JP4208477B2 - 落下物防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇降路に壁がない屋外展望エレベータ、屋内開放型エレベータ等に利用される落下物防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
乗りかごの昇降路が屋外もしくは屋内に開放しているエレベータにおいては、乗りかごが上階に停止した際、乗り場と乗りかごとの間に多少の隙間が生じるが、この隙間から硬貨等が落ちた場合、落下途中で弾けて昇降路外に落下し、危険な状態となる。
【0003】
そこで、従来、屋外展望エレベータや開放型エレベータでは、上階から物が落下する可能性があるエリアには極力人を入れないようなスペースを設けたり、人が近づく下階の乗り場などの上側に頑丈な屋根を設けることにより、上階からの落下物による危険を回避する工夫が講じられている。
【0004】
さらに、最近、乗り場と乗りかごとの隙間から落下する物を受け止める落下物防止装置が考えられている。
【0005】
その1つは、図10に示すような構成の落下物防止装置が考えられている。同図において101は乗り場、102は乗りかごであり、これら乗り場101及び乗りかご102にはそれぞれ乗り場ドア103、かごドア104が設けられている。このエレベータの落下物防止装置は、乗りかご102の下側に設けられた回収箱105の乗り場対面側に近い部分に可動受け部材106が取付けられ、乗りかご102の各階停止時には、エレベータ制御装置(図示せず)からの制御指示に従って駆動モータ(図示せず)が可動受け部材106を所定角度回動させて、乗り場101と乗りかご102との隙間の下側に突出し、また乗りかご102の昇降時には、可動受け部材106が回収箱105に退避するように制御する。これにより、乗り場101と乗りかご102との隙間から落下してくる物を可動受け部材106で受け取り、回収箱105に回収する構成となっている。
【0006】
なお、可動受け部材106の出入りのタイミングは自在であり、ドア開閉よりも若干タイミングをずらすこと、つまり減速着床時に少し早めに可動受け部材106を突出すれば、利用者の待ち時間を減らすことができ、またドアが完全に閉じたタイミングで回収箱105に可動受け部材106を退避させることにより、隙間から物が落ちる可能性がなく、安全性を確保できる。
【0007】
従来の他の1つは、図11に示すように、乗りかごのしきい121に形成されるガイドレール122にそってかごドア123が開閉するが、このしきい121の下側には上面に開口部を有する受け箱124が設置されている。この受け箱124は、両面下側の一端部が支持部材125に回動可能に支持され、かつ、引っ張りバネ126の復元力によって常にしきい121の下側に隠れるように,つまり受け箱124を閉じる方向に回動させる機能をもっている。
【0008】
前記かごドア123の後部下側にはくの字状の被係合部材127が取付けられ、さらにしきい121を通って被係合部材125と受け箱124とに跨ってかごドア123の開閉状態を受け箱124に伝達する作動部材128が設けられている。すなわち、かごドア123の開放時に乗り場と乗りかごとの隙間に位置するように受け箱124の開口部を設定する。この作動部材128は、しきい121に貫通される支柱体128aと、この支柱体128aの上端部に固定されるレバー128bと、このレバー128bの端部に回転可能に設けられ、かごドア123の開放時に被係合部材127に係合し、支柱体128aを回動させる当接ローラ128cと、支柱体128aの下端部に固定されるレバー128dと、このレバー128dの端部に回転可能に設けられ、かごドア123の開放時の支柱体128aの回動に伴って内側から外側に受け箱124を開くように機能する当接ローラ128eとからなる。
【0009】
この落下物防止装置は、かごドア123の開時、作動部材128を作動させて受け箱124を回動させ、受け箱124の上面開口部を乗り場と乗りかごとの隙間に位置させ、またかごドア123の閉時、作動部材128による受け箱124への付勢力がなくなり、バネ126の復元力により受け箱124を閉じる。
【0010】
従って、この落下物防止装置は、かごドア123の開閉動作を受けて、作動部材128が機械的に連動して受け箱124を回動させるので、受け箱124を動かすための動力が不要となり、またかごドア123の閉により乗りかごの下側に受け箱124を必ず収納することを保証する。その結果、例えば運行途中にドア開閉や受け箱開閉等を検出するセンサ(図示せず)の接点溶着や断線によるエレベータ制御装置の一部の故障が発生した場合でも、それらセンサ自体が補助的な機能をもつにすぎず、受け箱124の収納が保証されているので、例えば出発前までに正常に動作中のセンサが急に故障したとしても、乗りかごから乗客を降ろしてから故障停止すればよく、乗客を閉じ込めるような心配はなくなる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した図10に示す落下物防止装置では、ドア開閉や可動受け部材106の動作状態を検出するセンサが設けられ、またエレベータ制御装置の制御指示に従うことから、動作の状態を検出するセンサの接点溶着や断線による制御装置の一部が故障した場合、可動受け部材106が乗りかご102の昇降路に出たままの状態となる可能性を完全に否定できないことから、プログラムが故障状態と判断して運行を停止させる必要がある。また、運行途中に可動受け部材106が出たままの状態で着床できない場合、最悪の場合には乗客を閉じ込めてしまう可能性がある。
【0012】
次に、図11に示す落下物防止装置では、かごドア123が閉まる直前に受け箱124も閉じ始めることになり、ほとんどかごドア123が閉まる直前であっても、隙間から物が落ちる可能性がある。特に、エレベータのかごドア123の場合、かごドア123の閉じかけに乗客が飛び込んでドアにぶつかり、物を落とすことが多いので、安全上から問題がある。
【0013】
また、通常,かごドア123は吊り下げ構造となっており、縦長の大きなドアの場合には高さ方向の吊り下げスパンが短いので、受け箱124の重量を含む作動部材128からの反力がかごドア123の下部に加わると、かごドア123を傾けるモーメントが大きくなり、かごドア123の円滑な開閉動作ができなくなる可能性がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、落下物による危険性がなく、かつ、乗りかごの中に乗客を閉じ込める心配のない落下物防止装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
(1) 上記課題を解決するために、本発明に係わる落下物防止装置は、エレベータ据付け構造物の乗り場又は乗りかごの下部側に取付けられ、当該乗りかご側又は構造物側と対面する側に回動可能に支持され、上面に開口部を有する受け箱と、前記乗りかごの停止時および昇降時に制御装置からの制御指示を受けて前記受け箱を開閉動作するための回動駆動力を発生する駆動装置と、この駆動装置の回転系に接続される回転軸にトグルリンク機構を構成するリンク部材が設けられ、このリンク部材の端部を前記受け箱の前記回動支持側とは反対側に係着し、前記回転軸の駆動力を前記リンク部材を介して前記受け箱に伝達し、当該受け箱を開閉する駆動力伝達機構と、前記回転軸に固定されたクランク機構に第1の弾性体を介して支持され、この第1の弾性体の復元力で前記受け箱が開く方向に安定に保持するドア開安定機構及び前記リンク部材の下端部に第2の弾性体を介して支持され、この第2の弾性体の復元力で前記受け箱が閉じる方向に安定に保持するドア閉安定機構を有する双方向安定装置とを設けた構成である。
【0016】
この発明は以上のような構成とすることにより、制御装置からの制御指示に従って駆動装置が受け箱を開く方向に回動駆動力を発生すると、駆動力伝達機構を構成するリンク部材が受け箱を押し上げるような力が付与され、当該受け箱の開口部が構造物の乗り場と乗りかごとの隙間の下部に突出し、一方、駆動装置が受け箱を閉じる方向に回動駆動力を発生したとき、駆動力伝達機構を構成するリンク部材が受け箱を引張るような力が付与され、当該受け箱が退避するように動作する。このとき、双方向安定装置は、受け箱の開く方向及び閉じる方向の何れにも復元力を発生するので、開閉動作終了後には駆動装置に動力を与え続けなくとも、受け箱が安定な状態で停止し、エネルギーの消費量の低減化にも貢献する。
【0017】
(2) また、本発明は、前記(1)項の構成要素に新たに、受け箱上部側に設けられた当接部材と、当該受け箱に対面する前記乗りかごの下部面部又は前記構造物の乗り場下部面部に設けられ、前記乗りかごの昇降時に当接する前記当接部材を押し退けるように傾斜させた被当接部位とを付加することにより、受け箱側の当接部材が被当接部位に衝突するような状態となっても、被当接部位が当接部材を退けるように傾斜に形成されているので、受け箱の正面衝突を容易に回避でき、制御装置が万が一故障しても、乗りかごを最寄の乗り場まで誘導でき、安全性を確保することが可能である。
【0018】
また、他の発明においては、以上のような構成要素に新たに、回転軸に加わる伝達トルクが所定の値を越えたとき、前記駆動力伝達機構から伝達される駆動力を切り離す過負荷保護機構を設ければ、駆動装置の回転系に接続される回転軸に所定値以上の伝達トルクが加わったとき、駆動力伝達機構から伝達される駆動力を切り離すので、双方向安定装置が受け箱の閉じる方向または開く方向に復元力を発生し、受け箱を確実に開閉する。特に、当接部材と被当接部位とが強く当たって過負荷が生じた場合、過負荷保護機構による切り離しが行われ、双方向安定装置から受け箱が閉じる方向の力を受けることにより、受け箱が確実に閉じた状態になる。
【0019】
さらに、他の発明は、以上の構成要素に新たに、受け箱の開口部前方側に柔軟性をもった板材を突設させることにより、受け箱が開いた状態のとき、対面側の構造物と乗りかごとの隙間を埋めるので、隙間から落下する物を確実に受け取って受け箱に収納させることが可能である。
【0020】
さらに、他の発明は、以上のような構成要素に新たに、回転軸の先端部周面部に設けられた手動操作可能なレバーと、前記受け箱の所定の角度以上に開閉するとき、前記回転軸が回動しないように前記レバーの回転を阻止するメカニカルストッパを設けることにより、駆動装置の回動動作をメカニカルストッパの直前で止まるように制御すれば、その後は、双方向安定装置の復元力で回転軸を回動するとともに、メカニカルストッパがレバーを阻止するので、受け箱の開き過ぎ、閉じ過ぎが無くなり、双方向安定装置の復元力の調整により、受け箱を最適な開閉位置に安定に保持させることが可能である。
【0021】
さらに、本発明は、以上のような構成要素に新たに、受け箱の前面に作業員用扉を設け、また当該受け箱上部の開口部に対面する前記構造物の乗り場又は乗りかご床面の該当位置に施錠付き作業員用扉を設けることにより、受け箱内部の状態が容易に把握でき、しかも鍵付きとすることにより、保安上の問題も解消することが可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は本発明に係わる落下物防止装置の一実施の形態を示す構成図である。
【0024】
本発明に係わる落下物防止装置は、エレベータの昇降路構築用の構造物1又はエレベータの乗りかご2の下部側に取付けられるものとする。
【0025】
屋外展望用エレベータやシャトルエレベータエレベータにおいては、途中停止階がない場合がある。この場合には、最上階の構造物側に取り付ければよい。一方、通常のエレベータでは、構造物に取り付けるとコスト高となる問題がある。この場合には乗りかご2の下部側に取り付ければ、落下物防止装置は1個で済むので、コスト面で有効な手段になる。
【0026】
この落下物防止装置は、各階、比較的上部の階のエレベータの構造物1又は乗りかご2下部側に回動可能に取付けられ、図1に示す閉の状態から乗り場と乗りかご2との隙間の下部に突出するように上面に開口部11を位置させるような開状態に設定する受け箱10と、制御装置21の制御指示を受けて回動し、前記受け箱10を開閉させるための駆動力を出力する減速付きモータ、ソレノイドなどの駆動装置22と、この駆動装置22から出力する駆動力を伝達し受け箱10を開閉する回転軸やリンクよりなる駆動力伝達機構30と、受け箱10の開く方向及び閉じる方向に力を付与し受け箱10の開閉状態を安定に保持する双方向安定装置40と、過負荷保護機構50とが設けられている。なお、構造物1又は乗りかご2下部側には受け箱10の回動可能にするための切り欠き部3が形成されている。また、構造物1の乗り場または乗りかごの床面の受け箱10の上面開口部11を覗ける位置に施錠付き作業員用扉4が取付けられている。
【0027】
また、落下物防止装置には、受け箱10の両側面上部の前方側に設けられ、受け箱10の回動による開時に構造物1又は乗りかご下部に当接する例えばローラなどの当接部材61と、この当接部材61が当接する対面側である構造物1又は乗りかご下部に設けられ、乗りかごの昇降時に当該当接部材61を押し退けるような役割を果たすスロープ形状の被当接部位62(後記する図8(A)参照)とが設けられている。
【0028】
前記受け箱10は、前述するように上面に開口部11が設けられ、その両側面の下部前方側が回転軸体12により回動可能に軸支されている。この回転軸体12は構造物1又は乗りかご下部に取付けられている。この回転軸体12とは反対側に位置する受け箱10の一端コーナ部分には凹陥部13が形成されている。また、受け箱10の内底部側には受け箱10コーナ部分を囲むように補強部材14が取付けられ、受け箱10のコーナ部分と補強部材14とにより断面三角形のパイプ状に形成されている。
【0029】
さらに、受け箱10の正面側には受け箱10内に落下する物を取り出すための例えば鍵付き作業員用扉15が取付けられ、また受け箱10の正面側上部には図2に示すように受け箱10が開いたとき対面側の構造物1又は乗りかご下部面側に跨るように接触し、乗り場と乗りかご2との隙間から落下する物を受け箱10内部に導くように多少柔軟性をもつ材料、例えばゴムなどの板材16が取付けられている。
【0030】
前記制御装置21は、乗りかごの停止時には受け箱10の開口部11を乗り場と乗りかごとの隙間の下方に突出するようにするために駆動装置22に制御指示を出し、また乗りかごの昇降時には受け箱10を図示する閉の状態に戻すために駆動装置22に制御指示を出す機能をもっている。
【0031】
前記駆動力伝達機構30は、駆動装置22の回転軸系に接続される回転軸31と、回転軸31に取付けられた前記過負荷保護機構50を挟んで回転軸31を回転可能に支持する支持部材32a,32bと、回転軸31の端部側に固定される2つの短リンク部材33’,33’間に掛け渡された連結軸34に係合される長リンク部材33”と、前記受け箱10に形成された凹陥部13に掛け渡され、長リンク部材33”の上端部を回動可能に係着する作用軸35とが設けられている。
【0032】
なお、受け箱10の閉状態の時、回転軸31の軸心と連結軸34と作用軸35とが略一直線上に並ぶように配列され、リンク部材33’とリンク部材33”とがトグルリンク機構を構成している。
【0033】
また、回転軸31の先端部側は支持部材36により回動可能に支持されるが、この支持部材36から外側に位置する回転軸31には手動操作で受け箱10を開閉するレバー37が設けられている。なお、図示されていないがレバー37が所定角度回動したとき、つまりある所定の角度範囲まで回動されたとき、それ以上回動しないようにメカニカルストッパが配置されている。すなわち、受け箱10が所定の角度範囲まで回動されたとき、それ以上の動きを阻止する構成となっている。
【0034】
前記双方向安定装置40は、駆動装置22と過負荷保護機構50との間の回転軸31に設けられたドア開安定機構41と長リンク部材33”の下端部側に設けられたドア閉安定機構42とからなり、ドア開安定機構41側は、回転軸31に固定された2つの短リンク部材41a,41b、この2つの短リンク部材41a,41bに掛け渡されたクランク軸41c、このクランク軸41cと支持部材41dとの間に介在される例えば圧縮力をもつ引っ張りバネなどの弾性体41e等で構成され、またドア閉安定機構42側は、支持部材42aと長リンク部材33”の下端部との間に例えば圧縮力をもつ引っ張りバネなどの弾性体42bとにより構成されている。
【0035】
すなわち、双方向安定装置40を構成する弾性体42bは、長リンク部材33”の下端部に係着され、駆動装置22と駆動力伝達機構30とを用いて受け箱10が閉じるとき或いは閉じたとき、長リンク部材33”の下端部を復元力により引っ張って受け箱10の閉状態を安定に保持する役割をもっている。また、他方の弾性体41eは、駆動装置22と駆動力伝達機構30とを用いて受け箱10を開くとき或いは開いたとき、復元力により受け箱10の開状態を安定に保持する役割をもっている。
【0036】
前記過負荷保護機構50は、回転軸31に過負荷がかかったとき、駆動力を切り離すものであって、例えば図3に示すような構成となっている。つまり、回転軸31に固定される回転体51の片側の湾状突部52に回動可能にレバー53を取付け、このレバー53先端両側と回転体51両端部との間をそれぞれ弾性体54で支持し、レバー53の端部が例えば外枠55の溝部56に嵌合する構成となっている。この過負荷保護機構50は、伝達トルクがある所定の値を越えたとき、溝部56からレバー53が外れ、一周の後に再度溝部56内に嵌合し、常に一個所の特定の角度でレバー53が嵌合する構造となっている。
【0037】
図中63a,63bは回転軸31に取付けられた変形カムの周面部と対面し、回転軸31の回転に基づく受け箱10の開閉状態を検知するセンサである。
【0038】
次に、以上のような落下物防止装置の動作について説明する。
【0039】
乗りかごの停止時、制御装置21が駆動装置22を駆動する制御指示を送出する。駆動装置22は制御指示に従って回転駆動力を発生すると、この回転駆動力は駆動力伝達機構30を介して長リンク部材33”に伝達され、受け箱10に対して突き上げるような駆動力を付与する。その結果、受け箱10は、回転軸体12を回転中心とし、図示反時計方向に回動し、構造物1と乗りかご2との隙間の下部に受け箱10の開口部11が位置するように突出動作させる。
【0040】
一方、乗りかごの昇降時、同様に制御装置21からの制御指示を受け、駆動装置22は、制御指示に従って回転駆動力を発生すると、この回転駆動力は駆動力伝達機構30を介して長リンク部材33”に伝達され、受け箱10に対して引張るような復元力を付与する。その結果、受け箱10が回転軸体12を回転中心とし、図示時計方向に回動し、回転軸31の軸心と連結軸34と作用軸35とが略一直線上に並ぶように配列し、つまり受け箱10が閉じた状態となる。このとき、回転軸31の回転に伴う変形カムの押圧接触によってオンオフするセンサ63a,63bの信号に基づき、制御装置21は、受け箱10の開閉動作が確実に完了したことを確認する。
【0041】
なお、通常は制御装置21が駆動装置22に制御指示を出して受け箱10を開閉動作させているが、調整時、断線時、点検時等においては、作業員が回転軸31の先端周部に取付けられているレバー37を手動操作し、受け箱10を開閉動作させる。
【0042】
次に、図4ないし図8を参照して、駆動装置22の回転系に接続される回転軸31のトルクについて詳細に説明する。
【0043】
図4は弾性体41e、42b及び乗りかご2の荷重Wによって回転軸31に加わるトルクの関係を示す図である。同図(A)は受け箱10が閉じた状態を示す図、同図(B)は受け箱10が開いた状態を示す図、同図(C)は受け箱10が閉じた状態から開いた状態となるまでの回転軸31の回転角度θと回転軸31回りのトルクとの関係を描いた角度トルク線図である。
【0044】
回転軸31に加わる力としては、受け箱10の重量W、弾性体41eおよび42bの復元力などであり、簡単化するためにリンク重量、機構の摩擦抵抗力および慣性力は無視する。そして、回転軸31回りのトルクの合計Ttotalは、受け箱10が同図(A)のように閉じる方向に作用する弾性体42bの復元力により安定し、同図(B)のように開ける方向に作用する弾性体41eの復元力により安定するように設定する。この設定状態は弾性体41e、42bの選定および調整により容易に変更可能である。
【0045】
次に、図5ないし図8を用いて、各個別部材と駆動装置22の回転系に接続される回転軸31に影響を与えるトルクとについて詳細に説明する。
【0046】
図5は弾性体41eと回転軸31に加わるトルクの関係を説明する図である。
【0047】
同図(A)は受け箱10が閉じた状態での弾性体41eの状態を示す図、同図(B)は受け箱10が開いた状態での弾性体41eの状態を示す図、同図(C)は弾性体41eの復元力による回転軸31回りのトルクT41eを描いた角度トルク線図である。
【0048】
受け箱10が閉じた状態(同図A)では、弾性体41eの方向とクランク軸41cの方向とがほぼ直線状となり、回転軸31のトルクT41eは略ゼロとなるが、受け箱10が開く方向に回動したとき、弾性体41eがクランク軸41cを介して回転軸31に徐々に大きなトルクT41eが加わるようになる。
【0049】
図6は受け箱10の荷重Wと回転軸31に加わるトルクの関係を説明する図である。
【0050】
同図(A)は荷重Wをもつ受け箱10の閉じた状態でのリンク部材33’,33”の位置関係を示す図、同図(B)は荷重Wをもつ受け箱10の開いた状態でのリンク部材33’,33”の位置関係を示す図、同図(C)は、受け箱10の重量Wによる回転軸31回りのトルクを描いた角度トルク線図である。
【0051】
受け箱10の重量Wは閉じる方向にトルクTwが発生しているが、受け箱10の閉じた状態では、回転軸31の軸心と連結軸34と作用軸35とが略一直線に並ぶので、トルクTwはゼロである。受け箱10が開く方向に回動すると、リンク部材33’、33”はくの字状になり、回転軸31に加わるトルクが徐々に大きくなる。
【0052】
図7は弾性体42b及びリンク部材33’、33”と回転軸31に加わるトルクの関係を説明する図である。
【0053】
同図(A)は、受け箱10が閉じた状態を示し、同図(B)は受け箱10が閉じた状態を示し、同図(C)は弾性体42bの復元力による回転軸31回りのトルクT42bを描いた角度トルク線図である。
【0054】
弾性体42bは連結軸34を介して受け箱10が閉じる方向にトルクT42bが発生しており、受け箱10の重量Wによる閉じる方向のトルクTwと合わせて角度全域で閉じる方向にトルクT42bが発生している。
【0055】
図8は受け箱10の当接部材61と被当接部位62とが強く当たり、回転軸31に過負荷が生じ、過負荷保護機構50が切り離された場合を説明する図である。
【0056】
同図(A)は、受け箱10の当接部材61と被当接部位62とが衝突して過負荷保護機構50が切り離された直後の状態を示し、同図(B)は過負荷保護機構50が切り離された状態での回転軸31回りのトルクTを描いた角度トルク線図である。図4(A)と比較すると、図8(A)は過負荷保護機構50が切り離されているので、弾性体42b及び駆動装置22の影響がない。従って、この状態においては、回転軸31回りのトルクの合計T’total(T42b+Tw)は、受け箱10が閉じる方向に作用し続けるので、その後については図示しないが、受け箱10は閉じる。
【0057】
従って、以上のような実施の形態によれば、図1及び図8に示すように、当接部材61と被当接部位62とが接触したとしても、当接部材61がローラ等で構成され、かつ、被当接部位62がスロープ形状となっているので、被当接部位62が当接部材61を押し退けるように作用するので、受け箱10の機械的な正面衝突を容易に回避でき、制御装置21が万が一の故障が発生しても、乗りかごを最寄階に運行でき、安全性を確保できる。乗りかご2の昇降中に制御装置21が不具合を検知しても、先ず乗客を停止階に降ろしてから故障停止すればよく、乗客を閉じ込め状態をなくすことができる。
【0058】
また、双方向安定装置40においては、受け箱10が開く方向のときには弾性体41eによる引張り力である復元力が発生し、また受け箱10が閉じる方向のときには弾性体42bによる引張り力である復元力が発生しているので、受け箱10が安定な状態で開閉でき、開閉動作終了後には駆動装置22に動力を与え続けなくても、受け箱10は動かない状態となり、エネルギーの消費量を低減できる。つまり、弾性体41eはクランク軸41cを介して受け箱10が開く方向に安定するような復元力が発生し、弾性体42bはリンク部材33’,33”を介して受け箱10が閉じる方向に安定するように復元力を発生する。しかも、複数の弾性体41e及び42bを用いて、受け箱10の開く方向及び閉じる方向への復元力をそれぞれ発生しているので、弾性体41e、42bの調整で安定性を確保でき、しかも保守性に優れている。
【0059】
さらに、当接部材61と被当接部位62とが強く当たって過負荷が生じたとき、過負荷保護機構50が切り離されると、双方向安定装置40のうち弾性体42bの復元力だけが受け箱10に作用するので、受け箱10は閉じた状態まで戻すことができ、衝突速度が速くても故障しにくい。
【0060】
また、回転軸31がある所定の角度以上に回動したとき、図示しないメカニカルストッパが作用するので、受け箱10の開き過ぎ、閉じ過ぎが無くなる。なお、受け箱10をメカニカルストッパの直前で止めるようにすれば、その後は双方向安定装置40の弾性体41e、42bがメカニカルストッパ側に押し付ける復元力を発生するので、受け箱10が安定な状態で停止させることができる。また、受け箱10を開く方向では、受け箱10が当接部材61を介して対面側に追従するように押し続けられているので、構造物1の乗り場と乗りかご2との隙間が開くことなく、また隙間から物が落下することが無く、また受け箱10が開いた状態にあって、仮に、乗客の乗り降り中に乗りかご2の荷重が変動し、当該乗りかご2と構造物1の乗り場との隙間が変化したとしても、受け箱10が対面側に押し付けられているので、隙間からの落下物は受け箱10に容易に受けることができる。
【0061】
さらに、受け箱10を閉じる方向では、リンク部材33’,33”はトグルリンク機構をなすように働くので、仮に動作終了後に大きな風力が作用しても、受け箱10が動かない。このことは、屋外に落下物防止装置を取付けた場合でも安全である。
【0062】
さらに、受け箱10上面の開口部11は、通常数10mm程度の幅しかなくても、受け箱10等に作業員用扉4,15を開けることにより、受け箱10から容易に回収物を回収できる。但し、構造物1の乗り場または乗りかご2の床面の作業員扉4を開けるには施錠を外し必要があるので、保安上にも優れている。
【0063】
さらに、開口部11を有する受け箱10はねじれ剛性が低いが、開口部11方向に補強部材14を設け、断面三角形状のパイプを構成しているので、受け箱10が長い場合でも、高いねじれ剛性を確保でき、しかもねじれ振動が生じ難い。
【0064】
さらに、受け箱10の開口部11前面側にゴム部材などの板材16を設けたことにより、受け箱10の開時には構造物1の乗り場と乗りかご2との隙間を跨るように設定され、落下物を確実に回収でき、かつ、仮に乗りかご2が偏荷重状態に傾いたり、相手の取り付け精度や表面精度が悪く歪んでいても隙間の無い状態に設定でき、コインのような薄いものでも隙間から落下することが無くなる。
【0065】
(実施の形態2)
図9は本発明に係る落下物防止装置の他の実施の形態を示す構成図である。
【0066】
この実施の形態例は、実施の形態1と比較し、駆動力伝達機構30と双方向安定装置40とを異にする例である。
【0067】
駆動力伝達機構30としては、長尺回転軸31aが設けられ、この長尺回転軸31aには所定の間隔をもって2組のリンク部材33a’、33a”と33b’、33b”が設けられ、それぞれ長リンク部材33a”と33b”とが受け箱10の下端2ヶ所のコーナ部分に形成された凹陥部13a,13bに掛け渡される作用軸35a、35b(35bは図示せず)に係着してなる構成である。
【0068】
一方、双方向安定装置40は、駆動装置22に比較的近い長尺回転軸31aに受け箱10の開閉時の回動角度に相応する角度差をもって磁気摺動子46a,46bとを取り付け、受け箱10の開閉時、永久磁石47のS及びN磁極片48a、48bにより、前記磁気摺動子36a,36bを抱き込むことにより、受け箱10が開く方向にも閉じる方向にも安定な力を作用させる構成である。
【0069】
次に、以上のような落下物防止装置の動作について説明する。
【0070】
受け箱10が開く方向のとき、磁気摺動子46aと永久磁石47を含む磁極片48a、48bとで磁気回路49aを形成し、磁気摺動子46aを永久磁石47の吸引力により吸引するように作用し、また受け箱10が閉じる方向のとき、磁気摺動子46bと永久磁石47を含む磁極片48a、48bとで磁気回路49bを形成し、磁気摺動子46bを永久磁石47の吸引力により吸引するように作用するので、受け箱10の開閉終了後、駆動装置22に動力を与え続けなくても、受け箱10は動かない。
【0071】
また、受け箱10は2つの長リンク部材33a”と33b”とで支えられているので、受け箱10が長い場合であっても、ねじれる力が発生しにくい効果がある。
【0072】
従って、以上のような実施の形態によれば、受け箱10が開く方向にも閉じる方向にも安定するように吸引力が発生するので、受け箱10の開閉終了後、駆動装置22に動力を与え続けなくても、受け箱10が動かないので、エネルギー消費量を大幅に低減できる。
【0073】
また、受け箱10の左右の2ヶ所をの長リンク部材33a”と33b”とで支えられているので、受け箱10のねじれる力の発生を抑制でき、受け箱10が長い場合でもねじれ振動が生じにくく、受け箱10を確実に開閉できる。
【0074】
なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、各実施の形態は可能な限り組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。さらに、上記各実施の形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。例えば問題点を解決するための手段に記載される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されうることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【0075】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、受け箱の開閉時に双方向安定装置による復元力により常に受け箱を安定な状態に設定できる。
【0076】
また、本発明は、従来のように受け箱の開閉状態等の動作状態を検出するセンサの接点溶着や断線などによる制御装置の一部の故障の場合でも、当接部材を押し付けつつ回転させて運行できるので、既に乗りかごに乗っている乗客を近くの階床に降ろすことができ、乗客を閉じ込める心配がなくなる。
【0077】
さらに、受け箱の開時に受け箱の開口部に取付けた板材が隙間に跨って対面側に接触するので、物が落ちた場合でも、確実の受け止めて収納し、下階にいる人の安全を確保できる。
【0078】
さらに、乗りかごのかごドアが閉まった状態において受け箱を開閉するので、乗客が物を落とすことがなくなる。
【0079】
よって、落下物による危険性がなく、乗客の閉じ込め事故も未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る落下物防止装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】 受け箱の開時の受け箱開口部の板材と対面側との閉塞状態を説明する図。
【図3】 過負荷保護機構の一例を示す断面構成図。
【図4】 双方向安定装置及び乗りかごの荷重と駆動装置の回転系に接続される回転軸のトルクとの関係を説明する図。
【図5】 双方向安定装置の一方の弾性体と駆動装置の回転系に接続される回転軸のトルクとの関係を説明する図。
【図6】 乗りかごの荷重と駆動装置の回転系に接続される回転軸のトルクとの関係を説明する図。
【図7】 双方向安定装置の一方の弾性体と駆動装置の回転系に接続される回転軸のトルクとの関係を説明する図。
【図8】 双方向安定装置の一方の弾性体及び乗りかごの荷重と駆動装置の回転系に接続される回転軸のトルクとの関係を説明する図。
【図9】 本発明に係る落下物防止装置の他の実施形態を示す構成図。
【図10】 従来の落下物防止装置を説明する構成図。
【図11】 従来のもう1つの落下物防止装置を説明する構成図。
【符号の説明】
1…構造物1
2…乗りかご
4…作業用扉
10…受け箱
11…開口部
12…回転軸体
13…凹陥部
14…補強部材
15…作業員用扉
16…ゴム等の板材
21…制御装置
22…駆動装置
30…駆動力伝達機構
31…回転軸
31a…長尺回転軸
33’、33a’、33b’…短リンク部材
33”、33a”、33b”…長リンク部材
34…連結軸
35、35a,35b…作用軸
37…レバー
40…双方向安定装置
41…ドア開安定機構(41e:弾性体)
42…ドア閉安定機構(42b:弾性体)
46a,46b…磁気挿入子
47…永久磁石
48a、48b…磁極片
50…過負荷保護機構
61…当接部材
62…被当接部位
63a,63b…受け箱開閉状態検知センサ
Claims (7)
- エレベータ据付け構造物の乗り場又は乗りかごの下部側に取付けられ、当該乗りかご側又は構造物側と対面する側に回動可能に支持され、上面に開口部を有する受け箱と、
前記乗りかごの停止時および昇降時に制御装置からの制御指示を受けて前記受け箱を開閉動作させるための回動駆動力を発生する駆動装置と、
この駆動装置の回転系に接続される回転軸にトグルリンク機構を構成するリンク部材が設けられ、このリンク部材の端部を前記受け箱の前記回動支持側とは反対側に係着し、前記回転軸の駆動力を前記リンク部材を介して前記受け箱に伝達し、当該受け箱を開閉する駆動力伝達機構と、
前記回転軸に固定されたクランク機構に第1の弾性体を介して支持され、この第1の弾性体の復元力で前記受け箱が開く方向に安定に保持するドア開安定機構及び前記リンク部材の下端部に第2の弾性体を介して支持され、この第2の弾性体の復元力で前記受け箱が閉じる方向に安定に保持するドア閉安定機構を有する双方向安定装置と
を備えたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1に記載の落下物防止装置において、
前記受け箱上部側に設けられた当接部材と、当該受け箱に対面する前記乗りかごの下部面部又は前記構造物の乗り場下部面部に設けられ、前記乗りかごの昇降時に当接する前記当接部材を押し退けるように傾斜させた被当接部位とを設けたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の落下物防止装置において、
前記回転軸に設けられ、当該回転軸に加わる伝達トルクが所定の値を越えたとき、前記駆動力伝達機構から伝達される駆動力を切り離す過負荷保護機構を設けたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の落下物防止装置において、
前記受け箱の開口部前方側に柔軟性をもった板材を突設させたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の落下物防止装置において、
前記回転軸の先端部周面部に設けられた手動操作可能なレバーと、前記受け箱の所定の角度以上に開閉するとき、前記回転軸が回動しないように前記レバーの回転を阻止するメカニカルストッパを設けたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の落下物防止装置において、
前記受け箱の前面に作業員用扉を設け、また当該受け箱上部の開口部に対面する前記構造物の乗り場又は乗りかご床面の該当位置に施錠付き作業員用扉を設けたことを特徴とする落下物防止装置。 - 請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の落下物防止装置において、
前記請求項1に記載される双方向安定装置に代えて、前記回転軸に前記受け箱の開閉時の回動角度に相応する角度差をもって設けられた2つの磁気摺動子と、前記受け箱の開閉時に摺動する該当する前記磁気摺動子に磁気吸引力を付与し、前記受け箱が開く方向及び閉じる方向に安定に保持するS極磁極片とN極磁極片を有する永久磁石とからなる双方向安定装置を設けたことを特徴とする落下物防止装置。
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