JP4200234B2 - 酸化物超電導線材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物超電導体の結晶が3軸配向性を有する酸化物超電導線材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRI(核磁気共鳴イメージング)医療診断装置やNMR(核磁気共鳴装置)などのように高精度安定磁場が要求されるものにあっては、これらの装置に装備される超電導マグネットの構成要素たる超電導コイルが、酸化物超電導線材を用いて構成されたものがある。この酸化物超電導線材は、希土類元素−アルカリ土類元素−銅酸化物系セラミックスを酸化物超電導体として有するものである。
【0003】
このような酸化物超電導線材では、少なくとも一つの酸化物超電導体の層を、基材の少なくとも一つの面に形成したものが知られている。従来のこの種の酸化物超電導線材のうち、基材表面コーティング型のBi系酸化物超電導線材と、金属シース型のBi系酸化物超電導線材とを以下に述べる。
【0004】
上記基材表面コーティング型のBi系酸化物超電導線材の製造方法は、まず、酸化物超電導体及び酸化物超電導前駆体と反応しない安定したAgまたはAg合金からなる基材の表面にBi系酸化物超電導前駆体の層を、例えば塗布またはディップコート法によりコーティングして複合材を形成する。次に、Bi系酸化物超電導体の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させるため、上記複合材に超電導化熱処理を施して、基材表面コーティング型のBi系2212酸化物超電導線材を得ている(例えば、1997年春季低温工学・超電導学会概要集、p.113、講演番号E1−31参照)。
【0005】
また、上記金属シース型のBi系酸化物超電導線材の製造方法は、まず、Agなどの基材から成るパイプ内にBi系酸化物超電導前駆体を充填して複合材を形成する。次に、このBi系酸化物超電導前駆体とAgパイプからなる複合材を減面加工した後、Bi系酸化物超電導体の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させるため、上記複合材に超電導化熱処理を施し、金属シース型のBi系酸化物超電導線材を得ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の基材表面コーティング型酸化物超電導線材及び金属シース型酸化物超電導線材の両者とも、Bi系酸化物超電導体の結晶の1軸配向性(c軸配向)がいくら向上しても、上記結晶粒のab面内の結合が弱いと臨界電流特性がさほど向上せず、1軸配向性のみでは臨界電流特性の向上に限界がある。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、臨界電流特性を向上させることができる酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、上記基材は少なくとも一回の減面加工が施されたものであり、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成され、上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材は、減面率が20〜30%となるように少なくとも一回減面加工されたものであり、上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、上記酸化物超電導体が、Bi系酸化物超電導体であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、上記酸化物超電導体が、Bi系2212型酸化物超電導体であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、上記基材が、AgまたはAg合金から構成されたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、上記酸化物超電導線材により酸化物超電導コイルが構成されたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、上記基材を少なくとも一回減面加工し、上記複合材を、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成し、上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材を減面率が20〜30%となるように少なくとも一回減面加工し、上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8記載の発明において、上記酸化物超電導体が、Bi系酸化物超電導体であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、上記酸化物超電導体が、Bi系2212型酸化物超電導体であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項7乃至10のいずれかに記載の発明において、上記基材が、AgまたはAg合金から構成されたことを特徴とするものである。
【0021】
請求項1、3乃至6、7及び9乃至11に記載の発明には、次の作用がある。
【0022】
基材は少なくとも一回の減面加工が施され、超電導化熱処理は、酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることから、酸化物超電導体の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させる他、この酸化物超電導体の結晶をab面内でも配向させて当該結晶に3軸配向性を具備させることができる。この結果、酸化物超電導体の結晶粒子の向きが揃い、これらの結晶粒子間の結合が強固となって、酸化物超電導線材において超電導電流が流れ易くなり、この酸化物超電導線材の臨界電流特性を向上させることができる。
【0025】
請求項2、3乃至6、8及び9乃至11に記載の発明には、次の作用がある。
【0026】
基材の減面加工の有無に拘わらず、複合材は、減面率が20〜30%となるように少なくとも一回の減面加工が施され、超電導化熱処理は、酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることから、条件が厳しい分、酸化物超電導体の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させる他、この酸化物超電導体の結晶をab面内でもより良好に配向させて、当該結晶に一層優れた3軸配向性を具備させることができる。この結果、酸化物超電導体の結晶粒子の向きが揃い、これらの結晶粒子間の結合が強固となって、酸化物超電導線材において超電導電流が流れ易くなり、この酸化物超電導線材の臨界電流特性をより一層向上させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0028】
[A]第1及び第2の実施の形態
図1は、本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法における第一の実施の形態を示す工程図である。図2は、本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法における第二の実施の形態を示す工程図である。
【0029】
MRI(核磁気共鳴イメージング)医療診断装置やNMR(核磁気共鳴装置)などの超電導マグネットを構成する超電導コイル(ともに図示せず)は、図1に示す酸化物超電導線材10、または図2に示す酸化物超電導線材20を用いて、高精度安定磁場が得られるよう構成される。
【0030】
図1に示す酸化物超電導線材10は、Bi系2212型酸化物超電導前駆体11が、基材12の一表面に固着されて構成された複合材13を超電導化熱処理し、酸化物超電導前駆体11をBi系2212型酸化物超電導体14に転化させて構成されたものである。ここで、上記基材12は、Ag材料から形成されている。
【0031】
上述の酸化物超電導線材10の製造方法を、以下に述べる。
【0032】
(1)、まず、Ag材料に減面加工としてのロール圧延を少なくとも一回施し、幅4mm、長さ30mm、厚さ50μmの寸法の基材12を作製する。
【0033】
(2)、次に、Bi系2212型酸化物超電導前駆体11の粉末を製造する。つまり、Bi2O3、SrCO3、CaCO3、CuOの各粉末をBi:Sr:Ca:Cu=2:2:1:2の組成比となるように混合し、約820℃で仮焼した後粉砕し、この仮焼・粉砕を2回繰り返して、Bi系2212型酸化物超電導前駆体11の粉末を形成する。
【0034】
(3)、次に、このBi系2212型酸化物超電導前駆体11の粉末に有機溶剤(例えばエタノール)を加えて攪拌し、この攪拌により形成された懸濁液を、基材12の一表面上にコーティングして複合材13を作製する。
【0035】
(4)、その後、酸化物超電導前駆体11の少なくとも一部分を、図3に示すように、溶融させた後に凝固させて、この酸化物超電導前駆体11の少なくと一部分を酸化物超電導体14に転化させる超電導化熱処理を複合材13に施し、酸化物超電導線材10を製造する。この超電導化熱処理において、凝固過程における冷却速度は3℃/hに設定される。
【0036】
この超電導化熱処理における冷却速度は、5℃/h以下であればBi系2212型酸化物超電導体14の結晶が3軸配向性(後述)を有するが、3℃/h以下とすれば上記3軸配向性が更に優れたものとなる。
【0037】
一方、図2に示す酸化物超電導線材20は、Bi系2212型酸化物超電導前駆体21の一表面に基材22Aが、他表面に基材22Bがそれぞれ固着されて構成された複合材23に超電導化熱処理を施し、酸化物超電導前駆体21をBi系2212型酸化物超電導体24に転化させて構成されたものである。ここで、基材22A及び22Bは、ともにAg材料から形成されている。
【0038】
上述の酸化物超電導線材20の製造方法を、以下に述べる。
【0039】
(11)、まず、酸化物超電導線材10の製造方法の(1)〜(3)の手順を用いて、基材22Aの一表面に酸化物超電導前駆体21の懸濁液をコーティングして複合材25を作製する。
【0040】
(12)、次に、この複合材25の酸化物超電導前駆体21において、基材22Aが存在していない表面に、基材22Aと同一寸法の基材22Bを装着して複合材23を作製する。
【0041】
上述の基材22A及び22Bは、ロール圧延などの減面加工が実行されたものであっても、実行されていないものであってもよい。
【0042】
(13)、次に、この複合材23に、減面加工としてのロール圧延を4回施し、複合材23の最終的な減面率が30%となるようにする。
【0043】
複合材23の減面率は、20〜90%の範囲にあることが、Bi系2212型酸化物超電導体24の結晶の3軸配向性の観点から好ましい。複合材23の減面率が10〜20%である場合にも上記3軸配向性は得られるが、この場合この3軸配向性がやや劣る。一方、複合材23の減面率が90〜95%の場合にも上記3軸配向性は得られるが、この場合、減面加工の加工力が過大となるため、減面加工中に酸化物超電導体14の結晶組織が破壊されることが極めて稀ではあるが存在する。
【0044】
(14)、その後、酸化物超電導前駆体21の少なくとも一部分を、図3に示すように、溶融させた後に凝固させて、この酸化物超電導前駆体21の少なくとも一部分を酸化物超電導体24に転化させる超電導化熱処理を複合材23に施して、酸化物超電導線材20を製造する。この超電導化熱処理において、凝固過程における冷却速度は、8℃/hに設定される。
【0045】
この超電導化熱処理における冷却速度は、上述の如く10℃/h以下であればBi系2212型酸化物超電導体24の結晶が3軸配向性を有するが、3℃/h以下とすれば上記3軸配向性が更に優れたものとなる。
【0046】
次に、第1実施の形態に対応する第1比較例と、第2実施の形態に対応する第2比較例とを説明する。
【0047】
第1比較例の酸化物超電導線材Aは、第1実施の形態の製造手順(1)〜(3)と同様な手順で複合材13を作製し、次に、この複合材13を超電導化熱処理する際に、その凝固過程における冷却速度を10℃/hに設定して製造されたものである。
【0048】
また、第2比較例の酸化物超電導線材Bは、第2実施の形態の製造手順(11)及び(12)と同様な手順で複合材23を作製し、この複合材23に減面加工としてのロール圧延を一回実行してこの複合材23の減面率を5%とし、その後、この複合材23を超電導化熱処理する際に、凝固過程における冷却速度を8℃/hに設定して製造されたものである。
【0049】
以下、上述の酸化物超電導線材10、20、A及びBにおけるBi系2212型酸化物超電導体の結晶の配向性について評価する。
【0050】
まず、過酸化水素水とアンモニア水とを1:1の割合で混合した混合溶液を準備する。酸化物超電導線材10、20、A及びBの基材12、22A及び22Bなどの基材部分を上記混合溶液によってエッチング処理し、酸化物超電導体14、24などのBi系2212型酸化物超電導体の層のみを得る。
【0051】
次に、酸化物超電導体14、24などのBi系2212型酸化物超電導体が基材12、22A、22Bなどの基材と接していた面に関し、(0010)ピークについてX線回折法のロッキングカーブ測定を実行する。この結果、このロッキングカーブの半値幅は、酸化物超電導線材10、20、A、Bの各Bi系2212型酸化物超電導体について、いずれの場合も2.5〜3.5度の範囲内にあった。従って、酸化物超電導線材10、20、A、Bにおける各Bi系2212型酸化物超電導体の結晶は、いずれの場合もc軸配向しており、しかもそのc軸配向の程度はほぼ同一であると判定できる。
【0052】
次に、ロッキングカーブを測定した酸化物超電導線材10、20、A、Bの各Bi系2212型酸化物超電導体について、X線回折法のポールフィギャー(Pole figure)測定を実行する。測定した結晶面は、いずれも上記各Bi系2212型酸化物超電導体の結晶における(115)面である。
【0053】
このポールフィギャー測定の結果を図4〜図7の極点図形に示す。
【0054】
つまり、酸化物超電導線材10に関する図4の極点図形と、酸化物超電導線材20に関する図6の極点図形では、Bi系2212型酸化物超電導体の結晶を、(115)結晶面において水平状態で360度回転したとき、90度毎の各位置でX線の回折が生じ、矢印Pに示すように、強度の強いX線ピーク(等高線の強度が強いところ)が現れている。従って、これら酸化物超電導線材10及び20における各Bi系2212型酸化物超電導体の結晶は、4回対称性を有していると判定でき、それぞれの結晶は、多数の結晶粒子の向きが揃って、ab面内で配向しているものと判定できる。
【0055】
これに対し、酸化物超電導線材Aに関する図5の極点図形と、酸化物超電導線材Bに関する図7の極点図形では、Bi系2212型酸化物超電導体の結晶を、(115)結晶面において水平状態で360度回転したとき、特定の角度で強いX線の回折は起こらず、全角度で同程度の強さのX線回折が起こり、X線ピークがリング状または略リング状になっている。従って、これら酸化物超電導線材A及びBにおけるBi系2212型酸化物超電導体の結晶は対称性がなく、それぞれの結晶は、多数の結晶粒子の向きがバラバラで、ab面内で配向していないものと判定できる。
【0056】
上述の酸化物超電導線材10、20、A及びBにおける各Bi系2212型酸化物超電導体の結晶に関する配向性の評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
この表1に示されるように、第1比較例の酸化物超電導線材Aと第2比較例の酸化物超電導線材Bについては、それぞれのBi系2212型酸化物超電導体の結晶はc軸配向のみであり、従って、これらの結晶の配向性は、ともに1軸配向性を有するものと評価できる。
【0058】
これに対し、第1実施の形態の酸化物超電導線材10と第2実施の形態の酸化物超電導線材20については、それぞれのBi系2212型酸化物超電導体の結晶は、c軸配向とab面内配向を有し、従って、これらの結晶の配向性はいずれの場合も3軸配向性を有するものと評価できる。
【0059】
以上のことから、上記第1の実施の形態によれば、次の効果▲1▼を奏する。
【0060】
▲1▼基材12は少なくとも1回の減面加工が施され、超電導化熱処理は酸化物超電導前駆体11の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が5℃/h以下の3℃/hで凝固されたものであることから、酸化物超電導体14の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させる他、この酸化物超電導体14の結晶をab面内でも配向させて当該結晶に3軸配向性を具備させることができる。この結果、酸化物超電導体14の結晶粒子の向きが揃い、これらの結晶粒子間の結合が強固となって、酸化物超電導線材10において超電導電流が流れ易くなり、この酸化物超電導線材10の臨界電流特性を向上させることができる。
【0061】
また、上記第2の実施の形態によれば、次の効果▲2▼を奏する。
【0062】
▲2▼基材22A及び22Bの減面加工の有無に拘わらず、複合材23は、減面率が10〜95%の範囲内の30%となるように少なくとも1回(4回)減面加工され、超電導化熱処理は、酸化物超電導前駆体21の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が10℃/h以下の8℃/hで凝固されたものであることから、酸化物超電導体24の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させる他、この酸化物超電導体24の結晶をab面内でも配向させて当該結晶に3軸配向性を具備させることができる。この結果、酸化物超電導体24の結晶粒子の向きが揃い、これらの結晶粒子間の結合が強固となって、酸化物超電導線材20において超電導電流が流れ易くなり、この酸化物超電導線材20の臨界電流特性を向上させることができる。
【0063】
[B]第3の実施の形態
さて、次に、本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法における第3の実施の形態について述べる。
【0064】
この第3の実施の形態では、まず、第2の実施の形態の手順(11)〜(13)と同様な手順で複合材23を作製し、この複合材23に減面加工を施す。このときの減面率も10〜95%の範囲にある30%である。
【0065】
次に、上述のように減面加工された複合材23に超電導化熱処理を施して、酸化物超電導前駆体の少なくとも一部を溶融させた後凝固させて、この酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を酸化物超電導体として酸化物超電導線材Cを製造する。このとき、この超電導化熱処理における凝固過程の冷却速度を3℃/hに設定する。
【0066】
従って、この第3の実施の形態の酸化物超電導線材C、及びこの酸化物超電導線材Cの製造方法によれば、次の効果▲3▼を奏する。
【0067】
▲3▼基材の減面加工の有無に拘わらず、複合材23は、減面率が10〜95%の範囲内の30%となるように少なくとも1回(4回)の減面加工が施され、超電導化熱処理は、酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が5℃/h以下の3℃/hで凝固されたものであることから、条件が厳しい分、酸化物超電導体の結晶をc軸配向させて当該結晶に1軸配向性を具備させる他、この酸化物超電導体の結晶をab面内でより良好に配向させて、当該結晶に一層優れた3軸配向性を具備させることができる。この結果、酸化物超電導体の結晶粒子の向きが揃い、これらの結晶粒子間の結合が強固となって、酸化物超電導線材Cにおいて超電導電流が流れ易くなり、この酸化物超電導線材Cの臨界電流特性をより一層向上させることができる。
【0068】
[C]その他
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
また、第1の実施の形態における基材12と第2の実施の形態における基材22Bとを、Agに0.015%のMgを混合させたAg合金にて構成してもよい。更に、これらの基材12、22B及び22Aは、AgまたはAg合金に限らず、その他の金属(例えばAu、Pt、PdまたはCu)を備えて構成されたものでよい。
【0071】
また、複合材13、23、25を製造する方法として、塗布法の他、パウダーインチューブ法、ディップコード法、ドクターブレード法、ジェリーロール法、溶射法、スクリーン印刷法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等を用いてもよい。
【0072】
また、Bi系2212型酸化物超電導線材に限らず、Bi:Sr:Ca:Cu=2:2:2:3の組成比からなるBi系2223型酸化物超電導線材に本発明を適用してもよく、更に、Y系酸化物超電導線材またはTl系酸化物超電導線材に本発明を適用してもよい。この場合、基材の減面率、複合材の減面率、または超電導化熱処理の凝固過程における冷却速度等の最適条件は、各酸化物超電導線材において異なる。
【0073】
更に、酸化物超電導体を多層または多芯状態で配設した構造の酸化物超電導線材に本発明を適用してもよい。この場合、多層または多芯の酸化物超電導体は、異なった種類のもの(例えば、Bi系2212型酸化物超電導体とBi系2223型酸化物超電導体との組み合わせ)であってもよく、基材も異なった材料(AgとAu)の組み合わせであってもよい。
【0074】
また、本発明に係る酸化物超電導線材及びその製造方法を超電導マグネットの他、伝送ケーブル、電流リード、磁気シールド、限流器または永久電流スイッチなどに適用してもよい。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明に係る酸化物超電導線材によれば、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、上記基材は少なくとも一回の減面加工が施されたものであり、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成され、上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることから、臨界電流特性を向上させることができる。
【0077】
請求項2に記載の発明に係る酸化物超電導線材によれば、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材は、減面率が20〜30%となるように少なくとも一回の減面加工が施されたものであり、上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることから、臨界電流特性をより一層向上させることができる。
【0078】
請求項7に記載の酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、上記基材を少なくとも一回減面加工し、上記複合材を、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成し、上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることから、臨界電流特性を向上させることができる。
【0080】
請求項8に記載の発明に係る酸化物超電導線材の製造方法によれば、酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材を減面率が20〜30%となるように少なくとも一回減面加工し、上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることから、臨界電流特性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法における第1の実施の形態を示す工程図である。
【図2】本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法における第2の実施の形態を示す工程図である。
【図3】超電導化熱処理工程における加熱温度と時間との関係を示すグラフである。
【図4】図1の酸化物超電導線材の製造方法により製造された酸化物超電導線材におけるBi系2212型酸化物超電導体のポールフィギャー測定結果を示す極点図形である。
【図5】第1比較例における酸化物超電導線材の製造方法により製造された酸化物超電導線材におけるBi系2212型酸化物超電導体のポールフィギャー測定結果を示す極点図形である。
【図6】図2の酸化物超電導線材の製造方法により製造された酸化物超電導線材におけるBi系2212型酸化物超電導体のポールフィギャー測定結果を示す極点図形である。
【図7】第2比較例における酸化物超電導線材の製造方法により製造された酸化物超電導線材におけるBi系2212型酸化物超電導体のポールフィギャー測定結果を示す極点図形である。
【符号の説明】
10 酸化物超電導線材
11 酸化物超電導前駆体
12 基材
13 複合材
14 酸化物超電導体
20 酸化物超電導線材
21 酸化物超電導前駆体
22A、22B 基材
23 複合材
24 酸化物超電導体
Claims (11)
- 酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、
上記基材は少なくとも一回の減面加工が施されたものであり、
上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成され、
上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることを特徴とする酸化物超電導線材。 - 酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材が超電導化熱処理されて、上記酸化物超電導前駆体が酸化物超電導体となり製造される酸化物超電導線材において、
上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、
上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材は、減面率が20〜30%となるように少なくとも一回減面加工されたものであり、
上記超電導化熱処理は、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分が溶融された後、冷却速度が3℃/h以下で凝固されたものであることを特徴とする酸化物超電導線材。 - 上記酸化物超電導体が、Bi系酸化物超電導体であることを特徴とする請求項1または2記載の酸化物超電導線材。
- 上記酸化物超電導体が、Bi系2212型酸化物超電導体であることを特徴とする請求項3に記載の酸化物超電導線材。
- 上記基材が、AgまたはAg合金から構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
- 上記酸化物超電導線材により酸化物超電導コイルが構成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
- 酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、
上記基材を少なくとも一回減面加工し、
上記複合材を、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させて構成し、
上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。 - 酸化物超電導前駆体及び基材を備えて成る複合材に超電導化熱処理を施し、上記酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体として酸化物超電導線材を製造する酸化物超電導線材の製造方法において、
上記複合材は、上記基材の一表面に上記酸化物超電導前駆体を付着させ、この酸化物超伝導前駆体において上記基材が存在していない表面に、さらに上記基材を装着して構成され、
上記基材の減面加工の有無に拘わらず、上記複合材を減面率が20〜30%となるように少なくとも一回減面加工し、
上記超電導化熱処理については、上記酸化物超電導前駆体の少なくとも一部分を溶融させた後、冷却速度を3℃/h以下で凝固させることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。 - 上記酸化物超電導体が、Bi系酸化物超電導体であることを特徴とする請求項7または8のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 上記酸化物超電導体が、Bi系2212型酸化物超電導体であることを特徴とする請求項9に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
- 上記基材が、AgまたはAg合金から構成されたことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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