JP4205212B2 - 光学素子及び光ヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば光情報処理又は光通信等に用いられ、レーザービームを偏光分離する光学素子、および前記光学素子を用いた光ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、光記録媒体に情報を記録再生する光ヘッドの小型化が盛んに行われている。特に光ヘッドの小型化を実現する要素として、偏光分離素子を用いた光ヘッドが提案されている(例えば特開平3−29129号公報参照)。
【0003】
ここで図面を参照しながら、上述した従来の光ヘッドの一例について説明する。
【0004】
図25は従来の光ヘッド(光ピックアップともいう)の構成図である。図25において、251は光源、252は偏光分離素子、253はコリメータレンズ、254は1/4波長板、255は対物レンズ、256は光ディスク、257は第1の光検出器、258は第2の光検出器である。本光ヘッドは、光源251、偏光分離素子252、コリメータレンズ253、1/4波長板254、対物レンズ255、第1の光検出器257、第2の光検出器258を含んで構成されている。
【0005】
光源251は、例えば半導体レーザー素子で構成され、光ディスク256の記録層に対し、記録再生用のコヒーレント光を出力する光源である。偏光分離素子252は例えば特開昭63−314502号公報に開示されているように、周期的なプロトン交換層が形成されたニオブ酸リチウムの基板を含み、プロトン交換層の上に誘電体膜が堆積された光学素子である。なおプロトン交換層とは、ニオブ酸リチウム中のLi原子がH(プロトン)で置換された層を意味する。プロトン交換層の常光及び異常光の屈折率がニオブ酸リチウム基板の常光及び異常光の屈折率と異なることにより、常光線の透過率を100%、異常光線に対しては回折格子として作用して透過率を0%とすることができ、偏光分離の性質を持つ素子が形成できる。また、上記した構成とは異なるが、偏光分離の性質を持つ光学素子については例えば特開昭63−55501号公報や特開平4−219701号公報や特開平5−196813号公報にも記されている。
【0006】
コリメータレンズ253は、光源251から出射された光を平行光にするレンズである。1/4波長板254は例えば水晶で構成され、光源251から出力される直線偏光の光を円偏光に変換すると共に、光ディスク256の記録層で反射された光を照射時とは異なる方向の直線偏光に変換する非線形光学素子である。光検出器257は光ディスク256で反射された光のうち、偏光分離素子252で回折された+1次光を受光する光検出器である。また光検出器258は光ディスク256で反射された光のうち、偏光分離素子252で回折された−1次光を受光する光検出器である。
【0007】
このように構成された光ヘッドの動作について説明する。光源251から出射された直線偏光の光は偏光分離素子252を100%透過する。そしてこの光はコリメータレンズ253で平行光にされ、1/4波長板254で円偏光の光に変換され、対物レンズ255により光ディスク256上に集光される。
【0008】
次に光ディスク256から反射された円偏光の光は、対物レンズ255を透過した後、1/4波長板254により光源251から出射された光の偏光方向とは直交する方向の直線偏光の光に変換される。この直線偏光の光はコリメータレンズ253を透過した後、偏光分離素子252により回折される。回折の+1次光は光検出器257に入射され、回折の−1次光は光検出器258に入射される。
【0009】
光検出器257は、光ディスク256上における光の合焦状態を示すフォーカス誤差信号を出力し、また光の照射位置を示すトラッキング誤差信号を出力する。これら一方の信号は図示しないフォーカス制御手段に与えられ、フォーカス誤差信号に基づき、フォーカス制御手段は常に光が合焦状態で光ディスク256上に集光されるように対物レンズ255の位置をその光軸方向に制御する。また図示していないトラッキング制御手段は、トラッキング誤差信号に基づき、光が光ディスク256上の所望のトラックに集光されるように対物レンズ255の位置を制御する。さらに光検出器258は光ディスク256に記録された情報を再生する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記のような構成の光ヘッドでは、用いられている偏光分離素子252に収差があると、光ディスク256上に集光される光スポットが回折限界より大きくなるためジッターが悪くなり、光ディスク256に記録されている情報を再生することができなくなる。
【0011】
ここで、従来例に示した光ヘッドに用いられている偏光分離素子について述べる。特開昭63−55501号公報、特開平3−29129号公報、特開平4−219701号公報、特開平5−196813号公報で開示されている偏光分離素子はすべてニオブ酸リチウム基板の所定の場所にプロトン交換を施してプロトン交換層のパターンを形成した光学素子である。1例として図26に特開平5−196813号公報で開示されている偏光分離素子の構造を示す。ここで261はニオブ酸リチウム基板、262はプロトン交換層である。ジャーナル・オブ・ソリッド・ステート・ケミストリー41巻(1982年)第308頁から第314頁(JOURNAL OF SOLID STATE CHEMISTRY Vol41(1982)P.308−314)に示されているように、プロトン交換層262の結晶構造はニオブ酸リチウム261の結晶構造とは異なる上に、プロトン交換層262の結晶格子はニオブ酸リチウム261の結晶格子よりも大きくなる。従って、周期的なプロトン交換層262が存在する面が凸になるように偏光分離素子252が反ってしまい、この偏光分離素子を透過する光は収差(球面収差や非点収差など)を持つことになる。また、従来の光ヘッドでは、偏光分離素子252を動作させるために往路及び復路で光ビームの偏光方向を互いに直交させるための1/4波長板254が必須であり、更なる小型化を行うためには偏光分離素子252と1/4波長板254を貼り合わせることが必要となるが、貼り合わせる際、偏光分離素子252が反っているため、1/4波長板254と平行度を保ちながら貼り合わせるのが非常に困難で貼り合わされた素子の透過波面に収差が生じるという課題を有している。
【0012】
本発明は、このような従来の光学素子および光ヘッドが有する上述した課題を考慮して、イオン交換層によって回折を行う光学素子において、反りが小さく透過波面に収差を与えない光学素子を提供することを目的とするものである。さらに、本発明は、上記光学素子を用いて小型で低コストの光ヘッドを提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の本発明は、イオン交換が可能な結晶である基板と、
前記結晶のX面もしくはY面の所定の部分がイオン交換されたイオン交換層と、
前記イオン交換層により前記基板に生じる応力を補正する応力補正層とを備え
前記応力補正層は、前記基板の前記イオン交換層が形成されている面と反対側の面であり、前記イオン交換層が形成されていない部分の裏側にのみ形成されていることを特徴とする光学素子である。
【0014】
第2の本発明は、前記結晶が、LiTaNb1−X(0≦X≦1)であることを特徴とする第1の本発明の光学素子である。
【0015】
第3の本発明は、前記イオン交換層によって、偏光分離を行うことを特徴とする第1または第2の本発明の光学素子である。
【0017】
の本発明は、前記応力補正層が、前記イオン交換層と同様に、前記結晶がイオン交換されたものであることを特徴とする第の本発明の光学素子である。
【0018】
の本発明は、前記応力補正層が、アルミナ薄膜またはその他の薄膜で形成されていることを特徴とする第の本発明の光学素子である。
【0019】
の本発明は、外部から前記イオン交換層への入射光の反射を防止する交換層反射防止膜と、外部から前記応力補正層への入射光の反射を防止する補正層反射防止膜とを備えることを特徴とする第1〜第5のいずれかの本発明の光学素子である。
【0020】
の本発明は、前記応力補正層上に配置された複屈折層を備えることを特徴とする第1〜第5のいずれかの本発明の光学素子である。
【0021】
の本発明は、前記複屈折層が、n/4波長板(ここでnは奇数)であることを特徴とする第の本発明の光学素子である。
【0022】
の本発明は、外部から前記イオン交換層への入射光の反射を防止する交換層反射防止膜と、前記応力補正層と前記複屈折層との間の入射光の反射を防止する隣接層間反射防止膜と、外部から前記複屈折層への入射光の反射を防止する複屈折層反射防止膜とを備えることを特徴とする第または第の本発明の光学素子である。
【0023】
10の本発明は、前記複屈折層が、水晶であることを特徴とする第〜第のいずれかの本発明の光学素子である。
【0024】
11の本発明は、前記複屈折層が、誘電体が斜めから蒸着された斜め蒸着膜であることを特徴とする第〜第のいずれかの本発明の光学素子である。
【0027】
12の本発明は、第1〜第11のいずれかの本発明の光学素子を備えることを特徴とする光ヘッドである。
【0028】
13の本発明は、光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、前記光源の前記光記録媒体側に配置されたコリメータレンズと、前記コリメータレンズの前記光記録媒体側に配置された第1〜第のいずれかの本発明の光学素子と、前記光学素子の前記光記録媒体側に配置されたn/4波長板(ここでnは奇数)と、前記n/4波長板の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、前記光源から出射された光が、前記コリメータレンズによって実質的に平行光にされ、前記光学素子を透過して、前記n/4波長板によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、前記光記録媒体で反射された光が、前記対物レンズによって集光され、前記n/4波長板によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換され、前記光学素子によって回折された後、前記コリメータレンズによって前記受光部に集光され、前記受光部が、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッドである。
【0029】
14の本発明は、光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、前記光源の前記光記録媒体側に配置されたコリメータレンズと、前記コリメータレンズの前記光記録媒体側に配置された第〜第11のいずれかの本発明の光学素子と、前記光学素子の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、前記光源から出射された光が、前記コリメータレンズによって実質的に平行光にされ、前記光学素子によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、前記光記録媒体で反射された光が、前記対物レンズによって集光され、前記光学素子によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換されて回折された後、前記コリメータレンズによって前記受光部に集光され、前記受光部が、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッドである。
【0030】
15の本発明は、光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、前記光源の前記光記録媒体側に配置された第11の本発明の光学素子と、前記光学素子の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、前記光源から出射された光が、前記光学素子によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、前記光記録媒体で反射された光が、前記対物レンズによって集光され、前記光学素子によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換されて回折された後、前記受光部に入射され、前記受光部が、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッドである。
【0031】
16の本発明は、前記光学素子が、前記コリメータレンズまたは前記対物レンズと一体化されていることを特徴とする第14または第15の本発明の光ヘッドである。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1の実施の形態における光学素子の断面図である。図1において、1はX面のニオブ酸リチウム基板、2および3はニオブ酸リチウム基板1をプロトン交換して形成されたプロトン交換層である。なお、本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、ニオブ酸リチウム基板1は本発明の基板に、プロトン交換層2は本発明のイオン交換層に、プロトン交換層3は本発明の応力補正層に、それぞれ対応するものである。
【0035】
ここで、偏光分離素子として機能する面(図1のプロトン交換層2が形成されている側の面)をA面とし、その裏面(図1のプロトン交換層3が形成されている側の面)をB面とする。
【0036】
ニオブ酸リチウム基板1のA面の所定の部分に周期的なプロトン交換層2が所定の深さで形成されており、このプロトン交換層2の表面がニオブ酸リチウム基板1の表面に比べて所定の深さだけ深くなっているので特開平5−196813号公報に開示されているように偏光分離素子としての性質を持つ。
【0037】
前述したように、プロトン交換層2は元の基板に比べて膨張しようとする力を内部に有しているため、プロトン交換層2が存在する面(A面)側が凸になるように反ってしまう(ここで凸に反らす力を正の応力と呼ぶ)。そこで、偏光分離素子として働く面(A面)の裏面(B面)上にプロトン交換層3を形成することにより、A面で生じる正の応力をB面で生じる正の応力でキャンセルすることで光学素子そのものは反らないようにすることができる。
【0038】
ここで、A面側のプロトン交換層2の深さはその光学素子の特性を満足するような深さになるが、B面のプロトン交換層3の深さはA面側のプロトン交換層2の体積とほぼ等しくなるような深さにすればよい。ここで、A面側のプロトン交換層の体積は次のようにして決まる。まず、プロトン交換の深さは特開平5−196813号公報に開示されているように偏光分離素子として働くための深さになる。また、面積は光ヘッドの光学設計に応じて決まる。これらより、A面側のプロトン交換層2の体積は決定される。また、B面側は偏光分離素子として働かないようにするために全面をプロトン交換するので、A面側に比べてB面側はプロトン交換層の面積が広くなるためプロトン交換層の深さは浅くなる。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれば、偏光分離素子として働く面の裏面全体にプロトン交換層を形成する事により、偏光分離素子として働く面で生じる反ろうとする力を裏面のプロトン交換層で生じる反ろうとする力でキャンセルすることにより光学素子そのものには反りがないようにすることができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、ニオブ酸リチウム基板の表面に対してプロトン交換層の表面が凹である光学素子について述べたが、本実施の形態における光学素子の変形例として、偏光分離機能を有する構造が周期的なプロトン交換層の上に誘電体膜20が堆積されたもの(図2)や、プロトン交換層の表面に対してニオブ酸リチウムの表面が凹であるもの(図3)や、プロトン交換がなされていないニオブ酸リチウム上に誘電体膜40が堆積されたもの(図4)であっても(特開昭63−314502号公報や特開平4−219701号公報参照)、図2〜図4のように、裏面に反りを防止するプロトン交換層3を全面に施せば同等の効果が得られる。
【0041】
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【0042】
まず、X面のニオブ酸リチウム基板1の表裏両面(表面(上面)が図1のA面に、裏面(下面)が図1のB面に、それぞれ対応する)全面にタンタル50、51を蒸着し(図5(a))、タンタル50上にフォトリソグラフィによりレジスト52のパターンを形成し(図5(b))、このレジスト52をマスクとしてエッチングによりタンタル50をパターニングする(図5(c))。なお、図5(a)〜図5(c)で示した工程は、本発明のマスクパターン形成工程に対応するものである。
【0043】
次に、パターニングされたタンタル50をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより偏光分離機能を有するために必要な深さだけプロトン交換層2を形成し(図5(d);本発明のイオン交換層形成工程に対応)、マスク用及び保護用タンタルを剥離して(図5(e))、プロトン交換層2が形成された面全面にタンタル53を蒸着し(図5(f))、230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより反り防止用プロトン交換層3を形成する(図5(g);本発明の応力補正層形成工程に対応)。
【0044】
最後に、プロトン交換層2をフッ酸を含むエッチング液によりエッチングすることによって、プロトン交換層2の表面とニオブ酸リチウム基板1の表面との高低差を調整する(図5(h);本発明の高低差調整工程に対応)。
【0045】
ここで、図5(f)に示された工程では成膜を行っているため基板が加熱される可能性があり、また、図5(g)で示された工程においては熱処理が存在するため、図5(d)で示された工程で形成された偏光分離用プロトン交換層2の深さが熱拡散により深くなるため、偏光分離のための最適なプロトン交換深さがずれる可能性がある。そこで、図5(f)及び(g)の工程で生じる偏光分離用プロトン交換層2のプロトン交換深さの最適条件からのずれを予め見積もって、図5(d)に示される工程を行えば所望の性能を有する光学素子が製造できる。
【0046】
本実施の形態における光学素子の製造方法では、ウェハー状のニオブ酸リチウム基板上に多数の素子を形成した後にスクライブすることができるため、低コストで大量生産に向いている。また、反り防止用プロトン交換層3と偏光分離用プロトン交換層2を別々に形成するためそれぞれの深さの管理が行いやすい。
【0047】
なお、本実施の形態における光学素子の製造方法は、図1で示した本実施の形態における光学素子を製造するものであるとして説明したが、図2〜図4で示した本実施の形態における光学素子の変形例を製造する場合は、図5(h)で示した工程の替わりに、図2の変形例を製造する場合はプロトン交換層2上に誘電体膜20を形成する工程を、図3の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域を選択的にエッチングする工程を、図4の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域上に誘電体膜20を形成する工程を、それぞれ実施する。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、光学素子の製造方法の工程が異なることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0049】
本実施の形態における光学素子の構成は、図1で示した第1の実施の形態における光学素子の構成と同じである。また、図2〜図4で示した変形例についても、本実施の形態における光学素子に適用できる。
【0050】
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について、図6を用いて説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【0051】
まず、X面のニオブ酸リチウム基板1の表面(表面(上面)が図1のA面に、裏面(下面)が図1のB面に、それぞれ対応する)全面にタンタル60を蒸着する(図6(a))。次に、230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより反り防止用のプロトン交換層3を所定の深さになるように形成する(図6(b);本発明の応力補正層形成工程に対応)。
【0052】
次に、プロトン交換層3上全面にタンタル61を蒸着する(図6(c))。
【0053】
次に、タンタル60の表面にフォトリソグラフィによりレジスト62のパターンを形成し(図6(d))、このレジスト62をマスクとしてエッチングによりタンタル60をパターニングする(図6(e))。なお、図6(a)、図6(d)、図6(e)で示した工程は、本発明のマスクパターン形成工程に対応するものである。
【0054】
次に、パターニングされたタンタル60をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより偏光分離機能を有するために必要な深さだけプロトン交換層2を形成する(図6(f);本発明のイオン交換層形成工程に対応)。
【0055】
最後に、タンタル60、61を除去して、プロトン交換層2をフッ酸を含むエッチング液によりエッチングすることによって、プロトン交換層2の表面とニオブ酸リチウム基板1の表面との高低差を調整する(図6(g);本発明の高低差調整工程に対応)。
【0056】
ここで、図6(f)に示された工程において熱処理が存在するため、図6(b)で示された工程で形成された反り防止用プロトン交換層3の深さが熱拡散により深くなるため、反り防止のための最適なプロトン交換深さがずれる可能性がある。そこで、図6(f)の工程で生じる反り防止用プロトン交換層3のプロトン交換深さの最適条件からのずれを予め見積もって、図6(b)に示されるプロトン交換層3を形成する工程を行えば所望の性能を有する光学素子が製造できる。
【0057】
本実施の形態における光学素子の製造方法では、第1の実施の形態における光学素子の製造方法に比べてタンタルを剥離する工程がないため、第1の実施の形態における光学素子の製造方法よりも工程が簡略化でき低コストなものとなる。
【0058】
また、本実施の形態における光学素子の製造方法では、第1の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、ウェハー状のニオブ酸リチウム基板上に多数の素子を形成した後にスクライブすることができるため、低コストで大量生産に向いている。また、反り防止用プロトン交換層3と偏光分離用プロトン交換層2を別々に形成するためそれぞれの深さの管理が行いやすい。
【0059】
なお、本実施の形態における光学素子の製造方法は、図1で示した光学素子を製造するものであるとして説明したが、第1の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、図2〜図4で示した光学素子を製造する場合は、図6(g)で示した工程の替わりに、図2の変形例を製造する場合はプロトン交換層2上に誘電体膜20を形成する工程を、図3の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域を選択的にエッチングする工程を、図4の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域上に誘電体膜20を形成する工程を、それぞれ実施する。
【0060】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、光学素子の製造方法の工程が異なることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0061】
本実施の形態における光学素子の構成は、図1で示した第1の実施の形態における光学素子の構成と同じである。また、図2〜図4で示した変形例についても、本実施の形態における光学素子に適用できる。
【0062】
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について、図7を用いて説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【0063】
まず、X面のニオブ酸リチウム基板1の表面(表面(上面)が図1のA面に、裏面(下面)が図1のB面に、それぞれ対応する)全面にタンタルオキサイド70を蒸着する(図7(a))。
【0064】
次に、タンタルオキサイド70を蒸着した面の裏面側全面にタンタル71を蒸着し(図7(b))、タンタル71の表面にフォトリソグラフィによりレジスト72のパターンを形成し(図7(c))、このレジスト72をマスクとしてエッチングによりタンタル71をパターニングする(図7(d))。なお、図7(b)〜図7(d)で示した工程は、本発明のマスクパターン形成工程に対応するものである。
【0065】
次に、パターニングしたタンタル71をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより偏光分離機能を有するために必要な深さだけプロトン交換層2、3を形成する(図7(e);本発明のイオン交換層形成工程および本発明の応力補正層形成工程に対応)。
【0066】
最後に、タンタル71を除去して、プロトン交換層2をフッ酸を含むエッチング液によりエッチングすることによって、プロトン交換層2の表面とニオブ酸リチウム基板1の表面との高低差を調整する(図7(f);本発明の高低差調整工程に対応)。
【0067】
ここで、図7(e)においては、プロトン交換層2と同時に、プロトン交換層3がタンタルオキサイドで保護した部分に形成される。このタンタルオキサイドで保護した面にプロトン交換層が形成される理由は、ピロ燐酸がタンタルオキサイド膜中にしみ込んでいくからである。ただし、このしみ込みによるプロトン交換層の形成は、タンタルオキサイドの蒸着膜のボイドの大きさ及びその数とピロ燐酸の分子の大きさに依存する。図8に、タンタルオキサイドの膜厚とタンタルオキサイドで保護した部分に形成されるプロトン交換層の深さのグラフを示す。このグラフに示されるようにタンタルオキサイドの膜厚に応じてプロトン交換層3の深さを任意に変えることができる。したがって、反り防止用プロトン交換層3を偏光分離機能用プロトン交換層2を形成するのと同時に形成することができる。
【0068】
本実施の形態の光学素子の製造方法では、蒸着回数は、第2の実施の形態における光学素子の製造方法と同じであるが、プロトン交換を行う工程の数が第1および第2の実施の形態における光学素子の製造方法に比較して少ないため、より低コストで同じ光学素子を形成することができる。また、本実施の形態における光学素子の製造方法では、第1および第2の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、ウェハー状のニオブ酸リチウム基板上に多数の素子を形成した後にスクライブすることができるため、低コストで大量生産に向いている。ただし、反り防止用プロトン交換層3と偏光分離用プロトン交換層2を同時に形成するため、双方の深さを所定の値にするような管理が必要である。
【0069】
なお、本実施の形態では、反り防止用プロトン交換層の形成をタンタルオキサイドを用いて拡散速度を落として偏光分離用プロトン交換層の形成と同時に行っているが、タンタルオキサイド以外であってもピロ燐酸がしみこむような材料(たとえば二酸化ケイ素や非常に薄いタンタル等)であれば何ら問題はない。
【0070】
なお、本実施の形態における光学素子の製造方法は、図1で示した光学素子を製造するものであるとして説明したが、第1および第2の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、図2〜図4で示した光学素子を製造する場合は、図7(F)で示した工程の替わりに、図2の変形例を製造する場合はプロトン交換層2上に誘電体膜20を形成する工程を、図3の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域を選択的にエッチングする工程を、図4の変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域上に誘電体膜20を形成する工程を、それぞれ実施する。
【0071】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第2の実施の形態と異なるのは、本発明の応力補正層の配置に関する点のみであり、それ以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第2の実施の形態と同じとし、第2の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第2の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
図9は、本発明の第4の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図9において、偏光分離素子として機能する面(図9のプロトン交換層2が形成されている側の面)をC面とし、その裏面(図9のプロトン交換層3が形成されている側の面)をD面とする。図1で示した光学素子がB面全面にプロトン交換層3が形成されているのに対し、本実施の形態における光学素子は、図9に示すように、プロトン交換層3がD面の一部のみに形成されている。
【0072】
図10は、本発明の第4の実施の形態における光学素子のD面側の平面図である。図10に示すように、プロトン交換層3は、D面側において、C面側にプロトン交換層2のパターンがある部分以外の部分に形成されている。
【0073】
前述したように、プロトン交換層2は元の基板に比べて膨張しようとする力を内部に有しているためプロトン交換層2が存在する面(C面)側が凸になるように反ってしまう。そこで、偏光分離素子として働く面(C面)の裏面(D面)上にプロトン交換層3を形成することにより、C面で生じる正の応力をD面で生じる正の応力でキャンセルすることで光学素子そのものは反らないようにすることができる。
【0074】
ここで、C面上のプロトン交換層2の深さはその光学素子の特性を満足するような深さになるが、D面のプロトン交換層3の深さはC面側のプロトン交換層2の体積とほぼ等しくなるような深さにすればよい。ここで、C面側のプロトン交換層2の体積は次のようにして決まる。まず、プロトン交換の深さは特開平5−196813号公報に開示されているように偏光分離素子として働くための深さになる。また、面積は光ヘッドの光学設計に応じて決まる。これらより、C面側のプロトン交換層2の体積は決定する。また、D面側においては、C面側のプロトン交換層2のパターンのある部分の裏側に相当する部分が偏光分離素子として働かないようにするために、C面側のプロトン交換層2のパターンのある部分の裏側以外の所定の部分をプロトン交換するので、プロトン交換層3の面積に応じてD面側のプロトン交換層3の深さは、C面側のプロトン交換層2の深さに比べて深くなったり浅くなったりもしくは等しくなる。例えば、図10はD面側のC面のプロトン交換層2のパターンがある部分の裏面以外をすべてプロトン交換した場合であるが、図11に示すように、D面側のC面のプロトン交換層2のパターンがある部分以外の一部分をプロトン交換するとしてもよいし、図12に示すように、D面側のC面のプロトン交換層2のパターンがある部分の裏面すべてをプロトン交換するとしてもよい(図10〜図12はすべて周期的なプロトン交換がなされた面の裏側(D面側)より見た図であり、点線の円内が周期的なプロトン交換層が存在する面である)。ここで、図12の場合は必ずD面側のプロトン交換層3の深さが浅くなる。また、図10や図11で示した場合は設計によりD面側のプロトン交換層2とC面側のプロトン交換層3の深さを同じにすることができるので、こうすると、表面と裏面のプロトン交換層を同時に形成しやすくなる。
【0075】
以上のように、本実施の形態によれば、偏光分離素子として働く面の裏面の一部分にプロトン交換層を形成する事により、偏光分離素子として働く面で生じる反りを裏面のプロトン交換層で生じる反りでキャンセルすることにより光学素子そのものには反りがないようにすることができる。さらに、図10及び図11に示した光学素子では偏光分離機能を有する面のプロトン交換層のパターンが無い部分の裏側のみをプロトン交換しているので偏光分離機能の特性を劣化させることはあり得ない。
【0076】
なお、本実施の形態では、D面上の光が透過する部分以外の所定の部分やD面上の光が透過する部分のみにプロトン交換を施したが、D面上の光が透過する部分全面と光が透過しない部分の所定の部分をプロトン交換しても何らかまわない。
【0077】
また、本実施の形態における光学素子の変形例として、本実施の形態における光学素子のC面側の構成に替えて、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のA面側の構成を適用できる。それぞれの場合の詳細説明は、第1の実施の形態において行った説明に準じる。
【0078】
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について、図13を用いて説明する。図13は、本発明の第4の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【0079】
まず、X面のニオブ酸リチウム基板1の表裏両面(表面(上面)が図9のC面に、裏面(下面)が図9のD面に、それぞれ対応する)全面にタンタル130、131を蒸着する(図13(a))。次に、タンタル130を蒸着した面にフォトリソグラフィによりレジスト132のパターンを形成し(図13(b))、このレジスト132をマスクとしてエッチングによりタンタル130をパターニングし(図13(c))、このパターニングしたタンタル130をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより反り防止用プロトン交換層3を必要な深さだけ形成する(図13(d))。なお、図13(a)で示した工程のうちのタンタル130を蒸着する工程および図13(b)〜図13(d)で示した工程は、本発明の応力補正層形成工程に対応するものである。また、上記パターンニングの形状は、例えば、図12〜図14のいずれかの形状が選択されるものとする。
【0080】
次に、プロトン交換層3を形成した領域を含めてD面上全面にタンタル133を蒸着し(プロトン交換層3が形成されていない領域では、タンタル130上にタンタル133が積層される)、C面のタンタル131の表面にフォトリソグラフィによりレジスト134のパターンを形成し(図13(e))、このレジスト134をマスクとしてエッチングによりタンタル131をパターニングする(図13(f))。なお、図13(a)で示した工程のうちのタンタル131を蒸着する工程、図13(e)で示した工程のうちのレジスト134のパターンを形成する工程および図13(f)で示した工程は、本発明のマスクパターン形成工程に対応するものである。
【0081】
次に、パターニングしたタンタル131をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより偏光分離機能を有するために必要な深さだけプロトン交換層2を形成する(図13(g);本発明のイオン交換層形成工程に対応)。
【0082】
最後に、タンタル130、131、133を除去して、プロトン交換層2をフッ酸を含むエッチング液によりエッチングすることによって、プロトン交換層2の表面とニオブ酸リチウム基板1の表面との高低差を調整する(図13(h);本発明の高低差調整工程に対応)。
【0083】
本実施の形態における光学素子の製造方法は、第2の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、ウェハー状のニオブ酸リチウム基板上に多数の素子を形成した後にスクライブすることができるため、低コストで大量生産に向いている。
【0084】
なお、本実施の形態では反り防止用プロトン交換層3を偏光分離機能用プロトン交換層2より先に形成しているが、この順番が逆であってもよい、この場合は、大量生産に向いた製造方法となる。更に、上述したように反り防止用プロトン交換層3と偏光分離機能用プロトン交換層2の両プロトン交換層の深さが等しいときは、マスク金属をタンタルとして表裏両面を同時にプロトン交換することができる。この場合、プロトン交換の回数が、図13で示した本実施の形態における光学素子の製造方法より少ないので、より低コストな製造方法となる。
【0085】
なお、本実施の形態における光学素子の製造方法は、図9で示した光学素子(D面については、図10〜図14のいずれか)を製造するものであるとして説明したが、第1の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、図2〜図4のA面側の構成をD面側に適用した変形例を製造する場合は、図12(h)で示した工程の替わりに、図2に対応する変形例を製造する場合はプロトン交換層2上に誘電体膜20を形成する工程を、図3に対応する変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域を選択的にエッチングする工程を、図4に対応する変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域上に誘電体膜20を形成する工程を、それぞれ実施する。
【0086】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、本発明の交換層反射防止膜および補正層反射防止膜を備えることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0087】
図14は、本発明の第5の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図14に示すように、第1の実施の形態における光学素子のA面上に二酸化ケイ素膜141(本発明の交換層反射防止膜に対応)が、B面上に二酸化ケイ素膜140(本発明の補正層反射防止膜に対応)がそれぞれ形成されたものである。
【0088】
まず、二酸化ケイ素膜140について述べる。この二酸化ケイ素膜140はプロトン交換が施されているニオブ酸リチウム基板1の表面での入射ビームの反射を防止するためのものである。今、プロトン交換が施されているニオブ酸リチウムの屈折率をnPLN、空気の屈折率をnAIRとすると、反射防止膜の屈折率n1は数1のようになる。
【0089】
【数1】
1=(nPLN×nAIR1/2
この数1に、nPLN=2.12、nAIR=1を代入すると、反射防止膜の屈折率n1は1.46となる。ここで、二酸化ケイ素膜の屈折率は1.45であるので、プロトン交換されたニオブ酸リチウム基板1の表面での反射を防止する条件を満足し、この二酸化ケイ素膜140の厚さを(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)とすると二酸化ケイ素膜140は反射防止膜となる。
【0090】
次に、二酸化ケイ素膜141について述べる。この二酸化ケイ素膜141はプロトン交換が周期的に施されているニオブ酸リチウム基板1の表面での入射ビームの反射を防止するためのものである。今、プロトン交換が周期的に施されているニオブ酸リチウムの屈折率をnLN’、空気の屈折率をnAIRとすると、反射防止膜の屈折率n2は数2のようになる。
【0091】
【数2】
2=(nLN’×nAIR1/2
ここで、周期的なプロトン交換がなされているニオブ酸リチウムの屈折率nLN’は、プロトン交換がなされているニオブ酸リチウムの屈折率とプロトン交換がなされていないニオブ酸リチウムの屈折率の平均として計算でき、nLN’=2.19となる。この値とnAIR=1を数2に代入すると、反射防止膜の屈折率n2は1.48となる。ここで、二酸化ケイ素膜の屈折率は1.45であるので、プロトン交換が周期的に施されたニオブ酸リチウム基板1の表面での反射を防止する条件を満足し、この二酸化ケイ素膜141の厚さを(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)とすると二酸化ケイ素膜141は反射防止膜となる。
【0092】
以上のように二酸化ケイ素膜を周期的なプロトン交換が施されたニオブ酸リチウム基板上(図14のプロトン交換層2が形成されている側の面上)及びプロトン交換が施されたニオブ酸リチウム基板上(図14のプロトン交換層3が形成されている側の面上)に設けることにより、素子での反射を実質的に完全に防止することができる。
【0093】
また、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のA面上に、本発明の交換層反射防止膜としての二酸化ケイ素膜が、B面上に本発明の補正層反射防止膜として、例えば二酸化ケイ素膜がそれぞれ形成された変形例としても、同等の効果が得られる。
【0094】
また、本発明の交換層反射防止膜および補正層反射防止膜の材料として、本実施の形態においては、二酸化ケイ素を用いるとして説明したが、所望の屈折率を有する材料であれば、これに限るものではない。
【0095】
さらに、本発明の交換層反射防止膜および補正層反射防止膜は、本実施の形態においては、単層の反射防止膜であるとして説明したが、これに限るものではなく、多層の反射防止膜であってもよい。
【0096】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、本発明の複屈折層を備えることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0097】
図15は、本発明の第6の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図15に示すように、第1の実施の形態における光学素子のB面上に水晶150(本発明の複屈折層に対応)が形成されたものである。
【0098】
前述したように、偏光分離素子を動作させるために往路及び復路で光ビームの偏光方向を互いに直交させるためのn/4波長板(ここでnは奇数)が必須であり、光ヘッドの更なる小型化を行うためには偏光分離素子とn/4波長板を貼り合わせることが必要となる。更に、光ヘッドに組み込む際の調整工程の削減により光ヘッドの低コスト化をはかるためにも光学素子を一体化することが必要である。
【0099】
ここで、水晶150は1軸性の複屈折を有し、所定の厚みによりn/4波長板になることは公知の事実である。そこで、偏光分離素子と水晶で形成されるn/4波長板を貼り合わせる場合、従来の偏光分離素子では周期的なプロトン交換層のため反りが発生し、偏光分離素子を形成したウェハーと水晶で形成されているn/4波長板のウェハーを貼り合わせるのが困難である。しかし、本実施の形態における光学素子は、周期的なプロトン交換層2で発生する正の応力が裏面に形成したプロトン交換層3で発生する正の応力でキャンセルされているのでウェハーそのものには反りが生じない。したがって、水晶150で形成されるn/4波長板を貼り合わせる場合、ウェハー同士を貼ることが容易であるため大量生産に向き、ウェハー全体にわたって透過波面精度が良好となる。
【0100】
以上のように、周期的なプロトン交換層を有する面の裏面に、プロトン交換層を設け、その上にn/4波長板を貼り合わせることにより透過波面精度が良好な光学素子が形成でき、更に透過波面精度が良好となる。
【0101】
なお、本発明の複屈折層の材料として、本実施の形態においては、水晶を用いるとして説明したが、雲母等の複屈折を有する材料であれば、これに限るものではない。
【0102】
また、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のB面上に、本発明の複屈折層として、例えば水晶が形成された変形例としても、同等の効果が得られる。
【0103】
(第7の実施の形態)
次に、本発明の第7の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、本発明の複屈折層を備えることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0104】
図16は、本発明の第7の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図16に示すように、第1の実施の形態における光学素子のB面上に、Ta25がニオブ酸リチウム基板1の法線に対して70°の角度から蒸着された斜め蒸着膜160(本発明の複屈折層に対応)が形成されたものである。
【0105】
図16で示された本実施の形態における光学素子は、周期的なプロトン交換層2があり、更にその裏面にプロトン交換層3を形成しているので、上述したように、透過波面精度が良好で、偏光分離機能を有している。また、特開昭63−312970号公報に開示されているようにTa25膜が基板に対して斜めに蒸着されて形成されているのでこの膜は複屈折膜となる。本実施の形態では、基板の法線に対して70°の方向より蒸着している(図17参照)ので、常光に対する屈折率と異常光に対する屈折率の差である複屈折△nが0.07となり1/4波長板として作用するために膜の厚さは2.6μmになっている。
【0106】
次に、第6の実施の形態における光学素子と本実施の形態における光学素子の違いについて述べる。第6の実施の形態における光学素子は、1/4波長板を水晶の結晶で形成しており、その厚みのコントロールを研磨を用いて行っているため、機械的強度を保つためには、厚みを約0.5mm以下にする事が困難である。これに対し、本実施の形態における光学素子は、蒸着によって厚みを精度良くコントロールすることができるので、1/4波長板の性質を出すための最小の厚さである2.6μmの蒸着膜を形成することが可能である。したがって、本実施の形態における光学素子においては、光学素子そのものを非常に薄くすることができる。
【0107】
ここで、本実施の形態における光学素子の光ビームの入射角依存性と、第6の実施の形態における光学素子の光ビームの入射角依存性とを比較してみる。水晶で形成した1/4波長板の複屈折を△n1、厚みをd1、入射する光ビームの波長をλ、入射する光ビームの入射角をθ1(図18参照)とすると常光と異常光のこの素子を透過するときの光路差x1は数3のようになる。
【0108】
【数3】
1=△n1・d1/cosθ1
ここで、△n1・d1はこの素子が1/4波長板としての性質を持つので、△n1・d1=(2N+1)λ/4(Nは0以上の整数)となり、これを数3に代入すると数4が得られる。
【0109】
【数4】
1=(2N+1)λ/4cosθ1
よって、θ1=0のときからの光路差のずれ△x1は数5のようになる。
【0110】
【数5】
△x1=(2N+1)λ(1/cosθ1−1)/4
また、本実施の形態における光学素子の斜め蒸着膜の複屈折を△n2、厚みをd2、入射する光ビームの波長をλ、入射する光ビームの入射角をθ2(図18のθ1と同じ関係)とすると常光と異常光のこの素子を透過するときの光路差x2は数6のようになる。
【0111】
【数6】
2=△n2・d2/cosθ2
ここで、△n2・d2はこの斜め蒸着膜が1/4波長板としての性質を持つので、△n2・d2=λ/4となり、これを数6に代入すると数7が得られる。
【0112】
【数7】
2=λ/4cosθ2
よって、θ2=0のときからの光路差のずれ△x2は数8のようになる。
【0113】
【数8】
△x2=λ(1/cosθ2−1)/4
ここで、水晶で作られた1/4波長板の厚みは0.5mm程度、今0.499mmとするとN=11となり、これを数5に代入すると数9が得られる。
【0114】
【数9】
△x1=23λ(1/cosθ1−1)/4
△x1と△x2が等しくなるときのθ1とθ2との関係は数8と数9より数10のような関係となる。
【0115】
【数10】
23(1/cosθ1−1)=(1/cosθ2−1)
数10より、θ1が1°ずれたときの光路差のずれと等しくなるためのθ2は4.8°となり、本実施の形態における光学素子は、第6の実施の形態における光学素子と比較して、入射角依存性が小さいことがわかる。
【0116】
また、斜め蒸着膜160の複屈折△n2は入射角によらず一定としたが、実際は入射角に依存している。しかし、入射角が非常に小さいときはこの依存性は小さいものと考えられる。また、特開昭63−132203号公報に開示されているように、斜め蒸着膜160を2層構造にすれば、この複屈折の入射角依存性もほとんどないものにできるので、光ビームの入射角による1/4波長板としての性質の劣化を更に防ぐことができる。
【0117】
以上のように、本実施の形態によれば、偏光分離素子に誘電体材料を斜めに蒸着することにより平面精度の良い光学素子を形成することができ、水晶で作られた1/4波長板とを貼り合わせた光学素子に比べて非常に薄く、更に、入射角依存性の小さい素子が形成できる。
【0118】
なお、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のB面上に、本発明の複屈折層として、斜め蒸着膜が形成された変形例としても、同等の効果が得られる。
【0119】
次に、本実施の形態における光学素子の製造方法について、図19を用いて説明する。図19は、本発明の第7の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【0120】
まず、X面のニオブ酸リチウム基板1の表裏両面(表面(上面)が図16の上面(図1のA面)に、裏面(下面)が図16の下面(図1のB面)に、それぞれ対応する)全面にタンタル190、191を蒸着し(図19(a))、タンタル190上にフォトリソグラフィによりレジスト192のパターンを形成し(図19(b))、このレジスト192をマスクとしてエッチングによりタンタル190をパターニングする(図19(c))。なお、図19(a)〜図19(c)で示した工程は、本発明のマスクパターン形成工程に対応するものである。
【0121】
次に、パターニングされたタンタル190をマスクとして230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより偏光分離機能を有するために必要な深さだけプロトン交換層2を形成し(図19(d);本発明のイオン交換層形成工程に対応)、マスク用及び保護用タンタルを剥離して(図19(e))、プロトン交換層2が形成された面全面にタンタル193を蒸着し(図19(f))、230℃のピロ燐酸中で熱処理を行うことにより反り防止用プロトン交換層3を形成する(図19(g);本発明の応力補正層形成工程に対応)。
【0122】
次に、プロトン交換層3をフッ酸を含むエッチング液によりエッチングすることによって、プロトン交換層2の表面とニオブ酸リチウム基板1の表面との高低差を調整する(図19(h);本発明の高低差調整工程に対応)。
【0123】
最後に、反り防止用プロトン交換層3の面上にタンタルオキサイドを、図17に示されているように基板の法線に対してθ=70度の方向から蒸着して、斜め蒸着膜160を形成する(図19(i);本発明の蒸着膜形成工程に対応)。
【0124】
ここで、斜め蒸着膜160を形成するために、図19(h)の工程でできた素子を高温で加熱しなければならない。また、図19(f)に示された工程では成膜を行っているため基板が加熱される可能性があり、また、図19(g)で示された工程においては熱処理が存在するため、図19(d)で示された工程で形成された偏光分離用プロトン交換層の深さが熱拡散により深くなるため、偏光分離のための最適なプロトン交換深さがずれる可能性がある。そこで、図19(f)及び(g)及び(h)の工程で生じる偏光分離用プロトン交換層2のプロトン交換深さの最適条件からのずれを予め見積もって、図19(d)に示される工程を行えば所望の性能を有する光学素子が製造できる。
【0125】
本実施の形態における光学素子の製造方法は、斜め蒸着膜160の面積には限界がないので、ウェハー状のニオブ酸リチウム基板に多数の素子を形成した後にスクライブすることができ、低コストで大量生産に向いている。また、反り防止用プロトン交換層と偏光分離用プロトン交換層を別々に形成するためそれぞれの深さの管理が行いやすい。
【0126】
なお、本実施の形態では偏光分離機能プロトン交換層2を斜め蒸着膜160より先に形成しているが、斜め蒸着膜160を先に形成しても、大量生産に向いた製造方法であることに変わりはない。
【0127】
また、上述した第1〜第4の実施の形態における光学素子の製造方法、および本実施の形態における光学素子の製造方法では、いずれもプロトン交換層2のエッチングはフッ酸を用いたウェットエッチングで行っているがフッ素ラジカルを用いたドライエッチングを行っても何等問題はなく、更にこの方法であれば反り防止用プロトン交換層がエッチングされることがないので素子の特性の管理が行いやすい。更に、上記のそれぞれの実施の形態では、プロトン交換の方法としてタンタルをマスクとしてピロリン酸で熱処理しているが、金属をマスクとして酸で熱処理する方法ならばこの限りではなく、例えば従来用いられているアルミをマスクとして安息香酸中で処理を行ってもよい。
【0128】
なお、本実施の形態における光学素子の製造方法は、図16で示した光学素子を製造するものであるとして説明したが、第1の実施の形態における光学素子の製造方法と同様に、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のB面上に斜め蒸着膜が形成されたものを製造する場合は、図19(h)で示した工程の替わりに、図2に対応する変形例を製造する場合はプロトン交換層2上に誘電体膜20を形成する工程を、図3に対応する変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域を選択的にエッチングする工程を、図4に対応する変形例を製造する場合はA面のプロトン交換層2以外の領域上に誘電体膜20を形成する工程を、それぞれ実施する。
【0129】
(第8の実施の形態)
次に、本発明の第8の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第7の実施の形態と異なるのは、本発明の交換層反射防止膜、隣接層間反射防止膜および複屈折層反射防止膜を備えることに関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第7の実施の形態と同じとし、第7の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第7の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0130】
図20は、本発明の第8の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図20に示すように、第7の実施の形態における光学素子のプロトン交換層2が形成されている側の面上に二酸化ケイ素膜200(本発明の交換層反射防止膜に対応)が、プロトン交換層3と斜め蒸着膜160との間に二酸化ケイ素とタンタルオキサイドからなる混合膜201(本発明の隣接層間反射防止膜に対応)が、斜め蒸着膜160上にフッ化マグネシウム膜202(本発明の複屈折層反射防止膜に対応)がそれぞれ形成されたものである。
【0131】
まず、二酸化ケイ素膜200について述べる。この二酸化ケイ素膜200はプロトン交換が周期的に施されているニオブ酸リチウム基板1の表面での入射ビームの反射を防止するためのものである。今、プロトン交換が周期的に施されているニオブ酸リチウムの屈折率をnLN’、空気の屈折率をnAIRとすると、反射防止膜の屈折率n3は数11のようになる。
【0132】
【数11】
3=(nLN’×nAIR1/2
第5の実施の形態において説明したように、nLN’=2.19、nAIR=1であるから、これらを数11に代入すると、反射防止膜の屈折率n3は1.48となる。ここで、二酸化ケイ素膜の屈折率は1.45であるので、プロトン交換が周期的に施されたニオブ酸リチウム基板1の表面での反射を防止する条件を満足し、この二酸化ケイ素膜141の厚さを(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)とすると二酸化ケイ素膜200は反射防止膜となる。
【0133】
次に、二酸化ケイ素とタンタルオキサイドからなる混合膜201について述べる。この混合膜201は、プロトン交換層3プと斜め蒸着膜160との界面での入射ビームの反射を防止するためのものである。今、プロトン交換されたニオブ酸リチウム(プロトン交換層3)の屈折率をnPLN、Ta25の斜め蒸着膜160の屈折率をndとすると、反射防止膜の屈折率n4は数12のようになる。
【0134】
【数12】
4=(nPLN×nd1/2
この数12にnPLN=2.12、nd=1.5を代入すると反射防止膜の屈折率n4は1.78となる。ここで、二酸化ケイ素の屈折率は1.45、タンタルオキサイドを基板に対して垂直に蒸着された膜の屈折率は2であるので二酸化ケイ素とタンタルオキサイドからなる混合膜201はその組成比を適当に変えれば屈折率が1.78とすることが可能である。よって、混合膜201は組成を適当に選ぶことにより、プロトン交換層3と斜め蒸着膜160との界面での反射を防止する条件を満足し、この混合膜201の厚さを(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)とすると、混合膜201は反射防止膜となる。
【0135】
次に、フッ化マグネシウム膜202について述べる。このフッ化マグネシウム膜202は、斜め蒸着膜160の表面での入射ビームの反射を防止するためのものである。今、斜め蒸着膜160の屈折率をnd、空気の屈折率をnAIRとすると、反射防止膜の屈折率n5は数13のようになる。
【0136】
【数13】
5=(nd×nAIR1/2
この数13に、nd =1.5、nAIR =1を代入すると、反射防止膜の屈折率n3は、1.22となる。このように低屈折率で丈夫な薄膜層を蒸着できる理想的な物質はほとんど存在しない。しかし、フッ化マグネシウムは屈折率が1.38であり、この屈折率は十分に妥協できる数値である。よって、フッ化マグネシウム膜202は、斜め蒸着膜160の表面での反射を防止する条件を満足し、このフッ化マグネシウム膜202の厚さを(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)とするとフッ化マグネシウム膜202は反射防止膜となる。
【0137】
以上のように、プロトン交換層2が形成されている側の面上に二酸化ケイ素膜を、プロトン交換層3と斜め蒸着膜160との間に二酸化ケイ素とタンタルオキサイドからなる混合膜を、斜め蒸着膜160上にフッ化マグネシウム膜202をそれぞれ形成することにより、素子での反射を実質的に完全に防止することができる。
【0138】
なお、本発明の交換層反射防止膜、隣接層間反射防止膜および複屈折層反射防止膜の材料として、本実施の形態においては、それぞれ二酸化ケイ素、二酸化ケイ素とタンタルオキサイドの混合及びフッ化マグネシウムを用いるとして説明したが、所望の屈折率を有する材料であれば、これに限るものではない。
【0139】
さらに、本発明の交換層反射防止膜、隣接層間反射防止膜および複屈折層反射防止膜は、本実施の形態においては、単層の反射防止膜であるとして説明したが、これに限るものではなく、多層の反射防止膜であってもよい。
【0140】
また、斜め蒸着膜160は、蒸着の角度により複屈折及び屈折率が変化するので、適当な蒸着角度を選ぶと屈折率がプロトン交換が施されたニオブ酸リチウムと空気との界面での反射を防止するような値となり、かつ、厚みが(2N+1)λ/4(λは入射する光ビームの波長、Nは0以上の整数)で1/4波長板の性質を有するような複屈折を持たせることが可能である(アプライド・オプティックス28巻(1989年)第2466頁から第2482頁(APPLIED OPTICS Vol28(1989)P.2466−2482)参照)。このようにすれば、プロトン交換層3と斜め蒸着膜160との間もしくは斜め蒸着膜160上での反射を斜め蒸着膜160のみによって、防止できるようになる。したがって、本発明の隣接層間反射防止膜および複屈折層反射防止膜を設ける必要がなくなるので、光学素子の製造が簡略化され、また光学素子がさらに薄くなる。
【0141】
なお、第7の実施の形態および本実施の形態においては、いずれも斜め蒸着膜160の材料としてTa25を用いたが、WO3やBi23等の誘電体材料を用いても良く、更に、蒸着角度が30゜以上であれば良い(特開昭59−49508号公報や特開昭63−312970号公報参照)。
【0142】
また、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例に対応する第7の実施の形態における光学素子の変形例に、本実施の形態と同様に、本発明の交換層反射防止膜、隣接層間反射防止膜および複屈折層反射防止膜がそれぞれ形成された変形例としても、同等の効果が得られる。
【0143】
(第9の実施の形態)
次に、本発明の第9の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態が上述した第1の実施の形態と異なるのは、本発明の応力補正層に関する点のみであり、それ以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第1の実施の形態と同じとし、第1の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第1の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0144】
図21は、本発明の第9の実施の形態における光学素子の断面図である。本実施の形態における光学素子は、偏光分離素子として機能するものであり、図21において、210はアルミナ膜(本発明の応力補正層に対応)である。ここで偏光分離素子として機能する面(図21のプロトン交換層2が形成されている側の面)をE面とし、その裏面(図21のアルミナ膜210が形成されている側の面)をF面とする。
【0145】
前述したように、プロトン交換層2は元の基板に比べて膨張しようとする力を内部に有しているためプロトン交換層2が存在する面(E面)側が凸になるように反ってしまう。そこで、偏光分離素子として働く面(E面)の裏面(F面)上に正の熱膨張係数(熱がかかると体積が増える)をもつ膜であるアルミナ膜210を形成するものである。
【0146】
アルミナ膜210の成膜方法としては、例えば、電子ビーム蒸着が挙げられる。これは、ターゲットを電子ビームで溶かし、高温の分子を基板上にとばし固化させるものである。したがって、成膜時の基板温度が上がるため、熱膨張係数が正のものは成膜後で縮むことになり、凸になろうとする力(正の応力)が発生する。そこで、E面で生じる凸になろうとする力(正の応力)をF面で生じる凸になろうとする力(正の応力)でキャンセルすることで光学素子そのものは反らないようにすることができる。ここで、E面上のプロトン交換層の深さはその光学素子の特性を満足するような深さになるが、F面上のアルミナ膜の膜厚はE面側のプロトン交換層により生じる凸になろうとする力とほぼ等しくなるような膜厚にすればよい。
【0147】
以上のように本実施の形態によれば、偏光分離素子として働く面の裏面にアルミナ膜210を形成する事により、偏光分離素子として働く面で生じる反りを裏面のアルミナ膜で生じる反りでキャンセルすることにより光学素子そのものには反りがないようにすることができる。
【0148】
なお、本実施の形態では、本発明の応力補正層としてアルミナ膜を用いたが、同じ方向に反ろうとする力を持つ膜であれば何ら問題はない。また、本発明の応力補正層として、逆の方向に反ろうとする力(正の応力に対して負の応力と呼ぶ)を有する膜たとえば、負の熱膨張係数(温度が上がると体積が小さくなる)を持つ膜であるタンタルオキサイドをプロトン交換層がある面に形成すれば同じような効果が得られる。
【0149】
また、本実施の形態における光学素子の変形例として、本実施の形態における光学素子のE面側の構成に替えて、図2〜図4で示した第1の実施の形態における光学素子の変形例のA面側の構成を適用できる。それぞれの場合の詳細説明は、第1の実施の形態において行った説明に準じる。
【0150】
なお、本発明のイオン交換層は、上述した第1〜第9の実施の形態において、ニオブ酸リチウムのX面がイオン交換されたものであるとして説明したが、これに限るものではなく、ニオブ酸リチウムのY面がイオン交換されたものであるとしてよいし、更にニオブ酸リチウムの代わりにリチウムタンタレートやニオブ酸リチウムとリチウムタンタレートの混晶を用いるものでもよい。
【0151】
また、本発明の光学素子は、上述した第1〜第9の実施の形態において、本発明のイオン交換層によって、偏光分離を行うものであるとして説明したが、これに限るものではなく、例えば、本発明のイオン交換層によって、単に回折を行うものであるとしてよい、要するに、イオン交換が可能な結晶である基板と前記結晶のX面もしくはY面の所定の部分がイオン交換されたイオン交換層と、前記イオン交換層により前記基板に生じる応力を補正する応力補正層とを備えておればよい。
【0152】
また、本発明の応力補正層は、上述した第1〜第9の実施の形態において、本発明の基板のイオン交換層が形成されている面と反対側の面に形成されているとして説明したが、これに限るものではなく、例えば、本発明のイオン交換層が経されている面と同じ面、あるいは、その他の面に形成されているとしてもよい、要するに、イオン交換層により基板に生じる応力を補正するように形成されておればよい。
【0153】
また、本発明のイオン交換層は、上述した第1〜第9の実施の形態において、プロトン交換層であるとして説明したが、これに限るものではなく、プロトン交換層以外のイオン交換層であってもよい。
【0154】
(第10の実施の形態)
次に、本発明の第10の実施の形態を図面を参照して説明する。
図22は、本発明の第10の実施の形態における光ヘッドの構成図である。本実施の形態における光ヘッドは、本発明の光学素子のうち、偏光分離素子として機能するものであり、かつ、本発明の複屈折層を有していない光学素子、例えば、上述した第1〜第5、第9の実施の形態における光学素子(それらの変形例も含む)のいずれかを備える光ヘッドである。以下、第1の実施の形態における光学素子を備えるものとして説明する。
【0155】
図22において、221は光源、222はコリメータレンズ、223は第1の実施の形態における光学素子、224は1/4波長板、225は対物レンズ、226は光記録媒体、227は第1の光検出器、228は第2の光検出器である。ここで集光光学系は、コリメータレンズ222と対物レンズ225より構成されている。なお、1/4波長板224は本発明のn/4波長板に、第1の光検出器227および第2の光検出器228は本発明の光検出手段の複数の受光部に、それぞれ対応するものである。
【0156】
ここで、光源221は、例えば半導体レーザー素子で構成され、光記録媒体226の記録層に対し、記録再生用のコヒーレント光を出力する光源である。光学素子223は、常光線の透過率を100%、異常光線に対しては回折格子として作用して透過率を0%の特性を有し、透過波面精度が従来例の光学素子よりも良好なものである。コリメータレンズ222は、光源221から出射された光を平行光にするレンズである。1/4波長板224は、例えば水晶で構成され、光源221から出力される直線偏光の光を円偏光に変換すると共に、光記録媒体226の記録層で反射された光を照射時とは異なる方向の直線偏光に変換する非線形光学素子である。光検出器227は光記録媒体226で反射された光のうち、光学素子223で回折された+1次光を受光する光検出器である。また光検出器228は光記録媒体226で反射された光のうち、光学素子223で回折された−1次光を受光する光検出器である。なお、1/4波長板224は、n/4波長板(nは奇数)であってもよい。
【0157】
このように構成された光ヘッドの動作について、図22を用いて説明する。光源221から出射された直線偏光の光はコリメータレンズ222で平行光にされ、光学素子223を100%透過する。そしてこの光は1/4波長板224で円偏光の光に変換され、対物レンズ225により光記録媒体226上に集光される。
【0158】
次に、光記録媒体226から反射された円偏光の光は、対物レンズ225を透過した後、1/4波長板224により光源221から出射された光の偏光方向とは直交する方向の直線偏光の光に変換される。この直線偏光の光は光学素子223により回折され、コリメータレンズ222を透過し、回折の+1次光は光検出器227に入射され、回折の−1次光は光検出器228に入射される。
【0159】
ここで、光記録媒体226上における光ビームの合焦状態を示すフォーカス誤差信号及び光ビームの照射位置を示すトラッキング誤差信号の検出は、光学素子223の回折格子の格子ベクトルを場所により変化させ回折光の波面操作を行うことにより、従来のホログラム素子を用いた誤差信号の検出方法(例えば、特開昭62−137736号公報や特開昭63−229640号公報など)を適用できる。そして、図示していないフォーカス制御手段は上記した方法で得られたフォーカス誤差信号に基づき常に光ビームが合焦状態で光記録媒体226上に集光されるように対物レンズ225の位置をその光軸方向に制御し、図示していないトラッキング制御手段は上記した方法により得られたトラッキング誤差信号に基づき光ビームを光記録媒体226上の所望のトラックに集光されるように対物レンズ225の位置を制御する。また、第2の光検出器227からは光記録媒体226に記録された情報信号をも得ている。
【0160】
ここで、特開昭62−137736号公報や特開昭63−229640号公報などに述べられている回折格子を用いた光ヘッドでは往路でも回折格子を透過するので往路で回折光が生じ、これが迷光となり再生信号や誤差信号のノイズの原因となる。これに対して本実施の形態における光ヘッドでは、偏光方向により入射する光ビームを100%透過するかもしくは100%回折させることのできる光学素子223を用いているので往路で迷光を生じる等の問題はない。また、光学素子223の透過波面精度が上記したように小さいので対物レンズ225での集光状態が良好であり、従来例で述べた光ヘッドを用いたときに比べて再生信号のジッターが小さくなる。
【0161】
なお、本実施の形態における光ヘッドにおいて、光学素子223に替えて、本発明の光学素子のうち、偏光分離素子として機能するものであり、かつ、本発明の複屈折層を有する光学素子、例えば、上述した第6〜第8の実施の形態における光学素子(それらの変形例も含む)のいずれかの光学素子を備えるとすると、1/4波長板224が不要になると共に、1/4波長板の機能を有する複屈折層の調整は不必要であるので、光ヘッドの更なる低コスト化につながる。
【0162】
(第11の実施の形態)
次に、本発明の第11の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第10の実施の形態と同じとし、第10の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第10の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0163】
図23は、本発明の第11の実施の形態における光ヘッドの構成図である。本実施の形態における光ヘッドは、本発明の光学素子のうち、偏光分離素子として機能するものであり、かつ、本発明の複屈折層として斜め蒸着膜を有する光学素子、例えば、上述した第7、第8の実施の形態における光学素子(それらの変形例も含む)のいずれかを備える光ヘッドである。以下、第7の実施の形態における光学素子を備えるものとして説明する。
【0164】
図23において、231は第7の実施の形態における光学素子、232は光学素子231の斜め蒸着膜部分、233は光学素子231の偏光分離を行う周期的なプロトン交換層がある部分である。ここで、光学素子231は、斜め蒸着膜部分232が対物レンズ225側に、偏光分離を行う周期的なプロトン交換層がある部分233が光源221側になるように配置されている。集光光学系は対物レンズ225より構成されている。
【0165】
次に、本実施の形態における光ヘッドの動作について、図23を用いて説明する。光源221から出射された直線偏光の光ビームは光学素子231をほぼ100%透過し、透過後の光ビームは斜め蒸着膜部分232により直線偏光から円偏光の光ビームに変えられる。この円偏光の光ビームは対物レンズ225により光記録媒体226上に集光される。次に、光記録媒体226から反射された円偏光の光ビームは対物レンズ225を透過した後、光学素子231の斜め蒸着膜部分232で円偏光から光源221から出射された光ビームの偏光方向と直交する方向の直線偏光の光ビームにされ、偏光分離を行う周期的なプロトン交換層がある部分233でほぼ100%回折され、この回折された光ビームのうち+1次光は第1の光検出器227に、−1次光は第2の光検出器228に入射される。また、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号及び光記録媒体226に記録された情報の再生信号は、第10の実施の形態における光ヘッドの場合と、同じ方法で得ている。
【0166】
次に、第10の実施の形態における光ヘッドと本実施の形態における光ヘッドとの違いを述べる。第10の実施の形態における光ヘッドに用いている1/4波長板は水晶で作られたものであり、この1/4波長板は第7の実施の形態で述べたように光ビームの入射角に大きく依存する。したがって、光源221から出射される発散光をコリメータレンズで平行光にして1/4波長板に入射しないといけない。しかし、光学素子231は、本発明の複屈折層として斜め蒸着膜を有しているため、光ビームの入射角にあまり影響しないので、コリメータレンズを用いて光源221からの発散光を平行光にする必要がなく、光源221からの発散光を光学素子231に直接入射することができる。従って、コリメータレンズを用いる必要がなくなるので、光ヘッドの更なる小型化が可能となり、コリメータレンズの調整工程がいらなくなるので低コストの光ヘッドが構成できる。また、光学素子231の透過波面精度が上記したように小さいので対物レンズ225での集光状態が良好であり、従来例で述べた光ヘッドを用いたときに比べて再生信号のジッターが小さくなる。
【0167】
(第12の実施の形態)
次に、本発明の第12の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本実施の形態において、特に説明のないものについては、第10の実施の形態と同じとし、第10の実施の形態と同一符号を付与している構成部材については、特に説明のない限り、第10の実施の形態と同様の機能を持つものとする。
【0168】
図24は、本発明の第12の実施の形態における光ヘッドの構成図である。本実施の形態における光ヘッドは、本発明の光学素子のうち、偏光分離素子として機能するものであり、かつ、本発明の複屈折層を有する光学素子、例えば、上述した第6〜第8の実施の形態における光学素子(それらの変形例も含む)のいずれかを備える光ヘッドである。以下、第7の実施の形態における光学素子を備えるものとして説明する。
【0169】
図24において、241は立ち上げミラー、242は第7の実施の形態における光学素子、243は光学素子242の偏光分離を行う周期的なプロトン交換層がある部分、244は光学素子242の1/4波長板として機能する部分である。ここで、集光光学系はコリメータレンズ222と対物レンズ225より構成されている。また、光学素子242は、1/4波長板として機能する部分244が対物レンズ225側に、偏光分離を行う周期的なプロトン交換層2がある部分243が光源221側になるように配置されている。ここで、対物レンズ225と光学素子242は一体化されており、図示していないフォーカス制御手段とトラッキング制御手段により対物レンズ225と光学素子242は一体で位置の制御がなされるものである。
【0170】
次に、本実施の形態における光ヘッドの動作について、図24を用いて説明する。光源221から出射された直線偏光の光ビームはコリメータレンズ222で平行光にされ、立ち上げミラー241により光ビームの方向を変え、光学素子242をほぼ100%透過し、1/4波長板として機能する部分244により透過後の光ビームは直線偏光から円偏光の光ビームに変えられ、対物レンズ225により光記録媒体226上に集光される(往路は実線で示している)。次に、光記録媒体226から反射された円偏光の光ビームは対物レンズ225を透過した後、光学素子242の1/4波長板として機能する部分244で円偏光から光源221から出射された光ビームの偏光方向と直交する方向の直線偏光の光ビームにされ、偏光分離を行う周期的なプロトン交換層がある部分243でほぼ100%回折され、この回折された光ビームは立ち上げミラー241で方向を変えられ、コリメータレンズ222を透過して、+1次光は第1の光検出器227に、−1次光は第2の光検出器228に入射される(復路は点線で示している)。また、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号及び光記録媒体226に記録された情報の再生信号は、第10の実施の形態における光ヘッドの場合と、同じ方法で得ている。
【0171】
以上のように、光学素子と対物レンズとが一体化されているので、光ヘッドの組立時の調整工程が少なくなり、光ヘッドの低コスト化につながると共に、レンズシフトによる再生信号の劣化が小さくなるので、光ヘッドの特性の向上につながる。
【0172】
また、立ち上げミラーを用いることにより光ヘッドの高さを小さくしているので、ノート型パソコンのような非常に薄いドライブに組み込むことが可能となる。更に、本発明の複屈折層を有する光学素子を用いるため、と1/4波長板の厚みが非常に薄いので、光ヘッドの高さを更に小さくすることができる。
【0173】
更に、本実施の形態においては、コリメータレンズを用いて、光源から出射される発散ビームを平行光にしているが、第11の実施の形態で述べたように、コリメータレンズをなくしても何等問題はなく、また、コリメータレンズがないと調整工程がいらないので低コスト化が図れる。
【0174】
なお、本発明の光ヘッドは、上述した第10〜第12の実施の形態において、本発明の光学素子のうち、偏光分離素子として機能するものを備えるものとして説明したが、これに限るものではなく、例えば、本発明のイオン交換層によって、単に回折を行う光学素子を備えるものであるとしてよい、要するに、本発明の光学素子を備えるものであればよい。本発明の光学素子は、イオン交換層によって回折を行う光学素子において、反りが小さく透過波面に収差を与えない光学素子であるので、本発明の光学素子を備えることによって、小型で低コストの光ヘッドを実現することができる。
【0175】
また、本発明の光ヘッドは、上述した第10〜第12の実施の形態において、本発明の光学素子またはn/4波長板によって、まず、直線偏光から円偏光へ変換され、光記録媒体で反射された後、円偏光から直線偏光へ変換されるとして説明したが、これに限るものではなく、例えば、まず、直線偏光から円偏光もしくは楕円偏光に変換され、光記録媒体で反射された後、円偏光もしくは楕円偏光から直線偏光もしくは楕円偏光に変換されるとしてよい、要するに、偏光方向が変換の前後で互いに直交するように変換されればよい。
【0176】
【発明の効果】
以上説明したところから明らかなように、本発明は、イオン交換層によって回折を行う光学素子において、反りが小さく透過波面に収差を与えない光学素子を提供することができる。
【0178】
さらに、本発明は、本発明の光学素子を用いて小型で低コストの光ヘッドを提供することができる。
【0179】
すなわち、本発明の光学素子は、プロトン交換で生じる反ろうとする力を応力補正層で生じる逆の反ろうとする力でキャンセルするので光学素子そのものには反りが生じず、透過波面精度が良好となる。
【0180】
また、本発明の光学素子の製造方法は、すべての工程がウェハーで行うことができるため、大量生産が可能で低コストな方法である。
【0181】
さらに、本発明の光学素子を備える本発明の光ヘッドでは光記録媒体の再生時のジッターが小さくなる。そのため、光ヘッドを構成する種々の部品の透過波面精度のマージンが広がり、低コストで小型の光ヘッドを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における光学素子の変形例の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における光学素子の変形例の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における光学素子の変形例の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【図8】タンタルオキサイド膜厚とプロトン交換深さの関係を示した図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態における光学素子の断面図である。本
【図10】本発明の第4の実施の形態における光学素子のD面側の平面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態における光学素子の変形例のD面側の平面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における光学素子の変形例のD面側の平面図である。
【図13】図13は、本発明の第4の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図16】本発明の第7の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図17】光学素子への斜め蒸着を説明する図である。
【図18】光学素子への入射光の入射角を示す説明図である。
【図19】本発明の第7の実施の形態における光学素子の製造方法の工程を示す断面図である。
【図20】本発明の第8の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図21】本発明の第9の実施の形態における光学素子の断面図である。
【図22】本発明の第10の実施の形態における光ヘッドの構成図である。
【図23】本発明の第11の実施の形態における光ヘッドの構成図である。
【図24】本発明の第12の実施の形態における光ヘッドの構成図である。
【図25】従来の光ヘッドの構成図である。
【図26】従来の光学素子の断面図である。
【符号の説明】
1 ニオブ酸リチウム基板
2、3 プロトン交換層
221 光源
222 コリメータレンズ
224 1/4波長板
225 対物レンズ
226 光記録媒体
227 第1の光検出器
228 第2の光検出器

Claims (16)

  1. イオン交換が可能な結晶である基板と、
    前記結晶のX面もしくはY面の所定の部分がイオン交換されたイオン交換層と、
    前記イオン交換層により前記基板に生じる応力を補正する応力補正層とを備え
    前記応力補正層は、前記基板の前記イオン交換層が形成されている面と反対側の面であり、前記イオン交換層が形成されていない部分の裏側にのみ形成されていることを特徴とする光学素子。
  2. 前記結晶は、LiTaNb1−X(0≦X≦1)であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記イオン交換層によって、偏光分離を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記応力補正層は、前記イオン交換層と同様に、前記結晶がイオン交換されたものであることを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  5. 前記応力補正層は、アルミナ薄膜またはその他の薄膜で形成されていることを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  6. 外部から前記イオン交換層への入射光の反射を防止する交換層反射防止膜と、外部から前記応力補正層への入射光の反射を防止する補正層反射防止膜とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子。
  7. 前記応力補正層上に配置された複屈折層を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学素子。
  8. 前記複屈折層は、n/4波長板(ここでnは奇数)であることを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  9. 外部から前記イオン交換層への入射光の反射を防止する交換層反射防止膜と、前記応力補正層と前記複屈折層との間の入射光の反射を防止する隣接層間反射防止膜と、外部から前記複屈折層への入射光の反射を防止する複屈折層反射防止膜とを備えることを特徴とする請求項またはに記載の光学素子。
  10. 前記複屈折層は、水晶であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の光学素子。
  11. 前記複屈折層は、誘電体が斜めから蒸着された斜め蒸着膜であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の光学素子。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の光学素子を備えることを特徴とする光ヘッド。
  13. 光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、
    前記光源の前記光記録媒体側に配置されたコリメータレンズと、前記コリメータレンズの前記光記録媒体側に配置された請求項1〜のいずれかに記載の光学素子と、
    前記光学素子の前記光記録媒体側に配置されたn/4波長板(ここでnは奇数)と、
    前記n/4波長板の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、
    前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、
    前記光源から出射された光は、前記コリメータレンズによって実質的に平行光にされ、前記光学素子を透過して、前記n/4波長板によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、
    前記光記録媒体で反射された光は、前記対物レンズによって集光され、前記n/4波長板によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換され、前記光学素子によって回折された後、前記コリメータレンズによって前記受光部に集光され、
    前記受光部は、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッド。
  14. 光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、
    前記光源の前記光記録媒体側に配置されたコリメータレンズと、
    前記コリメータレンズの前記光記録媒体側に配置された請求項6〜11のいずれかに記載の光学素子と、
    前記光学素子の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、
    前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、
    前記光源から出射された光は、前記コリメータレンズによって実質的に平行光にされ、前記光学素子によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、
    前記光記録媒体で反射された光は、前記対物レンズによって集光され、前記光学素子によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換されて回折された後、前記コリメータレンズによって前記受光部に集光され、
    前記受光部は、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッド。
  15. 光記録媒体へ向けてコヒーレントな光を出射する光源と、
    前記光源の前記光記録媒体側に配置された請求項11に記載の光学素子と、
    前記光学素子の前記光記録媒体側に配置された対物レンズと、
    前記光学素子によって回折された回折光を受光する1つまたは複数の受光部を有し、前記光記録媒体のフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号および/または前記光記録媒体に記録された情報信号を検出する光検出手段とを備え、
    前記光源から出射された光は、前記光学素子によって円偏光もしくは楕円偏光に変換された後、前記対物レンズによって前記光記録媒体に集光され、
    前記光記録媒体で反射された光は、前記対物レンズによって集光され、前記光学素子によって直線偏光もしくは楕円偏光に変換されて回折された後、前記受光部に入射され、
    前記受光部は、前記各信号に対応する前記回折光を受光できるように配置されていることを特徴とする光ヘッド。
  16. 前記光学素子は、前記コリメータレンズまたは前記対物レンズと一体化されていることを特徴とする請求項14または15に記載の光ヘッド。
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