JP4206752B2 - 感放射線性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子線や電子線のような活性放射線の照射により現像液に対する溶解性が変化する感放射線性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、保護膜、平坦化膜、電気絶縁膜などの電子部品用樹脂膜であって透明性に優れた樹脂パターン膜を形成するための材料として好適な感放射線性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、液晶ディスプレイ用カラーフィルタなどには、その劣化や損傷を防止するための保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための電気絶縁膜等、機能性の電子部品用樹脂膜が設けられている。また、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や集積回路素子には、層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が機能性の電子部品用樹脂膜として設けられている。
【0003】
しかし、従来から電子部品形成用材料として知られている熱硬化性材料を用いても十分な平坦性を有する層間絶縁膜が形成できない場合があり、微細なパターニングが可能な新しい感放射線性絶縁膜形成材料の開発が求められてきた。また、近年、配線やデバイスの高密度化にともない、これらの材料に低誘電性が求められるようになってきた。
【0004】
このような要求に対応して、エステル基含有ノルボルネン系単量体を開環重合し、水素添加した後、エステル基部分を加水分解して得られるカルボキシル基が結合したアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂と、酸発生剤と、架橋剤とを含有する組成物が提案されている(特開平10−307388号公報、特開平11−52574号公報)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−307388号公報
【特許文献2】
特開平11−52574号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者は、前記2つの公報記載の感放射線性樹脂組成物を用いて形成した樹脂膜は、誘電率、吸水性、平坦性、耐溶剤性、耐熱寸法安定性などに優れているが、透明性に劣ることを確認した。
また、本発明者が検討した結果、前記2つの公報記載の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜は、220℃以下では安定なものの、それ以上の高温で加熱した場合、十分な耐熱変色性が得られないことが判った。回路基板上にある電極やトランジスタの電気特性を向上させるため、通常、基板を220℃以上の高温で加熱処理するので、耐熱変色性に劣る感放射線性樹脂組成物を用いて透明回路基板を製造した場合、酸素濃度の極めて低い不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行わねば、透明性を維持できないことになり、生産性に劣る問題がある。
【0007】
かかる知見の下、本発明者は、加熱によっても変色せず、高い透明性を維持できる感放射線性樹脂組成物を得ることを目的として、鋭意検討した結果、ただ1個のカルボキシル基を有する繰り返し構造単位からなる脂環式オレフィン樹脂ではなく、2個のカルボキシル基を有する繰り返し構造単位を含む脂環式オレフィン樹脂を用いると、高温下での酸化が抑制され、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、次式(1)で表される繰り返し構造単位を有するアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)、酸発生剤(B)、架橋剤(C)、及び溶剤(D)を含有する感放射線性樹脂組成物が提供される。
【0009】
【化2】
(式(1)中、nは、0〜2の整数であり、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0010】
また本発明によれば、当該感放射線性樹脂組成物を用いて成る樹脂膜を基板上に積層し、この樹脂膜に活性放射線を照射して、前記樹脂膜中に潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する当該樹脂膜と現像液とを接触させることによりパターンを顕在化させて、基板上に樹脂パターン膜を形成する方法が提供される。
更に本発明によれば、当該方法により形成された透明樹脂パターン膜が提供され、当該樹脂パターン膜の電気絶縁膜が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の感放射線性樹脂組成物に用いられる(A)成分であるアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂は、前記式(1)で表される繰り返し構造単位(以下、式(1)で表される構造単位という)を有するものである。この樹脂は、カルボキシル基を有するため、アルカリ性溶液(現像液)への溶解性を示す。
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。ここで、アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基などの、直鎖、分岐又は環状のアルキル基である。アルキル基の中では、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
式(1)中、nは、0〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。
【0012】
このアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)は、次式(1)で表される構造単位以外の繰り返し構造単位(以下、他の構造単位という)を有していてもよい。アルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)中、次式(1)で表される構造単位の割合に格別な制限はないが、パターンニング性能の観点から、当該樹脂を構成する全繰り返し構造単位数に対して通常5〜60モル%、好ましくは5〜55モル%、より好ましくは10〜50モル%である。
【0013】
他の構造単位は、脂環構造を有する脂環式オレフィン単量体由来の構造単位であっても、エチレンのような、脂環構造を有さない非脂環式単量体由来の繰り返し構造単位であっても良いが、耐熱性の観点から、脂環構造を有さない繰り返し構造単位の割合は、全繰り返し構造単位数に対して、通常50モル%以下、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。
好適な他の構造単位としては、芳香族基と非プロトン性極性基とを有する基が結合した脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位、1つのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位、極性基を有さない脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位及び非プロトン性極性基を有する脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位が挙げられ、芳香族基と非プロトン性極性基とを有する基が結合した脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位が特に好適である。
【0014】
ここで芳香族基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレン基などであり、非プロトン性極性基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの非共有電子対を有するヘテロ原子を含む一価又は多価の非プロトン性原子団(例えば、N,N−ジ置換アミノ基、カルボニル基、カルボニルオキシカルボニル基、オキシカルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、N−置換アミド基、N−置換イミド基非プロトン性極性基)などである。こうした、芳香族基と非プロトン性極性基とを有する基の好ましい例としては、N−フェニルジカルボキシイミド基などのN−フェニル置換イミド基;N−フェニルアミド基などのN−フェニル置換アミド基;フェノキシカルボニル基やメトキシカルボニルオキシフェニル基などのフェニルエステル基;等が挙げられ、芳香族基と非プロトン性極性基とを有する基はN−フェニルジカルボキシイミド基が特に好ましい。
【0015】
本発明にかかるアルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)は、重合性単量体として、式(1)で表される構造単位を与える脂環式オレフィン単量体(不飽和脂肪族環状炭化水素)と必要に応じて他の構造単位を与える単量体とを用いて、触媒存在下で開環重合した後、水素添加して得られる。
アルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)を製造する方法に格別な制限はなく、例えば、後に詳述する単量体を用い、特開平11−52574号公報、特願2001−174872号公報、国際公開WO99/03903号公報、国際公開WO01/79325号公報などに記載された脂環式オレフィン樹脂の製造方法に準じて、開環(共)重合して得られる(共)重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合を水素化し、更に必要に応じて加水分解やグラフト変性することにより得られる。
【0016】
式(1)を与える脂環式オレフィン単量体は、カルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体であっても、ニトリル基、エステル基、アミド基、オキシカルボニルオキシ基(ジカルボン酸の酸無水物残基)のような、加水分解などの変性によりカルボキシル基に変換される基(カルボキシル基前駆基)を有する脂環式オレフィン単量体であってもよいが、生産性や保存安定性の観点から、カルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体が好ましい。
前記式(1)で表される構造単位を与える好ましい単量体としては、次式(2)で表される単量体が挙げられる。
【0017】
【化3】
【0018】
(式(2)中、nは、0〜2の整数であり、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。R3及びR4は、それぞれ独立してカルボキシル基、ニトリル基、エステル基、アミド基、オキシカルボニルオキシ基又はR3とR4がジカルボン酸の酸無水物残基として環を形成しているものである。)
式(2)中のn及びR1及びR2は、前述した式(1)と共通である。R3及びR4は、それぞれ独立してカルボキシル基、ニトリル基、エステル基、アミド基、オキシカルボニルオキシ基又はR3とR4がジカルボン酸の酸無水物残基として環を形成しているものであり、好ましくは共にカルボキシル基である。
【0019】
このような単量体としては、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−エキソ−9−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン−8,9−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン−11,12−ジカルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが好ましい。
他の構造単位を与える単量体については、後にまとめて詳述する。
【0020】
前記式(2)のようにカルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体を重合性単量体として用いる場合、中性の電子供与性配位子を有する有機ルテニウム化合物を主成分とする触媒の存在下で、開環メタセシス(共)重合すると、分子量分布の狭い脂環式オレフィン樹脂を得ることができ、好適である。有機ルテニウム化合物を主成分とする触媒は、中性の電子供与性配位子が配位している有機ルテニウム化合物を主成分とする触媒である。当該有機ルテニウム化合物を構成する、中性の電子供与性配位子は、中心金属(すなわちルテニウム)から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子である。好適な有機ルテニウム化合物には、ルテニウムから引き離されたときに負の電荷を持つアニオン性配位子が配位している。また、さらに対アニオンが存在していてもよく、更に、ルテニウム陽イオンとイオン対を形成する陰イオンを対イオンとして有していても良い。
【0021】
このような有機ルテニウム化合物の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
さらに、重合触媒の重合活性を高めるため、ピリジン類;ホスフィン類;前述の1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの、含窒素複素環式カルベン化合物などの中性の電子供与性化合物をルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で添加することもできる。
【0022】
本発明において用いられる脂環式オレフィン樹脂(A)の、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量は、通常500〜20000、好ましくは1000〜15000であり、分子量分布は、通常1〜4、好ましくは1〜3である。
【0023】
上述したとおり、特に好適な他の構造単位は、芳香族基と非プロトン性極性基とを有する基が結合した単量体由来の繰り返し構造単位であり、この繰り返し構造単位を与える単量体の好ましい例としては、N−(4−フェニル)−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)、2−(4−メトキシフェニル)−5−ノルボルネン、2−ベンジロキシカルボニル−5−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0024】
上述した単量体以外の、好適な他の構造単位を与える脂環式単量体としては、1つのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体、極性基を有さない脂環式オレフィン単量体及び非プロトン性極性基を有する脂環式オレフィン単量体が挙げられる。中でも、現像液への溶解性を制御する場合、極性基を有さない脂環式オレフィン単量体を用いるのが有利である。
1つのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン単量体としては、8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−カルボキシメチル−8−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、11−ヒドロキシカルボニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−メチル−11−ヒドロキシカルボニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エン、11−カルボキシメチル−11−ヒドロキシカルボニルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンなどが挙げられる。
【0025】
極性基を有さない脂環式オレフィン単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(別名:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.02,8]テトラデカ−3,5,7,12−11−テトラエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、ペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、テトラシクロ[6.6.0.12,5.18,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0026】
非プロトン性の極性基を有する脂環式オレフィン単量体としては、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなど、式(1)で表される繰り返し構造単位を与え得ない単量体も用いることができる。
【0027】
上述した以外の他の構造単位を与える単量体としては、非脂環式単量体が挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;等の不飽和炭化水素添加化合物が挙げられる。これらの中でも、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン化合物やジエン化合物は、単量体全量に対して0.1〜10モル%程度を添加すると、開環重合体の分子量調整剤としても機能することが知られている。
【0028】
本発明に用いる酸発生剤(B)は、活性放射線の照射により酸を発生させる化合物である。
ポジ型パターンを与える酸発生剤としては、キノンジアジドスルホン酸エステルが挙げられる。キノンジアジドスルホン酸エステルは、一般的に感光剤として用いられている、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドなどのキノンジアジドスルホン酸ハライドとフェノール性水酸基を1つ以上有するフェノール類とのエステル化合物である。フェノール類としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、ノボラック樹脂のオリゴマー、フェノール類とジシクロペンタジエンとを共重合して得られるオリゴマー(特許第3090991号公報)などが挙げられる。
【0029】
酸発生剤の量は、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常0.5〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。酸発生剤が少なすぎると残膜率や解像性が悪くなるおそれがあり、逆に、酸発生剤が多すぎると、耐熱性や光透過性が低下する可能性がある。
【0030】
本発明において架橋剤(C)は、加熱により架橋剤分子間に架橋構造を形成するものや、脂環式オレフィン樹脂と反応して脂環式オレフィン樹脂間に架橋構造を形成するものであり、具体的には、2以上の反応性基を有する化合物である。かかる反応性基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基などが好ましい。
【0031】
架橋剤の具体例としては、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類;4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族ポリアミン類;2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフォンなどのアジド化合物;ナイロン、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミドなどのポリアミド類;N,N,N’,N’,N”,N”−(ヘキサアルコキシメチル)メラミンなどのメラミン類;N,N’,N”,N”’−(テトラアルコキシメチル)グリコールウリルなどのグリコールウリル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート樹脂などのアクリレート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート系ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート系ポリイソシアネートなどのイソシアネート系化合物;水添ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリイソシアネート;1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ−(ヒドロキシメチル)ノルボルナン;1,3,4−トリヒドロキシシクロヘキサン;脂環式構造含有のエポキシ化合物又は樹脂などが挙げられる。
【0032】
架橋剤の量は、格別制限されず、パターンに求められる耐熱性の程度を考慮して任意に設計すればよいが、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜70重量部、最も好ましくは20〜50重量部である。架橋剤が多すぎても少なすぎても耐熱性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明において溶剤(D)は、上述してきた各成分を溶解する溶剤を用いればよい。このような溶剤として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチルなどのエステル類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチルラクトンなどの非プロトン性極性溶剤;等が挙げられる。
【0034】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、ストリエーション(塗布すじあと)の防止、現像性の向上などの目的で、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンジラウレートなどのノニオン系界面活性剤、新秋田化成社製エフトップシリーズ、大日本インキ化学工業社製メガファックシリーズ、住友スリーエム社製フロラードシリーズ、旭硝子社製アサヒガードシリーズなどのフッ素系界面活性剤、信越化学社製オルガノシロキサンポリマーKPシリーズなどのシラン系界面活性剤、共栄社油脂化学工業社製ポリフローシリーズなどのアクリル酸共重合体系界面活性剤などの各種界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の固形分100重量部に対して、通常2重量部以下、好ましくは1重量部以下の量で必要に応じて用いられる。
【0035】
本発明の感放射線性樹脂組成物には、基板との接着性を向上させる目的で、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの官能性シランカップリング剤などを接着助剤として添加しても良い。接着助剤の量は、脂環式オレフィン樹脂100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0036】
さらに本発明の感放射線性樹脂組成物には、必要に応じて帯電防止剤、保存安定剤、消泡剤、顔料、染料、酸化防止剤、増感剤などを含んでいてもよい。
【0037】
上述してきた、本発明の組成物を構成する各成分は、それぞれ1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、各成分を、常法に従って混合して得られる溶液である。本発明の感放射線性樹脂組成物の固形分濃度は、必要な樹脂膜の厚みを考慮して任意に設定すればよいが、操作性の観点から、通常5〜40重量%である。
調製された感放射線性樹脂組成物は、0.1〜5μm程度のフィルタ等を用いて異物などを除去した後、使用に供することが好ましい。
【0039】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、ディスプレイ表示素子、集積回路素子などの素子や、液晶ディスプレイ用カラーフィルタなどの保護膜、素子表面や配線を平坦化するための平坦化膜、電気絶縁性を保つための絶縁膜(薄型トランジスタ型液晶表示素子や集積回路素子の電気絶縁膜である層間絶縁膜やソルダーレジスト膜などを含む)のような各種の電子部品用樹脂パターン膜の材料として好適である。
【0040】
上述してきた本発明の感放射線性樹脂組成物から成る樹脂膜を、基板に積層し、マスクパターンを介して活性放射線を照射して、前記樹脂膜中に潜像パターンを形成し、潜像パターンを有する当該樹脂膜と現像液とを接触させることにより樹脂パターンを顕在化させて基板上に樹脂パターン膜を形成する。
【0041】
基板に樹脂膜を積層する方法に格別な制限はなく、例えば基板表面に本発明の感放射線性樹脂組成物を塗布、乾燥して基板上に流動性のない樹脂膜を形成する方法などが挙げられる。
基板表面や支持体に本発明の感放射線性樹脂組成物を塗布する方法としては、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法などの各種の方法を採用することができる。次いでこの塗膜を、加熱により乾燥し、流動性のない樹脂膜を得る。基板表面に直接樹脂膜を形成する場合の加熱条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常60〜120℃で10〜600秒間程度である。基板表面に感放射線性樹脂組成物を塗布、乾燥して基板上に直接樹脂膜を形成する方法において、乾燥のための加熱を、一般に「プリベーク(Pre−Bake)」と言う。
【0042】
得られた樹脂膜に活性放射線を照射し、樹脂膜に潜像パターンを形成する。活性放射線の種類は特に制限されず、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、プロトンビーム線などが挙げられ、特に可視光線、紫外線が好ましい。照射する放射線量は、樹脂膜の種類や厚みにより任意に設定することができる。また、パターンの形成は、マスクを介して照射線を照射することによっても、電子線などで直接描画することによってもよい。
【0043】
現像液はアルカリ性化合物を水に溶解した水性液であり、アルカリ性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドンなどの第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンなどの環状アミン類;等が挙げられる。これらアルカリ性化合物は1種類を単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0044】
現像液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加することもできる。
現像時間は、特に制限されないが、通常30〜180秒間である。また現像液と潜像パターンを有する樹脂膜との接触方法は特に制限されず、例えば、パドル法、スプレー法、ディッピング法などによればよい。
現像温度は、特に制限されないが、通常15〜35℃、好ましくは20〜30℃である。
【0045】
このようにして基板上に目的とする樹脂パターン膜を形成した後、必要に応じて、基板上、基板裏面、基板端部に残る不要な現像残渣を除去するために、この基板とリンス液とを常法により接触させることができる。リンス液と接触させた基板は、通常、圧縮空気や圧縮窒素で乾燥させることによって、基板上のリンス液を除去する。さらに、必要に応じて、基板の樹脂パターン膜のある面に活性放射線を全面照射することもできる。
【0046】
基板上に形成された樹脂パターン膜は、必要に応じて、加熱(ポストベーク:Post Bake)により硬化される。加熱することは、樹脂パターン膜の耐熱性向上の観点から好ましい。加熱の方法に格別な制限はなく、例えばホットプレート、オーブンなどの加熱装置により行われる。加熱温度に格別な制限はなく、通常150〜300℃、好ましくは200〜250℃であり、加熱時間に格別な制限はなく、例えばホットプレートを用いる場合、通常5〜60分間、オーブンを用いる場合、通常30〜90分間である。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される樹脂パターン膜は、透明性と耐熱変色性とに優れた透明樹脂膜である。この本発明の樹脂パターン膜は、例えば、半導体素子、発光ダイオード、各種メモリー類のごとき電子素子;ハイブリッドIC、MCM、プリント配線基板などのオーバーコート材;多層回路基板の層間絶縁膜;液晶ディスプレイの絶縁層など、各種の電子部品用の樹脂膜として好適に用いることができる。
【0048】
【実施例】
以下に合成例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0049】
[合成例1]
5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NDC)、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ETD)及びN−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)(NBPI)からなる重合性単量体混合物(モル比40/20/40)100部と、1−ヘキセン10部と、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.04部と、テトラヒドロフラン400部とを、窒素置換したガラス製耐圧反応容器に仕込み、70℃で2時間攪拌して反応溶液を得た。この反応溶液中に、モノマーが残留していないことをガスクロマトグラフィーにて確認した。得られた反応溶液を大量のn−ヘキサン中に注いで固形分を析出させた。得られた固形分をn−ヘキサンで洗浄した後、100℃で18時間減圧乾燥し、白色固体の開環メタセシス共重合体を得た。攪拌機付きオートクレーブに、この開環メタセシス共重合体100部、テトラヒドロフラン400部、水素添加触媒としてパラジウム/カーボン(10%パラジウム)5部を添加して、水素圧1.0MPa、60℃で8時間水素化した。この反応溶液をろ過した後、上記と同様に大量のn−ヘキサン中で凝固、乾燥して酸性基を有する水素化率約100%の脂環式オレフィン樹脂であるポリマーAを得た。
【0050】
[合成例2]
重合性単量体混合物を、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NDC)及び8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ETD)(モル比65/35)からなる混合物に、1−ヘキセンの量を7部に変える以外は合成例1と同様にして酸性基を有する水素化率約100%の脂環式オレフィン樹脂であるポリマーBを得た。
【0051】
[合成例3]
重合性単量体混合物を、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NDC)、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(ETD)及びN−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)(NBPI)(モル比10/40/50)からなる混合物に、1−ヘキセンを8部に変える以外は合成例1と同様にして酸性基を有する水素化率約100%の脂環式オレフィン樹脂であるポリマーCを得た。
【0052】
[合成例4]
重合性単量体混合物を、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NDC)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(TCD)及びN−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)(NBPI)(モル比30/30/40)からなる混合物に、1−ヘキセンの量を9部に変える以外は合成例1と同様にして、酸性基を有する水素化率100%の脂環式オレフィン樹脂であるポリマーDを得た。
【0053】
[合成例5]
重合性単量体混合物を、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NDC)及びN−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)(NBPI)(モル比40/60)からなる混合物に、1−ヘキセンの量を9部に変える以外は、合成例1と同様にして、酸性基を有する水素化率100%の脂環式オレフィン樹脂であるポリマーEを得た。
【0054】
[比較合成例1]
特開平11−52574号公報の合成例1に開示されている方法に準じて、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンを開環重合し、重量平均分子量が16,800の開環重合体を得た。重合転化率はほぼ100%であった。次いで得られた開環重合体を水素添加した後、190℃で4.5時間加水分解反応に付して、水素添加率100%、加水分解率97%の、極性基を有する脂環式オレフィン樹脂(ポリマーF)を得た。
【0055】
[比較合成例2]
加水分解反応を2時間にした以外は、比較合成例1と同様にして開環重合体を得、水素添加した後、加水分解し、開環重合後の重合転化率がほぼ100%、重量平均分子量が17,100、水素添加率100%、加水分解率74%の、極性基を有する脂環式オレフィン樹脂(ポリマーG)を得た。
【0056】
以上の合成例で得られたポリマーA〜Gの物性を以下に示す。
【表1】
【0057】
表1中、共重合比率の欄の記号は以下の通り
NDC:5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン由来の繰り返し構造単位((式1)で表される繰り返し構造単位)
NBPI:N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)由来の繰り返し構造単位
ETD:8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン由来の繰り返し構造単位
TCD:テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン由来の繰り返し構造単位
MTCDC:8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン由来の繰り返し構造単位
【0058】
[実施例1]
合成例1で得たポリマーA100部に対して、シクロヘキサノン550部、1,2−キノンジアジド化合物として1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン(1モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(1.9モル)との縮合物20重量部及び架橋剤としてCYMEL300 25部と接着助剤としてγ−グリジドキシプロピルトリメトキシシラン5部と界面活性剤としてメガファックF172(大日本インキ化学工業(株)製)0.05部を混合し溶解させた後、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルタでろ過して感放射線性感光性樹脂組成物溶液を調製した。
【0059】
この溶液をシリコン基板上、ガラス基板上に、それぞれスピンコートした後、90℃にて2分間ホットプレート上でプリベークして、膜厚3.0μmの塗膜を形成した。得られた塗膜付きのシリコン基板上に所定のパターンを有するマスクを置き、波長365nm、光強度5mW/cm2の紫外線を空気中で40秒間照射した。次いで0.3%のテトラメチルアンモニウム水溶液を用いて、25℃×60秒間の現像処理を行った。その後、超純水でリンス処理を1分間行い、ポジ型のパターンを有する薄膜を形成した。その後、全面に365nmにおける光強度が5mW/cm2である紫外線を60秒間照射した。このパターンが形成されたシリコン基板とガラス基板をホットプレート上、200℃で30分間加熱することにより、パターン及び塗膜のポストベークを行い、パターン状薄膜を形成したシリコン基板、ガラス基板を得た。
【0060】
[実施例2〜5]
ポリマーAの代わりに、ポリマーB(実施例2)、ポリマーC(実施例3)、ポリマーD(実施例4)、ポリマーE(実施例5)を用いる以外は実施例1と同様にして、パターン状薄膜を形成したシリコン基板、ガラス基板を得た。
【0061】
[比較例1,2]
ポリマーAの代わりに、ポリマーF(比較例1)、ポリマーG(比較例2)を用いる以外は実施例1と同様にして、パターン状薄膜を形成したシリコン基板、ガラス基板を得た。
【0062】
以上、実施例及び比較例において得られた各種のシリコン基板はいずれも、JIS C6481に準じて測定された10KHz(室温)での比誘電率(ε)が2.85未満であり、また基板を220℃のオーブンで60分間加熱した後の膜厚が、加熱前の膜厚の95%以上であり、比誘電率と耐熱寸法安定性に優れることが確認された。
これらの評価の他、各実施例で用いた樹脂(ポリマーA〜G)の透明性、耐熱変色性を、以下の方法により評価した。その結果を表2に示した。
【0063】
(1)透明性
得られたガラス基板を、日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V−570)を用いて測定された400〜800nmの波長での最低光線透過率(t)の値である。透過率が高いほど透明性に優れる。
(2)耐熱変色性
得られたガラス基板を、240℃のオーブンで70分間加熱した後、このガラス基板の最低光線透過率を上記(1)と同様に測定し、加熱前後の変化率(T)を算出した。
【0064】
【表2】
【0065】
この結果より、構造式1(NDC)で示されるノルボルネン系単量体から合成した樹脂を用いた場合には、比誘電率、耐熱寸法安定性の特性バランスを維持したまま、優れた透明性と耐熱変色性とを実現している(実施例1〜5)。一方、式(1)で表される繰り返し構造単位を有さない脂環式オレフィン樹脂を用いると、比誘電率、耐熱寸法安定性には優れているが、透明性や耐熱変色性に劣ることが判る(比較例1〜2)。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、比誘電率、耐熱寸法安定性、耐溶剤性、平坦性に優れるばかりでなく、良好な透明性と耐熱変色性をもつ感放射線性樹脂組成物を得ることができ、この組成物を用いて得られる樹脂膜は、優れた透明性を有することから、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品や、液晶ディスプレイ用カラーフィルタ、保護膜、平坦化膜、電気絶縁膜などの電子部品用樹脂膜であって透明性に優れた透明樹脂パターン膜を与えることができる。
Claims (6)
- アルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)における、式(1)で表される繰り返し構造単位の割合が、当該樹脂を構成する全繰り返し構造単位数に対して10〜50モル%である請求項1記載の感放射線性樹脂組成物。
- アルカリ可溶性脂環式オレフィン樹脂(A)が、更に、芳香族基と非プロトン性の極性基とを有する基が結合した脂環式オレフィン単量体由来の繰り返し構造単位を有するものである請求項1記載の感放射線性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の感放射線性樹脂組成物を用いて成る樹脂膜を基板上に積層し、この樹脂膜に活性放射線を照射して、前記樹脂膜中に潜像パターンを形成し、次いで潜像パターンを有する当該樹脂膜と現像液とを接触させることによりパターンを顕在化させて、基板上に樹脂パターン膜を形成する方法。
- 請求項4記載の方法により形成される透明樹脂パターン膜。
- 請求項5記載の樹脂パターン膜の電子部品用樹脂膜。
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