JP4210566B2 - 中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子 - Google Patents

中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子 Download PDF

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本発明は、高い空隙率と強度とを両立した中空樹脂微粒子を製造することができる中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子に関する。
中空樹脂微粒子は、緩衝材等の用途の他に、工業的にも種々の用途を有する。
例えば、近年、ディーゼル車から排出される排ガスの微粒子捕集用フィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ)として多孔質セラミックハニカムフィルタが種々提案されているが、このような多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際の造孔剤として、中空樹脂微粒子が好適に用いられる。即ち、多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際には、その細孔径を制御するために造孔剤を用いるが、該造孔剤として中空樹脂微粒子を用いれば、従来の有機高分子やグラファイトを造孔剤として用いた場合に比べて燃焼熱を抑えることができ、フィルタに歪みがかかりクラックが生じたりするのを防止することができる。このような目的により中空樹脂微粒子を造孔剤として用いる場合には、より燃焼熱を抑えるためにできる限り空隙率が高いことが好ましい。一方、セラミック組成物を混合するとき又は成形するときに機械的剪断力がかかることから、中空樹脂微粒子には一定以上の強度が求められる。
中空樹脂微粒子を製造する方法としては、例えば、モノマーと非重合性有機溶剤とを極性媒体中に懸濁させたうえで重合することにより非重合性有機溶剤を内包する樹脂微粒子を製造した後、内包する非重合性有機溶剤を除去して中空樹脂微粒子を得る方法が知られている。しかしながら、この方法により空隙率の高い中空樹脂微粒子を製造しようとしても、非重合性有機溶剤を除去する際に微粒子が変形・収縮して、中空部分が減少してしまったり、たとえ得られたとしても極めて強度の低いものしか得られず、多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際の造孔剤としては不充分であるという問題があった。
本発明は、上記の現状の鑑み、高い空隙率と強度とを両立した中空樹脂微粒子を製造することができる中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子を提供することを目的とする。
本発明は、モノマー成分、重合開始剤及び非重合性有機溶剤を、架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する極性媒体中に懸濁した懸濁液を調製する工程と、前記懸濁液を加熱してモノマー成分を重合し、非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子を得る工程と、前記非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を内包する樹脂微粒子と架橋剤とを反応させる工程と、前記樹脂微粒子から前記非重合性有機溶剤を除去する工程とを有する中空樹脂微粒子の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法は、モノマー成分、重合開始剤及び非重合性有機溶剤を、架橋剤により架橋可能な水溶性高分子化合物を含有する極性媒体中に懸濁した懸濁液を調製する工程を有する。
上記モノマー成分としては特に限定されず、単官能性モノマー、多官能性モノマー、その他のモノマーからなる混合モノマーを用いることが好ましい。
重合用モノマーを構成する単官能性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上記多官能性モノマーは、中空樹脂微粒子の耐圧縮強度を改善する目的で添加されるものである。上記多官能モノマーとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレート等のジ又はトリアリル化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン等のジビニル化合物等が挙げられる。これらの多官能モノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記混合モノマーにおける上記多官能モノマーの配合量としては特に限定されないが、好ましい下限は0.1重量%である。0.1重量%未満であると、得られる中空樹脂微粒子の耐圧縮強度が不充分となることがある。より好ましい下限は0.3重量%である。
上記重合開始剤としては、上記モノマー成分に可溶である油溶性のフリーラジカルを発生する化合物であれば特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、α−クミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤及びレドックス開始剤等が挙げられる。
上記非重合性有機溶剤は、重合用モノマー溶液と相溶するものであり、且つ重合系の媒体である水等の極性溶媒と相溶しないものから適宜選択され、特に種類は限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
上記非重合性有機溶剤の添加量により、得られる中空樹脂微粒子の空隙率を調整することができる。
上記非重合性有機溶剤の添加量としては特に限定されないが、好ましい下限は、上記モノマー成分100重量部に対して100重量部、好ましい上限は900重量部である。100重量部未満であると、得られる中空樹脂微粒子の空隙率が低くなり、900重量部を超えると、空隙率が大きくなりすぎて中空樹脂微粒子の強度が低下することがある。より好ましい下限は200重量部、より好ましい上限は400重量部である。
上記極性媒体としては、上記重合用モノマー溶液と非相溶であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。なかでも、取り扱いが容易なことから水が好適である。
上記極性媒体は、架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する。
上記水溶性高分子化合物は、樹脂微粒子の調整工程においてはモノマー成分からなる液滴を懸濁させるための分散安定剤としての役割を有するとともに、樹脂微粒子形成後には架橋剤により架橋することにより樹脂微粒子の強度を向上させる役割をも有する。
上記水溶性高分子化合物としては、極性媒体中に溶解することができ、かつ、架橋剤により架橋可能な官能基を有するものであれば特に限定されない。ここで上記架橋剤により架橋可能な官能基は、上記水溶性高分子化合物に水溶性を付与する親水性基と同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記架橋剤により架橋可能な官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基等が挙げられる。
上記架橋剤により架橋可能な官能基として水酸基を有する水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギンサン類等が挙げられる。
上記架橋剤により架橋可能な官能基としてカルボキシル基を有する水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸共重合体等のポリ(メタ)アクリル酸類;ゼラチン、ポリアミノ酸、アラビアゴム等が挙げられる。
上記架橋剤により架橋可能な官能基としてアミノ基を有する水溶性高分子化合物としては、例えば、ゼラチン、ポリアミノ酸、アラビアゴム等が挙げられる。
上記架橋剤により架橋可能な官能基としてスルホン酸基を有する水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
上記架橋剤により架橋可能な官能基としてアミド基を有する水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド類、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
上記極性媒体は、更に、補助安定剤、pH調整剤、水溶性重合禁止剤、老化防止剤、酸化防止剤、防腐剤等の通常懸濁重合法において用いられる添加剤を含有してもよい。
上記モノマー成分、重合開始剤及び非重合性有機溶剤を、架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する極性媒体中に懸濁した懸濁液を調製する方法としては特に限定されないが、例えば、モノマー成分と非重合性有機溶剤と重合開始剤とを溶解したモノマー溶液を予め調製し、これを上記水溶性高分子化合物を含有する極性媒体に添加し、攪拌により油滴状に分散させる方法等が挙げられる。
上記攪拌の際には、ホモミキサー、バイオミキサー、ホモジナイザー等の機械的攪拌機を用いてもよいし、超音波ホモジナイザー等を用いてもよい。得られる中空樹脂微粒子の粒子径は懸濁液中の油滴径に依存するため、分散安定剤の種類や量、又は、撹拌の方法や強度等により容易に制御することができる。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法では、次いで、上記懸濁液を加熱してモノマー成分を重合し、非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子を得る工程を行う。
上記モノマー成分を重合する温度は、用いるモノマー成分の組成や分子量、重合開始剤の種類や量等によって適宜決定されるが、通常は30〜100℃の範囲で行なわれる。
上記モノマー成分を重合させることにより樹脂微粒子が形成される。この際、モノマー成分として上記非重合性有機溶媒に対し親水性の高いモノマーを主成分とするモノマー混合物を用いた場合には、上記非重合性有機溶媒は、樹脂微粒子の主に中心部に局在し、モノマー成分として上記非重合性有機溶媒と親和性の高いモノマーを主成分とするモノマー混合物を用いた場合には、重合中にポリマー成分と有機溶剤が相分離することが抑制され、粒子内部に緻密な複数の中空部を有する中空ポリマー粒子を得ることができる。一方、上記水溶性高分子化合物は、いずれの場合においても樹脂微粒子の主に表面に局在する。
重合終了後媒体を除去すれば、非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子が得られる。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法では、次いで、上記非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子と架橋剤とを反応させる工程を行う。上記架橋剤と反応させて架橋することにより、上記樹脂微粒子の強度が向上し、後述する非重合性有機溶剤を揮発させる工程において樹脂微粒子がつぶれたりすることがない。
上記架橋剤としては、上記水溶性高分子化合物の有する官能基の種類により適当なものを選択する。
上記官能基が水酸基である場合には、上記架橋剤としては、例えば、グリオキザール、硫黄を含んだジアルデヒド、グリオキザール−エチレングリコール反応物、両末端アルデヒド化ポバール、ジアルデヒドデンプン、ポリアクロレイン等のアルデヒド類;N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール化合物;β−ヒドロキシエチルスルホン等の活性ビニル化合物;エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、3官能以上のポリエチレングリコールのグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;ジカルボン酸、コハク酸、トリエチレングリコールとアクリル酸メチルのマイケル付加物、ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体とイソブチレン−無水マレイン酸共重合体ブレンド等の多価カルボン酸;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネ−ト;ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;フェノール類、アセチルアセトン、マロン酸ジエチルエステル、重亜硫酸ソーダ、ラクタム類、オキシム類、アミド類、第三級アルコール類等をブロック剤とする多価イソシアネート等のブロックイソシアネ−ト;無機、有機金属系架橋剤が挙げられる。
上記金属系架橋剤としては、水や水系溶剤に溶解して2価以上の金属イオンや錯イオンを発生する水溶性の金属化合物や重合体であれば特に限定されない。このようなイオンの金属種としては特に限定されず、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)等の周期表4A族元素;鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)等の周期表8族金属;銅(Cu)等の周期表11族金属;亜鉛(Zn)等の周期表12族元素;ホウ素(B)、アルミニウム(Al)等の周期表13族元素等が挙げられる。また、これらの金属イオンや錯イオンを発生する水溶性の金属化合物や重合体の形態としては、例えば、フッ化物、塩化物等のハロゲン化物;過塩素酸塩等の過ハロゲン酸塩;水酸化物;硫酸塩;硝酸塩;リン酸塩;水酸化アンモニウム塩;炭酸アンモニウム塩;酢酸塩、プロピオン酸塩等のカルボン酸塩等が挙げられ、有機酸や無機酸の形態として、塩化物、硝酸塩、酢酸塩、炭酸アンモニウム塩等が挙げられる。
上記官能基がカルボキシル基である場合には、上記架橋剤としては、カルボキシル基と反応する官能基を1分子当り2つ以上有するもの、重合体であれば1分子当り平均二つ以上有するものであればよく、例えば、上記エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、金属系架橋剤の他、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等のオキサゾリン化合物;二官能アジリジニル基含有化合物が挙げられる。
上記官能基がアミノ基である場合には、上記架橋剤としては、例え、上記イソシアネート系化合物、金属系架橋剤等が挙げられる。
上記官能基がスルホン酸基である場合には、上記架橋剤としては、例え、アミン化合物、上記アジリジニル基含有化合物、金属系架橋剤等が挙げられる。
上記官能基がアミド基である場合には、上記架橋剤としては、例え、上記金属系架橋剤等が挙げられる。
上記非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子と架橋剤とを反応させる方法としては特に限定されないが、例えば、得られた樹脂微粒子からなるスラリーをセントル脱水した後に、高温で加熱乾燥する方法が好適である。乾燥時の加熱温度としては特に限定はされないが、好ましい下限は60℃、好ましい上限は160℃である。60℃未満であると、架橋反応が充分に進行しないことがあり、160℃を超えると、有機溶剤により可塑化された樹脂微粒子の樹脂骨格が軟化して、中空部が減少してしまうことがある。より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は100℃である。なお上記架橋剤は重合開始時に既に添加されていてもよく、重合終了時に添加されてもよい。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法では、次いで、上記樹脂微粒子から非重合性有機溶剤を除去する工程を行う。具体的には、例えば、樹脂微粒子を蒸気、熱風等により加熱したり、減圧条件下に置いたりすることにより上記非重合性有機溶剤を除去する。上記非重合性有機溶剤を除去することにより、中空樹脂微粒子が得られる。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法では、内包する非重合性有機溶剤の除去に先立って、あるいは除去と同時に樹脂微粒子の主に表面に局剤する水溶性高分子化合物を架橋して樹脂微粒子の強度を向上させることにより、非重合性有機溶剤の除去の際に樹脂微粒子がつぶれたりすることなく高い空隙率の中空樹脂微粒子を製造することができる。
このようにして得られた中空樹脂微粒子は、高い空隙率を有することができるとともに、
上記モノマー成分内の多官能モノマーによる架橋、及び、上記架橋した水溶性高分子化合物により極めて高い強度を有することができる。
本発明の中空樹脂微粒子の製造方法により製造された中空樹脂微粒子もまた、本発明の1つである。
本発明の中空樹脂微粒子は、空隙率が50%以上であることが好ましい。本発明の中空樹脂微粒子の製造方法は、このような高空隙率の中空樹脂微粒子の製造に特に有利である。空隙率が50%未満であると、例えば多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際の造孔剤として用いた場合に、充分に燃焼熱を抑えることができず、得られるフィルタが歪んだり、クラックが生じたりすることがある。より好ましくは70%以上である。
なお、本明細書において空隙率とは、中空樹脂粒子全体積中に占める中空部体積を百分率(%)で表示したものであり、例えば、アムコ社製ポロシメーター2000を用いて封入水銀圧力2000kg/cmの条件等にて測定することができる。
本発明の中空樹脂微粒子は、10%圧縮強度が1.5MPa以上であることが好ましい。1.5MPa未満であると、例えば多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際の造孔剤として用いた場合に、機械的剪断力によって破壊されてしまうことがある。より好ましくは7MPa以上、更に好ましくは15MPa以上である。10%圧縮強度が
なお、本明細書において10%圧縮強度とは、中空樹脂粒子をその粒子径に対して10%圧縮するのに必要な圧力を意味し、例えば、島津製作所社製微小圧縮試験機MCTM−500等を用いて測定することができる。
空隙率50%以上であり、かつ、10%圧縮強度が15MPa以上である中空樹脂微粒子もまた、本発明の1つである。
空隙率70%以上であり、かつ、10%圧縮強度が7MPa以上である中空樹脂微粒子もまた、本発明の1つである。
このような高い空隙率と強度とを両立した中空樹脂微粒子は、従来は存在しなかったが、本発明の中空樹脂微粒子の製造方法によれば工業的に製造することができる。
本発明の中空樹脂微粒子は、空隙率が高くしかも強度が高いことから、多孔質セラミックハニカムフィルタを製造する際の造孔剤の他、光拡散シートの光拡散剤、感熱記録シート、熱転写シートにおけるアンダーコート層への断熱性・クッション性付与剤、化粧料、各種カラム充填剤、各種軽量化剤等にも好適に用いることができる。
本発明によれば、高い空隙率と強度とを両立した中空樹脂微粒子を製造することができる中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子を提供できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
水287.00gに対してポリビニルアルコール3.00gを、水溶性重合禁止剤の亜硝酸ナトリウム0.05g、ポリビニルアルコール架橋剤(三晶社製、SEQUAREZ755)10.00gを溶解した。
別に、メチル(メタ)アクリレート40.00g、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート10.00gからなるモノマー混合物と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gと、有機溶剤としてシクロヘキサン40.00g、酢酸エチル10.00gとを混合したモノマー溶液を調製した。
得られたモノマー溶液を、ポリビニルアルコールを溶解した水中に加え、攪拌分散装置を用いて2分間攪拌して、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を60℃にまで昇温し、4時間加熱を続けて樹脂微粒子を得た。
得られた樹脂微粒子スラリーをセントル脱水した後に、真空乾燥器において80℃で加熱乾燥し、内包するシクロヘキサン及び酢酸エチルを除くと同時に、樹脂微粒子に含まれるポリビニルアルコールを架橋した。
得られた中空樹脂微粒子について空隙率を測定したところ約50%であった。また、島津製作所社製微小圧縮試験機MCTM−500を用いて10%圧縮強度を測定したところ18.9MPaであった。
(実施例2)
モノマー溶液を、メチル(メタ)アクリレート15.00g、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート15.00gからなるモノマー混合物と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gと、有機溶剤としてシクロヘキサン35.00g、酢酸エチル35.00gとを混合して調製した以外は実施例1と同様の方法により中空微粒子を得た。
得られた中空樹脂微粒子について空隙率を測定したところ約70%であった。また、島津製作所社製微小圧縮試験機MCTM−500を用いて10%圧縮強度を測定したところ12.8MPaであった。
(比較例1)
ポリビニルアルコール架橋剤を用いず、ポリビニルアルコールの架橋を行わなかった以外は実施例1と同様の方法により中空樹脂微粒子を得た。
得られた中空樹脂微粒子について空隙率を測定したところ約46%であった。また、島津製作所社製微小圧縮試験機MCTM−500を用いて10%圧縮強度を測定したところ14.2MPaであった。
加熱して内包するシクロヘキサン及び酢酸エチルを除く工程において、中空樹脂微粒子の中空部の収縮が起こり、所期の空隙率の中空樹脂微粒子は得られなかった。
(比較例2)
ポリビニルアルコール架橋剤を用いず、ポリビニルアルコールの架橋を行わなかった以外は実施例2と同様の方法により中空樹脂微粒子を得た。
得られた中空樹脂微粒子について空隙率を測定したところ約56%であった。また、島津製作所社製微小圧縮試験機MCTM−500を用いて10%圧縮強度を測定したところ10.8MPaであった。
加熱して内包するシクロヘキサン及び酢酸エチルを除く工程において、中空樹脂微粒子の中空部の収縮が起こり、所期の空隙率の中空樹脂微粒子は得られなかった。
本発明によれば、高い空隙率と強度とを両立した中空樹脂微粒子を製造することができる中空樹脂微粒子の製造方法及び中空樹脂微粒子を提供できる。

Claims (1)

  1. モノマー成分、重合開始剤及び非重合性有機溶剤を、架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する極性媒体中に懸濁した懸濁液を調製する工程と、
    前記懸濁液を加熱してモノマー成分を重合し、非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子を得る工程と、
    前記非重合性有機溶剤及び架橋剤により架橋可能な官能基を有する水溶性高分子化合物を含有する樹脂微粒子と架橋剤とを反応させる工程と、
    前記樹脂微粒子から前記非重合性有機溶剤を除去する工程とを有する
    ことを特徴とする中空樹脂微粒子の製造方法。
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