JP4205491B2 - 車両のシートスライド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のシートスライド装置に関し、シートを後方へスライドさせたときに、シートに固定されたアッパレールと、ロアレールをフロアに固定するためのボルトとの間に、異物が挟まれて破損するのを防止したものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車用シートにおいては、シートレイアウトの多様化が求められており、フロントシートだけでなくセカンドシートやサードシート等にもシートスライド装置が設けらている。そして、ここで採用されるシートスライド装置は、車両の床面に埋め込まなければならなかったり、狭いスペースに設置しなければならない等、多くの制約のある条件下での設置が求められている。
【0003】
このため、このような厳しい条件下での設置を実現するため、従来は、車両のフロアに固定されたロアレールに、シートに固定されたアッパレールがスライド自在に組み付けられると共に、ロアレールに対するアッパレールのスライド位置を変更してロックするロック機構が設けられ、このロック機構がロアレールとアッパレールとの間の狭い空間に配置されて車両のシートスライド装置が構成されている。
【0004】
このシートスライド装置においては、前記ロアレールの両端がボルトを介してフロアに結合されており、ライターや筆記具等の異物がロアレールの内部に落ち込んでいた場合には、シートと共にアッパレールを後方へ下げたときに、異物がアッパレールに押されて後方へ移動し、アッパレールと前記ボルトとの間に挟まれて異物が破損することがある。
【0005】
このような問題を解決するために、異物がロアレールの内部に落ち込まないようにロアレールの後部にカバー部材を設けた構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−192994号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ボルトとアッパレールとの間の僅かな空間を覆うだけのために、カバー部材にはカバー部材をロアレールに装着するための「装着手段」を追加して大きなレッグカバーにするだけでなく、レッグカバーをロアレールに装着するための「加工」を行なわねばならず、生産コストが高くなってしまう。
【0008】
そこで本発明は、既存の部品を利用して簡単な構成で異物がアッパレールとボルトとの間に挟まれないように逃がすための「逃がし部」を設けた車両のシートスライド装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1に係る発明の構成は、車両のフロアに固定されたロアレールに、シートに固定されたアッパレールがスライド自在に組み付けられ、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド位置を変更してロックするロック機構を設けた車両のシートスライド装置であって、前記ロアレールの前後部が夫々固定部材を介してフロアに支持された車両のシートスライド装置において、前記ロアレール内の底面に前記ロック機構を構成するロックプレートが固定され、該ロックプレートには、前記ロアレールの端部側へ向かうにつれて前記固定部材の頭部の高さと略同じか又は前記固定部材の頭部の高さよりも高くなるテーパ状の逃がし部が前記ロアレールの長さ方向に沿って一体に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明では、異物が固定部材の頭部とアッパレールとの間へ落下するのを防止するのではなく、ロアレール内に異物が落下しても、シートと共にアッパレールが後退した場合にはアッパレールに押されて後退する異物がテーパ状の逃がし部に沿って上昇して固定部材から逃げ、ロアレールから外れてしまう。このため、アッパレールと固定部材との間に異物が挟まれて破損することはない。そして、この発明では、前記逃がし部がロックプレートと一体に形成されているので、ロックプレートの一部を追加工すればよく、新たに部材を設ける必要がない。また、ロックプレートから逃がし部が連続しているため、異物の引っ掛かるところがなく、確実に外すことができる。
【0013】
請求項2に係る発明の構成は、請求項1において、前記ロックプレートの後端部が前記固定部材としてのボルトにより前記ロアレールと共にフロア側に結合されていることを特徴とする。
【0014】
この発明では、ロアレールをフロア側に固定するためのボルトにより、ロックプレートをフロア側に結合するので、ロックプレートに作用する力が直接にフロア側に伝わるため、部品点数を増加することなく、ロック強度を向上できる。
【0015】
請求項3に係る発明の構成は、請求項1において、前記ロックプレートが溶接により前記ロアレールの底面に結合されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、ロアレールへのロックプレートの結合にボルト等を用いないので、固定部材として用いるボルトをフロア側へ埋設し当該ボルトとナットとを介してロアレールをフロア側に取りつける場合にも対応できると共に、ロアレールとロックプレートとの結合を強固にしてロック強度の向上を図ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態1,2を図面に基づいて説明する。
(a)実施の形態1
まず、実施の形態1を図1〜図7に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明による車両のシートスライド装置の分解斜視図であり、図2,図3,図7はシートスライド装置の部分断面側面図、図4〜図6はシートスライド装置の長手方向と交差する方向の断面図を夫々示している。
【0019】
図1に示すように、シートスライド装置は、車両のフロアに固定されるロアレール1と、シートの左右の下端に取り付けられるアッパレール2とを備え、ロアレール1に対してアッパレール2が、リテーナ3に保持されたローラ4とガイドボール5とを介して長さ方向へスライド自在となっている。
【0020】
具体的には、ロアレール1の断面形状は、開口部が上向きの略コ字状の基本断面部の上端に内側へ屈曲した屈曲部1aを夫々延設して構成され、アッパレール2の断面形状は、同様の開口部が下向きの略コ字状の基本断面部の下端に外側へ屈曲した屈曲部2aを夫々延設して構成されている。そして、アッパレール2は、各屈曲部2aとそれに対峙する側部2b,2eとで、ロアレール1の屈曲部1aを挟み込むようにして組み付けられている。前記リテーナ3はロアレール1とアッパレール2との間にフリー状態で組み入れられ、リテーナ3に保持されたローラ4はアッパレール2の屈曲部2aの下面を支持し、ガイドボール5はアッパレール2の屈曲部2aの側面をガイドする。
【0021】
このように構成されたロアレール1とアッパレール2との間には、ロアレール1に沿ってアッパレール2をスライドさせた後に固定するためのロック機構6が設けられている。このロック機構6は、ラッチレバー8と、爪支持プレート12と、ロックプレート10と、で構成される。ラッチレバー8と爪支持プレート12とがアッパレール2に支持されており、ロックプレート10はロアレール1に結合されている。回動するラッチレバー8のロック爪7を、爪支持プレート12の支持孔14に係合させた後にロックプレート10の嵌合孔9に係合させることで、アッパレール2がロアレール1に対して固定される。
【0022】
ラッチレバー8は略コの字形状に形成され、コの字形状の対向する2辺が、一対の支持ブラケット16を介してアッパレール2に回動自在に設けられている。そして、ラッチレバー8の一方の辺には入力アーム18が一体に形成されており、この入力アーム18を介して外部からラッチレバー8に操作力が入力される。図4,図5にも示すように、ラッチレバー8の対向する2辺を連結する部分には、一方側に複数(この実施の形態では4つ)のロック爪7が形成されている。そして、他方側には、一対の第1バネ掛け部17aと単一の第2バネ掛け部17bとが、棒状ばね11の長さ方向と略直角な2方向へ突出させて形成されている。そして、第1バネ掛け部17aと第2バネ掛け部17bとは相互に略90度をなしている。支持ブラケット16は、爪支持プレート12と共にアッパレール2の天上部に固定されている。即ち、支持ブラケット16から立ち上がる嵌合片16aを爪支持プレート12の嵌合孔12aおよびアッパレール2の嵌合孔2cに嵌合させた後に嵌合片16aを加熱して加圧・変形させることで、支持ブラケット16および爪支持プレート12がアッパレール2に結合されている。そして、一対のブラケット16の相互に対向する鉛直部にはエンボス成形によって軸部19,20が突設され、前記ラッチレバー8の孔8aに軸部19,20を挿入することで、ラッチレバー8が回動自在に支持されている。
【0023】
爪支持プレート12は、相互に離間した一対の取付部12b,12bと、これらの取付部12b,12bから取付部間を繋ぐように延設された鉛直部12cと、を備え、取付部12b,12bがアッパレール2の天上部の長手方向略中央部に取り付けられると共に、鉛直部12cが一方の側部2bに若干偏寄するように配置されている。鉛直部12cの下部には、ラッチレバー8のロック爪7を挿入するための支持孔14が、アッパレール2の長手方向に沿って複数形成されている。
【0024】
前記ラッチレバー8のロック爪7がロックプレート10の嵌合孔9に係合する方向へ、ラッチレバー8を回動させるために、棒状ばね(バネ部材)11が設けられている。棒状ばね11は、全体が略くの字形状であり、棒状ばね11の両端は略直角に曲げられており、その屈曲部は円弧状になっている。棒状ばね11の中央部分にはラッチレバー8における第2バネ掛け部17bに対する位置決めを行なうために、ラッチレバー8の第2バネ掛け部(移動部)17bを、棒状ばね11の長さ方向から挟持する一対の突出部(拘束部)11aが形成されている。
【0025】
棒状ばね11は、その両端部がアッパレール2の天上部と他方の側部2eとが交わる屈曲部の内側に当接し、その中央部が一対の第1バネ掛け部17aと単一の第2バネ掛け部17bとが略直角に突出する部分に当接し、ラッチレバー8のロック爪7をアッパレール2の一方の側部2bへ向かって常時付勢している。そして、棒状ばね11の一対の突出部11aが第2バネ掛け部17bを、棒状ばね11の長さ方向から挟持しているので、棒状ばね11がその長さ方向へ移動することはない。
【0026】
ロックプレート10は、長手方向の両端部を除くほぼ全域が断面略L字状に形成されると共に、ロアレール1の長手方向の所定範囲に亙るようにように長尺に形成されている。このロックプレート10におけるL字の一方の辺を成す基部10aは、ロアレール1の底面の幅方向略中央部に長さ方向で複数箇所をスポット溶接やプロジェクション溶接等によって結合され、基部10aの長手方向の両端部にはアンカー領域が設けられている。そのアンカー領域にはレール固定用の固定手段としてのボルト22が挿通され、ロアレール1を車両のフロアに固定するときに、そのアンカー領域がボルト22によってフロアに結合される。
【0027】
ロックプレート10におけるL字の他方の辺を成す鉛直部10bには、前述の嵌合孔9が長手方向に亙って複数形成されており、図4に示すように鉛直部10bは前記爪支持プレート12の鉛直部12cとアッパレール2の一方の側部2bとの間に配置されている。鉛直部10bの嵌合孔9はラッチレバー8のロック爪7が挿入嵌合される部分であるため、隣接する嵌合孔9,9間のピッチはロック爪7のピッチと同じになっている。
【0028】
ロックプレート10における基部10aの後端部には基部10aを屈曲させることで傾斜部(逃がし部)23が形成されている。この傾斜部23は、ライタ等がロアレール1の中に落下した後にアッパレール2が後退してライタ等を後方へ押し出した場合でも、ライタ等がボルト22の頭部に引っ掛かることなくボルト22の頭部を乗り越えるようにするために形成したものである。
【0029】
また、図4に示すようにアッパレール2の一方の側部2bのうちの、爪支持プレート12の支持孔14に対峙する位置には、ロックプレート10の鉛直部10bに近接する方向に窪む窪み部25が設けられ、その窪み部25に、支持孔14に対応するように同様の支持孔26が形成されている。この窪み部25の支持孔26は、ロック時に、ロック爪7の先端部が挿入係合される部分であり、爪支持プレート12の支持孔14と共にロック爪7を支持する第2の爪支持部を構成している。
【0030】
アッパレール2の軸方向略中央には天上部と一方の側部2bとに跨るように切欠き2dが形成され、ラッチレバー8の入力アーム18がその切欠き2dを通してレール2の外部に僅かに突出している。そして、アッパレール2側には図示しない支持ブラケット等を介して操作レバー28のホルダー29が揺動自在に軸支され、そのホルダー29の後端部の操作片29aによって前記入力アーム18が上下方向に揺動操作されるようになっている。したがって、操作レバー28の先端が上方側に揺動操作されると、操作片29aが入力アーム18を下方へ押し下げ、それによって棒状ばね11の付勢力に抗して、ラッチレバー8がロックプレート10を開放する方向へ回動される。
【0031】
シートの他方の側部にも同様のシートスライド装置が配置されており、そのシートスライド装置にも操作レバー28の他端側が同様に連結され、操作レバー28の操作力が同様に他端側のシートスライド装置にも伝達される。したがって、シートの左右のロック機構6は常に連動して同時に操作される。
【0032】
このシートスライド装置は以上のような構成であるため、シートが任意のスライド位置でロックされているときには、図4に示すようにラッチレバー8が棒状ばね11の付勢力を受けてロックプレート10へ向かって回動変位しており、このとき、ラッチレバー8のロック爪7は、爪支持プレート12の支持孔14、ロックプレート10の嵌合孔9、アッパレール2の支持孔26の三者に挿通されている。
【0033】
この状態からシートを前後方向での異なる位置に変更する場合には、操作レバー28の先端を上方に回動操作し、ラッチレバー8を図5に示すように棒状ばね11の付勢力に抗して回動させ、それによってラッチレバー8のロック爪7を支持孔26・嵌合孔9・支持孔14の三者から引き抜き、シートの自由なスライドを可能にする。この状態においてシートのスライド位置を任意位置に変更し、その後に操作レバー28を開放する。すると、ラッチレバー8が棒状ばね11の付勢力によって元の状態に復帰し、ロック爪7が支持孔14・嵌合孔9・支持孔26の三者に挿通され、シートが再び固定される。
【0034】
例えば図7のようにシートが最も前方へスライドした状態のときにアッパレール2の後方に位置するロアレール1の内部にライター等が落ち込んでいて、それに気がつかずにシートと共にアッパレール2を図2の位置まで後退させた場合は、ライター等がアッパレール2に押されるが、ライター等は傾斜部23の存在によって傾斜部23に沿ってボルト22の上に乗り上げてロアレール1の内部から外部へ排出される。このため、ライター等がアッパレール2とボルト22との間に挟まれて破損するということが未然に防止される。そして、傾斜部がロックプレートと一体に形成されているので、ロックプレートの一部を追加工すればよく、新たに部材を設ける必要がない。
(B)実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2を図8に示す。
【0035】
この実施の形態2は、前記実施の形態1に対してロックプレート10が両端部にアンカー領域を持たないものであり、ロアレール1へのロックプレート10の結合にボルトを用いることなく、基部10aをロアレール1の底面に溶接したものであり、この基部10aの後方側の端部に傾斜部23が形成されている。
【0036】
その他の構成・作用は実施の形態1と同じなので、説明を省略する。
【0037】
なお、実施の形態ではロアレールを直接に車体のフロアに支持する構造について説明したが、ロアレールをレッグブラケットを介して支持する場合も同じであり、この場合、固定部材はレッグブラケットとロアレールを固定するカシメピンとなる。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、本発明による車両のシートスライド装置によれば、ロアレールには、ロアレールの端部側へ向かうにつれて固定部材の頭部の高さと略同じか又は固定部材の頭部の高さよりも高くなるテーパ状の逃がし部がロアレールの長さ方向に沿って一体に形成されているので、ロアレールの上に異物が落下しても、シートと共にアッパレールが後退した場合にはアッパレールに押されて後退する異物がテーパ状の逃がし部に沿って上昇して固定部材から逃げ、ロアレールから外れてしまう。このため、アッパレールと固定部材との間に異物が挟まれて破損することはない。そして、この発明では、前記逃がし部がロックプレートと一体に形成されているので、ロックプレートの一部を追加工すればよく、新たに部材を設ける必要がない。また、ロックプレートから逃がし部が連続しているため、異物の引っ掛かるところがなく、確実に外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両のシートスライド装置の実施の形態1を示す分解斜視図。
【図2】実施の形態1に係り、シートを最も後方にスライドさせた状態を示す説明図。
【図3】実施の形態1に係り、図2の要部の拡大図。
【図4】図3のA−A矢視図であり、ロック状態を示す。
【図5】図3のA−A矢視図であり、ロック解除の状態を示す。
【図6】図3のB−B矢視図。
【図7】実施の形態1に係り、シートを最も前方にスライドさせた状態を示す説明図。
【図8】実施の形態2に係り、図3と対応するの要部の拡大図。
【符号の説明】
1…ロアレール
2…アッパレール
6…ロック機構
10…ロックプレート
22…ボルト
23…傾斜部
Claims (3)
- 車両のフロアに固定されたロアレールに、シートに固定されたアッパレールがスライド自在に組み付けられ、前記ロアレールに対する前記アッパレールのスライド位置を変更してロックするロック機構を設けた車両のシートスライド装置であって、前記ロアレールの前後部が夫々固定部材を介してフロアに支持された車両のシートスライド装置において、
前記ロアレール内の底面に前記ロック機構を構成するロックプレートが固定され、該ロックプレートには、前記ロアレールの端部側へ向かうにつれて前記固定部材の頭部の高さと略同じか又は前記固定部材の頭部の高さよりも高くなるテーパ状の逃がし部が前記ロアレールの長さ方向に沿って一体に形成されていることを特徴とする車両のシートスライド装置。 - 前記ロックプレートの後端部が前記固定部材としてのボルトにより前記ロアレールと共にフロア側に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートスライド装置。
- 前記ロックプレートが溶接により前記ロアレールの底面に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のシートスライド装置。
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