JP4022697B2 - ビニル化合物の重合防止方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はビニル化合物重合防止用樹脂組成物、ビニル化合物重合防止用樹脂成形体及びビニル化合物重合防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニル化合物は二重結合を有する重合性化合物であり、その重合は光,熱あるいは過酸化物等により発生するラジカル、イオン性物質および金属錯塩等の存在により開始される。この重合開始における多様性は、重合を目的としない場合の重合、つまり望まれない早期の重合が、多用な原因で開始されることをも意味し、ビニル化合物を製造および保存する上で大きな技術的課題となってきた。
このため従来から実に数多くの努力と創意工夫がなされてきた。例えば、メタアクリル酸,アクリル酸およびそれらエステル等に関し次のような開示技術がある。
【0003】
ビニル化合物に添加される重合禁止剤として、ヒドロキノン,メトキシフェノール,クレゾール等のフェノール系重合禁止剤(特開昭54ー14904号公報,特開平5−320095号公報)、p−フェニレンジアミン,ジフェニルアミン等のアミン系重合禁止剤(特開昭52−23017号公報,特開昭52−62219号公報,特開昭54−14903号公報,特開平1−230543号公報,特開平2−248402号公報)、ニトロソ化合物(特公昭45−1054号公報,特開昭52−5709号公報,特公昭58−46496号公報,特開昭61−126050号公報)、フェノチアジン,チオ尿素等のイオウ系重合禁止剤(特公昭59−18378号公報,特開昭60−89447号公報,特開平8−40979号公報)など様々な化合物が提案されてきた。気体として供給される重合禁止剤も検討されており、空気,酸素および一酸化窒素(特開昭59−7147号公報,特開昭64−9957号公報,特開昭64−66140号公報)の提案も見られる。
【0004】
また、これらの重合禁止剤は単独での使用のみならず、種々の重合禁止剤を併用することで重合防止効果を高めることが数多く提案されている(特公昭52−34606号公報,特開昭50−117716号公報,特開昭64−42443号公報,特開平2−17151号公報,特開平2−193944号公報,特開平7−53449号公報,特開平7−252477号公報,特開平8−3099号公報,特開平8−81397号公報等)。しかし、これらの方法はビニル化合物に直接重合禁止剤を溶解させて、重合防止効果を期待するものであり、高価な重合禁止剤を必要以上に浪費したり、製品の着色原因となったり、製品の重合時間が必要以上に延びたり、数々の問題を内包している。
【0005】
反応装置,蒸留装置および配管の内壁を電解研磨,機械的研磨等により平滑化したり、あるいは硝酸により処理することにより、金属表面でのビニル化合物の微細な滞留量を低下させ、重合物の付着を抑制する方法(特開昭63ー41514号公報,特開昭63ー41440号公報,特開平1ー180850号公報)も提案されている。しかしこの方法は重合を抑え込むのでは無く、重合を避ける手段と言え、余り大きな効果は期待できない。
【0006】
反応条件あるいは運転条件上も色々な検討が見られる。例えば蒸留精製時において、内壁温度を抑えたり(特開昭54−163517号公報)、熱履歴の少ない薄膜蒸留装置を用いたり(特開昭62ー201852号公報),蒸留温度を抑えるため高真空下に蒸留したり、塔底液温度と加熱源温度の差を抑えたり(特開平8−134016号公報)様々な工夫が見られる。しかし、生産性を犠牲にしたり、設備上運転上、経済的負担を強いられており、必ずしも望ましい方法とは言い難い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術における問題点を解決するための、全く新しい発想に基づく基本技術を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、ビニル化合物重合禁止剤を樹脂に含有させた組成物が、充分なビニル化合物重合防止能を有することを発見し、この組成物を例えば反応装置,蒸留装置,配管等の内壁,蒸留塔に充填される充填物および保存容器の材質として用いることにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)樹脂にビニル化合物重合禁止剤を含有して成るビニル化合物重合防止用樹脂組成物、(2)ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物から成るビニル化合物重合防止用樹脂成形体、および(3)ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物をビニル化合物に接触させるビニル化合物の重合防止方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるビニル化合物とは、メタクリル酸,アクリル酸,メタクリル酸エステル,アクリル酸エステル,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,アクリルアミド,メタクリルアミド,スチレン,マレイン酸,酢酸ビニル,などである。アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの具体例を示せば、エステル残基がメチル,エチル,n−プロピル,i−プロピル,n−ブチル,i−ブチル,t−ブチル,2−エチルヘキシル,ラウリル,ステアリル等のアルキルエステル、エステル残基がベンジル,シクロヘキシル,イソボルニル,ジシクロペンテニル,ジシクロペンテニルエチル,テトラヒドロフルフリル等の芳香環,脂環,複素環含有エステル、エステル残基がフッ素原子を有するエステル、エステル残基がメトキシエチル,エトキシエチル,n−ブトキシエチル等のエーテル結合を有するエステル、エステル残基が2−ヒドロキシエチル,2−ヒドロキシプロピル,2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル,2−ヒドロキシブチル,4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するエステル、エステル残基がグリシジル,メチルグリシジル等のエポキシ基を有するエステル、エステル残基がβ−カルボキシエチル等のカルボキシル基を有するエステル、エステル残基がスルホン基を有するエステル,エステル残基がジメチルアミノエチル,ジエチルアミノエチル等のアルキルアミノ基を有するエステル、エステル残基がカチオン基を有するエステル、エステル残基がビニル,アリル等の二重結合を有するエステル、エステル残基が珪素原子を有するエステル、エステル残基が2−イソシアナトエチル,2−イソシアナトプロピル,2−メチル−2−イソシアナトエチル,4−イソシアナトブチル等のイソシアネート基を有するエステル、エステル残基が燐酸基を有するエステル、エステル残基がアセトアセチル基を有するエステル、などが例示できる。
本発明は上記ビニル化合物の中でも特に重合性し易いメタクリル酸,メタクリル酸エステル,アクリル酸およびアクリル酸エステルにおいて、特に優れた効果が発揮される。
【0011】
本発明の言う重合禁止剤を含有した樹脂を材質とする成形体を得る方法として、例えば樹脂が塗料であれば、重合禁止剤を塗料に良く分散させた後、通常の方法で塗料を乾燥固化させる方法、あるいは樹脂が熱可塑性樹脂であれば、重合禁止剤と樹脂を混合した後適当な押出成形機あるいは射出成形機を用い溶融成形する方法、重合禁止剤および樹脂に共通の溶剤が存在すれば、溶解混合した後脱溶媒して更に適当な形状に成形する方法、また溶融あるいは溶解といった手段がとり得ない場合には、重合禁止剤と樹脂を混合した後圧縮成形する方法等、様々な手段により重合禁止剤を含有した樹脂を成形体にすることが可能である。
【0012】
本発明で用いられる樹脂とは、実際の使用条件下においてビニル化合物と樹脂がその接触により、実質的に化学的変化が起きないこと、具体的にはビニル化合物の劣化,変質,重合等を招かない樹脂およびビニル化合物により強度低下,変質,劣化等を与えられない樹脂が望ましい。次に望ましい性能として、耐熱性が上げられる。つまり、反応装置,蒸留装置および配管等の内部で樹脂が安定に存在するため、使用温度での熱安定性が求められる。例えば重合禁止剤を含有した樹脂が熱可塑性樹脂であるとき、結晶性であればその融点が使用温度以上である事、また非晶性および難晶性であればTgが使用温度以上であることが必要である。しかし、重合禁止剤を含有した樹脂が、重合禁止剤と樹脂を溶融成形して得られるとき、樹脂の成形温度が高すぎると添加された重合禁止剤の変質,劣化等による不活性化が起きるため、融点あるいはTgに起因する成形温度があまりに高い樹脂は好ましくない。重合禁止剤の耐熱性にも依存するが、この様な理由から溶融成形によるときの樹脂の成形温度として、300℃以下が好ましい。
更に本発明で用いられる樹脂の望ましい性能として、機械的性能が上げられる。例えば配管あるいは蒸留塔に充填される充填物として使用されるとき、使用温度での充分な機械的強度が必要である。
【0013】
ビニル化合物の種類および使用条件により、使用に適した樹脂が異なり、一概には言えないが、樹脂の選定は実際の使用条件より高い温度のもと、所定時間ビニル化合物に樹脂を浸漬して、浸漬後の状態観察,樹脂の物性変化の測定およびビニル化合物の成分分析等から、簡単にかつ迅速に行える。樹脂の種類は塗料として用いられるもの、熱可塑性のもの熱硬化性のもの等多岐に渡るが、一般的には低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,ランダム共重合タイプのポリプロピレン,ブロック共重合タイプのポリプロピレン,ホモタイプのポリプロピレン,ポリブテン−1,ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、およびポリテトラフルオロエチレン,ポリクロルトリフルオロエチレン,ポリフッ化ビニル,ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂が好適に使用できる。
これら以外の樹脂例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、不飽和ポリエステル、ナイロン6,ナイロン6.6,ナイロン4.6,ナイロン6.10,ナイロンMXD6等のポリアミド、ジオキシジフェニルエタンカーボネート,ジオキシジフェニル−2.2−プロパンカーボネート,ジオキシジフェニル−1.1−エタンカーボネート等のポリカーボネート、ポリオキシメチレン,ポリテトラメチルエチレンオキサイド等のポリエーテルなどは、耐熱性が高くかつ機械的性能が高いため、ビニル化合物との接触で化学的変化が起きなければ、好適に使用される。これらの樹脂は単独であるいはブレンドして用いられる。
また、樹脂に予め酸化防止剤等の安定剤が添加されていても、重合防止効果に悪影響がなければ何等問題ない。
【0014】
本発明で用いられる樹脂に含有される重合禁止剤は、該ビニル化合物に有効な重合防止効果を発揮する重合禁止剤であることは勿論のこと、実際の使用条件下において、重合禁止剤と樹脂がその接触により実質的に化学的変化が起きないこと、具体的には樹脂の変質,劣化等を招かない重合禁止剤および樹脂により変質,劣化等を与えられない重合禁止剤であることが望ましい。
重合禁止剤の融点は実際の使用時の温度以上であることが望ましいが、実際の使用時の温度以下であっても特に制限は受けない。また、実際の使用条件下該ビニル化合物に溶解する重合禁止剤であっても、溶解しない重合禁止剤であってもかまわないし、両者を併用してもかまわない。その選定は目的とするビニル化合物の品質つまり許容される重合禁止剤の含有量と、望まれる重合防止期間からおのずと決定される。樹脂内部および樹脂外表面での重合禁止剤の流動,流出は機械的性能に影響しない範囲で許容される。
【0015】
ビニル化合物の種類および使用条件により使用に適した重合禁止剤が異なり、一概には言えないが、重合禁止剤の選定は実際の使用条件より高い温度のもと、ビニル化合物に重合禁止剤を含有した樹脂を浸漬して、浸漬後の状態観察,重合時間の測定およびビニル化合物の成分分析等から、簡単にかつ迅速に行える。一般的に用いられる重合禁止剤として、ヒドロキノン,p−メトキシフェノール,クレゾール,t−ブチルカテコール,3.5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン,2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール),2.2’−メチレンビス(4−エチルー6ーt−ブチルフェノール),4.4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系、フェノチアジン,ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル系、p−フェニレンジアミン,4−アミノジフェニルアミン,N.N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン,N−i−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン,N−(1.3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン,N.N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン,ジフェニルアミン,N−フェニル−β−ナフチルアミン,4.4’−ジクミル−ジフェニルアミン,4.4’−ジオクチル−ジフェニルアミン等のアミン系、N−ニトロソジフェニルアミン,N−ニトロソフェニルナフチルアミン,N−ニトロソジナフチルアミン,p−ニトロソフェノール,ニトロソベンゼン,p−ニトロソジフェニルアミン,α−ニトロソ−β−ナフトール等のニトロソ化合物、亜硝酸アンモニウム,亜硝酸ナトリウム,亜硝酸カリウム,亜硝酸銅,亜硝酸鉄,亜硝酸トリメチルアンモニウム,亜硝酸n−ヘキシル,亜硝酸1−オクチル等の亜硝酸塩およびそのエステル、ピペリジン−1−オキシル,ピロリジン−1−オキシル,2.2.6.6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシル,2.2.6.6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のニトロキシド、ジメチルジチオカルバミン酸銅,ジエチルジチオカルバミン酸銅,ジブチルジチオカルバミン酸銅,酢酸銅,サリチル酸銅,チオシアン酸銅,硝酸銅,塩化銅等の銅塩、酢酸クロム,酸化クロム等のクロム化合物、チオ尿素,1.3−ジメチルチオ尿素,1.3−ジエチルチオ尿素,1.3−ジ−i−プロピルチオ尿素,1.3−ジブチルチオ尿素,ジメチロールチオ尿素等のチオ尿素化合物、沃素,沃化リチウム,沃化ナトリウム,沃化カリウム,沃化セシウム,沃化カルシウム,沃化チタン等の沃化物、臭化リチウム,臭化ナトリウム,臭化カリウム,臭化セシウム等の臭化物、等が例示できる。これらの重合禁止剤は単独であるいは同時に二種類以上で用いられる。
【0016】
樹脂中のこれら重合禁止剤の含有量は成形可能な範囲で選択され特に制限はないが、含有量が少なすぎると充分な重合防止効果が付与出来ず好ましくなく、反対に含有量が多すぎると充填物としての強度が損なわれるため好ましくない。従って、最適な含有量の範囲が存在し、例えば樹脂が熱可塑性樹脂であり樹脂に重合禁止剤を溶融混合して含有させるとき、重合禁止剤は樹脂に対して0.01重量%〜20重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の方法を例えば反応装置で実施する場合、本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体を反応装置内に存在させると共に、該ビニル化合物に有効な重合禁止剤を反応液に予め溶解あるいは反応途中で供給してもかまわないし、重合防止効果を有する気体(酸素,空気等)を供給してもかまわない。また、蒸留装置で実施する場合、本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体を反応装置内に充填させると共に、蒸留塔内部で実質的に気体(酸素,空気等)あるいは蒸気(蒸気圧の高い重合禁止剤)である該ビニル化合物に有効な重合禁止剤を蒸留塔内部に供給,存在させてもかまわないし、蒸留塔の塔頂部から該ビニル化合物に有効な重合禁止剤を溶解させた該ビニル化合物を供給してもかまわない。これらの目的で用いられる重合禁止剤は、樹脂に含有される重合禁止剤と同一であっても、異なっても何等差し支えない。
【0018】
本発明のビニル化合物重合防止用樹脂組成物及び該樹脂組成物から成る成形体は、ビニル化合物を製造するための反応装置,蒸留装置および配管等の内壁,蒸留塔の充填物、あるいはビニル化合物の保存容器として利用できる。また、本発明のビニル化合物の重合防止方法はビニル化合物を製造するための反応,蒸留,移送あるいはビニル化合物を保存する場合に使用することが出来る。
【0019】
【発明の効果】
(イ)本発明のビニル化合物重合防止用樹脂組成物を反応装置,蒸留装置,配管等の内壁および蒸留塔の充填物等の材質に用いることにより、従来の様に多量のビニル化合物重合禁止剤を添加することなく、少量のビニル化合物重合禁止剤の添加で安定にビニル化合物の製造ができる。また、重合禁止剤が充分に行き渡らない装置上のデッドスペースであっても、効果的に重合が防止できる。更にビニル化合物重合禁止剤をビニル化合物から分離する場合、ビニル化合物重合禁止剤が樹脂中に存在しているのでビニル化合物からの分離が容易である。(ロ)蒸留塔の内壁あるいは充填物等として、気相部分に本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体を存在させることにより、蒸気圧の高いビニル化合物重合禁止剤を使用する必要が無くなり、そのため製品へのビニル化合物重合禁止剤の混入を防止できる。(ハ)本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体からなる容器を用いてビニル化合物を保存することにより、保存中の重合防止を目的としたビニル化合物重合禁止剤を添加する必要が無く、更にビニル化合物重合禁止剤をビニル化合物から分離する場合、ビニル化合物重合禁止剤が樹脂中に存在しているのでビニル化合物からの分離が容易である。(ニ)本発明の方法によりビニル化合物を蒸留または保存する場合、ビニル化合物重合禁止剤そのものを用いるより長時間、ビニル化合物重合防止効果が持続する。
【0020】
【実施例】
以下に実施例,および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
ビニル化合物の中でも特に重合性の高い2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以後2−HEMAと略す。)について、反応装置,蒸留装置および配管等の内部における滞留部を想定した重合試験を行った。
実施例1
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤としてフェノチアジン(川口化学(株)製,商品名:アンテージTDP)を5重量%混合したポリプロピレン(三菱化学(株)製,商品名:FY−6C,以後PPと略す。)を、径が約2mmのノズルを備えた円筒の溶融炉(径=約9.5mm,長さ=152mm)で2分/180℃で溶融後押し出し、空冷しストランドを得た。このストランドを適当な大きさに切断後、アセトンで30分間超音波洗浄し、更に室温で2時間真空乾燥させた。
[重合試験] 透明なガラス製試験管(長さ=150mm,内径=12.6mm,外径=15mm)に上記の如く得られた重合禁止剤を含有するPP(0.2g)と2−HEMA(9.5g)を入れた。試験管内の重合禁止剤を含有するPPは検液の上部に浮遊し、気相部の容量は約7ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。固化が検液の一部にでも認められたとき、および検液をアセトンに滴下し白濁が認められたとき重合したものとみなした。結果を表1に示す。
【0021】
実施例2
重合禁止剤としてN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学(株)製,商品名:アンテージDP)を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様の試験管に2−HEMA(10g)を入れた。試験管内の気相部の容量は約7ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。結果を表1に示す。
実施例1〜2および比較例1から、本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体が2−HEMAの重合防止に効果があることがわかる。
【0022】
次に、2−HEMAと同様重合性の高いビニル化合物であるグリシジルメタクリレート(以後GMAと略す。)について、反応装置,蒸留装置および配管等の内部における滞留部を想定した重合試験を行った。
実施例3
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(川口化学(株)製,商品名:アンテージW−400)を5重量%混合したPPを、実施例1と同様の溶融炉を用い、2分/180℃で溶融後押し出し、空冷しストランドを得た。このストランドを適当な大きさに切断後、アセトンで30分間超音波洗浄し、更に室温で2時間真空乾燥させた。
[重合試験] 実施例1と同様の試験管に上記の如く得られた重合禁止剤を含有するPP(0.4g)とGMA(6.5g)を入れた。試験管内の重合禁止剤を含有するPPは検液の上部に浮遊し、気相部の容量は約10ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。固化が検液の一部にでも認められたとき、および検液をメタノールに滴下し白濁が認められたとき重合したものとみなした。結果を表2に示す。
【0023】
実施例4
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を5重量%混合したポリ4−メチルペンテン−1(三井石油化学(株)製,商品名:MX321XB,以後TPXと略す。)を、実施例1と同様の溶融炉を用い、2分/250℃で溶融後押し出し、空冷しストランドを得た。このストランドを適当な大きさに切断後、アセトンで30分間超音波洗浄し、更に室温で2時間真空乾燥させた。
[重合試験] 実施例1と同様の試験管に上記の如く得られた重合禁止剤を含有するTPX(1.0g)とGMA(6.0g)を入れた。試験管内の重合禁止剤を含有するTPXは検液の上部に浮遊し、気相部の容量は約10ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。固化が検液の一部にでも認められたとき、および検液をメタノールに滴下し白濁が認められたとき重合したものとみなした。結果を表2に示す。
【0024】
実施例5
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤としてN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンを5重量%混合したポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製,商品名:RT543C,以後PETと略す。)を、実施例1と同様の溶融炉を用い、2分/280℃で溶融後押し出し、空冷しストランドを得た。このストランドを適当な大きさに切断後、アセトンで30分間超音波洗浄し、更に室温で2時間真空乾燥させた。
[重合試験] 実施例1と同様の試験管に上記の如く得られた重合禁止剤を含有するPET(0.4g)とGMA(7.0g)を入れた。試験管内の重合禁止剤を含有するPETは試験管の底部に沈み、気相部の容量は約10ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。固化が検液の一部にでも認められたとき、および検液をメタノールに滴下し白濁が認められたとき重合したものとみなした。結果を表2に示す。
【0025】
実施例6
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤としてN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンを5重量%混合したポリメタキシリレンアジパミド(三菱ガス化学(株)製,商品名:6007,以後N−MXD6と略す。)を、実施例1と同様の溶融炉を用い、2分/260℃で溶融後押し出し、空冷しストランドを得た。このストランドを適当な大きさに切断後、アセトンで30分間超音波洗浄し、更に室温で2時間真空乾燥させた。
[重合試験] 実施例1と同様の試験管に上記の如く得られた重合禁止剤を含有するN−MXD6(0.4g)とGMA(7.0g)を入れた。試験管内の重合禁止剤を含有するN−MXD6は試験管の底部に沈み、気相部の容量は約10ccであった。密封後135℃のオイルバスに浸漬し重合時間を測定した。固化が検液の一部にでも認められたとき、および検液をメタノールに滴下し白濁が認められたとき重合したものとみなした。結果を表2に示す。
【0026】
比較例2
実施例1と同様の試験管にGMA(7.3g)を入れた。試験管内の気相部の容量は約10ccであった。密封後オイルバスに浸漬し重合時間を測定した。結果を表2に示す。
実施例3〜6および比較例2から、本発明のビニル化合物重合防止用樹脂成形体がGMAの重合防止に効果があることがわかる。
【0027】
次に、GMAについて、蒸留塔の充填物を想定した全還流試験を行った。
実施例7
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤としてN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学(株)製,商品名:アンテージ3C)を2000ppm混合したポリプロピレン(チッソ(株)製,商品名:A5014,以後PPと略す。)を、30mmφの単軸押出機を用い、3mmφのダイスから樹脂温度180℃で押し出した。押し出し後、速やかに20℃の水槽で水冷固化し、重合禁止剤が均一に含有された約5mmφのストランドを得た。押し出し機内における樹脂の滞留時間は約2分、押し出し圧力は約40kg/cm2であった。
[全還流試験] 全還流試験は、温度計および空気供給用のキャピラリーを備えた500ccの3口フラスコ、分溜管(全長=398mm,充填部の長さ=315mm,内径=18.4mm),冷却管および真空ポンプから成る装置を用いた。接液部の装置の材質は全てガラス製であり、結合手はSPCジョイントである。加熱はオイルバスで行った。
重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10000ppm添加したGMA300gを3口フラスコに入れ、分溜管には、上記の如く得られた重合禁止剤を含有するPPのストランドを31cmに切断し、8本(36.5g)充填した。オイルバス温度を150℃、圧力を90torrの条件で加熱し、液相の温度は125℃〜130℃、分溜管の最上部温度は120〜125℃であった。PPの底部に蒸気が到達してから、PPのストランドを充填した領域で重合が確認されるまでの時間を測定した。結果、2〜3時間後にPPのストランドを充填した領域の中央部に白色の重合物を確認した。
【0028】
比較例3
[全還流試験] 実施例7と同様の装置を用い、重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10000ppm添加したGMA300gを3口フラスコに入れ、分溜管には長さ31cmのSUS316製のパイプ(外径4mmφ,内径2.6mmφ)を8本充填した。実施例7と同じ条件で加熱したところ、0.8時間〜1時間後にパイプを充填した領域の下部に白色の重合物を確認した。
【0029】
実施例8
[重合禁止剤を含有する樹脂の調整] 重合禁止剤としてN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを10000ppm混合したPPを40mmφの単軸押出機を用い、26mmφ,スリット幅2.5mmの円筒ダイスから樹脂温度190℃で押し出した。押し出し後、伸張しながら20℃の水槽に引き入れ固化し、重合禁止剤が均一に含有された約6mmφのチューブを得た。押し出し機内における樹脂の滞留時間は約8分、押し出し圧力は約70kg/cm2であった。このチューブを長さ約6mmに切断しリング状の充填物を得た。
[全還流試験] 実施例7と同様の装置を用い、重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10000ppm添加したGMA300gを3口フラスコに入れ、分溜管には、上記の如く得られた重合禁止剤を含有するPPのリングを31cmの長さ(16g)に充填した。オイルバス温度を140℃、圧力を60torrの条件で加熱し、液相の温度は120℃、分溜管の最上部温度は106〜109℃であった。PPの底部に蒸気が到達してから、PPのリングを充填した領域で重合が確認されるまでの時間を測定した。結果、3.5〜4時間後にPPのリングを充填した領域の頂部に白色の重合物を確認した。
【0030】
比較例4
[全還流試験] 実施例7と同様の装置を用い、重合禁止剤として2.2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)を10000ppm添加したGMA300gを3口フラスコに入れ、分溜管にはSUS316製のマクマホンパッキング(サイズ=6mm,東京特殊金網(株)製)を31cmの長さ(15g)に充填した。実施例8と同じ条件で加熱したところ、0.5時間〜1時間後にマクマホンパッキングを充填した領域の全部に白色の重合物を確認した。
【0031】
通常用いられる充填物に代わり、本発明のビニル化合物重合防止用樹脂組成物から成る充填物を用いることにより、蒸留精製において重合開始時間が伸び、長期の安定運転が可能となる。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
Claims (3)
- ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物をビニル化合物に接触させることを特徴とするビニル化合物の重合防止方法。
- ビニル化合物の蒸留時において、ビニル化合物重合禁止剤を含有した樹脂組成物をビニル化合物に接触させる請求項1記載のビニル化合物の重合防止方法。
- ビニル化合物がメタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸およびアクリル酸エステルである請求項1又は2記載のビニル化合物の重合防止方法。
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