JP4206510B2 - ビニル化合物重合防止用の蒸留塔充填物及びビニル化合物の重合防止方法 - Google Patents

ビニル化合物重合防止用の蒸留塔充填物及びビニル化合物の重合防止方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留精製時における重合防止方法に関する。更に詳しくはビニル化合物の製造における充填物を内包する蒸留塔を用いた蒸留工程において、蒸留塔内部の重合物の発生を防止し、円滑かつ経済的に蒸留を実施するための重合防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニル化合物は二重結合を有する重合性化合物であり、その重合は光、熱あるいは過酸化物等により発生するラジカル、イオン性物質および金属錯塩等の存在により開始される。この重合開始における多様性は、重合を目的としない場合の重合、つまり望まれない早期の重合が、多用な原因で開始されることをも意味し、ビニル化合物を製造する上で大きな技術的課題となってきた。
特に高純度の製品を得るための最も普通に行われる精製操作である、充填物を内包する蒸留塔を用いた蒸留は、最も重合し易い工程と言える。つまり、蒸気の凝縮部および凝縮液の滞留部等、蒸留塔内部は極めて重合し易い。このため従来から実に数多くの努力と創意工夫がなされてきた。例えば、メタアクリル酸、アクリル酸およびそれらエステル等に関し次のような開示技術がある。
【0003】
蒸留塔内部はビニル化合物を主成分とする蒸気およびその凝縮液で占められている。従って、蒸留塔内の重合を防止するためには、ビニル化合物と共に気化する重合禁止剤つまり蒸気圧の高い重合禁止剤が望ましく、そのため粗液の重合を防止する蒸気圧の低い重合禁止剤とともに蒸気圧の高い重合禁止剤を併用する方法(特開昭50−64214号公報、特開平2−17151号公報、特開平7−316093号公報)がある。これらの方法では、重合禁止剤が製品に同伴されるため、重合を恐れるがあまり過剰の重合禁止剤を用いると、製品純度の低下あるいは重合禁止剤に起因する着色等の品質低下を招く。製品中への過剰な重合禁止剤の存在は、これらビニル化合物を原料とする重合体を製造する上で好ましくない。また、充填物を内包する蒸留塔の使用において蒸気のショートパスが起こってしまうと、蒸留塔内部に滞留部が発生し重合禁止剤との接触がたたれるため、蒸気圧の高い重合禁止剤の供給はもはや無意味となる。
【0004】
蒸留塔内部に重合禁止効果を有する気体例えば酸素、空気、酸化窒素を存在させる、もしくは重合禁止剤と併用する方法(特公昭50−6449号公報、特開昭49−85016号公報、特開昭50−101313号公報、特開昭59−7147号公報、特開昭64−9957号公報、特開昭64−42443号公報、特開昭64−66140号公報、特開平2−248402号公報、特開平7−53449号公報)がある。酸素および空気は製品を汚染せず安価に得られるため非常に有用であるが、それ自体の重合防止効果は余り高くなく、他の重合禁止剤と併用されのが普通である。一酸化窒素は製品および併用される重合禁止剤を変質させる可能性があり、更に空気中の酸素と容易に反応し重合防止効果を持たない二酸化窒素となるため、取扱い上技術的な困難が伴う。また、これらの方法は前述の蒸気圧の高い重合禁止剤を用いた場合と同様、蒸留塔内部で蒸気のショートパスが起こってしまうと、発生した滞留部に対する重合禁止効果はもはや期待できない。
【0005】
蒸留塔の塔頂部から、ビニル化合物に溶解した重合禁止剤を散布する方法(特公昭50−6449号公報、特開平2−193944号公報)がある。この方法は高い重合防止効果を期待できるが、高価な重合禁止剤を連続供給しなければならない経済的課題を有する。また、蒸留塔内部の隅々まで重合禁止剤を分布させる必要があるが、重合禁止剤の届かないデッドスペースにおける重合防止効果は期待できない。
蒸留装置内壁の電解研磨、機械的研磨等による平滑化あるいは硝酸による表面処理等により、金属表面でのビニル化合物の微細な凝縮滞留量を低下させるとともに、重合物の付着を抑制する方法(特開昭63−41514号公報、特開昭63−41440号公報、特開平1−180850号公報)がある。この方法は重合を抑え込むのでは無く、重合を避ける手段と言え、余り大きな効果は期待できない。
【0006】
また、蒸留を実施する上で充填物を内包しない空塔の蒸留装置の使用、精製に必要な段数の抑制、熱履歴の少ない薄膜蒸留装置の利用(特開昭62−201852号公報)、温度を抑えるための高真空下の蒸留等の様に、製品純度を有る程度犠牲にしたり、あるいは設備上および運転上の経済的負担を強いられている。つまり高純度を製品を得るための最も一般的で効率的な精製手段である、充填物を内包する必要段数を備えた蒸留塔を用いた蒸留は、特に重合性の高いビニル化合物については大きなリスクを伴うため敬遠されてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術における問題点を解決するための、全く新しい発想に基づく基本技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、ビニル化合物重合禁止剤を樹脂に含有させた組成物が、充分なビニル化合物重合防止能を有することを発見し、この組成物を蒸留塔に内包される充填物の材質として用いることにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)樹脂にビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物から成ることを特徴とするビニル化合物重合防止用の蒸留塔充填物、および(2)蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留時において、樹脂にビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物を蒸留塔充填物に用いることを特徴とするビニル化合物の重合防止方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるビニル化合物とは、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、などである。アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの具体例を示せば、エステル残基がメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のアルキルエステル、エステル残基がベンジル、シクロヘキシル、イソボルニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニルエチル、テトラヒドロフルフリル等の芳香環、脂環又は複素環含有エステル、エステル残基がフッ素原子を有するエステル、エステル残基がメトキシエチル、エトキシエチル、n−ブトキシエチル等のエーテル結合を有するエステル、エステル残基が2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル、2−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するエステル、エステル残基がグリシジル、メチルグリシジル等のエポキシ基を有するエステル、エステル残基がβ−カルボキシエチル等のカルボキシル基を有するエステル、エステル残基がスルホン基を有するエステル、エステル残基がジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル等のアルキルアミノ基を有するエステル、エステル残基がカチオン基を有するエステル、エステル残基がビニル、アリル等の二重結合を有するエステル、エステル残基が珪素原子を有するエステル、エステル残基が2−イソシアナトエチル、2−イソシアナトプロピル、2−メチル−2−イソシアナトエチル、4−イソシアナトブチル等のイソシアネート基を有するエステル、エステル残基が燐酸基を有するエステル、エステル残基がアセトアセチル基を有するエステル、などが例示できる。
本発明は上記ビニル化合物の中でも特に重合性し易いメタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸およびアクリル酸エステルにおいて、その効果が発揮される。
【0011】
本発明の、樹脂にビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物から成る蒸留塔充填物を得る方法として、例えば樹脂が塗料であれば、重合禁止剤を塗料に良く分散させた後、通常の方法で塗料を任意の材質の充填物に塗布し乾燥固化させる方法、あるいは樹脂が熱可塑性樹脂であれば、重合禁止剤と樹脂を混合した後適当な押出成形機あるいは射出成形機を用い溶融成形する方法、重合禁止剤および樹脂に共通の溶剤が存在すれば、溶解混合した後脱溶媒して更に適当な形状に成形する方法、また溶融あるいは溶解といった手段がとり得ない場合には、重合禁止剤と樹脂を混合した後圧縮成形する方法等、様々な手段により樹脂にビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物を蒸留塔充填物に成形することが可能である。
【0012】
本発明で用いられる樹脂とは、実際の使用条件下においてビニル化合物と樹脂がその接触により、実質的に化学的変化が起きないこと、具体的にはビニル化合物の劣化、変質、重合等を招かない樹脂およびビニル化合物により強度低下、変質、劣化等を与えられない樹脂が望ましい。 次に望ましい性能として、耐熱性が上げられる。つまり、蒸留塔内部で樹脂が安定に存在するため、使用温度での熱安定性が求められる。例えば重合禁止剤を含有した樹脂が熱可塑性樹脂であるとき、結晶性であればその融点が使用温度以上である事、また非晶性および難晶性であればTgが使用温度以上であることが必要である。しかし、重合禁止剤を含有した樹脂が、重合禁止剤と樹脂を溶融成形して得られるとき、樹脂の成形温度が高すぎると添加された重合禁止剤の変質、劣化等による不活性化が起きるため、融点あるいはTgに起因する成形温度があまりに高い樹脂は好ましくない。重合禁止剤の耐熱性にも依存するが、この様な理由から溶融成形によるときの樹脂の成形温度として、300℃以下が好ましい。
更に本発明で用いられる樹脂の望ましい性能として、機械的性能が上げられる。設計された分離能および圧力損失を維持するため、使用温度での充分な形状保持能力が必要である。
【0013】
ビニル化合物の種類および使用条件により、使用に適した樹脂が異なり、一概には言えないが、樹脂の選定は実際の使用条件より高い温度のもと、所定時間ビニル化合物に樹脂を浸漬して、浸漬後の状態観察、樹脂の物性変化の測定およびビニル化合物の成分分析等から、簡単にかつ迅速に行える。樹脂の種類は塗料として用いられるもの、熱可塑性のもの熱硬化性のもの等多岐に渡るが、一般的には低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ランダム共重合タイプのポリプロピレン、ブロック共重合タイプのポリプロピレン、ホモタイプのポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、およびポリテトラフルオロエチレン、ポリクロルトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂が好適に使用できる。
これら以外の樹脂例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、不飽和ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,10、ナイロンMXD6等のポリアミド、ジオキシジフェニルエタンカーボネート、ジオキシジフェニル−2,2−プロパンカーボネート、ジオキシジフェニル−1,1−エタンカーボネート等のポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリテトラメチルエチレンオキサイド等のポリエーテルなどは、耐熱性が高くかつ機械的性能が高いため、ビニル化合物との接触で化学的変化が起きなければ、好適に使用される。これらの樹脂は単独であるいはブレンドして用いられる。
また、樹脂に予め酸化防止剤等の安定剤が添加されていても、重合防止効果に悪影響がなければ何等問題ない。
【0014】
本発明で用いられる樹脂に含有されるビニル化合物重合禁止剤は、該ビニル化合物に有効な重合防止効果を発揮する重合禁止剤であることは勿論のこと、実際の使用条件下において、重合禁止剤と樹脂がその接触により実質的に化学的変化が起きないこと、具体的には樹脂の変質、劣化等を招かない重合禁止剤および樹脂により変質、劣化等を与えられない重合禁止剤であることが望ましい。
重合禁止剤の融点は実際の使用時の温度以上であることが望ましいが、実際の使用時の温度以下であっても特に制限は受けない。また、実際の使用条件下該ビニル化合物に溶解する重合禁止剤であっても、溶解しない重合禁止剤であってもかまわないし、両者を併用してもかまわない。その選定は望まれる重合防止期間からおのずと決定される。また、樹脂内部および樹脂外表面での重合禁止剤の流動、流出は機械的性能に影響しない範囲で許容される。
【0015】
ビニル化合物の種類および使用条件により使用に適した重合禁止剤が異なり、一概には言えないが、重合禁止剤の選定は実際の使用条件より高い温度のもと、ビニル化合物に重合禁止剤を配合した樹脂を浸漬して、浸漬後の状態観察、重合時間の測定およびビニル化合物の成分分析等から、簡単にかつ迅速に行える。一般的に用いられる重合禁止剤として、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系、p−フェニレンジアミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−i−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、4,4’−ジクミル−ジフェニルアミン、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン等のアミン系、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルナフチルアミン、N−ニトロソジナフチルアミン、p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p−ニトロソジフェニルアミン、α−ニトロソ−β−ナフトール等のニトロソ化合物、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸銅、亜硝酸鉄、亜硝酸トリメチルアンモニウム、亜硝酸n−ヘキシル、亜硝酸1−オクチル等の亜硝酸塩およびエステル、ピペリジン−1−オキシル、ピロリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のニトロキシド、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、サリチル酸銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、塩化銅等の銅塩、酢酸クロム、酸化クロム等のクロム化合物、チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチルチオ尿素、1,3−ジ−i−プロピルチオ尿素、1,3−ジブチルチオ尿素、ジメチロールチオ尿素等のチオ尿素化合物、沃素、沃化リチウム、沃化ナトリウム、沃化カリウム、沃化セシウム、沃化カルシウム、沃化チタン等の沃化物、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム等の臭化物、等が例示できる。これらの重合禁止剤は単独であるいは同時に二種類以上で用いられる。
【0016】
樹脂中のこれら重合禁止剤の含有量は成形可能な範囲で選択され特に制限はないが、含有量が少なすぎると充分な重合防止効果が付与出来ず好ましくなく、反対に含有量が多すぎると充填物としての強度が損なわれるため好ましくない。従って、最適な含有量の範囲が存在し、例えば樹脂が熱可塑性樹脂であり樹脂に重合禁止剤を溶融混合して含有するとき、重合禁止剤は樹脂に対して0.01重量%〜20重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の方法を実施する上では、蒸留塔内部で実質的に気体(酸素、空気等)あるいは蒸気(蒸気圧の高い重合禁止剤)である該ビニル化合物に有効な重合禁止剤を蒸留塔内部に供給、存在させてもかまわないし、蒸留塔の塔頂部から該ビニル化合物に有効な重合禁止剤を溶解させた該ビニル化合物を供給してもかまわない。これらの目的で用いられる重合禁止剤は、樹脂に含有されるビニル化合物重合禁止剤と同一であっても、異なっても何等差し支えない。
【0018】
【発明の効果】
(イ)本発明の蒸留塔充填物を用いることにより、蒸気圧の高い重合禁止剤を過剰に使用する必要が無くなり、製品への重合禁止剤の混入を防止できる。(ロ)本発明の蒸留塔充填物を用いることにより、蒸留塔の塔頂部からビニル化合物に溶解した多量の重合禁止剤を散布する必要が無くなり、高価な重合禁止剤の使用が抑えられる。(ハ)本発明の方法により、必要段数を備えた蒸留塔を用いて蒸留精製できるため、効率的に高純度の製品が製造できる。(ニ)本発明の方法により、重合防止目的での使用を強いられていた薄膜蒸留装置の様な特別な分離機器を使用する必要が無くなるため、生産性の向上が期待される。
【0019】
【実施例】
以下に実施例、および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
ビニル化合物の中でも特に重合性の高いビニル化合物であるグリシジルメタクリレート(以後GMAと略す。)について、全還流試験を行った。
実施例1
[重合禁止剤を含有する樹脂の調製] 重合禁止剤としてN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学(株)、アンテージ3C)を10000ppm およびCsIを10000ppm となるよう混合したポリプロピレン(融点=146℃、MI=5.6[230℃/2.16kgf])を40mmφの単軸押出機を用い、26mmφ、スリット幅2.5mmの円筒ダイスから樹脂温度190℃で押し出した。押し出し後、伸張しながら20℃の水槽に引き入れ固化し、重合禁止剤が均一に含有された約6mmφのチューブを得た。押し出し機内における樹脂の滞留時間は約8分、押し出し圧力は約60kg/cm2 であった。このチューブを長さ約6mmに切断しリング状の充填物を得た。
[全還流試験] 全還流試験は、温度計および空気供給用のキャピラリーを備えた500ccの3口フラスコ、上記の如く得られた重合禁止剤を含有するポリプロピレンのリングを31cmの高さ(18g)に充填した分留管(全長=398mm、充填部の長さ=315mm、内径=18.4mm)、冷却管および真空ポンプから成る装置を用いた。接液部の装置の材質は全てガラス製であり、結合手はSPCジョイントである。加熱はオイルバスで行った。
GMA300gと重合禁止剤として2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学(株)、アンテージW−400)10000ppm を3口フラスコに入れ、オイルバス温度を140℃、塔頂圧力を60torrの条件で加熱した。このとき液相の温度は120℃、分留管の最上部温度は105〜110℃であった。また、分留管は円筒型のマントルヒーターを用い120℃に保った。充填物の底部に蒸気が到達してから、充填物を充填した領域で重合が確認されるまでの時間を測定した。その結果、14時間経過後でも充填物およびその存在部位に重合物の発生は一切認められなかった。
【0020】
比較例1
実施例1と同様の装置を用い、GMA300gと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)10000ppm を3口フラスコに入れ、分留管にはSUS316製のディクソンパッキング(サイズ=3mmφ、東京特殊金網(株))を31cmの高さ(37g)に充填し、実施例1と同じ条件で加熱した。その結果0.5時間〜1時間後にディクソンパッキングを充填した領域の全部に白色の重合物を確認した。
【0021】
比較例2
実施例1と同様の装置を用い、GMA300gと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)10000ppm を3口フラスコに入れ、分留管にはSUS316製のマクマホンパッキング(サイズ=6mm、東京特殊金網(株))を31cmの高さ(15g)に充填し、実施例1と同じ条件で加熱した。その結果0.5時間〜1時間後にマクマホンパッキングを充填した領域の全部に白色の重合物を確認した。
【0022】
次にメタクリル酸、エピクロロヒドリンおよび炭酸ナトリウムを原料として、GMAを合成し、その反応粗液に関しバッチ蒸留を行った。なお反応粗液および精溜品の純度は、ガスクロマトグラフィー分析による単純面積率で示した。
[ガスクロマトグラフィー分析の条件]
機種 :島津製作所(株)製 GC−14A
カラム:キャピラリーカラム J&W PEG−20M(DBWAX)インジェクション温度=230℃
カラム温度 =100℃〜230℃:4℃/min.の昇温速度
ディテクター温度 =230℃
実施例2
[重合禁止剤を含有する樹脂の調製] 実施例1と同じ方法でリング状の充填物を調製した。
[蒸留試験] 蒸留試験は、温度計および空気供給用のキャピラリーを備えた500ccの3口フラスコ、重合禁止剤を含有する上記ポリプロピレンのリングを72cmの長さ(36g)に充填した蒸留塔(高さ=102cm、内径=18.4mm)、電磁弁により動作する還流ヘッド、冷却管、メタノール/ドライアイスで冷却されたトラップおよび真空ポンプから成る装置を用いた。接液部の装置の材質は全てガラス製であり、結合手はSPCジョイントである。加熱はオイルバスで行った。GMA濃度が約75wt%の反応粗液300gと、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)10000ppmを3口フラスコに入れ、オイルバス温度を115℃、塔頂圧力を6torrの条件で加熱し、仕込み粗液の約80wt%が溜出するまでバッチ蒸留を行った。蒸留塔は円筒型のマントルヒーターを用い、GMAの溜出中は75℃に保った。GMA留出時の液相温度は89〜101℃、蒸留塔の塔頂温度は72〜74℃、総加熱時間は5.4時間であった。蒸留終了後に円筒型のマントルヒーターを外し、充填物を観察したところ、充填物およびその存在部位に重合物の発生は全く認められなかった。得られた精留品は無色であり、仕込み粗液の初溜カット率25wt%におけるGMA純度は99.3wt%であった。
上記の蒸留試験終了後、蒸留塔の洗浄等は行わず充填物はそのままにして、次に新たなGMAの反応粗液300gと2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)10000ppm を3口フラスコに入れ、上記と同様の条件でバッチ蒸留を行った。この様に連続してバッチ蒸留を行い、蒸留終了後に円筒型のマントルヒーターを外し、充填物およびその存在部位における重合物の発生状況を観察した。その結果、13回目のバッチ蒸留終了後に初めて充填物に白色の重合物の発生を確認した。累計の総加熱時間は71時間であった。
【0023】
比較例3
実施例2と同様の装置を用い、GMA濃度が約75wt%の反応粗液300gと、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)10000ppm を3口フラスコに入れ、蒸留塔にはSUS316製のマクマホンパッキング(サイズ=6mm、東京特殊金網(株))を72cmの高さ(35g)に充填し、実施例2と同じ条件でバッチ蒸留を行った。更に、GMA溜出中は塔頂から2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を1%溶解したGMAを供給(蒸留塔内で500ppm と成るように供給)した。その結果、蒸留塔の充填物に白色の重合物の発生を確認するまでの総加熱時間は5.5時間であった。

Claims (7)

  1. 樹脂にビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物から成ることを特徴とするビニル化合物重合防止用の蒸留塔充填物。ただし、下記条件1および条件2を同時に満たす場合を除く。
    条件1:ビニル化合物がシクロヘキシルメタクリレートである
    条件2:樹脂組成物がN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩を含む
  2. 樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1記載のビニル化合物重合防止用の蒸留塔充填物。
  3. 蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留において、ビニル化合物重合禁止剤を配合した樹脂組成物を蒸留塔充填物に用いることを特徴とするビニル化合物の重合防止方法。ただし、下記条件1および条件2を同時に満たす場合を除く。
    条件1:ビニル化合物がシクロヘキシルメタクリレートである
    条件2:樹脂組成物がN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩を含む
  4. 蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留において、ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物を蒸留塔充填物に用い、更に蒸留塔内部で実質的に気体あるいは蒸気であるビニル化合物重合禁止剤を蒸留塔内部に存在させる請求項3記載のビニル化合物の重合防止方法。
  5. 蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留において、ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物を蒸留塔充填物に用い、更に蒸留塔の塔頂部からビニル化合物重合禁止剤を溶解させた該ビニル化合物を供給する請求項3記載のビニル化合物の重合防止方法。
  6. 蒸留塔を用いたビニル化合物の蒸留時において、ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物を蒸留塔充填物に用い、蒸留塔内部で実質的に気体あるいは蒸気であるビニル化合物重合禁止剤を蒸留塔内部に存在させ、更に蒸留塔の塔頂部からビニル化合物重合禁止剤を溶解させた該ビニル化合物を供給する請求項3記載のビニル化合物の重合防止方法。
  7. ビニル化合物がメタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸およびアクリル酸エステルである請求項3記載のビニル化合物の重合防止方法。
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