JP4215291B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油に動圧を発生させ、その動圧により軸部材と軸受部材とを相対的に回転自在に支持するように構成した動圧軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、モータ等の各種装置において、特に高速回転に対応し得るようにオイル等の潤滑油の動圧を利用した動圧軸受装置が種々検討され提案されている。この動圧軸受装置においては、軸部材側の動圧面と、この軸部材の外周側又は軸端側に所定の隙間を介して装着された軸受部材側の動圧面とが対向配置されているとともに、これら対向動圧面のうちの少なくとも一方側に動圧発生用溝が形成されており、上記軸部材と軸受部材との両対向面間に介在されたオイル等の潤滑油が、回転時に動圧発生用溝のポンピング作用により昇圧され、当該潤滑油の動圧によって上記両部材が相対的に回転可能に支持されるようになっている。
【0003】
このような動圧軸受装置において、例えば、特開昭58−50318号記載の装置では、2箇所の動圧軸受部が軸方向に離間して設けられているとともに、これら2箇所の動圧軸受部内に充填された潤滑油どうしが、空気層を介在して互いに分離した状態に配置されている。このような潤滑油を分離配置した動圧軸受装置では、各動圧軸受部内の潤滑油が表面張力によって保持されているとともに、両動圧軸受部どうしの間の空気層が、軸部材に貫通形成された連通孔によって大気側に開放されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の潤滑油分離配置型の動圧軸受構造では、2箇所の動圧軸受部どうしの間を潤滑油で連続的に満たした型式の装置に比して、保持される油量がかなり少なくなるため、軸受部の外端部分で潤滑油が枯渇し易いという問題があり、特に、起動・停止時等において軸部材と軸受部材とが傾いた状態で、いわゆる振れ回りを生じると、軸部材と軸受部材とが油膜を介在させないで直接金属接触を起こす危険がある。
【0005】
そこで本発明は、簡易で低コストな構造で、軸部材と軸受部材とを安定的に保持させ、動圧軸受装置の信頼性を向上させることができるようにした動圧軸受装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、請求項1記載の発明では、軸部材と、この軸部材に対して所定の隙間を介在して装着された軸受部材とを有し、
上記軸部材と軸受部材との間の隙間に潤滑油が充填された動圧軸受部が、前記軸部材の軸方向に離間して2箇所設けられているとともに、
上記2箇所の動圧軸受部における潤滑油どうしが、空気層を介在して互いに分離した状態に配置され、
上記各動圧軸受部に設けられた動圧発生用溝により潤滑油が加圧されることによって、前記軸部材と軸受部材とが相対回転可能に支持される動圧軸受装置において、
上記2箇所の動圧軸受部にそれぞれ設けられた動圧発生用溝は、回転停止時における前記軸部材と軸受部材との傾きを補正するように潤滑油を所定の方向に移動させるアンバランス形状に形成されているとともに、
上記2箇所の各動圧軸受部における両端部にそれぞれ連続するようにして、毛細管力により潤滑油を保持する毛細管シール部が設けられ、
これらの各毛細管シール部のうち、潤滑油の移動方向下流側の毛細管シール部における潤滑油の許容量が、前記潤滑油の移動量より大きく設定され、
上記移動方向下流側の毛細管シールを構成する上記軸受部材の内周面には、隣接する動圧軸受部から軸方向に離れるに従って拡径する傾斜面が形成され、
上記移動方向下流側の毛細管シール部のさらに下流側には、前記毛細管シール部に連続し、且つ上記毛細管シール部の隙間をさらに拡大した隙間を有する保油部が設けられ、
上記保油部を構成する上記軸受部材の内周面には、上記傾斜面に連続し上記傾斜面より傾斜角が大きい第1傾斜面と、第1傾斜面に連続し上記第1傾斜面より傾斜角が小さい第2傾斜面と、が形成され、上記第2傾斜面は、上記軸受部材の内周面のうち最も半径方向外側に位置する。
【0007】
また、請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の各動圧軸受部が、ラジアル動圧軸受部から構成され、かつ、軸部材と軸受部材との傾きを補正する潤滑油の移動方向が、装置の軸方向外側に設定されている。
【0008】
さらに、請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の各動圧軸受部が、スラスト動圧軸受部から構成され、かつ、軸部材と軸受部材との傾きを補正する潤滑油の移動方向が、装置の半径方向外側に設定されている。
【0009】
さらにまた、請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の保油部は、動圧軸受部における潤滑油の容量の5倍以上の貯溜容量を有する。
【0010】
請求項5記載の発明では、上記請求項4記載の保油部は、動圧発生用溝のアンバランス形状に基づく潤滑油に対する加圧力の不均衡を解消するまで移動した潤滑油を受け入れるように構成されている。
【0011】
このような各請求項記載の手段によれば、軸部材と軸受部材とが傾いた状態で回転の起動及び停止が行われたとしても、アンバランス形状を有する動圧発生用溝の不均衡な加圧作用に基づいて、軸部材と軸受部材との傾きを補正するように潤滑油の移動が行われるため、軸部材と軸受部材との間に油膜が常時良好に形成され、いわゆる振れ回り状態が極力抑えられた状態で回転の起動及び停止が行われる。すなわち、軸部材と軸受部材とは安定的に支持され、両部材どうしの金属接触が極力防止されるようになっている。
【0012】
この場合、特に請求項4又は請求項5のようにして、潤滑油の保持量を十分に確保しておけば、上述した油膜の形成作用が一層確実に行われるとともに、潤滑油内への摩耗粉の混入による悪影響や、潤滑油の熱劣化等が良好に防止されるようになっている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、いわゆる両端軸固定型のHDDスピンドルモータに適用した実施形態について図面により詳細に説明する。
まず、図1に示されたHDDスピンドルモータの全体構造を説明すると、このHDDスピンドルモータは、固定部材としてのステータ組1と、このステータ組1に対して図示上側から組み付けられた回転部材としてのロータ組2とから構成されている。このうちステータ組1は、図示省略した固定基台側にネジ止めされるフレーム11を有しているとともに、このフレーム11の略中央部分に立設された固定軸12が、図示上方に向かって延びている。この固定軸12の先端部(図示上端部)は、図示を省略した固定基台に対してネジ止めされる。
【0014】
また、上記フレーム11は、中空円筒状の支持ホルダー13を有しており、この支持ホルダー13の外周にステータコア14が嵌着されている。上記ステータコア14の突極部には巻線15が巻回されている。
【0015】
一方、前記ロータ組2は、図示を省略した所定の記録媒体を支持するためのハブ21を有しており、このハブ21は、当該ハブ21の中心部分に固着された軸受部材22を介して、上記固定軸12の外周側に回転自在に支承されている。すなわち、上記ハブ21は、磁気ディスク等の磁気記録媒体を外周部に装着する略円筒形状の胴部21aを有しているとともに、この胴部21aの内周側に、バックヨーク21bを介して駆動マグネット21cが環状に装着されている。この駆動マグネット21cは、前述したステータコア14の外周端面に対して環状に対向するように近接配置されている。
【0016】
図2にも示されているように、上記軸受部材22の内周側に嵌着された軸受スリーブ22Aの内周面と、前記固定軸12の外周面との間には、一対のラジアル動圧軸受部23,24が、軸方向に所定間隔離して設けられている。これらの各ラジアル動圧軸受部23,24における軸受部材22の軸受スリーブ22Aの内周面と固定軸12の外周面とは、数μmの隙間を介して対向配置されており、当該隙間内には、オイルや磁性流体等からなる所定の潤滑油Lが介在されている。
【0017】
これら2箇所のラジアル動圧軸受部23,24における各潤滑油Lは、互いに分離した状態でそれぞれ別個に充填されており、各ラジアル動圧軸受部23,24の潤滑油L,Lどうしの間に、空気層25が介在されている。この空気層25は、前記固定軸12内に貫通形成された空気穴通路12aにより装置外方の大気側に開放されている。
【0018】
そして、上記軸受部材22の軸受スリーブ22Aと固定軸12との両対向面のうち、少なくとも一方側(本実施形態では軸受部材22側)には、例えばヘリンボーン形状のラジアル動圧発生用溝26,27が環状に並列するように凹設されて、動圧軸受部Dが構成されており、前記ハブ21の回転時に、当該動圧軸受部Dにおけるラジアル動圧発生用溝26,27のポンピング作用によって潤滑油Lが昇圧されて動圧が生じ、この潤滑油Lに生じさせられた動圧によって、ハブ21がラジアル方向に軸支持されるように構成されている。
【0019】
また、上記2箇所の各ラジアル動圧軸受部23,24の各動圧軸受部Dに設けられた動圧発生用溝26,27の各々は、ヘリンボーン形状の頂部を中心として軸方向にアンバランスな形状に形成されている。より具体的には、上記各ラジアル動圧軸受部23,24における動圧発生用溝26,27は、「く」の字状をなすヘリンボーン形状の頂部を中心として装置の軸方向内側部分に、より大きな加圧力を発生させる長い溝26a,27aを有しているとともに、ヘリンボーン形状の頂部を中心として装置の軸方向外側部分に、より小さい加圧力を発生させる短い溝26b,27bを有している。
【0020】
すなわち、上記動圧発生用溝26,27の各々は、軸方向に加圧力の不均衡を生じさせ、その加圧力の不均衡を解消するまで潤滑油Lを軸方向外側に移動させるようにアンバランスな形状に構成されている。これは、以下述べるように固定軸12と軸受部材22との間の傾きを補正するためである。
【0021】
例えば図2において、回転停止時に、固定軸12と軸受部材22との間に傾きが生じた場合には、固定軸12の図示上下における端部分が、動圧発生用溝26の図示上部側及び動圧発生用溝27の図示下部側にそれぞれ接触することとなる。しかしながら、このような傾きがあったとしても、回転開始時に、上述した動圧発生用溝26,27のアンバランスな形状に基づいて潤滑油Lが軸方向外側に移動させられるから、上述した固定軸12と軸受スリーブ22Aとの接触部分に潤滑油Lの油膜が形成されることとなり、その油膜の加圧力によって、両部材どうしの接触が防止されるとともに傾きが補正され、回転中は常に正常な対面状態が維持されるようになっている。
【0022】
また、上述した動圧発生用溝26,27が設けられている動圧軸受部Dには、当該動圧軸受部Dの両端部(図示上下端部)に対して、それぞれ軸方向(図示上下方向)に連続するようにして、毛細管シール部S1,S2が設けられている。これらの各毛細管シール部S1,S2は、狭小隙間による毛細管力によって潤滑油Lを保持する機能を有するものであって、上記動圧軸受部Dにおける隙間を軸受スリーブ22A側に設けられた傾斜面によってテーパ状に徐々に拡大した構成からなっている。すなわち、軸方向外側の各毛細管シール部S1,S1においては、傾斜面S1aにより隙間が外側に向って連続的に拡大されているとともに、軸方向内側の各毛細管シール部S2,S2においては、傾斜面S2aにより隙間が内側に向って連続的に拡大されている。
【0023】
さらに、上記外方側の各毛細管シール部S1,S1の軸方向外側には、当該毛細管シール部S1,S1の隙間をさらに拡大した保油部H,Hがそれぞれ繋げられている。これらの保油部H,Hは、上記外側の毛細管シール部S1,S1の軸方向外端における隙間を階段状に急拡大した急テーパ状の第1傾斜面Haを備えているとともに、この第1傾斜面Haの外側端から、さらに緩やかな傾斜で外側に延びる緩テーパ状の第2傾斜面Hbを備えており、保油作用とともに他の補助的毛細管シール部を構成している。
【0024】
このとき、上記保油部H,Hは、上述した動圧発生用溝26,27が設けられている動圧軸受部Dにおける潤滑油Lの容量の5倍以上の貯溜容量を有するように構成されており、前述した回転中における動圧発生用溝26,27のアンバランス形状に基づく潤滑油Lの移動分が、この保油部H,H内に受け入れられるようになっている。潤滑油Lが外側に移動したときの当該潤滑油Lの外側の液面位置、及び内側の液面位置のそれぞれが、図2中の2点鎖線L1,L1及びL2,L2で示されている。
【0025】
一方、図1に示されているように、前記固定軸12の先端側(図示上端側)の途中部分には、2つのスラスト動圧軸受部16a,16bを構成するリング状のスラスト板16が固着されている。このスラスト板16により構成される2つのスラスト動圧軸受部16a,16bは、図示上側に配置されたラジアル動圧軸受部23の図示上側に隣接するように配置されている。
【0026】
すなわち、上記スラスト板16の図示下面側は、軸受部材22の図示上側端面に対面するように配置されているとともに、スラスト板16の図示上端面は、前記ハブ21の中央部分にネジ止めされたスラスト押え板28の図示下端面に対面するように配置されており、当該スラスト動圧軸受部16a,16bを構成するスラスト板16の軸方向両端面には、図示を省略したヘリンボーン形状のスラスト動圧発生用溝がそれぞれ環状に形成されている。
【0027】
また、上記スラスト板16と軸受部材22との対向面どうしの間、及びスラスト板16とスラスト押え板28と対向面どうし間における各隙間部分、すなわち2箇所のスラスト動圧軸受部16a,16b内には、互いに分離した状態で潤滑油がそれぞれ充填されている。一方、上記2箇所のスラスト動圧軸受部16a,16bにおける間部分には、空気層16cが介在されており、当該空気層16cが、前記スラスト板16内に半径方向に貫通形成された空気穴通路16dにより大気開放されている。
【0028】
そして、上記ハブ21の回転時に、上記スラスト動圧発生用溝(図示省略)のポンピング作用によって潤滑油が昇圧されて動圧が生じ、この潤滑油に生じさせられた動圧によってハブ21がスラスト方向に軸支持されるように構成されている。
【0029】
また、上記2箇所の各スラスト動圧軸受部16a,16bにそれぞれ設けられた動圧発生用溝の各々は、ヘリンボーン形状の頂部を中心として軸方向にアンバランスな形状にて形成されている。より具体的には、上記各スラスト動圧軸受部16a,16bにおける動圧発生用溝は、ヘリンボーン形状の頂部を中心として装置の半径方向内側に、より大きな加圧力を発生させる長い溝を有しているとともに、ヘリンボーン形状の頂部を中心として装置の半径方向外側に、より小さい加圧力を発生させる短い溝を有している。
【0030】
すなわち、上記動圧発生用溝の各々は、半径方向に加圧力の不均衡を生じさせ、その加圧力の不均衡を解消するまで潤滑油を半径方向外側に移動させるようにアンバランスな形状に構成されている。これは、以下述べるようにスラスト板16と軸受部材22側又はスラスト押え板28側との間の傾きを補正するためである。
【0031】
回転停止時に、スラスト板16と軸受部材22側又はスラスト押え板28側との間に傾きが生じた場合には、スラスト板16の外周側部分が、動圧発生用溝の外周側に接触することとなる。しかしながら、このような傾きがあったとしても、回転開始時に、上述した動圧発生用溝のアンバランスな形状に基づいて潤滑油が半径方向外側に移動させられるから、上述したスラスト板16と軸受部材22側又はスラスト押え板28側との接触部分に潤滑油の油膜が形成されることとなり、その油膜の加圧力によって、両部材どうしの接触が防止されるとともに傾きが補正され、回転中は常に正常な対面状態が維持されるようになっている。
【0032】
また、上述した動圧発生用溝が設けられているスラスト動圧軸受部16a,16bには、当該スラスト動圧軸受部16a,16bの半径方向両端部に対して、それぞれ半径方向に連続するようにして、毛細管シール部S3,S4が設けられている。これらの各毛細管シール部S3,S4は、狭小隙間による毛細管力によって潤滑油を保持する機能を有するものであって、上記スラスト動圧軸受部16a,16bにおける隙間を、スラスト板16側の傾斜面によって外周側及び内周側にそれぞれテーパ状に徐々に拡大した構成からなっている。
【0033】
さらに、上記半径方向外方側の毛細管シール部S3の軸方向外側には、当該毛細管シール部S3の隙間をさらに拡大した保油部が繋げられている。この保油部は、上記外側の毛細管シール部S3の半径方向外端における隙間を階段状に急拡大した急テーパ状の第1傾斜面を備えているとともに、この第1傾斜面の外側端から、さらに緩やかな傾斜で外側に延びる緩テーパ状の第2傾斜面を備えており、保油作用とともに他の補助的毛細管シール部を構成している。
【0034】
このとき、上記保油部は、上述した動圧発生用溝が設けられている動圧軸受部における潤滑油の容量の5倍以上の貯溜容量を有するように構成されており、前述した回転中における動圧発生用溝のアンバランス形状に基づく潤滑油の移動分が、この保油部内に受け入れられるようになっている。
【0035】
また、上記スラスト押え板28及び軸受部材22には、装置外方側(図示上側及び下側)から吸収布を介して薄板状のストッパー板29が設けられており、これら吸収布及びストッパー板29によって、最悪の場合でも、潤滑油の外部飛散が防止されるようになっている。
【0036】
このように本実施形態装置によれば、固定軸12及びスラスト板16に対して、軸受部材22,28が傾いた状態で回転の起動が行われたとしても、アンバランス形状を有するラジアル動圧発生用溝26,27及びスラスト動圧発生用溝の外側方向への加圧作用に基づいて、上記固定軸12及びスラスト板16と軸受部材22,28との傾きを補正するように潤滑油の移動が行われることから、固定軸12と軸受部材22との間、及びスラスト板16と軸受部材22,28との間に油膜が常時良好に形成され、いわゆる振れ回りを生じていない状態で回転の起動及び停止が行われる。すなわち、軸部材12及びスラスト板16と軸受部材22,28とは安定的に支持され、両部材12,22どうしの金属接触が極力防止されるようになっている。
【0037】
このとき、本実施形態のように、潤滑油Lの保持量を十分確保する構成にしておけば、上述した油膜の形成作用が一層確実に行われることに加えて、潤滑油L内への摩耗粉の混入による悪影響や、潤滑油の熱劣化等が良好に防止されることとなる。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態は、いわゆる軸固定型のモータに対して本発明を適用したものであるが、軸回転型のモータに対しても本発明は同様に適用することができる。
さらにまた本発明は、上述したHDDモータ以外に用いられる動圧軸受装置に対しても同様に適用することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は、潤滑油の油量を十分に確保しながら、アンバランス形状を有する動圧発生用溝の不均衡な加圧作用に基づいて、軸部材側と軸受部材側との傾きを補正するように潤滑油の移動を行わせて、軸部材側と軸受部材側との間に油膜を常時良好に形成し、軸部材側と軸受部材側とが傾いた状態で回転の起動及び停止が行われたとしても、いわゆる振れ回りを生じていない状態で回転の起動及び停止を行わせることによって、軸部材側と軸受部材側との金属接触を極力防止するように構成したものであるから、簡易で低コストな構造で、軸部材側と軸受部材側とを極めて円滑に支承させることができ、動圧軸受装置の信頼性及び寿命の向上を図ることができる。
【0040】
この場合、特に請求項4又は請求項5のように構成することによって、潤滑油の保持量を十分確保することとすれば、上述した油膜の形成作用を一層確実に行わせることができることに加えて、潤滑油内への摩耗粉の混入による悪影響や、潤滑油の熱劣化等を良好に防止することができ、動圧軸受装置の信頼性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる動圧軸受装置を備えたHDDスピンドルモータの一例を表した横断面説明図である。
【図2】図1における動圧軸受装置を原理的に表した部分横断面説明図である。
【符号の説明】
12 固定軸
22 軸受部材
21 ハブ
23,24 ラジアル動圧軸受部
26,27 ラジアル動圧発生用溝
L 潤滑油
D 動圧軸受部
S1,S2 毛細管シール部
H 保油部
16a,16b スラスト動圧軸受部
16 スラスト板
Claims (5)
- 軸部材と、この軸部材に対して所定の隙間を介在して装着された軸受部材とを有し、
上記軸部材と軸受部材との間の隙間に潤滑油が充填された動圧軸受部が、前記軸部材の軸方向に離間して2箇所設けられているとともに、
上記2箇所の動圧軸受部における潤滑油どうしが、空気層を介在して互いに分離した状態に配置され、
上記各動圧軸受部に設けられた動圧発生用溝により潤滑油が加圧されることによって、前記軸部材と軸受部材とが相対回転可能に支持される動圧軸受装置において、
上記2箇所の動圧軸受部にそれぞれ設けられた動圧発生用溝は、回転停止時における前記軸部材と軸受部材との傾きを補正するように潤滑油を所定の方向に移動させるアンバランス形状に形成されているとともに、
上記2箇所の各動圧軸受部における両端部にそれぞれ連続するようにして、毛細管力により潤滑油を保持する毛細管シール部が設けられ、
これらの各毛細管シール部のうち、潤滑油の移動方向下流側の毛細管シール部における潤滑油の許容量が、前記潤滑油の移動量より大きく設定され、
上記移動方向下流側の毛細管シールを構成する上記軸受部材の内周面には、隣接する動圧軸受部から軸方向に離れるに従って拡径する傾斜面が形成され、
上記移動方向下流側の毛細管シール部のさらに下流側には、前記毛細管シール部に連続し、且つ上記毛細管シール部の隙間をさらに拡大した隙間を有する保油部が設けられ、
上記保油部を構成する上記軸受部材の内周面には、上記傾斜面に連続し上記傾斜面より傾斜角が大きい第1傾斜面と、第1傾斜面に連続し上記第1傾斜面より傾斜角が小さい第2傾斜面と、が形成され、上記第2傾斜面は、上記軸受部材の内周面のうち最も半径方向外側に位置することを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1記載の各動圧軸受部が、ラジアル動圧軸受部から構成され、かつ、
軸部材と軸受部材との傾きを補正する潤滑油の移動方向が、装置の軸方向外側に設定されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1記載の各動圧軸受部が、スラスト動圧軸受部から構成され、かつ、
軸部材と軸受部材との傾きを補正する潤滑油の移動方向が、装置の半径方向外側に設定されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - 請求項1記載の保油部は、動圧軸受部における潤滑油の容量の5倍以上の貯溜容量を有することを特徴とする動圧軸受装置。
- 請求項4記載の保油部は、動圧発生用溝のアンバランス形状に基づく潤滑油に対する加圧力の不均衡を解消するまで移動した潤滑油を受け入れるように構成されていることを特徴とする動圧軸受装置。
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