JP4201559B2 - 被覆用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被覆用ゴム組成物及びその組成物を用いた空気入りタイヤに関するものであり、特に、スチール製の補強材で補強されるゴム製品、例えば、タイヤ等のスチールコード補強材の被覆用として使用され、加硫後の補強材・ゴム複合部の剪断歪みを抑制すると共に補強材・ゴム間の老化接着力の改善を図って、ゴム製品の耐久性を向上させうる被覆用ゴム組成物、及びその組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
近年、自動車の足廻りを支える空気入りタイヤに限らず、ベルト、ホース等のゴム製品にスチール製の補強材が必要に応じて使用されている。このようなゴム製品にあっては、その補強材・ゴム複合部の剪断歪みや接着性がしばしば問題にされることがある。
例えば、スチールコードで補強したタイヤのベルト層にコーティングゴムとして適用される被覆用ゴム組成物はタイヤの耐久性に関与する重要なゴムである。このゴム組成物に求められる性能としては、(1)硬さ、(2)低発熱性、(3)スチールコードとの接着性、及び(4)耐劣化性等がある。これらのうち上記(1)硬さを増加させることは、上記ベルト層間の剪断歪みを抑制してタイヤの耐久性を向上させるための有効な手段となっている。
この硬さを増加させるために、(a)カーボンブラック等の充填剤の配合量を増加すること、(b)樹脂等を添加すること、(c)硫黄等の架橋剤を添加すること、及び(d)加硫促進剤の配合量を増加すること等の方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記(a)及び(b)の充填剤等の配合量の増加や樹脂の添加等では、確かに硬さが増加するものの低発熱性の低下や発熱耐久性の悪化を招く。また上記(c)の硫黄の配合量の増加は、未加硫ゴムの状態で放置した場合に硫黄がブルームするなどの作業性の著しい低下を招く。また、製品化したとしてもゴムの耐劣化性が低下するためタイヤの耐久性が著しく低下することがある。更に、上記(d)の加硫促進剤の配合量の増加はある程度まで、作業性、低発熱性、耐劣化性について問題を起こさないが、多すぎるとスチールコードとの接着性が低下するという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高温、高湿等の環境ストレスが加えられた後でもスチールコード等の補強材との間の接着性能の低下がなく、また硬さが増強されて高弾性率となる被覆用ゴム組成物、及びその被覆用ゴム組成物を用いることにより、補強材・ゴム複合部での剪断歪みの抑制や接着性能が高められて耐久性、及び耐劣化性が向上する空気入りタイヤを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、マレイミド系樹脂成分、特に、ビスマレイミド系樹脂成分をゴム組成物に配合して加硫すると、その加硫ゴムが硬くなり且つ高弾性率となること、また上記マレイミド系樹脂成分を配合したことで、その接着性、例えば環境ストレスを与えた後の老化接着性の低下が見られるが、これもビスフェノール系化合物をゴム組成物に含有させることで、その加硫後のゴムと補強材との間の接着力の低下が殆ど見られないということ見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明に係る被覆用ゴム組成物及びそれを使用するタイヤは、以下の(1)乃至(7)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1) 補強材を被覆する被覆用ゴム組成物において、ジエン系ゴム成分100質量部と、マレイミド系樹脂成分0.1乃至5質量部と、2個のtert-butyl基を有する下記式で示されるビスフェノール系化合物0.5乃至8質量部とを配合してなり、また、上記ジエンゴム成分100質量部中に、トランスポリブタジエンが0.1乃至15質量部の範囲で配合されることを特徴とする被覆用ゴム組成物。
【化1】
(式中、X1及びX2は水素、又は炭素数1乃至3のアルキル基であり、nは1乃至3の整数であり、またy 1及びy 2は炭素数1乃至10の整数であり、tBuはtert-butyl基である。)
【0007】
(2)上記マレイミド系樹脂成分は、下記式で示されるビスマレイミド系化合物からなることを特徴とする上記(1)記載のゴム組成物。
【化2】
(式中、Rは炭素数が6乃至18の芳香族基、又は炭素数が7乃至24のアルキル芳香族基を表し、P及びSは0乃至3の整数であり、それぞれ独立に表す。)
【0008】
(3) 上記トランスポリブタジエンのトランス結合含有量が82乃至98モル%であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のゴム組成物。
【0009】
(4) 上記トランスポリブタジエンの質量平均分子量が3×10 4 乃至20×10 4 であることを特徴とする上記(1)乃至(3)に記載のゴム組成物。
【0010】
(5) 上記(1)乃至(4)に記載のゴム組成物と、スチール製部材とからなることを特徴とするゴム−スチール複合体。
(6) 上記スチール製部材の表面にコーティング処理が施されていることを特徴とすることを特徴とする上記(5)記載のゴム−スチール複合体。
(7) トレッド部、一対のサイドウォール部、一対のビード部、タイヤ子午線方向への実質平行に配置されたコードにより補強されたカーカス層、及び該カーカス層の半径方向外方に配置されたベルト層を有するタイヤであって、上記カーカス層及びベルトを構成するプライ層の少なくとも一層が、上記(5)又は(6)に記載のゴム−スチール複合体であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る好ましい実施の形態を添付図面を参照して詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの半部分断面概略図である。
【0012】
本発明に係る被覆用ゴム組成物は、スチールコード等のスチール製のゴム補強材を被覆するゴム組成物である。
本発明に係る被覆用ゴム組成物のゴム成分は特に限定されないが、後述するタイヤ等のスチールコード等に使用する場合、天然ゴム及び合成ゴムから選ばれた少なくとも1種からなるゴム成分であることが好ましい。
上記ゴム成分は、天然ゴムのみ、合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。上記合成ゴムとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、特にジェン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴムから少なくとも1種を適宜選択することが好ましい。特に好ましくは、天然ゴム、合成イソプレンゴム等のイソプレン系ゴムであり、天然ゴムであることが最も好ましい。
【0013】
本発明に係る被覆用ゴム組成物にあっては、ゴム成分100質量部中にトランスポリブタジエンを0.1乃至15質量部の範囲で含むこと、更には0.2乃至8質量部の範囲で含むこと、特には0.3乃至3質量部の範囲で含むことが好ましい。上記ゴム成分に上記範囲でトランスポリブタジエンを配合すると、亀裂成長性を抑制することができ、耐破壊特性を高めることができる。
上記トランスポリブタジエンの配合量が少ないと上記抑制効果が十分に発現せず、一方、配合量が多くなると、他のゴム成分との相溶性が低下し、却って耐破壊特性が低下する傾向がある。
【0014】
本発明に係るに用いられるトランスポリブタジエンは、そのトランス結合含有量が82乃至98モル%であることが好ましく、更に好ましくは86乃至98%である。このトランス結合含量が高いほど、イソプレンゴムの伸張結晶性の促進効果を高くする傾向が生じる。一方、この含量が低くなると、イソプレンゴムの伸張結晶性を阻害する傾向が生じる。
【0015】
また、上記トランスポリブタジエンの質量平均分子量は3×104乃至20×104であることが好ましく、更に好ましくは5×104乃至15×104である。分子量がこの範囲にあると、ゴム組成物の未加硫時の加工性と加硫時の物性バランスがよい。一方、分子量が低くなると弾性率が低下する傾向があり、分子量が高くなると作業性が低下する傾向がある。
【0016】
本発明に係る被覆用ゴム組成物はマレイミド系樹脂成分を含有し、その加硫ゴムの高弾性能を十分に高めることを特徴とするものである。上記マレイミド系樹脂成分は、加硫時にゴム成分等のポリマー間を、硫黄等を介さずに直接架橋しうるものであり、特に、下記化式5で示されるビスマレイミド系化合物を含むモノマー、オリゴマー、プレポリマー等が好ましい。
【0017】
【化5】
式中、Rは炭素数が6乃至18の芳香族基、又は炭素数が7乃至24のアルキル芳香族基を表し、P及びSは0乃至3の整数であり、それぞれ独立に表す。
【0018】
特に、上記ビスマレイミド系化合物としては、N,N'−1,2−フェニレンジマレイミド、N,N'−1,3−フェニレンジマレイミド、N,N'−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N'−(4,4−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン等を挙げることができ、特に好ましくは、N,N'−(4,4−ジフェニルメタン)ビスマレイミドである。上記ゴム組成物中にこれらを1種以上含むことができる。
尚、上記ビスマレイミド系化合物の上記式中のP及びSが4以上では、分子量が大きくなり、配合量の割には目的とする動的貯蔵弾性率の増加効果が得られないため好ましくない。
【0019】
上記被覆用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して上記マレイミド系樹脂成分を0.1乃至5質量部の範囲で配合し、好ましくは0.5乃至2質量部の範囲で配合し、その加硫ゴムの高弾性能を十分に高めている。
上述したようにマレイミド系樹脂成分、特にビスマレイミド系化合物はゴム成分等のポリマー鎖を、硫黄を介さずに直接架橋するため、加硫ゴム組成物の低発熱性及び耐劣化性を損なうことなく、硬さを増加させることができる。
上記マレイミド系樹脂成分がゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満では配合効果を十分に発揮せず、また5質量部を超える場合には加硫戻りが大きくなり発熱性が悪くなる。また、後述するビスフェノール系化合物をゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の老化接着性を高めることができない。
【0020】
また、本発明に係る被覆用ゴム組成物においては、2個のtert-butyl基を有するビスフェノール系化合物が含有されることを特徴とし、特に、下記化6式で示されるビスフェノール系化合物であることが好ましい。
【0021】
【化6】
式中、X1及びX2は水素、又は炭素数1乃至3のアルキル基であり、nは1乃至3の整数であり、またY1及びY2は炭素数1乃至10の整数であり、tBuはtert-butyl基である。
【0022】
特に、上記ビスフェノール系化合物としては、式中、X1及びX2は水素で、nは1乃至3の整数である、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−エチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−プロピレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等が製造及び入手容易なことから好ましい。
【0023】
上記ビスフェノール系化合物は上記ゴム成分100質量部に対して、0.5乃至8質量部の範囲で含み、特に1.0乃至3.0質量部の範囲で含むことが好ましい。
上記ビスフェノール系化合物は上記被覆用ゴム組成物の接着性能の点から配合されるものであり、上記範囲内にあれば、接着性能が十分に維持され、特に、加硫後における耐環境ストレス接着性能を有することができる。上記ビスフェノール系化合物の量が0.5質量部未満であると、上記マレイミド系樹脂成分の配合による老化接着性の低下を抑制することができず、その加硫ゴムに耐環境ストレス接着性能が十分に見られない。一方、上記ビスフェノール系化合物が8質量部を超えると、上記マレイミド系樹脂成分を配合しても、ゴム組成物の弾性率を高めることができない。
【0024】
また、本発明に係る被覆用ゴム組成物にあっては、上記配合物以外に、加硫促進剤等を添加することができる。
加硫促進剤は各種のものが用いられるが、中でもスルフェンアミド系のものが好んで用いられる。スルフェンアミド系の促進剤の中でも、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)やDZ(N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)が好ましい。上記加硫促進剤は、ゴム成分100質量部に対して0.5乃至2.0質量部の範囲で配合されることが好ましい。
【0025】
本発明に係る被覆用ゴム組成物にあっては、上記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックが40質量部以上、更には40乃至80質量部、特に、4
5乃至60質量部配合されることが好ましい。カーボンブラックの量が少なくなると、弾性率が低下する傾向がある。また、カーボンブラックの量が多くなると加硫ゴム組成物の低発熱性が低下する傾向にある。
上記カーボンブラックは、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができ、例えば、SRF、GPF、FER、HAF、ISAF等を挙げることができるが、中でもGPF、HAFが物性とコストのバランスの面から好ましい。
【0026】
本発明に係る被覆用ゴム組成物にあっては、ゴム成分100質量部に対して硫黄成分を1乃至10質量部、特に4乃至7質量部の範囲で配合することが好ましい。硫黄成分が1質量部未満では加硫ゴムの接着不足が生じる一方、10質量部を超えるとEB(破壊伸度)不足が生じる。硫黄成分は硫黄として配合しても含硫黄化合物として配合しても良い。
【0027】
本発明に係る被覆用ゴム組成物は、上述した配合物の他に、他の配合物、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、軟化剤、コバルト有機酸塩等の加硫短縮剤などを添加することができる。
【0028】
以上の如く構成される被覆用ゴム組成物にあっては、硬さが増強されて高弾性率となると共に、その加硫後の補強材との接着力は強力であるだけでなく、環境ストレスを与えた後も、例えば、高温、高湿条件に晒した後もゴムと補強材との間の老化接着性能が十分に維持されるバランスの取れた被覆用ゴム組成物とすることができる。
【0029】
本発明に係る被覆用ゴム組成物はバンバリーミキサー等の密閉式混練機、オープンロール等の混練機を用いて混練することによって得られ、成形加工後、加硫を行い、上記特性を必要とするタイヤの各種部材並びに各種工業用品に用いることができ、特に、以下に示すタイヤのベルトコーティング用ゴム、例えば、スチールコードコーティング用ゴムとして好適に使用されると、その走行時或いは超重量付加時等にタイヤに発熱等が生じても上述のような耐環境ストレス接着性能を発揮することができる。特に、補強材・ゴム複合体部での剪断歪みが抑制されるので、タイヤは耐久性及耐劣化性が向上する。
【0030】
本発明に係るゴム−スチール複合体は、上記ゴム組成物と、スチール製部材とからなることを特徴とする。具体的には、本発明に係る上記被覆用ゴム組成物でスチール部材を被覆してなるものである。
上記スチール部材は、そのゴム製品によってその形状を異ならせることができ、特に制限されるものではなく、例えば、後述するタイヤにあってはスチールコード、特に、ブラスコートされ、加硫ゴムとの接着性が高められたスチールコードが好ましい。そのコーティング処理の方法は特に制限されず、通常用いる方法を適宜用いることができ、例えば、メッキ処理法、各種CVD法、PVD法などを挙げることができる。
【0031】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部、一対のサイドウォール部、一対のビード部、実質平行に配置されたコードにより補強された補強層を有する。そして、上記カーカス層及び補強層を構成するプライの少なくとも一層を構成するゴム組成物が本発明の被覆用ゴム組成物よりなる。ここでいう補強層とは、ラジアルタイヤにおいてはベルト層、バイアスタイヤにおいてはブレーカー層と呼ばれるものである。
【0032】
次に、本発明に係る空気入りタイヤの1例について図1に従って簡単に説明する。
即ち、図1に示す実施態様の重用車用タイヤ1にあっては、ビードコア2が埋設された一対のビード部3と、これらビード部3からほぼ半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部4と、これらサイドウォール部4の半径方向外端同士を連ねるトレッド部5とを有している。タイヤ1は一方のビード部3から他方のビード部3まで延びるカーカス層8によって補強されている。
また、トレッドの内側にはベルト層13が配設されている。カーカス層8はタイヤの子午線方向に実質平行に配された有機繊維コードで補強されたプライの一層からなり、ベルト層13は実質平行に配置されたスチールコードで補強され、本発明の被覆用ゴム組成物で被覆されたプライの2層からなる。
【0033】
このように構成される本発明に係る空気入りタイヤにあっては、そのスチールコードの被覆用ゴム組成物として上記被覆用ゴム組成物を用いているため、スチールコードに対する接着性能が高くなる。環境ストレス(高温、高湿)によっても接着性能が低下しない。また、硬さが増強されて高弾性率となることにより、補強材・ゴム複合体中での剪断歪みが抑制され、耐ヒートセパレーション性を低下させることもない。このようなことから、タイヤの耐久性をアップさせることができる。尚、本発明の空気入りタイヤの内部には空気のほかに、窒素等の不活性ガスを充填することができる。
【0034】
【実施例】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
【0035】
参考例1乃至3、実施例1、比較例1乃至6
下記表1に示すゴム成分、N,N’−(4,4−ジフェニルメタン)ビスマレイミド(BMI)、及び2,2’-メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール(NS−6:ビスフェノール系化合物)を使用して、下記表1に示す各配合量(質量部)を2200ccのバンバリーミキサーを使用して混練りし、未加硫のゴム組成物を得、以下の方法でのゴム組成物の加硫後の特性を評価した。
【0036】
【表1】
【0037】
評価試験方法は、PSR185/70R14のタイヤ試作にて行い、それぞれのタイヤに上記のベルトコーティングゴムを用い、それ以外は同一の配合/製法にて、試作した。
試作タイヤを用いて以下の評価を行い、その結果を下記表2に示した。
a.ドラム耐久性:ステップスピードで、速度をアップする耐久テスト(破壊が生じるまでの時間を指数で表示)。
b.接着力:実地テストで、国産の1800ccの車両に実際に装着し、5万Km走行させた後、タイヤを解剖してゴム/スチールコード間の接着力を測定したものである。
両者の評価方法は、どちらも比較例1の値を100とした指数で表示し、数値が大きいほど良好となる。
【0038】
【表2】
【0039】
表2の結果から、ゴム組成物にマレイミド系樹脂成分を0から5質量部まで配合するとドラム耐久性が増加することが判る。また、所定量のビスフェノール系化合物を上記マレイミド系樹脂成分と併用させると、上記ビスフェノール系化合物は接着力をアップさせることが判る。
一方、所定量の上記ビスフェノール系化合物の配合は、ゴム組成物の接着力をアップさせているが、上記ビスマレイミド系樹脂成分の配合量を徐々に多くすると、接着力が低下し、効果が相殺されることが判る。従って、表2の結果が示すように、弾性率及び接着性を共に高める配合組成が存在し、参考例1乃至3及び実施例1がこのような範囲に該当することが判る。
【0040】
以上のことから、表2の参考例1乃至3及び実施例1に示すように、特定量のマレイミド系樹脂成分とビスフェノール系化合物を被覆用ゴム組成物に配合すると、高弾性率で、且つ環境ストレス、例えば、タイヤにあって走行中、荷重走行中等に生じる発熱及び高湿等の環境ストレスを与えた後もドラム耐久性及び接着力(又は老化接着性)は低下せず維持される。
【0041】
これに対して、比較例1乃至4に示されるように、ビスフェノール系化合物の配合がないと、その接着性が悪くなってしまう。一方、比較例5に示すようにマレイミド系樹脂成分の配合がないと加硫後のゴムの弾性率が低く、ドラム耐久性が低下する。またビスフェノール系化合物が過剰に配合されると、比較例6に示すようにマレイミド系樹脂成分が配合されていても、加硫後のゴムの弾性率が低く、ドラム耐久性が低下する。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る被覆用ゴム組成物によれば、マレイミド系樹脂成分に加えて、上記ビスフェノール系化合物を特定量配合することにより、スチールコード等のゴム補強材とゴムとの間における剪断歪みを抑制するだけでなく、環境ストレスを与えた後のトラム耐久性及び接着性(老化接着性)も優れたものとなり、これをタイヤ等のゴム製品に使用した場合には、耐久性及び耐劣化性に優れたゴム製品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る空気入りタイヤの半部分断面概略図である。
【符号の説明】
1 タイヤ
2 ビードコア
3 ビード部
4 サイドウォール部
5 トレッド部
8 カーカス層
10 カーカスプライ
13 ベルト層
Claims (7)
- 上記トランスポリブタジエンのトランス結合含有量が82乃至98モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載のゴム組成物。
- 上記トランスポリブタジエンの質量平均分子量が3×10 4 乃至20×10 4 であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載のゴム組成物。
- 請求項1乃至4の何れかの項に記載のゴム組成物と、スチール製部材とからなることを特徴とするゴム−スチール複合体。
- 上記スチール製部材の表面にコーティング処理が施されていることを特徴とする請求項5記載のゴム−スチール複合体。
- トレッド部、一対のサイドウォール部、一対のビード部、タイヤ子午線方向への実質平行に配置されたコードにより補強されたカーカス層、及び該カーカス層の半径方向外方に配置されたベルト層を有するタイヤであって、上記カーカス層及びベルトを構成するプライ層の少なくとも一層が、上記請求項5又は6項に記載のゴム−スチール複合体であることを特徴とする空気入りタイヤ。
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