21FR,21FG,21FBを有し、液滴噴射ヘッド21FR,21FG,21FBそれぞれに、溶液を噴射する各12個の同色のノズル21Fr,21Fg,21Fbを設ける。
【0110】
ELパネル50と、液滴噴射ヘッド21Fの構成によれば、ELパネル50の有機EL層形成方法において、液滴噴射ヘッド21Fを走査方向に移動させつつ、プログラム制御等により、液滴噴射ヘッド21Fの現在の位置に対応する色の溶液のノズルをノズル21Fr,21Fg,21Fbから選択し、赤、緑、青それぞれの有機EL材料の発光材料の溶液の液滴を、前記選択したノズルから、乾燥以前に連続して噴射する。発光層以外の有機EL材料の正孔輸送材料、電子輸送材料の溶液の液滴噴射を行う際は、全色同じ材料を用いてもよい。
【0111】
よって、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネル50において、液滴噴射ヘッド21Fのノズルから有機EL材料の溶液を連続して噴射し、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の発光層を形成するので、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0112】
なお、1セルあたりの画素数は12個としたが、これに限定されるものではなく、これ以外の複数の画素数で形成される構成でもよい。
【0113】
(第5の実施の形態)
本実施の形態を図9を参照して説明する。図9は、本実施の形態の液滴噴射装置60を示す概略図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の液滴噴射装置20を液滴噴射装置60に代えた構成であり、同様な部分の説明は省略する。
【0114】
液滴噴射装置60は、有機EL材料の溶液を各セル13R,13G,13Gに液滴噴射しELパネル10の平面のXY方向移動自在に可動する液滴噴射ヘッド61と、有機EL材料の溶液を貯める溶液タンク62と、溶液タンク62の溶液を液滴噴射ヘッド61へ供給する短い溶液供給ライン63と、溶液タンク62と溶液供給ライン63との間の接続口である溶液供給口64と、溶液供給ライン63上に設けたメンブランフィルタ等のフィルタ65と、溶液タンク62に負圧を供給する圧力源66と、液滴噴射ヘッド61に設けられ液滴噴射ヘッド61内の溶液の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出手段)67と、圧力センサ67で検出した圧力に基づき圧力源76を制御するコントローラ(制御手段)68とを有する。
【0115】
液滴噴射ヘッド61は、第1の実施の形態の液滴噴射ヘッド21Aに圧力センサ67を設ける構成である。
【0116】
溶液タンク62中の溶液の残量の重量により、溶液供給口64及び短い溶液供給ライン63を介し、また溶液中の微粒子等の不溶物除去用のフィルタ65を介して、液滴噴射ヘッド61中の溶液に圧力がかかる。コントローラ68は、プログラム制御により、液滴噴射ヘッド61中の溶液の圧力を圧力センサ67により検出させ、圧力センサ67で検出した溶液の圧力の値を用いて、残溶液の重量による圧力を打消すような最適な負圧を圧力源66から供給させてフィードバック制御する。
【0117】
手順としては、先ず、溶液タンク62中の溶液の残量の重量により、溶液タンク62中の溶液は、溶液供給口64、溶液供給ライン63を介し、フィルタ65を通過することができる。そして、液滴噴射ヘッド61中に溶液が充填し、コントローラ68は、圧力源62から液滴噴射ヘッド61中の溶液にかかる重量による圧力を打消す最適な負圧を供給させる。
【0118】
第1の実施の形態で述べたように、液滴噴射装置20は、コントローラ28において、液面センサ27から検出された液面の位置を用いて、圧力源26から供給する負圧を算出していたため、密度、粘度のうち少なくとも1つが異なる溶液を用いた場合、残溶液の重量による圧力の算出式も異なり、コントローラ28で実行するプログラムを変更しなければならない。
【0119】
本実施の形態では、コントローラ68において、圧力センサ67から検出された溶液の圧力を液滴噴射ヘッド61中の溶液の圧力とするため、密度、粘度のうち少なくとも1つが異なる溶液を用いた場合でも、コントローラ68で実行する制御プログラムの変更は不要である。
【0120】
よって、液滴噴射ヘッド61のノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッド61中の溶液の圧力情報を圧力センサ27で検出して、検出した圧力に対応する揚力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、密度、粘度のうち少なくとも1つが異なる溶液に対しても別々に圧力の算出をすることなく、フィルタ65を介して不溶物を取除いてダークスポット及びリーク電流の発生を防ぎ、安定した量の液滴を噴射させ、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0121】
なお、本実施の形態を第2、第3又は第4の実施の形態に適用する場合は、液滴噴射ヘッド61は、それぞれ液滴噴射ヘッド21D,21E,21Fに圧力センサ67を設ける構成となる。
【0122】
(第6の実施の形態)
本実施の形態を図10を参照して説明する。図10は、本実施の形態の液滴噴射装置70を示す概略図である。本実施の形態は、第1の実施の形態の液滴噴射装置20を液滴噴射装置70に代えた構成であり、同様な部分の説明は省略する。
【0123】
液滴噴射装置70は、有機EL材料の溶液を各セル13R,13G,13Gに液滴噴射しELパネル10の平面のXY方向移動自在に可動する液滴噴射ヘッド71と、有機EL材料の溶液を貯める溶液タンク72と、溶液タンク72の溶液を液滴噴射ヘッド71へ供給する短い溶液供給ライン73と、溶液タンク72と溶液供給ライン73との間の接続口である溶液供給口74と、溶液供給ライン73上に設けたメンブランフィルタ等のフィルタ75と、溶液タンク72に負圧を供給する圧力源76と、液滴噴射ヘッド61のノズルのノズル口から噴射する溶液のメニスカス(液面の形状)を検出するCCD(Charge Coupled Device)カメラ(液面形状検出手段)77と、CCDカメラ77で検出したメニスカス情報に基づき圧力源76を制御するコントローラ(制御手段)78とを有する。液滴噴射ヘッド71は、第1の実施の形態の液滴噴射ヘッド21Aと同様の構成である。
【0124】
溶液タンク72中の溶液の残量の重量により、溶液供給口74、短い溶液供給ライン73を介し、また溶液中の微粒子等の不溶物除去用のフィルタ75を介して、液滴噴射ヘッド71中の溶液に圧力がかかる。コントローラ78は、プログラム制御により、液滴噴射ヘッド71内のノズルのノズル口での溶液のメニスカスをCCDカメラ77により検出させ、CCDカメラ77で検出したメニスカスを用いて、残溶液の重量による圧力を打消し溶液のメニスカス状態を最適に保つような負圧を圧力源76から供給させてフィードバック制御する。
【0125】
手順としては、先ず、溶液タンク72中の溶液の残量の重量により、溶液タンク72中の溶液は、溶液供給口74、溶液供給ライン73を介し、フィルタ75を通過することができる。そして、液滴噴射ヘッド71中に溶液が充填し、コントローラ78は、圧力源72から液滴噴射ヘッド71中の溶液にかかる圧力を打消す最適な負圧を供給させる。
【0126】
第5の実施の形態で述べたように、液滴噴射装置60は、液滴噴射ヘッド61に圧力センサ67を設けるため、液滴噴射ヘッド61の製造段階で予め圧力センサ67を組込む必要があるが、本実施の形態の液滴噴射装置70は、液滴噴射ヘッド71にCCDカメラ77を設ける必要がないため、あらゆる液滴噴射ヘッドに後付けが可能で、液滴噴射ヘッドを選ばずにフィードバック制御を行うことができる。例えば、本実施の形態を第2、第3又は第4の実施の形態に適用する場合、それぞれ液滴噴射ヘッド21D,21E,21Fにも後付け可能である。
【0127】
よって、液滴噴射ヘッド71のノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッド71のノズルのノズル口での溶液のメニスカスをCCDカメラ67で検出して、最適なメニスカスを保つ負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、液滴噴射ヘッドを選ぶことなく、フィルタ75を介して不溶物を取除いてダークスポット及びリーク電流の発生を防ぎ、安定した量の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0128】
なお、本実施の形態では、溶液のメニスカスを検出する手段として、CCDカメラ77を用いたが、その他の画像センサ、レーザ変位形等の計測装置を用いる構成でもよい。
【0129】
なお、上記各実施の形態では、安定した膜圧の有機EL層を形成されたELパネルを製造しているが、当該製造されたELパネルに、アクティブマトリックス方式で各画素の発光を制御するドライバ、コントローラ等を設けて画像を表示するELディスプレイは、画素毎に安定した発光を行う画像を表示することができる。また、上記各実施の形態では、各画素の形状は略四辺形であったが、これに限らず、三角形やその他の多角形や円形等であってもよい。このとき、このとき上記実施の形態の対角方向は、各画素の略45゜斜め方向に相当する。
【0130】
以上、本発明の実施の形態につき説明したが、本発明は、必ずしも上述した手段及び手法にのみ限定されるものではなく、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう効果を有する範囲内において適宜に変更実施が可能なものである。
【0131】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、複数の画素を定義するセルに液滴噴射装置の液滴噴射ヘッドのノズルから前記溶液を液滴噴射することができるので、仮にある画素で有機EL材料の溶液の液滴噴射でのミスファイアが発生しても、ミスファイアした画素の溶液量と同一セル内の他の画素の溶液量とが均一になるように同一セル内で溶液が移動するので、ミスファイアによる有機EL層の膜厚への変化の影響を減少させ、安定した膜厚の有機EL層を形成し、輝点不良等の画像不良を無くすことができる。
【0134】
請求項記載の発明によれば、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネルの有機EL層形成において、液滴噴射ヘッドのノズルをセルの長手方向、つまり対角方向に走査して有機EL材料の溶液を連続して液滴噴射するので、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制し、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0135】
請求項記載の発明によれば、各色を対角方向に配列したモザイク状のELパネルの有機EL層形成において、液滴噴射ヘッドのノズルから発光材料の溶液を連続して液滴噴射するので、溶液の液滴噴射の時間間隔によって、先に噴射した溶液が乾燥することによる乾きむらを抑制するので、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0136】
請求項記載の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、溶液タンク内の残溶液の液面の位置又は重量を検出して、溶液の残量の減少に伴い発生する、当該液面の位置又は重量に対応する揚力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0137】
請求項記載の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッド中の溶液の圧力を検出して、溶液の残量の減少に伴い発生する揚力を打消す負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、密度、粘度のうち少なくとも1つが異なる溶液別に圧力の算出を行うことなく、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0138】
請求項記載の発明によれば、液滴噴射ヘッドのノズルからの有機EL材料の溶液の液滴噴射において、液滴噴射ヘッドのノズルのノズル口での溶液の液面の形状を検出して、最適な液面の形状を保つ負圧を溶液に加えるフィードバック制御を行うので、液滴噴射ヘッドを選ぶことなく、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができ、更に、適切な負圧を加えることにより、長い溶液供給ラインを必要としないので、有機EL材料の溶液の利用率を上げることができる。
【0139】
請求項記載の発明によれば、フィルタを介して溶液の不溶物を取除いてダークスポット及びリーク電流の発生を防ぎ、安定した量の溶液の液滴を噴射させて、安定した膜厚の有機EL層を形成することができる。
【0140】
請求項記載の発明によれば、安定した膜の有機EL層を形成されたELパネルを用いるので、画素毎に安定した発光を行う画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のELパネル10の構造と液滴噴射ヘッド21Aの位置を示す上面図である。
【図2】ELパネル10のセル構造を示す概略断面図である。
【図3】ELパネル10の電極構造を示す概略断面図である。
【図4】液滴噴射装置20の概略図である。
【図5】XY位置決め制御装置Cの上面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態のELパネル30の構造と液滴噴射ヘッド21Dの位置を示す上面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態のELパネル40の構造と液滴噴射ヘッド21Eの位置を示す上面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のELパネル50の構造と液滴噴射ヘッド21Fの位置を示す上面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態の液滴噴射装置60を示す概略図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態の液滴噴射装置70を示す概略図である。
【図11】従来のELパネル80の構造と液滴噴射ヘッド91の位置を示す上面図である。
【図12】従来のELパネル80の構造を示す概略断面図である。
【図13】従来の液滴噴射装置90の概略図である。
【符号の説明】
10,30,40,50,80…ELパネル
11R,11G,11B,31R,31G,31B,41R,41G,41B,51R,51G,51B,81R,81G,81B…有機EL層
12,32,42,52,82…隔壁
13R,13G,13B,33R,33G,33B,43R,43G,43B,53R,53G,53B,83R,83G,83B…セル
14,84…透明基板
15,85…アノード電極
16…カソード電極
17…封止材
18…封止ガラス
20,60,70,90…液滴噴射装置
21A,21D,21DR,21DG,21DB,21E,21F,21FR,21FG,21FB,61,71,91…液滴噴射ヘッド
21Ar,21Ag,21Ab,21Dr,21Dg,21Db,21Er,21Eg,21Eb,21Fr,21Fg,21Fb,91r,91g,91b…ノズル
22,62,72,92…溶液タンク
23,63,73,93…溶液供給ライン
24,64,74,94…溶液供給口
25,65,75…フィルタ
26,66,76…圧力源
27…液面センサ
28,68,78…コントローラ
67…圧力センサ
77…CCDカメラ
C…XY位置決め装置
C1,C2…支持梁
C3…ビーム
C4…ヘッド
C5,C6…Y軸リニアモータ
C7…X軸リニアモータ
C8,C9…Y軸リニアエンコーダ
C10…X軸リニアエンコーダ

Claims (8)

  1. 有機EL層となる有機EL材料の溶液を液滴噴射するELパネル製造方法であって、
    複数の色の複数の画素のうち同一色で連結されている画素群で構成され、隣接する異なる色の画素群と隔壁によって区切られており、前記隔壁が同一色の前記画素間の連結されている部分でくびれているセルに、液滴噴射装置の液滴噴射ヘッドのノズルから前記溶液を液滴噴射する、
    ことを特徴とするELパネル製造方法。
  2. 前記セルの配列は、前記画素を対角に連結して同色の有機EL層が形成されるセルを、隣同士異なる色に並べるモザイク状であり、
    前記ノズルは複数であり、前記溶液を前記セル中に液滴噴射する場合、前記各ノズルは前記各セル内の複数の画素に順に連続して液滴噴射する、ことを特徴とする請求項1記載のELパネル製造方法。
  3. 前記セルの配列は、前記画素を対角に連結して同色の有機EL層が形成されるセルを、隣同士異なる色に並べるモザイク状であり、
    前記ノズルは各色毎に複数であり、前記溶液を前記セル中に液滴噴射する場合、前記液滴噴射ヘッドの移動にともない前記画素の色に対応する前記ノズルを選択して対応する画素に液滴噴射する、ことを特徴とする請求項1記載のELパネル製造方法。
  4. 前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、
    前記溶液タンク内の溶液の液面の位置又は溶液の重量を検出し、
    前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定にするように、前記検出したデータにしたがって前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のELパネル製造方法。
  5. 前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、
    前記噴射ヘッド内の溶液の自重による圧力を検出し、
    前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定するように、前記検出したデータにしたがって、前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のELパネル製造方法。
  6. 前記溶液の液滴噴射は、前記溶液を貯める溶液タンクから、当該溶液を前記液滴噴射ヘッドへ供給し、前記液滴噴射ヘッドのノズルから当該溶液を液滴噴射して行い、
    前記ノズルのノズル口の溶液の液面の形状を検出し、
    前記液滴噴射ヘッドにかかる圧力を一定するように、前記検出したデータにしたがって、前記溶液タンク内に圧力を制御する、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のELパネル製造方法。
  7. 前記溶液タンクから前記液滴噴射ヘッドへの前記溶液の供給は、当該溶液中の不溶物を取除くフィルタを介して行う、ことを特徴とする請求項4、5又は6記載のELパネル製造方法。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のELパネル製造方法により製造されたELパネルを備えて画像を表示することを特徴とするELディスプレイ。
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