従来から、電子写真法としては特許文献1〜3等に記載されているように多数の方法が知られているが、一般的には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像(静電潜像)を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱加圧或いは溶剤蒸気などにより定着し複写物を得るものであり、一方、感光体上に転写せず残ったトナーは種々のクリーニング手段により清掃され、上述の工程が繰り返されるものである。
この様な電子写真法に用いられるクリーニング手段としては、諸方式が提案されているが、構成において簡単であり且つ小型であり、またコスト面からも大変有利であるという理由から、ゴム弾性材から成るクリーニングブレードを感光体表面に圧接させる構成のブレードクリーニング手段が広く一般的に用いられている。
また、感光体としては、近年では、高耐久性及び高画質性追求やメンテナンスフリー化を図る為に、a−Si(アモルファスシリコン)感光体ドラムが用いられるようになった。a−Si感光体ドラムは、OPC、その他の有機感光体ドラムと比較しても表面層が硬質であるため、種々のクリーニング手段を用いたシステムに適用した場合、例えば、一般的な方法として感光体に当接して設けられたクリーニングブレードにより感光体上に残留するトナーを除去するブレードクリーニング方式に適用させた場合においても、感光体表面層の磨耗が少なく、高耐久性を示し、プリントスピードの高速化対応に対し非常に有効である。
感光体に対する潜像露光手段としては、アナログ方式を用いた電子写真方法では、感光体への均一な帯電の後、原稿台から得られる原稿の反射光を感光体へ導き利用するが、デジタル方式を用いた電子写真方法の場合には、レーザー光走査又はLEDアレイ等を用いて感光体への静電潜像の書き込みが行われる。その後、静電潜像をトナーを用いた現像手段により可視像化するのが一般的であるが、アナログ方式では原稿反射光利用の観点から正規現像方式のみとなるのに対し、デジタル方式の場合には、レーザー等で画像部を潜像として書き込み、その部分にトナーを付着させる反転現像方式と、非画像部を潜像として書き込み、その部分以外にトナーを付着させる正規現像方式の2種類の方法が適宜選ばれている。
この様に、デジタル方式においては、反転現像方式と正規現像方式のどちらでも利用することが容易であるが、レーザーやLEDアレイの発光強度や寿命、プリントスピードの向上等の観点から、レーザーやLEDアレイの発光時間を少なくすることのできる反転現像方式が好適に用いられている。
また、転写工程やクリーニング工程においては、高速移動する感光体表面から静電的に吸着したトナーを引き離す(剥ぎ取る)際に、トナーの帯電極性と反対の電荷を感光体表面に受け渡す現象(いわゆる静電放電現象)が発生する。すなわち、感光体表面からトナーを剥ぎ取る場合に、感光体とトナーの間で微細な剥離放電現象が発生する。
この剥離放電に伴う放電量そのものは非常に微細であるが、トナーの粒径が小さく(μmオーダー)、感光体と直接接する極めて微小な面積に放電が集中し、且つ、トナー自体の抵抗が高い場合には、結果的に感光体の表面層近傍の電荷阻止能力を破壊し得るエネルギーとなる場合がある。
特に、通常a−Si感光体の印加電圧に対する耐圧性は、感光体帯電極性方向には高いが、逆極性方向に対しては低いため、剥離放電が発生した場合に、感光体帯電極性に対して逆極性の放電が長期間継続的に発生すると、その部分の感光体表面層の電荷保持能が微細に破壊される。反転現像方式は、トナーの極性が正/感光体の極性が正、またはトナーの極性が負/感光体の極性が負という様に、トナーと感光体の帯電極性が同極性となることが特徴であるため、トナーを感光体表面から引き離す際に発生する剥離放電が、感光体帯電極性方向とは逆極性となる。従って、反転現像方式とa−Si感光体を組み合わせて用いた場合には、感光体表面層の電荷保持能が微細に破壊され、この結果、感光体の帯電極性側における電荷保持能力が低下し、感光体表面での電位ムラの発生や、これに伴う画像濃度ムラが発生し、プリント品位を著しく低下させるという問題がある。
この様な剥離放電は、感光体表面からトナーを剥ぎ取るスピードが速い(つまり感光体周速度=プロセススピードが速い)ほど、または感光体表面上に現像されたトナーの載り量が多い程、またはトナーの帯電性が高い程、その発生頻度、発生度合いが増加する傾向を持つため、最近の傾向であるプリントスピードの向上の流れの中で、深刻な問題点として顕著化しつつある。
一方、感光体表面層の電荷保持能が低下することにより、感光体と同極性の電圧が感光体に印加された時に、感光体の各層にかかる分圧が変化し、このような状態においては、感光体基体上に設けられた下部電荷注入阻止層に印加された電圧がより多くかかることになる。そして、その印加電圧がより大きくなることで、下部電荷注入阻止層の絶縁破壊が生じ、画像上の欠陥となって現れる。そのような画像欠陥は、反転現像系においては黒い斑点として現れる(以下、これを黒ポチと表記する)。またこの黒ポチは、感光体表面に高電界が印加されることにより発生するリーク現象によっても生じる。高電圧が印加される原因は、帯電器などからのリークによる場合もあるが、反転現像系においては、クリーニング装置内で、感光体と同極性のトナーが感光体と摩擦されることにより過剰帯電されるために高電圧が発生し、感光体表面へのリークを招く場合もある。
以上の様に、a−Si感光体ドラムは有機半導体ドラムに比較して硬質で耐久性が極めて良好であるにもかかわらず、最近では上述の様な問題が表面化してきた。
この様な背景の中、本発明者らは鋭意検討の結果、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を含むトナーをa−Si感光体を有する装置に適用させた場合において、該イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の組成が、感光体表面での剥離放電現象或いは、感光体表面へのリーク現象と密接な関係があることを見出した。
トリフェニルメタン化合物は、優れた正帯電性荷電制御剤として知られており、例えば特許文献4〜13に開示されている。しかし、いずれの場合も、トリフェニルメタン化合物の組成と感光体表面での剥離放電或いは感光体表面層へのリーク現象との関連性について言及したものはなく、a−Si感光体を用いた構成での高速プリント適用時、或いは高耐久時、等の使用において、剥離放電現象或いはリーク現象に伴う画像不具合発生問題に対し、十分な検討が行われているとは言えない状況である。
米国特許第2,297,691号明細書
特公昭42−23910号公報
特公昭43−24748号公報
特開昭54−84732号公報
特開昭55−79456号公報
特開昭57−3940号公報
特公昭58−9415号公報
特開昭60−107654号公報
特開昭61−124955号公報
特開昭61−36758号公報
特公平7−74918号公報
米国特許第5,061,585号
ドイツ特許第3641525号
本発明の実施形態および効果発現の理由について以下に述べる。
既に従来技術で述べたとおり、本発明が解決すべき課題点である剥離放電或いはリーク現象によるa−Si感光体表面層の破壊のメカニズムとしては、トナーと感光体表面との間において剥離放電が長期継続的に発生すること、或いはリーク現象で発生した高電界によるエネルギーが、感光体表面の一部に集中することにより、感光体表面層自体が破壊されて起こる問題である。
従って、本発明者らは、トナーと感光体表面層の間での剥離放電並びにリーク現象を回避すべく鋭意検討した結果、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を含むトナーをa−Si感光体を有する装置に適用させた場合において、該イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を任意の組成に制御することにより、感光体表面での剥離放電現象或いは、感光体表面へのリーク現象を緩和できることを見出した。
すなわち、本発明は、該イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量を800ppm以下、好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下とし、且つ、該イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物が式(2)で表されるイオンA、或いは式(3)で表されるイオンBのうち、少なくとも一種以上を含有するトナーを用いた場合において、感光体表面での剥離放電現象或いは、感光体表面へのリーク現象を大幅に緩和できる。このメカニズムについて、以下に述べる。
まず、アニリン含有量が800ppmを超えるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を含むトナーを用いた場合は、クリーニング装置内のクリーニングブレード近傍の廃トナー中にトナーとは性状が明らかに異なる青色状微粉体が多く存在するのに対し、アニリン含有量が800ppm以下のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を含むトナーを用いた場合には、クリーニングブレード近傍の廃トナー中に青色状微粉体の存在が少ない。この青色状微紛体は、マス分析の結果、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物であることがわかった。
これは、トナー構成要素であるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物に含まれるアニリン含有量がある程度多いと、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物がトナーから脱離し易い、或いはトナー中からクリーニングブレード側に移行し易いことを示唆している。
イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は非常に強い正帯電性を示すため、トナーから脱離した状態で、廃トナー中に単独で存在すると、局部的に非常に大きな帯電サイトとして働き、クリーニング装置内で感光体表面に対するリークポイントとして作用する可能性が高くなる。従って、廃トナー中に含まれる青色状微粉体の存在が多いほど、感光体表面にはリーク現象による欠陥が発生しやすくなり、結果として黒ポチの発生に至ると考えられる。この廃トナー中に含まれる青色状微粉体の存在量は、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量に依存し、アニリン含有量を800ppm以下とすることで廃トナー中の青色状微粉体を僅かに存在する程度に低減でき、且つリーク現象に対して効果が見られ、更に500ppm以下、300ppm以下とすることで、より良好な結果が得られる。
イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量が、トリフェニルメタン化合物のトナーからの脱離に作用するメカニズムについては以下の通りである。
クリーニング装置に具備されるクリーニングブレードとしては通常ゴム弾性材が用いられ、一般的にはポリウレタンが用いられている。本発明者らの検討によれば、クリーニングブレードとして、例えばシリコンブレードを用いた場合よりも、ウレタンブレードを用いた場合の方が、トナーからのイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の脱離或いは移行の程度は悪くなることが明らかになった。
このようなトナーからのイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の脱離或いは移行の発生理由としては、ウレタンとアニリン間に作用する強い化学的親和性の為に、トナー中からクリーニングブレード側に対してアニリンの移行が生じ、このアニリンの移行に伴いイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物も脱離或いは移行すると考えられる。つまり、本発明者らは、アニリンの存在を介してイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物がウレタンに付着しやすくなる現象を発見した。従って、トナーに含まれるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量の増加に伴い、結果的にトナーからのイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の脱離量または移行量が増加すると推測される。
一方、本発明者らは、本発明のトナーにおいてイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量が800ppm以下であり、且つ式(2)で表されるイオンA、或いは式(3)で表されるイオンBのうち、少なくとも一種以上を明確に含有する場合において、感光体表面での剥離放電現象及び感光体表面へのリーク現象を大幅に緩和できることを確認した。このメカニズムについては現状では明確に解明できていないが、イオンA或いはイオンBを含むことにより、荷電制御剤としてのトリフェニルメタン化合物自体の帯電緩和が促進されることが示唆される。そもそも、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は、荷電制御剤として電荷蓄積効果と帯電緩和(電荷のリーク)効果を併せ持っているが、このうちの帯電緩和効果が、イオンA或いはイオンBを含有することで促進されるものと考えられる。更に、この帯電緩和効果はイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のアニリン含有量が800ppm以下の場合において効果的に発現し、剥離放電或いはリーク現象による感光体表面層の破壊が大幅に抑制される。この効果は、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物が、イオンA或いはイオンBのいずれか一方のみを含むよりも、両者共に含有する場合の方が高い。
本発明で用いられるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は、トリフェニルメタン顔料、染料あるいはそのレーキ化した顔料であり、アニリン含有量が800ppm以下、好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下であり、式(2)で表されるイオンA或いは式(3)で表されるイオンBのうち、少なくとも一種以上を含有することが特徴である。
また、本発明のトナーに含まれるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は、マススペクトルにおいて、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の親イオンに対するイオンA或いはイオンBの親イオンピーク強度比が0.1〜0.8であることが好ましい。
尚、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物に含有されるアニリンは、主に原料由来の不純物成分として混入していると考えられる。
本発明におけるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物に含まれるアニリン含有量は、マルチプルヘッドスペース抽出方法を用いた測定により得られる。以下に測定方法を記す。
[マルチプルヘッドスペース抽出方法によるアニリン含有量の測定方法]
ヘッドスペースサンプラーは、株式会社パーキンエルマージャパン製HS40XLを用い、GC/MSはサーモクエスト株式会社製TRACE GC, TRACE MSを用いた。
また、マルチプルヘッドスペース抽出方法によるピーク面積の計算は、下記式1)に示す近似式を用いて行うものとする。
サンプルバイアルは、ガスクロマトグラフィーに接続され、マルチプルヘッドスペース抽出方法を使用して分析した。
[ヘッドスペースサンプラー条件]
・サンプル量:イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物50mg
・バイアル:22mL
・サンプル温度:120℃
・ニードル温度:150℃
・トランスファーライン温度:180℃
・保持時間:60min
・加圧時間:0.25min
・注入時間:0.08min
[GC条件]
・カラム:HP5−MS(0.25mm,60m)
・カラム温度:40℃(3min),70℃(2.0℃/min),150℃(5.0℃/min),300℃(10.0℃/min)
・スプリット比 50:1
[器具]
密閉容器として、株式会社パーキンエルマージャパン製、ヘッドスペース分析用ガラス製バイアル(22ml)を使用した。
[測定および解析方法]
1)標準試料の作製
まず、アニリン定量用の標準サンプルとして、アニリン濃度が1000ppmのメタノール溶液を調製し、この液の5μlを、10μl容積のマイクロシリンジを用いて、22mlのガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムによりすばやく密栓した。
2)イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物試料の作製
イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物50mgを22mlのガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムにより密栓しサンプルとした。
まず、アニリン標準サンプルを定量的マルチプルヘッドスペース抽出方法を用いて測定し、アニリン0.005μl当りの総ピーク面積を求めた(尚、GCの感度は日間変動があるため、アニリン0.005μl当りのピーク面積は測定毎に調べておく必要がある)。
次に、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物サンプルの定量的マルチプルヘッドスペース抽出方法より求めた総ピーク面積と、アニリン標準サンプルの総ピーク面積から比例計算により測定サンプル中のアニリン体積を求め、算出された値にアニリンの比重を乗じて重量換算を行い、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物中のアニリン含有量を算出した。
本発明におけるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物のマス分析は、ESI−イオントラップ質量分析装置を用いた測定により得られる。以下に測定方法を記す。
[ESI−イオントラップ質量分析装置によるマス分析方法]
以下に示す手法により、本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の親イオンに対するイオンA或いはイオンBの親イオンピーク強度比を求めた。
[使用装置]
サーモクエスト株式会社製 LCQ DECA
イオン化方式:エレクトロスプレー(ESI)イオン化法
[スキャン設定]
Scan Mode:MS
イオン極性:ポジティブイオンモード
サンプル注入:インフュージョン
サンプル流速:20μl/min
Scan Ranges:m/z=50−1000
[イオンソースパラメーター]
Sheath Gas:20
Aux Gas:0
Spray Voltage:5
Capillary Temp:220℃
Capillary Voltage:−10
Tube Lens Offset:10
その他の設定値はマニュアル記載の標準値を使用した。
また、MS/MS分析時には以下の条件を用いた。
[スキャン設定]
Scan Mode:MS/MS
Parent Mass:530.4
Isolation Width:2
Relative Collision Energy:50〜70%
その他の設定値はマニュアル記載の標準値を使用した。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の調整]
トリフェニルメタン質量濃度が1ppmのメタノール溶液を作製し、サンプルとした。
[測定および解析方法]
イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物サンプルを500μl容積のマイクロシリンジを用いて、ESI−イオントラップ質量分析装置へ導入した。スペクトルが安定するまで数分待った後、スペクトルを採取し、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の分子量に相当するピーク強度を100とした場合に、イオンA或いはイオンBが含まれる化合物の分子量およびピーク強度を算出した。
本発明では、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物として、下記一般式(1)で表せるものが用いられる。
〔式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基または、置換もしくは未置換のアリール基を表す。但し、R
1〜R
6が全て同時に水素にはならない。R
7、R
8、R
9は、各々互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。好ましくは、R
1、R
3、R
5、R
7、R
8、R
9が水素で、R
2、R
4、R
6がアルキル基を置換基として有してもよいフェニル基の場合である。A
-は、硫酸イオン、硝酸イオン、ほう酸イオン、りん酸イオン、水酸イオン、有機硫酸イオン、有機スルホン酸イオン、有機りん酸イオン、カルボン酸イオン、有機ほう酸イオン、テトラフルオロボレートなどの陰イオンを示す。〕
一般式(1)で示される化合物の具体例を以下に示すが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は従来公知の技術により合成することができ、例えばドイツ特許第1,919,724号明細書に記載される製法等が挙げられる。
トリフェニルメタン化合物のレーキ化は公知の方法で実施される。例えばトリフェニルメタン化合物の酢酸水溶液にレーキ化剤の水溶液を添加してレーキ顔料を沈殿せしめる。またはトリフェニルメタン化合物の酢酸水溶液に体質顔料を懸濁させ、その後レーキ化剤の水溶液を添加してレーキ顔料を体質顔料の表面に折出させる。上記レーキ化剤としては、りんタングステンモリブデン酸、りんタングステン酸、りんモリブデン酸の水溶性塩及び、フェロシアン、フェリシアンのような錯陰イオンを含む水溶性塩などがある。レーキ化剤としては有機酸塩も用いることができるが、例えば没食子酸レーキでは、帯電特性がさほど良好ではない。これは、有機酸レーキでは、樹脂とレーキの相溶性が良いために、帯電特性の不良な樹脂の性質が顕著に現れることによると思われる。
本発明で用いられるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は、合成後の結晶折出法をコントロールしたり、再結晶を施すことで、細かな結晶性の粒子が得られる。更に粉砕、分級などの操作により、所望の粒度のものが得られる。また、製造工程中での洗浄強度を制御したり、後工程として、バット乾燥、流動層乾燥、真空乾燥等のアニール処理を行うことにより、アニリン含有量をコントロールすることが出来る。
本発明のトナーに含有されるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の使用量に関しては、少なすぎると適正な正帯電性が発現しないが、逆に過剰に使用した場合には使用量に見合った正帯電性が得られないばかりでなく、剥離放電やリーク放電現象を発生しやすくなる。従って、本発明のトナーに使用されるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の使用量は、ある程度の適量な使用量が必要となり、この為にもイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物に含まれるアニリン含有量は少なくとも800ppm以下に抑える必要がある。
本発明に用いるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法がある。イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜9質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、更に好ましくは0.7〜7質量部の範囲が良い。
また本発明で用いられるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は、従来公知の荷電制御剤と組み合わせて使用することもできる。
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、下記の結着樹脂の使用が可能である。
例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。これらのなかでも好ましい結着物質としては、スチレン系共重合体もしくはポエステル樹脂がある。これらは単独で使用しても良く、または混合して使用しても良いが、混合して使用する場合は、少なくともその一部が反応していることが好ましい。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとして、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリニトリル、アクリルアミドなどのような二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;例えば、マレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルなどのように二重結合を有するジカルボン酸およびその置換体;例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのようなビニルエステル類;例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのようなエチレン系オレフィン類;例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのようなビニルケトン類;例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのようなビニルエーテル類;例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジルなどのようなグリシジルアルコールと不飽和カルボン酸のエステル類;例えばアリルグリシジルエーテル、アリルβ−メチルグリシジルエーテルなどのような不飽和グリシジルエーテル類;等のビニル単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
スチレン系重合体またはスチレン系共重合体は架橋されていてもよく、また他の樹脂と混合して用いてもよい。
結着樹脂の架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物を用いてもよい。例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどのような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタジオールジメタクリレートなどのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および3個以上のビニル基を有する化合物;が単独もしくは混合物として用いられる。
本発明のトナーに使用できる着色剤としては、任意の適当な顔料又は染料が挙げられる。例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するために必要な量が用いられ、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が良い。
また、同様の目的で、更に染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。
また、本発明のトナーにおいては、着色剤として磁性体を用い、磁性トナーとして使用することもできる。
本発明に用いられる磁性体としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物が用いられ、その磁性体表面或いは内部にケイ素元素を含有するものが好ましい。
磁性体の平均粒子径としては、好ましくは0.05〜1.0μm、より好ましくは0.1〜0.6μm、更に好ましくは0.1〜0.4μmであることが良い。
尚、ここでいう磁性体の平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡により得られた、1万倍の磁性体の写真を4倍に拡大し、4万倍の写真とした後、ランダムに300個の磁性体を選び、その径をデジタイザーにより実測し、その径と個数から、個数平均を求めるものである。なお、径は水平方向フエレ径である。
本発明においてトナーに含有させる磁性体の量は、結着樹脂100質量部に対して10〜200質量部、好ましくは20〜170質量部、更に好ましくは30〜150質量部である。
本発明においては、トナーに離型性を与える為に次のようなワックス類を含有することが好ましい。融点が70〜165℃で、160℃における溶融粘度が1000mPa・s以下のワックスであり、その具体例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックスやエチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1のような直鎖のα−オレフィンおよび分枝部分が末端にあるような分枝α−オレフィンおよびこれらの不飽和基の位置の異なるオレフィンの単独重合体もしくはこれらの共重合体等があげられる。この他、アルコールワックス、脂肪酸ワックス、エステルワックス、天然ワックスも用いられる。
更に、ビニル系モノマーによりブロック共重合体としたり、グラフト変性などを施した変性ワックス、また、酸価処理を施した酸価ワックスでもよい。
これらのワックスは、トナー製造に際し、予め重合体成分中に添加・混合しておくこともできる。その場合は、重合体成分の調整時に、ワックスと高分子量重合体とを溶剤に予備溶解した後、低分子重合体溶液と混合する方法が好ましい。これによりミクロな領域での相分離が緩和され、高分子量成分の再凝集が制御され、低分子重合体との良好な分散状態が得られる。
また、ワックスの添加量は、樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。なお、2種類以上のワックスを併用して添加してもよい。
本発明のトナーにおいては、帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉末をさらに添加することが好ましい。本発明に用いられるシリカ微粉末は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上、特に40〜400m2/gの範囲内のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対してシリカ微粉体0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量部使用するのが良い。
本発明に用いられるシリカ微粉末は、必要に応じ、疎水化、帯電性コントロールなどの目的でシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤で、或いは種々の処理剤を併用して処理されていることも好ましい。
本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子などである。
例えば滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末等が挙げられ、中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。また研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末等が挙げられ、中でもチタン酸ストロンチウム粉末が好ましい。流動性付与剤としては、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末等が挙げられ、中でも疎水性のものが好ましい。導電性付与剤としては、カーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化アンチモン粉末、酸化スズ粉末等が挙げられる。またさらに、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
本発明において、トナーの重量平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)、またはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用いて測定することができる。これらの装置による測定で使用される電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて調整された1%NaCl水溶液や、市販の電解液、たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置によりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2.00μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明に係る体積分布から求めた質量基準の重量平均粒径(D4;それぞれ各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
チャンネルとしては、2.00〜2.52μm未満;2.52〜3.17μm未満;3.17〜4.00μm未満;4.00〜5.04μm未満;5.04〜6.35μm未満;6.35〜8.00μm未満;8.00〜10.08μm未満;10.08〜12.70μm未満;12.70〜16.00μm未満;16.00〜20.20μm未満;20.20〜25.40μm未満;25.40〜32.00μm未満;32.00〜40.30μm未満の13チャンネルを用いる。
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、着色剤及びイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行ってトナー粒子を得、更に必要に応して所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることができる。
混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサ一(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
混練機としては、例えば、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製銅所社製)が挙げられる。
粉砕機としては、例えば、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられる。
分級機としては、例えば、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
まず本発明に用いられるイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物について述べる。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物1の製造例]
本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物は従来公知の技術により合成することができ、例えばドイツ特許第1,919,724号明細書に記載される製法が挙げられる。これらの製法にならい、必須条件として下記式(4)及び式(5)で示される化合物を原材料に含み、化合物具体例(1)に示す構造のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物1を合成した。
この化合物1についてマス分析を実施した結果、m/z=530.4にメインピークがあり、m/z=544.4にメインピークに対するピーク強度比0.34のサブピークが存在することを確認した。つまり、化合物1は下記式(6)で表される化合物Aを含有し、式(2)で表されるイオンAを含有することを確認した。また、この化合物1のアニリン含有量は1580ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物2の製造例]
化合物1の合成時に、更に下記式(7)及び式(8)で示される化合物を原材料に含むこと以外は同様にして、化合物具体例(1)に示す構造のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物2を得た。
この化合物2についてマス分析を実施した結果、m/z=530.4にメインピークがあり、m/z=544.4にメインピークに対するピーク強度比0.32のサブピーク、及びm/z=454.3にピーク強度比0.43のサブピークの存在を確認した。つまり、化合物2は式(6)で表される化合物Aを含有することから式(2)で表されるイオンAを含有し、及び、下記式(9)で表される化合物Bを含有することから式(3)で表されるイオンBを含有することを確認した。また、この化合物2のアニリン含有量は1605ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物3の製造例]
化合物2を、150℃設定のオーブンに入れ60minバット乾燥させ、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物3を得た。この化合物3のマス分析の結果、m/z=530.4のメインピークに対し、m/z=544.4にピーク強度比0.30のサブピーク、及びm/z=454.3にピーク強度比0.43のサブピークを確認した。また、この化合物3のアニリン含有量は740ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物4の製造例]
化合物2を、140℃設定のオーブンに入れ150minバット乾燥させ、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物4を得た。この化合物のマス分析の結果、m/z=530.4のメインピークに対し、m/z=544.4にピーク強度比0.31のサブピーク、及びm/z=454.3にピーク強度比0.44のサブピークを確認した。また、この化合物4のアニリン含有量は480ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物5の製造例]
化合物2を、N2ガスで置換した130℃設定の流動層乾燥機に入れ120min流動乾燥させ、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物5を得た。この化合物5のマス分析の結果、m/z=530.4のメインピークに対し、m/z=544.4にピーク強度比0.33のサブピーク、及びm/z=454.3にピーク強度比0.41のサブピークを確認した。また、この化合物5のアニリン含有量は100ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物6の製造例]
化合物1を、0.2kPaに減圧した130℃設定の真空乾燥機に入れ60min真空乾燥させ、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物6を得た。この化合物6のマス分析の結果、m/z=530.4のメインピークに対し、m/z=544.4にピーク強度比0.33のサブピークを確認した。また、この化合物6のアニリン含有量は91ppmであった。
[イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物7の製造例]
従来公知の製法にならい、下記式(10)で表される構造のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物を合成し、150℃設定の乾燥機に入れ60minバット乾燥させ、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物7を得た。
この化合物7のマス分析を行った結果、m/z=592.4のメインピークに対して、m/z=544.4或いはm/z=454.3には、ピーク強度比0.1を超えるサブピークの存在は確認されなかった。また、この化合物7のアニリン含有量は760ppmであった。
≪本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物に含まれる、化合物A及び化合物B、つまりイオンA及びイオンBの存在についての検証≫
ESIイオン化法を用いた分析では、目的イオンの親ピークの他に、親イオンが破壊されて生じたフラグメントイオンによるピークがスペクトル中に混在する恐れがある。従って、未知ピークがフラグメントイオンのピークであるか否かを判断するには、親イオンに対しMS/MSで強制的にフラグメントを生じさせ、生じるイオンのm/z値を比較し検証する手法が有効である。
そこで、本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物である化合物5(具体例1)の分子量に相当するm/z=530.4の親イオンについてMS/MS分析を行い、ESIスペクトルから得られるm/z=544.4(化合物Aに相当(イオンA))、またはm/z=454.3(化合物Bに相当(イオンB))のイオンについて、フラグメントか否かの確認を行った。MS/MS分析時に親イオンにかけるRelative Collision Energy値は、選択した親イオンが、約半分の強度になり、且つフラグメントが安定して確認できる値を用いた。
この結果、本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物である化合物5のESIスペクトルと、該親イオンに対するMS/MSスペクトルで得られたフラグメントピーク値とを比較した結果、化合物Aに相当するm/z=544.4(イオンA)、または化合物Bに相当するm/z=454.3(イオンB)といったイオンは本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物5の親イオンのフラグメントからは検出されないことがわかり、化合物A及び化合物B、つまりイオンA及びイオンBについては、明確に存在することを確認した。実際の測定スペクトルを図1及び図2に示す。
≪分析時の加熱及び、サンプル後処理時の加熱工程によるトリフェニルメタン化合物分子自体の分解の有無について≫
本発明で用いたマルチプルヘッドスペース抽出法によるアニリン含有量測定方法において、測定時の加熱によるトリフェニルメタン化合物分子自体の分解の有無を確認するため、加熱処理前後の化合物1及び化合物2をそれぞれ0.5mgずつ秤量し、さらに1mlのメタノールを加えたものをサンプルとし、高速液体クロマトグラフィーにより分析を行った。その結果、加熱処理前のサンプルと、加熱処理後のサンプルとでは、イミノ基を有するトリフェニルメタン化合物及びその他成分に由来するピークには変化が見られず、加熱処理を行ったサンプルのアニリン含有量のみが減少していることを確認した。このことより、本発明の測定方法に含まれる加熱処理では、トリフェニルメタン化合物の構造変化は生じないことを確認した。
また、同様にして、化合物3〜化合物7の製造例で用いた後処理条件前後でも、加熱処理によるトリフェニルメタン化合物の構造変化は生じないことを確認した。
本発明のイミノ基を有するトリフェニルメタン化合物の物性値を表1に示す。
[実施例1]
スチレン−ブチルアクリレート共重合体(ピーク分子量1.7万、Mw=22万、Mn=0.7万、Tg=55℃) 100質量部
マグネタイト(八面体、平均粒子径0.22μm) 90質量部
化合物3 2質量部
ポリエチレンワックス(融点110℃) 4質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで十分に予備混合した後、150℃に設定した2軸混練押し出し機によって溶融混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物を更に風力分級機で分級し、重量平均粒径7.3μmの分級微粉体を得た。
得られた分級微粉体100質量部に、乾式法で製造されたシリカ微粉体(BET比表面積200m2/g)100質量部あたりアミノ変性シリコーンオイル(アミン当量830、25℃における動粘度70×10-6m2/s)20質量部で処理した疎水性シリカ0.7質量部を加え、ヘンシェルミキサーで混合し、目開き150μmのメッシュで篩い正帯電性磁性一成分トナー1を得た。
得られたトナー1について、次に示す各評価試験を行った。
市販のデジタル複写機iR105(105cpm、a−Si感光体搭載(反転現像方式)、キヤノン(株)社製)においてプリントスピードを110枚/分になるように改造し用いた。感光体ドラム表面での剥離放電或いはリーク現象を促進させるために、図3に示す様な、ベタ黒画像部301aとベタ白画像部301bとがプリント進行方向(搬送方向)と平行に、交互に並べられたチャート301を用い、常温/常湿環境下(23℃/50%RH)、高温/高湿環境下(30℃/80%RH)、そして常温/低湿環境下(23℃/20%RH)の環境条件下において連続100万枚連続プリントする耐久試験を行った。尚、このチャート301は、A4サイズであり、チャート301の全体の領域に対するベタ黒画像部301aの割合は50%である。
クリーニング装置内のクリーニングブレード近傍の青色状微粉体存在状態や、黒ポチ、画像濃度差等の画像欠陥、およびドラム電位低下率について、以下に示す評価ランクにより評価した。
<クリーニング装置内クリーニングブレード近傍の青色状微粉体の存在確認(目視評価)>
A:無し
B:極僅かに存在する(ほぼ無し)
C:僅かに存在する
D:多く存在する
<黒ポチ>
ハーフトーン(HT)画像(潜像密度50%)において、チャートのベタ黒に相当する部分の黒ポチの発生数をカウントし、以下に示す3段階に分類し判定した。
A:黒ポチの発生がない
B:黒ポチの発生が1個以上30個未満
C:黒ポチの発生が30個以上(不可レベル)
<画像濃度差>
HT画像(潜像密度50%)において、チャートのベタ黒に相当する部分の濃度変動の評価を行った。すなわち、耐久試験開始時のベタ黒部の画像濃度と、100万枚耐久試験後のベタ黒部の画像濃度とをマクベス反射濃度計(マクベス社製)により測定し、その差を求め、以下に示す3段階に分類し判定した。
A:濃度変動が0.1未満
B:濃度変動が0.1以上0.2未満
C:濃度変動が0.2以上(不可レベル;目視で濃度差が確認できるレベル)
<ドラム電位低下率>
直接電圧印加方式(電子写真学会誌 第22巻 第1号(1983))により、図4に示すように、ドラム表面のベタ黒画像相当部について、耐久試験前電位(V0)と耐久試験後電位(V1と)の差分ΔV2(=V0−V1)を耐久試験前電位(V0)で割ったものをドラム電位低下率として算出した。
本実験に用いた直接電圧印加方式の感光体測定装置の概要を図5に示す。高圧電源は、DC/ACコンバータ(コンピュータにより制御されている)からの出力をレスポンスの早いオペアンプを使用し、増幅している。電源と感光体との間には必要に応じて抵抗、コンデンサーが入れられるようになっており、それにより帯電の時定数を変えられる。光源は前後左右に4個配置されており、電極の下に配置された反射ミラーで露光されるようになっている。各光源とも、感光体との間には各種フィルターをセット出来る様になっている。
次に測定シーケンスについて説明する。本実験においては、感光体ドラムをコンデンサーとみなしたコンデンサーモデルとして測定する。図6に測定シーケンスを、図7に測定回路の概要図を示す。
測定は、図6に示す測定シーケンスに従って進められる。詳細には、光源により感光体の履歴を除去するためのイレース露光および前露光を感光体に照射し、約10[msec]後に所定の印加電圧(Va)を感光体に印加する。その後、約0.2[sec]後にVd+Vc分の電位を測定する。測定後、感光体をアースに落とし、次にVc成分の電位測定を行い、これらの結果から求めたVdを感光体電位とした。
得られたドラム電位低下率を以下に示す3段階に分類し判定した。
A:電位低下率が10%未満
B:電位低下率が10%以上30%未満
C:電位低下率が30%を超えるもの(不可レベル)
表2に、本例におけるクリーニングブレード近傍の青色状微粉体存在状態、黒ポチや画像濃度差等の画像欠陥、およびドラム電位低下率の評価結果を示す。また、画像濃度差については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移した。また、カブリも目視上問題ないレベルであった。
[実施例2]
スチレン−ブチルアクリレート共重合体(ピーク分子量1.9万、Mw=28万、Mn=0.9万、Tg=56℃) 100質量部
マグネタイト(八面体、平均粒子径0.18μm) 90質量部
化合物4 2質量部
フィッシャートロプシュワックス(融点110℃) 3質量部
上記材料を用い、実施例1と同様にして磁性一成分トナー2を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移した。また、カブリも目視上問題ないレベルであった。
[実施例3]
スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体(70:20:4:6、ピーク分子量1.4万、Mw=11万、Mn=1万、Tg=56℃) 90質量部
スチレンーブタジエン共重合体(ピーク分子量2.5万、Mw=27万、Mn=2万) 10質量部
マグネタイト(八面体、平均粒子径0.18μm) 90質量部
化合物5 2質量部
フィッシャートロプシュワックス(融点110℃) 2質量部
パラフィンワックス(融点76℃) 4質量部
上記材料を用い、実施例1と同様にして磁性一成分トナー3を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移した。また、カブリも目視上問題ないレベルであった。
[参考例]
スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体(70:20:4:6、ピーク分子量1.4万、Mw=11万、Mn=1万、Tg=56℃) 100質量部
マグネタイト(八面体、平均粒子径0.23μm) 90質量部
化合物6 2質量部
フィッシャートロプシュワックス(融点110℃) 5質量部
上記材料を用い、実施例1と同様にして磁性一成分トナー3を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移した。また、カブリも目視上問題ないレベルであった。
[比較例1]
参考例において、化合物6の代わりに化合物1を用いる以外は同様にして磁性一成分トナー5を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移し、カブリも目視上問題ないレベルであった。また、高温/高湿環境下での試験に於いて、クリーニングブレード近傍に多く存在が確認された青色状微紛体についてマス分析を行った結果、化合物1に由来するピーク(メインピークm/z=530.4)を確認した。
[比較例2]
実施例3において、化合物5の代わりに化合物2を用いる以外は同様にして磁性一成分トナー6を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移し、カブリも目視上問題ないレベルであった。また、高温/高湿環境下での試験に於いて、クリーニングブレード近傍に多く存在が確認された青色状微紛体についてマス分析を行った結果、化合物2に由来するピーク(メインピークm/z=530.4)を確認した。
[比較例3]
実施例2において、化合物4の代わりに化合物7を用いる以外は同様にして磁性一成分トナー7を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。尚、各評価試験での耐久画像濃度推移については高温/高湿環境下でやや低めであるが、全環境を通して問題ないレベルで推移した。また、カブリも目視上問題ないレベルであった。