JP2005269745A - 超音波音源および超音波センサ - Google Patents

超音波音源および超音波センサ Download PDF

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Abstract

【課題】 超音波音源、スピーカー音源、アクチュエータ等に有用で、とくに超音波センサ音源として有用な、耐電力特性が高くかつ最大発生音圧を大きくすることが可能な、新しい超音波音源さらにその超音波音源を用いた超音波センサを提供する。
【解決手段】 熱伝導性の基板(2)と、基板(2)上の一方の面に形成されたナノ結晶シリコン層からなる断熱層(3)と、断熱層(3)上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて電気的に駆動される金属膜からなる発熱体薄膜(4)と、を備えた超音波音源(1)において、断熱層(3)のナノ結晶シリコン層の厚みを、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下とする。
【選択図】 図1

Description

この出願の発明は、超音波音源および超音波センサに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、空気に熱を与えることで空気の粗密を作り、超音波を発生する装置であって、超音波音源、スピーカー音源、アクチュエータ等に有用で、とくに超音波センサ音源として有用な新しい超音波音源さらにその超音波音源を用いた超音波センサに関するものである。
従来より各種の超音波発生装置が知られており、これらの従来の超音波発生装置は、電気火花や流体振動などを用いる特殊なものを除いて、すべて何らかの機械振動を空気の振動へと変換するものである。このような機械振動を用いる方法には動電型・コンデンサ型などもあるが、超音波領域では圧電素子を利用したものが主流である。例えば、圧電材料であるチタン酸バリウムの両面に電極を形成し、電極間に超音波電気信号を印加することで、機械振動を発生させ、空気などの媒質にその振動を伝達して超音波を発生するようにしている。だが、このような機械振動を利用した超音波発生装置では、固有の共振周波数を有するために周波数帯域が狭い、周囲の環境(温度、振動)等の影響を受けやすい、微細・アレイ化が困難と言った問題があった。
一方、機械振動を全く行わない新しい発生原理の圧力発生装置が提案されている(たとえば特許文献1および非特許文献1参照)。この提案では、基板と基板上に設けられた熱絶縁層(断熱層)と、熱絶縁層上に設けられて電気的に駆動される発熱体薄膜から構成されており、発熱体薄膜から発生した熱が熱伝導率のきわめて小さい多孔質層や高分子層などの熱絶縁層を設けることで、発熱体薄膜表面の空気層の温度変化が大きくなるようにして、超音波を発生するようにしている。この提案されたデバイスは機械振動を伴わないので、周波数帯域が広く、周囲環境の影響を受けにくく、微細・アレイ化も比較的容易であるなどの特徴を有している。このような熱励起による圧力発生装置の発生原理について考えてみると、電気的に駆動される発熱体薄膜に交流電流を印加した場合の発熱体薄膜表面温度の変化T(ω)は、熱絶縁層の熱伝導率をα、体積あたりの熱容量をC、発信する超音波の角周波数(周波数の2π倍)をωとして、単位面積当たりのエネルギーの出入りq(ω)〔W/cm2〕があったとき、次式(1)で与えられる。
また、そのとき発生する音圧P(ω)は、次式(2)で与えられる。
すなわち、図4に示すように超音波周波数の信号を発生する信号源から供給された周波数fの電流(図4−a)によって、発熱体薄膜から発生する熱(図4−b)が周囲の媒体である空気との熱交換により、空気の温度変化が起こる(図4−c)。これは空気の疎密波を生み出し、周波数2fの音波を発生する(図4−d)。
ここで、前記(2)式より、発生する音圧P(ω)は、単位面積当たりのエネルギーの出入りq(ω)、すなわち、入力電力に比例する、熱絶縁層の熱伝導率α、体積当たりの熱容量Cが小さいほど大きくなることがわかる。さらに、熱絶縁層と基板の熱的コントラストが重要な役割をする。すなわち、熱伝導率α、体積当たりの熱容量Cをもつ熱絶縁層の厚さをLとし、その下にα、Cとも十分に大きな熱伝導性の基板がある場合、次式(3)
程度の厚み(交流成分の熱拡散長)をとると、発熱の交流成分は断熱し、発熱体の熱容量のため発生する直流成分の熱は、大きな熱伝導性の基板へ効率良く逃がすことができる。
特開平11−300274号公報 Nature 400 (1999) 835-855
しかしながら、先の従来の圧電素子を用いた場合、30cm位置で20Pa程度の音圧しか得られなかったため、超音波センサとして長い距離のセンシングを行うことは困難であった。
一方、特許文献1に記載の超音波音源を用いた場合、発生音圧は印加電力密度に比例するが、印加電力が大きくなると金属膜からなる発熱体薄膜にクラックが発生し断線してしまい、十分な音圧を発生することができなかった。そのため最大印加電力を大きくすることが望まれていた。
そこでこの出願の発明は、上記のとおりの問題点を解消し、最大印加電力の向上、すなわち耐電力特性を向上させ、最大発生音圧を大きくすることができる、新しい超音波音源およびその超音波音源を用いた超音波センサを提供することを課題としている。
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、熱伝導性の基板と、基板上の一方の面に形成されたナノ結晶シリコン層からなる断熱層と、断熱層上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて電気的に駆動される金属膜からなる発熱体薄膜と、を備えた超音波音源であって、断熱層のナノ結晶シリコン層の厚みが、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下であることを特徴とする超音波音源を提供する。
第2には、この出願の発明は、第1の発明において、ナノ結晶シリコン層からなる断熱層が、多孔度50%未満で発熱体薄膜側に形成される第1層と多孔度50%以上で基板側に形成される第2層とを有する少なくとも2層以上の層で形成されていることを特徴とする超音波音源を提供する。
さらに、第3には、第2の発明において、第1層の厚みが、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以下であることを特徴とする超音波音源を提供する。
また、第4には、第1ないし3いずれかの発明の超音波音源にパルス信号を印加し超音波を発生させ、物体からの反射波を受信させることを特徴とする超音波センサをも提供する。
この出願の発明の超音波音源によれば、ナノ結晶シリコン層からなる断熱層の厚みを薄くあるいは低多孔度層を非常に薄く形成することで、耐電力特性が向上し、最大発生音圧を大きくすることが可能となる。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
図1は、この出願の発明の超音波音源の一実施形態を例示した断面図である。この図1の例における超音波音源(1)は、熱伝導性の基板(2)と、基板(2)上の一方の面に形成されたナノ結晶シリコン層からなる断熱層(3)と、断熱層(3)上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて電気的に駆動される金属膜からなる発熱体薄膜(4)とで構成されており、発熱体薄膜(4)が超音波周波数の信号を発生する信号源(5)と配線接続されており、その発熱体薄膜(4)の表面より超音波(6)が発生するが、この超音波音源(1)は、とくに断熱層(3)のナノ結晶シリコン層の厚みが、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下であることを大きな特徴としている。
まず、断熱層(3)に関して以下詳細に述べる。断熱層(3)はナノ結晶シリコン層からなり、ナノ結晶シリコン層は、多孔質材料でありかつナノオーダのシリコンの量子効果(フォノン閉じ込め効果)により、単結晶シリコンに比べて、熱伝導率、熱容量とも非常に小さい値を示す。多孔度が60%程度のナノ結晶シリコンの具体的な数値を表1に示す。
金属電極(発熱体薄膜(4))にクラックが発生し断線する場合、金属電極の下地の断熱層(3)であるナノ結晶シリコン層の状態が強く影響し、特にその厚みをできるだけ薄くすること、機械的強度を上げることが有効であることが種々の検討から明らかになった。しかしながら、音圧の発生効率は前述の(2)式からも分かるように断熱層(3)のナノ結晶シリコン層のαCが小さいほど良い。αCが小さいということは、ナノ結晶シリコン層の多孔度を大きくすることであり、それによりその機械的強度は小さくなる傾向にある。またその厚みに関しても、広い周波数帯域で音波を発生させる場合は10μm以上の厚みが必要となる。これらのことを考慮してナノ結晶シリコン層の厚みを音圧発生効率に影響を及ぼさない最低限の厚みとすることで、発生音圧を下げないで耐電力特性を向上させることができる。以下、このことに関して詳細を記載する。
前述の(3)式から、ナノ結晶シリコン層のα、Cが一定であれば、交流成分の熱拡散長Lは発信する超音波の周波数の関数である。αC=0.7(×106)、αC=0.07(×106)の場合の発信する超音波の周波数(kHz)と熱拡散長(μm)の関係を図2に示す。この熱拡散長以上の厚みのナノ結晶シリコン層を設ければ、効率良く超音波を放出することが可能となる。可聴域レベルの音波を放出しようとした場合、10μm程度以上の比較的厚いナノ結晶シリコン層が必要であるが、超音波域においては、αC値が小さければ数μmの厚みで十分であることがわかる。
このように断熱層(3)のナノ結晶シリコン層の厚みとしては、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下とすることで、発生音圧を下げないで耐電力特性を向上させることができる。ナノ結晶シリコン層の厚みが薄いほど耐電力特性は優れているが、前述の熱拡散長で決めたナノ結晶シリコン層の厚みは理論的な最低限の厚みであり、音圧発生効率の点からは、面内の膜厚のばらつきなどを考慮すると、熱拡散長に5μm加えた厚み以下とした厚みの範囲に設定する必要がある。なおこれ以上の厚みとした場合には耐電力特性は向上しない。
また、耐電力特性の向上のためには、ナノ結晶シリコン層の機械的強度を大きくすることが有効である。この場合、前述のとおりナノ結晶シリコン層の多孔度を小さくすれば良いが、音圧発生効率が下がってしまう。これらを解決するためには、図3に示すように、多孔度50%未満で発熱体薄膜(4)側に形成される第1層(3a)と多孔度50%以上で基板(2)側に形成される第2層(3b)からなる少なくとも2層以上の層でナノ結晶シリコン層からなる断熱層(3)を形成すればよい。ここで、第1層(3a)の多孔度としては50%未満のできるだけ小さな多孔度とすることが好ましい。また第2層(3b)としては、音圧発生効率を大きくするため、50%以上のなるべく大きな多孔度とすることが望ましい。多孔度50%は、音圧発生効率、機械的強度の点から決定された値である。実用上多孔度の調整は、用いる単結晶シリコン基板の種類、抵抗、陽極酸化条件(電流密度、溶液組成)などで調整可能であり、その方法は特に限定されない。
ここで、重要なのは断熱層(3)の第1層(3a)の厚みの設定である。前述の通り、ナノ結晶シリコン層の厚みは発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長の厚み以上必要であるが、第1層(3a)は多孔度が低く音圧発生効率がよくないために、その厚みを熱拡散長以下にする必要があり、なるべく小さくすることが望ましい。一方第1層(3a)において熱拡散長以上の厚みがあった場合、音圧発生効率は第1層(3a)のαCだけで決まってしまい、多孔度の高い第2層(3b)の効果がなくなってしまう。
次に熱伝導性の基板(2)としては、直流成分の熱を逃すために熱伝導率αの大きな材料を用いることが好ましく、単結晶シリコンやポリシリコンなどの半導体基板を好適に用いることができる。基板(2)の形状としては、放熱効率を良くするために放熱フィンを裏面に形成していても良い。
次に発熱体薄膜(4)としては、金属膜であれば材質は特に限定されない。たとえばW,Mo,Ir,Au,Al,Ni,Ti,Ptなどの金属単体やそれらの積層構造などを用いることができ、真空蒸着、スパッタなどで成膜することができる。また膜厚は、熱容量を小さくするためにできるだけ薄くするのが好ましいが、適当な抵抗とするために10nm〜100nmの範囲で選択することができる。
このようにして作製したこの出願の発明にかかる超音波音源は、パルス状の高いピーク電力を投入することが可能となり、空気中において30cm以上の比較的長い距離のセンシングが可能な超音波センサとして特に有効である。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
<実施例1>
P型(100)単結晶シリコン基板(80−120Ωcm)の裏面に陽極酸化処理時のコンタクト電極として、Alを真空蒸着として300nm成膜した。その後、この基板をHF(55%):EtOH=1:1の溶液中で白金を対極として電流密度100mA/cm2で20秒間陽極酸化処理を行い、厚み2μmのナノ結晶シリコン層よりなる断熱層を形成した。次にナノ結晶シリコン層上に発熱体薄膜としてタングステンをスパッタ法で50nmの厚みで形成し、5mm□の面積の超音波音源を作製した。
<実施例2>
陽極酸化処理を50秒間行い、厚み5μmのナノ結晶シリコン層を形成したこと以外、実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<比較例1>
陽極酸化処理を480秒間行い、厚み50μmのナノ結晶シリコン層を形成したこと以外、実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<比較例2>
陽極酸化処理を200秒間行い、厚み20μmのナノ結晶シリコン層を形成したこと以外、実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<実施例3>
陽極酸化処理を電流密度0.1mA/cm2で16分間行い、厚み0.1μm、多孔度35%のナノ結晶シリコン層を形成し、続けて電流密度100mA/cm2で20秒間陽極酸化処理を行い、厚み2μm、多孔度70%のナノ結晶シリコン層を形成したこと以外実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<実施例4>
陽極酸化処理を電流密度0.1mA/cm2で48分間行い、厚み0.3μm、多孔度35%のナノ結晶シリコン層を形成し、続けて電流密度100mA/cm2で20秒間陽極酸化処理を行い、厚み2μm、多孔度70%のナノ結晶シリコン層を形成したこと以外実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<比較例3>
陽極酸化処理を電流密度20mA/cm2で14秒間行い、厚み0.3μm、多孔度55%のナノ結晶シリコン層を形成し、続けて電流密度100mA/cm2で20秒間陽極酸化処理を行い、厚み2μm、多孔度70%のナノ結晶シリコン層を形成したこと以外実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
<比較例4>
陽極酸化処理を電流密度0.1mA/cm2で320分間行い、厚み2μm、多孔度35%のナノ結晶シリコン層を形成し、続けて電流密度100mA/cm2で20秒間陽極酸化処理を行い、厚み2μm、多孔度70%のナノ結晶シリコン層を形成したこと以外実施例1と同様にして超音波音源を作製した。
以上の実施例1〜4、比較例1〜4の各々において得られた超音波音源の発熱体薄膜にパルス幅16μs(周波数60kHz)、周期1sの単パルス信号を印加し、発熱体薄膜が断線するまで印加電力を上げていき、30cm位置での最大音圧をマイクで測定した。なお、実施例1〜4、比較例1〜4で電流密度100mA/cm2で形成したナノ結晶シリコン層のαCはαC=0.07であり、60kHzでの熱拡散長は約1.5μmであった。
表2にその測定結果を示す。
表2より明らかなように、実施例1〜4の超音波音源は、比較例1〜4の超音波音源に比べて最大印加電力が増加し、その結果最大音圧を大きくすることができることがわかる。
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によれば、ナノ結晶シリコン層の厚みを薄くまたは低多孔度層を非常に薄く形成することで、耐電力特性が向上し、最大発生音圧を大きくすることができる超音波音源および超音波センサが提供される。
この出願の発明の超音波音源の一実施形態を例示した断面図である。 この出願の発明の発信する超音波の周波数(kHz)と熱拡散長(μm)の関係を例示したグラフである。 このの発明の超音波音源の他の実施形態を例示した断面図である。 この出願の発明の超音波音源の原理を示したグラフである。
符号の説明
1 超音波音源
2 基板
3 断熱層
3a 第1層
3b 第2層
4 発熱体薄膜
5 信号源
6 超音波


Claims (4)

  1. 熱伝導性の基板と、基板上の一方の面に形成されたナノ結晶シリコン層からなる断熱層と、断熱層上に形成され、交流成分を含む電流が印加されて電気的に駆動される金属膜からなる発熱体薄膜と、を備えた超音波音源であって、断熱層のナノ結晶シリコン層の厚みが、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以上でかつ熱拡散長に5μm加えた厚み以下であることを特徴とする超音波音源。
  2. ナノ結晶シリコン層からなる断熱層が、多孔度50%未満で発熱体薄膜側に形成される第1層と多孔度50%以上で基板側に形成される第2層とを有する少なくとも2層以上の層で形成されていることを特徴とする請求項1記載の超音波音源。
  3. 第1層の厚みが、発信する超音波の周波数で規定される熱拡散長以下であることを特徴とする請求項2記載の超音波音源。
  4. 請求項1ないし3いずれかに記載の超音波音源にパルス信号を印加し超音波を発生させ、物体からの反射波を受信させることを特徴とする超音波センサ。

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