JP4212819B2 - 圧電振動子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電振動子の製造方法に関し、さらに詳しくは圧電振動子用の圧電材料として有利に用いることができるチタン酸ジルコン酸鉛シートの製造方法の製造方法に関する。本発明はまた、複合圧電振動子に関し、さらに詳しくは、複合圧電振動子用の圧電材料として有利に用いることができるチタン酸ジルコン酸鉛成形体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電材料にチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTという)を用いた電気音響変換素子として、PZTシートの両側表面のそれぞれに電極を付設した構成の圧電振動子が広く利用されている。また、複数個の柱状PZT成形体を樹脂中に並立固定させた複合体シートの両側表面のそれぞれに電極を付設した構成の複合圧電振動子も実用化されている。
【0003】
圧電振動子は、従来より、超音波放射面が矩形かつ平坦な形状であるものがその主流である。この圧電振動子に用いられる矩形かつ平坦な形状のPZTシートは、一般に、粉末状のPZTをプレス法によりシート状に成形し、これを加熱して焼結させることによって製造されている。
【0004】
圧電振動子が発する超音波の周波数は、PZTシートの厚さが薄くなる程高周波となるが、上記の方法では、粉末状のPZTをプレス法によりシート状に成形する際に、シートの厚さが薄くなる程歩留まりが低くなる傾向にある。このため、高周波の超音波発信用圧電振動子に用いるような比較的厚さの薄いPZTシートを工業的に歩留まり良く製造できる方法の開発が望まれている。
【0005】
また、最近では、超音波放射面を、葉状、湾曲状、あるいは球面状などの平坦かつ矩形でない形状とした圧電振動子も開発され、その実用化が進めれられている。この種の圧電振動子に用いられる葉状などの平坦かつ矩形でない形状のPZTシートは、例えば、矩形かつ平坦な形状のPZTシートを切削することによって製造することができる。
しかし、矩形かつ平坦な形状のPZTシートを、葉状などに成形するのは、相当の時間と労力を要し、また歩留まりも低いという問題がある。このため、葉状などの矩形かつ平坦な形状でないPZTシートを簡便な手法を用いて製造できる方法の開発が望まれている。
【0006】
一方、複合圧電振動子は、複合体シート中のPZT成形体の体積分率によって、静電容量や音響インピーダンスなどの特性を調整することができるという特徴を有する。例えば、柱状PZT成形体を用いた従来の一般的な複合圧電振動子では、複合体シート中の柱状PZT成形体の配列パターンを変えることよって、PZT成形体の体積分率を変更することができる。しかし、複合体シート中の柱状PZT成形体の配列パターンを変えるのは、柱状PZT成形体の配列装置の調整など煩雑な作業を伴うため作業性が低いという問題がある。このため、PZT成形体の配列パターンを変えずに、複合体シート中のPZT成形体の体積分率を調整できる方法の開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、比較的厚みの薄いPZTシートや葉状、湾曲状、あるいは球面状などの矩形かつ平坦な形状でないPZTシートを簡便な手法を用いて、容易に製造できる方法を開発すること、すなわち高周波の超音波発信用圧電振動子や、超音波放射面が、矩形かつ平坦でない形状の圧電振動子を容易に製造できる、工業的に有利な圧電振動子の製造方法を提供することを、その目的とする。
本発明はさらに、PZT成形体の配列パターンを変えずに、複合体シート中のPZT成形体の体積分率を調整できるように構成された複合圧電振動子を提供することもその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性電極の表面に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性電極を加熱して、該可燃性電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体シートに変換する工程、得られたチタン酸ジルコン酸鉛シートの両側表面のそれぞれに電極を付設する工程、そして該電極間に電界を印加することにより、チタン酸ジルコン酸鉛シートを厚さ方向に分極させる工程からなる圧電振動子の製造方法にある。
【0009】
上記圧電振動子の製造方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)葉状の可燃性電極を用いて、葉状のチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造する。
【0010】
(2)湾曲面を有する可燃性電極を用いて、湾曲形状のチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造する。
【0011】
(3)球面を有する可燃性電極を用いて、一方の表面が凸面で、他方の表面が凹面であるチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造する。
【0012】
本発明はまた、電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性電極の表面に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、そして、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性電極を加熱して、該可燃性電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体シートに変換する工程からなるチタン酸ジルコン酸鉛シートの製造方法にある。
【0013】
本発明はさらに、電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性棒状電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性棒状電極の周囲に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、そして、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性棒状電極を加熱して、該可燃性棒状電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、筒状のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体に変換する工程からなる筒状チタン酸ジルコン酸鉛成形体の製造方法にもある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の圧電振動子の製造方法は、例えば次のようにして行うことができる。
まず、電荷を有するPZT粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液を調整する。
【0015】
PZT粒子は、ジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)の固溶体であり、チタンに対するジルコニアのモル比(Zr/Ti)は、通常1〜1.5の範囲にある。
PZT粒子の平均粒子径は、通常は0.1〜5μmの範囲にあり、好ましいのは0.1〜2μmの範囲にある。このPZT粒子の平均粒子径は、レーザ回折法によって測定した値である。
【0016】
電解質溶液の溶媒には、水、もしくは有機溶媒、あるいはそれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒の例としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒を挙げることができ、これらは単独で用いることができ、あるいは組み合わせて用いても良い。アルコール系溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどを挙げることができる。ケトン系溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチレルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができる。そして、アミド系溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを挙げることができる。
【0017】
上記溶媒の中でも、水、もしくは水と有機溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。特に、好ましいのは、水とアルコール系溶媒の混合溶媒である。水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、その混合割合(水:有機溶媒)は質量比で、一般には10:90〜90:10の範囲にあり、好ましいのは40:60〜60:40の範囲にある。
【0018】
水もしくは水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、PZT粒子の有する電荷は、溶媒のpHに依存する。PZT粒子の等電位点は、一般にはpH2〜5の範囲にある。PZT粒子の電荷を正とする場合には、溶媒のpHをPZT粒子の等電位点のpHよりも低くする。具体的には、溶媒のpHをPZT粒子の等電位点のpHに対して0.1〜2の範囲(好ましいのは0.5〜2の範囲)にて低い値とする。一方、PZT粒子の電荷を負とする場合には、溶媒のpHをPZT粒子の等電位点のpHよりも高くする。具体的には、溶媒のpHをPZT粒子の等電位点のpHに対して0.1〜2の範囲(好ましいのは0.5〜2の範囲)にて高い値とする。溶媒のpH調整剤としては、硝酸、塩酸もしくは硫酸などの酸、アンモニアなどのアルカリを用いることができる。
【0019】
電解質溶液の電解質は、溶媒中にて、イオンに解離するものであれば特に制限はない。また、上記pH調整剤も電解質であってもよい。電解質の具体例としては、チタン、ジルコニア、及び鉛の硝酸塩、硫酸塩、塩化物などを挙げることができる。
【0020】
懸濁液のPZT粒子含有量は、一般には1〜20質量%の範囲にあり、好ましいのは2〜10質量%の範囲にある。
【0021】
次に、懸濁液に少なくとも一方の電極が可燃性電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、可燃性電極の表面に、PZT粒子を層状に析出させる。
【0022】
この工程は、例えば、図1に示すようなPZT粒子電着装置を用いて実施することができる。このPZT粒子電着装置は、懸濁液1を貯留する容器2、懸濁液1に配置された陰電極3と陽電極4、そして、陰電極3と陽電極4のそれぞれに電圧を付与する直流電源装置5からなる。
図1において、懸濁液1は、PZT粒子6が正の電荷を有する状態で懸濁されており、電解質として添加された硝酸鉛と硝酸チタンが、それぞれ硝酸イオン7、鉛イオン8、チタニウムイオン9に解離している。陰電極3と陽電極4との間に電圧を付与するとPZT粒子6、鉛イオン8、及びチタニウムイオン9が、陰電極3側に移動し、PZT粒子が陰電極3の表面に析出する。陽電極4側に硝酸イオン7が移動する。
【0023】
陰電極3は、可燃性電極である。陰電極(可燃性電極)4は、懸濁液1に対して化学的に安定で、500〜800℃の温度で熱分解する導電性材料から形成されていることが好ましい。このような導電性材料の例としては、無定形の炭素質材料を挙げることができる。
【0024】
陽電極4は、懸濁液に対して化学的に安定な導電性材料から形成される。このような導電性材料の例としては、金、白金などの金属材料を挙げることができる。なお、陽電極4は、上記陰電極3と同様に可燃性電極としてもよい。
【0025】
陰電極3と陽電極4の間隔は、一般には0.5〜5cmの範囲にあり、好ましくは0.6〜4cmの範囲にある。陰電極3のPZT粒子を析出させる面と反対側の表面には、あらかじめ絶縁テープなどの絶縁材料を貼り付けて、PZT粒子が析出しないようにマスキングすることが好ましい。
陰電極3と陽電極4の間に付与する電圧は、電極間隔や懸濁液の導電率などによって異なるが、一般には1〜200Vの範囲にあり、好ましくは2〜100Vの範囲にある。
【0026】
次に、表面にPZT粒子層を有する可燃性電極を加熱して、可燃性電極を焼却し、かつ析出PZT粒子を焼結させて、PZT焼結体シートに変換する。
【0027】
上記可燃性電極の加熱温度は、PZT粒子の焼結温度、すなわち1100〜1300℃の範囲としてもよいが、可燃性電極をこの温度範囲にて加熱すると、可燃性電極の急激な燃焼とともにPZT粒子層が破壊されることがことがある。このため、PZT粒子の焼結温度よりも低い温度(通常は、500〜800℃)にて、可燃性電極を徐々に熱分解させた後に、上記の温度範囲にてPZT粒子を焼結させることが好ましい。
可燃性電極の加熱は、酸素の存在下で行なうことが好ましい。具体的には、酸素を10〜30体液%の範囲内で含む気体中(例えば、大気中)にて、可燃性電極の加熱を行なうことが好ましい。
【0028】
可燃性電極を加熱する前に、ニトロセルロースなどの樹脂でPZT粒子層の表面を覆って、PZT粒子層を可燃性電極から脱落しないようにすることが好ましい。
【0029】
こうして得られるPZT焼結体シートは、厚みが均一であるという特徴を有する。また、上記の方法により製造するPZT焼結体シートは、その厚さが、30〜300μmの範囲、特に50〜250μmの範囲にあることが好ましい。
【0030】
上記のようにして得られたPZT焼結体シートは、所定の大きさに裁断され、あるいはそのままで圧電振動子用のPZTシートとして有利に用いることができる。このPZTシートを用いた圧電振動子は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0031】
まず初めに、PZTシートの両側表面のそれぞれに電極を付設する。電極の材料には、ニッケル、金、銀などの通常の圧電振動子の電極材料として用いられている公知の材料を用いることができる。ニッケル電極や金電極は、例えばスパッタ法などの公知の手法によって形成することができる。銀電極は、例えばPZTシートの表面に銀ペーストを塗布し、これを焼き付けることによって形成することができる。
【0032】
次に、上記電極間に電界を印加することにより、PZTシートを厚さ方向に分極させる。電極間に印加する電界は、一般には1〜5kV/mmの範囲にあり、好ましくは1.5〜3kV/mmの範囲にある。
【0033】
本発明の圧電振動子の製造方法においては、可燃性電極の形状を選択することによって様々な形状のPZTシートを製造することができる。例えば、葉状、湾曲状、あるいは球面状などの矩形かつ平坦な形状でないPZTシートも製造することもできる。
【0034】
図2は、葉状の可燃性電極の一例の斜視図である。葉状の可燃性電極にPZT粒子層を形成することによって、葉状のPZTシートを製造することができ、これにより超音波放射面が葉状の圧電振動子を工業的に有利に製造することができる。なお、超音波放射面が葉状の圧電振動子は、超音波放射面が矩形の圧電振動子と比較して、サイドローブの発生が少なくなる傾向にある。
【0035】
図3は、湾曲面を有する可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(a)は、幅方向に、凹型に湾曲した湾曲面を有する矩形状の可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(b)は、長さ方向に、凹型に湾曲した湾曲面を有する矩形状の可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(c)は、幅方向に、凸型に湾曲した湾曲面を有する矩形状の可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(d)は、長さ方向に、凸型に湾曲した湾曲面を有する矩形状の可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(e)は、長さ方向に湾曲した長尺シート状の可燃性電極の一例の斜視図である。
図3(f)は、幅方向に湾曲した長尺シート状の可燃性電極の一例の斜視図である。
【0036】
湾曲面を有する可燃性電極を懸濁液に配置する場合は、可燃性電極の湾曲面と他方の電極の表面との最短距離を、湾曲面の深さ、あるいは高さの10倍以上(通常は10〜20倍の範囲)とすることが好ましい。湾曲面を有する可燃性電極と他方の電極との間隔をこれよりも狭くすると、可燃性電極の表面に形成されるPZT粒子層の厚さが不均一になる傾向がある。
【0037】
上記の湾曲面を有する可燃性電極の湾曲面にPZT粒子を析出させることにより、湾曲形状のPZTシートを製造でき、これにより超音波放射面が湾曲した圧電振動子を工業的に有利に製造することができる。
【0038】
図4は、球面を有する可燃性電極の一例の斜視図である。
図4(a)は、凹型の球面を有する可燃性電極の一例の斜視図である。
図4(b)は、凸型の球面を有する可燃性電極の一例の斜視図である。
図4(c)は、半球状に形成された可燃性電極の一例の斜視図である。
【0039】
球面を有する可燃性電極を懸濁液に配置する場合は、可燃性電極の球面と他方の電極の表面との最短距離を、球面の深さ、あるいは高さの10倍以上(通常は10〜20倍の範囲)とすることが好ましい。球面を有する可燃性電極と他方の電極との間隔をこれよりも狭くすると、可燃性電極の表面に形成されるPZT粒子層の厚さが不均一になる傾向がある。
【0040】
球面を有する可燃性電極の表面にPZT粒子を析出させることにより、一方の表面が凸面で、他方の表面が凹面であるPZTシートを製造でき、これにより超音波放射面が球面である圧電振動子を工業的に有利に製造することができる。
【0041】
可燃性電極に可燃性棒状電極を用い、可燃性棒状電極の周囲にPZTを層状に析出させ、次いで表面にPZT粒子層を有する可燃性棒状電極を加熱して、可燃性棒状電極を焼却し、かつ析出したPZTを焼結させることによって、筒状のPZT成形体を製造することもできる。次に、本発明の筒状のPZT成形体、並びに筒状のPZT成形体を用いた複合圧電振動子について、添付図面を参照しながら説明する。
【0042】
図5は、筒状のPZT焼結体の一例の斜視図である。図5において、筒状PZT焼結体10は円筒状であり、その断面中央には円形の貫通孔11が形成されている。円筒状PZT焼結体は、可燃性電極に円柱状の可燃性棒状電極を用いることによって製造することができる。
【0043】
筒状PZT焼結体10の肉厚は、一般には5〜100μmの範囲にあり、好ましいのは10〜50μmの範囲にある。筒状PZT焼結体の直径は、一般には10〜400μmの範囲にあり、好ましいのは30〜200μmの範囲にある。また、貫通孔11の穴径は、一般に5〜200μmの範囲にあり、好ましいのは10〜100μmの範囲にある。
なお、本発明において筒状PZT焼結体は、円筒状に限定されるものではない。例えば、可燃性電極に角柱状の可燃性棒状電極を用いることによって、角柱状の筒状PZT焼結体を製造することもできる。
【0044】
図6は、図5に示した筒状PZT成形体の複数個を樹脂中に並立固定させて得た複合体シートの一例の斜視図である。
図6において、複合体シート12は、複数個の筒状PZT成形体10と、複数個のPZT成形体をそれぞれ支持固定する樹脂13とからなる。筒状PZT成形体10の貫通孔11にも樹脂13が充填されていることが好ましい。
【0045】
複合体シート12中のPZT成形体の体積分率は、筒状PZT成形体10の配列パターン(すなわち、筒状PZT成形体10同士の間隔)と、筒状PZT成形体10の貫通孔11の穴径によって決まる。従って、筒状PZT成形体10の貫通孔11の穴径を変えることによっても、複合体シート12のPZT成形体の体積分率を調整することができる。
複合体シート12のPZT成形体の体積分率は、一般には30〜60体積%の範囲にあり、好ましいのは40〜50体積%の範囲にある。また、複合体シートの厚さは、一般には50〜500μmの範囲にあり、好ましいのは50〜150μmの範囲の範囲にある。
【0046】
樹脂13の材料の例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂あるいはシリコーン樹脂を挙げることができる。
【0047】
図7は、図6の複合体シートからなる複合圧電振動子の一例の側面図である。図7において、複合圧電振動子は、複合体シート12の両側表面のそれぞれに電極14が付設されてなる。複合体シート12中の筒状PZT成形体(図示せず)は、電極14間に電界を印加することによって、複合体シートの厚さ方向に分極されている。
【0048】
電極14の材料の例としては、ニッケルあるいは金などの金属を挙げることができる。複合体シート12の両側表面に電極14を付設する方法としては、スッパタ法を挙げることができる。
【0049】
【実施例】
[実施例1]
下記の懸濁液を調製した。
───────────────────────────
組成:
平均粒子径1.0μmのPZT粉末 5.3質量%
硝酸鉛 0.2質量%
オキシ硝酸ジルコニウム 0.2質量%
メチルアルコール 41.6質量%
イオン交換水 52.7質量%
───────────────────────────
pH 2.2
───────────────────────────
【0050】
図1に示すように、上記の懸濁液中に、炭素質シート状陽電極(縦40mm×横40mm×厚さ0.5mm)と炭素質シート状陰電極(縦18mm×横10mm×厚さ0.5mm)を間隔が3cmとなるように向かい合わせに配置し、両電極間に5Vの直流電圧を15分間付与した。これにより、炭素質シート状陰電極の表面(炭素質シート状陽電極と向かい合っている面)にPZT粒子が層状に析出した。なお、炭素質シート状陰電極の裏面には、あらかじめ絶縁テープを貼り付けて、炭素質シート状陰電極の裏面が懸濁液と接触しないようにした。
【0051】
PZT粒子層を有する炭素質シート状陰電極を懸濁液から取り出し、これをニトロセルロース1.6質量%を含むキシレン溶液に浸漬し、乾燥してPZT粒子層の表面をニトロセルロースで被覆した。次いで、PZT粒子層を有する炭素質シート状陰電極を、大気雰囲気中で700℃、10時間加熱して、炭素質シート状陰電極を焼却した後、さらに、大気雰囲気中で1200℃、2時間加熱してPZT粒子を焼結させた。得られたPZT焼結体シートのサイズは、縦14mm、横8mm、及び厚さが50μmであった。また、このPZT焼結体シートのX線回折パターンは、懸濁液中のPZT粉末のX線回折パターンとほぼ同じであり、その組成の変化が僅少であることが確認された。
【0052】
[実施例2]
前記実施例1にて用いた懸濁液中に、炭素質シート状陽電極(縦40mm×横40mm×厚さ0.5mm)と炭素質円柱状陰電極(直径10μm、長さ10mm)とを間隔が2cmとなるように配置し、両電極間に5Vの直流電圧を5分間印加した。これにより、炭素質円柱状陰電極の周囲にPZT粒子が層状に析出した。
【0053】
PZT粒子層を有する炭素質円柱状陰電極を懸濁液から取り出し、これをニトロセルロース1.6質量%を含むキシレン溶液に浸漬し、乾燥してPZT粒子層の表面をニトロセルロースで被覆した。次いで、PZT粒子層を有する炭素質円柱状陰電極を、大気雰囲気中で700℃、10時間加熱して、炭素質円柱状陰電極を焼失させた後、さらに、大気雰囲気中で1200℃、2時間加熱してPZT粒子を焼結させた。得られたPZT焼結体は円筒状であり、そのサイズは直径60μm、穴径13μmおよび長さ8mmであった。また、この円筒状PZT焼結体のX線回折パターンは、懸濁液中のPZT粉末のX線回折パターンとほぼ同じであり、その組成の変化が僅少であることが確認された。
【0054】
[実施例3]
実施例1にて製造したPZT焼結シートの両側の表面のそれぞれに、スパッタ法にて金電極を形成した後、両電極間に電界を印加して、PZTシートを厚さ方向に分極させた。次いで、PZTシートを縦1mm、横1mmの大きさに裁断して圧電振動子を作成した。
【0055】
[実施例4]
実施例2にて製造した円筒状PZT成形体を長さ5mmに裁断した筒状PZT成形体を400個用意した。そして、筒状PZT成形体をエポキシ樹脂中にそれぞれの間隔が0.01mmとなるように並立固定した複合体を得て、さらに、これを厚さ0.15mmに裁断して、図6に示すような複合体シートを製造した。次に、複合体シートの両側表面にスッパタ法にて、ニッケル電極を形成した。次いで、両電極間に電界を印加して、円筒状PZT成形体を複合体シートの厚さ方向に分極させて、1−3型複合圧電振動子を作成した。
【0056】
[実施例5]
懸濁液に、炭素質シート状陽電極(縦40mm×横40mm×厚さ0.5mm)と図3(a)に示した幅方向に湾曲した湾曲面を有する炭素質陰電極(縦7.5mm×横10mm×最大厚さ0.8mm、湾曲面の深さ0.3mm)を、炭素質シート状陽電極の表面と炭素質陰電極の湾曲面の最短距離が3cmとなるように向かい合わせに配置し、両電極間に5Vの直流電圧を20分間印加した以外は、実施例1と同様の操作を行ってPZT焼結体シートを作成した。得られたPZT焼結体シートは、縦方向に湾曲しており、縦6mm、横8mm、厚さ40μm、そして湾曲面の深さ0.25mmであった。
【0057】
[実施例6]
懸濁液に、炭素質シート陽電極(縦40mm×横40mm×厚さ0.5mm)と図4(a)に示した球面を有する炭素質陰電極(縦15mm×横15mm×最大厚さ1.5mm、球面の深さ1mm)とを、炭素質シート陽電極の表面と球面を有する炭素質陰電極の球面の最短距離が3cmとなるように向かい合わせに配置し、両カーボンに5Vの直流電圧を20分間印加した以外は、実施例1と同様の操作を行ってPZT焼結体シートを作成した。得られたPZT焼結体シートは、球面状であり、縦12mm、横12mm、厚さ30μm、そして球面の深さ0.8mmであった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の圧電振動子の製造方法によれば、比較的厚みの薄いPZTシートや、葉状、湾曲状、あるいは球面状などの矩形かつ平坦な形状でないPZTシートを工業的に有利に製造することができる。従って、高周波の超音波発信用圧電振動子や、超音波放射面が、葉状、湾曲状、あるいは球面状などの各種の圧電振動子を工業的に安価に製造することができる。
また、本発明の複合圧電振動子では、貫通孔の穴径の異なる筒状PZT成形体を用いることによって、PZT成形体を配列パターンを変えることなく、複合体シート中のPZT成形体の体積分率を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電振動子の製造方法において有利に利用できるPZT粒子電着装置の例を示す図である。
【図2】本発明の圧電振動子の製造方法において有利に利用できる葉状の可燃性電極の例を示す図である。
【図3】本発明の圧電振動子の製造方法において有利に利用できる湾曲面を有する可燃性電極の例を示す図である。
【図4】本発明の圧電振動子の製造方法において有利に利用できる球面を有する可燃性電極の例を示す図である。
【図5】本発明の複合圧電振動子に有利に用いることができる筒状の筒状PZT成形体の一例を示す図である。
【図6】本発明の複合圧電振動子に有利に用いることができる複合体シートの一例を示す図である。
【図7】本発明の複合圧電振動子の一例の側面図である。
【符号の説明】
1 懸濁液
2 容器
3 陰電極
4 陽電極
5 直流電源
6 PZT粒子
7 硝酸イオン
8 鉛イオン
9 チタニウムイオン
10 筒状PZT成形体
11 貫通孔
12 複合体シート
13 樹脂
14 電極

Claims (6)

  1. 電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性電極の表面に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性電極を加熱して、該可燃性電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体シートに変換する工程、得られたチタン酸ジルコン酸鉛シートの両側表面のそれぞれに電極を付設する工程、そして該電極間に電界を印加することにより、チタン酸ジルコン酸鉛シートを厚さ方向に分極させる工程からなる圧電振動子の製造方法。
  2. 葉状の可燃性電極を用いて、葉状のチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
  3. 湾曲面を有する可燃性電極を用いて、湾曲形状のチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
  4. 球面を有する可燃性電極を用いて、一方の表面が凸面で、他方の表面が凹面であるチタン酸ジルコン酸鉛シートを製造することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子の製造方法。
  5. 電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性電極の表面に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、そして、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性電極を加熱して、該可燃性電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、チタン酸ジルコン酸鉛焼結体シートに変換する工程からなるチタン酸ジルコン酸鉛シートの製造方法。
  6. 電荷を有するチタン酸ジルコン酸鉛粒子が電解質溶液に懸濁されてなる懸濁液中に、少なくとも一方の電極が可燃性棒状電極である一対の電極を配置して、両電極間に電圧を付与することによって、該可燃性棒状電極の周囲に、該チタン酸ジルコン酸鉛粒子を層状に析出させる工程、そして、表面にチタン酸ジルコン酸鉛粒子層を有する該可燃性棒状電極を加熱して、該可燃性棒状電極を焼却し、かつ析出チタン酸ジルコン酸鉛粒子を焼結させて、筒状のチタン酸ジルコン酸鉛焼結体に変換する工程からなる筒状チタン酸ジルコン酸鉛成形体の製造方法。
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