JP4203798B2 - 回転式ゲート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、扉体の上下方向の移動によって越流量調節を行うゲートであって、詳しくは、扉体が水平軸回りに回転して上下する回転式ゲートに関する。
【0002】
【従来の技術】
河川途中に配設されて水位調節等に用いられるゲートとしては、起伏ゲート付き2段ローラーゲートや、ライジングセクターゲートと呼ばれる回転式のゲート(特許文献1,2参照)が知られている。何れのゲートも扉体の上縁の位置(高さ)を変化させることでを越流量を調節するものであり、開度に対する流量変化の割合が小さく流量制御が容易なものである。
【0003】
起伏ゲート付き2段ローラーゲートは、図6(A)にその一例の断面図を示すように、洪水時に扉体61を堤防高さまで引き上げ可能な高さの門柱62の上端に、更に扉体61を昇降駆動するウインチ等の昇降駆動機構63を配置しなければならないため、コストを要すると共に大きな建造物が水面上に突出することとなって周囲環境や景観に少なからぬ影響を与える。
【0004】
一方、ライジングセクターゲートは、図6(B)に断面図を示すように、一対の支持円盤65Aの間に半円形より小さい断面形状の扉体65Bが架設されて成るゲート本体65が、扉体65Bを水平として支持円盤65Aを介して堰柱66に水平軸で回転可能に支持されると共に、対応する河床部に扉体65Bを格納する凹部67が掘り込まれて構成されている。そして、扉体65Bが立ち上がった状態で全閉状態となり、この状態からゲート本体65が図中反時計回りに回転して凹部67に扉体65Bが格納された状態で開放状態となる。ゲート本体65の回転駆動機構は、例えば支持円盤65Aの外面に設けられたラックに噛合するピニオンを回転駆動するように構成される。これによれば大きな建造物が水面上に突出することがないため、周囲環境や景観への影響が少ないという特長がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−183586号公報
【特許文献2】
特開平9−316859号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のごとき従来の回転式のゲートでは、両端の支持円盤が大きく重く、また、河床部に扉体を格納する大きな掘り込みが必要となるために土木構造物が大きくなり、コストが高いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、小型軽量且つ低コストに構成できる回転式ゲートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の回転式ゲートは、河床が平坦に形成された水路の両側に立設された堰柱と、外面が円弧状で前記堰柱間隔と対応する長さの扉体およびこの扉体の両端に設けた脚柱で構成されるゲート本体と、前記堰柱には前記ゲート本体の脚柱を収容する収容凹部が形成され、この収容凹部に前記ゲート本体の前記脚柱を、前記扉体の円弧状外面の中心位置で前記堰柱の前記河床から前記円弧状外面の半径と略等しい高さに枢支する一方、前記扉体の外面と前記河床の間をシールする河床部シール部材と、前記扉体の側面と前記堰柱の間をシールする側部シール部材と、前記扉体を揺動させて上縁位置を変化させることによって越流量を調節し得ると共に大流量時には上側に退避させて水路を開放し得る回転駆動手段と、を備え、前記脚柱の、前記扉体が上側に退避した水路開放時において上流側となる側に、当該脚柱を覆い前記収容凹部内面とゆるやかに連続する傾斜面を有する整流保護板部材を設けて、構成されていることを特徴とする。
【0009】
この構成では、流量調節は扉体の揺動によって行い、洪水等の大流量時には上側に退避させて水路を開放する。脚柱は収容凹部内に収容されるため、流水の妨げとはならない。扉体の側部に大きく重い支持円盤はなく、また、河床部に開放時に扉体を格納する掘り込みも必要としない。
また、上記脚柱の、上記扉体が上側に退避した水路開放時において上流側となる側に、当該脚柱を覆い前記収容凹部内面とゆるやかに連続する傾斜面を有する整流保護板部材が設けられて構成されていることにより、水路開放時には、整流保護板部材が脚柱の上流側に位置し、流木等の流下物の脚柱への衝突を防ぐように作用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る回転式ゲートの一構成例の概念断面図,図2は上流側から見た正面図,図3は平面図である。
【0013】
図示回転式ゲート1は、水路2の両側に配設された堰柱3,3の間に、扉体11を備えるゲート本体10が水路2と直交する水平な軸回りに回転可能に設けられると共に、ゲート本体10を回転駆動する回転駆動手段としての油圧シリンダ20を備えて構成されている。そして、油圧シリンダ20によってゲート本体10を回転操作することによる扉体11の上縁の上下によって越流量の調節を行うと共に、洪水等の出水時には上側に大きく揺動退避させて水路2を開放し得るようになっている。尚、本構成例においては、ゲート本体10の枢支点(支持軸31)は、調節水位範囲よりは上側であるが出水時には水没する位置に設定されている。
【0014】
ゲート本体10が設けられる堰柱3,3の間の河床2Aは平坦に形成されており、また、ゲート本体10を支持する堰柱3,3の部位には後述する脚柱12の厚さと対応する深さの収容凹部3Aが形成されている。収容凹部3Aの上流側の縁の支持軸31より下側は、扉体11の外面に添う円弧形状となっている。
【0015】
ゲート本体10は、扉体11の左右両端にそれぞれ脚柱12が延設されて形成され、その脚柱12の基端に設けられたボス13を介して堰柱3,3に植設された支持軸31に支持されている。
【0016】
扉体11は、ボス13(支持軸31)を中心とする半円(180゜)以下の所定角度範囲の円弧状の外面を有する所定厚さの紡錘状断面で、堰柱3,3の間隔と対応する長さに形成されている。
【0017】
脚柱12は、所定厚さの板状で、扉体11の前後両端とボス13を結ぶ扇形となっている。一方の脚柱12の前縁には油圧シリンダ20のロッドが枢着される操作部14が突設されており、また、左右両脚柱12の後縁にはそれぞれ整流保護板部材としての整流保護板15が取り付けられている。
【0018】
整流保護板15は、脚柱12と対応する厚さ及び長さの板状で、後縁側が所定角度の楔形の断面形状となっており、堰柱3と脚柱12の間を所定の角度で連続させるように設けられている。
【0019】
上記のごとき構成のゲート本体10は、前述のごとく堰柱3,3に植設された支持軸31によって回転可能に支持されている。支持軸31の位置は河床2Aから扉体11の外面の円弧半径より僅かに高く設定されており、これによってゲート本体10の扉体11の外面と河床2Aとが所定間隔で近接し、ここに床部シール部材としての河床部水密ゴム40が設けられている。
【0020】
河床部水密ゴム40は、図1のX部拡大図である図4(A)に示すように、河床2Aに水路2と直交する方向に配設されており、扉体11の外面に当接してその上流と下流の間を水密的にシールするようになっている。扉体11の外面は、前述のごとくその回転中心である支持軸31を中心とする円弧状であるため、その回転によっても扉体11の外面と河床部水密ゴム40との位置関係は変化せず、シール状態を保つことができる。
【0021】
また、脚柱12は堰柱3の収容凹部3A内に位置して水路2内に突出しないようになっている。ゲート本体10の側端面は、堰柱3の収容凹部3Aの内面に所定間隔で近接しており、ここに側部シール部材としての側部水密ゴム50が設けられている。
【0022】
側部水密ゴム50は、図3のY部拡大図である図4(B)に示すように、ゲート本体10の側面に扉体11の円弧状外面に沿って配設されており、堰柱3の収容凹部3Aの対抗面に当接してその上流と下流の間を水密的にシールするようになっている。
【0023】
油圧シリンダ20は、一方の堰柱3の上面に設けられたブラケット32によって支持軸31と平行な枢支軸で揺動可能に支持されて、ゲート本体10の揺動面と同一面内で揺動し得るように設けられており、その伸縮するロッド21の先端がゲート本体10の操作部14に枢着されている。これにより、ロッド21を伸縮させることでゲート本体10を揺動操作し得るようになっている。ロッド21の伸縮ストロークは、扉体11が図1中一点鎖線で示す開放位置と、二点鎖線で示す最低位置との間でゲート本体10を回転し得るように設定されている。
【0024】
上記のごとく構成された回転式ゲート1では、油圧シリンダ20の駆動によってゲート本体10を支持軸31を中心として回転させ、その上縁の高さを変化させることで所定範囲内において流量制御を行う。つまり、扉体11の上縁を図1中に示す最小開度と最大開度の間で変化させて流量制御を行うことができる。この放流時、ゲート本体10の脚柱12は、堰柱3の収容凹部3A内に位置するため、水路2の流下断面積は変化しない。
【0025】
一方、図中計画最高水位まで水位が上がる洪水等の出水時には、ゲート本体10を図1中時計回りに大きく回転させて、図1中一点鎖線で示すと共に図5に示すように、扉体11を水面上に位置させて開放状態とする。この時、収容凹部3Aの上流側の縁とゲート本体10の脚柱12の間が開き、支持軸31より上側に達した水が収容凹部3Aに流れ込むこととなるが、脚柱12の上流側に整流保護板15が位置し、これによって流木等の流下物が脚柱12に直接衝突することによる損傷を防ぐ。
【0026】
このような回転式ゲート1によれば、駆動機構(油圧シリンダ20)を堰柱3上に配設することができるために景観に優れ、また、一葉の扉体で流量制御が可能であると共に側部に大きな支持円盤を必要としないため、極めて小型軽量に構成できる。更に、河床部に扉体を格納する掘り込みが不要であって土木構造物も小型化でき、低コストに構成できるものである。
【0027】
尚、本発明は上記構成例に限るものではなく、適宜変更可能なものである。例えば、ゲート本体10を回転駆動する駆動手段としては巻き上げ機を用いても良く、また、脚柱12の形状は必要強度が得られば扇形でなくとも良いものである。
【0028】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る回転式ゲートによれば、河床が平坦に形成された水路の両側に立設された堰柱と、外面が円弧状で前記堰柱間隔と対応する長さの扉体およびこの扉体の両端に設けた脚柱で構成されるゲート本体と、前記堰柱には前記ゲート本体の脚柱を収容する収容凹部が形成され、この収容凹部に前記ゲート本体の前記脚柱を、前記扉体の円弧状外面の中心位置で前記堰柱の前記河床から前記円弧状外面の半径と略等しい高さに枢支する一方、前記扉体の外面と前記河床の間をシールする河床部シール部材と、前記扉体の側面と前記堰柱の間をシールする側部シール部材と、前記扉体を揺動させて上縁位置を変化させることによって越流量を調節し得ると共に大流量時には上側に退避させて水路を開放し得る回転駆動手段と、を備え、前記脚柱の、前記扉体が上側に退避した水路開放時において上流側となる側に、当該脚柱を覆い前記収容凹部内面とゆるやかに連続する傾斜面を有する整流保護板部材を設けて、構成されていることにより、側部に大きな支持円盤を必要としないため、極めて小型軽量に構成できると共に、河床部に扉体を格納する掘り込みが不要であって土木構造物も小型化でき、低コストに構成できるものである。
また、上記脚柱の、上記扉体が上側に退避した水路開放時において上流側となる側に、当該脚柱を覆い前記収容凹部内面とゆるやかに連続する傾斜面を有する整流保護板部材が設けられて構成されていることにより、整流保護板部材が水路開放時に脚柱の上流側に位置し、脚柱への流木等の流下物の衝突を防いで損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転式ゲートの一構成例の概念断面図である。
【図2】回転式ゲートを上流側から見た正面図である。
【図3】回転式ゲート平面図である。
【図4】(A)は図1のX部拡大図,(B)は図3のY部拡大図である。
【図5】開放状態の回転式ゲートを示す断面図である。
【図6】従来例としてのゲートの概念断面図を示し、(A)は起伏ゲート付き2段ローラーゲート,(B)はライジングセクターゲートである。
【符号の説明】
1 回転式ゲート
2 水路
2A 河床
3 堰柱
3A 収容凹部
10 ゲート本体
11 扉体
12 脚柱
15 整流保護板(整流保護板部材)
20 油圧シリンダ(回転駆動手段)
31 支持軸
40 河床部水密ゴム(河床部シール部材)
50 側部水密ゴム(側部シール部材)
Claims (1)
- 河床が平坦に形成された水路の両側に立設された堰柱と、
外面が円弧状で前記堰柱間隔と対応する長さの扉体およびこの扉体の両端に設けた脚柱で構成されるゲート本体と、
前記堰柱には前記ゲート本体の脚柱を収容する収容凹部が形成され、この収容凹部に前記ゲート本体の前記脚柱を、前記扉体の円弧状外面の中心位置で前記堰柱の前記河床から前記円弧状外面の半径と略等しい高さに枢支する一方、
前記扉体の外面と前記河床の間をシールする河床部シール部材と、
前記扉体の側面と前記堰柱の間をシールする側部シール部材と、
前記扉体を揺動させて上縁位置を変化させることによって越流量を調節し得ると共に大流量時には上側に退避させて水路を開放し得る回転駆動手段と、を備え、
前記脚柱の、前記扉体が上側に退避した水路開放時において上流側となる側に、当該脚柱を覆い前記収容凹部内面とゆるやかに連続する傾斜面を有する整流保護板部材を設けて、構成されていることを特徴とする回転式ゲート。
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