JP4216342B2 - コポリマー1の摂取又は吸入を通じての多発性硬化症の治療 - Google Patents

コポリマー1の摂取又は吸入を通じての多発性硬化症の治療 Download PDF

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Description

本発明の分野
本発明は、(以下に定義する)コポリマー1の摂取又は吸入による多発性硬化症の治療に関する。本発明は、多発性硬化症の治療のために使用されるコポリマー1を含んで成る医薬組成物であって、摂取又は吸入による投与のために配合されるものにも関する。
本発明の背景
コポリマー1(Copolymer-1)であって、酢酸グラチラマー(glatiramer acetate)としても知られ、そして商標コパキソンCopaxone▲R▼の下で販売されているものは、L−グルタミン酸、L−アラニン、L−チロシン、及びL−リジンを含有するポリペプチドのアセテート塩を含む。これらアミノ酸の平均モル分率は、それぞれ、0.141,0.427,0.095、及び0.338であり、そしてコポリマー1の平均分子量は、4,700〜11,000ダルトンの間にある。それは、さまざまな種における、全てのミエリン抗原、例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)(Sela M et al., Bull Inst Pasteur(1990)88 303-314)、プロテオリピド・タンパク質(PLP)(Teitelbaum D et al., J Neuroimmunol(1996)64 209-217)、及びミエリン・オリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)(Ben-Nun A et al., J Neurol(1996)243(Suppl 1)S14-S22)を含むマウス脊髄ホモジネート(mouse spinal cord homogenate(MSCH))を含むさまざまな脳炎誘発物質(encephalitogens)により引き起こされる実験的アレルギー性脳脊髄炎(encephalomyelitis(EAE))を抑制することが証明されている非自己抗原である。EAEは、多発性硬化症のための認められたモデルである。
コポリマー1は、皮下、腹膜内、静脈内又は筋肉中に注射されたときに活性であることが証明されている(D.Teitelbaum et al., Eur.J.Immunol.(1971)1:242-248;D.Teitelbaum et al., Eur.J.Immunol.(1973)3:273-279)。
第III期の臨床試験において、コポリマー1の毎日の皮下注射が、障害の進行を遅らせ、そして多発性硬化症の悪化−緩解における再発率を減少させることが発見された(K.P.Johnson, Neurology(1995)1:65-70)。コポリマー1療法は、現在のところ、その毎日の皮下投与に限られている。
最近、多発性硬化症の特別に認可された治療の全てが、上記活性物質の自己注射を含む。しばしば観察される注射部位の問題は、刺激作用、過敏性、炎症、痛み、そしてさらに壊死(少なくとも1の場合においては、インターフェロンβ 1−B処理)及び低レベルの患者の服薬遵守を含む。それ故、他の投与方法が望ましい。
EP特許第359,783号は、自己抗原の経口投与による自己免疫疾患の治療について開示している。それは、多発性硬化症の治療のためのMBPの経口投与を開示している。自己抗原の経口投与は、“経口寛容(oral tolerance)”といわれてきた。
PCT国際出願公開第WO91/12816、WO91/08760、及びWO92/06704は全て、さまざまな自己抗原を用いた“経口寛容”方法を使用した他の自己免疫疾患の治療について開示している。しかしながら、これらの文献のいずれも、非自己抗原コポリマー1の経口投与による多発性硬化症の治療について全く開示していない。上記の特許及び文献の全ての内容を全体として引用により本明細書中に取り込む。
それ故、摂取又は吸入を通じてのコポリマー1の経口投与による多発性硬化症の治療方法を提供することが本発明の目的である。
【図面の簡単な説明】
図1と図2は、脾臓細胞増殖により評価されるとき、ラット(図1)及びマウス(図2)におけるモルモット・ミエリン塩基性タンパク質(GPBP)に対する免疫応答に対するコポリマー−1の効果を示す。
図3と4は、サイトカイン放出に対するコポリマー−1の効果を示す。
図5は、経口投与されたコポリマー−1によるマウスにおけるEAEの抑制を示す。(SJL/J×BALB/c)F1マウスを、PBS(■)、0.1mgコポリマー−1(□)、0.25mgコポリマー1(▲)、又は0.5mgコポリマー−1(△)で飼養した。各投与を、−7;−5;−3;0;2;4;及び6日目に7回行った。EAEは、MSCHの注射により0日目に誘導された。
図6は、コポリマー−1摂取ラットの脾臓から得られたT−細胞系による増殖及びサイトカイン分泌を示す。細胞は、培地、コポリマー−1(50μg/ml)又はコニカバリンA(ConA)(5μg/ml)と共に培養された。これらの抗原に対する増殖及びサイトカイン分泌応答を計測した。
図7は、コポリマー−1摂取ラットの脾臓からのT−細胞系によるEAEの阻害を示す。細胞(20×106/ラット)を、コポリマー−1、その後のEAE誘導による刺激の3日後に腹膜内に注射した。
図8は、コポリマー−1摂取マウスの脾臓から得られたT−細胞系によるEAEの阻害を示す。細胞(15×106/マウス)を、コポリマー−1、その後のEAE誘導による刺激から3日後に静脈内に注射した。
図9は、3匹のアカゲザルにおける、EAE疾患誘導後の、臨床等級対コポリマー1の日数を示す。
図10は、腸溶コート・対非コート医薬剤型を比較する試験における、6匹のアカゲザルにおけるEAE疾患誘導後の臨床等級対コポリマー−1の日数を示す。ゼロ(0)における値は、それらの結果をよりよく示すためにy−軸上で分離されている。
本発明の詳細な説明
従って、本発明は、多発性硬化症の治療のための医薬の製造におけるコポリマー−1の使用に関する。上記医薬は、摂取又は吸入のいずれかを通して投与される。
本発明は、治療的有効量のコポリマー−1の投与を含む多発性硬化症の治療方法であって、その投与が摂取又は吸入のいずれかを通してのものであるものにも向けられている。
本発明は、医薬として許容される担体及び治療的に有効量のコポリマー−1を含む摂取又は吸入を通して投与される医薬組成物であって、その医薬組成物が多発性硬化症を治療するために使用されるものにも、さらに向けられている。
上述のように、コポリマー−1は、L−グルタミン酸、L−アラニン、L−チロシン、及びL−リジンを含むポリペプチドのアセテート塩を含む。これらアミノ酸の平均モル分率は、それぞれ、0.141,0.427,0.095、及び0.338であり、そしてコポリマー−1の平均分子量は、4,700〜11,000ダルトンの間にある。
本発明は、例えば、コポリマー−1の経口投与がEAEの抑制において有効であり、そしてそれ故、多発性硬化症の治療のために治療的価値をもつという観察に基づく。
企図されるように、コポリマー−1は、免疫系の感作の1次源であると信じられている粘膜層内のリンパ様組織と接触される。これらの粘膜層は、洞(sinuses)、気管(trachea)、気管支通路(bronchial passages)(それらはBALT又は気管支関連リンパ様組織として知られている)、及び胃腸層(GALT又は腸関連リンパ様組織として知られている)において(必ずしも排他的ではないけれども)見られることができる。従って、コポリマー−1の投与は、コポリマー−1が摂取又は吸入の方法により体内に導入されるような方法を含むと理解される。例えば、コポリマー−1は、飼養を通じて口により、胃管を通じて、気管支通路内への吸入により、又は鼻吸入により、投与されることができる。
本発明の1の例示的態様においては、コポリマー−1は、1日当り0.1〜1000mgの量で経口的に導入され、これは、単一投薬として又は多数投与において、投与されることができる。当業者により理解されるように、治療的に有効な投与量とは、一般に、患者の年齢、性、及び身体の症状の関数、並びに投与されるべき他の同時発生処置の関数である。最適な、治療的有効投与量の決定は、十分に当業者の範囲内にある。
コポリマー−1が経口的に導入されるとき、それは、他の食品形態と混合され、そして固体、半固体、懸濁液、又はエマルジョンの形態で摂取されることができ;そしてそれは、水、懸濁剤、乳化剤、香味強化剤、その他を含む、医薬として許容される担体と共に混合されることができる。1の態様においては、経口組成物は、腸溶コートされている。腸溶コーティングの使用は、本分野においてよく知られている。例えば、K.Lehman, Acrylic Coatings in Controlled Release Tablet Manufacture, Manufacturing Chemist and Aerosol News, p.39(June 1973)、及びK.Lehman, Programmed Drug Release From Oral Program Forms;Pharma.Int., vol.ISS 3 1971, p.34-41は、腸溶コーティング、例えば、オイドラギットS(Eudragit S)及びオイドラギットL(Eudragit L)を教示している。Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd.ed.,も、オイドラギットSとオイドラギットLの適用を教示している。本発明において使用されることができる1のオイドラギットは、L30D55である。
コポリマー−1は、吸入又は鼻滴注により上述の一定の形態において鼻に投与されることもできる。さらに、経口的吸入も、気管及び気管支通路の粘膜層にコポリマー−1をデリバリーするために使用されることができる。
コポリマー−1は、本分野において知られた方法、例えば、米国特許第3,849,550号中に開示されているものであって、チロシン、アラニン、γ−ベンジル・グルタメート、及びε−N−トリフルオロアセチルリジンのN−カルボキシ無水物が開始剤としてジエチルアミンを用いて無水ジオキサン中で周囲温度において重合されるような方法により、製造されることができる。グルタミン酸のγ−カルボキシル基の脱ブロッキングは、氷酢酸中の臭化水素により行われ、そしてその後、1Mピペリジンによるリジン残基からのトリフルオロアセチル基の除去が行われる。
PCT/WO95/31990中に記載されているように、約7±2キロダルトンの所望の平均分子量をもつコポリマー−1は、好ましくは、保護されたコポリマー−1を臭化水素酸と反応させてトリフルオロアセチル・コポリマー−1を作り、このトリフルオロアセチル・コポリマー−1を水性ピリビン溶液で処理してコポリマー−1を作り、そして所望の平均分子量をもつコポリマー1をもたらすように、コポリマー−1を精製することを含む方法により、調製されることができる。
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。しかしながら、本発明は、それにより限定されるものと解釈されてはならない。特にことわらない限り、全ての部、パーセンテージ、その他は、重量によるものである。
実施例1
抗原−PCT/WO95/31990中に記載された方法に従って調製されたコポリマー−1をTeva Pharmaceutical Industries Ltd., Israelから得た。GPBPを、Hirshfeld H et al., Febs Lett(1970)7 317-320中に記載されたような酸抽出及び硫酸アンモニウム沈殿によるモルモットの脊髄から調製した。
動物−(PL/J×SJL/J)F1雌マウス(8〜10週齢)を、Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME)から得た。雌Lewisラット(8〜12週齢)を、Harlau-Olac(Bicester, G.B.)から得た。
EAEの誘導及び評価−マウスに、4mg/mlのミコバクテリウム・チューバキュロウセス(mycobacterium tuberculosis)(H37Ra)(Difco Lab, Detroit, Mich.)を含む、等容量の完全Freund’sアジュバント(CFA)中に乳化された200μgGPBPを注射した。0.1mlの合計容量におけるエマルジョンを、4つの足蹠の全てに注射した。直後及び24時間後に、百日咳毒素(250ng/マウス)(Sigma)を静脈内に注射した。
ラットを、4mg/mlのH37Raを含むCFA中に1:1で乳化したGPBP25μgで免疫化した。0.1mlの合計容量における上記エマルジョンを、その2つの足蹠に注射した。
動物を、疾患の徴候について誘導の10日後から毎日、検査した。EAEを、以下のように格付けした:0−疾患なし、1−ぐにゃりとした尾(limp tail)、2−後肢麻痺、3−全4肢麻痺、4−瀕死状態、5−死。
経口寛容(Oral Tolerance)の誘導−マウスに、18−ゲージのステンレス・スチールの飼養針(Thomas)による胃挿管により、−7,−5,−3,0,2,4、及び6日目に、ホスフェート緩衝液化生理食塩水(PBS)中に溶解された250μgGPBP又はコポリマー−1を与えた。EAEを、0日目に誘導した。
ラットに、滅菌飼養管(Uno Plast, Denmark)を使用した胃挿管によりPBS中に溶解された1mgGPBP又はコポリマー−1を与えた。ラットを、2〜3日の間隔で疾患誘導前に5回(5mgの合計投与量)飼養した。対照マウスとラットを、PBSで模擬飼養した。
増殖アッセイ−脾臓細胞の増殖応答を、上記のようにEAE誘導から10〜11日後にテストした。各群内の3動物からの細胞をプールし、そして0.2mlの最終容量においてさまざまな抗原濃度(GPBP)をもつマイクロタイター・プレート内で3連で培養した(5×105マウス細胞と2×105ラット細胞)。マイクロタイター・プレートは、1%自己血清を補った(Sigma Biochemicals, St.Louis, Missouriから入手可能な)RPM1 1640培養基を含んでいた。72時間のインキュベーションの後、細胞を、18時間1μCi{3H}−チミジンでパルスし、そして次に濾紙上に収穫し、そして放射能をカウントした。
サイトカイン分泌アッセイ−脾臓を、EAE誘導から10−11日後に取り出し、そして各群から3匹のマウスの細胞をプールした。細胞(5×106/ml)を、抗原(GPBP 100Fg/ml)の存在又は非存在下、10%FCS(子ウシ胎児血清)を補ったRPMI 1640中で24ウェル・プレート内で2連で培養した。上清を、20〜24時間の培養後に収穫した。IL−2,IFN−γ,IL−4,IL−6、及びIL−10についての定量的ELISAを、製造者の指示に従って対応のサイトカイン(Pharmingen, La Jolla, CA)に特異的な対合mAbsを使用して行った。
結果
LewisラットにおけるEAEの臨床的顕示の防止における経口投与されたコポリマー−1の効果を、GPBPによる経口抑制を誘導することが先に報告されている条件下でアッセイされるとき、GPBPの効果と比較した(PJ Higgins & HL Wiener, J Immunol(1988)140 440-445)。以下の表1中に要約された結果は、コポリマー1が、対照として役立つPBS飼養ラットに比較したとき、GPBPよりも有効であり、そしてEAEの発生率(54%阻害)及び重度(57%阻害)の両者を有意に減少させたということを証明している。
Figure 0004216342
各図は、3〜5の独立実験の累積結果を表す。p値は、対照群からの統計的に有意な差異を表す(Fisher完全テスト)。平均最大等級を群全体について計算した。
GPBPに対する免疫応答に対する抗原飼養の効果−疾患誘導抗原−GPBPに対する免疫応答に対するコポリマー−1とGPBPの経口投与の効果を、マウスとラットにおいてテストした。これらの結果は図1中に要約されており、それは、GPBPで刺激されたラット脾臓細胞懸濁液中での経口投与された化合物(コポリマー−1又はGPBP)の各々による細胞増殖における減少を示している(図2は、マウスからの同様の結果を示す)。図に見られるように、コポリマー−1の経口投与は、上記2つの種におけるGPBPに対する増殖性応答のほぼ完全な阻害をもたらした。両種において、コポリマー−1は、GPBPに対する応答の阻害において、GPBPよりも有効であった。
サイトカインのレベルを、マウス由来の脾臓細胞培養物の上清中で計測した(図3と4)。PBSを与えられた対照マウスは、GPBPに応答して、IL−2;IFN−γ、及びIL−6(図示せず)を分泌した。コポリマー−1又はGPBPを与えられたマウスにおいては、GPBP刺激に応答して作られたTh1炎症誘発性サイトカインIL−2とIFN−γの量は、対照群におけるよりも低かった。そしてコポリマー−1は、より有効な抑制剤である。IL−4とIL−10は、いずれの処理群によっても検出されなかった。
これらの結果は、コポリマー−1が、経口で投与されたときEAEの抑制において有効であるということを証明している。経口投与されたコポリマー−1の臨床的な保護効果は、GPBPに対するT細胞の免疫応答、例えば、増殖及び炎症誘発性サイトカイン(IL−2及びIFN−γ)放出のダウン・レギュレーションに関係する。
実施例2
コポリマー−1の経口投与の抑制に対する追加の試験をラットとマウスにおいて行った。これらの試験は、各種における処置のための最適投与量を確立した。コポリマー−1によるEAEの経口抑制の下にあるメカニズムを理解するために、コポリマー1特異的T−細胞系を、コポリマー−1飼養された動物の脾臓から単離した。上記系のインビトロ反応性及び疾患誘導に対するそれらのインビボ効果を、試験した。
材料及び方法:
コポリマー1特異的T細胞系の単離−Lewisラットに、2〜3日の間隔で、1mgコポリマー−1で5回、そして(SJL/J×BALB/c)F1マウスを、250μgコポリマー−1で7回、与えた。最後の飼養から4〜12日後に、動物を殺し、そしてそれらの脾臓を取り出した。
3匹の動物の脾臓細胞をプールし、そして4日間1%自己血清を含有する培地中でコポリマー−1(500μg)と共にインキュベートした(50×106/プレート)。14〜21日目の各細胞(4−6×106/プレート)を、同質遺伝子的な照射された(3000rad)ラット胸腺細胞(100×105/プレート)又はマウス脾臓細胞(50×106/プレート)上に提示されたコポリマー−1に3日間露出させることにより再刺激した。刺激の後に、T細胞成長因子(TCGF)としてのConA活性化正常マウス脾臓細胞の10%上清中での増殖を行った。
増殖アッセイ−T細胞系(1×104細胞)を、マイクロタイター・プレート内で0.2mlの最終容量において照射された(3000R)胸腺細胞(ラット−1×106)又は脾臓細胞(マウス−5×105)と共に、そして上記抗原(10μgコポリマー−1;1μgConA)と共に、培養した。
48時間のインキュベーションの終わりに、培養物を、3H−チミジンでパルスし、そして6〜12時間後に収穫した。
サイトカイン・アッセイ−ラット系のT細胞(0.5×106/ml)を、上記抗原(50μgコポリマー−1、5μgConA)と共に又はなしで照射された胸腺細胞(10×106)と共にインキュベートした。細胞を、24時間、IL−2,TNFα,IL−4、及びIL−10−計測のために10%FCSを補ったRPMI 1640中で培養し、そしてTGFβ計測のために72時間無血清培地−DCCM−1(Biological Industries, Kibbutz Beit Haemek, Israel)中で、培養した。
上清中のサイトカイン・レベルを、対応のサイトカインに特異的なモノクローナル抗体の対を使用して定量的ELISAにおいて計測した。
EAEの誘導−(SJL/×BALB/c)F1マウスに、1mg/mlH37Raを含有するCFA(Difco Lab, Detroit, Mich)中で1:1比において乳化された2mgのマウス脊髄ホモジネート(MSCH)を、全4つの足蹠に注射した。百日咳毒素(250ng/マウス、Sigma)を、静脈内に2回、直後に1回、そして48時間後に再び注射した。
結果:
1.ラットとマウスにおける投与量応答試験
ラットに、確立されたプロトコールに従って(上記、材料及び方法を参照のこと)、0.5,1又は2mgのコポリマー−1を5回与え、そして次に、EAE誘導について攻撃した。これらの結果は、表2中に要約され、そして最も有効な投与量が1mgのコポリマー−1であり、0.5mg又は2mgのコポリマー−1がEAEの抑制においてより低く有効であったということを示している。
(SJL/J×BALB/c)F1マウスに、胃挿管により−7;−5;−3;0;2;4;及び6日目に、0.1,0.25又は0.5mgコポリマー−1を7回与えた。EAEを、MSCHの注射により0日目に誘導した。図5に要約された結果は、コポリマー−1の経口投与がマウスにおいて上記疾患を抑制することができ、そしてその最も有効な投与量が0.1mgコポリマー−1であったということを証明している。0.25mgのコポリマー−1はより低く有効であり、そして0.5mgの投与量は完全に不活性であった。従って、マウスとラットの両者における結果は、経口コポリマー−1が最適投与量応答曲線を有し、そしてこの有効経口投与量を上廻ることがEAEの無効な抑制をもたらしたということを証明している。
2.コポリマー−1飼養動物から確立されたコポリマー−1特異的TS−系を用いた試験
コポリマー−1特異的Tサプレッサー細胞系を、コポリマー−1を与えることによりEAEに対して非応答性を付与されたラット及びマウスの脾臓から単離した。ラットから単離された上記系の増殖及びサイトカイン分泌応答を図6に示す。この系は、コポリマー−1に応答して増殖し、そしてIL−2、いくつかのIL−10とTGFβを分泌したが、TNFα又はIL−4を分泌しなかった。このサイトカイン特性は、経口MBPにより誘導されることが示された(Chem et al, Science 265, 1237, 1994)Th3型の細胞に匹敵する。
インビボにおいてEAEを防ぐコポリマー−1特異的系の能力を試験した。細胞系を、コポリマー−1によるインビボ刺激の3日後に注射した(20×106細胞/ラットをi.p.注射し、そして15×105細胞/マウスをi.v.注射した)。これらの動物を、細胞移動直後のEAE誘導のために攻撃した。図7と8中に示された結果は、これらの疾患が、受容体動物においてかなり阻害されたということを証明している。従って、ラット及びネズミの両者のコポリマー−1 T−細胞系は、コポリマー−1の経口投与により誘導されたEAEに対する非応答性を養子性に(adoptively)移行した。これらの細胞は、インビボにおける病理学的な免疫応答を能動的にダウンレギュレートする。
Figure 0004216342
各発生率の数値は、2個体の実験の累積結果を表す。平均最大臨床等級を、群全体について計算した。
実施例3
アカゲザルにおけるEAEの誘導に対するコポリマー−1の経口投与の効果を試験した。
材 料
コポリマー−1は、2つの投与量レベル:1mgのコポリマー−1と20mgのコポリマー−1を含む、腸溶コートされた硬質ゼラチン・カプセル内で、Teva Pharmaceutical Industries Ltd.により提供された。各投与量レベルを、マンニトールを使用して配合し、そしてオイドラギットL30D55によりコートした。偽薬又は対照カプセルは、5mgの糖を含有するカプセルを含んでいた。
子ウシMBPを、Life Technologies, Grand Island, New Yorkから購入した。この材料は、SDS−PAGE及び銀染色後18.5kdの単一バンドを与える高く精製された調製物を表した。
飼養プロトコール
3匹のアカゲザルを以下のように処置した:1匹のサルを対照として役立たせ、そして(5mgのグルコースだけを含有する)偽薬カプセルを与えた。第2及び第3のサルに、それぞれ、1mg/飼養及び20mg/飼養の投与量においてコポリマー−1含有カプセルを与えた。動物に、全部で10飼養について1日おきに与えた:疾患誘導(0日目の免疫化)前5回、そしてその後、免疫化後5回。
疾患誘導
疾患を、後足蹠内に、FCA中8mgのウシ−MBP及び3mg H37Ra M.tuberculosisの皮膚内注射により0日目に誘導し、全注射された容量は、足蹠当り0.1〜0.15mlの間にあった。上記動物を、EAEの臨床的徴候、各種血清及びCSF免疫学的マーカー、並びに脊髄及び頭蓋MRI’sについて、追跡した。
臨床的格付け
徴候の等級を以下のように与えた:0、正常な神経学的試験;1、体重減少、摂食障害、あくび、刺激に対する遅い応答、被刺激性(irritability)又は不活発(lethargy);2、軽い神経学的兆候、無関心、よだれ、肢を使用した不器用さ、振戦、泣き声の変化、及び注視障害;3、中程度の神経学的兆候、失明(瞳孔が光に反応しない)、無動症、脚弱化、又は麻痺;4、重度の神経学的兆候、半昏睡、昏睡、四肢麻痺;5、死。
抗原−誘導リンパ球増殖
ヘパリン処置血液サンプルを、5%加熱失活胎児子ウシ血清(FCS)を含有する、Hanksバランス塩溶液(BSS)で1:1に希釈し、そしてハイパック−フィコール(hypaque-ficol)ブラジエント中に重層した。遠心分離(2000rpm、室温で20分間)は、希釈された血漿の回収及びその界面におけるリンパ球の分離を許容した。この回収されたリンパ球を、Hanks BSS −5% FCS中で3回洗浄し、そしてRPMI 1640培地、10% FCS、及び1%の以下の試薬:非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、L−グルタミン、2−メルカプトエタノール、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含む、RPMI 1640完全培地中に再懸濁させた。この回収されたリンパ球をカウントし、そして2×106/mlの最終濃度で再懸濁させた。100マイクロリッターの上記細胞懸濁液及び100マイクロリッターのMBP(20マイクログラム/ウェル)、100マイクロリッターのコポリマー−1(10マイクログラム/ウェル)又は100マイクロリッターのConA(1マイクログラム/ウェル)を含む培養物を、丸底96ウェル・マイクロタイター・プレート内に設定した。これら培養物を、6日間、5% CO2中で37℃で維持した。培養の5日目に、各ウェルを、16〜18時間、1μCiの3H−チミジンでパルスした。6日目に、上記培養物を自動細胞収獲装置により収獲し、そして液体シンチレーション法によりカウントした。刺激誘導を以下のように測定した:
Figure 0004216342
臨床結果
いずれの動物も、24日間、臨床徴候を全く示さなかった。偽薬処置動物18374は、25日目に疾患に発達し、そしてEAEの重度の顕出(5段階評価において等級=4+)に因り、28日目に殺されなければならなかった。20mgのコポリマー−1で処理された、高投与量コポリマー−1処理動物18498は、60日間の観察期間にわたり有意な臨床徴候示さなかった。低投与量コポリマー−1処理動物18497は、25日目に最小の徴候を示し始めたが、上記偽薬処置動物18374とは反対に、’497は、臨床徴候におけるかなり遅い増加を示し、そして28日目から33日目までに、2〜3+で横ばいになった。この時点で、動物’497に、全部で10日目にわたり、異なる日に5回、20mgのカプセルを与えた。図9中に見られように、3日以内に、上記動物の臨床兆候は、0まで低下し、そして2匹のコポリマー−1飼養動物’497と’498が組織学のために60日目に殺されるまで、その値に留った。
フロー・サイトメトリー
Epics C フロー・サイトメーターを、各サルから採集した末梢血リンパ球(PBL)と脳脊髄液(CSF)の両者を分析するために使用した。赤血球細胞を溶解させ、そして残りの白血球細胞(WBCS)を、適当な試薬を用いた標準的な方法を使用して洗浄し、そして染色した。以下の表3と表4は、本実施例における3匹の動物からのPBLとCSF WBCSの染色からのデータを示す。
CD4+染色細胞の数は、対照動物18374におけるよりもコポリマー−1飼養動物18497及び18498において僅かに大きかった。CD45RA−でもあるCD4+細胞の数は、下記両動物が臨床徴候を示した時(+27〜+34日目)付近で、対照動物18374と低−投与量のコポリマー−1飼養動物18497の両者において増加するようであるが、高−投与量コポリマー−1飼養動物18498においてはかなり一定して残った。CD8+CD45RA+染色細胞の数は、対照動物18374と低−投与量コポリマー−1飼養動物18497において着実に減少したが、高−投与量コポリマー−1飼養動物18498において僅かに増加した(これは、新たなCD4+細胞の産生を示している)。
対照動物18374のCSF中に在る細胞の数は、20+日日から、動物が死んだ時である28+日日まで、着実に増加した。分析は、CD4+細胞の大部分がCD45RA−であったということを示した。動物18497のCSFから集められた細胞の数は、あまりに小さかったのでカウント又は染色できなかった。動物18498から採取した細胞の数は、+27日目を除き、あまりに小さかったのでカウント又は染色できなかった。その時に採取したCD4+細胞は、主にCD45RA−であった。
Figure 0004216342
Figure 0004216342
抗原−特異的T細胞サプレッサー因子誘導物質(Tcsfi)についての分析
本実施例における上記3匹のサルの血漿中のMBP−特異的Tsfiについての分析は、以下の表5と6中に見られる。上記動物のいずれも、MBPによるEAE誘導後+13日目までに、MBP−特異的Tsfiを生産しなかった。対照動物18374は、+20日目までにいずれのTsfiを生産せず、そしてその後の生産されたレベルは、バックグラウンドのほんの少し上であった。コポリマー−1飼養動物18497と18498は、終了直前の、+13日目から+41日目までに、Tsfiの有意なレベルを、一貫して生産した。
表6は、Tsfiを含有していなかった血漿サンプルが、抗−TGF−ベータ抗体と反応しなかったということを示している。3C9抗体(抗−Tsfi)とのMBP−結合を示す血漿は、抗−TGF−ベータ抗体とも反応した。組換えヒトTGF−ベータは、抗−TGF−ベータと反応したが、3C9抗体と反応しなかった。
Figure 0004216342
Figure 0004216342
実施例4
上記実施例3のために記載したプロトコールに実質的に従って、6匹のサルを処置し、そしてその後に分析した。
対照偽薬飼養動物18746に、グルコースを含有するカプセルを与えた。動物18586に、割れ目の入った腸溶コーティングをもつカプセル内の1mgコポリマー−1を与えた。動物18639に、割れ目の入った腸溶コーティングをもつカプセル内の20mgコポリマー−1を与えた。動物18724に、無傷の腸溶コートされたカプセル内の1mgコポリマー−1を与えた。動物18810に、無傷の腸溶コートされたカプセル内の10mgのコポリマー−1を与えた。動物18962に、無傷の腸溶コートされたカプセル内の20mgコポリマー−1を与えた。
飼養、疾患誘導、及び追跡のスケジュールは、上記実施例3のものと実質的に同じであった。
結 果
図10を参照して分かるように、対照サル18746は、+21日目に始まる急性疾患に発展し、そして疾患顕出から+23日目に死んだ。(両投与量において)胃内で開く、“割れ目の入った(cracked)”腸溶コーティングにより処置された動物18586と18639は、上記疾患から保護されず、そして疾患顕出から2〜3日以内に死んだ。腸溶コートされたカプセル内のコポリマー−1を与えられたサルの全ては、上記疾患から完全に保護され、そしてそれらが組織学のために殺されるときである、60日目までに、EAEの兆候を全く顕出しなかった。

Claims (8)

  1. 多発性硬化症を患う患者の治療における経口投与用の、腸溶コートされた組成物中、0.1mg〜1,000mgの固形酢酸グラチラマー(glatiramer acetate)を含む医薬。
  2. 前記腸溶コートされた組成物が、腸溶コートされたカプセルである、請求項1に記載の医薬。
  3. 前記酢酸グラチラマーの量が、1mg、10mg又は20mgである、請求項1又は2に記載の医薬。
  4. 腸溶コートされた組成物中、0.1mg〜1,000mgの量の固形酢酸グラチラマーを含む医薬組成物。
  5. 前記腸溶コートされた組成物が、腸溶コートされたカプセルである、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 前記腸溶コーティングが、オイドラギットS(Eudragit S)(登録商標)を含む、請求項4又は5に記載の医薬組成物。
  7. 前記腸溶コーティングが、オイドラギットL(Eudragit L)(登録商標)を含む、請求項4又は5に記載の医薬組成物。
  8. 前記オイドラギットL(登録商標)が、L30D55である、請求項に記載の医薬組成物。
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