JP2024055850A - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

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JP2024055850A JP2023174194A JP2023174194A JP2024055850A JP 2024055850 A JP2024055850 A JP 2024055850A JP 2023174194 A JP2023174194 A JP 2023174194A JP 2023174194 A JP2023174194 A JP 2023174194A JP 2024055850 A JP2024055850 A JP 2024055850A
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Ryoji Maeda
隆太郎 中川
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Abstract

【課題】耐摩耗性、耐久性、耐老化性を改善し、これら性能をバランスよく高度に両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。【解決手段】イソプレン系ゴムを80質量%以上含有するジエン系ゴム100質量部に対して、シリカを50質量部以上150質量部以下、熱可塑性樹脂を16質量部以上200質量部以下配合し、熱可塑性樹脂として、脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%であり、且つ、軟化点が80℃以上160℃以下であるものを用い、ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとが120℃≦TgB-TgA≦200℃の関係を満たすようにする。【選択図】図1

Description

本発明は、主として乗用車用タイヤのトレッド部に用いることを意図したタイヤ用ゴム組成物に関する。
従来、乗用車用タイヤのトレッド部に使用されるタイヤ用ゴム組成物には、スチレンブタジエンゴム(SBR)を主体とする配合が採用されてきた。しかしながら、近年、環境保護の観点から、天然ゴム(NR)を主体とする配合を採用することが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。即ち、従来用いられていたスチレンブタジエンゴム(合成ゴム)は再生ゴムとして利用することが困難であるが、これを再生可能材料である天然ゴムに置き換えることで、タイヤ(ゴム組成物)中に占める再生可能原料やリサイクル原料の比率を多くし、環境負荷を低減することが可能になる。
しかしながら、従来のスチレンブタジエンゴムを単純に天然ゴムに置き換えただけでは、乗用車用タイヤのトレッド部として求められる性能を十分に得られない虞があった。例えば、天然ゴム主体のゴムはスチレンブタジエンゴム主体のゴムに比べてガラス転移温度が低い傾向があるため、他の配合剤(例えば樹脂等)の物性や配合量を調整して所望の性能が得られるように工夫する必要がある。そのため、天然ゴム主体の配合を採用するにあたって、耐摩耗性、耐久性、耐老化性、ウェット性能を高度にバランスよく両立するための対策が求められている。
特許第6092986号
本発明の目的は、耐摩耗性、耐久性、耐老化性、ウェット性能を改善し、これら性能をバランスよく高度に両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを80質量%以上含有するジエン系ゴム100質量部に対して、シリカが50質量部以上150質量部以下、熱可塑性樹脂が16質量部以上200質量部以下配合されたタイヤ用ゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂は、脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%であり、且つ、軟化点が80℃以上160℃以下であり、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとが120℃≦TgB-TgA≦200℃の関係を満たすことを特徴とする。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムを主体としたジエン系ゴムに対して、上述の特性を有する熱可塑性樹脂を多量に配合しているので、マイグレーションを抑制すると共に、破断強度および0℃のおけるtanδを良好にすることができ、空気入りタイヤのトレッド部に使用した場合には、耐老化性(老化後の操縦安定性)、耐摩耗性や耐久性、ウェット性能を向上することができる。特に、熱可塑性樹脂が脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%であることで、樹脂の相溶性が良化し、耐摩耗性を向上することができる。また、熱可塑性樹脂の軟化点が80℃以上160℃以下であることで、老化後の物性変化を抑制することができる。更に、シリカの配合量が上述の範囲であることで、さらにウェット性能(特にウェット路面におけるグリップ性能)を向上することができる。
本発明においては、イソプレン系ゴムが天然ゴムであることが好ましい。また、ジエン系ゴムがすべてイソプレン系ゴムであることが好ましい。
本発明においては、熱可塑性樹脂が、テルペン樹脂または芳香族変性テルペン樹脂である仕様にすることもできる。或いは、熱可塑性樹脂が、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、およびC5/C9系石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である仕様にすることもできる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用する空気入りタイヤの一例を示す子午線断面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用する空気入りタイヤは、トレッド部1と、このトレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。図1において、符号CLはタイヤ赤道を示す。図1は子午線断面図であるため描写されないが、トレッド部1、サイドウォール部2、ビード部3は、それぞれタイヤ周方向に延在して環状を成しており、これにより空気入りタイヤのトロイダル状の基本構造が構成される。以下、図1を用いた説明は基本的に図示の子午線断面形状に基づくが、各タイヤ構成部材はいずれもタイヤ周方向に延在して環状を成すものである。
左右一対のビード部3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りに車両内側から外側に折り返されている。また、ビードコア5の外周上にはビードフィラー6が配置され、このビードフィラー6がカーカス層4の本体部と折り返し部とにより包み込まれている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。各ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。これらベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。更に、ベルト層7の外周側にはベルト補強層8(ベルト層7の全幅を覆うフルカバー8aとベルト層7の端部を局所的に覆うエッジカバー8bの2層)が設けられている。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含む。ベルト補強層8において、有機繊維コードはタイヤ周方向に対する角度が例えば0°~5°に設定されている。
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にはトレッドゴム層10が配され、サイドウォール部2におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはサイドゴム層20が配され、ビード部3におけるカーカス層4の外周側(タイヤ幅方向外側)にはリムクッションゴム層30が配されている。トレッドゴム層10は、物性の異なる2種類のゴム層(トレッド部1の踏面を構成するキャップトレッド11と、その内周側に配置されたアンダートレッド12)をタイヤ径方向に積層した構造を有する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、主として、このようなタイヤのキャップトレッド11に用いられるものである。そのため、本発明のタイヤ用ゴム組成物が使用されるタイヤは、トレッド部1(トレッドゴム層10)がキャップトレッド11とアンダートレッド12とで構成されていれば、他の部位の基本構造は上述の構造に限定されるものではない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物が使用されるタイヤは、上記のような空気入りタイヤ(その内部に空気、窒素等の不活性ガスまたはその他の気体が充填されるタイヤ)であることが好ましいが、非空気式タイヤであってもよい。非空気式タイヤの場合も、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、路面に当接する部分(空気入りタイヤにおけるトレッド部1の踏面を構成するキャップトレッド11に相当する部分)に用いられる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、イソプレン系ゴムを必ず含む。イソプレン系ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100質量%中、80質量%以上、好ましくは100質量%である。イソプレン系ゴムとしては、各種天然ゴムや各種合成ポリイソプレンゴムを挙げることができる。これらイソプレン系ゴムの中でも、特に、天然ゴムを好適に用いることができる。このようにジエン系ゴムの大半をイソプレン系ゴムとすることで、環境負荷を低減することが可能になる。即ち、天然ゴムの場合、石油由来の合成ゴムを用いない点で、石油への依存度を低減し、環境負荷を低減することができる。また、従来の合成ゴム(例えばスチレンブタジエンゴム)を主体とするゴム組成物と比較して、天然ゴムを主体とするゴム組成物は、廃棄後に再生ゴムとして利用しやすいため、リサイクル性の観点からも環境負荷を低減することができる。一方で、合成ポリイソプレンゴムについても、近年、バイオマス(生物資源)の糖からイソプレンを生成する技術が開発されており、そのようなイソプレンを重合して得た合成ポリイソプレンゴムを使用することで、石油への依存度を低減し、環境負荷を低減することが可能になる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のイソプレン系ゴム以外に、他のジエン系ゴムを含有することができる。他のジエン系ゴムとしては、タイヤ用ゴム組成物に一般的に使用可能なゴムを用いることができる。例えば、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等を例示することができる。これら他のジエン系ゴムは、単独または任意のブレンドとして使用することができる。但し、他のジエン系ゴムを配合する場合であっても、その配合量はジエン系ゴム100質量部に対して20質量%以下、好ましくは0質量%とする。即ち、再生可能原料やリサイクル原料の比率を多くすることを意図した発明であるので、他のジエン系ゴム(特に合成ゴム)の比率が多くなると、環境負荷を低減する効果が十分に得られなくなる。具体的には、他のジエン系ゴムの配合量が20質量%を超えると(つまり、イソプレン系ゴムの配合量が80質量%未満であると)、環境負荷の低減に寄与するイソプレン系ゴムの比率が低減するので、環境負荷を低減する効果が十分に得られない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のジエン系ゴムに対し、熱可塑性樹脂が必ず配合される。特に、本発明では、熱可塑性樹脂として、脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%、好ましくは5%~20%、より好ましくは5%~15%であり、且つ、軟化点が80℃以上160℃以下、好ましくは80℃~140℃であるものを用いる。この熱可塑性樹脂の配合量は、上述のジエン系ゴム100質量部に対して、16質量部以上200質量部以下、好ましくは25質量部以上200質量部以下である。このように所定の特性を有する熱可塑性樹脂を多量に配合することで、マイグレーションを抑制すると共に、破断強度および0℃のおけるtanδを良好にすることができ、空気入りタイヤのトレッド部に使用した場合には、耐老化性(老化後の操縦安定性)、耐摩耗性や耐久性、ウェット性能を向上することができる。
熱可塑性樹脂における芳香族プロトンの含有率が5%未満であるとウェット性能を向上する効果が充分に得られない。熱可塑性樹脂における芳香族プロトンの含有率が30%を超えるとイソプレン系ゴム(天然ゴム)に対する相溶性が悪化し、耐摩耗性が十分に得られない。熱可塑性樹脂の軟化点が80℃未満であると相溶性が悪化し、耐摩耗性が低下する。熱可塑性樹脂の軟化点が160℃を超えるとマイグレーションにより、老化後の操縦安定性が低下する。熱可塑性樹脂における芳香族プロトンの含有率は、熱可塑性樹脂に含まれる芳香族プロトンの含有量と脂肪族プロトンの含有量の合計に対する芳香族プロトンの含有量の割合であり、1H-NMRスペクトルの測定結果から求めることができる。また、樹脂の軟化点は、JIS K6220-1(環球法)に準拠して測定することができる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、上述の特性を有するだけでなく、ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとの差TgB-TgAが、120℃≦TgB-TgA≦200℃、好ましくは122℃≦TgB-TgA≦198℃、より好ましくは124℃≦TgB-TgA≦196℃の関係を満たすものとする。このような関係を満たすことで、上述の耐老化性(老化後の操縦安定性)、耐摩耗性や耐久性、ウェット性能を向上するには有利になる。差TgB-TgAが120℃未満であるとウェット性能が低下する。差TgB-TgAが200℃を超えると相溶性が悪化し、耐摩耗性が低下する。尚、ガラス転移温度TgAおよびTgBはそれぞれ示差走査熱量分析(DSC)により測定することができる。尚、ゴム組成物が複数種類のジエン系ゴムを含む場合、ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAは、各ジエン系ゴムのガラス転移温度に各ジエン系ゴムの質量分率を乗じた合計(ジエン系ゴムのガラス転移温度の加重平均値)とする。同様に、ゴム組成物が複数種類の熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBは、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度に各熱可塑性樹脂の質量分率を乗じた合計(熱可塑性樹脂のガラス転移温度の加重平均値)とする。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、上述の特性や関係を満たしていれば、具体的な種類は特に限定されないが、例えば、石油系樹脂、芳香族系樹脂が挙げられる。石油系樹脂として、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α-メチルスチレン、o-ビニルトルエン、m-ビニルトルエン、p-ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5/C9系樹脂などが例示される。また、芳香族系樹脂として、クマロン樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、芳香族インデン共重合体などを挙げることができる。芳香族樹脂のなかでは、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を好適に用いることができる。これらの樹脂は、単独または複数のブレンドとして使用することができる。なお上述したC9系石油樹脂は、芳香族系樹脂にも分類される。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のジエン系ゴムに対してシリカが必ず配合される。シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して50質量部以上150質量部以下、好ましくは50質量部以上120質量部以下である。このように十分な量のシリカを配合することでウェット性能を向上するには有利になる。シリカの配合量が50質量部未満であるとウェット性能が低下する。シリカの配合量が150質量部を超えると分散性が悪化しウェット性能(ウェット路面におけるグリップ力)が低下する。
シリカとしては、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるシリカ、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。シリカは、市販されているものの中から適宜選択して使用することができる。また通常の製造方法により得られたシリカを使用することもできる。
本発明のゴム組成物は、シリカ以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えば、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられる材料を例示することができる。特に、カーボンブラックを併用することが好ましい。カーボンブラックを併用することで、耐摩耗性を向上することができる。カーボンブラックを併用する場合、その配合量は特に限定されないが、上述のジエン系ゴム100質量部に対して、例えば5質量部~20質量部に設定することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物では、上述のシリカを配合するにあたって、シランカップリング剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を向上することができる。シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。これらのなかでも、特に、分子中にテトラスルフィド結合を有するものを好適に用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは10質量%未満、より好ましくは6質量%~9質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の10質量%以上であるとシランカップリング剤同士が縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、オイルを配合することが好ましい。このようにオイルを配合することで、混合加工性を向上することができる。オイルを配合する場合、本発明のタイヤ用ゴム組成物に含まれる可塑剤成分の総量(即ち、前述の熱可塑性樹脂とオイル(および他に含まれる場合は他の可塑剤成分)の合計)に対するオイルの割合を、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%にするとよい。
本発明のゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマーなど、一般的にタイヤ用ゴム組成物に使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また、混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1~2に示す配合からなる19種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1、比較例1~7、実施例1~11)を調製するにあたり、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.8Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、マスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを1.8Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合して、各タイヤ用ゴム組成物を得た。
尚、表1~2には、熱可塑性樹脂に関して、ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとの差TgB-TgA〔単位:℃〕、軟化点〔単位:℃〕を併記した。また、各タイヤ用ゴム組成物に含まれる可塑剤成分の総量(即ち、熱可塑性樹脂とオイルの合計)に対するオイルの割合〔単位:質量%〕を併記した。
上述の各タイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに使用し、図1に示す基本構造を有し、タイヤサイズが225/60R17である空気入りタイヤ(試験タイヤ)を製造し、下記に示す方法により、ウェットグリップ性、耐摩耗性、タイヤ耐久性、老化後操縦安定性の評価を行った。
ウェットグリップ性
各タイヤ用ゴム組成物を用いて、所定形状の金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。この加硫ゴム試験片を使用し、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で動的粘弾性を測定し、0℃におけるtanδを求めた。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1~2の「ウェットグリップ性」の欄に示した。この指数が大きいほど、ウェットグリップ性が優れることを意味する。
耐摩耗性
各タイヤ用ゴム組成物を用いて、所定形状の金型(内寸:長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。この加硫ゴム試験片を使用し、JIS K6251に準拠して、ダンベル型JIS3号形試験片を作製した。この試験片を用いて、室温(23℃)で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、引張り破断強度を測定した。評価結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1~2の「耐摩耗性」の欄に記載した。この指数が大きいほど破断強度が高く、耐摩耗性が優れることを意味する。
タイヤ耐久性
各試験タイヤについて、リムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、空気圧を250kPaとし、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、JIS D4230に準拠して高速耐久性試験を実施した後、引き続き1時間毎に8km/hずつ速度を増加させ、タイヤに故障が生じるまでの走行距離を測定した。評価結果は、標準例1の測定値を100とする指数として、表1~2の「タイヤ耐久性」の欄に記載した。この指数値が大きいほど、故障が生じるまでの走行距離が長く、タイヤ耐久性(高速耐久性)に優れることを意味する。
老化後操縦安定性
各試験タイヤについて、70℃×168時間の条件で老化処理を行った後、リムサイズ15×6Jのホイールに組み付けて、空気圧を250kPaとして試験車両に装着し、テストコースにおいて、操縦安定性についてテストドライバーによる官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数として、表1~2の「老化後操縦安定性」の欄に記載した。この指数値が大きいほど老化後操縦安定性が優れていることを意味する。
Figure 2024055850000002
Figure 2024055850000003
表1~2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20(ガラス転移温度TgA:-75℃)
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol NS612(ガラス転移温度TgA:-63℃)
・シリカ:Solvay社製 ZEOSIL 1165MP
・熱可塑性樹脂1:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製 YSレジンTO‐125(ガラス転移温度TgB:79℃、芳香族プロトン含有率:12%)
・熱可塑性樹脂2:C5/C9系石油樹脂、東ソー社製 ペトロタック90(ガラス転移温度TgB:53℃、芳香族プロトン含有率:29%)
・熱可塑性樹脂3:水添DCPD/C9樹脂、ヤスハラケミカル社製 PR803(ガラス転移温度TgB:49℃、芳香族プロトン含有率:10%)
・熱可塑性樹脂4:C9樹脂、上海宜達化工社製 RT‐95B(ガラス転移転移温度TgB:41℃、芳香族プロトン含有率:15%)
・熱可塑性樹脂5:クマロン樹脂、Rutgers社製 NovaresC10(ガラス転移温度TgB:-28℃、芳香族プロトン含有率:48%)
・熱可塑性樹脂6:インデン樹脂、三井化学社製 FMR0150(ガラス転移温度TgB:89℃、芳香族プロトン含有率:37%)
・シランカップリング剤:Evonik社製 Si69
・オイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号S
・老化防止剤:LANXESS社製 VULKANOX 4020
・ワックス:NIPPON SEIRO社製 OZOACE‐0015A
・硫黄:鶴見化学工業社製 サルファックス5
・加硫促進剤:大内新興化学社製 ノクセラー TOT‐N
表1~2から明らかなように、実施例1~11は、標準例1に対して、ウェット性能(ウェットグリップ性)、耐摩耗性、タイヤ耐久性、老化後操縦安定性を維持または向上し、これら性能をバランスよく両立した。
一方、比較例1は、熱可塑性樹脂の配合量が少ないため、老化後操縦安定性が悪化した。比較例2は、熱可塑性樹脂の配合量が多いため、耐摩耗性が悪化した。比較例3は、ガラス転移温度の差TgB-TgAが小さいため、耐摩耗性を向上する効果が得られなかった。比較例4は、樹脂の軟化点が低く、且つ、芳香族プロトンの含有率が高いため、耐摩耗性が悪化した。比較例5は、芳香族プロトンの含有率が高いため、耐摩耗性が悪化した。比較例6は、シリカの配合量が少ないため、ウェットグリップ性が悪化し、また耐摩耗性を向上する効果が得られなかった。比較例7は、天然ゴムの配合量が少ないため、耐摩耗性が悪化した。
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] イソプレン系ゴムを80質量%以上含有するジエン系ゴム100質量部に対して、シリカが50質量部以上150質量部以下、熱可塑性樹脂が16質量部以上200質量部以下配合されたタイヤ用ゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂は、脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%であり、且つ、軟化点が80℃以上160℃以下であり、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBが120≦TgB-TgA≦200の関係を満たすことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
発明[2] 前記イソプレン系ゴムが天然ゴムであることを特徴とする発明[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[3] 前記熱可塑性樹脂が、テルペン樹脂または芳香族変性テルペン樹脂であることを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[4] 前記熱可塑性樹脂が、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、およびC5/C9系石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする発明[1]または[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
発明[5] 前記ジエン系ゴム100質量部中にイソプレン系ゴムを100質量%含有することを特徴とする発明[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 トレッドゴム層
11 キャップトレッド
12 アンダートレッド
20 サイドゴム層
30 リムクッションゴム層
CL タイヤ赤道

Claims (5)

  1. イソプレン系ゴムを80質量%以上含有するジエン系ゴム100質量部に対して、シリカが50質量部以上150質量部以下、熱可塑性樹脂が16質量部以上200質量部以下配合されたタイヤ用ゴム組成物であって、前記熱可塑性樹脂は、脂肪族モノマーおよび芳香族モノマーから構成され、芳香族プロトンの含有率が5%~30%であり、且つ、軟化点が80℃以上160℃以下であり、前記ジエン系ゴムのガラス転移温度TgAと前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgBとが120℃≦TgB-TgA≦200℃の関係を満たすことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記イソプレン系ゴムが天然ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、テルペン樹脂または芳香族変性テルペン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、およびC5/C9系石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記ジエン系ゴムがすべてイソプレン系ゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
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