JP4203594B2 - 緻密なルテチウムシリケート高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックス及びその製造方法 - Google Patents

緻密なルテチウムシリケート高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックス及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、緻密なルテチウム、シリケート高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックス及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高温、水蒸気存在下における水蒸気腐食を抑制する窒素化ケイ素セラミックスであって、緻密なルテチウムシリケートをスパッタリング法により成膜し、加熱処理を行なった後、更に、その上にもルテチウムシリケートの厚膜を成膜する新規な高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法及びその製品に関するものである。本発明は、緻密な耐水蒸気腐食層を下層に設けることにより、高温、水蒸気の存在下における窒化ケイ素セラミックスの長時間使用でも、水蒸気腐食を抑制する高温耐水蒸気腐食層を成膜する方法及び該耐水蒸気腐食層を成膜した窒化ケイ素セラミックスを提供するものとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素セラミックスは、高温で水蒸気が存在する環境下では、酸化による損耗とともに水蒸気による腐食が生じる。水蒸気分圧が20%程度に達する燃焼場となるガスタービン部材へ窒化ケイ素を応用する際には、高温における水蒸気腐食を抑制する層をコーティングする必要がある。高温における耐酸化性に優れる窒化ケイ素セラミックスに関しては、先行技術文献(例えば、特許文献1、2、3参照)に記載されているように、焼結助剤として希土類酸化物を添加し、その化合物が表面に形成されることによる耐酸化性向上の機構が提案されている。難焼結性の窒化ケイ素を焼結する際に焼結助剤として添加する希土類酸化物は、窒化ケイ素の酸化にともない発生するシリカと反応して希土類シリーケート系化合物を生成し、これらの希土類シリケート系化合物が耐酸化性及び耐水蒸気腐食性に優れることから、高温における耐酸化及び耐水蒸気腐食皮膜としての応用が種々検討されている。
【0003】
窒化ケイ素の強度は、焼結助剤の希土類酸化物が重希土になるにしたがって向上することが知られており、最も高い強度が得られているLu23 を焼結助剤とした窒化ケイ素セラミックスが高温構造部材への応用については有利であると考えられている。
【0004】
このLu23 を焼結助剤とした場合、Lu23 と窒化ケイ素が酸化して生じるシリカとが反応し、Lu2 SiO5 及びLu2 Si27 のシリケートを表面の一部で形成し、そのうちLu2 Si27 の熱膨張係数が窒化ケイ素の熱膨張係数に近く、耐酸化性に優れることが見出されたことから、Lu2 Si27層をコートした耐酸化/耐水蒸気腐食−窒化ケイ素が開発されつつある。
【0005】
Lu23 を焼結助剤として添加して窒化ケイ素を、長時間高温、水蒸気存在下に晒すと、窒化ケイ素セラミックス表面にLu2 Si27 相が生成するものの、Lu2 Si27 の皮膜が形成されるのもではないので、高温水蒸気腐食を抑制するための耐水蒸気腐食層を設ける必要がある。
【0006】
更に、Lu23 を焼結助剤として添加した窒化ケイ素セラミックスにおけるLu2 Si27 相の生成過程において、中間相としてJ−phase(Lu4Si272 )が生成することが報告されており、J−Phaseと窒化ケイ素及びLu2 Si27 相との熱膨張係数のミスマッチにより、窒化ケイ素セラミックス表面にクラックが生じることが報告されている。
【0007】
J−Phaseの熱膨張係数は、窒化ケイ素セラミックス及びLu2 Si27 相の熱膨張係数より大きいため、J−Phaseの生成及び分解は皮膜あるいは窒化ケイ素セラミックス表面にクラックを生じさせることとなる。よって、Lu2 Si2 7 相を耐水蒸気腐食相として窒化ケイ素上に塗布する場合、皮膜の形成時及び形成後の長時間熱処理においてもJ−Phaseの生成を抑制する機構を付与する必要がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−32658号公報
【特許文献2】
特開平5−221728号公報
【特許文献3】
特開平5−208870号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい窒化ケイ素の高温耐水蒸気腐食層を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、RFスパッタリング法により緻密なルテチウムシリケート層を窒化ケイ素セラミックス上に成膜することで高温長時間使用においてもJ−Phaseの生成を抑制し、1100℃以上の高温における水蒸気腐食を抑制することができる耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの作製が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、高温水蒸気腐食を抑制する窒化ケイ素の耐水蒸気腐食層を提供することを目的とするものである。本発明の耐水蒸気腐食層の組成は、Lu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成となっていることから、仮に本皮膜にクラックが生じた場合は、窒化ケイ素の酸化により生じるSiO2 と皮膜とが反応しLu2 Si27 が生成し、本発明の耐水蒸気腐食層は不慮の事故等により生じた皮膜の破損に対して自己修復機能を有する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)窒化ケイ素セラミックス上に緻密なLu−Si−O層を有し、その上にLu SiO −Lu Si の間の組成のルテチウムシリケート層を有する高温耐水蒸気腐食層を成膜した窒化ケイ素セラミックスを製造する方法であって、窒化ケイ素セラミックス上にスパッタリング法により厚さ1〜10ミクロンのルテチウムシリケートを蒸着させ、成膜した皮膜を熱処理により完全に結晶化させることにより組成がLuSiO−LuSiの間の組成である緻密なルテチウムシリケート層を成膜し、緻密なルテチウムシリケート層を完全に結晶化させた後、その上に組成がLuSiO−LuSiの間の組成であるルテチウムシリケート層を、焼結時の焼結による収縮が生じないように一旦結晶化させた粉末のスラリーをディッピングにより塗布する方法により塗布し、焼成のプロセスによる熱処理を行い成膜させること、前記スパッタリング法により蒸着させる皮膜のルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1であること、を特徴とする自己修復機能を有する2層からなる高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
(2)窒化ケイ素の表面を窒化ケイ素と気相とを完全に遮断する緻密なルテチウムシリケート薄膜層で被覆し、その上に数百ミクロンのルテチウムシリケート層をコートして多層構造にする前記(1)記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
(3)100〜1500℃の温度で熱処理して緻密な結晶層を成膜する前記(1)記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
(4)緻密なルテチウムシリケート層を成膜した窒化ケイ素セラミックス上に、更にルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1となる組成の層を上記ディッピングにより塗布する方法により塗布し、1100〜1500℃の温度で加熱処理するディッピングから焼成のプロセスを繰り返し行い、緻密なルテチウムシリケート耐水蒸気腐食層の上に厚さ数百ミクロンのルテチウムシリケート層を成膜する前記(1)記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
(5)窒化ケイ素上に二番目の層として上記ディッピングにより塗布する方法により被覆するルテチウムシリケート層薄膜のルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1である前記(1)記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、緻密でLu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成の皮膜を厚さ数ミクロンで窒化ケイ素セラミックス上にRFスパッタリング法により成膜した耐高温水蒸気腐食層に係るものである。
【0013】
焼結助剤として添加したLu23 が窒化ケイ素セラミックスが酸化することによって生じるSiO2 と反応してLu2 Si27 相を生成する場合、中間相としてJ−Phase(Lu4 Si272 )が生じるが、J−Phaseの生成及び分解にともない熱膨張係数の差異に基づくクラックが窒化ケイ素セラミックスの表面に生じる。
【0014】
これらの反応を式として表すと、下記のように、窒化ケイ素の酸化、J−Phaseの生成、Lu2 Si27 の生成の3段階で表すことができる。
Figure 0004203594
【0015】
上記化学反応式で、窒化ケイ素の酸化を抑制するとJ−Phaseの生成を抑制することができる。窒化ケイ素と外界の気相とを完全に遮断することにより、J−Phaseの生成を抑制することができる。SiO2 は、若干量、焼結助剤として窒化ケイ素セラミックスに添加されていることから、窒化ケイ素の酸化がなくても若干量のJ−Phaseは生じるが、皮膜の破損あるいはクラックの発生に寄与するような多量のJ−Phaseの発生は、窒化ケイ素と気相とを遮蔽することにより抑制することができる。
【0016】
緻密な皮膜の作製方法として、本発明では、RFスパッタリング法により成膜する方法が採用される。気相法により成膜することにより、緻密で、かつ窒化ケイ素セラミックスとの密着性に優れた皮膜を得ることができる。
【0017】
急激な昇温や降温、物理的な衝撃などにより皮膜が破損したり、皮膜にクラックが生じた場合、上記化学式の窒化ケイ素の酸化反応が進行するため、J−Phaseが生じる。よって、物理的な衝撃による破損など不慮の事故によるクラックの破損が生じた場合の対策として、好適には、皮膜の組成をLu2 SiO5 −Lu2 Si2 7 の間の組成、すなわち、ルテチウムとシリコンの比が原子比で1:0.5〜1の組成とする。
【0018】
ルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1の組成では、Lu2 SiO5相とLu2 Si27 相の2相が共存することとなる。Lu2 Si27 相の熱膨張係数は、窒化ケイ素セラミックスと同じであるが、Lu2 SiO5 相の熱膨張係数は、Lu2 Si27 相や窒化ケイ素セラミックスの熱膨張係数よりも大きいので、窒化ケイ素とLu2 SiO5 −Lu2 Si27 組成の皮膜間には熱膨張係数差に起因した熱応力が発生する。この熱応力による皮膜の破損が懸念されるが、一般に、膜厚が数ミクロン程度の薄膜では熱応力により皮膜にクラックが生じたり破損したりはしないので、好適には、第一番目の層として被覆するルテチウムシリケート層の厚さは1〜10ミクロンとする。
【0019】
皮膜の組成をLu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成とすることにより、皮膜にクラックが生じた場合、窒化ケイ素の酸化により生じるSiO2 と皮膜とが下記の反応でLu2 Si27 相を生成し、クラックも塞がる。
Lu2 SiO5 +SiO2 →Lu2 Si27
【0020】
窒化ケイ素と気相との遮蔽はRFスパッタリングによる成膜により達成されるが、高温で水蒸気の存在下での長時間使用のためには、水蒸気腐食による損耗量を考慮した厚膜を塗布する必要がある。本発明では、ディッピング法により数百ミクロンまでの厚さの皮膜をコーティングした。皮膜の組成は、厚膜及び薄膜にクラックなどが生じても、窒化ケイ素の酸化により生じるSiO2 と皮膜とが反応してLu2 Si2 7 を生成することができるようにLu2 SiO5 −Lu2Si27 の間の組成とする。
【0021】
【作用】
ルテチアを焼結助剤として添加した窒化ケイ素セラミックスは、高温で窒化ケイ素表面にルテチウムシリケートを形成するために耐酸化・耐耐水蒸気腐食性に優れるとされるが、ルテチウムシリケート形成時にJ−Phaseの生成及び分解により窒化ケイ素セラミックス表面及び酸化皮膜にクラックが生じ、結果として耐酸化・耐水蒸気腐食性が低下するという問題があった。
本発明は、RFスパッタリング法により緻密なルテチウムシリケート層を窒化ケイ素セラミックス上に成膜することで高温長時間使用においてもJ−Phaseの生成を抑制し、1100℃以上の高温における水蒸気腐食を抑制することができる耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスを提供できる。また、本発明の耐水蒸気腐食層の組成は、Lu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成となっていることから、仮に、本皮膜にクラックが生じた場合は、窒化ケイ素の酸化により生じるSiO2 と皮膜とが反応しLu2 Si27 が生成し、本発明の耐水蒸気腐食層は、不慮の事故等により生じた皮膜の破損に対して自己修復機能を有し、本発明は、高温水蒸気腐食を抑制する窒化ケイ素の耐水蒸気腐食層を提供できる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本発明の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの基本コンセプトを図1に示す。高温耐水蒸気腐食層は、窒化ケイ素上にRFスパッタリング法により成膜する緻密な薄膜とディッピング法により成膜した厚膜から構成される。どちらの層の組成もLu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成である。
【0023】
実施例
スパッタターゲットとして3インチφのSiO2 ディスクを作製し、その上に直径11mm厚さ1mmのLu23 ペレットを25個敷き詰め、SiO2 とLu23 の面積比を2:1としてスパッタターゲットとして用いた。短冊状の窒化ケイ素セラミックスを両面テープを用いてターゲット上方に固定し、プラズマを発生させた後、1時間スパッタリングを行なった。短冊試料の全面に均等に皮膜を作製させる目的で、長手方向を含む4面について、それぞれ1時間のスパッタリングを行なった。
【0024】
得られた皮膜の組成をEDX法により分析した。その結果を図2に示す。図2に示されるように、Lu2 Si27 及びLu2 SiO5 の単相を標準試料として用いて求めた今回作製した皮膜の組成はLu:Siが原子比で2:1.008の組成となっており、組成がLu2 SiO5 −Lu2 Si2 7 の間の組成であり、ほぼLu2 SiO5 の組成であることが分かった。
【0025】
緻密なルテチウムシリケート層を施した窒化ケイ素セラミックスの断面を図3に示す。およそ2〜3ミクロンの緻密な膜が成膜されていることが分かる。この皮膜にはクラックが全く生じていない。この皮膜は気相法により成膜しているので、窒化ケイ素との密着性はナノオーダーで整合している。
【0026】
皮膜表面から得られるX線回折図形を図4に示す。皮膜が2〜3ミクロンと薄いので、下地の窒化ケイ素のピークが出現している。図中では○で示すピークが窒化ケイ素のピークである。2θが25〜40°の範囲でアモルファスを示すハローパターンが見られる。本実施例で作製した皮膜の大部分がアモルファスかしている。本実施例で作製した皮膜の組成はLu2 SiO5 に近いものの、Lu2Si27 の結晶化速度がLu2 SiO5 の結晶化速度より大きいため、図中には△で示すLu2 Si2 7 のピークが若干確認される。
【0027】
RFスパッタリングによりルテチウムシリケート層を成膜した窒化ケイ素セラミックスを一旦熱処理し、皮膜を完全に結晶化させた。図5に、大気中、1400℃で1時間熱処理した後の皮膜表面から得られたX線回折図形を示す。熱処理前に見られた2θが25〜40°の範囲のアモルファス相は完全に消滅し、全て結晶相へ変化した。ここでは、×と□で示すLu2 Si27 相が現れ、●で示すLu2 SiO5 相が現れた。皮膜の結晶相としてはLu2 Si27 とLu2SiO5 となるが、Lu2 Si27 相が多形を示すため、3つの異なる晶系のLu2 Si27 が出現している。
【0028】
緻密なルテチウムシリケート層を完全に結晶化させた後、ディッピング法によりルテチウムシリケート層の製膜を行なった。ディッピングに用いたスラリーは、ディッピングのの焼結時に焼結による収縮が生じないよう、一旦結晶化させた粉末を用いた。
【0029】
Lu2 SiO5 −Lu2 Si2 7 の間の組成となるように、純度99.9%以上のSiO2 粉末とLu23 粉末を水中で湿式混合し、乾燥後、粉末を加圧成形して、大気中、1600℃で12時間反応焼結させた。得られたバルクをボールミルにより粉砕し、乾燥後、10ミクロン以下に分級した。得られた粉末はX線回折法により相の同定を行ない、Lu2 Si27 とLu2 SiO5 の混合相になっていることを確認した。
【0030】
10ミクロン以下に分級した粉末を用い、ディッピング用スラリーを調製した。スラリー濃度が1cc当たり粉末1gとなるようにPVAバインダーを含む水を添加した。結果としてPVAバインダーの量は、粉末1gに対して0.01g、すなわち1wt%とした。ポットミルにより12時間攪拌混合したスラリーをディッピング用スラリーとして用いた。
【0031】
ディッピングは、短冊状の窒化ケイ素をピンセットで挟み、ディッピングスラリーに浸漬させた後、窒化ケイ素の上下を弱いドライヤーの送風の中で反転させながら、乾燥させた。更に、130℃のオーブンの中で12時間乾燥させた。本発明では、一旦結晶化させた粉末のスラリーをディッピングにより塗布することが特徴であり、ディッピングの具体的手法に因らない。
【0032】
乾燥させた窒化ケイ素セラミックスは、大気中、1450℃で1時間焼結させた。図6に示すように一回のディッピングにより、およそ10ミクロンの皮膜が得られるので、所要の膜厚になるまでディッピングから焼成のプロセスを繰り返した。ここで、図6は緻密なルテチウムシリケート層を設けていない例であり、緻密なルテチウムシリケート層は存在しない。ルテチウムシリケート層を成膜するプロセスのフローチャートを図7に示す。
【0033】
ディッピングから焼成のプロセスを数回繰り返した試料の断面を図8に示す。緻密なルテチウムシリケートの層の上にこの層と比較するとポーラスなルテチウムシリケートの層が連なる。一回のディッピングにより、およそ10ミクロンの皮膜が形成されるが、各回毎に形成される層の区別は、焼成のプロセスによりなくなる。ここで、緻密なルテチウムシリケートの層が欠けているのは、この層が緻密で固いため、断面研磨の際にこの固くて緻密な部分だけが欠けたためである。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、緻密なルテチウムシリケート高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックス及びその製造方法に係るものであり、本発明により、(1)本発明の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスは、緻密なルテチウムシリケート層で窒化ケイ素と外界を完全に遮蔽することができるので、窒化ケイ素の酸化を防止してJ−Phaseの生成を抑制することができる、(2)J−Phaseの生成及び分解にともない発生するクラックの発生を抑制することができる、(3)仮に、この皮膜にクラックが入ったり皮膜が破損しても、皮膜の組成をLu2 SiO5 −Lu2 Si27 の間の組成とすることで、窒化ケイ素の酸化により生じるSiO2 を取り込みLu2 Si2 7となると同時にクラックを自己修復する機能を有する、(4)長時間使用でもクラックを生じさせない高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスを提供できる、という効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの基本コンセプトを示す。
【図2】EDXによる皮膜の組成分析の結果を示す。
【図3】緻密なルテチウムシリケート層を施した窒化ケイ素セラミックスの断面を示す。
【図4】スパッタリング後の皮膜表面から得られるX線回折図形を示す。
【図5】大気中、1400℃で1時間熱処理した後の皮膜表面から得られたX線回折図形を示す。
【図6】一回のディッピングにより得られる皮膜の膜厚を示す。
【図7】緻密なルテチウムシリケート層の成膜プロセスのフローチャートを示す。
【図8】高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの断面を示す。

Claims (5)

  1. 窒化ケイ素セラミックス上に緻密なLu−Si−O層を有し、その上にLu SiO −Lu Si の間の組成のルテチウムシリケート層を有する高温耐水蒸気腐食層を成膜した窒化ケイ素セラミックスを製造する方法であって、窒化ケイ素セラミックス上にスパッタリング法により厚さ1〜10ミクロンのルテチウムシリケートを蒸着させ、成膜した皮膜を熱処理により完全に結晶化させることにより組成がLuSiO−LuSiの間の組成である緻密なルテチウムシリケート層を成膜し、緻密なルテチウムシリケート層を完全に結晶化させた後、その上に組成がLuSiO−LuSiの間の組成であるルテチウムシリケート層を、焼結時の焼結による収縮が生じないように一旦結晶化させた粉末のスラリーをディッピングにより塗布する方法により塗布し、焼成のプロセスによる熱処理を行い成膜させること、前記スパッタリング法により蒸着させる皮膜のルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1であること、を特徴とする自己修復機能を有する2層からなる高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
  2. 窒化ケイ素の表面を窒化ケイ素と気相とを完全に遮断する緻密なルテチウムシリケート薄膜層で被覆し、その上に数百ミクロンのルテチウムシリケート層をコートして多層構造にする請求項1記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
  3. 100〜1500℃の温度で熱処理して緻密な結晶層を成膜する請求項1記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
  4. 緻密なルテチウムシリケート層を成膜した窒化ケイ素セラミックス上に、更にルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1となる組成の層を上記ディッピングにより塗布する方法により塗布し、1100〜1500℃の温度で加熱処理するディッピングから焼成のプロセスを繰り返し行い、緻密なルテチウムシリケート耐水蒸気腐食層の上に厚さ数百ミクロンのルテチウムシリケート層を成膜する請求項1記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
  5. 窒化ケイ素上に二番目の層として上記ディッピングにより塗布する方法により被覆するルテチウムシリケート層薄膜のルテチウムとシリコンの原子比が1:0.5〜1である請求項1記載の高温耐水蒸気腐食層を有する窒化ケイ素セラミックスの製造方法。
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