JP4205911B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤに係り、特に、摩擦係数の低い氷路面でのブレーキ、及びトラクション性能の向上を図ることのできる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
氷上性能の向上を狙ったスタッドレスタイヤの従来知られているトレッドパターンは、図4に示すものが代表的であり、周方向に連続したジグザグ溝、周方向に連続したストレート溝、及び横溝を組み合わせたブロックパターンが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
低摩擦係数の氷上路(氷温0度近辺)では、タイヤと氷路(実接地面内)の間で非常に薄い擬似水膜が発生し、この水膜の影響で非常に滑り易い状況となる。
【0004】
これまでのブロックにサイプを刻むパターンでは、ブロック接地時にブロックと氷路面内にできたこの水を完全に除去出来ずに、思うように氷上性能(ブレーキ、トラクション性能)向上が出来なかった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、氷上路での擬似水膜の除去性能を従来よりも向上し、氷上性能を向上することのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、トレッドにタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の横溝とで区画された複数のブロックを備え、前記ブロックが前記ブロックを横断する複数本の細溝によってタイヤ周方向に複数のサブブロックに分割された空気入りタイヤであって、ブロックの内の少なくとも一つのサブブロックが、タイヤ幅方向に延長されて周方向溝を横断し、かつ隣接する他のブロックとオーバーラップしており、前記サブブロックを形成する細溝は、タイヤ周方向に対する鋭角側の角度が45〜90°の範囲内であり、タイヤ幅方向の全ての周方向溝は、前記サブブロックの延長部分により分断されている、ことを特徴としている。
【0007】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0008】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、トレッドにタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の横溝とで区画された複数のブロックを備えているので、氷雪上での基本性能は確保されている。
【0009】
各ブロックが、複数本の細溝により複数のサブブロックに分割され、ブロック内に多数のエッジが形成されているので、接地面内の水膜の切断及び吸収により氷雪上性能を向上することができる。
【0010】
さらに、請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ブロックの内の少なくとも一つのサブブロックがタイヤ幅方向に延長されて周方向溝を横断し、かつ隣接する他のブロックとオーバーラップしているので、以下の2つの作用が得られる。
【0011】
先ず第1に、ブレーキング時やトラクション時では、サブブロックの延長部分が刷毛やワイパーの如く作用してブロックの移動方向側(例えば、ブレーキング時ではブロックの車両進行方向前側、トラクション時ではブロックの車両進行方向とは反対側)の擬似水膜を除去し、氷上性能を向上することができる。
【0012】
第2に、タイヤ幅方向に延長されたサブブロックは、タイヤ横方向の剛性が高くなるので、氷雪上走行時のコーナリング性能を向上することができる。
【0013】
なお、このように、ブロックの内のサブブロックをタイヤ幅方向に延長した場合、刷毛やワイパーの如く作用する小ブロックをブロックの周方向側に独立して配置した場合よりもブロック剛性を高めることができ、前後方向の極端な倒れ込みによる氷雪上性能の悪化と、偏摩耗を抑止でき、前述したように氷雪上走行時のコーナリング性能も向上できる。
上記細溝の角度が45°未満になると、周方向溝と横溝との中間的な役割となってしまい、ウエット排水性に関しては良くなるが、前後方向、即ち、トラクション、及びブレーキに対しては不利となる。ちなみに、トラクション、及びブレーキ性能だけを考えれば、細溝の角度は90°が最も好ましい。
さらに、タイヤ幅方向の全ての周方向溝を、サブブロックの延長部分により分断することにより、周方向溝によるタイヤ横方向の引っ掛かり成分(タイヤ周方向に延びるブロックのエッジ成分)を確保したまま、前後(トラクション、及びブレーキ)方向に有効なタイヤ幅方向のブロックエッジ成分を大幅に増加でき、特に、雪上でのブレーキ、及びトラクション性能を確保することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、複数のブロックをタイヤ周方向に連ねてトレッド幅方向最外側に配置したショルダーブロック列と、前記ショルダーブロック列のタイヤ赤道面に配置され複数のブロックをタイヤ周方向に連ねた中間ブロック列と、を備え、前記中間ブロック列が、タイヤ赤道面の両側にそれぞれ複数列設けられている、ことを特徴としている。
【0015】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0016】
中間ブロック列は、単列配置するよりも、特にトレッド幅185mm以上の比較的広幅のタイヤの場合は、複数列配置した方がサブブロックの配置個数が増え、より高い水膜除去効果が得られ、氷上でのブレーキ性能、及びトラクション性能の向上につながる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、中間ブロック列と中間ブロック列との間に配置される周方向溝の溝幅は、その他の周方向溝の溝幅の20〜60%の範囲内に設定されている、ことを特徴としている。
【0018】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0019】
基本的な排水性を得るために、トレッドに4本の周方向主溝を形成する場合が多いが、トレッド幅がある程度広くなると周方向主溝間に配置されるブロックの幅が広くなり過ぎてしまうため、ブロックの幅をある程度の寸法に抑える必要が生ずる。
【0020】
ハンドリングやコーナリング等を考慮すると、4本の周方向溝のおおよその位置は決められてしまうため、追加する周方向溝の位置は、ショルダー側の周方向溝と、タイヤ赤道面側の周方向溝との間に形成されることになる。
【0021】
このようにショルダー側の周方向溝とタイヤ赤道面側の周方向溝との間に、新たに周方向溝を追加すると、ショルダー側の周方向溝とタイヤ赤道面側の周方向溝との間に、複数の中間ブロック列が形成されることになる。
【0022】
ところで、元々の4本の周方向溝の位置は決められているので、中間ブロック列と中間ブロック列との間に配置される新たな周方向溝の溝幅は、該中間ブロック列を構成するブロックの剛性を確保するために、中間ブロック列とショルダーブロック列との間に配置される周方向溝の溝幅よりも狭く設定することが好ましい。
【0023】
ここで、中間ブロック列間に配置される新たな周方向溝の溝幅が、元々ある他の周方向溝の溝幅の20%未満になると、溝幅が狭く成り過ぎるため、該中間ブロック列間に配置される周方向溝のエッジ(ブロックのエッジ)が働かなくなり、氷雪上走行時のコーナリング性能を向上できなくなり、また、中間ブロック列の幅が広くなって剛性が高くなり過ぎる場合がある。
【0024】
一方、中間ブロック列間に配置される新たな周方向溝の溝幅が、元々ある他の周方向溝の溝幅の60%を越えると、溝幅が太く成り過ぎ、中間ブロック列の剛性が低くなり過ぎる場合がある。
【0028】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、ブロック1個当たりのサブブロックの数が3個から9個の範囲内である、ことを特徴としている。
【0029】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0030】
サブブロックは、ピッチ長の大小にもよるが、ブロック1個当たりのサブブロックの数を3個から9個の範囲内とすることにより、最も氷上性能向上に有効である。
【0031】
ブロック1個当たりのサブブロックの数を3個未満になると、細溝間隔が広くなり、ブロック剛性が大きく成り過ぎ、エッジ成分が少なく成り過ぎるため、氷雪上性能が確保し難くなる。
【0032】
一方、ブロック1個当たりのサブブロックの数を9個を越えると、逆に細溝間隔が狭く成り過ぎ、ブロック剛性が低下しブロックの倒れ込みが起こり、十分な接地面が確保できず、氷雪上性能を十分確保できなくなる。
【0033】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道面付近にタイヤ周方向に連続して延びる陸部が設けられており、前記陸部のタイヤ幅方向外側には前記ブロックからなるブロックパターンが形成されている、ことを特徴としている。
【0034】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0035】
接地圧の高いタイヤ赤道面付近は、周方向に連続して延びる陸部を配置することで剛性を保ち、氷上性能に有効な細溝を多数入れ、氷上性能を向上する。
【0036】
タイヤ赤道面付近に配置された周方向に連続して延びる陸部のタイヤ幅方向外側は、ブロックパターンとすることにより、ブロックエッジが確保され、雪上性能が確保される。
【0037】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サブブロックを形成する細溝は、直線形状である、ことを特徴としている。
【0038】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0039】
直線形状の細溝は、波型の細溝に比較して前後方向のブレーキ、及びトラクションに対して有効に働かせることができる。
【0040】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サブブロックを形成する細溝は、ジグザグ形状である、ことを特徴としている。
【0041】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0042】
前後方向のブレーキ、及びトラクション性能だけでなく、氷雪上でのコーナリング性能をも考慮すると、細溝はジグザグ形状が好ましい。
【0043】
【0044】
【0045】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サブブロックを形成する細溝の幅は、0.5〜3mmの範囲内である、ことを特徴としている。
【0046】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0047】
サブブロックを形成する細溝の幅は、0.5〜3mmの範囲内がサブブロックを除水に有効に働かすために最も良い幅である。
【0048】
細溝の幅が0.5mm未満になるとサブブロックが倒れ込み難くなり、細溝の幅が3mmを越えるとサブブロックが単独のブロックと同様になり、剛性低下のために倒れ込み過ぎとなり、いずれも有効な除水効果が得られなくなる。
【0049】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記サブブロックの幅は、3〜8mmの範囲内である、ことを特徴としている。
【0050】
次に、請求項9に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0051】
ピッチ長の設定にもよるが、サブブロックの幅が3mm未満になると、細溝間隔が狭く成り過ぎ、ブロック剛性が低下してブロックの倒れ込みが起き、氷上性能が悪化する。
【0052】
一方、サブブロックの幅が8mmを越えると、氷上性能向上のためのエッジ成分(ブロックエッジ)が不足し、また、細溝による除水効果も小さくなり氷雪上性能向上が見込めなくなる。
【0053】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記周方向溝を分断する前記サブブロックは、少なくとも前記周方向溝を横断する方向において、少なくとも1ヶ所が分断細溝により分断されている、ことを特徴としている。
【0054】
次に、請求項10に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0055】
周方向溝を分断するサブブロックに分断細溝を設けることで、サブブロックの倒れ込みを調整し、水膜を除去するための刷毛またはワイパーとしての効果を最大限に出し、氷上での高い除水効果を得ることが出来る。
【0056】
なお、この分断細溝の幅、深さの調整で除水効果を引き上げることが出来る。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0058】
図1,2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ(タイヤサイズ:205/65R15)10のトレッド12には、タイヤ赤道面CLの両側に、各々タイヤ周方向に延びる周方向主溝14が設けられ、周方向主溝14のタイヤ幅方向外側には周方向副溝16が、周方向副溝16のタイヤ幅方向外側には周方向主溝18が設けられている。
【0059】
なお、図1,2において、符号20は接地端を示す。
【0060】
タイヤ赤道面CL上には、周方向主溝14と周方向主溝14との間に、タイヤ周方向に連続するセンター陸部22が形成されている。
【0061】
センター陸部22には、タイヤ幅方向に横断する細溝24がタイヤ周方向に間隔を開けて複数形成されて複数のサブブロック26に分割されている。
【0062】
周方向主溝18のタイヤ幅方向外側には、周方向主溝18から接地端20へ向けて延びる横溝28がタイヤ周方向に間隔を開けて複数設けられている。
【0063】
この周方向主溝18のタイヤ幅方向外側には、周方向主溝18と横溝28とで区画されたショルダーブロック30がタイヤ周方向に列をなしている。
【0064】
ショルダーブロック30には、タイヤ幅方向に横断する細溝32がタイヤ周方向に間隔を開けて複数形成されて複数のサブブロック34に分割されている。
【0065】
センター陸部22とショルダーブロック30との間には、タイヤ幅方向に延びて周方向主溝14と周方向主溝18とを連結する横溝36、タイヤ幅方向に延びて周方向主溝14と周方向副溝16とを連結する横溝38、タイヤ幅方向に延びて周方向副溝16と周方向主溝18とを連結する横溝40が設けられている。
【0066】
センター陸部22とショルダーブロック30との間には、タイヤ赤道面CL側に周方向主溝14、周方向副溝16、周方向主溝18、横溝36、横溝38、横溝40によって区画された第1の中間ブロック42が、ショルダー側に周方向主溝14、周方向副溝16、周方向主溝18、横溝36、横溝38、横溝40によって区画された第2の中間ブロック44が各々形成されている。
【0067】
第1の中間ブロック42、及び第2の中間ブロック44は、共にタイヤ周方向に列を成している。
【0068】
本実施形態では、周方向主溝14、及び周方向主溝18の幅が各々8mm、周方向副溝16の幅が4mmである。
【0069】
本実施形態では、周方向副溝16の幅が周方向主溝14、及び周方向主溝18の幅の50%であるが、周方向副溝16の幅は周方向主溝14、及び周方向主溝18の幅の20〜60%の範囲内であれば良い。
【0070】
第1の中間ブロック42には、タイヤ幅方向に横断する細溝46がタイヤ周方向に間隔を開けて複数形成されて複数のサブブロック48に分割されている。
【0071】
同様に、第2の中間ブロック44にも、タイヤ幅方向に横断する細溝50がタイヤ周方向に間隔を開けて複数形成されて複数のサブブロック52に分割されている。
【0072】
ここで、第1の中間ブロック42は6本の細溝46により、7個のサブブロック48に分割されており、第2の中間ブロック44は6本の細溝50により7個のサブブロック52に分割されている。
【0073】
なお、ブロック剛性を考慮すると、第1の中間ブロック42、及び第2の中間ブロック44においては、ブロック1個当たりのサブブロックの数は3個から9個の範囲内であれば良い。
【0074】
細溝24、細溝32、細溝46、及び細溝50は所謂サイプであり、その幅は、本実施形態では0.5mmに設定されているが、0.5〜3mmの範囲内であれば良い。
【0075】
ここで、本実施形態では、横溝28、横溝36、横溝38、横溝40、細溝24、細溝32、細溝46、及び細溝50は、タイヤ幅方向に対して全て右上がりに同一角度で傾斜しており、タイヤ周方向に対する鋭角側の角度θが81°に設定されている。
【0076】
なお、角度θは、45〜90°の範囲内であれば良い。
【0077】
サブブロック26、サブブロック34、サブブロック48、及びサブブロック52の幅(細溝に対して直角方向に計測)は、本実施形態では、4〜4.5mm(なお、幅4.5mmは、サブブロック48A、サブブロック48B、サブブロック52A、サブブロック52Bのみでその他が4mm)に設定されているが、3〜8mmの範囲内でれば良い。
【0078】
第1の中間ブロック42のタイヤ回転方向(矢印A方向)のサブブロック48Aは、タイヤ赤道面CL側へ延びて周方向主溝14を横断し、センター陸部22の内部へ侵入してタイヤ赤道面CL付近で終端している。
【0079】
なお、センター陸部22とサブブロック48Aとの間には、幅1.8mmの細溝54が設けられている。
【0080】
また、第1の中間ブロック42のタイヤ周方向の他方のサブブロック48Bは、ショルダー側へ延びて周方向主溝18の溝幅中央付近で終端している。即ち、タイヤ周方向に見たときに、サブブロック48Bは、隣接する第2中間ブロック44に対してオーバーラップしている。
【0081】
第2の中間ブロック44のタイヤ周方向の一方のサブブロック52Aは、タイヤ赤道面CL側へ延びて周方向主溝14の溝幅中央付近で終端している。即ち、タイヤ周方向に見たときに、サブブロック52Aは、隣接する第1中間ブロック42に対してオーバーラップしている。
【0082】
また、第2の中間ブロック44のタイヤ周方向の他方のサブブロック52Bは、ショルダー側へ延びて周方向主溝18を横断し、さらにショルダーブロック30をも横断している。即ち、タイヤ周方向に見たときに、サブブロック52Bは、接地面内において隣接するショルダーブロック30に対してオーバーラップしている。
【0083】
なお、ショルダーブロック30とサブブロック52Bとの間には、幅1.8mmの細溝56が設けられている。
【0084】
また、第1の中間ブロック42のサブブロック48Aには、タイヤ周方向に延びる分断細溝58が、周方向主溝14のショルダー側の溝壁の延長線上に配置されている。
【0085】
第1の中間ブロック42のサブブロック48Bには、タイヤ周方向に延びる分断細溝60が、周方向副溝16のタイヤ赤道面CL側の溝壁の延長線上に配置されている。
【0086】
第2の中間ブロック44のサブブロック52Aには、タイヤ周方向に延びる分断細溝62が、周方向副溝16のショルダー側の溝壁の延長線上に配置されている。
【0087】
第2の中間ブロック44のサブブロック52Bには、タイヤ周方向に延びる分断細溝64が、周方向主溝18のタイヤ赤道面CL側の溝壁の延長線上に配置されている。
【0088】
これらの分断細溝58、分断細溝60、分断細溝62、及び分断細溝64は、何れも幅が0.5mmである。
【0089】
なお、本実施形態のトレッド12のネガティブ率は30.5%である。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0090】
本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド12がタイヤ赤道面CL付近を除き略全体をブロックパターンとしているので、ブロックエッジが多数確保され、氷雪上での基本性能が確保されている。
【0091】
トレッド12の中でも接地圧の高いタイヤ赤道面CLには、周方向に連続して延びるセンター陸部22を配置し、そのセンター陸部22の多数の細溝24を形成したので、タイヤ赤道面CL付近の剛性を保ちつつ、氷上性能を向上することができる。
【0092】
細溝24、細溝32、細溝46、及び細溝50が接地面内の水膜の切断及び吸収を行うことにより、氷雪上性能を向上させることができる。
【0093】
ブレーキング時やトラクション時では、サブブロック48A,48B,52A,52Bの延長部分が刷毛やワイパーの如く作用し、延長部分のタイヤ周方向側に位置する他のブロック、または陸部(センター陸部22)の移動方向側の擬似水膜を除去するので、氷上性能を向上させることができる。なお、除去された水は、最も近い周方向溝へ排水される(直ちに接地面外へ排水される場合もある。)
例えば、ブレーキ時では、図3に示すように、第2の中間ブロック44の車両進行方向前側の水膜66を、第1の中間ブロック42のサブブロック48Bが路面68をしごくようにして除去する。なお、サブブロック48Bで除去された水は、周辺の溝、例えば、周方向主溝14、周方向副溝16、周方向主溝18等へ流され、さらに接地面外へと流れる。
【0094】
また、タイヤ幅方向に延長されたサブブロック48A,48B,52A,52Bは、タイヤ横方向の剛性が高いので、氷雪上走行時のコーナリング性能を向上させることができる。
【0095】
センター陸部22の両側に、それぞれ第1の中間ブロック42からなるブロック列、及び第2の中間ブロック44からなるブロック列を設けたので、本実施形態のようにトレッド幅185mm以上の比較的広幅のタイヤの場合においては、センター陸部22の両側に、それぞれ1つのブロック列を設けた場合に比較してサブブロックの配置個数が増え、より高い水膜除去効果が得られ、氷上でのブレーキ性能、及びトラクション性能が向上する。
【0096】
周方向副溝16の幅を、周方向主溝14、及び周方向主溝18の幅の50%に設定したので、周方向副溝16のエッジを働かすことができ、かつ第1の中間ブロック42、及び第2の中間ブロック44の剛性を確保される。
【0097】
周方向主溝14にはサブブロック48Aが、周方向副溝16にはサブブロック48B及びサブブロック52Aが、周方向主溝18にはサブブロック52Bが横断しているので、
トラクション、及びブレーキに有効なタイヤ幅方向のブロックエッジ成分を大幅に増加でき、特に、雪上でのブレーキ、及びトラクション性能を向上することができる。
【0098】
なお、第1の中間ブロック42ではサブブロック48の数を7個、第2の中間ブロック44ではサブブロック52の数を7個に設定したのは、最も氷上性能向上に有効となるからである。
【0099】
サブブロック48、及びサブブロック52の数が3個未満になると、細溝間隔が広くなり、ブロック剛性が大きく成り過ぎ、エッジ成分が少なく成り過ぎるため、氷雪上性能が確保し難くなる。
【0100】
一方、サブブロック48、及びサブブロック52の数が9個を越えると、逆に細溝間隔が狭く成り過ぎ、ブロック剛性が低下して第1の中間ブロック42、及び第2の中間ブロック44の倒れ込みが起こり、十分な接地面が確保できず、氷雪上性能を十分確保できなくなる。
【0101】
また、本実施形態では、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50が直線形状であるので、氷上での前後方向のブレーキ、及びトラクションに対して有効に働かせることができる。
【0102】
なお、本実施形態では、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50が直線形状であるが、ジグザグ形状でも良い。細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50をジグザグ形状とすることにより、氷雪上でのコーナリング性能を向上させることができる。
【0103】
なお、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50のタイヤ周方向に対する角度θが45°未満になると、周方向溝と横溝との中間的な役割となってしまい、ウエット排水性に関しては良くなるが、前後方向、即ち、トラクション、及びブレーキに対しては不利となる。
【0104】
なお、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50の幅を0.5mmに設定したのは、除水に有効に働かすために最も良い幅であるからである。
【0105】
細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50の幅が0.5mm未満になるとサブブロックが倒れ込み難くなり、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50の幅が3mmを越えると各サブブロックが単独のブロックと同様になり、剛性低下のために倒れ込み過ぎとなり、いずれも有効な除水効果が得られなくなる。
【0106】
各サブブロックの幅が3mm未満になると、ブロック剛性が低下してブロックの倒れ込みが起き、氷上性能が悪化する。
【0107】
一方、各サブブロックの幅が8mmを越えると、氷上性能向上のためのエッジ成分が不足し、また、細溝24、細溝46、細溝32、及び細溝50の数が減って除水効果も小さくなり、氷雪上性能向上が見込めなくなる。
【0108】
また、タイヤ幅方向に長いサブブロック48Aに分断細溝58を、サブブロック48Bに分断細溝60を、サブブロック52Aに分断細溝62を、サブブロック52Bに分断細溝64を設けることにより、各サブブロックの倒れ込みを調整でき、水膜を除去するための刷毛(またはワイパー)としての効果を最大限に発揮させ、氷上での高い除水効果を得ることが出来る。
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、従来例の空気入りタイヤと、本発明の適用された実施例の空気入りタイヤとを用意し、雪上フィーリング性能、雪上ブレーキ性能、雪上トラクション性能、氷上フィーリング性能、氷上ブレーキ性能、及び氷上トラクション性能について比較を行った。
【0109】
なお、試験方法及び評価は以下のように行った。
【0110】
雪上フィーリング性能:圧雪路面のテストコースにおける制動性、発進性、コーナリング性の総合評価。評価はテストドライバーによるフィーリング評価であり、従来例を100とする指数で表した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0111】
実施例の空気入りタイヤは、前述した実施形態の空気入りタイヤである。
【0112】
従来例の空気入りタイヤは、タイヤサイズは実施例と同じであるが、図4に示すようにジグザグ状の周方向溝100、102、直線状の周方向溝104、横溝106、横溝108、及び横溝110で区画されたブロック112、114、116を有し、ブロック112、114、116には各々、タイヤ幅方向に延びるサイプ118が形成されている。なお、トレッドのネガティブ率は実施例と同等に設定されている。
【0113】
雪上ブレーキ性能:圧雪上を40km/hからフル制動したときの制動距離を測定した。評価は、従来例の制動距離の逆数を100として指数表示した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0114】
雪上トラクション性能:圧雪上での50mの距離での発進からの加速タイムを計測した。評価は、従来例の加速タイムの逆数を100として指数表示した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0115】
氷上フィーリング性能:氷盤路面のテストコースにおける制動性、発進性、コーナリング性の総合評価。評価はテストドライバーによるフィーリング評価であり、従来例を100とする指数で表した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0116】
氷上ブレーキ性能:氷盤上を20km/hからフル制動したときの制動距離を測定した。評価は、従来例の制動距離の逆数を100として指数表示した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0117】
氷上トラクション性能:氷盤上での20mの距離での発進からの加速タイムを計測した。評価は、従来例の加速タイムの逆数を100として指数表示した。指数の数値が大きいほど性能が良いことを表している。
【0118】
試験結果は以下の表1に示す通りであり、本発明の空気入りタイヤは全ての項目において性能が向上していることが分かる。
【0119】
【表1】
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、氷上性能を向上することができ、さらに、トラクション、及びブレーキ性能を確実に得られる、という優れた効果を有する。また、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、特に、雪上でのブレーキ、及びトラクション性能を確保することができる。
【0121】
請求項2に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、更に氷上でのブレーキ性能、及びトラクション性能を向上することができる。
【0122】
請求項3に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、複数の中間ブロック列を形成した際の中間ブロック列を構成するブロックの剛性を確保することができる。
【0124】
請求項4に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、最も氷上性能向上に有効となる。
【0125】
請求項5に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、氷上性能を向上すると共に、雪上性能も確保される。
【0126】
請求項6に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、前後方向のブレーキ、及びトラクションに対して有効に働かせることができる。
【0127】
請求項7に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、氷雪上でのコーナリング性能を向上することができる。
【0128】
【0129】
請求項8に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、サブブロックを除水に有効に働かすことができる。
【0130】
請求項9に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、氷上性能を確実に得られる。
【0131】
請求項10に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、タイヤ幅方向に延設されるサブブロックの効果を最大限に出し、氷上での高い除水効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの一部分を示す拡大平面図である。
【図3】 ブレーキ時の中間ブロック列部分の断面図である。
【図4】 従来例に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 トレッド
14 周方向主溝
16 周方向副溝
18 周方向主溝
22 センター陸部
28 横溝
30 ショルダーブロック(ショルダーブロック列)
36 横溝
38 横溝
40 横溝
42 第1中間ブロック(中間ブロック列)
44 第2中間ブロック(中間ブロック列)
46 細溝
48 サブブロック
50 細溝
52 サブブロック
58 分断細溝
60 分断細溝
62 分断細溝
64 分断細溝
Claims (10)
- トレッドにタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の横溝とで区画された複数のブロックを備え、前記ブロックが前記ブロックを横断する複数本の細溝によってタイヤ周方向に複数のサブブロックに分割された空気入りタイヤであって、
ブロックの内の少なくとも一つのサブブロックが、タイヤ幅方向に延長されて周方向溝を横断し、かつ隣接する他のブロックとオーバーラップしており、
前記サブブロックを形成する細溝は、タイヤ周方向に対する鋭角側の角度が45〜90°の範囲内であり、
タイヤ幅方向の全ての周方向溝は、前記サブブロックの延長部分により分断されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 複数のブロックをタイヤ周方向に連ねてトレッド幅方向最外側に配置したショルダーブロック列と、前記ショルダーブロック列のタイヤ赤道面に配置され複数のブロックをタイヤ周方向に連ねた中間ブロック列と、を備え、
前記中間ブロック列が、タイヤ赤道面の両側にそれぞれ複数列設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。 - 中間ブロック列と中間ブロック列との間に配置される周方向溝の溝幅は、その他の周方向溝の溝幅の20〜60%の範囲内に設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- ブロック1個当たりのサブブロックの数が3個から9個の範囲内である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ赤道面付近にタイヤ周方向に連続して延びる陸部が設けられており、前記陸部のタイヤ幅方向外側には前記ブロックからなるブロックパターンが形成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サブブロックを形成する細溝は、直線形状である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サブブロックを形成する細溝は、ジグザグ形状である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サブブロックを形成する細溝の幅は、0.5〜3mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記サブブロックの幅は、3〜8mmの範囲内である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記周方向溝を分断する前記サブブロックは、少なくとも前記周方向溝を横断する方向において、少なくとも1ヶ所が分断細溝により分断されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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