JP4204274B2 - 本縫いミシンにおけるボビン糸監視装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下糸備蓄部を受容しているボビンケースを備えた回転するルーパーを有する本縫いミシンにおけるボビン糸監視装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドイツ連邦共和国特許第4031058C1号公報には、本縫いルーパーを備えたミシンの下糸の縫製終了を検知するための装置が開示されている。この装置は、使用する糸の強度に関係なく、縫製糸端検知後にまだ一定長さの残糸を提供するものである。
【0003】
このため、ボビンのボスには、ボビンのフランジに対しほぼ平行に指向する細条部が設けられている。細条部の側面は反射性があるように形成されている。ボビンのフランジ(その表面は光吸収層を有し、或いはつや消しされている)には、反射ヘッドから出る赤外線用の開口部が設けられている。赤外線はボビンがまだ十分に充填されているときはボビンのフランジにあたり、或いはフランジの開口部を通って巻糸の側面にあたり、吸収される。赤外線が反射ヘッドのほうへ反射されない限りは、反射ヘッドから信号は出ない。
【0004】
巻糸が消費されて、残糸の外径が細条部の外径よりも小さくなると、フランジの開口部を通過する赤外線は細条部の側面にあたり、反射ヘッドのほうへ戻るように誘導される。これにより、ミシンの以後の制御のために用いられる信号が発生し、この信号はミシンを即座に停止させるため、および(または)、一定数の残ステッチを形成させるために使用することができる。
【0005】
赤外線を吸収するうえで、赤外線がボビンのフランジの静止面に当たるか、静止している糸巻きに当たるか、或いはボビンが回転しているかどうかは重要でないので、この装置によれば、ミシンが正常に作動しているときはボビン糸の端部が近いことを検知または表示させることができるが、たとえば糸切れのような縫製障害を検知することは不可能である。すなわちボビンの充填度が比較的良好なときに縫製中に上糸または下糸の糸切れが生じると、赤外線はボビンのフランジまたは巻糸から反射ヘッドのほうへ戻るように誘導されず、よって出力信号は出ない。
【0006】
上記装置の改良形は実質的に作動安定性を向上させたものであるが、この種の改良形はドイツ連邦共和国特許公開第4115520A1号公報に開示されている。この改良形においても反射ヘッドから出る赤外線は外釜の底部に配置された反射面から反射ヘッドのほうへ戻るように誘導される。このためボビンケース上部部分にもボビンの両フランジにも赤外線用の貫通穴が設けられている。さらに、有利な構成では、ボビンは互いに間隔を持って配置される2つの細条部を備えており、これらの細条部にも赤外線用の貫通穴が穿設され、これら貫通穴はボビンのフランジに設けた貫通穴と同じピッチ円上に配置されている。これらすべての貫通穴の配置は、ボビンがかろうじて残糸を有しているときに、反射ヘッドから出る赤外線がボビンケース上部部分の貫通穴と第1のボビンフランジの貫通穴と両細条部の貫通穴とボビンケース下部部分の貫通穴と外釜の貫通穴とをとおって反射面に達し、そこから反射ヘッドのほうへ戻るように誘導されるように選定されている。これにより反射ヘッドから出力される信号は、ミシンを即座に停止させるか、残糸の少なくとも一部分をさらに消費させるかに利用することができる。
【0007】
ボビンの細条部に設けた貫通穴が残りの巻糸によって覆われる程度にボビンが糸で充填されていれば、赤外線が吸収される。この場合、これがボビン回転時に生じるか、ボビン静止時に生じるかは全く問題ではない。ボビンの充填度が比較的良好なときに縫製中に上糸または下糸の糸切れが生じると、この装置においても赤外線はボビンのフランジまたは巻糸から反射ヘッドのほうへ戻るように誘導されず、よって出力信号も出ない。
【0008】
この装置においては、縫い埃が付着することによる反射面の汚染を防止するため、ステッチ形成中に反射面を介して上糸が運動するようになっているが、このような処置にもかかわらず、赤外線が通過する多数の貫通穴が設けられているために比較的故障しがちであり、製造コストが高い。また、ボビンケース上部部分と対応するボビンとを整合させる必要があるばかりでなく、ボビンケース下部部分と反射面を備えた外釜とを整合させる必要もある。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許公開第3447138A1号公報が開示している本縫いミシン用の装置は、現時点での作動時様態に依存して作動状態に割り当て可能な複数の信号列を生じさせる。ボビンが十分に充填されている場合および縫製作動に支障がない場合には正弦状に極めて近い変化を示す信号列が生じ、ボビンの充填が十分でない場合には間欠的にリプル状に変化する信号列が生じ、故障に対応するボビン停止時にはコンスタントに延びる信号列が生じる。
【0010】
ボビンがまだ十分に充填されていて回転している場合、反射ヘッドから出る赤外線は貫通穴を覆っている巻糸と貫通穴の間にあるボビンフランジの反射面とによって交互に反射せしめられ、これにより前述した正弦状に極めて近い変化を示す信号列が生じる。これに対して、ボビンにかろうじて残糸が残っている場合には貫通穴は開放され、信号列は第1のボビンフランジの反射内面と第2のボビンフランジの反射外面とにより交互に形成される。この信号列はこの公報においては図3に図示され、「水平リプル」と記載されているが、ボビンフランジの内面と外面とが実質的に同じ反射率であることを考慮すると、このように形成された信号列は基本的には継続信号であると見なすべきである。ボビン停止時に赤外線は貫通穴の1つを通って一方のボビンフランジの内面に達してこれによって反射されるか、或いは、貫通穴の間にあるボビンフランジ外面領域に当たってこれによって反射されるかのいずれかであるので、ボビンが残糸でかろうじて充填されていて回転している場合に生じる信号列と、同様に残糸でかろうじて充填されているが、ボビンが停止しているときに生じる信号列との間に実質的に相違がないことは明らかである。したがって、ボビンが残糸でかろうじて充填されている場合に、このようにして生じた信号列を拠り所としてボビンが回転しているか停止しているかを区別することはきわめて困難である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、本縫いミシンの3つの可能な作動状態を監視するための装置において、すなわちボビンの充填度がまだ残糸よりも多めにある作動状態と、ミシンが残糸を消費している作動状態と、ボビンを停止させる糸切れのような障害がある作動状態とを監視するための装置において、低コストに製造可能で、縫い埃による汚染の少ない装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、ミシン上軸が1回転するたびにマイクロコンピュータにパルスを送る回転センサと、ボビンに指向する検出光線であって、ボビンまたは残糸の巻糸から受光器のほうへ反射し、受光器から消費信号、評価信号および(または)転送信号の形態でマイクロコンピュータに送られる前記検出光線を送出させるための赤外線レーザー送光器と、種々の信号変化をミシンを制御する制御信号を発生させるための検出閾値と比較するべくマイクロコンピュータ内に設けられる比較装置と、マイクロコンピュータと接続され、赤外線レーザー送光器のパワーを一時的に段階的に減少させるために制御可能な電源とを有し、ボビンケースに挿着される前記ボビンが、半径方向に指向する細条部により互いに分断される少なくとも2つのチャンバーを備え、一方のチャンバーである残糸室残糸を受容し、他方のチャンバーである本糸室が本糸を受容し、細条部の、赤外線レーザー送光器側の端面と、この端面に隣接している、ボビンのフランジの外面とが、光を反射するように構成され、フランジが検出光線を貫通させるための貫通穴を有していることを特徴とするものである。
【0013】
赤外線レーザー送光器を使用することにより、従来使用されていた赤外線送光器に比べ、高平行度、よってビーム高濃度、高放射パワー、高単色性といったコヒーレントな光線が得られるという利点がある。
【0014】
この場合、特に高平行度と高放射パワーとにより、赤外線レーザー送光器も受光器として用いられる受光フォトトランジスタもボビンに対し比較的大きな間隔で配置することができ、したがって転向ミラーやプリズムを設けずに済み、他方埃による汚染度も著しく減少する。
【0015】
さらに、本発明による監視装置では、通常の金属反射率をもったボビンを使用できるので、残糸用のチャンバーと本糸用のチャンバーとを備えた市販のボビンを使用でき、この場合ボビンのフランジの外面と、残糸用のチャンバーを画成している細条部の、前記外面に隣接している端面との間隔は、ボビンのフランジと細条部の端面とから種々の強度の信号を得るのに十分なものである。
【0016】
マイクロコンピュータがステッチバックカウンタを有し、残糸の消費を検知した後に、すなわち残糸の消費開始前に、ステッチバックカウンタに残糸でまだ実施可能なステッチ数または縫い目数または縫製物の枚数を供給可能であり、ミシンの回転センサによりステッチバックカウンタをカウントバックさせることにより、所定数のステッチまたは縫い目の形成後、或いは所定枚数の縫製物の縫製後、ミシンの制御部にミシン停止信号を供給する処置、および(または)表示装置を作動させる処置を取るように構成すれば、本発明による監視装置はグループステッチミシンや自動縫製設備での使用に対しても特に適している。
【0017】
赤外線レーザー光線が残糸の巻糸にあたったときにたとえば糸切れによって生じるボビンの停止を検知できるようにするため、本発明による監視装置は他のステッチバックカウンタを有し、このステッチバックカウンタは、検出閾値を下回るたびに、反射した検出光線により導出される信号によって予め選定可能なステッチ数に設定可能であり、且つ回転センサによりマイクロコンピュータに供給されるパルスによってカウントバック可能であり、且つゼロの値に達したときにミシン停止信号を発生させ、および(または)表示装置を作動させる。これにより、ボビン停止後わずか数ステッチでミシンを停止させることができる。
【0018】
本発明による監視装置をできるだけ縫い埃によって生じる影響から防護するため、赤外線レーザー送光器はその性能に関連した電流強さで作動する。これには作動安定性に優れているという利点があるが、検出光線がボビンのフランジに当たるか、細条部の端面に当たるかに関係なく継続反射が発生し、そのほぼコンスタントな信号変化は、検出光線が残糸の消費に起因するものなのか、或いはボビンの停止に起因するものなのかに関する情報をもたらさないという欠点がある。この場合、ボビンの停止によって生じるコンスタントな信号変化から、残糸の消費の際に形成され、検出閾値の片側から他の側へ移行する正弦状の信号変化を除外するため、マイクロコンピュータは以下のようなステッチバックカウンタを有し、すなわち、検出閾値よりも下の範囲から検出閾値よりも上の範囲へ信号が移行することによってこのステッチバックカウンタを始動させることにより、予め決定可能なステッチ数の後に信号の移行が起こらないときに、電源から赤外線レーザー送光器に供給可能な電流をその標準作動強さから最小強さへ段階的に減少させるための信号を発生させる。
【0019】
赤外線レーザー送光器に供給されるべき電流の段階的な減少を、この間にすでに信号移行が検知され、よって残糸の消費中に継続反射が生じたことが確定された場合にも最小強さまで行われないようにするため、電源から赤外線レーザー送光器に供給可能な電流の段階的な減少を、段階的に減少させている間に信号移行を行なうことによって終了させることが可能である。
【0020】
第2のフランジも検出光線を貫通させるための貫通穴を有していれば、どちらのフランジを用いてボビンを当初ボビンケースに挿着するかは問題ではなく、すなわち両フランジのうちどちらのフランジが赤外線レーザー送光器に隣接しているかは走査にとって問題ではない。この場合、以下の実施形態で述べるように細条部が両フランジに対して偏心配置され、細条部に隣接しているフランジが赤外線レーザー送光器に隣接するようにボビンがボビンケースに挿着されれば、残糸室に対してもボビンの走査に対しても以下の実施形態で示し述べるような挙動が得られる。
【0021】
これに対して、糸をボビンに巻くに際して、まず本糸室の内側領域を糸で充填し、次に残糸室と本糸室の残りの領域を糸で充填し、このように充填したボビンをボビンケースに挿着して本糸室の内側領域が赤外線レーザー送光器に隣接するようにすれば(これに関しては図1に関連して後述する)、この時点で比較的幅広の残糸室に対しより大きな容積が得られ、すなわち比較的厚みのある糸でも十分な残糸が調達される。反射面とフランジおよび細条部との間隔が赤外線レーザー送光器から出る検出光線と受光器に供給される反射した検出光線との強度を異ならせる原因になるので、ここでも確実な評価結果が達成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を添付の図面を用いて詳細に説明する。
図1はルーパーの本体1を示すもので、本体1は、ボビン糸備蓄部を担持しているボビン2を受容するため、上部部分と下部部分とによって形成されるボビンケース3を有している。ボビンケース3の下部部分のピン4によって受容されているボビン2は、互いに間隔を持って配置される2つのフランジ5,6を有し、フランジ5と6の間には、該フランジに対しほぼ平行に指向する細条部7が配置されている。ボビン2は金属からなっているのが有利で、その結果フランジ5の外側側部境界面も細条部7の外側側部境界面も光を反射する。半径方向に比較的短く延びている細条部7は、ボビン2の受容容積部を、残糸長さを受容する残糸室8と、本糸長さを受容する本糸室9とに分割している。ボビン2のフランジ5には、レーザー光線として構成された検出光線12が貫通する複数個の貫通穴11が円弧状に配置して設けられている。貫通穴11は穿孔部として、或いは円弧状に形成された長穴として構成されている。また貫通穴11は、これらを貫通する検出光線12が細条部7の外側領域に当たるように配置されている。
【0023】
ピン4の上方には、ルーパーの本体1の側方にセンサヘッド13が配置され、センサヘッド13は赤外線レーザー送光器14と対応する受光器15とを有している。受光器15は受光フォトトランジスタとして構成されていてよい。赤外線レーザー送光器14の入力部は電源16と接続され、電源16の電流の強さは、赤外線レーザー送光器14の送光パワーを変化させるため、マイクロコンピュータ17を介して制御されて可変である。赤外線レーザー送光器14から出た検出光線12は、後でさらに詳細に説明するように、フランジ5か細条部7か或いは残糸の巻糸によって反射され、受光器15に送られる。受光器15の出力部は増幅器18を介してマイクロコンピュータ17の第1の入力部と接続されている。マイクロコンピュータ17の第2の入力部はミシンの回転センサ19と接続されており、回転センサ19はミシン上軸20が1回転するごとに、よって1回のステッチ形成サイクルごとにマイクロコンピュータ17にパルスを送る。マイクロコンピュータ17は全部で3つのステッチカウンタを有しており、すなわちステッチバックカウンタAと、ステッチバックカウンタBと、ステッチカウンタCとを有している。これらの機能に関し、以下に本発明による装置の作用の説明に関連して説明する。
【0024】
まず、ミシンの第1の作動状態を考察する。この第1の作動状態では、図4と図5に図示したように本糸室9のボビン糸が消費される。図4において、赤外線レーザー光送信器14から出た検出光線12はボビン2のフランジ5に当たり、フランジ5によって受光器15のほうへ反射する。フランジ5は金属の一般的な反射率をもっており、よって比較的高い反射率を持っているので、検出光線12がフランジ5に当たっている時間内にマイクロコンピュータ17には比較的高い電圧の信号パルスS1が送られる。
【0025】
糸の引出しによりボビン2がさらに回転して検出光線12が貫通穴11の一つに当たると(図5)、検出光線12は巻糸の表面構造によって反射する。糸の表面の反射率は比較的小さく、フランジ5の反射率よりもかなり小さいので、拡散反射となるため、マイクロコンピュータ17には電圧が比較的小さな信号パルスS2だけが受光器15から供給される。両信号パルスはマイクロコンピュータ17内で予め設定されている検出閾値DSと比較され、検出閾値DSを周期的に越えている場合には図6に示すような信号列が発生し、糸の消費が確認される。したがってミシンは第1の作動状態で作動し、すなわち本糸室9の糸が消費される。
【0026】
図7に図示した状態は、残糸室8内で検出レベルを下回り、検出レベル以下の範囲の残糸室8の糸が消費されはじめたばかりの状態である。ボビン2のフランジ5に検出光線12が当たったときの状況は図4の状況に対応している。
【0027】
糸の引出しによりボビン2がさらに回転して検出光線12が貫通穴11の一つに当たって(図8)、細条部7まで達すると、検出光線12は細条部7から受光器15のほうへ反射する。細条部7がボビン2のフランジ5と同じ反射率を有しているので、検出光線12が細条部7に当たっている時間内にマイクロコンピュータ17には比較的電圧の高い信号パルスが送られる。したがって、検出光線12がフランジ5に当たるか細条部7に当たるかに関係なく継続反射が生じ、図9に図示したように信号の変化はほぼ一定になる。この信号変化にリプル電圧が重畳される。リプル電圧はフランジ5の反射面と細条部7の反射面との間隔から生じるばかりでなく、ボビン2の回転ムラ、ミシンの振動によっても生じる。このリプル電圧は比較的小さく、しかも検出不能ないくつかの偶然性から発生するものなので、前記信号の変化から予測されるのは、検出レベルにいま到達したこと、ミシンが第2の作動状態で縫製していること、すなわち残糸室8の糸が消費されることにすぎない。
【0028】
ボビン2を充填して残糸室8内に蓄えられている糸の長さを実験的に調べるか、或いは、糸の太さと残糸室8の収容容積をもとに算出するかして、対応する値を1回のステッチ形成サイクルごとの糸消費量とともにマイクロコンピュータ17にファイルすると、マイクロコンピュータ17はステッチバックカウンタAをセットする。ステッチバックカウンタAはそのパルスを回転センサ19から得る。ステッチバックカウンタAがゼロの値までカウントバックすると、この時点で残糸長さは消費されてしまったので、ミシンを停止させる。
【0029】
1つの縫い目ごとのステッチ数または1枚の縫製物ごとのステッチ数が既知であれば、1つの縫い目ごとのステッチ数または1枚の縫製物ごとのステッチ数を前もってマイクロコンピュータ17に入力することにより、すでに残糸の消費開始時点で、まだ形成可能な縫い目数或いは縫製物の枚数を入力することができるので、所定数のステッチまたは縫い目の形成後、或いは所定枚数の縫製物の縫製後、マイクロコンピュータ17はミシン停止信号をミシン制御部に送り、および(または)表示装置を作動させる。
【0030】
ボビン糸の糸切れは特殊なケースである。糸切れが起きると、糸の引出しがなくなるのでボビン2は停止する。下糸が切れて検出光線12がボビン2のフランジ5に当たるか、細条部7に当たると、それぞれ継続反射が生じる。この継続反射は、検出光線12がフランジに当たる図4の状況に対応するか、或いは、検出光線12が細条部7に当たる図8の状況に対応している。図5の状況で糸切れが起きて検出光線12が1つの貫通孔11を通って巻糸まで達すると、定常拡散反射が生じる。これにより検出閾値DS以下の継続信号が発生し、この継続信号は図6の信号S2の変化に対応している。いまある一定数のステッチが形成されている間に検出閾値DSよりも上の範囲へ信号が移行しないとすると、ボビン2は停止し、糸切れにより発生する障害が存在する。この状況を検出するためにマイクロコンピュータ17はステッチバックカウンタBを有している。ステッチバックカウンタBは、検出閾値DSを下回るたびに、予め選定可能なステッチ数に設定可能である。ステッチバックカウンタBが値ゼロに達して、検出閾値DSよりも上の範囲への信号の移行がないとすると、これによりミシンが停止されて、対応する報知が操作者になされる。
【0031】
ボビン糸が切れたときにボビン2が継続反射が行なわれるような位置に留まると、図11に対応するような信号変化が生じる。この信号変化は検出閾値DSよりも常に上の範囲にある図9の信号変化とかなり類似している。継続反射から、ボビン糸が残糸によって消費されるのか、或いはボビン2が停止しているのかの情報を導出することはできない。この状況に対応しているのは、検出光線12が停止してまだ充填されているボビン2のフランジ5に当たっている図4の状況か、或いは、検出光線12がかろうじて残糸を有して静止しているボビン2の細条部7に当たっている図8の状況か、或いは、検出光線12がかろうじて残糸を有して静止しているボビン2のフランジ5に当たっている図10の状況である。図11の信号変化は図9の信号変化(貫通穴11を通って細条部7にあたる検出光線12による残糸の消費)に著しく類似しているので、図11の信号変化は作動状態に関する情報を含んでいない、即ち図11の信号変化から、この変化がボビン2の停止に起因するものなのか、或いは、残糸の正常な消費に起因するものなのかを導出することはできない。
【0032】
この信号変を検出するため、検出閾値DSよりも下の範囲から検出閾値DSよりも上の範囲へ信号が移行するたびにステッチカウンタCを始動させる。一定数のステッチ(たとえば2ステッチ)を縫った後に検出閾値DSよりも下の範囲への信号の移行がなければ、マイクロコンピュータ17は制御可能な電源16を用いて赤外線レーザー送光器14への電流を、よってその送光パワー(正常状態では可能な限り高い値にある)を図13に示すようないくぶん低い値へ減少させる。さらに信号の移行がなければ、前記電流を一定のステッチ数を縫った後に更なる量だけ減少させる。送光パワーの減少により装置は増感する。これにより、赤外線レーザー送光器14までのフランジ5の反射面と細条部7の反射面との距離が異なっていれば、一定の送光パワーを下回ってボビン2がまだ回転しているときに信号の移行を検知できる。
【0033】
赤外線レーザー送光器14に供給可能な電流の減少は最小電流まで反復させることができる。この場合信号の移行が相変わらず起こらないならば、ボビン2は停止している。即ち糸の引出しは行なわれない。この場合操作者に適宜知らせることによりミシンを停止させてもよい。送光パワーが減少して信号の移行が起きると、ボビン2が回転していること、この時点で図8の状況に応じて残糸が消費されることが予想できる。赤外線レーザー送光器14のパワーは新たなサイクルのためにその最大値へリセットさせることができる。
【0034】
段階的に減少させることにより、正常な作動の場合、特に本糸室9に備蓄されているボビン糸を消費しているときに比較的高い送光パワーで作動させることができるので、汚染または製造公差或いは組立公差により反射特性が悪化してもパワーの供給を十分に行なえるとともに、ある特定の作動状態を検出している間に、かなり小さな送光パワーで赤外線レーザー送光器14までのフランジ5の反射面と細条部7の反射面との異なる距離から種々の信号変化を検知することができる。
【0035】
図13ないし図18は上記プロセスの信号変化を図示したものである。図13は、制御可能な電源16から赤外線レーザー送光器14へ達する電流をマイクロコンピュータ17により多段階で減少させて赤外線レーザー送光器14の送光パワーを段階的に減少させる信号変化を示したものである。
【0036】
図14は、ステッチカウンタCを始動させた後、赤外線レーザー送光器14のパワーを減少させて連続的に形成されるステッチの数を時間に関連付けたグラフである。
【0037】
図15は、継続反射中の信号変化をもう一度示すもので、この信号変化が検出閾値DSよりも上の範囲にあり、ミシンの作動状態に関する情報をこの信号変化から読み取れないことを示すものである。
【0038】
図16に図示した状況では、赤外線レーザー送光器14に供給される電流は第1ステップだけ減少させている。信号の強度は減少させた電流の強さに応じて減少しているが、信号変化はまだ検出閾値DSよりも上の範囲にある。信号変化にはすでにリプルが認められるが、継続反射の場合の信号変化とわずかしか異なっていないので、作動状態に関する情報を得るにはまだ十分でない。
【0039】
図17に図示した状況では、赤外線レーザー送光器14に供給される電流は第2ステップだけ減少させている。信号の強度は減少させた電流の強さに応じて減少しているが、信号変化はまだ検出閾値DSよりも上の範囲にある。信号変化のりプルはさらに著しいものになっており、残糸室8の糸が消費される間の信号変化に近似した輪郭を有している。しかし信号変化はまだ検出閾値DSよりも上の範囲にあり、したがってまだ信号の移行はないので、信号移行に関する確実な情報はなされず、よって作動状態に関する確実な情報もなされない。
【0040】
図18に図示した状況では、赤外線レーザー送光器14に供給される電流の強さは総じて3ステップだけ減少させている。この電流の強さは赤外線レーザー送光器14に供給されるべき最小電流強さをも同時に表わしている。信号変化は検出閾値DSを下回っており、残糸室8の糸が正常に消費されるときの信号変化に対応している。図11に示す信号変化は赤外線レーザー送光器14の性上の作動電流を使用して生じるものであり、継続反射を推量させるものであるが、この信号変化は赤外線レーザー送光器14に供給可能な電流を何度も減少させることにより、残糸室8の糸が正常に消費されているときの信号変化に対応するような信号変化と見なすことができる。
【0041】
赤外線レーザー送光器14が正常な電流強さで作動しているときに発生する信号は継続反射を示唆するものであり、ミシンの作動状態に関する情報を与えるものではないが、赤外線レーザー送光器14が一時的に電流の強さを段階的に減少させて作動しているときにはこの見かけの継続反射を残糸室8の糸が正常に消費されているときの信号変化と見なすことができるので、マイクロコンピュータ17は数ステッチ後にすでに、この場合の信号変化が図8の状況に対応するような信号変化であり、操作者に適宜報知してミシンをストップさせるための信号を発生させるような信号変化であると判断する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ルーパーをも併せて示した本発明による監視装置の概略図である。
【図2】ボビンの端面図である。
【図3】ボビンの端面図である。
【図4】本糸が消費されている間の検出光線の延在態様を、ボビンのフランジに当たる検出光線12によって示した図である。
【図5】本糸が消費されている間の検出光線の延在態様を、貫通穴を貫通する検出光線12によって示した図である。
【図6】図4および図5の検出結果から得られる信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【図7】残糸が消費されている間の検出光線の延在態様を、ボビンのフランジに当たる検出光線12によって示した図である。
【図8】残糸が消費されている間の検出光線の延在態様を、貫通穴を貫通する検出光線12によって示した図である。
【図9】図7および図8の検出結果から得られる信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【図10】検出光線12がボビン停止時にボビンのフランジに当たったときの該検出光線12の延在態様を示す図である。
【図11】図10の検出結果から得られる信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【図12】電源の電流強さを減少させた後の、図10の検出結果から得られる信号変化を示したグラフである
【図13】電源の電流強さを段階的に減少させている間の電流強さの変化を示すグラフである。
【図14】電流強さを減少させている間に形成されるステッチの割り当てを示すグラフである。
【図15】電源の電流強さを減少させた後の、作動状態に関する情報を含まない信号変化を、検出閾値とともに示したグラフである。
【図16】図8による残糸消費中に電源の電流強さを減少させた後の信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【図17】図8による残糸消費中に電源の電流強さを減少させた後の信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【図18】図8による残糸消費中に電源の電流強さを減少させた後の信号変化を検出閾値とともに示したグラフである。
【符号の説明】
1 ルーパーの本体
2 ボビン
5,6 フランジ
7 細条部
8 残糸室
9 本糸室
11 貫通穴
12 検出光線
14 赤外線レーザー送光器
15 受光器
16 電源
17 マイクロコンピュータ
19 回転センサ
DS 検出閾値
Claims (6)
- 下糸備蓄部を受容しているボビンケースを備えた回転するルーパーを有する本縫いミシンにおけるボビン糸監視装置において、
ミシン上軸(20)が1回転するたびにマイクロコンピュータ(17)にパルスを送る回転センサ(19)と、
ボビン(2)に指向する検出光線(12)であって、ボビン(2)または残糸の巻糸から受光器(15)のほうへ反射し、受光器(15)から消費信号、評価信号および(または)転送信号の形態でマイクロコンピュータ(17)に送られる前記検出光線(12)を送出させるための赤外線レーザー送光器(14)と、
種々の信号変化をミシンを制御する制御信号を発生させるための検出閾値(DS)と比較するべくマイクロコンピュータ(17)内に設けられる比較装置と、
マイクロコンピュータ(17)と接続され、赤外線レーザー送光器(14)のパワーを一時的に段階的に減少させるために制御可能な電源(16)とを有し、
ボビンケースに挿着される前記ボビン(2)が、半径方向に指向する細条部(7)により互いに分断される少なくとも2つのチャンバーを備え、一方のチャンバーである残糸室(8)が残糸を受容し、他方のチャンバーである本糸室(9)が本糸を受容し、細条部(7)の、赤外線レーザー送光器(14)側の端面と、この端面に隣接している、ボビン(2)のフランジ(5)の外面とが、光を反射するように構成され、フランジ(5)が検出光線(12)を貫通させるための貫通穴(11)を有していることを特徴とするボビン糸監視装置。 - マイクロコンピュータ(17)がステッチバックカウンタ(A)を有し、残糸の消費を検知した後にステッチバックカウンタ(A)に残糸でまだ実施可能なステッチ数または縫い目数または縫製物の枚数を供給可能であり、ミシンの回転センサ(19)によりステッチバックカウンタ(A)をカウントバックさせることにより、所定数のステッチまたは縫い目の形成後、或いは所定枚数の縫製物の縫製後、ミシンの制御部にミシン停止信号を供給することおよび(または)表示装置を作動させることを特徴とする、請求項1に記載のボビン糸監視装置。
- 検出光線(12)がボビン(2)の巻糸にあたったときにボビン(2)の停止を検知するためにマイクロコンピュータ(17)がステッチバックカウンタ(B)を有し、ステッチバックカウンタ(B)は、検出閾値(DS)を下回るたびに、反射した検出光線(12)により導出される信号によって予め選定可能なステッチ数に設定可能であり、且つ回転センサ(19)によりマイクロコンピュータ(17)に供給されるパルスによってカウントバック可能であり、且つゼロの値に達したときにミシン停止信号を発生させることおよび(または)表示装置を作動させることを特徴とする、請求項1に記載のボビン糸監視装置。
- 検出光線(12)の継続反射によって形成され且つ検出閾値(DS)を下回らない信号変化のうち正弦状の信号変化を検知するためにマイクロコンピュータ(17)がステッチバックカウンタ(C)を有し、検出閾値(DS)よりも下の範囲から検出閾値(DS)よりも上の範囲へ信号が移行することによってステッチバックカウンタ(C)を始動させることにより、予め決定可能なステッチ数の後に信号の移行が起こらないときに、電源(16)から赤外線レーザー送光器(14)に供給可能な電流をその標準作動強さから最小強さへ段階的に減少させるための信号を発生させることを特徴とする、請求項1に記載のボビン糸監視装置。
- 電源(16)から赤外線レーザー送光器(14)に供給可能な電流の段階的な減少を、段階的に減少させている間に信号移行を行なうことによって終了させることが可能であることを特徴とする、請求項4に記載のボビン糸監視装置。
- 第2のフランジ(6)も検出光線(12)を貫通させるための貫通穴(11)を有していることを特徴とする、請求項1に記載のボビン糸監視装置。
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