JP4204830B2 - 車両用運転支援装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ、ステレオカメラや単眼カメラ等の画像認識装置等の前方認識装置で車両前方の道路状況を認識し、自車速や先行車との車間距離を自動制御する車両用運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ミリ波レーダ、赤外線レーザレーダ、ステレオカメラや単眼カメラ等の画像認識装置等の前方認識装置で車両前方の道路状況を認識し、自車速や先行車との車間距離を自動制御する車両用運転支援装置が実用化されている。
【0003】
このような車両用運転支援装置では、先行車との車間距離を設定距離範囲に維持しながら追随走行する制御を行う場合、その追随走行時の速度が先行車のさらに前を走行している先々行車の走行状態の影響を受けて不安定になる可能性がある。このため、例えば、特開2001−199257号公報では、先行車との距離を測定し、また、自車両と先々行車の位置を示す車間距離データを走行支援システムの路側機から受信し、その受信データに基いて先々行車との間の距離を判定して、先行車との車間距離に基づいた加減速制御を行うことにより自車両を先行車に追随走行させると共に、その加減速制御を行う際に先々行車との車間距離を加味した制御を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−199257号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の先行技術では、先々行車の捕捉が走行支援システムが整備されている、インフラストラクチュアが整った走行路でしか適用できず、汎用性が極めて低いという問題がある。また、自車両と先行車との距離と自車両と先々行車との距離に応じて加速制御や減速制御を行うようになっているため、チューニングによっては加速と減速とが不自然に発生し、実際に前方を視認して運転するドライバに対して却って違和感を与える可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、特に大規模なインフラストラクチュアのない道路でも容易に採用でき汎用性に優れ、実際に減速を行うまでもない状況下にあっては減速に備え、必要なときには確実にレスポンス良く減速して安全性が極めて高く、ドライバに対して自然で違和感のない運転支援が行える車両用運転支援装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による車両用運転支援装置は、自車両前方の環境を検出し認識する車載の前方情報認識手段と、上記前方情報認識手段からの前方情報に基づき先行車情報を検出する先行車情報検出手段と、上記前方情報認識手段からの上記前方情報と上記先行車情報に基づき上記先行車のさらに前方を走行する先々行車情報を検出する先々行車情報検出手段と、上記先行車情報検出手段により上記先行車情報が検出されている場合において、上記先々行車情報検出手段により上記先々行車情報が検出されていない時には上記先行車情報に基づいて算出される目標車間距離を保持する走行制御を実行し、上記先々行車情報検出手段により上記先々行車情報が検出されている時にのみ上記先行車情報と上記先々行車情報に基づき少なくともブレーキ手段による制動準備を行わせる制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1記載の車両用運転支援装置において、上記先々行車情報検出手段は、上記先行車情報検出手段で検出した先行車ではなく、且つ、該検出した先行車よりも遠方に存在し、且つ、自車両の走行領域に進入した自車両に最も近い位置に存在する前方立体物を上記先々行車として検出することを特徴としている。
【0009】
更に、請求項3記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1又は請求項2記載の車両用運転支援装置において、上記制御手段は、上記先行車と上記先々行車との車間距離が予め設定した距離より接近し、且つ、上記先行車の速度が上記先々行車の速度より予め設定した速度を超えて大きくなる場合に上記ブレーキ手段による制動準備を行わせることを特徴としている。
【0010】
また、請求項4記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両用運転支援装置において、上記制御手段は、上記ブレーキ手段による制動準備を予めブレーキ油圧を高めておくことで行うことを特徴としている。
【0011】
更に、請求項5記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両用運転支援装置において、上記制御手段は、少なくとも自車両と上記先行車との目標車間距離を求めて走行制御を行うものであって、上記制御手段は、上記先行車が存在する場合には第1の目標車間距離を求め、上記先々行車が存在する場合には第2の目標車間距離を求め、上記先行車のみが存在する場合には上記第1の目標車間距離を上記目標車間距離として設定し、上記先々行車が存在する場合には上記第1の目標車間距離と上記第2の目標車間距離とを比較し、何れか大きい方を上記目標車間距離として設定することを特徴としている。
【0012】
また、請求項6記載の本発明による車両用運転支援装置は、請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の車両用運転支援装置において、上記制御手段が上記ブレーキ手段による制動準備を行わせる状態であることを車内と車外の少なくともどちらかに報知又は通信する報知通信手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
すなわち、上記請求項1記載の車両用運転支援装置は、車載の前方情報認識手段で自車両前方の環境を検出し認識し、先行車情報検出手段で前方情報認識手段からの前方情報に基づき先行車情報を検出し、先々行車情報検出手段で前方情報認識手段からの前方情報と先行車情報に基づき先行車のさらに前方を走行する先々行車情報を検出する。そして、先行車情報検出手段により先行車情報が検出されている場合において、先々行車情報検出手段により先々行車情報が検出されていない時には先行車情報に基づいて算出される目標車間距離を保持する走行制御を実行し、先々行車情報検出手段により先々行車情報が検出されている時にのみ先行車情報と先々行車情報に基づき少なくともブレーキ手段による制動準備を行わせる。
【0014】
このため、特に大規模なインフラストラクチュアのない道路でも容易に採用でき汎用性に優れ、実際に減速を行うまでもない状況下にあっては減速に備え、必要なときには確実にレスポンス良く減速して安全性が極めて高く、ドライバに対して自然で違和感のない運転支援が行える。特に、直ぐに制動するのではなく、制動準備を行うようにしているため、加速と減速とが不自然に生じることがなく、また、制動準備状態とすることで、制動の際のレスポンスの良いブレーキングが期待でき安全性を向上させることができる。
【0015】
この際、先々行車情報検出手段は、具体的には請求項2記載のように、先行車情報検出手段で検出した先行車ではなく、且つ、該検出した先行車よりも遠方に存在し、且つ、自車両の走行領域に進入した自車両に最も近い位置に存在する前方立体物を先々行車として検出することにより、先々行車を確実に検出できる。
【0016】
また、制御手段は、具体的には請求項3記載のように、先行車と先々行車との車間距離が予め設定した距離より接近し、且つ、先行車の速度が先々行車の速度より予め設定した速度を超えて大きくなる場合にブレーキ手段による制動準備を行わせる。
【0017】
更に、制御手段は、具体的には請求項4記載のように、ブレーキ手段による制動準備を予めブレーキ油圧を高めておくことで行う。
【0018】
また、制御手段は、具体的には請求項5記載のように、少なくとも自車両と先行車との目標車間距離を求めて走行制御を行うものであって、制御手段は、先行車が存在する場合には第1の目標車間距離を求め、先々行車が存在する場合には第2の目標車間距離を求め、先行車のみが存在する場合には第1の目標車間距離を目標車間距離として設定し、先々行車が存在する場合には第1の目標車間距離と第2の目標車間距離とを比較し、何れか大きい方を目標車間距離として設定する。
【0019】
更に、請求項6記載のように報知通信手段を設ければ、制御手段がブレーキ手段による制動準備を行わせる状態であることを車内と車外の少なくともどちらかに報知又は通信することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図4は本発明の実施の一形態を示し、図1は車両に搭載した車両用運転支援装置の概略構成図、図2は運転支援制御プログラムのフローチャート、図3は先々行車抽出ルーチンのフローチャート、図4は目標車間距離算出ルーチンのフローチャートである。
【0021】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)で、この車両1には、車両用運転支援装置の一例としての車間距離制御機能付きクルーズコントロールシステム(ACC(Adaptive Cruise Control)システム)2が搭載されている。このACCシステム2は、ステレオカメラ3、ミリ波レーダの送受信部4、測距処理装置5、前方情報認識装置6、制御装置7を有して主要に構成されている。そして、ACCシステム2は、詳しくは後述の図2の運転支援制御プログラムにより制御されるが、基本的に、先行車が存在しない定速走行制御状態のときにはドライバが設定した車速を保持した状態で走行し、先行車が存在する追従走行制御状態のときには、先行車と先々行車の存在に応じて自車両1と先行車との目標車間距離を求め、この目標車間距離を保持した状態で走行制御する。
【0022】
ステレオカメラ3は、ステレオ光学系として例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた1組の(左右の)CCDカメラで構成され、これら左右のCCDカメラは、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、前方情報認識装置6に信号出力する。
【0023】
また、自車両1の先端には、前方に所定にミリ波(30GHz〜100GHzの電波)を送信し、更に、反射して戻ってくるミリ波を受信するミリ波レーダの送受信部4が設けられ、この送受信データは測距処理装置5に入力される。
【0024】
測距処理装置5は、送受信部4がミリ波を送信し、目標で反射して戻ってくる受信波との時間差を基に、自車両1から目標までの相対距離を計測し、これら相対距離情報を前方情報認識装置6に出力する。
【0025】
前方情報認識装置6は、上述のステレオカメラ3、測距処理装置5に加え、車速センサ8、ハンドル角センサ9、ヨーレートセンサ10が接続されており、これら各センサ8,9,10から自車速V0,ハンドル角θH,ヨーレートγがそれぞれ入力される。
【0026】
そして、前方情報認識装置6は、ステレオカメラ3からの画像に基づき自車両1前方の立体物データと側壁データと白線データの前方情報を検出し、これら前方情報や自車両1の運転状態(ハンドル角θHやヨーレートγ)から、自車両1の進行路(自車進行路)を推定する。こうして推定した自車進行路や前方情報から自車両1の走行領域を推定し、この自車走行領域と自車両1からの距離等を基に、自車両1前方の先行車を抽出し、この先行車との車間距離、先行車速(=相対速度+自車速)、先行車以外の立体物位置等の各データを求める。
【0027】
ここで、前方情報認識装置6における、ステレオカメラ3からの画像の処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラ3のCCDカメラで撮像した自車両の進入方向の環境の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって画像全体に渡る距離情報を求める処理を行なって、三次元の距離分布を表す距離画像を生成する。そして、このデータを基に、周知のグルーピング処理や、予め記憶しておいた3次元的な道路形状データ、立体物データ等と比較し、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データを抽出する。立体物データでは、立体物までの距離と、この距離の時間的変化(自車両1に対する相対速度)が求められ、例えば、自車進行路上にある最も近い車両で、自車両1と略同じ方向に所定の速度で進行するものが先行車として抽出される。
【0028】
また、前方情報認識装置6は、測距処理装置5からの相対距離情報に基づき、距離値の分布状態から同一の距離値が連続する部分を一つの立体物として抽出し、各抽出した立体物の中から距離値の変化量(自車両1との相対速度)と自車両1からの距離に基づき自車両1に対する先行車を抽出し、自車速V0に基づく先行車速(=相対速度+自車速V0)と先行車距離を演算する。
【0029】
こうして、ステレオカメラ3からの画像に基づき得られた先行車情報と測距処理装置5からの相対距離情報に基づき得られた先行車情報とは、統合処理(例えば、それぞれの先行車情報の位置と速度で同一となる確率が所定に演算され、この同一確率が予め設定した閾値以上の先行車情報が真の先行車情報として登録される)が行われる。
【0030】
この前方情報認識装置6で統合された先行車情報は、以下、図3のフローチャートに示す先々行車抽出ルーチンに従って、先々行車の抽出に利用される。すなわち、まず、ステップ(以下、「S」と略称)201において、自車両1の走行領域や先行車情報等の必要パラメータの読み込みが行われ、S202に進んで、先行車が存在するか否か判定される。
【0031】
S202の判定の結果、先行車が存在しない場合は、ルーチンを抜け、先行車が存在する場合には、S203に進む。
【0032】
S203では、判定対象とする立体物が先行車と同一か否か判定し、同一でなければS204に進み、判定対象とする立体物が先行車より遠方に存在するか否か判定する。
【0033】
S204の判定の結果、判定対象とする立体物が先行車より遠方に存在する場合は、S205に進み、判定対象とする立体物が自車走行領域に進入したか否か判定し、自車走行領域に進入している場合はS206に進んで、判定対象とする立体物が自車両1に最も近い立体物か否か判定する。
【0034】
そして、S206の判定の結果、判定対象とする立体物が自車両1に最も近い立体物であればS207に進んで先々行車として登録する。
【0035】
一方、S203で判定対象とする立体物が先行車と同一、或いは、S204で判定対象とする立体物が先行車より遠方には存在しない、或いは、S205で判定対象とする立体物が自車走行領域に進入していない、或いは、S206で判定対象とする立体物が自車両1に最も近い立体物ではないの何れか判定結果の場合は、S208に進み、判定対象とする立体物は先々行車ではないと判定する。
【0036】
而して、S207で判定対象とする立体物を先々行車として登録、或いは、S208で判定対象とする立体物は先々行車ではないと判定した後は、S209に進み、全立体物についての判定が終了したか否か判定し、全立体物についての判定が終了していればルーチンを抜け、全立体物についての判定が終了していないのであればS203からの処理を繰り返す。
【0037】
このように本発明の実施の形態では、先々行車の判定を、先行車と同一ではなく、且つ、該検出した先行車よりも遠方に存在し、且つ、自車両1の走行領域に進入した自車両1に最も近い位置に存在する前方立体物を先々行車として検出するようにしているので、特に大規模なインフラストラクチュアのない道路でも車載のシステムで容易且つ正確に先々行車の検出を行うことができ、汎用性の非常に優れたシステムとなっている。尚、S203〜S206の処理の順番は本実施の形態以外の順番であっても良い。
【0038】
そして、前方情報認識装置6は、上述の如く先々行車を抽出した後は、先行車情報と同様に、先々行車との車間距離、及び、先々行車との車間距離の変化量と自車速V0から先々行車速等を先々行車情報として算出し、この先々行車情報を先行車情報と共に、制御装置7に出力する。すなわち、本実施の形態においては、ステレオカメラ3、ミリ波レーダの送受信部4、測距処理装置5、前方情報認識装置6で、前方情報認識手段、先行車情報検出手段、先々行車情報検出手段が構成されている。
【0039】
制御装置7は、制御手段としてのものであり、ドライバの操作入力によって設定される走行速度を維持するよう定速走行制御を行なう定速走行制御の機能、及び自車両1と先行車の車間距離を一定の目標車間距離に保持した状態で走行する追従走行制御の機能を実現するもので、ステアリングコラムの側部等に設けられた定速走行操作レバーに連結される複数のスイッチ類で構成された定速走行スイッチ11、上述の前方情報認識装置6、車速センサ8が接続されている。
【0040】
定速走行スイッチ11は、定速走行時の目標車速を設定する車速セットスイッチ、主に目標車速を下降側へ変更設定するコーストスイッチ、主に目標車速を上昇側へ変更設定するリジュームスイッチ等で構成されている。更に、この定速走行操作レバーの近傍には、走行制御のON/OFFを行うメインスイッチ(図示せず)が配設されている。
【0041】
ドライバが図示しないメインスイッチをONし、定速走行操作レバーにより、希望する速度をセットすると、定速走行スイッチ11からの信号が制御装置7に入力される。そして、車速センサ8で検出した自車速V0が、ドライバのセットした設定車速に収束するように、スロットル弁制御装置12に信号出力してスロットル弁13の開度をフィードバック制御し、或いは、ブレーキ手段としてのハイドロリックユニットを有した自動ブレーキ制御装置14に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させ、自車両1を自動的に定速状態で走行させる。この定速走行は、ドライバの所定の運転動作、すなわち、ブレーキペダルの踏み込みや、メインスイッチのOFF等により解除される。
【0042】
又、制御装置7は、定速走行制御を行っている際に、前方情報認識装置6にて先行車を認識した場合には、後述の図2の運転支援制御プログラムに従って、先行車と先々行車との関係により、図4の目標車間距離算出ルーチンで算出した目標車間距離を保持した状態で走行する追従走行制御へ自動的に切換えられる。
【0043】
以下、図2の運転支援制御プログラムのフローチャートにより、制御装置7における運転支援制御を具体的に説明する。
まず、S101で、必要パラメータ、具体的には、自車速V0、先行車の有無、先行車と自車両1との車間距離La、先行車速Va、先々行車の有無、先々行車と自車両1との車間距離Lb、先々行車速Vbを読み込む。
【0044】
次いで、S102に進み、先行車が存在するか否か判定し、先行車が存在しない場合はS103に進み、通常の運転支援制御を行うよう設定し、プログラムを抜ける。ここで、通常の運転支援制御とは、すなわち上述したように、車速センサ8で検出した自車速V0が、ドライバのセットした設定車速に収束するように、スロットル弁制御装置12に信号出力してスロットル弁13の開度をフィードバック制御し、或いは、自動ブレーキ制御装置14に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させ、自車両1を自動的に定速状態で走行させる。この定速走行は、ドライバの所定の運転動作、すなわち、ブレーキペダルの踏み込みや、メインスイッチのOFF等により解除される。
【0045】
上述のS102で先行車が存在すると判定した場合には、S104に進み、先々行車が存在するか否か判定し、先々行車が存在しない場合はS103に進み、通常の運転支援制御を行うよう設定し、プログラムを抜ける。ここで、先行車が存在し、先々行車が存在しない場合の通常の運転支援制御は、基本的には、後述(S106で詳述)の図4の目標車間距離算出ルーチンで目標車間距離を算出し、先行車と自車両1との車間距離Laが目標車間距離になるように、スロットル弁制御装置12に信号出力してスロットル弁13の開度をフィードバック制御し、或いは、自動ブレーキ制御装置14に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させ制御する。
【0046】
一方、S104で先々行車が存在すると判定した場合は、S105に進み、車載のモニタ15上に、先々行車が先行車の前方に存在することを、先々行車速Vbや、先々行車と自車両1との車間距離Lbと共に表示する。これにより、ドライバは、先行車の前にさらに車両が存在することを知ることが可能となり、先行車を追い越す際の参考としたり、先行車がブレーキをかけることに備えて運転したりすることが可能となる。尚、モニタ15に表示するのみならず、音声や警報等でドライバに報知するようにしても良い。
【0047】
その後、S106に進むと、先行車と先々行車を考慮した運転支援制御が実行される。この先行車と先々行車を考慮した運転支援制御は、図4の目標車間距離算出ルーチンで先々行車の存在をも考慮して目標車間距離を算出し、この目標車間距離を基に、S103で説明した通常の運転支援制御と同様に、スロットル弁制御装置12に信号出力してスロットル弁13の開度をフィードバック制御し、或いは、自動ブレーキ制御装置14に減速信号を出力して自動ブレーキを作動させ、自車両1を自動的に定速状態で走行させるものである。
【0048】
すなわち、図4の目標車間距離算出ルーチンでは、まず、S301で、必要パラメータ、具体的には、自車速V0、先行車の有無、先行車と自車両1との車間距離La、先行車速Va、先々行車の有無、先々行車と自車両1との車間距離Lb、先々行車速Vb等を読み込む。
【0049】
次いで、S302に進み、先行車が存在するか否か判定し、先行車が存在しない場合は、S303に進み、目標車間距離を設定することなく、ルーチンを抜ける。
【0050】
また、S302で先行車が存在すると判定した場合はS304に進み、先行車に基づき目標車間距離D1(第1の目標車間距離)を算出する。ここで、目標車間距離D1は、運転状態に応じて、例えば以下の2種類のものを設定しておく。
【0051】
すなわち、通常の運転状態における目標車間距離として、
D1=D0+V0・Tc …(1)
また、先行車追尾状態から減速又は停止状態に移行する運転状態における目標車間距離として、
D1=D0+V0・Tc+(V0−Va)/(2・a) …(2)
ここで、D0は停止時の車間距離、Tcは空走時間、aは自車両1の減速度である。
【0052】
次いで、S305に進むと、先々行車が存在するか否か判定し、先々行車が存在しない場合にはS309へとジャンプし、そのまま上述の(1)式、或いは、(2)式で求めた目標車間距離D1を出力してルーチンを抜ける。このような先行車が存在するが、先々行車が存在しない場合の目標車間距離D1は、上述の図2のフローチャートにおいて、S102からS104を経て、すなわち、先行車が存在するが先々行車が存在しない場合で、S103に達した際に実行される通常の運転支援制御で用いられることになる。
【0053】
一方、上述のS305で、先々行車が存在すると判定した場合はS306に進み、先々行車を考慮して、先行車との目標車間距離D2(第2の目標車間距離)を算出する。ここで、目標車間距離D2は、上述の目標車間距離D1同様、運転状態に応じて、例えば以下の2種類のものを設定しておく。
【0054】
すなわち、通常の運転状態における目標車間距離として、
D2=D0+D3+V0・Tc …(3)
また、先行車追尾状態から減速又は停止状態に移行する運転状態における目標車間距離として、
D2=D0+D3+V0・Tc+(V0−Vb)/(2・a) …(4)
ここで、D3は先行車を考慮した車間距離である。
【0055】
その後、S307に進み、先行車に基づく目標車間距離D1と、先々行車を考慮した先行車との目標車間距離D2とを比較し、D1<D2であればS308に進んで、D1=D2とし、S309に進んで、この目標車間距離D1を出力してルーチンを抜ける。逆に、D1≧D2であれば、そのままS309にジャンプして、目標車間距離D1を出力してルーチンを抜ける。
【0056】
すなわち、通常の運転状態においては、(1)式、及び、(3)式からも明らかなように、D1<D2となって先々行車を考慮した先行車との目標車間距離D2を目標車間距離として出力する。しかしながら、先行車追尾状態から減速又は停止状態に移行する運転状態においては、(2)式、及び、(4)式からも明らかなように、先行車速Vaと先々行車速Vbの関係が、Va≧Vbの場合は、確実にD1<D2となるが、Va<Vbの場合で特にこの差が大きい場合には、D1≧D2となる可能性があり、このような場合には、大きい方の、先行車に基づく目標車間距離D1をそのまま用いて目標車間距離とするのである。
【0057】
本実施の形態では、このように、先行車に基づく目標車間距離D1と、先々行車を考慮した先行車との目標車間距離D2とに応じて目標車間距離を安全側に設定するので、先々行車が存在する場合には、その状況に応じた最適な目標車間距離が設定されるようになっている。
【0058】
こうして、S106で、上述の目標車間距離に基づく先々行車を用いた運転支援制御の実行を定めた後は、S107に進み、先行車と先々行車の車間距離Lab(=Lb−La)が予め設定しておいた閾値K1以上か否か判定する。そして、この判定の結果、先行車と先々行車の車間距離Labが、予め設定しておいた閾値K1以上(Lab≧K1)であれば、そのままルーチンを抜け、S103の先々行車を用いた運転支援制御を実行する。
【0059】
S107の判定の結果、先行車と先々行車の車間距離Labが、予め設定しておいた閾値K1より小さい場合(Lab<K1の場合)は、S108に進み、先行車速Vaと先々行車速Vbとの比較を行う。
【0060】
S108の比較の結果、先行車速Vaが先々行車速Vb以下(Va≦Vb)の場合は、そのままルーチンを抜け、S103の先々行車を用いた運転支援制御を実行する。
【0061】
逆に、先行車速Vaが先々行車速Vbより高い(Va>Vb)の場合は、S109に進み、S103における運転支援制御で加速を実行しようとした場合には、その加速を抑制する(例えば、目標とする加速度を50%に減じる)処理を実行させる。すなわち、先行車と先々行車との車間距離が閾値K1より短く、先行車速Vaが先々行車速Vbよりも高い場合には、先行車が先々行車に追いついてブレーキをかける可能性があるため、これを考慮した追従走行を行わせるのである。
【0062】
その後、S110に進み、先行車と先々行車の車間距離Labが、予め設定しておいた閾値K2(<K1)以上か否か判定する。そして、この判定の結果、先行車と先々行車の車間距離Labが、予め設定しておいた閾値K2以上(Lab≧K2)であれば、そのまま(加速を抑制するのみで)ルーチンを抜ける。逆に、先行車と先々行車の車間距離Labが、予め設定しておいた閾値K2より小さい(Lab<K2)のであれば、S111に進み、先行車速Vaから先々行車速Vbを減算した値(=Va−Vb)が、予め設定しておいた速度値Vc1以上か否か判定する。
【0063】
S111の判定の結果、(Va−Vb)が、予め設定しておいた速度値Vc1より小さければ、そのまま(加速を抑制するのみで)ルーチンを抜ける。逆に、(Va−Vb)が、予め設定しておいた速度値Vc1以上であれば、すなわち換言すれば、先行車が先々行車に急接近している状態であれば、S112に進み、自動ブレーキ制御装置14に信号出力して、予めブレーキ油圧を高め制動準備を行わせ、レスポンス良くブレーキをかけられる状態としてルーチンを抜ける。尚、このS112の処理においては、モニタ15上に自車両1が制動準備中であることをドライバにランプ点滅等で報知するようにしても良い。また、特に図示はしないが、単にモニタ15でドライバに報知するのみならず、自車両1の周囲の車両やインフラストラクチュアに対し、自車両1が制動準備中であることをランプの点灯や通信装置により報知するように構成しても良い。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、先行車、並びに、先々行車が存在する場合の運転支援制御において、先行車と先々行車との車間距離が接近し、更に、先行車が先々行車に対して急接近するような場合は、予めブレーキ油圧を高め制動準備を行わせる制御が行われるため、例え、先行車が先々行車の存在により急ブレーキをかけるような場合でもレスポンスの良いブレーキ制御が行われる。
【0065】
また、単純に、加速制御と減速制御を条件により設定するものではないため、前方を視認しながら運転するドライバに対し、自然で違和感のない運転支援が行える。
【0066】
尚、本実施の形態においては、ステレオカメラ3、ミリ波レーダの送受信部4、測距処理装置5、前方情報認識装置6で、前方情報、先行車情報、先々行車情報の検出を行うようにしているが、これに限ることなく、例えば、ステレオカメラ3、前方情報認識装置6のみで各情報を得られるように構成しても良く、また、レーダ装置もミリ波に限ることなく、他の波長(例えば赤外線レーザ)のレーダ装置等を用いて実現するようにしても良い。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、特に大規模なインフラストラクチュアのない道路でも容易に採用でき汎用性に優れ、実際に減速を行うまでもない状況下にあっては減速に備え、必要なときには確実にレスポンス良く減速して安全性が極めて高く、ドライバに対して自然で違和感のない運転支援ができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両に搭載した車両用運転支援装置の概略構成図
【図2】運転支援制御プログラムのフローチャート
【図3】先々行車抽出ルーチンのフローチャート
【図4】目標車間距離算出ルーチンのフローチャート
【符号の説明】
1 自車両
2 ACCシステム(車両用運転支援装置)
3 ステレオカメラ(前方情報認識手段、先行車情報検出手段、先々行車情報検出手段)
4 送受信部(前方情報認識手段、先行車情報検出手段、先々行車情報検出手段)
5 測距処理装置(前方情報認識手段、先行車情報検出手段、先々行車情報検出手段)
6 前方情報認識装置(前方情報認識手段、先行車情報検出手段、先々行車情報検出手段)
7 制御装置(制御手段)
11 定速走行スイッチ
14 自動ブレーキ制御装置(ブレーキ手段)
15 モニタ(報知通信手段)

Claims (6)

  1. 自車両前方の環境を検出し認識する車載の前方情報認識手段と、
    上記前方情報認識手段からの前方情報に基づき先行車情報を検出する先行車情報検出手段と、
    上記前方情報認識手段からの上記前方情報と上記先行車情報に基づき上記先行車のさらに前方を走行する先々行車情報を検出する先々行車情報検出手段と、
    上記先行車情報検出手段により上記先行車情報が検出されている場合において、上記先々行車情報検出手段により上記先々行車情報が検出されていない時には上記先行車情報に基づいて算出される目標車間距離を保持する走行制御を実行し、上記先々行車情報検出手段により上記先々行車情報が検出されている時にのみ上記先行車情報と上記先々行車情報に基づき少なくともブレーキ手段による制動準備を行わせる制御手段とを備えたことを特徴とする車両用運転支援装置。
  2. 上記先々行車情報検出手段は、上記先行車情報検出手段で検出した先行車ではなく、且つ、該検出した先行車よりも遠方に存在し、且つ、自車両の走行領域に進入した自車両に最も近い位置に存在する前方立体物を上記先々行車として検出することを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
  3. 上記制御手段は、上記先行車と上記先々行車との車間距離が予め設定した距離より接近し、且つ、上記先行車の速度が上記先々行車の速度より予め設定した速度を超えて大きくなる場合に上記ブレーキ手段による制動準備を行わせることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用運転支援装置。
  4. 上記制御手段は、上記ブレーキ手段による制動準備を予めブレーキ油圧を高めておくことで行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の車両用運転支援装置。
  5. 上記制御手段は、少なくとも自車両と上記先行車との目標車間距離を求めて走行制御を行うものであって、上記制御手段は、上記先行車が存在する場合には第1の目標車間距離を求め、上記先々行車が存在する場合には第2の目標車間距離を求め、上記先行車のみが存在する場合には上記第1の目標車間距離を上記目標車間距離として設定し、上記先々行車が存在する場合には上記第1の目標車間距離と上記第2の目標車間距離とを比較し、何れか大きい方を上記目標車間距離として設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の車両用運転支援装置。
  6. 上記制御手段が上記ブレーキ手段による制動準備を行わせる状態であることを車内と車外の少なくともどちらかに報知又は通信する報知通信手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の車両用運転支援装置。
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