JP4097478B2 - フラップゲート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海岸の防潮堤、河川の排水樋門或いはダムの保安ゲート等に使用され、水路の導出口を扉体で強制的に開閉し得るとともに水密性の良いフラップゲートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のようにフラップゲートは、ゲート(扉体)がその上部の水平軸を丁番式で軸支して水路の導出口(開口端)で揺動するように設けられ、内外水圧差に応じて自動的にゲートが開閉するようにした水門であり、ゲートを軸支する形態には一点ヒンジと二点ヒンジとがある。
【0003】
図9(a),(b)は、従来のフラップゲートを示す要部側断面図であり、図9(a)は一点ヒンジ式、図9(b)は二点ヒンジ式によるフラップゲートであり、水路1の開口端2に設けられる。図9(a)のフラップゲートは、扉体3を支持アーム4で支え、支持アーム4がヒンジ6aで吊金具5に軸支されている。扉体3の裏面には水密ゴム8が設けられ、開口端2を扉体3で閉じた際に漏水がないようにしている。図9(b)のフラップゲートは、吊金具5にヒンジ6aでリンク部7の一端が軸支され、リンク部7の他端に扉体3を支える支持アーム4がヒンジ6bで軸支されている。
【0004】
従来のフラップゲートとしては、本出願人による従来例、例えば実願平6−15131号(実用新案登録第3011165号)がある。この従来のフラップゲートは、回転軸に扉体が咬み合いヒンジで揺動するように設けられ、急激に海水,湖水等が上昇した場合等の緊急時に水路の開口端を扉体が強制的に閉鎖するようになされものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の一点ヒンジ式のフラップゲートは、図9(a)に示したように、扉体3が回転軸の軸中心であるヒンジ6aを軸として揺動しており、扉体3と回転軸との距離が離れるに連れて加工精度や施工時の精度が良くない場合には、開口端2と扉体3との密着が不十分となり、開口端2と扉体3との間に隙間Xが生じ易い欠点がある。無視できない程度に隙間Xが生じれば、海水等が水圧によって、隙間Xから水路1内に流入するおそれがあった。このような問題点を解決するフラップゲートとしては、二点ヒンジ式のフラップゲートがあった。
【0006】
図9(b)の二点ヒンジのフラップゲートは、吊金具5と支持アーム4との間にリンク部7が設けられ、リンク部7の両端がヒンジ6a,6bにより、吊金具5と支持アーム4とにそれぞれ軸支されて、扉体3が揺動するようになされており、このような二点ヒンジのフラップゲートでは、扉体3の揺動の横方向Yの自由度が増し、水路1の開口端2の戸当たりに水密ゴム8が均等に圧着し、良好な水密が得られる。
【0007】
しかし、防潮堤や排水樋門に二点ヒンジのフラップゲートを設置した場合、海水の水位の変動が頻繁に発生して扉体3が簡単に揺動し、海水が水路1内を通して河川側に流入するおそれがあり、また、排水樋門においては、洪水による河川の増水で、河川水が堤内側に流入するおそれがあり、このような事態には、扉体3を緊急時に強制的に閉じて、海水や河川水が流入するのを阻止する必要があるが、図9(b)のフラップゲートでは、扉体3を支える支持アーム4がヒンジ6a,6bでリンク部7を介して吊金具5に連結されているために、構造的に強制的な開閉が困難である欠点があった。
【0008】
また、実願平6−15131号のフラップゲートは、通常の河川での使用には問題がないが、咬み合わせヒンジの構造から扉体の強制開閉の動作を行うためのトルクアームの回動角が大きい。このようなフラップゲートは、例えば海水等の水位の上昇が急激な場合、扉体で水路の開口端を閉鎖しなければならないが、扉体を完全に強制閉鎖状態にするまでの時間がかかり過ぎる欠点があった。従って、防潮堤や中規模以上の水路には適さず、緊急時などの水位の上昇に素早く対応できるように、トルクアームを比較的少ない回転角で強制開閉が可能な状態へと移動できるフラップゲートが要求されていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、内外水圧差が小さくても扉体の揺動が容易であって、しかもトルクアームの少ない回転角で扉体の強制的開閉可能な状態に移行し得るとともに扉体による開口端閉鎖時の水密性が良好なフラップゲートを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成したものであり、請求項1の発明は、水路の開口端に内外水圧差により揺動する扉体を備えるフラップゲートにおいて、
前記扉体強制開閉するための駆動手段に連動して回動する回転軸が前記開口端上部に軸支され、前記回転軸の両端から軸方向に支持軸が突出し、前記扉体が前記支持軸に揺動するように設けられ、かつ前記扉体が前記開口端近傍で略平行に移動するように、前記支持軸中心が前記回転軸中心に対して偏心していることを特徴とするフラップゲートである。
【0011】
請求項1の発明では、一点ヒンジ方式のフラップゲートであって、水路の内外水圧差により揺動する扉体を強制的に開閉できる駆動手段を有するフラップゲートであり、水路の開口端を扉体で強制的に閉鎖させる場合、扉体が開口端近傍で略平行に移動するように、回転軸の両端から軸方向に突出する支持軸の軸中心を回転軸中心に対して偏心させており、このような構成とすることで、回転軸の回動に対して支持軸が回転軸中心に円弧状に回動し、開口端近傍で扉体が略平行移動するように揺動して、開口端を強制的に閉鎖することができ、開口端の閉鎖時の水密性が良好となる作用を有する。なお、扉体の略平行移動とは、扉体が略等間隔移動して開口端に接触し、扉体と開口端との接触部での接触圧が略均等であることを意味する。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記回転軸の略中央に第1のカム部が設けられ、前記支持軸の両端部にそれぞれ第2と第3のカム部とが設けられ、前記第1のカム部と遊嵌状に第1の咬み合いヒンジが設けられ、前記第2と第3のカム部と遊嵌状に第2と第3の咬み合いヒンジが設けられ、かつ前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部と係合して前記回転軸を軸中心に回動するトルクアームが設けられ、前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記扉体を支持する揺動アームがそれぞれ設けられており、前記駆動手段が、前記トルクアームを前記回転軸の軸中心に回動させることによって、前記扉体を強制開閉することを特徴とする請求項1に記載のフラップゲートである。
【0013】
請求項2の発明では、フラップゲートが上記構成からなり、回転軸の略中央に第1のカムが設けられ、回転軸の両端に突出する支持軸にそれぞれ第2と第3のカム部が設けられ、第1のカム部及び第2と第3のカム部のそれぞれに遊嵌状に第1の咬み合いヒンジ及び第2と第3の咬み合いヒンジが設けられ、駆動手段によりトルクアームを回転軸の軸中心に回動させることによって、第1の咬み合いヒンジが第1のカム部に係合して、かつ第2と第3の咬み合いヒンジが第2と第3のカム部に係合して、揺動アームに設けられた扉体が強制的に開閉したり、或いは第1乃至3の咬み合いヒンジが第1乃至第3のカム部と遊嵌状に収納されているので、トルクアームの回動と関わりなく、僅かな内外水圧差によって、自由に揺動するようにしたものであり、また、通常の使用状態(扉体を自重で垂下した状態)からトルクアームを回転軸中心に僅かに回動させることによって、扉体の強制開閉動作へと移行させることができる作用を有する。
【0014】
また、請求項3の発明は、前記支持軸の直径が前記回転軸の直径より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラップゲートである。
【0015】
請求項3の発明では、回転軸が円柱状であり、支持軸も同様に円柱状であって、前記支持軸の直径が回転軸の直径より小さくして、トルクアームの力の伝達がスムーズになされ、扉体が設けられた揺動アームの揺動がスムーズできるようになされており、かつ水路の内水位と外水位との僅かな内外水圧差によって、扉体が容易に揺動し得る利点である。
【0016】
また、請求項4の発明は、前記支持軸の軸中心が前記回転軸の軸中心に対して下方に偏心していることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のフラップゲート。
【0017】
請求項4の発明では、回転軸の軸方向に突出する支持軸の軸中心が回転軸の軸中心に対して下方に偏心した位置に設けられている。すなわち、トルクアームの回動軸中心に対して、支持軸の軸中心が下方に偏心させて設けられているので、トルクアームによる軸中心を支点として扉体の開閉が行われるようになされて、トルクアームを介して回転軸への力の伝達がスムーズに行われるようにし、また扉体に加わる内外水圧差による力が支持軸を通して回転軸にスムーズに伝達されて扉体が揺動する作用を有する。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記支持軸の軸中心が僅かに前記開口端側に偏った位置に偏心していることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のフラップゲートである。
【0019】
請求項5の発明では、扉体の位置が主回転軸中心の直下より水路の開口端寄りに設けられているので、扉体が開口端近傍で略平行に移動して開口端が閉鎖される。従って、扉体が水路の開口端の戸当部との接触圧が均等な圧力で接触して閉鎖され、扉体の水密性が良好となる作用を有する。
【0020】
また、請求項6の発明は、前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部が遊嵌状に収納され、かつ前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記第2と第3のカム部がそれぞれ遊嵌状に収納され、前記トルクアームが回動することなく、前記扉体が自由に揺動する自由揺動区間と、前記トルクアームの回動によって、前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部が係合し、かつ前記第2と第3の咬み合いヒンジがそれぞれ前記第2と第3のカム部に係合することによって、前記扉体の強制開区間と強制閉区間とをすることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のフラップゲートである。
【0021】
請求項6の発明では、第1の咬み合いヒンジに第1のカム部が遊嵌状に収納され、第2と第3の咬み合いヒンジに第2と第3のカム部が遊嵌状に収納されていることで、扉体が内外水圧差により自由に揺動する区間(自由揺動区間)が設定されるとともに、トルクアームを回動軸中心に時計・反時計回りに回動させることにより、第1の咬み合いヒンジに第1のカム部とが係合し、かつ第2と第3の咬み合いヒンジに第2と第3のカム部が係合することによって、扉体を強制的に開状態に設定する区間(強制開区間)と、扉体を強制的に閉じる区間(強制閉区間)とを設定することができ、少ないトルクアームの回転角で強制開区間、強制閉区間を設定することができる作用を有する。
【0022】
また、請求項7の発明は、前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記第2と第3のカム部が遊嵌状に収納され、前記回転軸の回動に関わりなく、内外水圧差により前記扉体が揺動する自由揺動区間を有することを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載のフラップゲートである。
【0023】
請求項7の発明では、第2と第3の咬み合いヒンジに第2と第3のカム部が遊嵌状に収納されて、扉体が回転軸の回動に関わりなく、回動し得るように設定されており、扉体がスムーズに揺動し得るようにしている。このような構成にすることにより、回転軸が回動することがないので、扉体が回動する際の摩擦力を少なくして、僅かな内外水圧差によって、扉体が揺動するようになされている。第2と第3の咬み合いヒンジが自由に揺動する範囲が約15°程度である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るフラップゲートの実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は本発明に係るフラップゲートの実施形態を示す要部側断面図、図2は本実施形態の正面図、図3(a)は本実施形態の回転機構部の断面図であり、同図(b)は回転軸と支持軸の模式図、図4(a)はトルク部、同図(b)は揺動アーム部の咬み合いヒンジ部を示す概略拡大断面図であり、図5,図6及び図8は本実施形態の自由揺動区間及び強制閉区間の動作を説明するための模式図である。図7(a)はトルク部、同図(b)は揺動アームの咬み合いヒンジ部を示す概略拡大断面図である。図8は本実施形態の強制開区間の動作を説明するための模式図である。
【0025】
本実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。本実施形態のフラップゲートは防潮堤や排水樋門などの水路1の開口端(導出口)2に設けられ、内外水圧差によって扉体3を揺動させるか、又は強制的な手段で扉体3を揺動させて、水路1の開口端2の開閉がなされており、水路1の開口端2を開閉するために扉体3と、扉体3を揺動させるための回転軸11と、回転軸11の両端部に突出する支持軸11aと、回転軸11の略中央に設けられたカム部13と、支持軸11aにそれぞれ設けられたカム部15と、カム部13とに遊嵌状に設けられる咬み合いヒンジ12と、左右のカム部15がそれぞれ遊嵌状に設けられる咬み合いヒンジ16と、咬み合いヒンジ12に設けられ、カム部13と係合することによって、回転軸11を軸中心に回動させるトルクアーム14と、トルクアーム14を回転軸11の軸中心に回動させるための駆動手段としての油圧又は空圧等のシリンダ19と、左右のカム部15とそれぞれ係合する咬み合いヒンジ16にそれぞれ設けられ、扉体3を支持する揺動アーム17とを備えている。また、カム部13は、その軸中心に対称に突出する凸部13a,13bを備え、カム部15は、その軸中心に対称に突出する凸部15a,15bを備えている。
【0026】
本実施形態についてさらに詳細に説明すると、扉体3は揺動アーム17によって支持され、扉体3の下端部分にはフロート部3aが設けられて重量を軽減するとともに扉体3に浮力が与えられている。扉体3には、開口端2の戸当部1bに対応する部分に水密ゴム8が設けられて閉鎖時の水密性が維持されている。扉体3は揺動アーム17に支持されており、水路1の開口端2の上部に固定された吊り金具9の先端部に軸受10が設けられ、軸受10に円柱状の回転軸11が軸支され、回転軸11の軸方向に突出する支持軸11aに揺動アーム17が軸支されている。
【0027】
回転軸11の両端部に突出する円柱状の支持軸11aの軸中心は、回転軸11の軸中心より下方に設けられている(図3(b)に軸中心S,S間の鉛直方向の寸法tで示した)。また、支持軸11aの軸中心は、仮想支持軸11a′で示したように、回転軸11の軸中心の直下よりも開口端2側に偏心させた方がより好ましい(図3(b)に軸中心S,S間の水平方向の寸法hで示した)。すなわち、支持軸11aの軸中心Sは、回転軸11の軸中心Sに対して寸法t,hの位置に偏心した位置とし、扉体3の局部的な水平移動を容易とし、扉体3の水密ゴム8が開口端2の戸当部1bに均等な圧力で密着して閉鎖され、その閉鎖時の水密性を良好なものとする。なお、扉体3の水平移動とは、疑似的な水平移動であって、扉体3の回転運動の微視的観点からの動作である。
【0028】
回転軸11の略中央には、回転軸11が挿通された咬み合いヒンジ12が設けられ、咬み合いヒンジ12は、回転軸11の軸中心にヒンジ係合部12a,12bが設けられて扇状開口部12c,12d(回転軸11の軸中心とする軸周縁の開口)が形成され(図4(a)参照)、扇状開口部12c,12dに回転軸11に固定されたカム部13の凸部13a,13bが収納されている。
【0029】
咬み合いヒンジ12にはトルクアーム14が固定され、トルクアーム14の先端部には、シリンダ19のロッド20の先端部が支持棒21により連結され、シリンダ19の他端部18が開口端2の上部奥に回動自在に固定されている。トルクアーム14が回転軸11の軸中心に回動して咬み合いヒンジ12のヒンジ係合部12a,12bが所定の角度を回動すると、カム部13の凸部13a,13bに当接し、回転軸11が回動するように構成されている。
【0030】
一方、回転軸11の両端部に突出した支持軸11aには、カム部15が設けられており、咬み合いヒンジ16の支持軸11aの軸中心にヒンジ係合部16a,16bが設けられて、扇状開口部16c,16d(支持軸11aの軸中心とする軸周縁の開口)が形成され、扇状開口部16c,16dにカム部15の凸部15a,15bが遊嵌状に収納されて(図4(b)参照)、咬み合いヒンジ16のそれぞれに設けられた揺動アーム17によって、扉体3が支持軸11aに軸支されている。
【0031】
トルクアーム14は、シリンダ19のロッド20の伸縮によって、回転軸11の軸中心に任意の回転角に設定することができる。ロッド20が最も収縮した位置Pから最も伸長した位置Pまでの範囲を伸縮動作を行うことによって、トルクアーム14は回転軸11の軸中心に回転角θ(115°)の範囲を回動することができる。トルクアーム14を回転角θの範囲を軸中心に回動させることで、扉体3を強制開区間A,自由揺動区間B,又は強制閉区間Cの何れかに設定することができる。
【0032】
強制開区間Aは、トルクアーム14を扉体3の強制動作が開始される位置(基準位置)から時計回りに位置Pまで回転角θa回動させることで、扉体3を強制的に開くことができる区間である。また、自由揺動区間Bは、トルクアーム14を基準位置から反時計回りに位置Pまでの角度θbの区間で、内外水圧差で扉体3が自由に揺動する区間である。また、トルクアーム14の基準位置から角度θf(20°)の範囲がアーム単独揺動区間であり、さらにトルクアーム14を反時計回りに位置Pまで回動させた回転角θc(15°)の範囲が、扉体3を開口端2に強制的に閉じる強制閉区間Cである。
【0033】
次に、上記実施形態のフラップゲートの自由揺動区間,強制閉区間,強制開区間の動作について、図5〜図8を参照して説明する。先ず、図5(a)〜(c)を参照して、通常の使用状態であるフラップゲートの自由揺動区間Bの動作について説明する。図5(a)は、扉体3の自重で垂下してトルクアーム14が基準位置(強制動作が開始される位置)にある場合を示している。図5(a)の状態から扉体3に水流による圧力が加わると、図5(b)に示したように、咬み合いヒンジ16が支持軸11aの軸中心に時計回り(矢印N方向)に回動して、咬み合いヒンジ16が15°回動して、ヒンジ係合部16a,16bがカム部15の凸部15a,15bに当接する。この時、扉体3は15度開く。咬み合いヒンジ16が矢印N方向に15°回動してヒンジ係合部16a,16bがカム部15に当接すると、回転軸11が回動する。この時、トルクアーム14が設けられた咬み合いヒンジ12には、カム部13が遊嵌状に収納されており、遊嵌状の開口部の角度が回転軸11の軸中心に回転角20°であるので、図5(c)に示したように、時計回り(矢印M方向)に支持軸11aの回動に連れて回転軸11が回動して、カム部13の凸部13a,13bは、ヒンジ係合部12a,12bに当接する。このように動作して、揺動アーム17に支持された扉体3は、内外水圧差によりトルクアーム14の回転角θb(35°)の範囲を揺動する。
【0034】
続いて、図6(a)〜(c)及び図7を参照して、フラップゲートの強制閉間Cの動作について説明する。図6(a)は扉体3の自重で垂下した状態であり、図5(a)と同一である。潮位等の水位が急激に上昇した際に、フラップゲートは強制的に閉鎖される。図6(a)の状態で、トルクアーム14を下方に20°時計回りにPの位置まで回動させると、図6(b)に示したように、咬み合いヒンジ12のヒンジ係合部12a,12bがカム部13の凸部13b,13aに当接する。さらにトルクアーム14を下方に角度θc(15°)時計回り(矢印N方向)に回転軸11が回動すると、図6(c)に示したように、カム部15の凸部15a,15bが咬み合いヒンジ16のヒンジ係合部16a,16bに当接し、回転軸11と支持軸11aが回動し、扉体3が開口端2を強制的に閉鎖する。
【0035】
強制閉間Cについて、図7(a),(b)を参照して詳細に説明する。本実施形態のフラップゲートの強制閉状態では、扉体3が略平行に移動して、水路1の開口端2の戸当部1bに密着する。フラップゲートの強制閉区間では、図7(a)に示したように、トルクアーム14を位置Pから反時計回り(矢印M)に角度θc回動させると、咬み合いヒンジ12のヒンジ係合部12a,12bが軸中心に20°回動してカム部13の凸部13a,13bに当接し、回転軸11が回動し、回転軸11の回動に連れて、支持軸11aは、その中心が回動しながら回転運動を行う。支持軸11aは弧を描いて回動し、支持軸11aに設けたカム部15が反時計回り(矢印N)に回動して、扉体3が開口端2を閉鎖する。
【0036】
回転軸11の軸中心Sに対して支持軸11aの軸中心Sは、下方であって、かつ開口端2側に偏倚しているので、支持軸11aの軸中心Sが回転軸11の軸中心Sに弧を描くように回動して、扉体3を支持する揺動アーム17は支持軸11aの軸中心Sに回動しつつ回転軸11の軸中心Sに回動する。回転軸11と支持軸11aとの両方の円運動によって、扉体3は開口端2の戸当部1b近傍で略平行に移動して開口端2の戸当部1bに均等な圧力で当接する。すなわち、このようにトルクアーム14の回動する回転軸11の回転運動が中心軸の下方前方にずれた支持軸11aに伝達されて、強制閉鎖時の扉体3の回動の軌跡が前方に移動するような楕円状の軌跡をたどって、扉体3は開口端2の戸当部1b近傍であたかも平行に移動するように動作する。
【0037】
次に、図8(a),(b)を参照して強制開区A間の動作について説明する。図8(a)は、図5(a)と同一である。この状態から、図8(b)に示したように、トルクアーム14を軸中心に時計回りに角度θa(80°)回動させると、咬み合いヒンジ12のヒンジ係合部12a,12bがカム部13の凸部13a,13bに当接して、回転軸11が時計回り(矢印M)に回動し、それに連れて支持軸11aが時計回り(矢印N)に回動する。支持軸11aに設けられたカム部15の凸部15a,15bは、咬み合いヒンジ16のヒンジ係合部16a,16bに当接して、扉体3は軸中心線から時計回りに80°回動して、扉体3は強制的に開かれる。
【0038】
上記のように、本実施形態では、トルクアームの回転運動を第1の咬み合いヒンジを介して、回転軸に伝達し、回転軸の回転運動をカム部で第2,第3の咬み合いヒンジに伝達して、扉体を揺動させるようにしたフラップゲートであり、第1の咬み合いヒンジに軸対象に20°の遊びが設けられ、第2,第3の咬み合いヒンジに軸対象に15°の遊びが設けられており、これらの遊びが軸中心に対象に設けられているので、トルクアームの僅かな回動によって、強制動作へと移行させることができ、しかも、この回転軸の軸中心に対して支持軸の軸中心を下方開口端側にずらすことで、扉体が開口端近傍で略方向に移動するようにして、扉体の水密性を良好なものとしている。
【0039】
なお、上記実施形態では、水路の開口端面が傾斜しているが、この実施形態に限定することなく、開口端面は鉛直面であってもよい。
【0040】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、扉体が回転軸の回動なしに揺動するようにして、僅かな内外水圧差により扉体が揺動し得る利点があり、さらに、水路側の圧力が増大すれば、回転軸を回動して排水することができる利点がある。
【0041】
また、本発明によれば、扉体が開口端近傍で略平行に揺動するので、水路の開口端の戸当部に扉体が略均等な圧力で閉鎖され、閉鎖時の扉体の水密性が向上する利点がある。
【0042】
また、本発明によれば、咬み合いヒンジのヒンジ係合部が回転中心に対象に設けられ、かつその係合部であるカム部の凸部が軸中心に対象に設けられており、トルクアームの僅かな回転角で扉体を強制的に開閉動作に移行することができるので、緊急時に素早く扉体の強制的な水路開口端の開閉がなし得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るフラップゲートの実施形態を示す要部側断面図である。
【図2】本実施形態の正面図である。
【図3】(a)は本実施形態の回転機構部の断面図であり、(b)は回転軸と支持軸との模式図である。
【図4】(a)はトルク部、(b)は揺動アーム部の咬み合いヒンジ部を示す概略断面図である。
【図5】本実施形態の自由揺動区間Bの動作を説明するための模式図である。
【図6】本実施形態の強制閉区間Cの動作を説明するための模式図である。
【図7】(a)はトルク部、(b)は揺動アームの咬み合いヒンジ部を示す概略断面図である。
【図8】本実施形態の強制開区間Aの動作を説明するための模式図である。
【図9】従来のフラップゲートを説明するための要部側面図である。
【符号の説明】
1 水路
2 開口端
3 扉体
3a フロート部
8 水密ゴム
9 吊り金具
10 軸受
11 回転軸
12,16 咬み合いヒンジ
12a,12b,16a,16b ヒンジ係合部
13,15 カム部
13a,13b,15a,15b 凸部
14 トルクアーム
17 揺動アーム
18 シリンダーの他端部
19 シリンダー
20 ロッド
21 ピン

Claims (7)

  1. 水路の開口端に内外水圧差により揺動する扉体を備えるフラップゲートにおいて、
    前記扉体強制開閉するための駆動手段に連動して回動する回転軸が前記開口端上部に軸支され、前記回転軸の両端から軸方向に支持軸が突出し、前記扉体が前記支持軸に揺動するように設けられ、かつ前記扉体が前記開口端近傍で略平行に移動するように、前記支持軸中心が前記回転軸中心に対して偏心していることを特徴とするフラップゲート。
  2. 前記回転軸の略中央に第1のカム部が設けられ、前記支持軸の両端部にそれぞれ第2と第3のカム部とが設けられ、前記第1のカム部と第1の咬み合いヒンジが遊嵌状に設けられ、前記第2と第3のカム部と第2と第3の咬み合いヒンジが遊嵌状に設けられ、かつ前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部と係合して前記回転軸を軸中心に回動するトルクアームが設けられ、前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記扉体を支持する揺動アームがそれぞれ設けられており、前記駆動手段が、前記トルクアームを前記回転軸の軸中心に回動させることによって、前記扉体を強制開閉することを特徴とする請求項1に記載のフラップゲート。
  3. 前記支持軸の直径が前記回転軸の直径より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラップゲート。
  4. 前記支持軸の軸中心が前記回転軸の軸中心に対して下方に偏心していることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のフラップゲート。
  5. 前記支持軸の軸中心が僅かに前記開口端側に偏った位置に偏心していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のフラップゲート。
  6. 前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部が遊嵌状に収納され、かつ前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記第2と第3のカム部がそれぞれ遊嵌状に収納され、前記トルクアームが回動することなく、前記扉体が自由に揺動する自由揺動区間と、前記トルクアームの回動によって、前記第1の咬み合いヒンジに前記第1のカム部が係合し、かつ前記第2と第3の咬み合いヒンジがそれぞれ前記第2と第3のカム部に係合することによって、前記扉体の強制開区間と強制閉区間とをすることを特徴とする請求項2〜5の何れか1項に記載のフラップゲート。
  7. 前記第2と第3の咬み合いヒンジに前記第2と第3のカム部が遊嵌状に収納され、前記回転軸の回動に関わりなく、内外水圧差により前記扉体が揺動する自由揺動区間を有することを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載のフラップゲート。
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